JP4046809B2 - 前駆体ポリマー組成物及び低誘電率絶縁材料 - Google Patents

前駆体ポリマー組成物及び低誘電率絶縁材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁材料及びその前駆体となるポリマー組成物に関する。本発明による絶縁材料は、耐熱性が高く、極めて低い比誘電率を示すと共に、耐O2 プラズマ性に非常に優れているため、その他の特性(グローバル平坦性、耐吸湿性)と相まって電子材料分野における層間絶縁膜として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
電子材料用の層間絶縁膜は、ICの高速化、高集積化に伴い一層の低誘電率化が求められており、無機系、有機系を問わず様々な材料が開発されている。
無機系材料の多くはSiOx 系であり、誘電率を低下させるために多孔質化(ポーラス化)やフッ素による変性(F変性)などを施すことが知られている。例えば、ヒドロシルセスキオキサン(HSQ)を多孔質化することにより比誘電率3.0〜3.5を示す層間絶縁膜が得られることが知られている。また、F変性による低誘電率化でも3.5程度の比誘電率が得られている。
一方、有機系材料では、無機系材料よりも低い比誘電率2.5〜3.0を示す層間絶縁膜が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
電子材料用の層間絶縁膜は、一般に電子材料の製造工程(例えば、CVDによる配線蒸着工程)において、400℃を超える高温に晒される。このような高温環境下では、上記HSQの場合、側鎖のSiH基が分解して多孔質構造の緻密化が起こるため、HSQ由来の層間絶縁膜は電子材料の製造工程において比誘電率が上昇する。また、絶縁膜に撥水性を付与し、誘電率の上昇を防止していたSiH基の分解は、膜の吸湿による誘電率の上昇を引き起こすことにもなる。
F変性を施した絶縁膜の場合、耐熱性は得られるが、フッ素自体に吸湿性があるために膜が吸湿し、実用上3.5よりも低い比誘電率を安定的に示す絶縁膜を得ることは困難である。
また、無機系材料よりも低い比誘電率を示すとはいえ、400℃以上の耐熱性を有する有機系材料はほとんどなく、高温処理に晒される電子材料用の層間絶縁膜に適するものはない。
【0004】
本出願人は、上記観点から、電子材料の製造工程における高温処理後にも低い比誘電率(2.5〜2.7)を安定的に示すセラミックス材料及びその前駆体ポリマーを開発した(特願平8−351064号:発明の名称「ポリオルガノシロキサザン及びその製造方法」)。
電子材料の製造工程には、配線などのパターン形成に使用した後の残留レジストを除去するために酸素(O2 )プラズマ処理を施す工程がある。従って、層間絶縁膜には高い耐O2 プラズマ性が要求される。
【0005】
また、ICの高速化、高集積化は、層間絶縁膜のさらなる低誘電率化を要求している。
従って、本発明の目的は、より一層低い比誘電率を400℃以上の高温処理後にも安定して示す耐熱性を有し且つ耐O2 プラズマ性にも優れた絶縁材料(層間絶縁膜)及びその前駆体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、特定の構造を有するポリオルガノシロキサザンとポリシラザンを所定の割合で組み合わせたポリマー組成物が、これを焼成した場合に、ポリオルガノシロキサザンを単独で焼成した場合よりも低い比誘電率(2.2〜2.5)を400℃以上の高温処理後にも安定して示す耐熱性を有すると同時に、非常に高い耐O2 プラズマ性を示すことを見い出した。
【0007】
すなわち、本発明によると、
〔1〕繰り返し単位として、−RSi(NH)1.5−、−RSi(NH)O0.5−、−RSi(NH)0.5O−及び−RSiO1.5−[式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である]を含み数平均分子量が400〜100000であることを特徴とするポリオルガノシロキサザンと、前記ポリオルガノシロキサザンに対して1〜50重量%の、−(RSiHNH)−(SiHNH)−〔式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜99の整数であり、そしてmは99〜1の整数である〕を繰り返し単位とするポリオリガノシラザン又はペルヒドロポリシラザンとを含むポリマー組成物が提供される。
【0008】
また、本発明によると、〔2〕繰り返し単位として、−RSi(NH)1.5−、−RSi(NH)O0.5−、−RSi(NH)0.5O−及び−RSiO1.5−[式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である]を含み数平均分子量が400〜100000であることを特徴とするポリオルガノシロキサザンと、前記ポリオルガノシロキサザンに対して1〜50重量%の、−(RSiHNH)−(SiHNH)−〔式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜99の整数であり、そしてmは99〜1の整数である〕を繰り返し単位とするポリオリガノシラザン又はペルヒドロポリシラザンとを含むポリマー組成物を焼成することにより得られる、比誘電率が2.7以下であることを特徴とする絶縁材料が提供される。
【0009】
本発明によるポリマー組成物は、高温(例えば、400℃以上)で焼成処理した場合でも極めて低い比誘電率(例えば、2.5以下)を安定して示すと同時に、非常に高い耐O2 プラズマ性を示す絶縁材料を得ることができるので、高集積化電子材料用の絶縁材料(層間絶縁膜)の前駆体として非常に適している。
【0010】
以下、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
〔3〕前記ポリオルガノシロキサザンのRがフェニル基である、〔1〕項に記載の前駆体ポリマー組成物。
〔4〕前記ポリオルガノシロキサザンのRがフェニル基である、〔2〕項に記載の絶縁材料。
〔5〕前記ポリオルガノシラザンが、−(R1 SiHNH)n −(SiH2 NH)m −〔式中、R1 は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基又はアルキルシリル基であり、nは1〜99の整数であり、そしてmは99〜1の整数である〕を主たる繰り返し単位とし且つ、数平均分子量が500〜100000である、〔1〕項又は〔3〕項に記載の前駆体ポリマー組成物。
【0011】
〔6〕前記R1 がメチル基である、〔5〕項に記載の前駆体ポリマー組成物。
〔7〕前記ペルヒドロポリシラザンが、−(SiH2 NH)−を主たる繰り返し単位とし且つ、数平均分子量が500〜20000である、〔1〕項又は〔3〕項に記載の前駆体ポリマー組成物。
〔8〕焼成が、窒素中又は乾燥空気中、350〜450℃で焼成する工程を含む、〔2〕項に記載の絶縁材料。
〔9〕比誘電率が2.5以下である、〔2〕項又は〔8〕項に記載の絶縁材料。
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
ポリオルガノシロキサザン
本発明によるポリマー組成物の主成分となるポリオルガノシロキサザンは、一般式RSiX4−nで示される有機ハロシランを、アンモニア及び水と反応させることによって得られる。前記式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基又はアルキルシリル基であり、Xはハロゲン原子であり、そしてnは1である。
【0013】
アルキル基としては、炭素原子数が1〜7、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1又は2のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、等が挙げられる。特に好ましいアルキル基はメチル基である。
アルケニル基としては、炭素原子数2〜7、好ましくは2〜5のアルケニル基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、等が挙げられる。特に好ましいアルケニル基はビニル基である。
【0014】
シクロアルキル基としては、炭素原子数5〜7のシクロアルキル基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
アリール基としては、炭素原子数6〜18、好ましくは炭素原子数6〜9のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に好ましいアリール基はフェニル基である。
アルキルアミノ基(モノ−、ジ−置換体)及びアルキルシリル基(モノ−、ジ−、トリ−置換体)としては、炭素原子数1〜5の基であることが好ましい。
【0015】
Xのハロゲンとしては、F、Cl、Br及びIが挙げられる。特に好ましいハロゲンはClである。
nは1である。
SiX4−nで示される有機ハロシランの具体例として、メチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、等が挙げられる。特に好ましい有機ハロシランはメチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン及びビニルトリクロロシランである。
【0016】
上記のような有機ハロシランを、必要に応じて反応溶媒中でアンモニア及び水と反応させることができる。使用する場合、反応溶媒は特に限定されず、ルイス塩基、非反応性溶媒又はこれらの混合物のいずれを使用してもよい。
ルイス塩基としては、例えば、第三アミン類(トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、等のトリアルキルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアニリン並びにこれらの誘導体)、立体障害性を有する第二アミン類、フォスフィン、スチピン、アルシン並びにこれらの誘導体を挙げることができる。好ましいルイス塩基は、低沸点でアンモニアより塩基性の小さい塩基、トリメチルフォスフィン、トリエチルフォスフィン)であり、特にピリジン、ピコリンが取扱い性の点で好ましい。
【0017】
非反応性溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素の炭化水素系溶媒;ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベンゼン、等のハロゲン化炭化水素;脂肪族エーテル、脂環式エーテル、等のエーテル類を挙げることができる。好ましい非反応性溶媒の具体例としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、等のハロゲン化炭化水素類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、1,2−ジオキシエタン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、N−メチル−2−ピロリドン、ジグライム、等の炭化水素を挙げることができる。安全性の点から、ジクロロメタン、キシレンを使用することが好ましい。
【0018】
必要に応じて上記のような溶媒の存在下、上記有機ハロシランモノマーRn SiX4-n をアンモニア及び水と反応させる。該モノマーとアンモニア及び水の反応順序は特に限定されない。即ち、該モノマーとアンモニアとを反応させてからその反応混合物に水を加えること、該モノマーと水を反応させてからその反応混合物にアンモニアを加えること、或いは、アンモニア及び水を同時に該モノマーと反応させることができる。
水は、単独で滴下反応させてもよいし、上記溶媒に予め溶解又は分散させておいて反応させてもよい。また、アンモニアは、窒素ガス等の不活性ガス中に拡散させたものを有機ハロシランを含む反応溶媒中に吹き込むことによって反応させることができる。
【0019】
アンモニア及び水との反応温度は、一般に−80℃〜50℃の範囲、好ましくは−20℃〜10℃とする。この反応温度が−80℃よりも低いと、溶媒の融点に達し、使用できる溶媒に制約が生じる。また、−80℃以下にすることは経済的にも好ましくない。また、この反応温度が50℃よりも高いと、反応が急激に進み、反応生成物のゲル化が起こり、収率が低下する。
反応圧力に特に制限はなく、常圧で反応させればよい。
反応時間は、有機ハロシランと水との反応では一般に10〜600分、好ましくは30〜180分とし、有機ハロシランとアンモニアとの反応では一般に10〜180分、好ましくは20〜120分とすることができる。
【0020】
アンモニアと水の量は、それぞれ有機ハロシランモノマーのモル数から計算される必要モル数を基準として10モル%〜90モル%、好ましくは20モル%〜80モル%とし、アンモニアと水のモル数の合計を100モル%とする。
なお、このように合成されたポリマーの物性に影響を及ぼすものではないが、有機ハロシランと水との反応により塩酸が生成し、この時に副反応として一部水素付加反応が起こりポリマー中にSi−H基が生成する可能性がある。しかしながら、この反応は優先的に起こるものではなく、Si−H基が生成したとしてもその量はSi基準で10モル%以下である。
【0021】
このようにして得られたポリオルガノシロキサザンは、主たる繰り返し単位としてRSi(NH) 1.5 RSi(NH)O 0.5 RSi(NH) 0.5 及びRSiO 1.5 を含む線状又は環状の重合体であるが、一般にはそのような線状又は環状の重合体の複合体となる。式中、Rは既述の通りである。これらの繰り返し単位:RSi(NH) 1.5 RSi(NH)O 0.5 RSi(NH) 0.5 及びRSiO 1.5 は、ポリオルガノシロキサザンにおいて任意の割合で存在し、またこれらの配列は規則的である必要はなく、実際には不規則である。
【0022】
本発明のポリオルガノシロキサザンの数平均分子量は400〜100000、好ましくは400〜10000である。この数平均分子量が100000を超えると、常温で架橋反応が起こるためにポリマーのゲル化が進行しやすくなり、取扱いが困難となる。また、この数平均分子量が400未満であると、沸点が低いダイマーとなり、焼成時に飛散し、絶縁材料の物性が悪化する。
【0023】
ポリオルガノシラザン
本発明によるポリマー組成物は、上記ポリオルガノシロキサザンにポリオルガノシラザンを組み合わせることにより調製することができる。好適なポリオルガノシラザンとして、本出願人による特開平3−31326号公報に記載されているランダム共重合シラザンを挙げることができる。特に好適なランダム共重合シラザンは、−(R1 SiHNH)n −(SiH2 NH)m −〔式中、R1 は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアミノ基又はアルキルシリル基であり、nは1〜99の整数であり、そしてmは99〜1の整数である〕を主たる繰り返し単位とし且つ、数平均分子量が500〜100000である。この共重合シラザンは、一般式SiH2 2 (式中、Xはハロゲン原子)で示される無機ジハロシランと一般式RSi(H)X2 で示されるオルガノ(ヒドロ)ジハロシランをルイス塩基と反応させて得られた錯体混合物をアンモニアと反応させることにより合成することができる。ランダム共重合シラザンについての詳細は、上記特開平3−31326号公報を参照されたい。
【0024】
ペルヒドロポリシラザン
本発明によるポリマー組成物は、上記ポリオルガノシロキサザンにペルヒドロポリシラザンを組み合わせることによっても調製することができる。好適なペルヒドロポリシラザンとして、本出願人による特開昭60−145903号公報に記載されているものを挙げることができる。特に好適なペルヒドロポリシラザンは、−(SiH2 NH)−を主たる繰り返し単位とし且つ、数平均分子量が500〜20000である。このペルヒドロポリシラザンは、ハロシランを用いた無機ポリシラザンの合成方法において、原料から最終生成物に至る反応工程において、ハロシランのアダクツを生成せしめる工程を含むことを特徴とする無機ポリシラザンの合成方法により合成することができる。ペルヒドロポリシラザンについての詳細は、上記特開昭60−145903号公報を参照されたい。
【0025】
前駆体ポリマー組成物
本発明による前駆体ポリマー組成物は、上記ポリオルガノシロキサザンと、該ポリオルガノシロキサザンに対して、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%の上記ポリオルガノシラザン又は1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%の上記ペルヒドロポリシラザンとを含む。
本発明による前駆体ポリマー組成物の調製は、上記ポリオルガノシロキサザンと上記ポリオルガノシラザン又は上記ペルヒドロポリシラザンを単に混合して攪拌すればよい。ポリオルガノシロキサザンとポリシラザンの混合は、常温以下の乾燥雰囲気で行うことが好ましい。溶媒を使用する場合には、共通の溶媒を使用することが好ましいが、場合によっては異なる溶媒を用い、得られる前駆体ポリマー組成物を混合溶媒系とすることも可能である。
【0026】
本発明による前駆体ポリマー組成物を焼成することによって、耐熱性に優れた誘電率の低い絶縁材料が得られる。焼成と共に、或いは焼成に代わり、赤外線照射、紫外線照射等を施してもよい。
焼成は、一般には大気中、水蒸気中、窒素中、等、いずれの雰囲気でも実施できるが、水分が存在すると焼成炉内での結露により半導体デバイスを劣化させる恐れがあるため、窒素又は乾燥空気中で行うことが好ましい。
また、焼成雰囲気の圧力に特に制限はなく、常圧であっても、加圧であってもよい。
【0027】
焼成温度は100〜700℃、好ましくは350〜450℃の範囲とする。この焼成温度が100℃よりも低いと、ポリオルガノシロキサザンが十分に硬化することができず、反対に700℃よりも高いと、硬化が進み、緻密な材質となって誘電率が上昇する。また、残留応力レベルも高くなり、割れが生じやすくなる。
【0028】
焼成時間に特に制限はないが、一般には0.5〜2.0時間、好ましくは0.5〜1.0時間の焼成を行う。
前駆体ポリマー組成物の焼成に用いられる焼成装置としては、上記の製造条件を制御することができるものであればいずれの装置でも使用することができる。例えば、マッフル炉、管状炉、等を使用すると便利である。
【0029】
さらに、上記のような低誘電率絶縁材料をコーティングとして提供する場合には、本発明による前駆体ポリマー組成物に溶媒を配合して成る塗布組成物を使用すると便利である。
塗布組成物の溶媒としては、芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン及びトリエチルベンゼン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、飽和炭化水素化合物、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン及びi−デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、エーテル類、例えば、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル及びジペンチルエーテル、並びにケトン類、例えば、メチルイソブチルケトン、等が挙げられる。特に、キシレン、ジブチルエーテル等を溶媒とすることが好ましい。また、溶媒の蒸発を調節するために、二種以上の溶媒を混合して用いることもできる。
溶媒使用量は、その後の塗布方法によっても異なるが、一般に前駆体ポリマー組成物1重量部に対して1.0〜10000重量部、より好ましくは1.0〜100重量部とする。
【0030】
本発明による塗布組成物は、金属材料、無機材料、等、任意の基板に塗布することができる。また、適用する焼成温度に耐えられるものであればプラスチック基板に塗布することも可能である。上記のように、本発明による塗布組成物を焼成して得られる絶縁膜は、400℃よりも高い温度で処理された場合でも低い比誘電率(例えば、2.5以下)を維持できると共に耐O2 プラズマ性に優れているという特徴を有し、特に、高集積化、高速化された次世代半導体用層間絶縁膜として有用であるため、電子材料用基板に塗布することが特に考えられる。
【0031】
塗布手段としては、一般的な塗布方法、即ち、浸漬、ロール塗り、バー塗り、刷毛塗り、スプレー塗り、フロー塗り、スピンコート、等の方法を採用することができる。
塗布後、必要に応じて塗膜を乾燥して溶媒を除去し、次いで上記のように焼成を行う。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
ポリマー1(ポリオルガノシロキサザン)の合成
温度−5℃の恒温槽内に設置した1Lの反応容器内を乾燥窒素で置換した後、乾燥キシレン400mLを入れ、その温度が一定になるまで保持した後、攪拌しながらフェニルトリクロロシラン(PhSiCl3 )105.75グラムを徐々に加えた。
次いで、温度が一定になったことを確認してから、蒸留水4.5グラムを含む含水ピリジン400mLを約30分かけてゆっくりと添加した。このとき、温度の上昇が認められた。
【0033】
反応終了後、所定の温度(−5℃)にした後、反応混合物中にアンモニアを吹き込んだ。
反応終了後約1時間攪拌し、次いで窒素雰囲気下で加圧濾過して濾液750mLを得た。この濾液に乾燥m−キシレン約1000mLを加え、減圧下で溶媒を除去したところ、64グラムの固体状ポリマーが得られた。
このポリマーの数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定したところ870であった。また、重量平均分子量は1300であった。
【0034】
このポリマーをフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)で測定したところ、波数(cm-1)3360にNH基に基づく吸収;3000付近にベンゼン環に起因するC−Hに基づく吸収;1050付近にSi−O−Siに基づく吸収;950付近にSi−N−Siに基づく吸収;1140付近にSi−Phに基づく吸収が確認された。
さらに、29SiNMR分析から、TMS(テトラメチルシラン)基準で−31ppm付近にPhSiN3 のシグナル、−40〜−50ppmにかけてPhSiN2 Oのシグナル、−55〜−65ppmにかけてPhSiNO2 のシグナル、−70〜−80ppmにかけてPhSiO3 のシグナルが観測された。
【0035】
FT−IR及び29SiNMRの分析結果から、このポリマーは主鎖に−(PhSiN3 )−、−(PhSiN2 O)−、−(PhSiNO2 )−及び−(PhSiO3 )−を有するフェニルシロキサザンポリマーであることが同定された。
【0036】
ポリマー2(メチルシラザンランダムポリマー)の合成
特開平3−31326号公報に記載された方法に従い、モノマーとしてMeSiHCl2 (0.5モル)、SiH2 Cl2 (0.5モル)を用い、主鎖が−(MeSiHNH)−、−(SiH2 NH)−からなるメチルシラザンランダムポリマーを合成した。合成されたメチルシラザンランダムポリマーは、コモノマー比n:m=1:1、数平均分子量670及び重量平均分子量1300であった。
【0037】
ポリマー3(ペルヒドロポリシラザン)の合成
特開昭60−145903号公報に記載された方法に従い、モノマーとしてSiH2 Cl2 (0.5モル)を用い、一般式−(SiH2 NH)n −で示されるペルヒドロポリシラザンを合成した。合成されたペルヒドロポリシラザンは、数平均分子量850及び重量平均分子量1400であった。
【0038】
比較例
ポリマー1の20重量%キシレン溶液を調製し、これを0.2μmのフィルターで濾過した。
濾過後の溶液をアルミ蒸着ガラス基板にスピンコート法で塗布して塗膜を形成した。この塗膜を大気中、170℃のホットプレート上で3分間乾燥処理し、その後乾燥空気中、400℃で1時間の焼成処理を施した。
焼成後の被膜にパターニングしたアルミ蒸着を施すことにより、コンデンサーを製作した。このコンデンサーのキャパシタンスを測定して焼成被膜の比誘電率を求めたところ、平均で2.6を示した。この平均値は同一試料について10点測定して得られた値である。
【0039】
また、上記溶液をシリコンウェハー上に塗布し、上記と同じ条件で乾燥、焼成を実施した。
焼成後の被膜の耐O2 プラズマ性を調べるため、ANELVA DEM-451(日電アネルバ(株)製)のプラズマ装置を用い、800ミリトール、100w、5分の条件で酸素プラズマ照射を施した。酸素プラズマ照射前後で被膜の厚さを断差計により測定し、照射後の膜厚残存率を求めたところ、約46%であった。
【0040】
実施例1
ポリマー1及びポリマー2(メチルシラザンランダムポリマー)の20重量%キシレン溶液をそれぞれ調製した。
ポリマー1に対してポリマー2が10重量%となるように、ポリマー1の溶液にポリマー2の溶液を加えて攪拌、混合した。
この混合物を用いて比較例と同様にコンデンサーを製作し、焼成被膜の比誘電率を測定したところ2.44であった。
【0041】
また、比較例と同様に焼成被膜の耐O2 プラズマ性を調べた結果、膜厚残存率が84%となり、比較例(46%)に対して大幅な改善効果が認められた。
酸素プラズマ照射前後の焼成被膜の化学構造をFT−IRスペクトルで比較(図1及び図2)したところ、そのスペクトルに実質的な変化は見られず、本発明による焼成被膜は酸素プラズマ照射に対して化学構造的にも安定していることが認められた。特に、図2より、本発明による焼成被膜は、酸素プラズマ照射後にもSi−Phに基づく吸収(1130cm-1付近)を示していること及び水の吸収ピーク(3500cm-1付近)を示さないことから、耐吸湿性が高く、ひいては本発明の特徴となる非常に低い比誘電率を安定に示すことが理解される。
【0042】
実施例2及び実施例3
ポリマー1に対するポリマー2の混合割合を、それぞれ20重量%(実施例2)及び30重量%(実施例3)としたこと以外、実施例1と同様に比誘電率及び酸素プラズマ照射後の膜厚残存率を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
表1
例 ポリマー2の割合 比誘電率 膜厚残存率
比較例 0重量% 2.6 46.0%
実施例1 10重量% 2.44 84.0%
実施例2 20重量% 2.45 85.0%
実施例3 30重量% 2.6 87.0%
【0044】
表1より、ポリオルガノシロキサザンにメチルシラザンランダムポリマーを配合してなる前駆体ポリマー組成物から得られた焼成被膜(実施例1〜3)は、ポリオルガノシロキサザンのみから得られた焼成被膜(比較例)と同等又はそれより低い比誘電率を示すと同時に、大幅に改善された耐O2 プラズマ性を示すことがわかる。
【0045】
実施例4及び実施例5
ポリマー1及びポリマー3(ペルヒドロポリシラザン)の20重量%キシレン溶液をそれぞれ調製した。
ポリマー1に対するポリマー3の混合割合を、それぞれ10重量%(実施例4)及び20重量%(実施例5)としたこと以外、実施例1と同様に比誘電率及び酸素プラズマ照射後の膜厚残存率を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
表2
例 ポリマー3の割合 比誘電率 膜厚残存率
比較例 0重量% 2.6 46.0%
実施例4 10重量% 2.2 62.0%
実施例5 20重量% 2.8 75.0%
【0047】
表2より、ポリオルガノシロキサザンにペルヒドロポリシラザンを配合してなる前駆体ポリマー組成物から得られた焼成被膜は、ペルヒドロポリシラザンの配合割合が10重量%の場合(実施例4)に、2.2という極めて低い比誘電率を示したことがわかる。また、本発明による前駆体ポリマー組成物から得られた焼成被膜(実施例4及び実施例5)は、ポリオルガノシロキサザンのみから得られた焼成被膜(比較例)と比較して大幅に改善された耐O2 プラズマ性を示すことがわかる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によるポリマー組成物は、400℃以上の高い温度で焼成処理した場合でも極めて低い比誘電率(例えば、2.5以下)を安定して示すと同時に、非常に高い耐O2 プラズマ性を示す絶縁材料を得ることができるので、高速高集積化電子材料用の絶縁材料(層間絶縁膜)の前駆体として非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた焼成被膜の酸素プラズマ照射前におけるフーリエ変換赤外(FT−IR)分光分析のスペクトルを表すグラフである。
【図2】実施例1で得られた焼成被膜の酸素プラズマ照射後におけるフーリエ変換赤外(FT−IR)分光分析のスペクトルを表すグラフである。

Claims (2)

  1. 繰り返し単位として、RSi(NH) 1.5 RSi(NH)O 0.5 RSi(NH) 0.5 及びRSiO 1.5 [式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である]を含み数平均分子量が400〜100000であることを特徴とするポリオルガノシロキサザンと、前記ポリオルガノシロキサザンに対して1〜50重量%の、−(RSiHNH)−(SiHNH)−〔式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜99の整数であり、そしてmは99〜1の整数である〕を繰り返し単位とするポリオガノシラザン又はペルヒドロポリシラザンとを含む絶縁材料前駆体ポリマー組成物。
  2. 繰り返し単位として、RSi(NH) 1.5 RSi(NH)O 0.5 RSi(NH) 0.5 及びRSiO 1.5 [式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基である]を含み数平均分子量が400〜100000であることを特徴とするポリオルガノシロキサザンと、前記ポリオルガノシロキサザンに対して1〜50重量%の、−(RSiHNH)−(SiHNH)−〔式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、nは1〜99の整数であり、そしてmは99〜1の整数である〕を繰り返し単位とするポリオガノシラザン又はペルヒドロポリシラザンとを含むポリマー組成物を焼成することにより得られる、比誘電率が2.7以下であることを特徴とする絶縁材料。
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