JP4045052B2 - ヒドロキシエーテルの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄剤、油剤、溶剤、乳化剤等として有用なヒドロキシエーテルの工業的な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシエーテルは、乳化作用を有することが知られている。アルキル鎖が長いもの、あるいはエーテル結合の数がヒドロキシル基の数より多いものは、親油性が強くなるため、油剤、洗浄剤、乳化剤として化粧品等の分野への利用が期待されている。
かかるヒドロキシエーテルの製造方法としては例えば、エピクロロヒドリンとアルコールをアルカリ存在下で反応させ、得られたアルキルグリシジルエーテルにアルコラートを反応させる方法(ジアルキルグリセリルエーテルの製法)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記技術では、有機ハロゲン化物を使用すること、またそれに伴い多量の塩が副生するという問題を有する。このため、有機ハロゲン化物を使用する必要がなく、また塩等が多量に副生することなく、簡単な操作でヒドロキシエーテルを高収率で製造する方法、特にエーテル結合がヒドロキシル基より多いヒドロキシエーテルの製造法が求められていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、3価以上の多価アルコールとカルボニル化合物を、水素圧が常圧から2MPaの水素雰囲気下、パラジウム系触媒の存在下、10〜200℃で反応させた(前期反応)後水素化分解(後期反応)すれば、容易にヒドロキシエーテルが得られることを見出した。そして該方法は、中間体を単離、精製する必要がなく、前期反応と後期反応を連続して行えるため、操作が簡単で高収率であること、有機ハロゲン化物を使用する必要がなく、また塩等が副生することがないことを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、3価以上の多価アルコールとカルボニル化合物を水素圧が常圧から2MPaの水素雰囲気下パラジウム系触媒の存在下、10〜200℃で反応させた後、水素化分解することを特徴とするヒドロキシエーテルの製造法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において用いるアルコールは、3個以上の奇数個のヒドロキシル基を有する多価アルコールが好ましく、3又は5個のヒドロキシル基を有するものがより好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、アラビットが特に好ましい。
【0007】
本発明においてカルボニル化合物は、カルボニル基を1個有する炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状の化合物が好ましく、カルボニル基を1個有する炭素数1〜19の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜19の直鎖もしくは分岐鎖のケトン、又は炭素数5〜8の環状ケトンがより好ましく、カルボニル基を1個有する炭素数1〜12の脂肪族アルデヒド、炭素数3〜6の直鎖もしくは分岐鎖のケトン、又は炭素数5〜6の環状ケトンが特に好ましい。このうちプロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、イソノニルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが最も好ましい。本発明においては、かかるカルボニル化合物を1種以上用いることができる。
【0008】
前期反応に用いるパラジウム系触媒としては、カーボン、アルミナ、シリカアルミナもしくはシリカに担持されたもしくは担持されないパラジウム触媒、水酸化パラジウム又は酸化パラジウムが好ましく、カーボンに担持されたパラジウム触媒が特に好ましい。触媒は無水物、含水率が20〜60重量%の含水物のいずれでもよい。担体に担持する場合、触媒の担持量は、2〜10重量%が好ましい。触媒の使用量は、例えば担体に5重量%担持されたものの場合、反応の促進と経済性の観点から、3個以上の奇数個のヒドロキシル基を有するアルコールに対して0.1〜10重量%、特に0.5〜8重量%が好ましい。また本発明で用いる触媒は、イオン交換水30gに触媒粉末2gを分散させたときのpHが8以下であることが好ましい。
【0009】
3価以上の多価アルコールとカルボニル化合物との反応(前期反応)は、10〜200℃で行うことが必要であり、特にカルボニル化合物の添加方法に応じて、温度を操作することが好ましい。
カルボニル化合物を初めから滴下して加える場合は、水素雰囲気下、好ましくは水素を系内に流通させながら、好ましくは70℃以上、特に好ましくは100〜200℃で反応を行う。カルボニル化合物の滴下量は、3価のアルコールの場合、アルコールに対して2〜5倍モル、特に2〜4倍モルが好ましい。反応時間は、2〜30時間、特に2〜25時間が好ましい。5価のアルコールの場合のカルボニル化合物滴下量は、3価のアルコールの場合の2倍となる。
カルボニル化合物を初め滴下せずにアルコールとともに仕込む場合は、水素雰囲気下(流通させても、しなくてもよい)好ましくは10〜100℃で、特に好ましくは20〜70℃で、好ましくは0.5〜10時間、特に好ましくは0.5〜5時間攪拌する。カルボニル化合物の仕込み量は、3価のアルコールの場合、アルコールに対して、好ましくは1〜1.5倍モル、特に好ましくは、1〜1.2倍モルである。5価のアルコールの場合は、3価のアルコールの場合の2倍が好ましい。その後、好ましくは水素を系内に流通させ、反応温度を好ましくは70℃以上、特に好ましくは100〜200℃に昇温し、カルボニル化合物を、3価のアルコールでは、アルコールに対して、好ましくは1〜3倍モル、特に好ましくは1〜2倍モル滴下する。反応時間は2〜20時間、特に2〜15時間が好ましい。
【0010】
水素圧は、常圧〜2MPaであることが必要であり、常圧〜1MPaが好ましい。水素は系内に存在していればよいが、カルボニル化合物を滴下する場合には、水素を流通させることが特に好ましい。水素の流通量は、反応スケールに応じて適宜選択できるが、例えば70mLのスケールの場合、0.7〜2100mL/minが好ましく、0.7〜700mL/minが特に好ましい。ここでスケールとは反応容器の容量である。水素の流通は連続的、断続的のいずれでもよいが、反応をスムーズに進行させるためには連続的に行うことが好ましい。また反応系内に流通させた水素は、そのまま大気中に放出してもよいが、系外に出た水素を循環ライン等で再度系内に戻して再度流通させることが、水素の有効使用の観点から好ましい。
【0011】
カルボニル化合物の滴下速度は、1Lスケールで0.2〜360g/hr、特に1.2〜120g/hrが好ましい。1Lスケールで0.2〜360g/hrであれば、エーテルアセタールを高収率で製造することができる。また滴下時間は0.5〜20時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましく、1〜10時間が特に好ましい。滴下方法は連続的、断続的のいずれでもよい。また滴下終了後1〜5時間撹拌を継続するのが好ましい。
【0012】
次いで水素化分解(後期反応)する。水素化分解は、上記触媒存在下で密閉方式又は水素流通方式で行うことができる。好ましくは、密閉方式である。該水素化分解により、ヒドロキシル基とエーテル結合が生成する。密閉方式で行う場合、水素圧は、常圧〜30MPaが好ましく、5〜25MPaが特に好ましい。水素化分解の時間に特に制限はないが、例えば1〜20時間が好ましい。水素化分解の温度は、両方式とも特に制限はないが、100〜300℃、特に120〜250℃が好ましい。
【0013】
水素化分解終了後、カルボニル化合物、触媒等を除去し、適宜精製等することにより、ヒドロキシエーテルを得ることができる。
【0014】
本発明の方法は、エーテル結合の個数がヒドロキシル基の個数より1個多いヒドロキシエーテルの製造に適しており、ジアルキルヒドロキシエーテル、トリアルキルヒドロキシエーテルの製造により適しており、特に1,3−ジヘキシルグリセリルエーテル、1,3−ジペンチルグリセリルエーテル、1,3−ビス(3−メチルブチル)グリセリルエーテル、1,3−ジオクチルグリセリルエーテル、1,3−ビス(1,3−ジメチルブチル)グリセリルエーテル、トリメチロールプロパンジヘキシルエーテル、トリメチロールエタンジヘキシルエーテル、キシリトールトリヘキシルエーテルの製造に適している。
【0015】
【実施例】
実施例1 1,3−ジヘキシルグリセリルエーテルの製造
水素ガス導入管、撹拌装置及び還流脱水管を備えた200mLのオートクレーブに、グリセリン36.8g(0.4モル)、触媒としてカーボンに対して5重量%担持されたパラジウム(5%Pd−C、pH7.2)2.2gを仕込み、水素ガスを170mL/minで連続的に流通しながら、150℃に昇温後、ヘキシルアルデヒド96g(0.96モル)を8時間かけて滴下し、さらにその後2時間撹拌した。次いで密閉系にもどし、温度190℃、水素圧20MPaで8時間撹拌した。反応終了後、触媒を濾過により、低沸分を減圧により除去して、目的の1,3−ジヘキシルグリセリルエーテル91.5g(0.35モル)を無色透明な液体として得た。単離収率は88%であった。この方法は、中間生成物を単離、精製する必要がないため操作が容易であり、有機ハロゲン化物を使用する必要がなく、また塩の副生もない優れたものであった。
【0016】
実施例2〜8
表1及び2に示す条件で、実施例1の方法に準じて各ヒドロキシエーテルを製造した。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
比較例1 特開昭56−163281号公報に準じた方法による1,3−ジオクチルグリセリルエーテルの合成
(1)オクチルグリシジルエーテルの合成
還流冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌装置を備えた1Lフラスコに、水酸化ナトリウム80g及び水87gを仕込み、水酸化ナトリウムを溶解させた。50℃まで昇温した後、オクチルアルコール130g及びテトラブチルアンモニウムブロミド2gを添加し、50℃で1時間攪拌した。次いでエピクロロヒドリン185gを1時間かけて滴下した後、3時間熟成した。
析出したNaClを溶解するために、水を150g加え二層分離した。分別した油層を2回水洗した後、減圧下で蒸留し、オクチルグリシジルエーテル158gを得た。
(2)1,3−ジオクチルグリセリルエーテルの合成
還流冷却器、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌装置を備えた500mLフラスコに、水酸化ナトリウム40g及び水40gを仕込み、水酸化ナトリウムを溶解させた。50℃まで昇温した後、オクチルアルコール65g(0.5モル)、及びテトラブチルアンモニウムブロミド1gを添加し、1時間攪拌した。次いで、オクチルグリシジルエーテル84g(0.45モル)を1時間かけて滴下した後、3時間熟成した。
析出したNaClを溶解するため、水を70gを加え、二層分離した。分別した油層を二回水洗した後、減圧下で蒸留し、1,3−ジオクチルグリセリルエーテル120gを得た。該方法は、実施例4と比べて反応が2段階のため、操作が煩雑であり、また塩の副生量が多かった。
【0020】
【発明の効果】
本発明の方法を用いれば、有機ハロゲン化物を使用する必要がなく、また塩等が副生することなく、簡単な操作でヒドロキシエーテルを高収率で製造できる。
Claims (3)
- 3価以上の多価アルコールとカルボニル基を1個有するカルボニル化合物を、水素圧が常圧から1MPaの水素雰囲気下、パラジウム系触媒の存在下、10〜200℃で反応させた後、水素圧が5〜25MPaの水素雰囲気下で水素化分解反応を行うことを特徴とするヒドロキシエーテルの製造法。
- 反応時、水素を流通させる操作を含む、請求項1記載のヒドロキシエーテルの製造法。
- 反応時、カルボニル化合物を滴下させる操作を含む請求項1又は2記載のヒドロキシエーテルの製造法。
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