JP4046860B2 - 鋳型用粘結剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エステル又は炭酸ガスを硬化剤として鋳型を製造する際に用いる鋳型用粘結剤組成物、及びこれを用いた鋳型造型方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳型の製造に使用する粘結剤として、有機エステルや安全性に優れた炭酸ガスで硬化しうる有機粘結剤が注目されている。
【0003】
こうした有機粘結剤は、例えば特公平7-33464号公報、特公平4-76947号公報、特許第2723376号公報に開示されている。またさらに鋳型強度を改善させるものとして、特開平4-147743号公報、特開平5-320477号公報、特開平5-78553号公報、特開平5-93127号公報、特開平8-206775号公報があるが、まだ満足できるものではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機エステル又は炭酸ガスの何れを硬化剤とした場合でも、鋳型強度を改善できる粘結剤組成物の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルカリ性水溶性フェノール系樹脂と、下記一般式(1)で表されるラクタム化合物とを含有する、鋳型用粘結剤組成物を提供する。
【0006】
【化3】
Figure 0004046860
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリ性水溶性フェノール系樹脂は、フェノール類を大量のアルカリ性物質の存在下、水中でアルデヒド類と反応させることによって得ることができる。フェノール類は、フェノール化合物及びビスフェノール化合物から選ばれる1種、又は2種以上の混合物でも良い。フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、3,5-キシレノール、ノボラックフェノール、その他の置換フェノール等が挙げられ、ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。ビスフェノール化合物はフェノール化合物に対して0.05〜500倍モルが良く、好ましくは0.1〜200倍モルである。なお鋳型強度向上の点から、1価アルコールが添加されていてもよい。1価アルコールはフェノール類に対して0.001〜0.5倍モルが良く、好ましくは0.005〜0.1倍モルである。
【0008】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、2-フルアルデヒド等及びその混合物が挙げられる。相溶性等の点からアルデヒド類はフェノール類及び1価アルコールに対して1.0〜6.0倍モルが良く、好ましくは1.5〜4.0倍モルがよい。
【0009】
アルカリ性物質としては、硬化速度と鋳型強度の点から、アルカリ金属水酸化物をフェノール類の水酸基に対して0.3〜5.0倍モル、好ましくは0.5〜3.0倍モル用いるのが良好である。アルカリ金属水酸化物としては好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びこれらの混合物であり、水酸化カリウムが最も好ましい。
【0010】
反応条件は目的とする分子量に応じ適宜決めればよいが、25〜90重量%水溶液として25℃の粘度が10〜300mPa・Sとするのが好ましく、そのためには25〜90重量%の反応液を50〜100℃で0.5〜10時間反応させればよい。
【0011】
有機エステルを硬化剤とする場合、炭素数3〜10のラクトン類、炭素数1〜10の1価又は多価アルコールと炭素数1〜10の有機カルボン酸より導かれる有機エステル、或いは炭素数1〜8のアルキレンカーボネートが単独で又は混合して用いられる。自硬性鋳型造型法では、γ−ブチロラクトン、プロピオンラクトン、ε−カプロラクトン、ギ酸エチル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、トリアセチン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を用いるのが好ましく、有機エステルを使用するガス硬化性鋳型造型法ではギ酸メチルを用いるのが好ましい。
【0012】
炭酸ガスを硬化剤とする場合は、硼砂や硼酸等の硼酸化合物であるオキシアニオン化合物が不可欠である。これは、オキシアニオン化合物が炭酸ガスを吸収してはじめてアイオノマーを形成し、水溶性フェノール系樹脂を高分子化すると考えられるためである。硼酸や四硼酸ナトリウム10水和物(硼砂)、四硼酸カリウム10水和物、メタ硼酸ナトリウム、五硼酸ナトリウム、五硼酸カリウム等の硼酸塩が好ましい。オキシアニオン化合物のアルカリ性レゾールフェノール系樹脂水溶液100重量部に対する添加量は、鋳型の硬化速度及び強度の点から0.1〜30重量部、好ましくは3〜15重量部が良好である。他のオキシアニオン化合物としては、アルミン酸塩、スズ酸塩等が挙げられる。
【0013】
さらに鋳型強度を向上させる目的で、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシランやγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤を使用することができる。これらは混練砂中に添加して用いてもよいが、粘結剤組成物と併用するのが好ましい。その添加量はアルカリ性レゾールフェノール系樹脂水溶液100重量部に対し0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部が良い。
【0014】
本発明では、一般式(1)で表されるラクタムが、粘結剤組成物中に添加される。
【0015】
【化4】
Figure 0004046860
【0016】
好ましい化合物としてはδ−バレロラクタム、N−メチルピペリドン、N−エチルピペリドン、N−プロピルピペリドン、N−ブチルピペリドン、ε−カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−エチルカプロラクタム、N−プロピルカプロラクタム、N−ブチルカプロラクタム、ヘプトラクタム、N−メチルヘプトラクタム、N−エチルヘプトラクタム、N−プロピルヘプトラクタム、N−ブチルヘプトラクタムが挙げられ、更に好ましくはn=4の化合物、特にε−カプロラクタムが挙げられる。これらのラクタムは1種以上が、アルカリ性フェノール系樹脂100重量部に対し、本発明の目的を効率よく達成する見地から好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部添加される。
【0017】
本発明の鋳型用粘結剤組成物は、一般的には水溶液の形で用いられる。固形分(粘結剤組成物2gを105℃で3時間乾燥)は、鋳物砂と均一な混練が可能な点で好ましくは25〜90重量%、さらに好ましくは50〜85重量%である。
【0018】
本発明の粘結剤組成物を用いて鋳型造型する際、粘結剤組成物をそのまま用いて耐火性粒状材料とミキサー等により混練して混練砂としても良いし、アルカリ性水溶性フェノール系樹脂と一般式(1)で表されるラクタム化合物をそれぞれ準備し、ミキサーに別々に添加して耐火性粒状材料と混練してもよい。混練砂は目的の鋳型に造型され、アルミ鋳物のような非鉄合金や鋳鋼や鋳鉄鋳物を製造するために用いられる。
【0019】
耐火性粒状材料としては、石英質を主成分とする珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂、アルミナボールサンド等が挙げられる。耐火性粒状材料は新砂、再生砂、これらの混合砂の何れでもよい。
【0020】
本発明の粘結剤組成物を用いて鋳物用砂型を水溶性フェノール系樹脂/エステル硬化法で製造する場合は、例えば再生砂100重量部に、硬化剤の有機エステルを0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜2重量部と、本発明の鋳型用粘結剤組成物を0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜5重量部を周知の方法で混練し、従来の自硬性鋳型製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。他方、水溶性フェノール系樹脂/炭酸ガス硬化法においては、例えば再生砂100重量部に、オキシアニオンを含有する本発明の粘結剤組成物0.05〜15重量部、好ましくは0.5〜5重量部を周知の方法で混練し、この混練砂をガス用模型に充填し、二酸化炭素を0.01〜25重量部、好ましくは0.5〜10重量部通気することにより鋳型造型することができる。
【0021】
【実施例】
<鋳型製造用フェノール系樹脂水溶液の調製>
50%水酸化カリウム水溶液と、表1に示すフェノール類及び1価アルコールの溶液に70℃で、表1に示すアルデヒド化合物を徐々に加え、さらに反応液の粘度が25℃で100mPa・sに達するまで反応を続けた。なお水酸化カリウムはフェノール類に対して0.7倍モル用いた。次いでこの水溶液100重量部に対し、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを0.5重量部添加し、濃度調整を行い水溶性フェノール系樹脂1A〜1Hのアルカリ水溶液(固形分50重量%)を得た。
【0022】
【表1】
Figure 0004046860
【0023】
実施例1〜 16 、比較例1〜4
国産珪砂5号100重量部に対し、トリアセチン0.4重量部、表2に示す鋳型製造用粘結剤組成物水溶液2重量部を添加混練し、50mmφ×50mmhの木型に充填した。得られたテストピースを取り出して24時間後の鋳型強度(抗圧力)を測定した。結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
Figure 0004046860
【0025】
実施例 17 19 、比較例5〜7
国産珪砂5.5号100重量部に対し、表3に示す鋳型製造用粘結剤組成物水溶液を2重量部添加混練し、50mmφ×50mmhのガス硬化用木型に充填して、ガス状のギ酸メチルを2重量部通気した。得られたテストピースを取り出して24時間後の鋳型強度(抗圧力)を測定した。結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
Figure 0004046860
【0027】
実施例 20 34 、比較例8〜 11
国産珪砂6.5号を100重量部に対し、表4に示す鋳型製造用粘結剤組成物水溶液を2.5重量部添加混練し、50mmφ×50mmhのガス硬化用木型に充填し、炭酸ガス2.5重量部を通気した。得られたテストピースを取り出して24時間後の鋳型強度(抗圧力)を測定した。結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
Figure 0004046860
【0029】
実施例 35 37
フェノール系樹脂水溶液とラクタム化合物を表5に示す量で別々に珪砂に添加する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0030】
【表5】
Figure 0004046860
【0031】
実施例 38 40
フェノール系樹脂水溶液とラクタム化合物を表6に示す量で別々に珪砂に添加する以外は、実施例17と同様に行った。結果を表6に示す。
【0032】
【表6】
Figure 0004046860
【0033】
実施例 41 43
フェノール系樹脂水溶液とラクタム化合物を表7に示す量で別々に珪砂に添加する以外は、実施例20と同様に行った。結果を表7に示す。
【0034】
【表7】
Figure 0004046860
【0035】
【発明の効果】
前述の一般式(1)のラクタム化合物を含有する本発明の粘結剤組成物を使用して得られる鋳型は、硬化剤が有機エステルでも炭酸ガスでも鋳型強度を高くできる。

Claims (4)

  1. フェノール化合物及び/又はビスフェノール化合物とアルデヒド類との反応によって得られるアルカリ性水溶性フェノール系樹脂と、下記一般式(1)で表されるラクタム化合物を含有する鋳型用粘結剤組成物。
    Figure 0004046860
  2. 前記ラクタム化合物が、前記アルカリ性水溶性フェノール系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部含有される、請求項1の鋳型用粘結剤組成物。
  3. 耐火性粒状材料と、フェノール化合物及び/又はビスフェノール化合物とアルデヒド類との反応によって得られるアルカリ性水溶性フェノール系樹脂と、下記一般式(1)で表されるラクタム化合物を含有する鋳型組成物。
    Figure 0004046860
  4. 耐火性粒状材料と請求項1もしくは2の鋳型用粘結剤組成物、又は請求項の鋳型組成物を用い、且つ硬化剤として有機エステル又は炭酸ガスを用いる鋳型造型方法。
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