JP4048760B2 - ヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂、製造方法及び用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂、その製造方法、前記のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂を含有する熱硬化性組成物及びその用途に関する。さらに詳しく言えば、本発明は、良好な化学性能、物理性能及び耐候性を有すると共に、特に貯蔵安定性に優れた新規なヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂、その製造方法、前記のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂を含有する熱硬化性組成物とその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カルボキシル基を有する化合物と、該カルボキシル基と加熱により化学結合を形成しうる反応性官能基、例えば、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基等を有する化合物との組み合わせからなる熱硬化性組成物は知られている。
同様に、ヒドロキシル基を有する化合物と、該ヒドロキシル基と加熱により化学結合を形成しうる反応性官能基、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基等を有する化合物との組み合わせからなる熱硬化性組成物も知られている。
これらの熱硬化性組成物は、得られる硬化物の化学性能、物理性能さらには耐候性などが優れていることから、例えば、塗料、インク、接着剤、プラスチック成型品、封止剤あるいは感光性レジストなどの分野において広く利用されている。
しかしながら、カルボキシル基及びヒドロキシル基は前記反応性官能基とは反応性が高いため、カルボキシル基含有化合物及びヒドロキシル基含有化合物と該反応性官能基を含有する化合物とが共存する組成物においては、貯蔵中にゲル化を起こしたり、可使時間が短くなるなどその安定性が問題となる。
本発明者らは、先にヒドロキシ酸のカルボキシル基とヒドロキシル基を単官能性ビニルエーテル等でブロック化した潜在化ヒドロキシ酸誘導体及びそれを含有する熱硬化性組成物、熱硬化性組成物を硬化してなる樹脂を提案している。
前記化合物は比較的低い温度において遊離カルボキシル基及び遊離ヒドロキシル基を再生し、良好な化学性能、物理性能を有する硬化物を与えるが、この際にブロック化剤である単官能性ビニルエーテルの一部が硬化物中の反応性基にトラップされずに系外へ揮散する。このブロック化剤の外部への排出は、単官能性ビニルエーテル化合物自体の毒性は極めて低く安全であるものの、省資源及び熱硬化性組成物の有効成分の低下といった観点からは必ずしも好ましくなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、比較的低い温度において、化学性能、物理性能、さらには耐候性などに優れる硬化物を与えると共に、かつ良好な貯蔵安定性を有し、高固形分1液型あるいは粉体型として利用可能な、有機溶剤および樹脂との相溶性に優れた熱硬化性組成物を構成するヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、前記の新規ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造方法を提供することにある。
またさらに、本発明の第3の目的は、前記の新規ヒドロキシ酸へミアセタールエステル樹脂を用いた熱硬化性組成物を提供することにある。
また、本発明の第4の目的は、前記の新規ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂を用いた有機溶剤および樹脂との相溶性に優れた熱硬化性組成物を硬化してなる用途を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する熱硬化性組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の1分子あたりカルボキシル基1個と水酸基1個を有するヒドロキシ酸を2官能性のジビニルエーテル化合物と反応させ、該カルボキシル基と該ヒドロキシル基を反応させてなるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂を得て、さらに、前記の樹脂成分と、前記の反応したカルボキシル基及び反応したヒドロキシル基と化学結合を形成しうる反応性官能基2個以上を有する化合物とを必須成分とする熱硬化性組成物が、その目的を達成しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[16]である。
[1]下記式(8)
【化1】
(式中のR 1 は2価の有機基である。)
で表される、1分子あたりカルボキシル基1個と水酸基1個を有するヒドロキシ酸と、下記式(9)
【化2】
(式中のR 2 は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。)
で表される、ジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物とを反応させてなることを特徴とする重量平均分子量500〜100,000のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂。
[2]下記式(1)で表される基を繰り返し単位として有する前記[1]に記載のヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂。
【0006】
【化3】
【0007】
(式中のR1、R2は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。)
[3] 下記式(2)で表される前記[1]または[2]に記載のヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂。
【0008】
【化4】
【0009】
(式中のR1、R2は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。n=1〜400、Z1はヒドロキシ酸由来の残基、ジビニルエーテル化合物由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基、Z2は水素原子、ジビニルエーテル化合物由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基である。)
[4]前記の[1]に記載の式(8)で表される、1分子あたりカルボキシル基1個と水酸基1個を有するヒドロキシ酸を原料として、これと前記の[1]に記載の式(9)で表される、ジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物とを反応させることを特徴とするヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造方法。
[5]前記の反応において、触媒として酸触媒を使用する前記[4]に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造方法。
[6]A成分:前記[1]〜[3]に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂と、B成分:カルボキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物とを、含有してなることを特徴とする熱硬化性組成物。
[7]A成分;前記[1]〜[3]に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂5〜95重量部と、B成分;カルボキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物5〜95重量部とを、含有してなる前記[6]に記載の熱硬化性組成物。
【0010】
[8]さらに、C成分:酸触媒とを、含有してなることを特徴とする熱硬化性組成物。
[9]A成分;前記[1]〜[3]に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂5〜95重量部と、B成分;エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物5〜95重量部と、C成分;酸触媒0.01〜10重量部とを、含有してなることを特徴とする請求項8に記載の熱硬化性組成物。
[10]C成分の酸触媒が、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒である前記[8]、[9]に記載の熱硬化性組成物。
[11]C成分の酸触媒にさらに光の照射により酸を発生する化合物を含有する前記[8]、[9]、[10]に記載の熱硬化性組成物。
【0011】
[12]さらに、D成分:塩基性触媒とを含有してなる前記[6]に記載の熱硬化性組成物。
[13]A成分;前記[1]に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂5〜95重量部と、B成分;カルボキシル基及び水酸基と化学結合を形成しうる反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物5〜95重量部と、さらに、D成分;塩基触媒0.01〜10重量部とを、含有してなる前記[12]に記載の熱硬化性組成物。
【0012】
[14]D成分の塩基触媒が、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性塩基触媒である前記[12]または[13]に記載の熱硬化性組成物。
[15]D成分の塩基触媒にさらに、光の照射により塩基を発生する化合物(触媒)を含有する前記[12]、[13]、[14]に記載の熱硬化性組成物。
【0013】
[16]前記の[6]〜[15]のいずれかに記載の熱硬化性組成物を硬化してなる樹脂。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、1分子あたりカルボキシル基1個と水酸基1個を有するヒドロキシ酸とジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物とを反応させてなる重量平均分子量500〜100,000の樹脂であることを特徴とする。
前記の構造としては、下記式(1)で表される基を繰り返し単位として有する樹脂である。ここで、式中の[ ]内で示される基のヒドロキシ酸由来の部分の繰り返す結合方式は、ヘッド−ヘッド型の結合でもよく、またヘッド−テール型の結合でもよい。ここでは便宜上、式中の[ ]で示される基の繰り返しとしてnで表す。
【0015】
【化5】
【0016】
(式中のR1、R2は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。)
【0017】
ここで、式中のR1、R2は2価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜25の2価の有機基がであり、さらに好ましくは炭素数2〜20の2価の有機基であり、特に好ましくは炭素数6〜20の2価の有機基である。
式(1)のR1、R2の炭素数が26以上であると原料が入手しにくい等の問題がある。
【0018】
また、前記のヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂は、下記式(2)で示される。
【0019】
【化6】
【0020】
(式中のR1、R2は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。n=1〜400、Z1はヒドロキシ酸由来の残基、ジビニルエーテル化合物由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基、Z2は水素原子またはジビニルエーテル由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基である。)
ここでnは1〜400である。nが400を越える場合は、樹脂の分子量が大きくなり合成しにくくなるので好ましくない。
また、Z1はヒドロキシ酸由来の残基、ジビニルエーテル化合物由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基である。ここで、例えば、ヒドロキシ酸由来の残基の構造としては、ヒドロキシ酸のカルボキシル基または、ヒドロキシル基の片方がビニル基と結合している残基が挙げられる。またさらに、ジビニルエーテル化合物由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基の構造として、ジビニルエーテルの片方のビニルエーテル基がヒドロキシ基と反応して他方のビニルエーテル基が未反応である構造、あるいはジビニルチオエーテルの片方のビニルチオエーテル基がヒドロキシ基と反応して他方のビニルチオエーテル基が未反応である構造を挙げることができる。ここで、Z1を次式で示す。
【0021】
【化7】
【0022】
またさらに、Z2は水素原子、ジビニルエーテル化合物由来の残基またはジビニルチオエーテル化合物由来の残基である。ここで、例えばその構造としてジビニルエーテルの片方のビニルエーテル基がカルボン酸と反応して他方のビニルエーテル基が未反応である構造、ジビニルチオエーテルの片方のビニルチオエーテル基がカルボン酸と反応して他方のビニルチオエーテル基が未反応である構造を挙げることができる。ここで、Z2を次式で示す。
【0023】
【化8】
【0024】
ここで、前記の式(3)〜(7)において、R1、R2およびYは前記と同じである。
前記のように、得られたヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、各種末端基を示すが、酸価が0.1〜20mgKOH/g、より好ましくは1〜10mgKOH/g、水酸基価が0.1〜20mgKOH/g、より好ましくは1〜10mgKOH/gの樹脂が得られる。
【0025】
次に本発明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造方法について説明する。本発明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、1分子あたりカルボキシル基1個とヒドロキシル基1個を有するヒドロキシ酸と、ジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物を用いる次の方法により製造することができる。
すなわち、下記式(8)
【0026】
【化9】
【0027】
(式中のR1は2価の有機基である。)で表わされる、1分子あたりカルボキシル基1個とヒドロキシル基1個を有するヒドロキシ酸を原料として、これと下記式(9)
【0028】
【化10】
【0029】
(式中のR2は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。)で表わされるジビニルエーテル化合物、あるいはジビニルチオエーテル化合物を、場合により用いられる酸触媒の存在下、好ましくは室温ないし200℃の温度で反応させることにより、該カルボキシル基と該ヒドロキシル基が反応したヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂が得られる。ここで、前記のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、前記の式(1)で表される基を含んでいればよい。
【0030】
前記原料としての1分子あたり1個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基を有するヒドロキシ酸化合物は、具体的には例えば、グルコン酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベンジル酸、マンデル酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、トレオニン、セリン、2−ヒドロキシフェノキシ酢酸、3−ヒドロキシフェノキシ酢酸、4−ヒドロキシフェノキシ酢酸、2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、2−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、3−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸等の脂肪族ヒドロキシ酸が挙げられる。
【0031】
さらに、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ジクロロ−2−ヒドロキシ安息香酸、ジクロロ−3−ヒドロキシ安息香酸、ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、テトラクロロ−2−ヒドロキシ安息香酸、テトラクロロ−3−ヒドロキシ安息香酸、テトラクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、ジブロモ−2−ヒドロキシ安息香酸、ジブロモ−3−ヒドロキシ安息香酸、ジブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、テトラブロモ−2−ヒドロキシ安息香酸、テトラブロモ−3−ヒドロキシ安息香酸、テトラブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−メチル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−エチル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−エチル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−エチル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−エチル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−プロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−プロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−プロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−プロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−イソプロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−イソプロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−イソプロピル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−ブチル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−ブチル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ブチル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ブチル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−メトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−3−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ニトロ安息香酸、2−ヒドロキシ−3−アセチル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−アセチル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−アセチル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−アセチル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−ホルミル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−ホルミル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ホルミル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ホルミル安息香酸、2−ヒドロキシ−3−ビニル安息香酸、2−ヒドロキシ−4−ビニル安息香酸、2−ヒドロキシ−5−ビニル安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ビニル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−メチル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−エチル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−メエチル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−エチル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−エチル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−プロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−プロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−プロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−プロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−イソプロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−イソプロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−イソプロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−イソプロピル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ブチル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−ブチル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−ブチル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−ブチル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−メトキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−6−メトキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ニトロ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸、3−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸、3−ヒドロキシ−6−ニトロ安息香酸、3−ヒドロキシ−2−アセチル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−アセチル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−アセチル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−アセチル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ホルミル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−ホルミル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−ホルミル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−ホルミル安息香酸、3−ヒドロキシ−2−ビニル安息香酸、3−ヒドロキシ−4−ビニル安息香酸、3−ヒドロキシ−5−ビニル安息香酸、3−ヒドロキシ−6−ビニル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−エチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−エチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−プロピル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−プロピル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−イソプロピル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−イソプロピル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−ブチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−ブチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−メトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−2−ニトロ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−ニトロ安息香酸、4−ヒドロキシ−2−アセチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−アセチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−ホルミル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−ホルミル安息香酸、4−ヒドロキシ−2−ビニル安息香酸、4−ヒドロキシ−3−ビニル安息香酸、4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3,6−ジメチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2,5−ジメチル安息香酸、4−ヒドロキシ−2,6−ジメトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3,6−ジメトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−2,5−ジメトキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、3−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、4−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、5−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、6−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、7−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、8−ヒドロキシ−ナフタレン−1−カルボン酸、1−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸、4−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸、6−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸、7−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸、8−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸などが挙げられる。
【0032】
さらに、2−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシケイ皮酸、4−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシピコリン酸、4−ヒドロキシピコリン酸、5−ヒドロキシピコリン酸、6−ヒドロキシピコリン酸、2−ヒドロキシイソニコチン酸、3−ヒドロキシイソニコチン酸、2−ヒドロキシニコチン酸、4−ヒドロキシニコチン酸、5−ヒドロキシニコチン酸、6−ヒドロキシニコチン酸、3−ヒドロキシキナルジン酸、4−ヒドロキシキナルジン酸、5−ヒドロキシキナルジン酸、6−ヒドロキシキナルジン酸、7−ヒドロキシキナルジン酸、8−ヒドロキシキナルジン酸、3−ヒドロキシピラジンモノカルボン酸、5−ヒドロキシピラジンモノカルボン酸、6−ヒドロキシピラジンモノカルボン酸などが挙げられる。これらのヒドロキシ酸の中でも、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、о−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)は、入手性及び得られるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の溶剤に対する溶解性、樹脂に対する相溶性、さらには、樹脂への配合した場合の物性値等から好ましく挙げられる。
【0033】
前記式(9)で表される化合物としては、脂肪族ジビニルエーテル、脂肪族ジビニルチオエーテル、芳香族ジビニルエーテル、芳香族ジビニルチオエーテルが挙げられ、具体的には例えば、トリメチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ビスビニルオキシメチルシクロヘキセン、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、及びこれらの対応するジビニルチオエーテルなどが挙げられる。
【0034】
前記の脂肪族ジビニルエーテル、脂肪族ジビニルチオエーテル、芳香族ジビニルエーテル、芳香族ジビニルチオエーテルの中でも、脂肪族ジビニルエーテルが入手性及びヒドロキシ酸との反応性の点から好ましく挙げられる。
【0035】
本発明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、前記のようにヒドロキシ酸化合物と前記のジビニルエーテルもしくはジビニルチオエーテル化合物とを室温ないし200℃の範囲の温度、好ましくは50〜150℃の範囲の温度で反応することにより得ることができるが、この際、反応を促進させる目的で、酸触媒を使用することができる。そのような触媒としては、例えば、下記の式(10)
【0036】
【化11】
【0037】
(式中のR3は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基、mは1又は2である。)で表される酸性リン酸エステルが挙げられる。より具体的には、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の第一級アルコール類、及びイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノール等の第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0038】
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒も使用することができる。そのような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステル及びエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
これらの溶媒量としては、特に限定されないが、原料であるヒドロキシ酸とジビニルエーテル化合物との合計量100重量部に対して、5〜95重量部、より好ましくは20〜80重量部が挙げられる。
【0039】
さらに、本発明の熱硬化性組成物は、A成分として前記の式(1)で表されるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂と、B成分として前記式(1)で表されるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂と反応する基を2個以上有する化合物とを用いる。
本発明の必須成分である前記A成分のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、前記式(1)で表される繰り返し単位の1種のみを有するものでもよいし、2種以上を有するものでもよく、また前記式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
本発明で使用されるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂に含有されるその他の繰り返し単位としては、例えばポリエステル樹脂を構成する繰り返し単位、ウレタン樹脂を構成する繰り返し単位などが挙げられる。
当該ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、通常500〜100,000の範囲のものであり、好ましくは900〜50,000の範囲のものである。
また、本発明で使用されるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂はそのままで、もしくは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂等の汎用熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる
また、B成分としては、前記のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂と反応する基を2個以上有する化合物は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
前記のB成分の配合量は、目的とする樹脂の物性や配合するB成分の物性にもよるが、前記のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂100重量部に対して、5〜95重量部、好ましくは、20〜80重量部である。
【0040】
本発明に用いるB成分の化合物としては、式(1)で表される前記A成分が加熱により遊離カルボキシル基並びに遊離ヒドロキシル基を再生した際、これと反応して化学結合を形成しうる反応性官能基2個以上、好ましくは2〜50個を1分子中に有するものが挙げられる。
該反応性官能基については、ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する性質を有するものであればよく、特に制限はないが、例えば、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基などが好ましく挙げられる。B成分中には、これらの反応性官能基は、1種含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0041】
このようなB成分の化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、、脂環式エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの単独重合体又は共重合体、ポリカルボン酸あるいはポリオールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジル化合物などのエポキシ基含有化合物が挙げられる。
さらに、式(11)
【0042】
【化12】
【0043】
(式中のR4及びR5は、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基、kは0、1又は2である。)で表される化合物の縮合体が挙げられる。
またさらに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリ−n−ブトキシシランなどのα,β−不飽和シラン化合物の単独重合体又は共重合体、及びこれらの化合物の加水分解生成物などのシラノール基やアルコキシシラン基含有化合物;脂肪族ポリオール類、フェノール類、ポリアルキレンオキシグリコール類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのα,β−不飽和化合物の単独重合体又は共重合体、及びこれらのポリオール類のε−カプロラクトン付加物などのヒドロキシル基含有化合物;脂肪族、芳香族のジアミノ化合物やポリアミノ化合物及び前記ポリオールのシアノエチル化反応生成物を還元して得られるポリアミノ化合物などのアミノ基含有化合物;脂肪族、芳香族ポリイミノ化合物などのイミノ基含有化合物;p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、リジンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)フマレート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート及びこれらのビュレット体やイソシアヌレート体、さらにはこれらのイソシアネート類と前記ポリオールとのアダクト化合物などのイソシアネート基含有化合物;前記イソシアネート基含有化合物のフェノール類、ラクタム類、活性メチレン類、アルコール類、酸アミド類、イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類、イミン類、オキシム類によるブロック体などのブロック化イソシアネート基含有化合物;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピレンカーボネートの単独重合体又は共重合体、前記エポキシ基含有化合物と二酸化炭素との反応により得られる多価シクロカーボネート基含有化合物などのシクロカーボネート基含有化合物;前記多価ヒドロキシル基含有化合物とハロゲン化アルキルビニルエーテル類との反応によって得られる多価ビニルエーテル化合物、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類と多価カルボキシル基含有化合物や前記ポリイソシアネート化合物との反応により得られるポリビニルエーテル化合物、ビニルオキシアルキル(メタ)アクリレート類とα,β−不飽和化合物との共重合体などのビニルエーテル化合物、及びこれらに対応するビニルチオエーテル化合物などのビニルエーテル基やビニルチオエーテル基含有化合物;メラミンホルムアルデヒド樹脂、グリコリルホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アミノメチロール基やアルキル化アミノメチロール基含有α,β−不飽和化合物の単独重合体又は共重合体などのアミノメチロール基やアルキル化アミノメチロール基含有化合物;多価ケトン、多価アルデヒド化合物、前記多価ビニルエーテル化合物などとアルコール類やオルソ酸エステル類との反応によって得られる多価アセタール化合物、及びこれらとポリオール化合物との縮合体、さらには前記ビニルオキシアルキル(メタ)アクリレートとアルコール類やオルソ酸エステルとの付加物の単独重合体又は共重合体などのアセタール基やケタール基含有化合物などが挙げられる。
【0044】
本発明の熱硬化性組成物においては、B成分の化合物として、1種の反応性官能基を有する前記化合物の他に、前記の反応性官能基を2種以上を有する化合物を用いてもよい。また、該B成分は、1種単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。ただし、この際、それぞれの官能基が互いに活性である組み合わせは、貯蔵安定性が損なわれるので好ましくない。
このような好ましくない組み合わせとしては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル、シクロカーボネ−ト基及びシラノ−ル基の中から選ばれる官能基とアミノ基またはイミノ基との組み合わせ、イソシアネ−ト基またはビニルエーテル基とヒドロキシル基との組み合わせなどが挙げられる。
【0045】
本発明の熱硬化性組成物のA成分のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、加熱下において、遊離カルボキシル基並びに遊離ヒドロキシル基を再生し、B成分の反応性官能基と化学結合を形成するものである。この反応の他に、さらに分子内分極構造に基づく、いわゆる活性エステルとしてB成分の反応性官能基に付加反応を起こし得る。この際には、架橋反応時に脱離反応を伴わないため、揮発性有機物質の排出低減にも貢献することができる。
【0046】
前記のA成分とB成分の混合比については、A成分が加熱下において生じる遊離カルボキシル基と遊離ヒドロキシル基と、これらの官能基と加熱により化学結合するB成分の官能基とが当量比0.1:0.9〜0.9:0.1の割合になるように各成分を含有することが好ましい。前記のA成分とB成分の当量比が範囲外であると、熱硬化が不十分となり、得られる硬化物および成型品の機械特性値が低下する恐れがあり、好ましくない。
本発明組成物においては、前記のA成分の化合物は1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよいし、また前記のB成分の化合物は1種類用いてもよいし、2種類以上を組合わせてもよい。
【0047】
本発明においては、これらの組成物に、場合により該組成物の長期にわたる貯蔵安定性を良好に保ち、かつ低温にて短時間で硬化する際に、硬化反応を促進し、硬化物に良好な化学性能及び物理性能を付与する目的で、C成分として加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒を含有させることができる。
この熱潜在性酸触媒は、60℃以上の温度において、酸触媒活性を示す化合物が望ましい。この熱潜在性酸触媒が60℃未満の温度で酸触媒活性を示す場合、得られる組成物は貯蔵中に増粘したり、ゲル化するなど、好ましくない事態を招来する恐れがある。該C成分の熱潜在性酸触媒としては、プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、及びオニウム化合物類が好ましく挙げられる。
【0048】
該プロトン酸をルイス酸で中和した化合物としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類、等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロへキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエチノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミンもしくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには、酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュアー2500X、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)などが挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。あるいは上記ルイス酸とトリアルキルホスフェートとの混合物も挙げられる。該スルホン酸エステル類としては、例えば式(12)
【0049】
【化13】
【0050】
(式中のR6はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基またはアルキル基、R7は一級炭素又は二級炭素を介してスルホニルオキシ基と結合している炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキルまたはヒドロキシシクロアルキル基である)で表される化合物が挙げられる。
前記の化合物としては、具体的には例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類とn−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ルなどの第一級アルコール類又はイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類とのエステル化物、さらには前記スルホン酸類とオキシラン基含有化合物との反応により得られるβ‐ヒドロキシアルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。
該リン酸エステル類としては、例えば下記式(13)
【0051】
【化14】
【0052】
(式中のR8は、炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基、Sは1又は2である)で表される化合物が挙げられる。
前記の化合物としては、具体的には例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ル、といった第一級アルコール類、及びイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノールといった第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0053】
また該オニウム化合物としては、例えば一般式(14)〜(17)
[ R9 3NR10 ]+ X- ・・・・・ (14)
[ R11 3PR12]+ X- ・・・・・ (15)
[ R13 2OR14]+ X- ・・・・・ (16)
[ R15 2SR16]+ X- ・・・・・ (17)
(式中のR9、R11、R13、R15は炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基またはシクロアルキル基であって、2個のR9、R11、R13、R15は互いに結合してN、P、O又はSをヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、R10、R12、R14、R16は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、X-はSbF6 -、AsF6 -、PF6 -又はBF4 -である)で表される化合物などが挙げられる。
【0054】
本発明組成物において、C成分の熱潜在性酸触媒は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよく、またその配合量はA成分とB成分の総固形分量100重量部あたり、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。熱潜在性酸触媒の量が0.01重量%未満では触媒効果が十分に発揮されないし、10重量%を超える場合には、最終的に得られる硬化物が着色したり、耐水性が低下することがあり、好ましくない。
【0055】
前記のC成分の他にさらに、光の照射により酸を発生する触媒の化合物を配合してもよい。光により酸を発生する触媒を配合した場合、ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂が分解し、元のヒドロキシ酸とジビニルエーテルを再生することから、露光後、アルカリ水溶液、あるいは有機溶剤などの現像液を用いて現像できる特徴が付与できる。前記の光の照射により酸を発生する触媒化合物としては、例えばアリールジアゾニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、2,6−ジニトロベンジル−p−トルエンスルフォネート、α−p−トルエンスルフォニルオキシアセトフェノンなどがある。市販品のスルフォニウム塩としては、例えばサンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L(いずれも商品名、三新化学工業(株)社製)などが使用し得る。
これらの光の照射により酸を発生する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせてもよい。その添加量は、本発明のヒドロキシ酸へミアセタールエステル誘導体を含有する熱硬化性組成物の総固形分に対し、0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。添加量が0.01重量%未満では触媒効果が充分に発揮されないし、30重量%を超える場合には、添加量に見合うだけの著しい増量効果が期待できない。
【0056】
本発明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、加熱下において、遊離カルボキシル基と遊離ヒドロキシル基を再生し、B成分の反応性官能基と化学結合を形成するものであるが、これらの組成物に、場合により該組成物の長期にわたる貯蔵安定性を良好に保ち、かつ低温にて短時間で硬化する際に、硬化反応を促進し、硬化物に良好な化学性能及び物理性能を付与する目的で、D成分として加熱硬化時に活性を示す熱潜在性塩基触媒を含有させることができる。この熱潜在性塩基触媒は、60℃以上の温度において、塩基触媒活性を示す化合物が望ましい。この熱潜在性塩基触媒が60℃未満の温度で塩基触媒活性を示す場合、得られる組成物は貯蔵中に増粘したり、ゲル化するなど、好ましくない事態を招来する恐れがある。該D成分の熱潜在性塩基触媒としては、リン酸アミドエステルが好ましく挙げられる。
【0057】
該リン酸アミドエステル類としては、例えば式(18)
【0058】
【化15】
【0059】
(式中のR17はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基またはアルキル基、R18は炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキル、R19は炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキルであり、N原子をヘテロ原子とした複素環を形成していてもよい。)で表される化合物が挙げられる。
具体的には例えば、二塩化メチルホスホン酸、二塩化エチルホスホン酸、二塩化フェニルホスホン酸などのハロゲン化ホスホン酸類とジメチルアミン、ジエチルアミン、ジフェニルアミン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリンなどのアミン類、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ル、イソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノール、t−ブタノール等のアルコール類との反応により得られるリン酸アミドエステルなどが挙げられる。
【0060】
本発明組成物においては、前記D成分の熱潜在性塩基触媒は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよく、またその配合量は、A成分とB成分の総固形分量100重量部あたり、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。熱潜在性塩基触媒の量が0.01重量%未満では触媒効果が十分に発揮されないし、10重量%を超える場合には、最終的に得られる硬化物が着色したり、耐水性が低下することがあり、好ましくない。
【0061】
光の照射により塩基を発生する化合物としては、例えばアシルオキシム化合物、カルバモイルオキシム化合物、フルオレノンオキシム誘導体、ベンゾフェノンオキシム誘導体、カルバミン酸誘導体、ホルムアルデヒド化合物などが挙げられる。
これらの光の照射により塩基を発生する触媒化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせても良い。その添加量は、本発明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂を含有する熱硬化性組成物の総固形分に対し、0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。添加量が0.01重量%未満では触媒効果が充分に発揮されないし、30重量%を超える場合には、添加量に見合うだけの著しい増量効果が期待できないので好ましくない。
【0062】
本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化することによって、好ましい樹脂を得ることができる。その硬化に要する温度及び時間については、ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂が遊離カルボキシル基並びに遊離ヒドロキシル基を再生する温度、反応性官能基の種類、熱潜在性触媒の種類などにより異なるが、通常50〜200℃の範囲の温度で2分ないし2時間程度加熱することにより、硬化が完了する。より好ましい反応条件としては、反応温度として80℃〜160℃の範囲の温度、反応時間として10分ないし1時間程度加熱する条件が挙げられる。
本発明の熱硬化性組成物は、そのままで、あるいは必要に応じ、着色顔料、フィラー、エラストマー、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動調整剤等を配合して、塗料、インク、接着剤、成形品、感光性レジストなど硬化性を利用する種々の用途に用いることができる。
【0063】
特に、感光性レジストへの応用としては、前述の光の照射により酸を発生する化合物を使用し得る。照射する光としては、可視光線、紫外線、X線及び電子線などが使用できる。露光した後、アルカリ性水溶液、あるいは有機溶媒などの現像液を用いて現像することによりポジあるいはネガパターンを得ることができる。その後、前述の加熱を行うことにより、つまり、通常の50〜200℃の範囲の温度で、2分ないし10時間程度加熱することにより、パターン化した硬化物を得ることができる。
【0064】
本発明の熱硬化性組成物は、そのままで、もしくは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂等の汎用熱可塑性樹脂と混合して用いることができる。
特に例えば、塗料、インク、接着剤、成型品の他に、さらにカラー液晶表示装置、カラービデオカメラなどに装着されるカラーフィルター、IC回路及びホトマスクの製造に関する感光性レジスト、実装基板等に部品を装着する際のはんだ付け用熱硬化性フラックス及びフラックスを含有したはんだぺ―ストなどに好適に用いられる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の新規なヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂は、新規化合物であり、有機溶媒に対する溶解性や各種樹脂に対する相溶性に優れる。
本発明のヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂の製造方法は、ヒドロキシ酸とジビニルエーテルまたはジビニルチオエーテルとを反応する容易な製造方法である。
また、前記の化合物を含有する熱硬化性組成物は、ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂が一般の有機溶剤に対する溶解性や各種樹脂に対する相溶性に優れ、良好な化学性能、物理性能及び耐候性を有すると共に、特に貯蔵安定性に優れており、1液型として利用可能である。また、さらに、前記のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂は、および、この化合物を含有する熱硬化性組成物は、硬化することができ、好ましい物性を与える材料として各種の用途に有用である。
【0066】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。次に用いた分析方法、評価方法を示す。
1.<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より、ポリスチレン換算にて求めた。
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
機種;東ソー(株)社製、ゲル浸透クロマトグラフィーSC−8010
カラム;昭和電工(株)製SHODEX K−801
溶離液;THF液
検出器;RI
2.<IRの測定条件>
機種;日本分光(株)社製、FT/IR−600
セル;臭化カリウムを用いた錠剤法
分解;4cm-1
積算回数;16回
3.<13C−NMRの測定条件>
機種;日本ブルカー(株)社製、400MHzのAdvance400
積算回数;20000
溶媒;CDCl3、TMS基準
4.<不揮発分の測定>
JIS K 5407−4に準じて試料を140℃30分加熱乾燥させた後、冷却し、重量を測定して残存量より測定する。
5.<酸価の測定>
JIS K 0070−3(1992)の方法に準じて測定する。
6.<水酸基価の測定>
JIS K 0070−7(1992)の方法に準じて測定する。ただし、アセチル化試薬として無水酢酸を使用する。
【0067】
実施例1;ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれp−ヒドロキシ安息香酸28.4重量部、シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル41.6重量部、シクロヘキサノン30.0重量部を仕込み、温度を100℃〜120℃に保ちながら撹拌した。混合物の酸価が5以下あるいは水酸基価が5以下になった時点で反応を終了し、放冷後分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、分液ロート中で10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまでに200重量部の脱イオン水で洗浄を繰り返した。次いで硫酸マグネシウムで有機層中を乾燥した後、浴温度35℃で減圧濃縮した。さらに残査を真空ポンプを用いて減圧度0.1mmHg(133パスカル)で乾燥し、淡黄色透明のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂(A)を52.3重量部得た。仕込み組成とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の重量平均分子量の測定結果、不揮発分の測定結果を表1に示す。また、前記の酸価および水酸基価の測定方法により測定した。酸価が12.6mgKOH/g、水酸基価が1.2mgKOH/gであった。結果を合わせて表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表中の成分および略号は、以下のものを示す。
*1) CHDVE(1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル)
*2) TEGDVE(トリエチレングリコールジビニルエーテル)
*3) BDDVE(ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル)
*4) 重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より、ポリスチレン換算にて求めた)
【0070】
また、原料として用いたp−ヒドロキシ安息香酸及び得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂について赤外線吸収スペクトル測定(IRスペクトル)を行ったところ、それぞれ図1、図2に示す吸収チャートが得られた。この図よりヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂のIRスペクトルにおいては1700cm-1のカルボニルによる吸収が1730cm-1に移動しており、2500〜3500cm-1付近のカルボキシル基の吸収によるピークが変化していることなどから下記式(19)〜式(26)で表されるヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂が得られたことがわかる。また、原料および生成物の13C−NMR等からも構造を確認した。13C−NMRのチャートを図3に示す。さらに、生成物のポリスチレン換算により求めたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のチャートを図4に示す。
【0071】
【化16】
【0072】
【化17】
【0073】
【化18】
【0074】
【化19】
【0075】
【化20】
【0076】
【化21】
【0077】
【化22】
【0078】
【化23】
【0079】
ここで、R1:フェニレン基、
R2;−CH2−シクロヘキシル−CH2−
n=35〜45
Y=O
で、次式(27)で示される基を有する樹脂である。
【0080】
【化24】
【0081】
実施例2、3;ヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、実施例1のCHDVEの代わりに、それぞれ表1記載のようにTEGDVE、BDDVEを用いた以外は実施例1と同様にして、それぞれ表1記載の特性を有するヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂を得た。前記と同様にIRの測定、生成物の13C−NMR等からも構造を確認した。
【0082】
実施例4
実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂(A)10gと有機溶剤90g、また実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂(A)10gとビスフェノールA型エポキシ樹脂10gとをガラス瓶に採取し、よく攪拌した。さらに3時間静置した後の状態を観察する事により実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂の有機溶剤に対する溶解性及びビスフェノールA型エポキシ樹脂に対する相溶性を調べた。その結果を表2に示す。
【0083】
比較例1
実施例4において、実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂の代わりに、実施例1の原料として用いたp−ヒドロキシ安息香酸を使用して、実施例4と同様にして溶解性と相溶性を調べた。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2の注
(*1)溶解性、相溶性の評価は、以下の基準に従って行った。
○:均一溶液となった。
×:不溶であった。
(*2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液(ジャパンエポキシレジン(株)製商品名)
【0086】
表2の結果より実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂はいずれも原料のp−ヒドロキシ安息香酸に比べて有機溶剤及びエピコート828樹脂に対する溶解性、相溶性が優れていることがわかる。
【0087】
実施例5〜10
実施例1〜3で得られたヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂(A)、(B)および(C)を用いて、表3に示した配合組成で、熱硬化性組成物を製造した。
<硬化膜の物性測定方法>
試験片の作成は、陽極酸化されたブラシ研磨アルミニウム板上に、表3記載した実施例5〜9の組成物を用いて、乾燥膜厚で30μmになるようにバーコーターにて塗装し、80℃で30分間プリベイクした後、180℃、60分間硬化させて試験片を作成した。
尚、実施例9については、プリベイク後ポジパターンを通して、UV照射装置としてトスキュアー401(商品名、東芝ライテック(株)社製)を用い、高圧水銀灯で150mJ/cm2密着照射し、次いでアルカリ現像液NMD−3(商品名、東京応化工業(株)社製)に25℃で60秒間ディップ現像してパターン化したものを180℃で60分間硬化させて試験片を作成した。
【0088】
硬化膜性能については、上記の方法により作成した試験板を用い、下記に示す試験方法により行った。
5.耐酸性−1
40wt%硫酸2mlを試験片上にスポット上に載せ、20℃で48時間放置後、硬化膜の異常を目視にて判定した。
6.耐酸性−2
40wt%硫酸2mlを試験片上にスポット上に載せ、60℃で30分間加熱後、硬化膜の異常を目視にて判定した。
7. 耐酸性−3
試験片を0.1規定硫酸中に浸漬し、60℃で24時間保った後、硬化膜の異常を目視にて判定した。
8.耐衝撃性
衝撃変形試験器[JIS K−5400(1979)613.3 B法]を用い、半径6.35mmの撃ち型に試験片をはさみ、500gのおもりを40cmの高さから落下させた際の硬化膜の損傷を目視にて判定した。
9.ヌープ硬度
(株)島津製作所製のM型微小硬度計にて20℃で測定した。数値の大きいほど硬いことを示す。
10.貯蔵安定性試験
表3で得られた組成物をキシレンで100ポイズ(ブルックフィールド型粘度計による20℃での測定値)に希釈した後、50℃で密封貯蔵した。50℃で30日間貯蔵後、再び粘度測定した。これらの結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
比較例2〜4
実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂の代わりに、実施例1の原料として用いたp−ヒドロキシ安息香酸を使用して、実施例5、8、10と同様にして熱硬化性組成物、硬化膜を作成した。結果を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
表3、4中の成分および略号は、以下のものを示す。
*1) ジャパンエポキシレジ(株)社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
*2) オクチル酸亜鉛とトリエタノールアミンを等モルで反応させた亜鉛錯体の80重量%シクロヘキサノン溶液
*3) サンエイドSI−80L(商品名、三新化学工業(株)社製)
*4) ピペリジンと2塩化フェニルホスホン酸を等モルで反応させた誘導体にt−ブタノールを付加反応させることにより得られるリン酸アミドエステルの80重量%シクロヘキサノン溶液。
【0093】
表3、4より明らかなように、硬化膜性能において、本発明の実施例5〜10は、比較例2〜4と比べて、均一でツヤのある硬化膜が得られ、優れた耐酸性、耐衝撃性、硬度、貯蔵安定性を示すことがわかる。さらに、実施例9、10に関しては、高感度、高解像度性をも示し、優れた硬化樹脂となることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で用いたp−ヒドロキシ安息香酸の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図2】図2は、実施例1で合成したヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図3】図3は、実施例1で得られたヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の13C−NMRスペクトルチャートである。
【図4】図4は、実施例1で合成したヒドロキシ酸ポリヘミアセタールエステル樹脂のポリスチレン換算により求めたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のチャートである。
Claims (16)
- 1分子あたりカルボキシル基1個と水酸基1個を有するヒドロキシ酸を原料として、これとジビニルエーテル化合物またはジビニルチオエーテル化合物とを反応させることを特徴とするヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造方法。
- 前記の反応において、触媒として酸触媒を使用する請求項4記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂の製造方法。
- A成分:請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂と、B成分:エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物、とを含有してなることを特徴とする熱硬化性組成物。
- A成分;請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂5〜95重量部と、B成分;エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物5〜95重量部とを、含有してなる請求項6に記載の熱硬化性組成物。
- さらに、C成分:酸触媒、とを含有してなる請求項6または7に記載の熱硬化性組成物。
- A成分;請求項1〜3に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂5〜95重量部と、B成分;エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物5〜95重量部と、C成分;酸触媒0.01〜10重量部とを、含有してなる請求項8に記載の熱硬化性組成物。
- C成分の酸触媒が、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒である請求項8または9に記載の熱硬化性組成物。
- C成分の酸触媒にさらに光の照射により酸を発生する化合物を含有する請求項8、9、10のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
- さらに、D成分:塩基性触媒、とを含有してなる請求項6または7の熱硬化性組成物。
- A成分;請求項1に記載のヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル樹脂5〜95重量部と、B成分;エポキシ基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基及びケタール基からなる群より選択された1種または2種以上である反応性官能基を2個以上を1分子中に有する化合物5〜95重量部と、さらに、D成分;塩基触媒0.01〜10重量部とを、含有してなることを特徴とする請求項12に記載の熱硬化性組成物。
- D成分の塩基触媒が、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性塩基触媒である請求項12記載の熱硬化性組成物。
- D成分の塩基触媒にさらに、光の照射により塩基を発生する化合物を含有する請求12または13記載の熱硬化性組成物。
- 請求項6〜15のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物を硬化してなる樹脂。
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