JP4055260B2 - 溶鋼の二次精錬方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶鋼の二次精錬方法に関し、特に、清浄鋼の製造に好適な溶鋼の二次精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
転炉等で一次精錬して出鋼した溶鋼をさらに二次精錬する方法として、真空度を10〜300mmHg として真空脱ガス処理を行い、この間に製品用途に応じ所望の合金元素を添加し、成分調整を行う方法(以下真空処理という)がある。この処理プロセスは、一般に、脱炭、脱酸、成分調整合金添加、攪拌を順次行うというものである。
【0003】
その具体例として、特開昭57−73118 号公報に、溶鋼を真空脱ガス処理中に所望の合金元素を分割ないし一括して真空脱ガス処理槽内の溶鋼に添加して清浄鋼を製造する方法において、前記所望の合金元素の最終添加後、少なくとも(V/F)×aで表される時間t1 (分)、真空度10〜300 (mmHg)で該溶鋼を攪拌、揺動処理することが記載されている。ここに、V:溶鋼量(t) 、F:環流量(t/分) 、a:製品に要求される清浄度によって決まる定数(範囲:1〜10)である。この方法は、真空脱ガス法の大きな攪拌力またはDH式真空脱ガス処理の大きな揺動力を、介在物の衝突凝集(合体)に利用し、極小の介在物に至るまで浮上効率を上げて清浄度を高めようとするもので、その合体浮上に必要な時間として前記時間t1 を規制したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかながら、例えば自動車外板用高張力鋼や珪素鋼においては、前記従来法で二次精錬を行って連続鋳造プロセスによって凝固させてスラグ等の鋳片とする際に連続鋳のタンディッシュとモールド間の浸漬ノズルを通過するときに溶鋼中の介在物がノズル内に堆積してノズル詰まりを誘起する等の問題があり、また、圧延以降の製品にしばしば表面欠陥が発生することから鋳片の清浄度も未だ十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、連鋳でのノズル詰まりを誘起せずに鋳片の清浄度を十分に高め得る溶鋼の二次精錬方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真空脱ガス装置により溶鋼の脱炭、脱酸、および溶鋼への合金元素の添加を行う溶鋼の二次精錬方法において、前記合金元素の添加を脱炭処理中に行い、その後脱酸処理を行うこととし、かつ前記合金元素添加用の合金剤は、脱酸能を有しないものとすることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
従来、真空脱ガス装置を用いた二次精錬においては、溶鋼中への合金元素の添加は、Al、Ti等の脱酸剤を溶鋼に添加した後に行われるのが常であった。ところが、本発明らが、この合金元素の添加時から鋳造までの間の溶鋼中の介在物の挙動を詳細に追跡したところ、合金元素の添加直後あるいは添加から鋳造の間に介在物が増加する傾向があることをつきとめた。その原因を調査したところ、合金元素添加用の合金剤に含有される水分、酸素、酸化物、あるいは合金剤に付着した水分や酸化物が溶鋼への合金剤の添加に伴って溶鋼中に入り、溶鋼中のAl、Tiといった脱酸剤を酸化してAl2O3 やTiO2等の介在物を増加させていることが明らかとなった。
【0008】
そこで、本発明では、これら酸素源を有する合金剤の添加を、脱酸処理の後ではなく、真空脱ガス装置における溶鋼の脱炭精錬時に行うことにしたのである。前記溶鋼の脱炭精錬は、転炉等の一次精錬炉においてリムド出鋼(未脱酸又は、わずかの脱酸剤のみの添加にとどめ、溶鋼中の酸素を残す出鋼方法)した溶鋼を真空脱ガス装置において減圧し、溶存C、Oの反応によって脱炭するか、あるいは、前記減圧下でランスや羽口から溶鋼に酸素ガスを供給することによって行われる。
【0009】
本発明によれば、脱炭処理中に合金元素を添加し、脱酸処理後、攪拌処理するようにしたから、脱酸後に合金元素添加する従来法で生じていた前記問題、すなわち、添加される合金元素に伴う酸素源によって溶鋼中の脱酸剤が酸化されてAl2O3 やTiO2等の介在物が増加するという問題は解消する。
本発明において添加した合金剤に含まれる酸素、水分、酸化物に起因する酸素は、溶鋼中に入った後は、主として溶鋼の脱炭精錬に消費されることとなり、介在物を形成することはない。仮に一時的に非金属介在物が形成されたとしても、真空処理による攪拌力と溶鋼のC−Oボイルによる攪拌によって、直ちに溶鋼中のCと反応して還元されるか、凝集浮上し速やかにスラグ中に移行するので、最後まで(すなわち連続鋳造段階まで)非金属介在物として残存することはない。
【0010】
本発明で、脱炭精錬時に添加する合金剤は、脱酸能を有しないものとする。すなわち、AlやTiなどの強脱酸能を有する元素の場合、添加と同時に溶鋼中の溶存酸素と結合して還元し難いAl2O3 やTiO2などの非金属介在物が大量に発生する。これによって、溶鋼中の溶存酸素量が一挙に減少してしまい、脱炭反応が停止し、極低炭素鋼を得ることが困難になるうえ、生成した多量の非金属介在物の一部は連続鋳造段階まで残存するため鋳片の品質を損なったり、浸漬ノズルを閉塞するので好ましくない。また、SiやMnなどの弱脱酸元素の場合、溶鋼中の溶存酸素と結合してSiO2やMnO などの低級酸化物が生成するが、これらはスラグ中に移行し、のちに強脱酸元素であるAlやTiを添加したのちに、溶鋼中に緩慢に酸素を供給する働きをし、二次精錬から連続鋳造に至る途中で溶鋼中のAlやTiを酸化し、非金属介在物を増大させる源となるので好ましくない。
【0011】
脱酸能を有しない合金剤の具体的な例としては、P 、Ni、Co、Cu、Ag、Mo、Wなどが挙げられる。これらの元素は単体あるいは鉄との合金の形態で添加してもよい。
【0012】
【実施例】
C:19ppm 、Si:0.01%、Mn:0.33%、P:0.095 %、S:0.007 %、Al:0.034 %を含有する高P極低炭素鋼の溶製にあたり、転炉にて一次精錬し取鍋に出鋼した溶鋼をRH真空脱ガス装置により二次精錬するときのプロセスとして、従来の「脱炭→脱酸→合金剤(Fe−P)添加→攪拌」プロセスに代えて本発明の「脱炭(処理中に合金剤(Fe−P)添加)→脱酸→攪拌」プロセスを採用したところ、図1に示すように、代表トータル酸素(定義:連続鋳造において当該チャージを40〜60%鋳造時のタンディッシュ内溶鋼から採取されたサンプルに含有される全酸素濃度) が従来よりも大幅に低減し、二次精錬後の連々鋳工程では、図2に示すようにイマージョンノズル当たりの連々数が従来の4チャージから7チャージにまで増大して、生産性が格段に向上し、さらに、当該連鋳鋳片を熱延−冷延−焼鈍−表面処理して得た製品コイルの表面欠陥(不良率指数)は、図3に示すように、従来に対し約4割も低減するという顕著な効果が得られた。
【0013】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、連鋳でのイマージョンノズル詰まりがなくなり連々鋳の生産性が向上するとともに、鋳片の清浄度が高くなって熱延−冷延−焼鈍−表面処理−プレス後の表面欠陥が低減するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明と従来の代表トータル酸素を示すグラフである。
【図2】本発明と従来の連々鋳での生産性を示すグラフである。
【図3】本発明と従来の製品段階での不良率指数を示すグラフである。
Claims (1)
- 真空脱ガス装置により溶鋼の脱炭、脱酸、および溶鋼への合金元素の添加を行う溶鋼の二次精錬方法において、前記合金元素の添加を脱炭処理中に行い、その後脱酸処理を行うこととし、かつ前記合金元素添加用の合金剤は、脱酸能を有しないものとすることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法。
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