JP3871731B2 - エーテル化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエーテル化合物の製造法に関する。さらに詳しくは、溶剤、化粧料、洗浄剤組成物、潤滑剤、乳化剤等に広範囲に使用可能なエーテル化合物を、高収率で、簡便かつ安価に供給できるエーテル化合物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エーテル化合物はジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が溶剤として利用されている。しかし、これらより分子量の大きいもの、あるいは非対称型のものは合成が困難なため、ほとんど利用されていないのが現状である。
特に化粧料等に配合できる油剤として、エーテル化合物は、現在汎用されているエステル系の油剤に比べ、べとつかず、しかも加水分解もしないので、その有用性が高くなってきている。
【0003】
また、エーテル化合物は、洗浄剤組成物としての油剤あるいは新しい非イオン活性剤としての利用も考えられる。さらには、溶剤、潤滑剤、乳化剤等への利用も可能である。
上記のような理由からもエーテル化合物の利用に対する期待は高まっているが、本当に有用なエーテル化合物を工業的レベルで、高収率で簡便かつ安価に製造できないのが現状である。
【0004】
従来から知られているエーテル化合物の合成に用いられる方法としては、例えば、アルコラートとハロゲン化アルキルからの合成(ウィリアムソン合成法)、アルコールとエステル系化合物からの合成、アルコール間の酸による脱水反応からの合成、アルコールのオレフィンへの付加による合成等が一般的である。
【0005】
しかし、アルコラートとハロゲン化アルキルからの合成では、アルコラートを生じさせるためのアルコールと当量の金属(Na、K等)、あるいはアルカリが必要であり、さらには反応後、それに伴う多量の塩が生成し、工業的には好ましくない。
また、アルコールとエステル系化合物からの合成については、エステル化合物がジメチル硫酸、ジエチル硫酸等に限定され、メチルエーテル、エチルエーテルの合成には好ましいが、これらの化合物より炭素数が多いエーテル化合物を合成するのは困難である。
【0006】
アルコール間の酸による脱水反応では対称型エーテル化合物の合成には適するが、非対称型エーテル化合物の合成は困難である。
また、アルコールのオレフィンへの付加による合成では、オレフィン化合物が限定されたり、また、使用する触媒とともにかなり高価なものが多く、さらには、オレフィン、触媒ともに回収再利用も困難なものが多く、工業的には適さない。
【0007】
また、例えば、特開昭48−33037号公報には各種モノエーテル類の利用が開示されているが、その合成法としてウィリアムソン法が有利と明記してある。しかし、先にも述べたように、ウィリアムソン法は工業的レベルでは好ましくない。
更に、エーテル化合物の利用法が、特開昭48−5941号公報、米国特許第4009254号明細書に開示されているが、これらもウィリアムソン法がほとんどである。
【0008】
その他、エーテルの合成法として、アルコールとカルボニル化合物から製造する方法がある。例えば、J. Chem. Soc., 5598(1963)、Chem. Commun., 422(1967) にアルコール過剰系において、常圧水素雰囲気下、酸性触媒を用いた条件下エーテル化合物を合成する方法が記載されている。
しかし、それらはすべてアルコールが大過剰系であり、しかもメタノール、エタノール、プロピルアルコールといった低級アルコールの使用のみであり、炭素数が6を超える高級アルコールや多価アルコールについては記載されていない。
また、J. Org. Chem., 26, 1026(1961) には、各種ケタールの水素化分解反応によるエーテルの合成法が開示されているが、これについても炭素数が6以下の低級アルコールが中心であり、高級アルコールや多価アルコールのエーテル化の記載はなく、一般的でない。また、この反応においては、一旦、ケタールを合成しなければならないという欠点もある。
【0009】
また、近年、高級アルコールを用いたエーテル化合物の合成例として、強酸を触媒としたトリエチルシランによる還元法が開発され、高級アルコールと各種カルボニル化合物から各種エーテル化合物が合成されているが(Chemistry letters, P.743-746, 1985) 、強酸、トリエチルシラン等が高価なこともあり、工業的には好ましい方法とはいえない。
【0010】
また、米国特許第5446210号明細書には、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のカルボニル化合物とを、水素化触媒の存在下、高温で反応させてポリオールエーテルを製造する方法が記載されている。しかしこの方法では収率が低く、高収率でポリオールエーテルを得ることはできない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記で述べたように、エーテル化合物、特にエーテル結合を2個以上有するエーテル化合物は、その用途が期待されながら、製造が困難であるため汎用的に利用できず、高収率で簡便かつ安価に供給できるエーテル化合物の製造法が望まれていた。
従って、本発明の目的は、溶剤、化粧料、洗浄剤組成物、潤滑剤、乳化剤等への利用として有用な、エーテル結合を2個以上有するエーテル化合物を、高収率で簡便かつ安価に供給できる製造法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、エーテル結合を2個以上有するエーテル化合物を高収率で簡便かつ安価に製造する方法について鋭意検討を行った結果、原料として、多価ヒドロキシ化合物、又は多価カルボニル化合物を用い、反応により副生する水を除去しながら反応を行うことにより、一段階で、しかも高収率で、エーテル結合を2個以上有するエーテル化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
すなわち本発明は、ヒドロキシ化合物あるいはカルボニル化合物の少なくとも1種として多価化合物を用い、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を水素雰囲気下、触媒を用いて反応させてエーテル化合物を製造するに際し、反応により副生する水を除去しながら反応を行うことを特徴とするエーテル化合物の製造法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明においては、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を水素雰囲気下、触媒を用いて反応させてエーテル化合物を製造するに際し、ヒドロキシ化合物あるいはカルボニル化合物の少なくとも1種として多価化合物を用いるが、具体的な方法としては、多価アルコールあるいはその誘導体と1価のカルボニル化合物とを反応させる方法、1価のヒドロキシ化合物と多価カルボニル化合物とを反応させる方法、多価アルコールあるいはその誘導体と多価カルボニル化合物とを反応させる方法等がある。
【0015】
本発明に用いられる多価アルコールあるいはその誘導体としては、水酸基を2〜10個有する化合物が挙げられ、具体的には、炭素数2〜20のジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖あるいはこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの中では炭素数2〜20、好ましくは2〜10のジオール、グリセリンあるいはこれらのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる多価カルボニル化合物としては、カルボニル基を2〜10個有する化合物が挙げられ、具体的には、炭素数2〜20の鎖状あるいは環状のジカルボニル化合物等が挙げられる。これらの中では炭素数2〜10の鎖状ジカルボニル化合物、シクロヘキサンジオンが特に好ましい。
【0017】
本発明において、上記多価アルコール又はその誘導体と反応させる1価のカルボニル化合物としては、一般式(1)
【0018】
【化1】
【0019】
〔式中、R1, R2は水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基あるいはアルケニル基を示し、R1, R2は同一であっても異なっていてもよい。また、R1, R2が結合した環状構造であってもよい。〕
で表される化合物が挙げられる。
【0020】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、ピナコロン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、2,6,6−トリメチルノナノン−4、6−メチル−5−ヘプテノン−2等の鎖状ケトン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン等の環状ケトン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、ヘキサデシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、エイコシルアルデヒド等の直鎖アルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、メチルヘプタデシルアルデヒド等の分岐アルデヒドなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0021】
これらのカルボニル化合物の中では、炭素数1〜12の鎖状ケトン、脂肪族アルデヒドあるいは炭素数5〜8の環状ケトンが好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)等の炭素数3〜6の鎖状ケトンや、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ドデシルアルデヒド等の炭素数1〜12、更には3〜8の脂肪族アルデヒド、シクロヘキサノン等の環状ケトンが特に好ましく、更にはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)が特に好ましい。
これらのカルボニル化合物は、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0022】
本発明において、上記多価カルボニル化合物と反応させる1価のヒドロキシ化合物としては、一般式(2)
R3−(OA)n-OH (2)
〔式中、R3は炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基あるいはアルケニル基、もしくは炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。 Aは炭素数2〜3のアルキレン基を示し、n個のA は同一でも異なっていてもよい。nは0〜200 、好ましくは0〜30の数を示す。〕
で表される化合物が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−トリデシルアルコール、n−テトラデシルアルコール、n−ペンタデシルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、n−エイコシルアルコール等の直鎖飽和アルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール、2−ヘプチルウンデシルアルコール、2−オクチルドデシルアルコール、2−デシルテトラデシルアルコール、2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクチルアルコール、次式
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、a, bは、 a+b=14であり、 a=b=7を頂点とする分布をもつ)
で表されるメチル分岐イソステアリルアルコール、2−テトラデシルオクタデシルアルコール等の飽和分岐アルコール、9−オクタデセニルアルコール、ファルネシルアルコール、アビエチルアルコール、オレイルアルコール等のアルケニルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(イソプロピルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のエチレングリコールのモノエーテル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(イソプロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のジエチレングリコールのモノエーテル類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノテトラデシルエーテル等のトリエチレングリコールのモノエーテル類、1,4−ブタンジオールモノヘキシルエーテル、2−メチル−1,3−プロパンジオールモノオクチルエーテル、1,6−ペンタンジオールモノヘキシルエーテル、2,2'−ジメチルプロパンジオールモノオクチルエーテル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールモノヘキシルエーテル等のアルキレングリコールのモノエーテル類、上記アルコールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドあるいはブチレンオキサイド付加物、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノールなどが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0026】
これらのヒドロキシ化合物の中では、炭素数1〜22、特に6〜22の脂肪族アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、イソプロピルカルビトール、ブチルカルビトール、又は炭素数1〜22、特に6〜22の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドあるいはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加物(平均付加モル数 0.1〜20)、炭素数5〜8のシクロアルカノールが好ましい。
これらのヒドロキシ化合物は1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明の製造法において、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物の仕込み比は、特に限定されないが、通常、ヒドロキシ化合物/カルボニル化合物(当量比)=30/1〜1/30が好ましく、特に20/1〜1/20、更に特に10/1〜1/10が好ましい。ヒドロキシ化合物が低分子量で容易に除去できるものであれば、ヒドロキシ化合物を過剰に用いてカルボニル化合物をすべて反応させるのが好ましい。また、ヒドロキシ化合物が分子量が大きく、さらには常温等で固化するものであれば、カルボニル化合物を過剰に用い、除去しにくいヒドロキシ化合物をすべて反応させるのが好ましい。ヒドロキシ化合物/カルボニル化合物の当量比が上記範囲以外でも収率にはそれほど影響を与えないが、経済的ではない。
【0027】
本発明においては、反応により副生する水を除去しながら反応を行うことが必要であるが、本発明において、反応により副生する水を除去するということは、反応系外に水を除去することはもちろん、反応系内において、脱水剤等により水を除去する場合も含まれる。具体的に水を除去する方法としては、脱水剤の存在下に反応を行うことにより水を除去する方法、水素等の気体を流通させながら水を除去する方法、共沸脱水等により水を留去する方法等の方法が挙げられる。これらの方法の中では脱水剤の存在下に反応を行うことにより水を除去する方法、あるいは水素を流通させながら水を除去する方法が好ましく、特に脱水管を備えた反応装置を用い水素を流通させながら反応により副生する水を系外に除去し、かつ水と共に系外に出た未反応原料を系内に戻す方法が好ましい。
【0028】
脱水剤の存在下に反応を行うことにより水を除去する方法において、用いられる脱水剤とは、液体の乾燥等に用いられるいわゆる乾燥剤も含んだ意味のものである。
一般に脱水剤の脱水能の発現は、水の物理吸着や化学吸着もしくは化学反応に基づくが、本発明で用いられる脱水剤はその脱水能の発現機構に特に制限を受けず、脱水能あるいは吸水能を有し、反応により副生する水を実質的に除去し、目的とするエーテル化反応を速やかに進行させるものであればいずれのものでもよい。尚、脱水剤の中でも、実質的に脱水能以外の反応、例えば触媒を溶解したり、カルボニル化への二量化反応を起こしたりする、強酸や強アルカリ等をそのまま用いるのは好ましくないが、強酸や強アルカリについても、反応系に直接接触しないように工夫すれば使用できることは言うまでもない。
【0029】
本発明で用いられる好ましい脱水剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、塩化カルシウム等の無機塩類、好ましくはこれらの無水物、水酸化カルシウム等の水酸化物、酸化マグネシウム等の酸化物、モレキュラーシーブ等の結晶性ゼオライト、シリカゲル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。これらの脱水剤の中では、無機塩類の無水物、結晶性ゼオライトが好ましく、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブが、更には無水硫酸マグネシウムが特に好ましい。
【0030】
本発明において脱水剤の使用量は特に限定されないが、使用するヒドロキシ化合物に対して 0.1〜50当量%が好ましく、1〜30当量%が更に好ましい。
このような脱水剤の存在下に反応を行うことにより水を除去する方法は、特別な反応装置が不要で、脱水剤の添加だけで簡便に水を除去することができるので非常に好ましい。
【0031】
また、本発明においては、水素等の気体を流通させながら、反応により副生する水を反応系外に除去することもできる。本発明に用いられる水素の流通量は、反応のスケールに応じて適宜選べばよいが、例えば 0.5〜1リットルのスケールでは0.01〜30リットル/min が好ましく、0.01〜10リットル/min が更に好ましい。水素の流通量を0.01リットル/min 以上にすることで水が系外へ除去されやすく、反応は速くなる。また水素の流通量が30リットル/min 以下であると水とともに除去される未反応原料のヒドロキシ化合物あるいはカルボニル化合物等も少なくなるので好ましい。但し、この場合でも、水とともに除去されるヒドロキシ化合物やカルボニル化合物等の未反応原料を、例えば分留や脱水剤により水を除去後、再び反応系内へ戻すことで、反応は滞ることなく行うことができる。また、水素の流通は反応中、連続的に行ってもよいし、断続的に行っても良いが、反応をスムースに進行させるためには、連続的な流通が好ましい。
【0032】
更に、反応系内に流通させた水素はそのまま大気中へ放出しても構わないが、水素を有効に使用するためには、系外に出た水素を循環ライン等で再度系内に戻して流通させ、循環させながら反応に利用するのが効率的で好ましい。
このような水素を流通させながら水を除去する方法は、更に添加される試薬もなく、水素と水の分離も容易で、後処理も簡便であるという利点があり非常に好ましい。
【0033】
また、本発明においては、反応により副生する水を留去することにより反応系外に除去することもできる。水を留去する方法としては、特に限定されないが、例えば、共沸脱水等の方法が挙げられる。また、この際、未反応原料と共に水を留去する方法が好ましい。尚、留去後、水と未反応原料は分離し、未反応原料は反応系内に戻すのが好ましい。
共沸脱水の方法としては、例えば、共沸脱水装置を用い、反応と水の留去とを連続的に行う方法はもちろん、例えば一旦反応を行った後、共沸脱水を行い、再び反応を行うような、反応と水の留去を段階的に行う方法でも良い。反応をスムーズに進行させるためには連続的に行う方が好ましい。また、脱水を効率良く行うために、水素を流通しながら共沸脱水を行っても良い。
【0034】
本発明の共沸脱水により水を除去して反応を行う方法において、用いられる共沸溶媒としては、反応原料のカルボニル化合物又はヒドロキシ化合物はもちろん、反応に全く悪影響を及ぼさない溶媒を用いてもよい。反応に全く悪影響を及ぼさない溶媒を用いて共沸脱水を行う場合、用いられる好ましい溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。反応に全く悪影響を及ぼさない溶媒を用いる場合の溶媒の使用量は特に限定されないが、反応液に対して1〜2倍容量が好ましい。
【0035】
本発明において、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を反応させる際に用いられる触媒としては、カーボン、シリカアルミナ、ゼオライト、アルミナ、シリカ等の担体に適度に担持されたパラジウム触媒、あるいは水酸化パラジウム、酸化パラジウム等のパラジウム化合物、カーボン、アルミナ等の担体に適度に担持されたルテニウム、ロジウムあるいは白金触媒、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化白金等が挙げられる。また、イリジウム、オスミウム、レニウム等の触媒も用いることができる。これらの触媒の中で、好ましくはパラジウム系触媒、更に好ましくはカーボン、シリカアルミナ、アルミナもしくはシリカに担持されたパラジウム触媒、水酸化パラジウム又は酸化パラジウムであり、特にカーボンに担持されたパラジウム触媒が好ましい。
【0036】
本発明において触媒は、通常カーボン、アルミナ等の担体に対して2〜10重量%の割合で担持して使用するが、担体に担持せずにそのまま使用しても構わない。また、20〜60重量%程度の含水品であっても構わない。
触媒は、例えば担体に対して5重量%担持されたものであれば、使用するヒドロキシ化合物又はカルボニル化合物に対して 0.1〜10重量%使用するのが好ましい。 0.1重量%より少なくても反応は進行するが、反応は遅く好ましくない。また、10重量%より多く用いても反応は速いが、逆に副反応も進行し好ましくない。さらに好ましくは0.5 〜5重量%である。
触媒はすべてのpH領域で使用できるが、好ましくはpH8以下の触媒がよい。ここでいう触媒のpHとは、イオン交換水30gに触媒粉末2gを分散させた時の水溶液のpHをいう。
【0037】
本発明においては、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を水素雰囲気中で反応させるが、水素圧は特に限定されず、1〜300kg/cm2 が好ましく、1〜200kg/cm2 が特に好ましい。
また、本発明において、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を反応させる際の反応温度は特に限定されないが、10〜 200℃が好ましく、50〜 180℃が特に好ましい。反応時間は、反応温度、水素圧、触媒量などによって適宜選べばよいが、通常1〜24時間、好ましくは1〜12時間である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
1,6−ヘキサンジオールジイソプロピルエーテルの合成
【0040】
【化3】
【0041】
水素ガス導入管及び攪拌装置を備えた 500mlのオートクレーブに1,6−ヘキサンジオール47g(0.4モル)、アセトン 232g(4モル)、触媒として5%Pd−C(pH 6.4)0.94g、脱水剤として無水硫酸マグネシウム28g(0.23モル)を仕込み、水素圧70kg/cm2下、 150℃で7時間攪拌を行った。
反応終了後、濾過により触媒、硫酸マグネシウムを除去し、減圧にて過剰のアセトンを除去した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の1,6−ヘキサンジオールジイソプロピルエーテル79g(0.39モル)を無色透明な液体として得た。
単離収率は98%(1,6−ヘキサンジオール基準)であった。
【0042】
実施例2〜4
表1に示す多価ヒドロキシ化合物と1価カルボニル化合物とを、表1に示す触媒及び脱水剤の存在下、表1に示す反応条件以外は実施例1と同様にして反応させた。
得られた生成物及びその単離収率を表1に示す。
尚、単離収率はヒドロキシ化合物基準の収率である。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例5〜9
表2に示す1価ヒドロキシ化合物と多価カルボニル化合物とを、表2に示す触媒及び脱水剤の存在下、表2に示す反応条件以外は実施例1と同様にして反応させた。
得られた生成物及びその単離収率を表2に示す。
尚、単離収率はカルボニル化合物基準の収率である。
【0045】
【表2】
【0046】
注)
*1:P はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す。
【0047】
実施例10
イソプロピルポリオキシエチレン(P=4.3) グリセリンの合成
【0048】
【化4】
【0049】
水素ガス導入管及び攪拌装置を備えた 500mlのオートクレーブに、ポリオキシエチレン(P=4.3) グリセリン99g(0.15モル)、アセトン 133g(2.3モル)、触媒として5%Pd−C(pH 3.8)2.0g、脱水剤として無水硫酸マグネシウム16g(0.13モル)を仕込み、水素圧100kg/cm2 下、 150℃で10時間攪拌を行った。
反応終了後、濾過により触媒、硫酸マグネシウムを除去し、減圧にて過剰のアセトンを除去した。さらにスチーミングにより低沸分を完全に除去し、目的のイソプロピルポリオキシエチレン(P=4.3) グリセリン 110gを無色透明な液体として得た。
反応前の水酸基価[255(KOHmg/g)]と反応後の水酸基価[26(KOHmg/g)] から算出したエーテル化率は76%であった。
【0050】
実施例11
表3に示す多価ヒドロキシ化合物と1価カルボニル化合物とを、表3に示す触媒及び脱水剤の存在下、表3に示す反応条件以外は実施例10と同様にして反応させた。
得られた生成物及びそのエーテル化率を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
実施例12
1,4−ブタンジオールビス(1,3−ジメチルブチル)エーテルの合成
【0053】
【化5】
【0054】
水素ガス導入管、攪拌装置及び冷却脱水管を備えた 500mlのオートクレーブに1,4−ブタンジオール18g(0.2モル)、メチルイソブチルケトン200 g(2モル)、触媒として5%Pd−C(pH 7.1)2gを仕込み、水素圧3kg/cm2下、水素流通量300ml/min 、 105℃で10時間攪拌を行った。なお、この間、反応により副生する水は系外に除去し、水とともに系外に出た未反応のメチルイソブチルケトンは系内に戻した。
反応終了後、濾過により触媒を除去し、減圧下にて過剰のメチルイソブチルケトンを除去した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の1,4−ブタンジオールビス(1,3−ジメチルブチル)エーテル50.6g(0.196 モル)を無色透明な液体として得た。
単離収率は98%(1,4−ブタンジオール基準)であった。
【0055】
実施例13〜15
表4に示す多価ヒドロキシ化合物と1価カルボニル化合物とを、表4に示す触媒の存在下、表4に示す反応条件以外は実施例12と同様にして反応させた。
得られた生成物及びその単離収率を表4に示す。
尚、単離収率はヒドロキシ化合物基準の収率である。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例16〜17
表5に示す1価ヒドロキシ化合物と多価カルボニル化合物とを、表5に示す触媒の存在下、表5に示す反応条件以外は実施例12と同様にして反応させた。
得られた生成物及びその単離収率を表5に示す。
尚、単離収率はカルボニル化合物基準の収率である。
【0058】
【表5】
【0059】
実施例18
1,9−ノナンジオールジイソプロピルエーテルの合成
【0060】
【化6】
【0061】
水素ガス導入管及び攪拌装置を備えた 500mlのオートクレーブに1,9−ノナンジオール48g(0.3モル)、アセトン174 g(3モル)、触媒として5%Pd−C(pH 7.1)4gを仕込み、水素圧10kg/cm2下、水素流通量250ml/min 、 100℃で10時間反応を行った。
反応終了後、濾過により触媒を除去し、減圧下にて過剰のアセトンを除去した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の1,9−ノナンジオールジイソプロピルエーテル72.5g(0.297 モル)を無色透明な液体として得た。
単離収率は99%(1,9−ノナンジオール基準)であった。
【0062】
実施例19
トリエチレングリコールビス(2−メチル)プロピルエーテルの合成
【0063】
【化7】
【0064】
水素ガス導入管及び攪拌装置を備えた 500mlのオートクレーブにトリエチレングリコール30g(0.2モル)、イソブチルアルデヒド144 g(2モル)、触媒として5%Pd−C(pH 6.4)2.2 gを仕込み、水素圧10kg/cm2下、水素流通量250ml/min 、 110℃で10時間反応を行った。
反応終了後、濾過により触媒を除去し、減圧下にて過剰のイソブチルアルデヒドを除去した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のトリエチレングリコールビス(2−メチル)プロピルエーテル51.4g(0.196 モル)を無色透明な液体として得た。
単離収率は98%(トリエチレングリコール基準)であった。
【0065】
実施例20
水素ガス導入管及び攪拌装置を備えた 500mlのオートクレーブに3−メチル−1, 5−ペンタンジオール106g(0.9モル)、1, 4−シクロヘキサンジオン101g(0.9 モル)、触媒として5%Pd−C(pH 7.1)7gを仕込み、水素圧3kg/cm2下、水素流通量300ml/min 、 100℃で10時間反応を行った。
反応終了後、濾過により触媒を除去し、180 gの生成物を得た。この生成物についてGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定を行ったところ、分子量約230〜1500の化合物のピークが観測された。メインピークは約345 であり、IR及び 1H−NMRの結果から、下記式で表される化合物の混合物であることがわかった。
【0066】
【化8】
Claims (6)
- ヒドロキシ化合物あるいはカルボニル化合物の少なくとも1種として水酸基又はカルボニル基を2つ以上含む多価化合物を用い、ヒドロキシ化合物とカルボニル化合物を水素雰囲気下、カーボン、シリカアルミナ、アルミナもしくはシリカに担持されたパラジウム触媒、水酸化パラジウム又は酸化パラジウムを触媒として用いて反応させて、エーテル結合を2個以上有するエーテル化合物を製造するに際し、反応により副生する水を除去しながら反応を行うことを特徴とするエーテル化合物の製造法。
- 多価化合物が、水酸基を2〜10個有する化合物である請求項1記載の製造法。
- 多価化合物が、カルボニル基を2〜10個有する、炭素数2〜20の鎖状あるいは環状の化合物である請求項1記載の製造法。
- 脱水剤の存在下に反応を行うことにより水を除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造法。
- 水素を流通させながら水を系外に除去する請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造法。
- 水とともに系外に出た未反応原料を系内に戻す請求項5記載の製造法。
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