JP2004285490A - 製紙用嵩高剤及びそれを含有する紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い嵩高性を示し、ロジンサイズ剤のサイズ性を低下させることがなく、かつ摩擦係数の低下の少ない製紙用嵩高剤を提供する。
【解決手段】多価アルコールと炭素数8〜40の脂肪酸とのエステル化合物であって、該エステル化合物のモノエステル体含有率が40重量%以上90重量%以下である製紙用嵩高剤を、好ましくは、嵩高剤に対して0.1重量%以上30重量%以下の量の乳化剤を加えて乳化物とし、パルプ絶乾重量当たり0.1重量%以上20重量%以下となるように添加して紙を製造する。
【解決手段】多価アルコールと炭素数8〜40の脂肪酸とのエステル化合物であって、該エステル化合物のモノエステル体含有率が40重量%以上90重量%以下である製紙用嵩高剤を、好ましくは、嵩高剤に対して0.1重量%以上30重量%以下の量の乳化剤を加えて乳化物とし、パルプ絶乾重量当たり0.1重量%以上20重量%以下となるように添加して紙を製造する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高い嵩高性を示し、かつ摩擦係数の低下の少ない製紙用嵩高剤及び該製紙用嵩高剤を含有する紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の活字離れを反映して、急激にコミック本やペーパーバックが普及してきた。これに伴い、紙にも軽量化が求められている。ここで、紙の軽量化とは、紙の厚さは維持した上での軽量化、すなわち嵩高化(低密度化)のことを指す。環境問題が叫ばれている現在、森林資源から製造される製紙用パルプを有効に活用する上でも、紙の軽量化は避けて通れない問題である。
【0003】
紙を嵩高にする方法としては架橋パルプを用いる方法(特許文献1参照)や合成繊維との混抄による方法(特許文献2参照)、パルプ間に無機物等の充填物を満たす方法(特許文献3参照)、発泡性粒子を用いる方法(特許文献4、5参照)などがある。しかしながら、架橋パルプや合成繊維等の使用は紙のリサイクルを不可能にしてしまう。また、パルプ間に充填物を満たす方法や発泡性粒子を用いる方法では紙力が著しく低下する。また、特定のアルコール及び/又はそのポリオキシアルキレン付加物(特許文献6参照)、特定の非イオン界面活性剤(特許文献7参照)、脂肪酸やそのエステルにアルキレンオキサイドを付加したもの(特許文献8参照)、特定のカチオン性化合物(特許文献9参照)、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加したもの(特許文献10参照)、といった嵩高剤を使用する方法も報告されている。
【0004】
また、最近では環境問題の高まりと古紙のリサイクル率の向上に伴って、上質紙等に古紙パルプを積極的に配合する傾向が進んでおり、機械パルプと同様、古紙パルプの配合量が増加しつつある。しかしながら、配合量が多すぎると白色度や不透明度が低下するなどの諸問題が発生してしまい、これらを解決する必要に迫られている。古紙を含む紙を嵩高にする、あるいは白色度や不透明度を向上させる方法としては、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加したものを用いる方法(特許文献11参照)が報告されているが、これらの嵩高剤を実際の抄紙工程で使用しても嵩高化の効果が十分に発揮されないことがあった。
【0005】
界面活性剤を用いて紙を嵩高にする方法は、特別な方法や装置を用いないため比較的容易に嵩高紙を得ることができる。しかし、一般的な界面活性剤を用いて得られる嵩高化の効果は限定的であり、泡立ちや紙力低下による断紙の発生など操業上問題となる場合が多く、未だ満足のいく界面活性剤や紙用嵩高剤は存在していない。
【0006】
【特許文献1】特開平4−185792号公報
【特許文献2】特開平3−269199号公報
【特許文献3】特開平3−124895号公報
【特許文献4】特開平5−230798号公報
【特許文献5】特開平11−200282号公報
【特許文献6】WO098/03730号公報
【特許文献7】特開平11−200283号公報
【特許文献8】特開平11−200284号公報
【特許文献9】特開平11−269799号公報
【特許文献10】特開平11−350380号公報
【特許文献11】特開2000−282398号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高い嵩高性を示す製紙用薬品(以下、嵩高剤と呼ぶ)及び該嵩高剤を用いた紙を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、多価アルコールの脂肪酸エステル化合物が高い嵩高性を示し、その中でも多価アルコールの脂肪酸モノエステル化合物の含有率が40重量%以上90重量%以下であれば高い嵩高性を示すことを見出した。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0009】
嵩高剤の発現機構は明らかになっていないが、嵩高剤は抄紙時にパルプ繊維に定着し、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化して、乾燥後には単繊維同士を反発させて繊維間結合距離を増加させることで嵩高性を発現させていると考えられる。嵩高剤が効率的にパルプ繊維表面に定着するためには、極めて親水性が高いパルプ繊維と親和性が高い親水基が必要である。また、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化させるためには、嵩高剤はかなり疎水性が高い構造を有することが必要不可欠である。以上のことから、嵩高剤は分子内に親水性基と疎水性基を併せ持つ化合物、すなわち界面活性剤がその候補化合物の一つに挙げられる。しかしながら、一般に用いられている界面活性剤をパルプに混合して抄造しても、得られる嵩高化の効果は限定的である。
【0010】
一方、多価アルコールの脂肪酸エステル化合物は高い疎水性を有しているが、この化合物は多価アルコールを原料に用いているため、脂肪酸とのエステル化合物はエステル置換された数の異なる混合物となってしまう。それらの中で、多価アルコールの1つのOH基に脂肪酸が置換したモノエステル化合物は疎水性と親水性のバランスが良いために得られる嵩高化の効果は極めて高いものとなる。
【0011】
以上のことから、本発明者らは、脂肪酸と多価アルコールのエステル化合物において、モノエステル体の含有率を変化させて、より嵩高化の効果の大きい嵩高剤を得ることを検討したところ、モノエステル体の含有量が40重量%以上であることが必須であることを見出した。また、モノエステル体の含有率が90重量%より大きい場合は、紙の摩擦係数の低下やロジン系サイズ剤と併用した場合のサイズ度の低下など問題が生じることが判明した。従って、本発明の製紙用嵩高剤はモノエステル体の含有率が40重量%以上90重量%以下であることが必須である。さらには、モノエステル体の含有率が50重量%以上90重量%以下であれば嵩高化の効果が大きくなり望ましい。
【0012】
多価アルコールの脂肪酸エステル化合物は一般に、多価アルコールと脂肪酸を原料に用い、それらに対してエステル化触媒を添加して反応させることにより製造される。その生成物は3価のアルコールの場合、未反応の原料の他に3価アルコールの脂肪酸モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体のうちのいずれか、若しくは2種以上を含有している。4価アルコールの場合、未反応の原料の他に4価アルコールの脂肪酸モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体、テトラエステル体のうちのいずれか、若しくは2種以上を含有している。本発明の嵩高剤は、多価アルコールの脂肪酸モノエステル体の含有量が40重量%以上90重量%以下であることを特徴とする。
【0013】
多価アルコールの脂肪酸モノエステル体の含有率を40重量%以上にするためには、原料として用いる多価アルコールと脂肪酸の量を後者が過剰になるように反応させれば良い。または、反応後にカラムでモノエステル体、ジエステル体、トリエステル体等を分離して用いても良い。あるいは、各成分の溶媒への溶解性の違いを利用して、反応後に特定の溶媒で分画しモノエステル体の含有量を高めて用いても良い。
【0014】
本発明の製紙用嵩高剤を構成している脂肪酸は炭素数8〜40の脂肪酸であり、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラセリン酸、セロプラスチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が好ましく、これらの中で炭素数12〜22のものが特に好ましい。また、2種類以上の脂肪酸を混合して使用しても良い。
【0015】
また、本発明の製紙用嵩高剤を構成している多価アルコールは3価または4価のものが好ましく、例えば、グリセリン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリトリット、ペンタエリスリトール、ソルビタンが特に好ましい。
【0016】
本発明の製紙用嵩高剤は、一般に多価アルコールと脂肪酸を原料に用い、それらに対してエステル化触媒を添加して反応させることにより製造される。その際、エステル化触媒としては、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、無水塩化アルミニウム、酸性イオン交換樹脂、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などが用いられる。
【0017】
また、エステル化反応を促進するために、水に不溶な有機溶媒と共沸させて副生する水を取り除いたり、150℃以上に加温して水を系外に除去したり、反応系を減圧下に置いて効率的に水を除去することで、短時間で不純物の少ないエステル化合物を得ることができる。
【0018】
本発明の製紙用嵩高剤は一般に用いられる界面活性剤より疎水性が高いため、シャープな粒度分布を持つ乳化液を製造することが比較的難しくなる傾向がある。乳化液の安定性が低下すると、嵩高剤がパルプ繊維に均一に吸着し難くなり、結果的には十分な嵩高化の効果が得られなくなる。そこで、疎水性が高い嵩高剤を使用する際には、乳化能力に優れた界面活性剤を併用して均一な乳化液を作ることが重要である。乳化剤の添加量については、嵩高剤に対して0.1重量%以上30重量%以下の範囲であることが好ましく、さらには0.5重量%以上10重量%以下の範囲がより好ましい。
【0019】
乳化剤としてはアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性などの様々な界面活性剤が用いられるが、特にカチオン化澱粉や4級アンモニウム塩の様なカチオン性乳化剤は、乳化時の泡の発生が少なく作業性に優れている。特に、4級アンモニウム塩の中でも、長鎖アルキル基を少なくとも1個有する4級アンモニウム塩を用いると、嵩高効果が特に促進される。
【0020】
本発明の製紙用嵩高剤を乳化するために用いられる界面活性剤の具体例としては以下の化合物が挙げられる。すなわち、ぺレックスOT−P(花王(株)製)、デモールEP(花王(株)製)、ディスパーTL(明成化学(株)製)、ゴーセランL−3266(日本合成化学(株)製)、アロンT−40(東亜合成化学(株)製)などのアニオン性界面活性剤、エマルゲン(花王(株)製)、エマルミン(三洋化成製)、Span#20、40、60、80、83、85並びにTween20、40、60、80、85などのノニオン性界面活性剤、カチオンDS(三洋化成(株)製)、コータミン86W(花王(株)製)、コータミンD86P(花王(株)製)などのカチオン性界面活性剤などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
嵩高剤はパルプ繊維間の結合の阻害要因となるため、一般に紙の強度が低下する傾向が見られる。また、ある一定以上に添加量を増やしてもその効果が頭打ちになることも散見される。そのため、本発明の製紙用嵩高剤は原料パルプの絶乾重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の範囲で添加することが好ましい。また、添加量が多すぎると紙の摩擦係数が極端に変化してしまうなど一般紙質への影響が出る場合があり、添加量が少なすぎると嵩高剤の種類によっては効果が十分に発現しない場合があるので、0.2重量%以上5重量%以下の範囲で添加することがより好ましい。
【0022】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙は、各種パルプから通常の製紙工程によって製造される。原料パルプには、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、古紙パルプなどを単独または任意の割合で混合して使用することができる。なお、紙の原料に用いるパルプに機械パルプ及び/または古紙が含まれた場合においても、本発明の嵩高剤は良好な嵩高性を示す。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。
【0023】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙は填料を含有してもよい。填料としては一般に使用されているものが使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が、単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。
【0024】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙を得るには、通常の抄紙工程に製紙用嵩高剤をそのまま若しくは製紙用嵩高剤の乳化液を添加(いわゆる内添)すればよい。添加する場所は、パルプスラリーと均一に混合できるところであれば特に限定されるものではない。
【0025】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙を製造する際において、通常使用されているサイズ剤、歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、等の製紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。
【0026】
サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー系化合物、アルケニル無水コハク酸系化合物、スチレン−アクリル酸系化合物、スチレン−マレイン酸系化合物、高級脂肪酸系化合物、石油樹脂系サイズ剤やロジン系サイズ剤が挙げられる。
【0027】
製紙用内添助剤としては、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル等が挙げられる。
【0028】
その他製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物が例示できる。
【0029】
さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。なお、本発明の紙の製造方法は、その抄紙方法が例えば抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙によるものか、あるいは炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pHが約6の弱酸性〜約9の弱アルカリ性で行う、いわゆる中性抄紙によるものか等については特に限定されず、全ての抄紙方法によって得られる紙を対象とする。また、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用できる。
【0030】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙は、例えば、オフセット印刷用紙として好適である。その他にも凸版印刷用紙、電子写真用紙、あるいはインクジェット記録用紙、感熱記録紙、感圧記録紙、PPC用紙、フォーム用紙などの情報記録用紙の原紙にも使用することができる。また、塗工紙用原紙としての使用も好ましい態様である。最近では、環境問題の高まりに伴い、古紙パルプを高配合する傾向が随所に見られてきている。本発明の嵩高剤は古紙パルプの量にかかわらず、著しい嵩高化の効果を示す。そのため、新聞紙はもちろんのこと、板紙・白板紙でも効果を発揮する。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の%は特に断りのない限り重量%を示す。
【0032】
実施例及び比較例にて製造した手抄き紙について下記の項目を測定して評価した。結果は表1に示した。
・密度:JIS P 8118に準拠した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠した。
・摩擦係数:ISO15359に準拠した。
【0033】
[実施例1]
ペンタエリスリトール27.2gにパルチミン酸25.6g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、ペンタエリスリトールのパルミチン酸エステル(モノエステル体の含有率70%)を得た。
【0034】
嵩高剤としてペンタエリスリトールのパルミチン酸エステル(モノエステル体の含有率70%)10.0gと、乳化剤としてエマルゲン905(花王(株)製)0.5gとを良く混合し、それを100gの水に添加して、乳化機を用いて回転数10,000rpmにて撹拌し、嵩高剤の乳化液を調製した。
【0035】
パルプ分としてLBKP(濾水度CSF350ml)を使用した。これに前述の嵩高剤の乳化液を対パルプ当たり1.0重量%添加し、さらに硫酸バンドを対パルプ当たり2.0重量%、ロジン系サイズ剤としてNT−87(ハリマ化成(株)製)を対パルプ当たり0.1%となるように添加し紙料を調製した。そして丸型手すき機を用いて坪量60g/m2となるように抄紙し、4.18kg/cm2の有効プレス圧にてプレスし、環境試験機(紙面温度70℃、加熱温度105℃)を用い、1時間乾燥して手抄き紙を得た。
【0036】
[実施例2]
ペンタエリスリトール27.2gにステアリン酸28.4g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)を得た。
【0037】
嵩高剤として、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0038】
[実施例3]
トリメチロールプロパン26.8gにベヘン酸34.1g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、トリメチロールプロパンのベヘン酸エステル(モノエステル体の含有率45%)を得た。
【0039】
嵩高剤として、トリメチロールプロパンのベヘン酸エステル(モノエステル体の含有率45%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0040】
[実施例4]
グリセリン18.4gにステアリン酸28.4g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、グリセリンのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率50%)を得た。
【0041】
嵩高剤として、グリセリンのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率50%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0042】
[実施例5]
ソルビタン32.8gにミリスチン酸22.8g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、ソルビタンのミリスチン酸エステル(モノエステル体の含有率60%)を得た。
【0043】
嵩高剤として、ソルビタンのミリスチン酸エステル(モノエステル体の含有率60%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0044】
[実施例6]
嵩高剤として、実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)と実施例4で製造したグリセリンのステアリン酸エステルとの混合物(モノエステル体の含有率50%)との1対1の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0045】
[実施例7]
嵩高剤として、実施例1で製造したペンタエリスリトールのパルチミン酸エステル(モノエステル体の含有率70%)と実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)との1対1の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0046】
[実施例8]
パルプ分としてLBKP(濾水度CSF350ml)と古紙パルプ(濾水度CSF200ml)の比率が9:1の混合パルプを使用した以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0047】
[比較例1]
嵩高剤を添加しない以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0048】
[比較例2]
嵩高剤として、実施例3で製造したトリメチロールプロパンのベヘン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が20%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0049】
[比較例3]
嵩高剤として、実施例4で製造したグリセリンのステアリン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が20%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0050】
[比較例4]
嵩高剤として、実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が35%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0051】
[比較例5]
嵩高剤として、実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が100%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0052】
[比較例6]
実施例1で調製した嵩高剤の乳化液を対パルプ当たり0.05%添加した以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
表1に示す様に、モノエステル体の含有率が40重量%以上90重量%以下である本発明の嵩高剤を用いた実施例1〜8は、モノエステル体の含有率が40重量%未満である嵩高剤を用いた比較例2〜4と比較して大きな嵩高効果を得ることができる。このことは実際に紙を製造する際のコストを考えた場合、例えば、同一紙厚の紙を製造する際に必要なパルプ量は実施例1では、比較例1より18%減となり大幅なコスト削減に寄与することが可能である。さらには、静摩擦係数及び動摩擦係数の低下が少ないという特徴がある。一方、モノエステル体の含有率が90重量%を超える嵩高剤を用いた比較例5は、サイズ度の低下が著しいという問題がある。また、比較例6に示すように、嵩高剤の添加量が対パルプ当たり0.1重量%未満であると十分な嵩高性が得られない。
【発明の属する技術分野】
本発明は高い嵩高性を示し、かつ摩擦係数の低下の少ない製紙用嵩高剤及び該製紙用嵩高剤を含有する紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の活字離れを反映して、急激にコミック本やペーパーバックが普及してきた。これに伴い、紙にも軽量化が求められている。ここで、紙の軽量化とは、紙の厚さは維持した上での軽量化、すなわち嵩高化(低密度化)のことを指す。環境問題が叫ばれている現在、森林資源から製造される製紙用パルプを有効に活用する上でも、紙の軽量化は避けて通れない問題である。
【0003】
紙を嵩高にする方法としては架橋パルプを用いる方法(特許文献1参照)や合成繊維との混抄による方法(特許文献2参照)、パルプ間に無機物等の充填物を満たす方法(特許文献3参照)、発泡性粒子を用いる方法(特許文献4、5参照)などがある。しかしながら、架橋パルプや合成繊維等の使用は紙のリサイクルを不可能にしてしまう。また、パルプ間に充填物を満たす方法や発泡性粒子を用いる方法では紙力が著しく低下する。また、特定のアルコール及び/又はそのポリオキシアルキレン付加物(特許文献6参照)、特定の非イオン界面活性剤(特許文献7参照)、脂肪酸やそのエステルにアルキレンオキサイドを付加したもの(特許文献8参照)、特定のカチオン性化合物(特許文献9参照)、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加したもの(特許文献10参照)、といった嵩高剤を使用する方法も報告されている。
【0004】
また、最近では環境問題の高まりと古紙のリサイクル率の向上に伴って、上質紙等に古紙パルプを積極的に配合する傾向が進んでおり、機械パルプと同様、古紙パルプの配合量が増加しつつある。しかしながら、配合量が多すぎると白色度や不透明度が低下するなどの諸問題が発生してしまい、これらを解決する必要に迫られている。古紙を含む紙を嵩高にする、あるいは白色度や不透明度を向上させる方法としては、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加したものを用いる方法(特許文献11参照)が報告されているが、これらの嵩高剤を実際の抄紙工程で使用しても嵩高化の効果が十分に発揮されないことがあった。
【0005】
界面活性剤を用いて紙を嵩高にする方法は、特別な方法や装置を用いないため比較的容易に嵩高紙を得ることができる。しかし、一般的な界面活性剤を用いて得られる嵩高化の効果は限定的であり、泡立ちや紙力低下による断紙の発生など操業上問題となる場合が多く、未だ満足のいく界面活性剤や紙用嵩高剤は存在していない。
【0006】
【特許文献1】特開平4−185792号公報
【特許文献2】特開平3−269199号公報
【特許文献3】特開平3−124895号公報
【特許文献4】特開平5−230798号公報
【特許文献5】特開平11−200282号公報
【特許文献6】WO098/03730号公報
【特許文献7】特開平11−200283号公報
【特許文献8】特開平11−200284号公報
【特許文献9】特開平11−269799号公報
【特許文献10】特開平11−350380号公報
【特許文献11】特開2000−282398号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高い嵩高性を示す製紙用薬品(以下、嵩高剤と呼ぶ)及び該嵩高剤を用いた紙を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、多価アルコールの脂肪酸エステル化合物が高い嵩高性を示し、その中でも多価アルコールの脂肪酸モノエステル化合物の含有率が40重量%以上90重量%以下であれば高い嵩高性を示すことを見出した。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0009】
嵩高剤の発現機構は明らかになっていないが、嵩高剤は抄紙時にパルプ繊維に定着し、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化して、乾燥後には単繊維同士を反発させて繊維間結合距離を増加させることで嵩高性を発現させていると考えられる。嵩高剤が効率的にパルプ繊維表面に定着するためには、極めて親水性が高いパルプ繊維と親和性が高い親水基が必要である。また、極めて親水性が高いパルプ繊維表面を疎水化させるためには、嵩高剤はかなり疎水性が高い構造を有することが必要不可欠である。以上のことから、嵩高剤は分子内に親水性基と疎水性基を併せ持つ化合物、すなわち界面活性剤がその候補化合物の一つに挙げられる。しかしながら、一般に用いられている界面活性剤をパルプに混合して抄造しても、得られる嵩高化の効果は限定的である。
【0010】
一方、多価アルコールの脂肪酸エステル化合物は高い疎水性を有しているが、この化合物は多価アルコールを原料に用いているため、脂肪酸とのエステル化合物はエステル置換された数の異なる混合物となってしまう。それらの中で、多価アルコールの1つのOH基に脂肪酸が置換したモノエステル化合物は疎水性と親水性のバランスが良いために得られる嵩高化の効果は極めて高いものとなる。
【0011】
以上のことから、本発明者らは、脂肪酸と多価アルコールのエステル化合物において、モノエステル体の含有率を変化させて、より嵩高化の効果の大きい嵩高剤を得ることを検討したところ、モノエステル体の含有量が40重量%以上であることが必須であることを見出した。また、モノエステル体の含有率が90重量%より大きい場合は、紙の摩擦係数の低下やロジン系サイズ剤と併用した場合のサイズ度の低下など問題が生じることが判明した。従って、本発明の製紙用嵩高剤はモノエステル体の含有率が40重量%以上90重量%以下であることが必須である。さらには、モノエステル体の含有率が50重量%以上90重量%以下であれば嵩高化の効果が大きくなり望ましい。
【0012】
多価アルコールの脂肪酸エステル化合物は一般に、多価アルコールと脂肪酸を原料に用い、それらに対してエステル化触媒を添加して反応させることにより製造される。その生成物は3価のアルコールの場合、未反応の原料の他に3価アルコールの脂肪酸モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体のうちのいずれか、若しくは2種以上を含有している。4価アルコールの場合、未反応の原料の他に4価アルコールの脂肪酸モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体、テトラエステル体のうちのいずれか、若しくは2種以上を含有している。本発明の嵩高剤は、多価アルコールの脂肪酸モノエステル体の含有量が40重量%以上90重量%以下であることを特徴とする。
【0013】
多価アルコールの脂肪酸モノエステル体の含有率を40重量%以上にするためには、原料として用いる多価アルコールと脂肪酸の量を後者が過剰になるように反応させれば良い。または、反応後にカラムでモノエステル体、ジエステル体、トリエステル体等を分離して用いても良い。あるいは、各成分の溶媒への溶解性の違いを利用して、反応後に特定の溶媒で分画しモノエステル体の含有量を高めて用いても良い。
【0014】
本発明の製紙用嵩高剤を構成している脂肪酸は炭素数8〜40の脂肪酸であり、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラセリン酸、セロプラスチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が好ましく、これらの中で炭素数12〜22のものが特に好ましい。また、2種類以上の脂肪酸を混合して使用しても良い。
【0015】
また、本発明の製紙用嵩高剤を構成している多価アルコールは3価または4価のものが好ましく、例えば、グリセリン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリトリット、ペンタエリスリトール、ソルビタンが特に好ましい。
【0016】
本発明の製紙用嵩高剤は、一般に多価アルコールと脂肪酸を原料に用い、それらに対してエステル化触媒を添加して反応させることにより製造される。その際、エステル化触媒としては、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、無水塩化アルミニウム、酸性イオン交換樹脂、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などが用いられる。
【0017】
また、エステル化反応を促進するために、水に不溶な有機溶媒と共沸させて副生する水を取り除いたり、150℃以上に加温して水を系外に除去したり、反応系を減圧下に置いて効率的に水を除去することで、短時間で不純物の少ないエステル化合物を得ることができる。
【0018】
本発明の製紙用嵩高剤は一般に用いられる界面活性剤より疎水性が高いため、シャープな粒度分布を持つ乳化液を製造することが比較的難しくなる傾向がある。乳化液の安定性が低下すると、嵩高剤がパルプ繊維に均一に吸着し難くなり、結果的には十分な嵩高化の効果が得られなくなる。そこで、疎水性が高い嵩高剤を使用する際には、乳化能力に優れた界面活性剤を併用して均一な乳化液を作ることが重要である。乳化剤の添加量については、嵩高剤に対して0.1重量%以上30重量%以下の範囲であることが好ましく、さらには0.5重量%以上10重量%以下の範囲がより好ましい。
【0019】
乳化剤としてはアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性などの様々な界面活性剤が用いられるが、特にカチオン化澱粉や4級アンモニウム塩の様なカチオン性乳化剤は、乳化時の泡の発生が少なく作業性に優れている。特に、4級アンモニウム塩の中でも、長鎖アルキル基を少なくとも1個有する4級アンモニウム塩を用いると、嵩高効果が特に促進される。
【0020】
本発明の製紙用嵩高剤を乳化するために用いられる界面活性剤の具体例としては以下の化合物が挙げられる。すなわち、ぺレックスOT−P(花王(株)製)、デモールEP(花王(株)製)、ディスパーTL(明成化学(株)製)、ゴーセランL−3266(日本合成化学(株)製)、アロンT−40(東亜合成化学(株)製)などのアニオン性界面活性剤、エマルゲン(花王(株)製)、エマルミン(三洋化成製)、Span#20、40、60、80、83、85並びにTween20、40、60、80、85などのノニオン性界面活性剤、カチオンDS(三洋化成(株)製)、コータミン86W(花王(株)製)、コータミンD86P(花王(株)製)などのカチオン性界面活性剤などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
嵩高剤はパルプ繊維間の結合の阻害要因となるため、一般に紙の強度が低下する傾向が見られる。また、ある一定以上に添加量を増やしてもその効果が頭打ちになることも散見される。そのため、本発明の製紙用嵩高剤は原料パルプの絶乾重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の範囲で添加することが好ましい。また、添加量が多すぎると紙の摩擦係数が極端に変化してしまうなど一般紙質への影響が出る場合があり、添加量が少なすぎると嵩高剤の種類によっては効果が十分に発現しない場合があるので、0.2重量%以上5重量%以下の範囲で添加することがより好ましい。
【0022】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙は、各種パルプから通常の製紙工程によって製造される。原料パルプには、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、古紙パルプなどを単独または任意の割合で混合して使用することができる。なお、紙の原料に用いるパルプに機械パルプ及び/または古紙が含まれた場合においても、本発明の嵩高剤は良好な嵩高性を示す。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。
【0023】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙は填料を含有してもよい。填料としては一般に使用されているものが使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が、単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。
【0024】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙を得るには、通常の抄紙工程に製紙用嵩高剤をそのまま若しくは製紙用嵩高剤の乳化液を添加(いわゆる内添)すればよい。添加する場所は、パルプスラリーと均一に混合できるところであれば特に限定されるものではない。
【0025】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙を製造する際において、通常使用されているサイズ剤、歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、等の製紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。
【0026】
サイズ剤としては、アルキルケテンダイマー系化合物、アルケニル無水コハク酸系化合物、スチレン−アクリル酸系化合物、スチレン−マレイン酸系化合物、高級脂肪酸系化合物、石油樹脂系サイズ剤やロジン系サイズ剤が挙げられる。
【0027】
製紙用内添助剤としては、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル等が挙げられる。
【0028】
その他製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物が例示できる。
【0029】
さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。なお、本発明の紙の製造方法は、その抄紙方法が例えば抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙によるものか、あるいは炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pHが約6の弱酸性〜約9の弱アルカリ性で行う、いわゆる中性抄紙によるものか等については特に限定されず、全ての抄紙方法によって得られる紙を対象とする。また、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機等を適宜使用できる。
【0030】
本発明の製紙用嵩高剤を含有する紙は、例えば、オフセット印刷用紙として好適である。その他にも凸版印刷用紙、電子写真用紙、あるいはインクジェット記録用紙、感熱記録紙、感圧記録紙、PPC用紙、フォーム用紙などの情報記録用紙の原紙にも使用することができる。また、塗工紙用原紙としての使用も好ましい態様である。最近では、環境問題の高まりに伴い、古紙パルプを高配合する傾向が随所に見られてきている。本発明の嵩高剤は古紙パルプの量にかかわらず、著しい嵩高化の効果を示す。そのため、新聞紙はもちろんのこと、板紙・白板紙でも効果を発揮する。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の%は特に断りのない限り重量%を示す。
【0032】
実施例及び比較例にて製造した手抄き紙について下記の項目を測定して評価した。結果は表1に示した。
・密度:JIS P 8118に準拠した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠した。
・摩擦係数:ISO15359に準拠した。
【0033】
[実施例1]
ペンタエリスリトール27.2gにパルチミン酸25.6g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、ペンタエリスリトールのパルミチン酸エステル(モノエステル体の含有率70%)を得た。
【0034】
嵩高剤としてペンタエリスリトールのパルミチン酸エステル(モノエステル体の含有率70%)10.0gと、乳化剤としてエマルゲン905(花王(株)製)0.5gとを良く混合し、それを100gの水に添加して、乳化機を用いて回転数10,000rpmにて撹拌し、嵩高剤の乳化液を調製した。
【0035】
パルプ分としてLBKP(濾水度CSF350ml)を使用した。これに前述の嵩高剤の乳化液を対パルプ当たり1.0重量%添加し、さらに硫酸バンドを対パルプ当たり2.0重量%、ロジン系サイズ剤としてNT−87(ハリマ化成(株)製)を対パルプ当たり0.1%となるように添加し紙料を調製した。そして丸型手すき機を用いて坪量60g/m2となるように抄紙し、4.18kg/cm2の有効プレス圧にてプレスし、環境試験機(紙面温度70℃、加熱温度105℃)を用い、1時間乾燥して手抄き紙を得た。
【0036】
[実施例2]
ペンタエリスリトール27.2gにステアリン酸28.4g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)を得た。
【0037】
嵩高剤として、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0038】
[実施例3]
トリメチロールプロパン26.8gにベヘン酸34.1g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、トリメチロールプロパンのベヘン酸エステル(モノエステル体の含有率45%)を得た。
【0039】
嵩高剤として、トリメチロールプロパンのベヘン酸エステル(モノエステル体の含有率45%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0040】
[実施例4]
グリセリン18.4gにステアリン酸28.4g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、グリセリンのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率50%)を得た。
【0041】
嵩高剤として、グリセリンのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率50%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0042】
[実施例5]
ソルビタン32.8gにミリスチン酸22.8g、さらに酸触媒としてp−トルエンスルホンアミド0.9gを加え、180℃に加熱し、副生する水を除去しながら8時間反応させた。得られた反応生成物をカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)で精製し、ソルビタンのミリスチン酸エステル(モノエステル体の含有率60%)を得た。
【0043】
嵩高剤として、ソルビタンのミリスチン酸エステル(モノエステル体の含有率60%)を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0044】
[実施例6]
嵩高剤として、実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)と実施例4で製造したグリセリンのステアリン酸エステルとの混合物(モノエステル体の含有率50%)との1対1の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0045】
[実施例7]
嵩高剤として、実施例1で製造したペンタエリスリトールのパルチミン酸エステル(モノエステル体の含有率70%)と実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステル(モノエステル体の含有率80%)との1対1の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0046】
[実施例8]
パルプ分としてLBKP(濾水度CSF350ml)と古紙パルプ(濾水度CSF200ml)の比率が9:1の混合パルプを使用した以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0047】
[比較例1]
嵩高剤を添加しない以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0048】
[比較例2]
嵩高剤として、実施例3で製造したトリメチロールプロパンのベヘン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が20%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0049】
[比較例3]
嵩高剤として、実施例4で製造したグリセリンのステアリン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が20%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0050】
[比較例4]
嵩高剤として、実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が35%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0051】
[比較例5]
嵩高剤として、実施例2で製造したペンタエリスリトールのステアリン酸エステルをカラムクロマトグラフィーでモノエステル体の含有率が100%となるように調製したものを用いた以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0052】
[比較例6]
実施例1で調製した嵩高剤の乳化液を対パルプ当たり0.05%添加した以外は実施例1と同様にして手抄き紙を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
表1に示す様に、モノエステル体の含有率が40重量%以上90重量%以下である本発明の嵩高剤を用いた実施例1〜8は、モノエステル体の含有率が40重量%未満である嵩高剤を用いた比較例2〜4と比較して大きな嵩高効果を得ることができる。このことは実際に紙を製造する際のコストを考えた場合、例えば、同一紙厚の紙を製造する際に必要なパルプ量は実施例1では、比較例1より18%減となり大幅なコスト削減に寄与することが可能である。さらには、静摩擦係数及び動摩擦係数の低下が少ないという特徴がある。一方、モノエステル体の含有率が90重量%を超える嵩高剤を用いた比較例5は、サイズ度の低下が著しいという問題がある。また、比較例6に示すように、嵩高剤の添加量が対パルプ当たり0.1重量%未満であると十分な嵩高性が得られない。
Claims (3)
- 多価アルコールと炭素数8〜40の脂肪酸とのエステル化合物であって、該エステル化合物のモノエステル体含有率が40重量%以上90重量%以下であることを特徴とする製紙用嵩高剤。
- 多価アルコールと炭素数8〜40の脂肪酸とのエステル化合物であって、該エステル化合物のモノエステル体含有率が40重量%以上90重量%以下である製紙用嵩高剤をパルプ絶乾重量当たり0.1重量%以上20重量%以下添加することを特徴とする紙。
- パルプ分として機械パルプ及び/または古紙パルプを含有することを特徴とする請求項2記載の紙。
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2003
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