JP3897907B2 - 炭酸ガス硬化用粘結剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸ガスを硬化剤として鋳型を造型する際に用いる炭酸ガス硬化用粘結剤組成物、これを含有する炭酸ガス硬化用鋳型組成物、及びこれを用いた鋳型造型方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳型の製造に用いる粘結剤として、安全性に優れた炭酸ガスで硬化しうる有機粘結剤が注目されている。
【0003】
炭酸ガスで硬化しうる有機粘結剤は、例えば特公平4−76947号公報や特許第2723376号公報に開示されている。またこうした粘結剤の鋳型強度改善として、特開平4−147743号公報、特開平5−320477号公報、及び特開平8−206775号公報は、グリコールエーテル類、環状エーテルアルコールのアルキレンオキサイド付加体を粘結剤樹脂の添加剤として用いることを開示している。しかしこれら添加剤を配合した粘結剤は、鋳型強度改善が不十分であり、さらに添加前よりも樹脂粘度が高くなり混練ムラが発生したり、ポンプ等で自動供給する時の定量性が悪い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い鋳型強度を維持しつつ粘結剤組成物の粘度上昇を抑制できる粘結剤の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂と、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコールを含有する粘結剤である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂は、アルカリ性レゾールフェノール系樹脂水溶液と、オキシアニオン化合物と、好ましくは鋳型強度を向上させる他の添加剤とから構成される。
【0007】
アルカリ性レゾールフェノール系樹脂水溶液は、フェノール類を大量のアルカリ性物質の存在下、水中でアルデヒド類と反応させることによって得ることができる。フェノール類は、フェノール化合物及びビスフェノール化合物から選ばれる1種、又は2種以上の混合物又は共縮合樹脂でも良い。フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、3,5-キシレノール、ノボラックフェノール、その他の置換フェノール等が挙げられ、ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等及びその混合物が挙げられる。アルデヒド類はフェノール系に対して1.0〜6.0倍モルが良く、好ましくは1.1〜5.5倍モルがよい。
【0008】
アルカリ性物質としては、アルカリ金属水酸化物をフェノール類に対して0.01〜6.0倍モル、好ましくは0.1〜5.0倍モル用いるのが良好である。アルカリ金属水酸化物としては好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びこれらの混合物であり、水酸化カリウムが最も好ましい。
【0009】
反応条件は目的とする分子量に応じ適宜決めればよいが、25〜90重量%水溶液として25℃の粘度が10〜300mPa・Sとするのが好ましく、そのためには25〜90重量%の反応液を50〜100℃で0.5〜10時間反応させればよい。
【0010】
オキシアニオン化合物は、硼砂や硼酸等の硼酸化合物であり、有機炭酸ガス硬化法に不可欠である。これは、オキシアニオン化合物が炭酸ガスを吸収してはじめてアイオノマーを形成し、水溶性フェノール系樹脂を高分子化すると考えられるためである。硼酸や四硼酸ナトリウム10水和物(硼砂)、四硼酸カリウム10水和物、メタ硼酸ナトリウム、五硼酸ナトリウム、五硼酸カリウム等の硼酸塩が好ましい。オキシアニオン化合物のアルカリ性レゾールフェノール系樹脂水溶液100重量部に対する添加量は、鋳型の硬化速度及び強度の点から0.1〜30重量部、好ましくは3〜15重量部が良好である。他のオキシアニオン化合物としては、アルミン酸塩、スズ酸塩等が挙げられる。
【0011】
鋳型強度を向上させる目的で、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシランやγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤を使用することができる。これらは混練砂中に添加して用いてもよいが、粘結剤組成物と併用するのが好ましい。その添加量はアルカリ性レゾールフェノール系樹脂水溶液100重量部に対し0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5.0重量部が良い。
【0012】
本発明では、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコール、好ましくは芳香族アルコールが、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂に添加される。芳香族アルコールとしては次式
【0013】
【化3】
Figure 0003897907
【0014】
(式中、R1は直鎖又は分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基を示し、R2は水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、フェノキシ基、又は水酸基を示す。)
で表されるものが好ましく、また脂環式アルコールとしては次式
【0015】
【化4】
Figure 0003897907
【0016】
(式中、R3は直鎖又は分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基を示し、nは0又は1の数、Xは脂環族炭化水素基を示す。)
で表されるものが好ましい。
【0017】
より好ましくは、芳香族アルコールは炭素数が7以上20以下、更に好ましくは炭素数7以上14以下のものであり、脂環式アルコールは炭素数が3以上20以下、更に好ましくは炭素数4以上10以下のものである。特に好ましい芳香族アルコールはベンジルアルコール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、2-メトキシベンジルアルコール、2-エトキシベンジルアルコール、1,1-ジメチル-2-フェニルエタノール、フェノキシベンジルアルコールである。特に好ましい脂環式アルコールは、Xがシクロプロパン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエンのものであり、具体的にはシクロヘプタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロプロパンメタノールである。
【0018】
これらのアルコールは、粘結剤組成物中に配合添加して用いられるが、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂の合成段階で添加しても良い。添加量は本発明の目的を効率よく達成するために炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜20重量部である。
【0019】
本発明の炭酸ガス硬化用粘結剤組成物の固形分(粘結剤組成物2gを105℃で3時間乾燥)は、鋳物砂との均一な混練により優れた鋳型強度を得るため好ましくは30〜90重量%、さらに好ましくは40〜85重量%である。
【0020】
本発明の粘結剤組成物を用いて鋳型造型する場合、耐火性粒状材料と本発明の粘結剤組成物とをミキサー等で混練し、ガス硬化用鋳型模型に混練砂を充填した後、炭酸ガスを通気して鋳型を造型することができる。ミキサーを用いて混練する場合、適度なガス発生量で優れた品質の鋳物を得るために、耐火性粒状材料100重量部に対し、本発明の粘結剤組成物を好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部用いる。炭酸ガスの使用量は、鋳型の未硬化を防ぐと共に鋳型の生産性を維持するために、耐火性粒状材料100重量部に対して0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜15重量部である。なお、炭酸ガスは減圧置換硬化法によって通気させてもよい。
【0021】
また、混練砂を得る方法として、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂と、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコールをそれぞれ準備しておき、耐火性粒状材料に、これらを別々に添加し混練することもできる。この時の添加量は、耐火性粒状材料100重量部に対し、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂を0.1〜10重量部、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコールを0.001〜5重量部とするのが好ましく、得られた混練砂を使用し前述したようにして鋳型を造型することができる。なお、混練ムラを抑制する意味で、前述の粘結剤組成物を用いるのが好ましい。
【0022】
耐火性粒状材料としては、石英質を主成分とする珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂、アルミナボールサンド等が挙げられる。また耐火性粒状材料は、新砂、再生砂、或いはこれらの混合砂を用いることができる。
【0023】
本発明の粘結剤組成物、鋳型組成物及び造型方法で得られる鋳型は、アルミ鋳物のような非鉄合金や鋳鋼及び鋳鉄鋳物の製造に用いることができ、鋳造に関する用途に限定はない。
【0024】
【発明の効果】
本発明の粘結剤組成物を用いると、高い鋳型強度を維持しつつ粘結剤組成物の粘度上昇を抑制することができる。
【0025】
【実施例】
以下の実施例における混練や造型条件は、25℃、60%RHとした。
[炭酸ガス硬化用水溶性フェノール樹脂水溶液の合成例1〜4]
表1に示すモル比のアルカリ化合物(A)とフェノール類(P)の溶液に70℃で、フェノール類に対して表1に示すモル比のアルデヒド化合物(F)を徐々に加えた。80℃に昇温し、反応溶液中における水溶性フェノール系樹脂水溶液の粘度が25℃で83mPa・sになるまで反応を続けた。仕込み量に対して硼砂を8重量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを1重量%を加え、樹脂水溶液を得た。
【0026】
【表1】
Figure 0003897907
【0027】
実施例1〜 17 及び比較例1〜5
[炭酸ガス硬化用粘結剤組成物の配合調整]
合成例1〜4で得られた粘結剤に、表2に示すアルコールを10重量%添加配合し、炭酸ガス硬化用粘結剤組成物を調製した。
[粘度上昇指数の測定]
B型粘度計を用いて、アルコールを配合する前と後の粘結剤組成物の25℃における粘度を測定し、次式に従い算出した。
【0028】
【数1】
Figure 0003897907
【0029】
[鋳型強度の測定]
砂温25℃の三河R6号珪砂1.5kgに、表2に示すアルコールが配合された炭酸ガス硬化用粘結剤組成物を45g添加し、バッチミキサーで1分間混練、50mmφ×50mmhのテストピース8個取りのガス硬化用木型に充填後、ガス温度30℃、通気量20リットル/分、ガス圧力0.2MPaで炭酸ガスを30秒間通気した。
その後、直ちにテストピースを抜型し、24時間後の抗圧力(鋳型強度)を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 0003897907
【0031】
実施例 18 21 及び比較例6
合成例1で得られた粘結剤に、ベンジルアルコールを異なる添加量で配合し、24時間後の抗圧力を上記と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
Figure 0003897907
【0033】
実施例 22 27 及び比較例7〜 10
合成例1〜4で得られた粘結剤組成物2.7重量部と表4に示すアルコール0.3重量部をそれぞれ準備しておき、国産珪砂7号100重量部にミキサーで混練し、24時間後の抗圧力及びその混練砂の樹脂混練ムラを評価した。
【0034】
【表4】
Figure 0003897907

Claims (7)

  1. 炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂と、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコールを含有する炭酸ガス硬化用粘結剤組成物。
  2. 前記アルコールが、前記水溶性フェノール系樹脂100重量部に対して1〜30重量部含有される、請求項1の炭酸ガス硬化用粘結剤組成物。
  3. 前記芳香族アルコールが炭素数7以上20以下で次式
    Figure 0003897907
    (式中、R1は直鎖又は分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基を示し、R2は水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、フェノキシ基、又は水酸基を示す。)
    により表され、前記脂環式アルコールが炭素数3以上20以下で次式
    Figure 0003897907
    (式中、R3は直鎖又は分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基を示し、nは0又は1の数、Xは脂環族炭化水素基を示す。)
    により表される、請求項1又は2の炭酸ガス硬化用粘結剤組成物。
  4. 耐火性粒状材料100重量部に対して、請求項1から3の何れか1の炭酸ガス硬化用粘結剤組成物を0.1〜15重量部含有させてなる炭酸ガス硬化用鋳型組成物。
  5. 耐火性粒状材料100重量部に対して、請求項1から3の何れか1の炭酸ガス硬化用粘結剤組成物を0.1〜15重量部含有させてなる混練砂に、炭酸ガスを通気して硬化させる鋳型造型方法。
  6. 耐火性粒状材料100重量部に対して、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂を0.1〜10重量部、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコールを0.001〜5重量部含有する炭酸ガス硬化用鋳型組成物。
  7. 耐火性粒状材料100重量部に対して、炭酸ガス硬化用水溶性フェノール系樹脂を0.1〜10重量部、芳香族アルコール及び/又は脂環式アルコールを0.001〜5重量部含有する混練砂に、炭酸ガスを通気して硬化させる鋳型造型方法。
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