JP4047771B2 - コークス炉の補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経年劣化により炉体膨張したコークス炉の補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平4−366198号公報 (図1)
【特許文献2】
特開平10−121050号公報 (図2)
【0003】
製鉄工場で用いられているコークス炉は、レンガ積みされた長尺の炉体の両側に所定間隔で多数本のバックステーを立て、両側のバックステー間を上下のクロスタイロッドにより強固に締め付けて炉締め力を発生させ、炉体構造を維持している。しかしコークス炉は高温で連続運転されるため、長期間にわたり使用すると図1に示すように、次第に炉体1のレンガがバックステー2及び保護板3を変形させながら膨張してくることが避けられない。その結果、炉体1のレンガの緩みや目地切れが生じ、ガス(火炎)のリークや炉体外部機器との接触トラブルを引き起こしている。
【0004】
さらに火炎の噴出によりバックステー2が曲損し、炉締め機能の低下を招いている。炉締め機能の低下はガスの噴出しのみならず、炉内への空気侵入によるガスカロリーの低下や、押し詰まりを発生させる。このため、コークス炉の運転を停止することなく、適切な炉締め機能を回復させることができるコークス炉の補修方法が求められている。
【0005】
そこで例えば特許文献1には、炉体1のレンガの外側を覆う保護板2を新品と取り替え、バックステー3と溶接するコークス炉の補修方法が記載されている。しかしこのような単純な補修方法では、レンガの凹凸に対応することができず、炉締め圧の均一化も期待できない。
【0006】
また、特許文献2には保護板2とレンガとの隙間にモルタル等の充填材を圧入するコークス炉の補修方法が記載されている。この方法は圧入圧力によりある程度はレンガの面圧を管理することができ、レンガの凹凸にも対応することができる利点がある。しかし充填部を完全にシールすることは容易ではないうえに、長時間を要するため実用性に欠けるという問題がある。このほか炉体膨出の激しい部分のレンガを積みなおす方法もあるが、長時間を要するうえにコークス炉の運転中は作業を行いにくいという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、炉体膨張したコークス炉の炉締め機能を、コークス炉の運転を停止することなく回復させることができるコークス炉の補修方法を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明のコークス炉の補修方法は、炉体膨張したコークス炉のバックステーを取り外し、レンガの外表面に圧縮性を有する耐火ファイバー層を形成し、新たなバックステーに設けた押しボルトにより耐火ファイバー層の外面の保護板を耐火ファイバー層が所定量圧縮されるまで押圧し、炉締め力を発生させることを特徴とするものである。なお、レンガの外表面にモルタルを充填したうえで耐火ファイバー層を形成することが好ましい。また、バックステーの炉体側に保護板を仮保持させるとともに、バックステーにこの保護板を炉体側に押圧するための多数の押しボルトを設けた構造体を用いることが好ましい。
【0009】
本発明のコークス炉の補修方法によれば、新たなバックステーに設けた押しボルトとレンガの外表面に当てた耐火ファイバー層の圧縮性とを利用し、レンガの凹凸を吸収しつつ均一な炉締め力を発生させることができる。また本発明のコークス炉の補修方法は、1本ずつのバックステー毎に行うことができるので、熱間補修が可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をその実施の形態により更に詳細に説明する。コークス炉は例えば幅及び高さが15m、長さが150mほどの長尺の大型炉であり、その両側には一定間隔で多数のバックステーが立設されている。本発明のコークス炉の補修方法はコークス炉を運転したまま、熱間で行われる。なお補修は各バックステー毎に順次行われる。
【0011】
最初に、図1に示される炉体膨張したコークス炉から、図2に示すように1本(または両側2本)のバックステー2及び保護板3を炉体1から取り外す。次に、必要に応じてレンガの凹凸部にモルタル4を充填したうえ、図3のようにその外表面にファイバーブランケットを貼り付けて圧縮性を有する耐火ファイバー層5を形成する。この状態では耐火ファイバー層5の表面は、炉体膨張したコークス炉の形状に沿って湾曲している。
【0012】
新たなバックステー6は、図3に示すように例えばH形鋼からなるもので、その炉体1側の面に高さ方向に所定間隔で多数の押しボルト7が設けられている。またこれらの押しボルト7により押し出すことができるように、バックステー6の炉体側に保護板8を仮保持させた構造体としておくことが好ましい。なお、図6にこの構造体の模式的な斜視図を示す。H形鋼の後面リブは幅を狭くして押しボルト7との干渉を回避している。
【0013】
このような新たなバックステー6を図4のように炉体外側の所定位置に立設し、押しボルト7を回転させて耐火ファイバー層5の外面に保護板8を接触させる。この図4の状態からさらに各押しボルト7を回転させ、図5のように耐火ファイバー層5が所定量圧縮されるまで保護板8を押圧する。このように耐火ファイバー層5の圧縮量を観察しながら各押しボルト7を回転させ、上下方向のどの高さ位置においても耐火ファイバー層5の圧縮量がほぼ均等となるようにする。この結果、レンガはどの位置においてもほぼ均等に押圧され、炉高方向に均等な炉締め力を発生させることができる。なお、耐火ファイバー層5の圧縮状態は保護板8の切欠き部分から観察可能である。
【0014】
上記のようにして1本のバックステー6の部分を補修したのち、隣接するバックステー6について同様の作業を繰り返す。このように補修は局部的に行われるので、コークス炉を通常どおり運転したままでよい。
【0015】
図7は補修後の炉体高さ方向の炉締め力の実測値のグラフである。従来の単純な補修方法では、変形したレンガ面を均等に押圧することができなかったため、破線で示すように炉体高さ方向の炉締め力は大きくばらついていた。これに対して本発明の補修方法によれば、実線で示すようにほぼ均一な炉締め力を発生させることが可能となった。この結果、本発明によれば炉体膨張に起因するガス漏れなどのトラブルや、炉体外部機器との接触トラブルもなくすることができ、コークス炉の寿命を延長することが可能となる。
【0016】
また、前記したようにバックステー6の炉体側に保護板8を仮保持させるとともに、バックステー6にこの保護板8を炉体側に押圧するための多数の押しボルト7を設けた構造体を用いることにより、作業時間の短縮を図ることができる。出願人会社における実績によれば、バックステー1本当たりの作業時間を従来の半分にまで短縮することが可能となった。
【0017】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1の発明の補修方法によれば、新たなバックステーに設けた押しボルトにより耐火ファイバー層の外面の保護板を耐火ファイバー層が所定量圧縮されるまで押圧し、炉締め力を発生させることにより、炉体膨張したコークス炉を、運転を停止することなく熱間で補修することができ、しかも炉体高さ方向の炉締め力を均一化することができる。請求項2の発明の補修方法によれば、レンガ表面の凹凸をモルタルで埋めることにより、炉締め力をさらに均一化することができる。請求項3の発明の補修方法によれば、バックステーと保護板と押しボルトを一体化した構造体を用いることにより、より短時間で補修作業が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】補修前の炉体の断面図である。
【図2】バックステーと保護板を取り外した状態を示す炉体の断面図である。
【図3】耐火ファイバー層を形成した状態を示す炉体の断面図である。
【図4】新たなバックステーを立設した状態を示す炉体の断面図である。
【図5】押しボルトを回転させ、補修が完了した状態を示す炉体の断面図である。
【図6】バックステーと保護板と押しボルトを一体化した構造体の斜視図である。
【図7】炉体高さ方向の炉締め力を示すグラフである。
【符号の説明】
1 炉体
2 保護板
3 バックステー
4 モルタル
5 耐火ファイバー層
6 新たなバックステー
7 押しボルト
8 保護板
Claims (3)
- 炉体膨張したコークス炉のバックステーを取り外し、レンガの外表面に圧縮性を有する耐火ファイバー層を形成し、新たなバックステーに設けた押しボルトにより耐火ファイバー層の外面の保護板を耐火ファイバー層が所定量圧縮されるまで押圧し、炉締め力を発生させることを特徴とするコークス炉の補修方法。
- レンガの外表面にモルタルを充填したうえで耐火ファイバー層を形成することを特徴とする請求項1記載のコークス炉の補修方法。
- バックステーの炉体側に保護板を仮保持させるとともに、バックステーにこの保護板を炉体側に押圧するための多数の押しボルトを設けた構造体を用いることを特徴とする請求項1記載のコークス炉の補修方法。
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