JP4048598B2 - 感光性ポリイミド前駆体組成物および金属箔−ポリイミド複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性ポリイミド前駆体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリイミドと金属材料とからなるポリイミド複合材料およびその製造方法については、たとえば特公昭57−36135号公報、特公昭59−18221号公報などに記載されていたり、示唆されていることが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの公知のポリイミド膜と金属材料とからなるポリイミド複合材料は、芳香族ポリイミド膜を形成している芳香族ポリイミドが金属材料に対してかなり大きな線膨張係数を有するために、ポリアミド酸を熱処理してポリイミド化する際にカールが生じてしまうという欠点があった。また、半導体の分野においてもポリイミド膜の膜厚を厚くすると基板であるシリコーンウエハーがそってくるという欠点があった。あるいは、芳香族ポリイミドが機械的強度、耐熱性、柔軟性などにおいて充分な物性を有していないために、得られた製品が電気・電子材料として使用できないという欠点などがあった。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の諸欠点に鑑み創案されたもので、その目的とするところは、機械的強度、耐熱性、柔軟性などにおいて問題がなく、低い線膨張係数を持ち、さらに良好なパターン加工が可能な感光性ポリイミド前駆体組成物を提供することであり、ポリイミドと金属材料からなるポリイミド複合材料においてカールを生じず、また、半導体の分野においてもポリイミドの膜厚を厚くしても基板であるシリコンウエハーがそってくるということがないところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)下記一般式(1)で示されるポリイミド前駆体と(B)光重合開始剤を含有する感光性ポリイミド前駆体組成物であって、該組成物をフィルムに形成し、露光後、350℃で1時間キュアした後のフィルムの30℃〜100℃の平均線膨張係数が、10×10−6/℃〜30×10−6/℃であることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体組成物であり、
【化2】
式(1)中、R1は10〜85モル%がビフェニルテトラカルボン酸類の残基で15〜90モル%がピロメリット酸類の残基であり、R2は芳香族ジアミン残基かあるいは少なくとも2個以上の炭素原子を有する脂肪族ジアミン残基を示し、R3は少なくとも1つは−OR 4 、−NHR 4 、−O − N + R 4 R 5 R 6 R 7 から選ばれた基を示し、その他は−OR4、−NHR4、−O−N+R4R5R6R7 またはOHを示す。ただしR4は少なくとも1種のエチレン性不飽和結合を有する基,R5,R6,R7はそれぞれ水素原子または炭素数1から10までの炭化水素基を表す。nは1または2である。さらに、厚さが10〜30μmのステンレス箔上に、上記感光性ポリイミド前駆体組成物から形成される厚さ5〜30μmのポリイミド膜を有する金属箔−ポリイミド複合体であって、幅2mm、長さ3mmにおけるそり係数が50×10−3以下であることを特徴とする金属箔−ポリイミド複合体である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明においては、キュア後のフイルムの30℃〜100℃の平均線膨張係数が10×10-6/℃〜30×10-6/℃である(A)下記一般式(1)で示されるポリイミド前駆体を使用する。
【0008】
【化3】
式(1)中、R1は10〜85モル%がビフェニルテトラカルボン酸類の残基で15〜90モル%がピロメリット酸類の残基であり、R2は芳香族ジアミン残基かあるいは少なくとも2個以上の炭素原子を有する脂肪族ジアミン残基を示し、R3は少なくとも1つは−OR 4 、−NHR 4 、−O − N + R 4 R 5 R 6 R 7 から選ばれた基を示し、その他は−OR4、−NHR4、−O−N+R4R5R6R7 またはOHを示す。ただしR4は少なくとも1種のエチレン性不飽和結合を有する基,R5,R6,R7はそれぞれ水素原子または炭素数1から10までの炭化水素基を表す。nは1または2である。
【0009】
このポリイミド前駆体の骨格であるポリアミド酸(a)のR3が−OR4(R4は前記と同じである)である化合物の重合方法としては、酸二無水物と1種のエチレン性不飽和結合を有するアルコールとを反応させた後、カルボジイミド型脱水縮合剤例えばジシクロヘキシルカルボジイミドを用いてジアミンと反応させることにより得ることができる。また、ポリアミド酸(a)のR3が−OーN+R4R5R6R7(R4,R5,R6,R7は前記と同じである)である化合物の重合方法としては、酸二無水物とジアミンを反応して得られたポリアミド酸に1種のエチレン性不飽和結合を有するアミンを混合し、アミド酸のカルボキシル基にイオン結合させることにより得ることができる。また、ポリアミド酸(a)のR3が−NHR4(R4は前記と同じである)である化合物の重合方法としては、酸二無水物とジアミンを反応して得られたポリアミド酸に、塩基触媒存在下、1種のエチレン性不飽和結合を有するイソシアネートと反応させることにより得ることができる。この中では、キュア中の感光剤の揮発が起こりやすいイオン結合型である−OーN+R4R5R6R7がR3として好ましい。
【0010】
本発明における感光性ポリイミド前駆体組成物は、キュア後のフィルムの30℃〜100℃の平均線膨張係数が10×10−6/℃〜30×10−6/℃であることが重要である。本発明において平均線膨張係数の測定には、感光性ポリイミド前駆体組成物を350℃、1時間キュア後に膜厚10μm、幅1.5mm、長さ15mmとしたフィルムを用いる。本発明では、キュア後のフィルムが30℃〜100℃の全範囲にわたって平均した線膨張係数が10×10−6/℃〜30×10−6/℃であるものである。
【0011】
本発明における感光性ポリイミド前駆体の骨格となるポリアミド酸は、芳香族テトラカルボン酸残基に対して10〜85モル%のビフェニルテトラカルボン酸残基と、15〜90モル%、好ましくは15〜80モル%のピロメリット酸残基とからなる芳香族テトラカルボン酸残基と、全芳香族ジアミン残基に対して30〜100モル%、好ましくは40〜95モル%のフェニレンジアミン残基と0〜70モル%、好ましくは5〜60モル%の分子内にエーテル結合を含む芳香族ジアミン残基である。
【0012】
芳香族テトラカルボン酸成分において、ビフェニルテトラカルボン酸成分の使用割合が少なすぎると得られる感光性ポリイミド前駆体組成物を金属箔に塗布し得られた複合材料のそりが大きくなったり、引っ張り試験での伸度が低下する。
【0013】
また、芳香族ジアミン成分においては、フェニレンジアミン類の使用割合が少なくなり、分子内にエーテル結合を含む芳香族ジアミン成分が増大すると得られる感光性ポリイミド前駆体組成物を金属箔に塗布し得られた複合材料のそりが大きくなる。また、フェニレンジアミン類の使用割合が100モル%に近くなると得られる感光性ポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド膜の引っ張り試験での伸度が低下し、柔軟性が失われたりする。さらに、フェニレンジアミン類の使用割合が多くなり分子内にエーテル結合を含む芳香族ジアミン成分の使用割合が減少すると、得られる感光性ポリイミド前駆体組成物から形成されるポリイミド膜とたとえばシリコーンウエハーや金属箔などの基板との密着性が低下し、電気、電子材料として使用できなくなる。
【0014】
そり係数は、キュアした金属箔−ポリイミド複合体を水平面に静置し、その複合体の角部の水平面からの高さを金属箔の長手方向の長さで割ることによって得られる係数である。
【0015】
本発明におけるビフェニルテトラカルボン酸類としては、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明におけるフェニレンジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンなどをあげることができ、分子内にエーテル結合を含む芳香族ジアミン成分としては4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテルなどを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明において使用される1種のエチレン性不飽和結合をポリアミド酸骨格にエステル基として導入するための方法としては、酸二無水物をエステル化した後、ジアミンと反応させる方法と酸二無水物とジアミンを反応させた後にエステル基を導入する方法があり、先の化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクルレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテルなどが挙げられ、後者の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。1種のエチレン性不飽和結合をポリアミド酸骨格にアミド基として導入するための化合物の具体例としては、イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートプロピルアクリレート、イソシアネートブチルアクリレート、イソシアネートペンチルアクリレート、イソシアネートヘキシルアクリレート、イソシアネートオクチルアクリレート、イソシアネートデシルアクリレート、イソシアネートペンチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、イソシアネートプロピルメタクリレート、イソシアネートブチルメタクリレート、イソシアネートペンチルメタクリレート、イソシアネートヘキシルメタクリレート、イソシアネートオクチルメタクリレート、イソシアネートデシルメタクリレートなどが挙げられるが、特にこれらに限定される物ではない。ポリアミド酸のカルボキシル基にイオン結合させることにより1種のエチレン性不飽和結合を導入するための化合物の具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルアクリレートおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノブチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アリルアミン、2−メチルアリルアミン、ジアリルアミンなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】
エチレン性不飽和結合基は、ポリイミド前駆体組成物中のカルボキシル基に対し0.05〜2倍モル当量、より好ましくは0.1〜1倍モル当量存在するのが望ましい。混合する量が少なすぎれば、感光特性が不良となり、混合する量が多すぎれば、ポリイミド前駆体膜を金属箔に塗布し熱処理してポリイミド膜を形成する時に、この複合材料のそりが大きくなったり、膜厚の減少量が大きくなったりする。
【0019】
本発明に用いる光重合開始剤は特に限定されない。その具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2´−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、N−フェニルグリシン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、また、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4´−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0020】
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物に含有される光重合開始剤の量は、ポリアミド酸の0.1〜30重量%が好ましく、0.3〜15重量%がさらに好ましい。光重合開始剤の量が少なすぎれば、組成物の光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎれば、ポリイミド前駆体膜を熱処理してポリイミド膜を形成する時に、膜厚の減少量が大きくなりすぎる。
【0021】
また、光感度を向上させ得る増感剤を、本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物に添加してもよい。増感剤の具体的な例として、2,5−ビス(4´−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4´−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4´−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4´−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4´−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−ビス(4´−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3´−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N´−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、1−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明ではこれらの増感剤を1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤のなかには光重合開始剤としても作用するものがある。
【0022】
増感剤を本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物に添加する場合、その添加量は、ポリアミド酸の0.1〜30重量%が好ましく、0.3〜15重量%がさらに好ましい。添加量が大きすぎれば、ポリイミド前駆体膜を熱処理してポリイミド膜を形成する時に、膜厚の減少量が大きくなりすぎる。また、添加量が小さすぎれば、光感度を向上させる効果が発揮されない。
【0023】
本発明において使用するエチレン性不飽和基をイオン結合、アミド結合あるいはエステル結合で導入するためのポリアミド酸は、前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、テトラカルボン酸の総モル当量に対して、0.9〜1.1倍モル当量、好ましくは0.95〜1.05倍モル当量、さらに好ましくは0.99〜1.01倍モル当量、またさらに好ましくは等モル当量を使用し、極性有機溶剤中で0〜100℃、好ましくは、10〜80℃の範囲の温度で0.2〜60時間高分子量になるように重合する事によって製造される。この製造法において、モル当量の差が小さいほど、ポリイミド前駆体を加熱処理することによって得られるポリイミドの重合度が大きくなり、機械的特性の良好なフィルムが得られるため、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを等モル量使用することが好ましい。また、重合温度においては、温度が低すぎると反応がなかなか進まず、また、温度が高すぎるとポリアミド酸のイミド化が進行するおそれがあることから10〜80℃の範囲で重合することが好ましい。エチレン性不飽和結合をイオン結合で導入する場合には、上記重合により得たポリアミド酸に前述の不飽和結合を有するアミンを室温で添加し、光重合開始剤さらに必要に応じて増感剤を加えることによりポリイミド前駆体組成物が得られる。また、エチレン性不飽和結合をアミド結合で導入する場合には、上記重合により得たポリアミド酸に前述の不飽和結合を有するイソシアネートをアミンなどの塩基性触媒存在下、0〜100℃好ましくは20〜70℃で重合に使用した有機溶剤中で反応させた後、光重合開始剤さらに必要に応じて増感剤を加えることによりポリイミド前駆体組成物が得られる。
【0024】
また、エチレン性不飽和結合をエステル結合で導入する場合には、上記重合により得たポリアミド酸に前述の不飽和結合を有するエポキシ化合物をアミンなどの塩基性触媒存在下、60〜120℃好ましくは70〜90℃で重合に使用した有機溶剤中で反応させた後、光重合開始剤さらに必要に応じて増感剤を加えることによりポリイミド前駆体組成物が得られる。
【0025】
また、エチレン性不飽和基をエステル結合で導入するためのポリアミド酸の別の製造法は、前述のテトラカルボン酸とエチレン性不飽和結合を有するアルコールとを反応させて得られたテトラカルボン酸ジエステルと前述のジアミン成分とを縮合剤の存在下に反応させて得ることができ、反応条件は特に限定されない。反応温度は、反応が進行する温度であれば特に制限はないが、反応速度および副生成物の発生の問題から−20℃〜80℃が好ましく、−10℃〜30℃がさらに好ましい。縮合剤の比率はカルボン酸またはアミンの少ない方に対して当量以上あればよく、過剰に存在しても特に問題はない。通常、1当量〜1.5当量程度用いるのが好ましい。反応時間は10分〜100時間が好ましく、1時間ないし24時間がさらに好ましい。また、反応時に1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ピリジンなどの添加剤を用いて反応を円滑に行うこともできる。テトラカルボン酸ジエステルとジアミンのモル比は、目的とするポリアミド酸の分子量に応じてテトラカルボン酸の総モル当量に対して、0.7〜1.3倍モル当量、好ましくは等モル当量を使用することによって製造される。生成したポリアミド酸は、水または有機溶剤中で結晶化され、ろか、洗浄、水または有機溶剤による再沈殿等の公知の方法を用いて溶媒、残存縮合剤、縮合剤からの生成物である尿素類等を除去することによって精製される。精製したポリアミド酸、光重合開始剤さらに必要に応じて増感剤を含む全ての成分を溶解しうる有機溶剤に溶解することによりポリイミド前駆体組成物が得られる。
【0026】
前記の製造法において使用する極性有機溶剤としては、常圧で沸点が300℃以下、特に250℃以下のものが好ましく、たとえばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトンなどが好適にあげることができるが、これらに限定されるものではない。この他、これらの極性溶媒以外に一般的有機溶媒であるケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類など、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコ−ルジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、1,4−ジクロルブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどと混合して使用することができる。
【0027】
このワニスを基板上に塗布する方法としては、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、スクリーン印刷法などで基板に塗布する方法、基板をワニス中に浸漬する方法、ワニスを基板に噴霧するなどの種々の方法を用いることができるが、これらに限定されるものではない。基板としては、厚さが10〜30μmのステンレス箔を用い、前記感光性ポリイミド前駆体組成物をキュア後の膜厚が5〜30μmになるように基板上に塗布した後、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより、感光性ポリイミド前駆体膜を形成し、この膜を、窒素雰囲気中、あるいは真空中で150〜500℃の温度のもとで0.5〜5時間連続的または段階的に加熱処理することによってポリイミド膜に変換でき、金属箔−ポリイミド複合体を得ることができる。
【0028】
また、同様に、厚さが10〜30μmのステンレス箔を用い、前記感光性ポリイミド前駆体組成物をキュア後の膜厚が5〜30μmになるように基板上に塗布した後、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより、感光性ポリイミド前駆体膜を形成し、通常のフォトマスクを用いて露光される。この際に使用される活性光線としては、たとえば、紫外線、電子線、X線などが挙げられるが、これらの中では紫外線が好ましく、その光源としては、たとえば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが挙げられる。これらの光源の中で超高圧水銀灯が好適である。
【0029】
露光後、必要なら熱処理を行った後、現像液を使用して現像を行い、未露光部あるいは露光部を除去する。この場合、浸漬法やスプレー法を用いることができる。現像液としては通常、ポリアミド酸を合成する場合に好適に使用される、該ポリアミド酸を溶解しうる有機溶媒と同様のものが使用される。なお、このような有機溶媒に、現像性を良好とするために水を添加して用いることもできる。
【0030】
水を添加する場合、その添加量は有機溶媒に対して通常、1〜100重量%、好ましくは5〜50重量%である。添加量が大きすぎる場合、有機溶媒とのあいだで相分離を起こすおそれが生じ、添加量が小さすぎる場合は、現像性を良好にする効果を発揮しない。アルカリ水溶液の場合は、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンなどが用いられる。また、現像直後に、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサン、ペンタンなどの有機溶剤、水と任意の割合で混和可能な有機溶剤と水との混合溶剤あるいは水単独で、リンスを行うことが望ましい。特に、安価で環境面に優しい水をリンス液として使用することが好ましい。本発明における感光性ポリイミド組成物では、有機溶剤含有現像液で現像した後のリンス液として水が使用できるが、キュア後のフィルムの平均線膨張係数が本発明における感光性ポリイミド組成物よりも大きい場合には、有機溶剤含有現像液で現像した後のリンス液として水を使用した場合、面内にクラックが発生する。
【0031】
現像によって得られたポリイミド前駆体のパターンは、その後、加熱処理することによって、ポリイミドのパターンに変換される。加熱処理は通常、窒素雰囲気中、あるいは、真空中で、150〜500℃の温度のもとで、0.5〜5時間、連続的または段階的に行われ、パターン状に形成されたポリイミド−金属箔複合体が得られる。さらに、このパターン状に形成されたポリイミドの上に薄膜導体回路とポリイミドからなる層を少なくとも1層形成するポリイミド−金属箔複合体を得ることができる。
【0032】
本発明における線膨張係数の測定は、厚さ10μm、幅1.5mm、長さ15mmのポリイミドフィルムを、セイコー電子製TMA/SS−6000を用い30〜100℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した。パターン化していないポリイミドー金属箔複合体のそりは、20〜30℃、30〜70%RHの下で、キュア後の複合体を水平面におき、角部の水平面からの高さをノギスで測定することにより求めた。また、パターン状に形成されたポリミドー金属箔複合体のそりは20〜30℃、30〜70%RHの下で、複合体の一方を基準面に固定した時のもう一方の基準面からの複合体の高さをノギスあるいはレーザーテック製1LM21で測定することにより求めた。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
温度計および乾燥空気導入口と攪拌装置を付した2000mlの4つ口フラスコに、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物105.92g(0.36モル)およびN−メチル−2−ピロリドン760gを投入し、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)、p−フェニレンジアミン86.30g(0.798モル)、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサン14.91g(0.06モル)、およびN−メチル−2−ピロリドン150gを加え、乾燥空気流入下、60℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却した。その後、ピロメリット酸二無水物183.22g(0.84モル)、およびN−メチル−2−ピロリドン203gを加え、乾燥空気気流下、60℃で3時間攪拌した。
【0035】
次に、光遮断下の室温で、ミヒラーケトン4.55g、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム4.55g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクレート200gを混合撹拌後、フィルターでろ過して感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を得た。
【0036】
この溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、90℃で100分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面に、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて3分間露光を行い、次に、東レ製現像液DV−505に5分間浸漬した後、イソプロパノールで1分間リンス洗浄した。このとき膜の厚みは19μmであった。これを100℃30分間、350℃60分間のステップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドの膜を得た。このとき、ポリイミドが塗布されたSUS箔の4つの角のそりを測定し平均化すると、1.3mmであり、そり係数は13×10-3であった。
【0037】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は14×10-6であった。
【0038】
また、同溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、90℃で100分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面をパターンマスクし、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて3分間露光を行い、次に、東レ製現像液DV−505に8分間浸漬した後、イソプロピルアルコールでリンスを行ったところ、厚み19μmのポリイミド前駆体のパターンを得た。これを窒素雰囲気下、100℃30分間、350℃60分間のステップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、5μmであり、そり係数は1.7×10-3であった。
【0039】
参考例1
温度計および乾燥空気導入口と攪拌装置を付した3000mlの4つ口フラスコに、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)、p−フェニレンジアミン86.30g(0.798モル)、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサン14.91g(0.06モル)をN,N−ジメチルアセトアミド2052gに溶解し、温度を約50℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物105.92g(0.36モル)、ピロメリット酸二無水物183.22g(0.84モル)を加え、乾燥空気気流下、50℃で3時間攪拌した。次に、光遮断下の40℃でN,N−ジメチルベンジルアミン12gを触媒としてイソシアネートエチルメタクリレート93g(0.60モル)を徐々に加え、40℃で4時間撹拌した後、ミヒラーケトン4.55g、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム4.55gを混合撹拌後、フィルターでろ過して感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を得た。
【0040】
この溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、90℃で60分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面に、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて1.5分間露光を行い、次に、N,N−ジメチルアセトアミド/メタノール=4/1容からなる現像液で現像し、エタノールで1分間リンス洗浄した。このとき膜の厚みは18μmであった。これを150℃30分間、400℃60分間のステップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドの膜を得た。このとき、ポリイミドが塗布されたSUS箔の4つの角のそりを測定し平均化すると、4.1mmであり、そり係数は41×10-3であった。
【0041】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は21×10-6であった。
【0042】
また、同溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、90℃で60分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面をパターンマスクし、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて1.5分間露光を行い、N,N−ジメチルアセトアミド/メタノール=4/1容からなる現像液で現像した後、エチルアルコールでリンスを行ったところ、厚み18μmのポリイミド前駆体のパターンを得た。これを窒素雰囲気下、150℃30分間、400℃60分間のテップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、18μmであり、そり係数は6.0×10-3であった。
【0043】
参考例2
温度計および乾燥空気導入口と攪拌装置を付した500mlのセパラブルフラスコに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.83g(0.03モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート26.03g(0.20モル)、γ−ブチロラクトン100mlを入れ、60℃で2時間撹拌した後、氷冷下、ピロメリット酸二無水物15.27g(0.07モル)を加えた。さらに、氷冷下、撹拌しながらピリジン17.0gを加えた。室温で16時間撹拌した後、ジシクロヘキシルカルボジイミド41.2g(0.20モル)のγ−ブチロラクトン40mlの溶液を氷冷下、10分間で加え、続いて、p−フェニレンジアミン7.35g(0.068モル)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル2.95g(0.008モル)、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサン1.0g(0.004モル)を15分間で加えた。氷冷下、3時間撹拌した後、エタノール5mlを加えてさらに1時間撹拌し、沈殿をろかした後、得られた溶液を10Lのエタノールの加え生成した沈殿をエタノールで洗浄した後、真空乾燥して粉末を得た。光遮断下で、この粉末30g、ミヒラーケトン0.6g、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム0.6gをN−メチル−2−ピロリドン45gに溶解した後、フィルターでろ過して感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を得た。
【0044】
この溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、80℃で60分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面に、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて1.5分間露光を行い、次に、シクロヘキサノン/キシレン=7/3容からなる現像液で現像した後、イソプロパノールで1分間リンス洗浄した。このとき膜の厚みは19μmであった。これを150℃60分間、350℃120分間のステップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドの膜を得た。このとき、ポリイミドが塗布されたSUS箔の4つの角のそりを測定し平均化すると、4.5mmであり、そり係数は45×10-3であった。
【0045】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は22×10-6であった。
【0046】
また、同溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、80℃で60分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面をパターンマスクし、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて1.5分間露光を行い、次に、シクロヘキサノン/キシレン=7/3容からなる現像液で現像した後イソプロピルアルコールでリンスを行ったところ、厚み19μmのポリイミド前駆体のパターンを得た。これを窒素雰囲気下、150℃60分間、350℃120分間のテップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、20μmであり、そり係数は6.7×10-3であった。
【0047】
実施例2
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物105.92g(0.36モル)のかわりに35.31g(0.12モル)、ピロメリット二無水物183.22g(0.84モル)のかわりにピロメリット酸209.40g(0.96モル)と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸38.67g(0.12モル)を使用する以外は実施例1と同様の方法により感光性ポリイミド前駆体組成物を作成し、SUS箔のそりテスト、パターン化を行った。そりテストの結果は、2.8mmであり、そり係数は28×10−3であった。
【0048】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は18×10-6であった。
【0049】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、12μmであり、そり値は4.0×10-3であった。
【0050】
実施例3
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)、p−フェニレンジアミン86.30g(0.798モル)のかわりに1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン52.62g(0.18モル)、p−フェニレンジアミン103.81g(0.96モル)を使用する以外は実施例1と同様の方法により感光性ポリイミド前駆体組成物を作成し、SUS箔のそりテスト、パターン化を行った。そりテストの結果は、1.3mmであり、そり係数は13×10−6であった。
【0051】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は15×10-6であった。パターン化は実施例1と同様に行うことができた。
【0052】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、7μmであり、そり係数は2.3×10-3であった。
【0053】
実施例4
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)、p−フェニレンジアミン86.30g(0.798モル)のかわりに4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル44.21g(0.12モル)、p−フェニレンジアミン110.30g(1.02モル)を使用する以外は実施例1と同様の方法により感光性ポリイミド前駆体組成物を作成し、SUS箔のそりテスト、パターン化を行った。そりテストの結果は、0.6mmであり、そり係数は6×10−3であった。
【0054】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は12×10-6であった。パターン化は実施例1と同様に行うことができた。
【0055】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、1μmであり、そり係数は0.3×10-3であった。
【0056】
実施例5
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)のかわりに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)を使用する以外は実施例1と同様の方法により感光性ポリイミド前駆体組成物を作成し、SUS箔のそりテスト、パターン化を行った。そりテストの結果は、1.3mmであり、そり係数は13×10−3であった。
【0057】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は14×10-6であった。
【0058】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、5μmであり、そり係数は1.7×10-3であった。
【0059】
実施例6
現像後のリンス液として、イソプロピルアルコールのかわりに水を使用する以外は、実施例1と同様の方法により、そりテスト、パターン化を行った。
【0060】
そりテストの結果は、1.3mmであり、そり係数は13×10-3であった。
【0061】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は14×10-6であった。
【0062】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、5μmであり、そり係数は1.7×10-3であった。
【0063】
比較例1
温度計および乾燥空気導入口と攪拌装置を付した2000mlの4つ口フラスコに、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物353.06g(1.20モル)およびN−メチル−2−ピロリドン1000gを投入し、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル68.48g(0.342モル)、p−フェニレンジアミン86.30g(0.798モル)、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサン14.91g(0.06モル)、およびN−メチル−2−ピロリドン400gを加え、乾燥空気流入下、60℃で4時間攪拌した。
【0064】
次に、光遮断下の室温で、ミヒラーケトン4.55g、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム4.55g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクレート200gを攪拌混合後、フィルターでろ過して感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を得た。
【0065】
この溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、90℃で100分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面に、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて3分間露光を行い、次に、東レ製現像液DV−505に5分間浸漬した後、イソプロパノールで1分間リンス洗浄した。このとき膜の厚みは19μmであった。これを100℃30分間、350℃60分間のステップで加熱処理し、厚み10μmのポリイミドの膜を得た。このとき、ポリイミドが塗布されたSUS箔の4つの角のそりを測定し平均化すると、12.5mmでり、そり係数は125×10-3であった。
【0066】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は38×10-6であった。
【0067】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、56μmであり、そり係数は18.7×10-3であった。
【0068】
比較例2
温度計および乾燥空気導入口と攪拌装置を付した2000mlの4つ口フラスコに、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物322.22g(1.00モル)およびN−メチル−2−ピロリドン1000gを投入し、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル190.28g(0.95モル)、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサン12.42g(0.05モル)、およびN−メチル−2−ピロリドン350gを加え、乾燥空気流入下、60℃で3時間攪拌した。
【0069】
次に、光遮断下の室温で、ミヒラーケトン4.55g、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム4.55g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクレート200gを攪拌混合後、フィルターでろ過して感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を得た。
【0070】
この溶液を10cm×10cm角の25μmSUS箔にスピンコートし、90℃で100分間加熱乾燥して、厚み20μmの膜を形成した。この膜面に、窒素雰囲気下、7mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて1分間露光を行い、次に、東レ製現像液DV−505に2分間浸漬した後、イソプロパノールで1分間リンス洗浄した。このとき膜の厚みは17μmであった。これを100℃30分間、350℃60分間のステップで加熱処理し、厚み9μmのポリイミドの膜を得た。このとき、ポリイミドが塗布されたSUS箔の4つの角のそりを測定し平均化すると、13.5mmであり、そり係数は135×10-3であった。
【0071】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は40×10-6であった。
【0072】
また、実施例1と同様にパターン加工した後加熱処理し、厚み10μmのポリイミドのパターンを得た。このパターンを幅2mm、長さ3mmにカットし、長さ方向の一方の端を固定台に固定し、もう一方の固定台からの高さをレーザーテック製1LM21を用いて測定すると、63μmであり、そり係数は21×10-3であった。
【0073】
比較例3
現像後のリンス液として、イソプロピルアルコールのかわりに水を使用する以外は、比較例2と同様の方法により、そりテスト、パターン化を行った。
【0074】
そりテストの結果は、12.8mmであり、そり係数は128×10-3であった。
【0075】
また、このポリイミドフィルムの30℃〜100℃の範囲での平均線膨張係数は41×10-6であった。
【0076】
また、実施例1と同様にパターン加工した際、ポリイミドのパターン全面にクラックが発生した。
【0077】
【発明の効果】
本発明は、機械的強度、耐熱性、柔軟性、現像後の水リンスに対する耐クラック性などにおいて問題がなく、さらに良好なパターン加工が可能な感光性ポリイミド前駆体組成物を提供することであり、ポリイミドと金属材料からなるポリイミド複合材料においてカールを生じず、また、半導体の分野においてもポリイミドの膜厚を厚くしても基板であるシリコンウエハーがそらない。
Claims (6)
- (A)下記一般式(1)で示されるポリイミド前駆体と(B)光重合開始剤を含有する感光性ポリイミド前駆体組成物であって、該組成物をフィルムに形成し、露光後、350℃で1時間キュアした後のフィルムの30℃〜100℃の平均線膨張係数が、10×10−6/℃〜30×10−6/℃であることを特徴とする感光性ポリイミド前駆体組成物。
- 一般式(1)においてR3が−O−N+R4R5R6R7(R4は少なくとも1種のエチレン性不飽和結合を有する基,R5,R6,R7はそれぞれ水素原子または炭素数1から10までの炭化水素基を表す。)で表される基であることを特徴とする請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体組成物。
- 一般式(1)においてR 2の30〜100モル%がフェニレンジアミン類残基で0〜70モル%が分子内にエーテル結合を含む芳香族ジアミン残基であることを特徴とする請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体組成物。
- 厚さが10〜30μmのステンレス箔上に、請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体組成物から形成される厚さ5〜30μmのポリイミド膜を有する金属箔−ポリイミド複合体であって、幅2mm、長さ3mmにおけるそり係数が50×10−3以下であることを特徴とする金属箔−ポリイミド複合体。
- 厚さ10〜30μmのステンレス箔上に、請求項1記載の感光性ポリイミド前駆体組成物から形成される厚さ5〜30μmのポリイミド膜がパターン状に形成された金属箔−ポリイミド複合体であって、幅2mm、長さ3mmにおけるそり係数が7×10−3以下であることを特徴とする金属箔−ポリイミド複合体。
- 金属箔上にパターン状にポリイミドを形成し、その上に薄膜導体回路とポリイミドからなる層を少なくとも1層形成してなることを特徴とする請求項5記載のポリイミド−金属箔複合体。
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