JP4048933B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素と酸素との化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池を有する燃料電池システムに関するもので、車両、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池の燃料利用率と発電効率の低下防止のため、燃料電池の水素極から排出されるオフガスをポンプ装置により吸引し、そのオフガスを供給燃料に混合して燃料電池に再循環させる燃料電池システムが知られている。オフガスを再循環させるためのポンプ装置には、供給燃料の流体エネルギを利用して省動力化を図ることができるため、エジェクタポンプが主に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−266922号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エジェクタポンプ等の流体エネルギを利用するポンプ装置では、燃料電池への供給燃料量が少ないとき、すなわちオフガスを再循環するための流体エネルギが小さいときには、充分なオフガス循環量が得られない。ましてや、アイドルストップのような発電停止状態においては、燃料電池への供給燃料が絶たれるためオフガスの循環は不可能となる。
【0005】
ところで、発電停止中には、燃料電池の電解質膜などを介した空気の透過等が原因で窒素等の不純物や電池反応による生成水がオフガスの循環経路内に蓄積される。また、オフガス循環量の不足時においては、上記不純物を充分に燃料電池内より排出できないため、同様に不純物が循環経路内に蓄積されていく。このようにして蓄積された不純物は、燃料電池の電極反応を阻害するため、燃料電池の起動性や発電能力が低下するという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、燃料電池を安定的に作動させることが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。さらに、低温環境下においても安定した燃料電池の起動性が得られるようにすることを他の目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水素と酸素との化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、燃料電池(10)に水素を供給する水素供給装置(31)と、燃料電池(10)に供給される水素が流通する水素経路(30、34)と、燃料電池(10)に空気を供給する空気供給装置(22)と、燃料電池(10)に供給される空気が流通する空気経路(20、21)とを有する燃料電池システムにおいて、水素経路(30、34)または空気経路(20、21)を流通する流体のエネルギを動力源として作動して負圧を発生する流体式ポンプ(39、40、54、70)と、流体式ポンプ(39、40、54、70)が発生した負圧を蓄えるバキュームタンク(53、74)とを備え、バキュームタンク(53、74)に蓄えた負圧により水素経路(30、34)内の流体を吸引することを特徴とする。
【0013】
これによると、燃料電池への水素供給量が少ないときや燃料電池への水素供給が絶たれているときでも、水素経路内の流体を吸引することができるため、燃料電池を安定的に作動させることができる。
【0014】
また、め蓄えた負圧により水素経路内の流体を吸引するため、すぐに流体の吸引を開始することができ、したがって、燃料電池の起動性を一層向上させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明のように、空気経路(20、21)は、空気供給装置(22)から燃料電池(10)に空気を導く空気供給経路(20)と、燃料電池(10)から外部に空気を排出する空気排出経路(21)とを有し、流体式ポンプ(70)を、空気排出経路(21)を流通する空気のエネルギを動力源として作動させることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明のように、水素と酸素との化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、燃料電池(10)に水素を供給する水素供給装置(31)と、燃料電池(10)に供給される水素が流通する水素経路(30、34)と、燃料電池(10)に空気を供給する空気供給装置(22)と、燃料電池(10)に供給される空気が流通する空気経路(20、21)とを有する燃料電池システムにおいて、空気経路(20、21)を流通する空気のエネルギを動力源として作動して水素経路(30、34)内の流体を吸引するエジェクタポンプ(40)を備え、空気経路(20、21)は、空気供給装置(22)から燃料電池(10)に空気を導く空気供給経路(20)と、燃料電池(10)から外部に空気を排出する空気排出経路(21)とを有し、空気供給経路(20)は2つに分岐されており、この分岐された2つの空気供給経路(20)の一方にエジェクタポンプを配置してもよい。
【0017】
請求項4に記載の発明のように、水素経路(30、34)から分岐した吸引経路(41)をエジェクタポンプの吸引部(40a)に接続してもよい。
【0018】
請求項5に記載の発明のように、吸引経路(41)を開閉する吸引経路開閉弁(42)を、吸引経路(41)に配置してもよい。
【0019】
請求項6に記載の発明のように、空気供給装置(22)からの空気の流れを、分岐された2つの空気供給経路(20)の一方に切替え制御する三方切替弁(23)を、空気供給経路(20)の分岐部に配置してもよい。
【0020】
請求項7に記載の発明のように、水素経路(30、34)は、水素供給装置(31)から燃料電池(10)に水素を導く水素供給経路(30)と、燃料電池(10)に供給された水素のうち化学反応に用いられなかった未反応水素を含んで燃料電池(10)から排出されるオフガスを水素供給経路(30)に合流させ、燃料電池(10)に再循環させるオフガス循環経路(34)とを有し、オフガス循環経路(34)から分岐されて、水素経路(30、34)内の流体を外部に排出するオフガス排出経路(50)と、オフガス排出経路(50)に配置されてオフガス排出経路(50)を開閉する2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)とを備え、バキュームタンク(53)を2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)の間に配置してもよい。
【0021】
請求項8に記載の発明のように、流体式ポンプ(39)は、水素供給経路(30)に配置されてオフガスをオフガス循環経路(34)に循環させるとともに、水素供給装置(31)から供給される水素にオフガスを混合して燃料電池(10)に供給する循環用エジェクタポンプであり、オフガス排出経路(50)およびオフガス循環経路(34)を、循環用エジェクタポンプの吸引部(39a)に切替え接続可能に構成してもよい。
【0022】
請求項9に記載の発明のように、オフガス循環経路(34)におけるオフガス循環経路(34)とオフガス排出経路(50)との分岐部よりも上流側に配置されて、オフガス循環経路(34)を開閉するオフガス循環経路開閉弁(60)を備え、2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)のうちバキュームタンク(53)よりも上流側に配置されたオフガス排出経路開閉弁(51)とオフガス循環経路開閉弁(60)との切替え制御を行うようにしてもよい。
【0023】
請求項10に記載の発明では、水素供給経路(30)に配置されてオフガスをオフガス循環経路(34)に循環させるとともに、水素供給装置(31)から供給される水素にオフガスを混合して燃料電池(10)に供給する循環用エジェクタポンプを備え、流体式ポンプ(54)は、水素供給経路(30)において循環用エジェクタポンプよりも上流側に配置されたエジェクタポンプであることを特徴とする。
【0024】
一般的な燃料電池システムにおいては、水素供給装置内の高圧水素をレギュレータにて減圧して循環用エジェクタポンプ側に供給するようになっており、その減圧により多くのエネルギを無駄に消費していたが、請求項10の発明によれば、循環用エジェクタポンプよりも上流側に配置されたエジェクタポンプによって、従来、減圧時に無駄に消費していたエネルギが有効利用される。
【0025】
請求項11に記載の発明のように、水素経路(30、34)は、水素供給装置(31)から燃料電池(10)に水素を導く水素供給経路(30)と、燃料電池(10)に供給された水素のうち化学反応に用いられなかった未反応水素を含んで燃料電池(10)から排出されるオフガスを水素供給経路(30)に合流させ、燃料電池(10)に再循環させるオフガス循環経路(34)とを有し、流体式ポンプ(39)は、水素供給経路(30)に配置されてオフガスをオフガス循環経路(34)に循環させるとともに、水素供給装置(31)から供給される水素にオフガスを混合して燃料電池(10)に供給する循環用エジェクタポンプであり、水素経路(30、34)内の流体を外部に排出するオフガス排出経路(50)と、オフガス排出経路(50)に配置されてオフガス排出経路(50)を開閉する2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)とを備え、バキュームタンク(53)が2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)の間に配置され、循環用エジェクタポンプは第1吸引部(39a)と第2吸引部(39b)とを有し、オフガス循環経路(34)が第1吸引部(39a)に接続されるとともに、オフガス排出経路(50)が第2吸引部(39b)に接続されるようにしてもよい。
【0026】
請求項12に記載の発明では、流体式ポンプ(70)はエジェクタポンプであり、水素経路(30、34)から分岐してエジェクタポンプの吸引部(70a)に接続された吸引経路(71)を備え、水素経路(30、34)内の流体が吸引経路(71)および空気排出経路(21)を介して外部に排出されることを特徴とする。
【0027】
これによると、空気排出経路(すなわち、酸素極よりも下流側)は空気供給経路(すなわち、酸素極よりも上流側)よりも酸素が少ないため、吸引した流体中に含まれる水素成分と燃料電池から排出される空気とによって可燃状態が作り出される恐れはほとんどない。
【0028】
請求項13に記載の発明では、空気排出経路(21)は2つに分岐されており、この分岐された2つの空気排出経路(21)の一方にエジェクタポンプが配置されていることを特徴とする。
【0029】
これによると、エジェクタポンプを使用しないときには、エジェクタポンプが配置されていない空気排出経路から空気を排出することにより、排気損失を低減することができ、ひいては空気供給装置の負荷を低減することができる。
【0030】
請求項14に記載の発明のように、燃料電池(10)からの空気の流れを、分岐された2つの空気排出経路(21)の一方に切替え制御する三方切替弁(24)を、空気排出経路(21)の分岐部に配置することができる。
【0031】
請求項15に記載の発明のように、エジェクタポンプが発生した負圧を蓄えるバキュームタンク(74)と、吸引経路(71)に配置されて吸引経路(71)を開閉する2つの吸引経路開閉弁(72、73)とを備え、バキュームタンク(74)を2つの吸引経路開閉弁(72、73)の間に配置することはできる。
【0032】
請求項16に記載の発明のように、燃料電池(10)に供給された水素のうち化学反応に用いられなかった未反応水素を含んで燃料電池(10)から排出されるオフガスを水素供給経路(30)に合流させ、燃料電池(10)に再循環させるオフガス循環経路(34)を設けてもよい。
【0033】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1に基づいて説明する。第1実施形態の燃料電池システムは、燃料電池を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に適用したものである。
【0035】
図1は、第1実施形態の燃料電池システムの全体概略構成を示している。燃料電池(FCスタック)10は、燃料としての水素と酸化剤としての酸素との電気化学反応を利用して電力を発生するものである。第1実施形態では燃料電池10として固体高分子電解質型燃料電池を用いており、基本単位となるセルが複数積層されて構成されている。各セルは、電解質膜が一対の電極で挟まれた構成となっている。燃料電池10は、図示しない走行用モータや2次電池等の電気機器に電力を供給するように構成されている。燃料電池10では、水素および空気(酸素)が供給されることにより、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギが発生する。
(水素極側)H2→2H++2e-
(酸素極側)2H++1/2O2+2e-→H2
この電気化学反応により生成水が発生するともに、燃料電池10には加湿された水素、空気が供給され、燃料電池10内部で凝縮水が発生する。このため、燃料電池10内部には水分が存在する。
【0036】
燃料電池システムには、燃料電池10の酸素極(正極)側に空気(酸素)を供給するための空気供給経路20と、空気や生成水を燃料電池10から外部に排出するための空気排出経路21が設けられている。空気供給経路20の最上流部には、空気供給装置22が設けられ、第1実施形態では、空気供給装置22としてコンプレッサを用いている。なお、空気供給経路20と空気排出経路21は、本発明の空気経路を構成する。
【0037】
空気供給経路20は、空気供給装置22の下流側にて、第1空気供給経路20aと第2空気供給経路20bとに分岐された後、再び合流している。両空気供給経路20a、20bの分岐部には、空気供給装置22からの空気の流れを両空気供給経路20a、20bの一方に切替え制御する三方切替弁23が配置されている。
【0038】
第2空気供給経路20bには、第2空気供給経路20bを流通する空気のエネルギを動力源として作動して後述する水素経路内の流体を吸引する空気側エジェクタポンプ40が設けられている。因みに、空気側エジェクタポンプ40は、高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプ(JIS Z 8126 番号2.1.1.3)であり、本発明の流体式ポンプに相当する。
【0039】
また、燃料電池システムには、燃料電池10の水素極(負極)側に水素を供給するための水素供給経路30が設けられ、水素供給経路30の最上流部には水素供給装置31が設けられている。第1実施形態では、水素供給装置31として水素ガスが充填された高圧水素タンクを用いている。
【0040】
水素供給経路30には、水素供給装置31からの水素供給圧力を調整するためのレギュレータ32、および水素供給経路30を開閉する水素供給経路開閉弁33が設けられている。
【0041】
また、燃料電池10から排出される未反応水素を含んだオフガスを、水素供給装置31からの主供給水素に合流させて燃料電池10に再供給するためのオフガス循環経路34が設けられている。オフガス循環経路34は、燃料電池10の水素極出口側と水素供給経路30におけるレギュレータ32の下流側とを接続している。なお、水素供給経路30とオフガス循環経路34は、本発明の水素経路を構成する。
【0042】
オフガス循環経路34には、オフガス中に含まれる水分を分離除去するための気液分離器35が設けられ、この気液分離器35には、気液分離器35にて分離された水を外部に排出するための分離水排出弁36が設けられている。
【0043】
オフガス循環経路34内のオフガスを外部に排出するためのオフガス排出経路37がオフガス循環経路34から分岐して設けられ、このオフガス排出経路37にオフガス排出経路37を開閉するオフガス排出経路開閉弁38が設けられている。
【0044】
水素供給経路30におけるオフガス循環経路34の合流点には、オフガスを循環させるための循環用エジェクタポンプ39が設けられており、オフガス循環経路34は循環用エジェクタポンプ39の吸引部39aに接続されている。この循環用エジェクタポンプ39は、高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであり、具体的には、水素供給装置31から供給される主供給水素の流体エネルギを利用してオフガスを吸引して循環させるものである。
【0045】
水素供給経路30における循環用エジェクタポンプ39よりも下流側から吸引経路41が分岐しており、この吸引経路41は空気側エジェクタポンプ40の吸引部40aに接続されている。吸引経路41には、吸引経路41を開閉する吸引経路開閉弁42が配置されている。
【0046】
次に、上記構成の燃料電池システムの作動を説明する。
【0047】
(1)燃料電池システムの起動時の作動
燃料電池システムを起動する前に、まず、空気供給装置22から供給される空気が第2空気供給経路20bに流れるように、三方切替弁23を制御する。また、吸引経路開閉弁42を開弁させて、水素供給経路30と空気側エジェクタポンプ40との間を、吸引経路41を介して連通状態にする。一方、水素供給経路開閉弁33、オフガス排出経路開閉弁38、および分離水排出弁36は、いずれも閉弁させる。
【0048】
この状態において、空気供給装置22を作動させて空気の供給を開始すると、空気側エジェクタポンプ40は、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)を、吸引経路41を介して吸引する。吸引された流体は、燃料電池10の酸素極側を通過した後、空気排出経路21を介して外部に排出される。このとき、吸引された流体中の水素成分は、酸素極において触媒燃焼によって水になるため、安全な状態で排出される。
【0049】
次に、上記作動を実施後、燃料電池システムを起動する。三方切替弁23は、空気供給装置22から供給される空気が第1空気供給経路20aに流れるように制御される。また、吸引経路開閉弁42は閉弁され、水素供給装置31からの主供給水素が吸引経路41を介して空気供給経路20に流入するのが防止される。この後、水素供給経路開閉弁33を開弁させて、水素供給装置31から水素を燃料電池10に供給することにより、燃料電池10が発電を開始する。
【0050】
このように、燃料電池システムを起動する直前に燃料電池10の水素極内の不純物を除去できるため、その不純物による燃料電池10への悪影響を回避して、燃料電池10を確実に起動させることができる。
【0051】
また、吸引した水素経路内の流体を酸素極に導入するため、吸引した流体中に含まれる水蒸気成分(液滴を含む)によって燃料電池10の電解質膜を加湿することができ、さらに、吸引した流体中に含まれる水素成分の触媒反応に伴って発生する反応熱と水によって暖機および加湿を行うことができ、それらの相乗効果によって燃料電池10の起動性を向上させることができる。
【0052】
(2)燃料電池システムの停止時の作動
最初に水素供給経路開閉弁33を閉弁させて、水素供給装置31から燃料電池10への水素の供給を停止する。気温が低くて水分凍結の恐れがある環境下では、その後、空気供給装置22から供給される空気を第2空気供給経路20bに流すように三方切替弁23を制御する。また、吸引経路開閉弁42を開弁させ、オフガス排出経路開閉弁38および分離水排出弁36を閉弁させる。
【0053】
この状態において、空気側エジェクタポンプ40は、燃料電池10の水素極内の流体を吸引経路41を介して吸引する。吸引された流体は、燃料電池10の酸素極側を通過した後、空気排出経路21を介して外部に排出される。これにより、燃料電池10の酸素極内および水素極内の水分が除去される。この後、空気供給装置22を停止する。
【0054】
このように、燃料電池システムを停止する際に燃料電池10の酸素極内および水素極内の水分を除去しておくことにより、低温環境下に放置した場合の問題点、すなわち、水分凍結により各弁が作動不良を起こしたり、水分凍結により水素経路や空気経路が閉塞されたり、燃料電池10の電解質膜が凍結するという問題を回避して、低温環境下に放置後の起動性を向上させることができる。
【0055】
なお、燃料電池10の電解質膜が適度に湿っていた方が起動性がよいため、水分凍結の恐れがない環境下では、燃料電池システムを停止する際に燃料電池10の酸素極内および水素極内の水分を除去する作動を行わない方が望ましい。
【0056】
本実施形態によると、燃料電池10への水素供給量が少ないときや燃料電池10への水素供給が絶たれているときでも、水素経路内の流体を吸引することができるため、燃料電池10を安定的に作動させることができる。
【0057】
ところで、オフガスを再循環させるためのポンプ装置として機械式ポンプを用いることにより、燃料電池10への水素供給量が少ないときでも充分なオフガス循環量を確保して、水素経路内の流体を排出することが可能になるが、機械式ポンプを用いた場合は、特に低温時においては生成水の凍結により機械式ポンプが起動不能に陥る恐れがある。これに対し、本実施形態では、空気のエネルギを動力源として作動する空気側エジェクタポンプ40を用いているため、低温時に空気側エジェクタポンプ40が起動不能に陥ることはなく、低温環境下においても安定した燃料電池10の起動性を得ることができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図2に基づいて説明する。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、水素経路内の流体を吸引するための構成が異なるものである。なお、上記第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
本実施形態では、第1実施形態における、第2空気供給経路20b、三方切替弁23、空気側エジェクタポンプ40、オフガス排出経路37、オフガス排出経路開閉弁38、吸引経路41、および吸引経路開閉弁42が廃止されている。
【0060】
本実施形態は、図2に示すように、水素経路内の流体を外部に排出するためのオフガス排出経路50が循環用エジェクタポンプ39の第2吸引部39bに接続されており、このオフガス排出経路50にオフガス排出経路50を開閉する第1、第2オフガス排出経路開閉弁51、52が設けられ、両オフガス排出経路開閉弁51、52の間にバキュームタンク53が配置されている。このバキュームタンク53は、循環用エジェクタポンプ39が発生した負圧を蓄えるものである。なお、循環用エジェクタポンプ39は、本発明の流体式ポンプに相当する。
【0061】
さらに、オフガス循環経路34に、このオフガス循環経路34を開閉するオフガス循環経路開閉弁60が設けられている。なお、バキュームタンク53内の圧力およびオフガス循環経路34の圧力は、それぞれ図示しない圧力センサによって検出されるようになっている。
【0062】
次に、上記構成の燃料電池システムの作動を説明する。
【0063】
本実施形態の以下の説明においては、第1オフガス排出経路開閉弁51が閉弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が閉弁、オフガス循環経路開閉弁60が開弁している状態を、状態Aという。また、第1オフガス排出経路開閉弁51が開弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が閉弁、オフガス循環経路開閉弁60が閉弁している状態を、状態Bという。さらに、第1オフガス排出経路開閉弁51が開弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が閉弁、オフガス循環経路開閉弁60が開弁している状態を、状態Cという。さらにまた、第1オフガス排出経路開閉弁51が閉弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が開弁、オフガス循環経路開閉弁60が開弁している状態を、状態Dという。なお、水素供給経路開閉弁33は、燃料電池システムの運転中は常に開弁している。
【0064】
燃料電池システムの運転中、すなわち燃料電池10の起動状態において、バキュームタンク53内の圧力が所定の負圧よりも低い場合、上記した状態Aに各弁を制御する。このときには、オフガス循環経路開閉弁60が開弁していて、オフガス循環経路34が循環用エジェクタポンプ39の第1吸引部39aに接続された状態であるため、循環用エジェクタポンプ39が発生する負圧により、オフガス循環経路34を介してオフガスが吸引され、そのオフガスが水素供給経路30に循環される。オフガスが循環される際、オフガス中の水分が気液分離器35にて分離され、分離水排出弁36を開弁させることにより、分離された水分がオフガス循環経路34外に排出される。
【0065】
バキュームタンク53内の圧力が所定の負圧よりも高い場合、上記した状態Bに各弁を制御する。このときには、第1オフガス排出経路開閉弁51が開弁していて、バキュームタンク53が循環用エジェクタポンプ39の第2吸引部39bに接続された状態であるため、バキュームタンク53内は、循環用エジェクタポンプ39が発生する負圧により吸引される。この後、バキュームタンク53内の圧力が所定の負圧よりも低くなった場合、もしくは、燃料電池10への水素供給が停止される場合に、上記した状態Aに各弁を制御する。これにより、バキュームタンク53内に所定の負圧を蓄える。
【0066】
燃料電池システムの起動時には、起動する前に、上記した状態Bに各弁を制御する。これにより、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)が、バキュームタンク53内の負圧によりオフガス循環経路34を介して吸引される。バキュームタンク53内の圧力が安定した後、水素供給経路開閉弁33を開弁させて、水素供給装置31から水素を燃料電池10に供給することにより、燃料電池10が発電を開始する。このとき、上記した状態Cに各弁を制御する。
【0067】
そして、オフガス循環経路34内の圧力とバキュームタンク53内の圧力が平衡状態に達すると、上記した状態Dに各弁を制御する。オフガス循環経路34内の圧力は大気圧よりも高いレベルに設定されているため、バキュームタンク53内の圧力も大気圧より高くなっており、したがって、第2オフガス排出経路開閉弁52が開弁した状態Dにおいては、バキュームタンク53内の流体が大気中に放出される。
【0068】
状態Dにてバキュームタンク53内の流体を大気中に放出した後、状態Bから状態Aに各弁を制御して、バキュームタンク53内に再び負圧を蓄える。
【0069】
本実施形態によると、燃料電池システムを起動する直前に燃料電池10の水素極内の不純物を除去できるため、その不純物による燃料電池10への悪影響を回避して、燃料電池10を確実に起動させることができる。
【0070】
また、燃料電池10への水素供給量が少ないときや燃料電池10への水素供給が絶たれているときでも、水素経路内の流体を吸引することができるため、燃料電池10を安定的に作動させることができる。
【0071】
また、空気のエネルギを動力源として作動する循環用エジェクタポンプ39と、バキュームタンク53とを用いて、水素経路内の流体を吸引するため、低温時にそれらが起動不能に陥ることはなく、低温環境下においても安定した燃料電池10の起動性を得ることができる。
【0072】
また、バキュームタンク53内に予め蓄えた負圧により水素経路内の流体を吸引するため、すぐに流体の吸引を開始することができ、したがって、燃料電池10の起動性を一層向上させることができる。
【0073】
なお、本実施形態において、第2オフガス排出経路開閉弁52が配置された側のオフガス排出経路50、および第2オフガス排出経路開閉弁52を廃止してもよい。この場合、分離水排出弁36、第1オフガス排出経路開閉弁51、およびオフガス循環経路開閉弁60を、いずれも開弁状態にすることにより、バキュームタンク53内の流体が分離水排出弁36から大気中に放出される。
【0074】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図3に基づいて説明する。第3実施形態は、上記第2実施形態に対して、オフガス排出経路50の接続位置が異なるものである。なお、上記第2実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
本実施形態は、図3に示すように、オフガス排出経路50は、循環用エジェクタポンプ39とオフガス循環経路開閉弁60との間において、オフガス循環経路34に接続されている。
【0076】
そして、バキュームタンク53内に負圧を蓄える場合には、上記第2実施形態で述べた状態Bに各弁を制御することにより、循環用エジェクタポンプ39の第1吸引部39aに発生する負圧によりバキュームタンク53内が吸引される。
【0077】
本実施形態によると、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0078】
なお、本実施形態において、第2オフガス排出経路開閉弁52が配置された側のオフガス排出経路50、および第2オフガス排出経路開閉弁52を廃止してもよい。この場合、分離水排出弁36、第1オフガス排出経路開閉弁51、およびオフガス循環経路開閉弁60を、いずれも開弁状態にすることにより、バキュームタンク53内の流体が分離水排出弁36から大気中に放出される。
【0079】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図4に基づいて説明する。第4実施形態は、上記第3実施形態に対して、バキュームタンク53内に負圧を蓄えるための構成が異なるものである。なお、上記第3実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0080】
本実施形態は、図4に示すように、水素供給経路30における循環用エジェクタポンプ39の上流側に、負圧用エジェクタポンプ54が配置されている。この負圧用エジェクタポンプ54は、高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであり、具体的には、水素供給装置31から供給される主供給水素の流体エネルギを利用するものである。なお、負圧用エジェクタポンプ54は、本発明の流体式ポンプに相当する。
【0081】
負圧用エジェクタポンプ54の吸引部54aは、負圧供給経路55を介してバキュームタンク53に接続されている。また、負圧供給経路55は、負圧供給経路開閉弁56によって開閉されるようになっている。
【0082】
なお、本実施形態では、第3実施形態におけるオフガス循環経路開閉弁60が廃止されている。
【0083】
次に、上記構成の燃料電池システムの作動を説明する。
【0084】
本実施形態の以下の説明においては、第1オフガス排出経路開閉弁51が閉弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が閉弁、負圧供給経路開閉弁56が閉弁している状態を、状態1という。また、第1オフガス排出経路開閉弁51が開弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が閉弁、負圧供給経路開閉弁56が閉弁している状態を、状態2という。さらに、第1オフガス排出経路開閉弁51が閉弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が閉弁、負圧供給経路開閉弁56が開弁している状態を、状態3という。さらにまた、第1オフガス排出経路開閉弁51が閉弁、第2オフガス排出経路開閉弁52が開弁、負圧供給経路開閉弁56が閉弁している状態を、状態4という。なお、水素供給経路開閉弁33は、燃料電池システムの運転中は常に開弁している。
【0085】
燃料電池システムの運転中、すなわち燃料電池10の起動状態において、バキュームタンク53内の圧力が所定の負圧よりも低い場合、上記した状態1に各弁を制御する。このときには、循環用エジェクタポンプ39が発生する負圧により、オフガス循環経路34を介してオフガスが吸引され、そのオフガスが水素供給経路30に循環される。オフガスが循環される際、オフガス中の水分が気液分離器35にて分離され、分離水排出弁36を開弁させることにより、分離された水分がオフガス循環経路34外に排出される。
【0086】
バキュームタンク53内の圧力が所定の負圧よりも高い場合、上記した状態3に各弁を制御する。このときには、負圧供給経路開閉弁56が開弁していて、バキュームタンク53が負圧用エジェクタポンプ54の吸引部54aに接続された状態であるため、バキュームタンク53内は、負圧用エジェクタポンプ54が発生する負圧により吸引される。この後、バキュームタンク53内の圧力が所定の負圧よりも低くなった場合、もしくは、燃料電池10への水素供給が停止される場合に、上記した状態1に各弁を制御する。これにより、バキュームタンク53内に所定の負圧を蓄える。
【0087】
燃料電池システムの起動時には、上記した状態2に各弁を制御すると同時に、水素供給経路開閉弁33を開弁させる。これにより、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)が、バキュームタンク53内の負圧によりオフガス循環経路34を介して吸引されるとともに、水素供給装置31から燃料電池10へ水素が供給される。
【0088】
そして、オフガス循環経路34内の圧力とバキュームタンク53内の圧力が平衡状態に達すると、上記した状態4に各弁を制御する。オフガス循環経路34内の圧力は大気圧よりも高いレベルに設定されているため、バキュームタンク53内の圧力も大気圧より高くなっており、したがって、第2オフガス排出経路開閉弁52が開弁した状態4においては、バキュームタンク53内の流体が大気中に放出される。
【0089】
状態4にてバキュームタンク53内の流体を大気中に放出した後、状態3から状態1に各弁を制御して、バキュームタンク53内に再び負圧を蓄える。
【0090】
本実施形態によると、第3実施形態と同様の効果が得られる。また、一般的な燃料電池システムにおいては、水素供給装置31内の高圧水素をレギュレータ32にて減圧して循環用エジェクタポンプ39側に供給するようになっており、その減圧により多くのエネルギを無駄に消費していたが、本実施形態では、循環用エジェクタポンプ39よりも上流側に配置された負圧用エジェクタポンプ54によって、従来、減圧時に無駄に消費していたエネルギが有効利用される。
【0091】
なお、本実施形態において、第2オフガス排出経路開閉弁52が配置された側のオフガス排出経路50、および第2オフガス排出経路開閉弁52を廃止してもよい。この場合、分離水排出弁36および第1オフガス排出経路開閉弁51をともに開弁状態にすることにより、バキュームタンク53内の流体が分離水排出弁36から大気中に放出される。
【0092】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図5に基づいて説明する。第5実施形態は、上記第1実施形態に対して、水素経路内の流体を吸引するための構成が異なるものである。なお、上記第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
本実施形態では、第1実施形態における、第2空気供給経路20b、三方切替弁23、空気側エジェクタポンプ40、吸引経路41、および吸引経路開閉弁42が廃止されている。
【0094】
本実施形態は、図5に示すように、空気排出経路21には、空気排出経路21を流通する空気のエネルギを動力源として作動して水素経路内の流体を吸引する空気側エジェクタポンプ70が設けられている。因みに、空気側エジェクタポンプ70は、高速で噴出する作動流体の巻き込み作用によって流体輸送を行う運動量輸送式ポンプであり、本発明の流体式ポンプに相当する。
【0095】
オフガス循環経路34における気液分離器35よりも上流側から吸引経路71が分岐しており、この吸引経路71は空気側エジェクタポンプ70の吸引部70aに接続されている。吸引経路71には、吸引経路71を開閉する吸引経路開閉弁72が配置されている。
【0096】
次に、上記構成の燃料電池システムの作動を説明する。
【0097】
燃料電池システムを起動する前に、まず、吸引経路開閉弁72を開弁させて、オフガス循環経路34と空気側エジェクタポンプ70との間を、吸引経路71を介して連通状態にする。一方、水素供給経路開閉弁33、オフガス排出経路開閉弁38、および分離水排出弁36は、いずれも閉弁させる。
【0098】
この状態において、空気供給装置22を作動させて空気の供給を開始すると、空気側エジェクタポンプ70は、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)を、吸引経路71を介して吸引する。吸引された流体は、空気排出経路21を介して外部に排出される。この後、水素供給経路開閉弁33を開弁させて、水素供給装置31から水素を燃料電池10に供給することにより、燃料電池10が発電を開始する。
【0099】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、燃料電池システムを起動する際に、空気供給装置22の作動と同時に水素供給を開始した場合には、供給水素による押し出し作用と、両エジェクタポンプ39、70の吸引作用により、効率的に燃料電池10内の不純物を排出することができる。この場合、燃料電池10の起動確認と同時に吸引経路開閉弁72を閉弁させる。
【0100】
また、空気排出経路21(すなわち、酸素極よりも下流側)は空気供給経路20(すなわち、酸素極よりも上流側)よりも酸素が少ないため、吸引した流体中に含まれる水素成分と燃料電池10から排出される空気とによって可燃状態が作り出される恐れはほとんどない。
【0101】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図6に基づいて説明する。第6実施形態は、上記第5実施形態に対して、吸引経路71を開閉する第2吸引経路開閉弁73と、吸引経路71における第1、第2吸引経路開閉弁72、73の間に配置されたバキュームタンク74を、追加したものである。なお、上記第5実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0102】
燃料電池10の起動状態において、第1吸引経路開閉弁72を閉弁させ、第2吸引経路開閉弁73を開弁させることにより、空気側エジェクタポンプ70によりバキュームタンク74内を吸引し、バキュームタンク74内の圧力が所定の負圧よりも低くなった時点で第2吸引経路開閉弁73を閉弁させることにより、バキュームタンク74内に所定の負圧を蓄える。
【0103】
このようにしてバキュームタンク74内に蓄えられた負圧は、燃料電池10の起動時において、水素極内の不純物除去に利用される。この不純物除去は、次のようにして行われる。すなわち、第2吸引経路開閉弁73が閉弁している状態において第1吸引経路開閉弁72を開弁させることにより、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)が、バキュームタンク74内の負圧によりオフガス循環経路34を介して吸引される。
【0104】
その後、第1吸引経路開閉弁72が開弁し第2吸引経路開閉弁73が閉弁している状態で、水素供給および酸素供給を開始する。そして、バキュームタンク74内の圧力が安定した後、第1吸引経路開閉弁72を閉弁させ、第2吸引経路開閉弁73を開弁させることにより、バキュームタンク74内の流体は、空気側エジェクタポンプ70により吸引され空気排出経路21を介して外部に排出される。この状態において、バキュームタンク74内の圧力が所定の負圧よりも低くなった時点で第2吸引経路開閉弁73を閉弁させることにより、バキュームタンク74内に所定の負圧を蓄える。
【0105】
本実施形態によると、第5実施形態と同様の効果が得られる。また、バキュームタンク74内に予め蓄えた負圧により水素経路内の流体を吸引するため、すぐに流体の吸引を開始することができ、したがって、燃料電池10の起動性を一層向上させることができる。
【0106】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図7に基づいて説明する。第7実施形態は、上記第5実施形態に対して、水素経路内の流体を吸引するための構成が異なるものである。なお、上記第5実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0107】
本実施形態は、図7に示すように、空気排出経路21は、第1空気排出経路21aと第2空気排出経路21bとに分岐された後、再び合流している。両空気排出経路21a、21bの分岐部には、燃料電池10から排出された空気の流れを両空気排出経路21a、21bの一方に切替え制御する三方切替弁24が配置されている。そして、第2空気排出経路21bに、空気側エジェクタポンプ70が設けられている。
【0108】
燃料電池10を起動する際には、燃料電池10から排出された空気を第2空気排出経路21bに流すように三方切替弁24を制御し、吸引経路開閉弁72を開弁させ、空気供給装置22を作動させる。これにより、空気側エジェクタポンプ70は、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)を、吸引経路71を介して吸引する。吸引された流体は、空気排出経路21を介して外部に排出される。
【0109】
燃料電池10の起動後は、燃料電池10から排出された空気を第1空気排出経路21aに流すように三方切替弁24を制御し、吸引経路開閉弁72を閉弁させる。
【0110】
本実施形態によると、第5実施形態と同様の効果が得られる。また、燃料電池10の起動後は、燃料電池10からの空気を空気側エジェクタポンプ70を介さないで排出するため、排気損失が低減される。したがって、空気供給装置22が電動式である場合、空気供給装置22の負荷低減により省電力化を図ることができる。
【0111】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について図8に基づいて説明する。第8実施形態は、上記第7実施形態に対して、吸引経路71を開閉する第2吸引経路開閉弁73と、吸引経路71における第1、第2吸引経路開閉弁72、73の間に配置されたバキュームタンク74を、追加したものである。なお、上記第7実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0112】
燃料電池10の起動状態において、燃料電池10から排出された空気を第2空気排出経路21bに流すように三方切替弁24を制御し、第1吸引経路開閉弁72を閉弁させ、第2吸引経路開閉弁73を開弁させることにより、空気側エジェクタポンプ70によりバキュームタンク74内を吸引し、バキュームタンク74内の圧力が所定の負圧よりも低くなった時点で第2吸引経路開閉弁73を閉弁させることにより、バキュームタンク74内に所定の負圧を蓄える。
【0113】
そして、第2吸引経路開閉弁73が閉弁している状態において第1吸引経路開閉弁72を開弁させることにより、燃料電池10の水素極内の流体(液滴および残留ガス)が、バキュームタンク74内の負圧によりオフガス循環経路34を介して吸引される。
【0114】
その後、バキュームタンク74内の圧力が安定した後、第1吸引経路開閉弁72を閉弁させ、第2吸引経路開閉弁73を開弁させることにより、バキュームタンク74内の流体は、空気側エジェクタポンプ70により吸引され空気排出経路21を介して外部に排出される。
【0115】
本実施形態によると、第7実施形態と同様の効果が得られる。また、バキュームタンク74内に予め蓄えた負圧により水素経路内の流体を吸引するため、すぐに流体の吸引を開始することができ、したがって、燃料電池10の起動性を一層向上させることができる。
【0116】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、燃料電池10から排出されるオフガスを燃料電池10に再循環させるようにした、いわゆる循環式の燃料電池システムを示したが、オフガスの再循環を行わない、いわゆる閉塞式の燃料電池システムにも、本発明は適用することができる。
【0117】
また、本発明の燃料電池システムを車両に搭載する場合、エジェクタポンプの負圧を、車両のブレーキシステムに利用することができる。すなわち、走行用駆動源が電動機で、かつ負圧式のブレーキブースタを備える車両においては、ブレーキブースタに供給する負圧を得るために電動ポンプを用いているが、エジェクタポンプの負圧を利用してブレーキブースタを作動させるようにすれば、上記の電動ポンプの廃止によるブレーキシステムの簡素化、あるいは、上記の電動ポンプの省動力化による燃費向上の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】第2実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図3】第3実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図4】第4実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図5】第5実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図6】第6実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図7】第7実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図8】第8実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【符号の説明】
10…燃料電池、20…空気供給経路(空気経路)、
21…空気排出経路(空気経路)、22…空気供給装置、
30…水素供給経路(水素経路)、34…オフガス循環経路(水素経路)、
40…エジェクタポンプ(流体式ポンプ)。

Claims (16)

  1. 水素と酸素との化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、前記燃料電池(10)に水素を供給する水素供給装置(31)と、前記燃料電池(10)に供給される水素が流通する水素経路(30、34)と、前記燃料電池(10)に空気を供給する空気供給装置(22)と、前記燃料電池(10)に供給される空気が流通する空気経路(20、21)とを有する燃料電池システムにおいて、
    前記水素経路(30、34)または前記空気経路(20、21)を流通する流体のエネルギを動力源として作動して負圧を発生する流体式ポンプ(39、40、54、70)と、前記流体式ポンプ(39、40、54、70)が発生した負圧を蓄えるバキュームタンク(53、74)とを備え、前記バキュームタンク(53、74)に蓄えた負圧により前記水素経路(30、34)内の流体を吸引することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記空気経路(20、21)は、前記空気供給装置(22)から前記燃料電池(10)に空気を導く空気供給経路(20)と、前記燃料電池(10)から外部に空気を排出する空気排出経路(21)とを有し、
    前記流体式ポンプ(70)は、前記空気排出経路(21)を流通する空気のエネルギを動力源として作動することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 水素と酸素との化学反応により電気エネルギを発生させる燃料電池(10)と、前記燃料電池(10)に水素を供給する水素供給装置(31)と、前記燃料電池(10)に供給される水素が流通する水素経路(30、34)と、前記燃料電池(10)に空気を供給する空気供給装置(22)と、前記燃料電池(10)に供給される空気が流通する空気経路(20、21)とを有する燃料電池システムにおいて、
    前記空気経路(20、21)を流通する空気のエネルギを動力源として作動して前記水素経路(30、34)内の流体を吸引するエジェクタポンプ(40)を備え、
    前記空気経路(20、21)は、前記空気供給装置(22)から前記燃料電池(10)に空気を導く空気供給経路(20)と、前記燃料電池(10)から外部に空気を排出する空気排出経路(21)とを有し、
    前記空気供給経路(20)は2つに分岐されており、この分岐された2つの前記空気供給経路(20)の一方に前記エジェクタポンプが配置されていることを特徴とする料電池システム。
  4. 前記水素経路(30、34)から分岐して前記エジェクタポンプの吸引部(40a)に接続された吸引経路(41)を備えることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 前記吸引経路(41)を開閉する吸引経路開閉弁(42)が、前記吸引経路(41)に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
  6. 前記空気供給装置(22)からの空気の流れを、分岐された2つの前記空気供給経路(20)の一方に切替え制御する三方切替弁(23)が、前記空気供給経路(20)の分岐部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
  7. 前記水素経路(30、34)は、前記水素供給装置(31)から前記燃料電池(10)に水素を導く水素供給経路(30)と、前記燃料電池(10)に供給された水素のうち前記化学反応に用いられなかった未反応水素を含んで前記燃料電池(10)から排出されるオフガスを前記水素供給経路(30)に合流させ、前記燃料電池(10)に再循環させるオフガス循環経路(34)とを有し、
    前記オフガス循環経路(34)から分岐されて、前記水素経路(30、34)内の流体を外部に排出するオフガス排出経路(50)と、
    前記オフガス排出経路(50)に配置されて前記オフガス排出経路(50)を開閉する2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)とを備え、
    前記バキュームタンク(53)が2つの前記オフガス排出経路開閉弁(51、52)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  8. 前記流体式ポンプ(39)は、前記水素供給経路(30)に配置されて前記オフガスを前記オフガス循環経路(34)に循環させるとともに、前記水素供給装置(31)から供給される水素に前記オフガスを混合して前記燃料電池(10)に供給する循環用エジェクタポンプであり、
    前記オフガス排出経路(50)および前記オフガス循環経路(34)が、前記循環用エジェクタポンプの吸引部(39a)に切替え接続可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
  9. 前記オフガス循環経路(34)における前記オフガス循環経路(34)と前記オフガス排出経路(50)との分岐部よりも上流側に配置されて、前記オフガス循環経路(34)を開閉するオフガス循環経路開閉弁(60)を備え、
    2つの前記オフガス排出経路開閉弁(51、52)のうち前記バキュームタンク(53)よりも上流側に配置されたオフガス排出経路開閉弁(51)と前記オフガス循環経路開閉弁(60)との切替え制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
  10. 前記水素供給経路(30)に配置されて前記オフガスを前記オフガス循環経路(34)に循環させるとともに、前記水素供給装置(31)から供給される水素に前記オフガスを混合して前記燃料電池(10)に供給する循環用エジェクタポンプを備え、
    前記流体式ポンプ(54)は、前記水素供給経路(30)において前記循環用エジェクタポンプよりも上流側に配置されたエジェクタポンプであることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システム。
  11. 前記水素経路(30、34)は、前記水素供給装置(31)から前記燃料電池(10)に水素を導く水素供給経路(30)と、前記燃料電池(10)に供給された水素のうち前記化学反応に用いられなかった未反応水素を含んで前記燃料電池(10)から排出されるオフガスを前記水素供給経路(30)に合流させ、前記燃料電池(10)に再循環させるオフガス循環経路(34)とを有し、
    前記流体式ポンプ(39)は、前記水素供給経路(30)に配置されて前記オフガスを前記オフガス循環経路(34)に循環させるとともに、前記水素供給装置(31)から供給される水素に前記オフガスを混合して前記燃料電池(10)に供給する循環用エジェクタポンプであり、
    前記水素経路(30、34)内の流体を外部に排出するオフガス排出経路(50)と、前記オフガス排出経路(50)に配置されて前記オフガス排出経路(50)を開閉する2つのオフガス排出経路開閉弁(51、52)とを備え、
    前記バキュームタンク(53)が2つの前記オフガス排出経路開閉弁(51、52)の間に配置され、
    前記循環用エジェクタポンプは第1吸引部(39a)と第2吸引部(39b)とを有し、前記オフガス循環経路(34)が前記第1吸引部(39a)に接続されるとともに、前記オフガス排出経路(50)が前記第2吸引部(39b)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  12. 前記流体式ポンプ(70)はエジェクタポンプであり、
    前記水素経路(30、34)から分岐して前記エジェクタポンプの吸引部(70a)に接続された吸引経路(71)を備え、
    前記水素経路(30、34)内の流体が前記吸引経路(71)および前記空気排出経路(21)を介して外部に排出されることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
  13. 前記空気排出経路(21)は2つに分岐されており、この分岐された2つの前記空気排出経路(21)の一方に前記エジェクタポンプが配置されていることを特徴とする請求項12に記載の燃料電池システム。
  14. 前記燃料電池(10)からの空気の流れを、分岐された2つの前記空気排出経路(21)の一方に切替え制御する三方切替弁(24)が、前記空気排出経路(21)の分岐部に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の燃料電池システム。
  15. 前記エジェクタポンプが発生した負圧を蓄えるバキュームタンク(74)と、前記吸引経路(71)に配置されて前記吸引経路(71)を開閉する2つの吸引経路開閉弁(72、73)とを備え、
    前記バキュームタンク(74)が2つの前記吸引経路開閉弁(72、73)の間に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の燃料電池システム。
  16. 前記燃料電池(10)に供給された水素のうち前記化学反応に用いられなかった未反応水素を含んで前記燃料電池(10)から排出されるオフガスを前記水素供給経路(30)に合流させ、前記燃料電池(10)に再循環させるオフガス循環経路(34)を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
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