JP4044313B2 - 凸版印刷用感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像に適した凸版印刷用感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フレキソ印刷に代表される凸版印刷用の版材としてシート状の感光性樹脂版が使用されており、この感光性樹脂版の1つであるAFP(商標名、旭化成製)は代表的な商品である。
このシート状感光性樹脂版構成体として特開2000−155418には、125μm厚みの透明なポリエステルフィルムなどを支持体とし、その上に熱可塑性エラストマー、少なくとも一つのエチレン性不飽和化合物、及び紫外線に感応する少なくとも一つの開始剤を含む感光性エラストマー組成物からなる感光性樹脂を3mm厚み程度に被覆し、この感光性樹脂の表層にネガフィルムとの接触をなめらかにする目的で、スリップ層または保護層と呼ばれる薄い可とう性フィルム層が設けられていることが記載されている。また、特開平11−153865のように、ネガフィルムを用いる必要がない目的で、感光性樹脂の表層に赤外線レーザ ーでアブレージョン可能な薄層を設けることが記載されている。
【0003】
このようなシートは通常、積層され出荷されるので、荷重下でも寸法維持性(厚み変化が小さい)が必要で、環境温度で感光性樹脂が塑性変形がし難い(小さい)ように設計されている。
このようなシート状感光性樹脂版構成体からフレキソ印刷版を製版するには、まずフィルム支持体を通して全面に紫外線露光(バック露光と呼ぶ)を施して均一な光硬化層を設け、感光性樹脂層側から紫外光を選択的に透過するネガフィルムなどの透明画像担体を介して、あるいはデジタル情報となった画像を赤外線レーザ ーでアブレージョンして紫外線の透過部を形成した薄層を介して、紫外線露光(レリーフ露光と呼ぶ)を施し、露光された感光性樹脂が光硬化して画像を形成し、次に未露光部分の感光性樹脂を3−メトキシブチルアセテート、或いはパークロロエチレン(1,1,1-トリクロロエチレン)単独またはn-ブタノールのようなアルコールとの組み合わせ、或いは代替溶剤であるソルビット(商標名、マクダミッド製)のような溶剤現像液、あるいは水系現像液で洗浄除去することによりレリーフ画像が形成される。
【0004】
上記のシート状感光性樹脂版構成体のみならず、殆どの感光性樹脂版の製造工程では未露光感光性樹脂の洗浄除去工程の後に、必要な後処理を施すことによってフレキソ印刷に供される感光性樹脂版を製造するという方法が採られている。
すなわち、現像処理後の感光性樹脂版を長時間(30分〜12時間)にわたって乾燥することにより、感光性樹脂版に残存する現像液を蒸発させ、そしてその後の仕上げ処理(光化学処理や化学処理)により感光性樹脂版の表面粘着性を低減させたり、物性強度を印刷のストレスに耐えうるレベルまで向上させて、その後の印刷に用いられる。これらの従来技術では、感光性樹脂版を製造するために必要とされる工程時間が長時間であること、或いは複数の処理工程を連続して行う必要があること等に加えて、洗浄除去工程において毒性の副生成廃棄物が生成しうる。溶剤現像液による洗浄除去工程の場合には、溶媒形態および少なくとも1個の末端エチレン基を有する付加重合可能化合物含有形態の両方において毒性でありうる有機溶剤廃棄物が生成される。同様に、水性現像液による洗浄除去工程においても、毒性効果を有しうる同様の付加重合可能化合物を含有する汚染廃水副生成物が生成されうる。このような副生成物はそのまま自然環境或いは直接下水への排出ができない廃棄物であるため、産業廃棄物処分業者にその処分を委託しなければならない。その量は多量であり、その処分を委託するコストも高く、経済的にも問題となっている。
【0005】
これらの問題のため、特開平5−19469ではシート状感光性樹脂版の現像方法として、熱現像を提唱しており、当方式は乾式で現像処理されるため、洗浄除去工程で生成される有機溶剤廃棄物や汚染廃水副生成物が発生せず、現像処理後に長時間の乾燥を必要としないという利点をもつ。
しかし、特開平5−19469に熱現像を利用する感光性樹脂組成物としてポリウレタンエラストマーが提案されているが、液状成分が少ないので、より高温で現像しなくてはならず、画像(露光)部や支持体が熱変形し易い問題を抱えていた。
【0006】
また、一般的に、組成物中に多くの液状成分を添加すると、より低温で熱現像が可能になるが、組成物の流動性が増して、露光前の感光性樹脂版が積層などされたときの寸法維持安定性が低下する問題を抱えていた。
このように、より低温で熱現像でき、且つ露光前の樹脂版の寸法維持安定性の両立が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、その要望に応えるものであり、熱現像を利用する製版方法に適した感光性樹脂組成物およびそれを用いた印刷版用構成体を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の感光性樹脂組成物を見出し本発明を完成した。すなわち、本発明は下記の通り。
1.感光性樹脂組成物の非露光部を、加熱溶融し、吸収層を接触させ、吸収除去する現像工程(以下、熱現像)を包含する製版方法に用いる凸版印刷用感光性樹脂組成物が、
(A)共重合体微粒子、
(B)熱可塑性樹脂、
(C)光重合性不飽和単量体、及び
(D)光重合開始剤
を含有し、
(1)共重合体微粒子(A)が、トルエンを用いて測定したゲル分率が80〜99%、
(2)共重合体微粒子(A)と熱可塑性樹脂(B)の質量の和が、感光性樹脂組成物中の50〜70wt%、且つ
(3)熱可塑性樹脂(B)の質量が、感光性樹脂組成物の光重合性不飽和単量体や可塑剤等の液状の成分の総質量の1.8倍以下、
であることを特徴とする凸版印刷用感光性樹脂組成物。
【0009】
2.熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性エラストマーであることを特徴とする1記載の凸版印刷用感光性樹脂組成物。
3.共重合体微粒子(A)の数平均粒子径が、20nm〜200nmである1〜2のいずれかに記載の凸版印刷用感光性樹脂組成物。
4.支持体と、その面上に形成された1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の層からなる積層構造を有する構成体が熱現像製版されてなることを特徴とする凸版印刷版用感光性構成体。
【0010】
本発明者は、感光性樹脂組成物が、上記1.の構成をとることにより、従来より低い温度で熱現像が可能で、且つ露光前の感光性樹脂版が積層などされたときの寸法維持安定性が得られることを見出した。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される共重合体微粒子(A)の製造方法は、特に限定的されないが、エチレン性不飽和単量体を乳化重合させて得られる。
共重合体微粒子(A)に使用されるエチレン性不飽和単量体としては、親水性不飽和単量体、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル類、アミノ基を有する塩基性単量体、ビニルピリジン、オレフィン、ケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体、アリル化合物等が挙げられる。
【0012】
親水性不飽和単量体の親水基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホウ酸基、水酸基、およびこれらの塩のうち、少なくとも1種を有する共重合体である。
カルボキシル基を有する単量体として、一塩基酸単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、桂皮酸、およびこれらの一塩基酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、等が例示できる。二塩基酸単量体としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、ムコン酸、およびこれらの二塩基酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、等が例示できる。
【0013】
スルホン酸基を有する単量体として、スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、等が例示できる。
リン酸基を有する単量体として、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル等のリン酸モノエステルまたはりん酸ジエステルおよびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、等が例示できる。より具体的にはりん酸エチレン(メタ)アクリレート、リン酸トリメチレン(メタ)アクリレート、りん酸プロピレン(メタ)アクリレート、りん酸(ビス)エチレン(メタ)アクリレート、リン酸(ビス)トリメチレン(メタ)アクリレート、りん酸(ビス)プロピレン(メタ)アクリレート、りん酸ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、りん酸トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、りん酸ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、りん酸(ビス)ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、りん酸(ビス)トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、りん酸(ビス)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびこれらに対応するアリルエーテル、ビニルエーテル等が例示できる。
【0014】
ホウ酸基を有する単量体として、ボルニル(メタ)アクリレートや2−ボルニルエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水酸基を有する単量体として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
親水性不飽和単量体は、共重合体微粒子(A)を構成する不飽和単量体全量に対して、0.5〜20wt%が好ましい。共重合体の重合時の安定性の点で、0.5wt%以上、樹脂版の耐水性の点で20wt%以下が好ましい。
【0015】
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等が例示できる。
フレキソ印刷版用などでは、ゴム弾性を保持する点で、ブタジエンなどの共役ジエンが40wt%以上が好ましい。
【0016】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、ブロモスチレン、ビニルベンジルクロリド、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、等が例示できる。
共重合体微粒子(A)は、感光性樹脂組成物全量に対して、1〜50wt%が好ましい。露光前の感光性樹脂版が積層などされたときの寸法維持安定性の点で1wt%以上、印刷版の強度の点で50wt%以下が好ましい。
【0017】
本発明に用いられる共重合体微粒子(A)の重合方法は特に限定されないが、以下のように乳化重合が好ましい。重合例としては、重合可能な温度に調整された反応系にあらかじめ所定量の水、乳化剤、その他添加剤を仕込み、ついで、重合開始剤および単量体、乳化剤、調整剤等を回分操作あるいは連続操作で反応系内に添加する事によって重合される。また必要に応じて反応系には所定量のシードラテックス、開始剤、単量体、その他の調整剤をあらかじめ仕込んで置くことも通常良く用いられる方法である。また不飽和単量体、乳化剤、その他の添加剤、調整剤を反応系へ後から添加する方法によって、重合される親水性共重合体粒子の層構造を段階的に変える事も可能である。各層の構造を代表する物性としては、親水性、ガラス転移点、分子量、架橋密度などがあげられる。また、この層構造の段階数は特に制限されない。
【0018】
共重合体微粒子(A)の粒子径は、20〜200nmが好ましい。印刷版の強度の点で20nm以上、画像再現性や露光前の感光性樹脂版の寸法安定性の点で200nm以下が好ましい。また、共重合体微粒子(A)のトルエンゲル分率は、80〜99%である。ゲル分率が、80%以上で、印刷版の強度が増加でき、また露光前の感光性樹脂版の寸法維持安定性が向上でき、99%以下で、感光性樹脂組成物の成分の良好な混合性が得られる。トルエンゲル分率とは、共重合体微粒子(A)の乳化重合後の分散液を、テフロン(登録商標)シートの上に適当量垂らし、130℃で30分間乾燥させた(A)を0.5g取り、25℃のトルエン30mlに浸漬させ、振とう器を用いて3時間振とうさせた後に320SUSメッシュで濾過し、不通過分を130℃1時間乾燥させた後の質量を0.5(g)で割った質量分率(%)から求められる。
【0019】
本発明で使用される(B)の熱可塑樹脂は、ポリマーを適当な温度に加熱すると柔らかくなり、外力を加えると容易に変形するので、この状態で成型加工して冷却すると、あとで力を取り除いてもそのままの形を安定して保っている樹脂である。
熱可塑性樹脂(B)には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、酢酸セルロース、セルロイド、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドイミド、あるいは下記の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0020】
フレキソ印刷版用などでは、ゴム弾性を保持する点や加工性の点で、熱可塑性エラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマーとは、常温付近でゴム弾性を示し、塑性変形し難く、押出機等で組成物を混合するときに熱で可塑化するエラストマーで、例えばスチレン・ブタジエンブロックコポリマー、スチレン・イソプレンブロックコポリマー、スチレン・エチレン /ブチレンブロックコポリマー、プロピレン・エチレン /プロピレンブロックコポリマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニ トリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エピクロルヒ ドリンゴム等が使用でき、これらを2種類以上混合して使用することもできる。
【0021】
熱可塑性樹脂(B)の量は、感光性樹脂組成物全量に対して、20〜60wt%が好ましい。感光性樹脂組成物の成型性や印刷版の強度の点で20wt%以上、より低温で熱現像可能という点で60wt%以下が好ましい。
本発明の共重合体微粒子(A)と熱可塑性樹脂(B)の総質量は、感光性樹脂組成物全量に対して、50〜70wt%である。50wt以上で、露光前の感光性樹脂版の良好な寸法維持安定性や、高強度な印刷版が得られ、70wt%以下で、より低温な熱現像が可能となる。
【0022】
また、熱可塑性樹脂(B)の質量は、感光性樹脂組成物に用いる常温で流動性のある液状の成分の総質量の1.8倍以下である。1.8倍以下で、より低温な熱現像が可能となり、露光前の感光性樹脂版の良好な寸法維持安定性が得られる。
本発明で使用される光重合性不飽和単量体(C)とは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのエステル類、アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体、アリルエステル、スチレン及びその誘導体、N置換マレイミド化合物を挙げられる。
【0023】
その具体的な例としては、ヘキサンジオール、ノナンジオールなどのアルカンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、あるいはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、あるいはトリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート及びテトラメタクリレート等や、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド及びメタクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステル、フマル酸ジオクチルエステル、フマル酸ジステアリルエステル、フマル酸ブチルオクチルエステル、フマル酸ジフェニルエステル、フマル酸ジベンジルエステル、マレイン酸ジブチルエステル、マレイン酸ジオクチルエステル、フマル酸ビス(3−フェニルプロピル)エステル、フマル酸ジラウリルエステル、フマル酸ジベヘニルエステル、N−ラウリルマレイミド等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
光重合性不飽和単量体(C)の量は、感光性樹脂組成物全量に対して、1〜30wt%が好ましい。細かい点や文字の形成性の点で1wt%以上、露光前の感光性樹脂版の寸法維持安定性や樹脂版の硬度の点で30wt%以下が好ましい。
【0025】
本発明で使用される(D)の光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノ ン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オ ン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6− トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9 −フェニルアクリジン;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
光重合開始剤(D)の量は感光性樹脂組成物全量に対して、0.1〜10wt%が好ましい。細かい点や文字の形成性の点で0.1wt%以上、紫外線等の活性光の透過率低下による露光感度低下の点で10wt%以下が好ましい。
その他、本発明の感光性樹脂組成物には前記した必須成分の他に、所望に応じ種々の可塑剤、補助添加成分、例えば熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤などを添加することができる。
【0027】
可塑剤としては、常温で流動性のある液状のもので、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体、数平均分子量2,000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの組成に光重合性の反応基が付与されていても構わない。
【0028】
感光性樹脂組成物の溶融粘度(トルク)が低い方が、より低温での熱現像には有利な傾向がみられる。
本発明の感光性樹脂組成物は、印刷版としての精度を維持するために、ポリエステルなどの支持体をレリーフの反対側に設けても良い。本発明の感光性樹脂組成物は、その組成によっては粘着性を生じるので、その上に重ねられる透明画担体(ネガフィルム)との接触性を良くするためと、その画像担体の再利用を可能にするために、その表面に可とう性フィルム層を設けても良い。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物は各成分を混合することにより製造することができる。その手段としては、押出機やニーダ等を用いて樹脂組成物を混合した後に、熱プレス成型やカレンダー処理または押出成型により所望の厚さの層を形成することが可能である。
支持体や可とう性フィルム層は、シート成型後ロールラミネートにより感光層に密着させることができる。ラミネート後に加熱プレスして精度の良い感光層を得ることもできる。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物を光硬化するのに用いられる活性光線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、太陽光などがある。
本発明の熱現像とは、特開平5−19469やWO01/18604に例示されているように、感光性樹脂組成物の非露光部を加熱して、吸収層を接触させて、非露光部を吸収層に吸収させ、吸収層を除去するこで画像(凹凸形状)を形成する現像方法である。
【0031】
吸収層とは、非圧状態でシート体積の50%以上のボイドを含有する吸収シート材料である。より具体的には、不織布、紙、連続気泡フォーム、多孔性シート等が挙げられる。これらの吸収シート材料の中で、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、セルロースまたは、高融点ポリマー材料から形成された不織布が好ましい。
非露光部の加熱方法としては、赤外ヒーターを用い版表面や樹脂版背面を加温したり、吸収層を接触させる基材を加熱して吸収層と版表面の接触時に版表面を加温しても良い。
【0032】
接触方法としては、特開平5−19469号やWO01/18604に記載されている露光工程後のシート状感光性樹脂版の支持体背面を、ドラムあるいは平板に密着させて感光性樹脂版を保持し、ニップロール等で加圧接触させる方法や、2枚の平版で加圧し接触させても良い。
【0033】
以下、参考例、実施例、及び比較例により本発明について具体的に説明する。
(参考例1;共重合体微粒子a1、a2、a3、a4およびa5の重合)
撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125質量部、反応性乳化剤(α−スルホ−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、商品名:アデカリアソープSE1025(旭電化工業製))3質量部を初期仕込みし、内温を80℃に昇温し、表1に示した質量部の単量体混合物と、表1に示したt−ドデシルメルカプタンの油性混合液、水28質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、水酸化ナトリウム0.2質量部、および乳化剤(商品名:アデカリアソープSE1025(旭電化工業製))1質量部からなる水溶液をそれぞれ5時間および6時間かけて一定の流速で添加した。そして、80℃の温度をそのまま1時間保って、重合反応を完了した後、冷却した。ついで、生成した共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpHを7に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去し、200メッシュの金網で濾過し、最終的には固形分濃度が40wt%になるように調整し共重合体微粒子(A)溶液を得た。
乳化重合した溶液を60℃で乾燥し共重合体微粒子を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
(参考例2;実施例および比較例の感光性樹脂組成物の作成)
参考例1で得た共重合体微粒子(A)と、熱可塑性樹脂(B)としてスチレンブタジエンブロック共重合体(クレイトンD−KX405:シェル化学製、商品名)を表2と3にそれぞれに示す割合で、加圧ニーダーを用いて140℃で10分混合後に、 表2と3にそれぞれに示す割合で、光重合性不飽和単量体(C)として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HMDA)と、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート5質量部(HMDMA)、光重合性開始剤(D)として2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン(DMPAP)、その他の成分として、液状ポリブタジエン(B−2000:日本石油化学製、商品名)と、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を15分かけて少しずつ加えて、加え終えてさらに10分間混練し、感光性樹脂組成物を得た。
上記の組成の中では、常温で流動性がある液状成分は、HMDA、HMDMA、およびB−2000である。
【0036】
(参考例3;感光性樹脂版の作成)
参考例2で得た感光性樹脂組成物を、熱可塑性エラストマー含有の接着剤がコートされた厚さ100μのポリエステルフィルム(以下PETと略す)と、厚さ5μのポリビニルアルコール(PVA)層がコートされた厚さ100μのPETの間でサンドイッチしてプレス機を用いて130℃で厚み3mmの板状に成形した。
【0037】
(参考例4;印刷版の作成)
参考例6で得た接着剤がコートされたPETの側から、紫外線露光機(日本電子精機製JE−A2−SS)を用いて30秒間露光した。次に、PVAがコートされた方のPETをPVAが樹脂面に残るようにして剥ぎ、印刷画像のネガを密着させ前記露光機で10分間露光した。
熱現像の吸収層(吸収シート)には、厚み0.4mmのベンリーゼTS100(旭化成製、商品名)を用いた。
【0038】
樹脂版の加熱および吸収シートの圧着には、熱プレス機を用いた。
露光後の樹脂版を、90℃あるいは110℃に加熱したプレス機板の上に、吸収シートを乗せ、その上に印刷版の画像面が吸収シートに接触するように印刷版を置き、2分間保温後に、1MPaの圧力をかけて吸収シートと印刷版を圧着した後、素早く取り出し吸収シートを印刷版から剥がした。その工程を5回繰り返し画像の形成された版を得た。
その後、254nmに中心波長をもつ殺菌灯を用いて版表面全体に1000mJ/cm2、続いて紫外線蛍光灯を用いて1000mJ/cm2の後露光処理を行い印刷版が得られた。
【0039】
(参考例5;共重合体微粒子(A)の評価方法)
共重合体微粒子(A)のトルエンゲル分率(%)
共重合体微粒子(A)の重合後の分散液を、テフロン(登録商標)シートの上に適当量垂らし、130℃で30分間乾燥させた(A)を0.5g取り、25℃のトルエン30mlに浸漬させ、振とう器を用いて3時間振とうさせた後に320SUSメッシュで濾過し、不通過分を130℃1時間乾燥させた後の質量を0.5(g)で割った質量分率(%)から求めた。
共重合体微粒子(A)の平均粒子径
共重合体微粒子(A)の重合後の分散液を、MICROTRAC粒度分布径(日機装株式会社製、型式:9230UP)を用いて、数平均粒子径を測定した。
【0040】
(参考例6;感光性樹脂組成物のトルク測定)
感光性樹脂組成物の粘度指標として、加温時のトルクを測定した。
測定機には、ラボプラストミル(東洋精機製、モデル30R150)を用い、感光性樹脂組成物50gをミルに挿入し、荷重500g、回転数60rpm、設定温度は、70℃から90℃まで(昇温速度1℃/分、1分毎に昇温)昇温し、樹脂温度が90℃になったトルクを測定した。
【0041】
(参考例7;感光性樹脂版の評価方法)
(1)低温での熱現像性(90℃で熱現像性)
参考例4で示した熱現像を行い、熱現像で得られた印刷版の2cm2以上の画像部と非画像部の高さ(厚み)の差(以下、レリーフデプスと呼ぶ)を測定した。
レリーフデプスが大きい程、熱現像し易く、レリーフデプスが0.4mm以上を○とした。 比較例および実施例では、熱現像温度が110℃では、すべて○であった。そのため、より低温での熱現像性については、90℃で評価した。
(2)寸法維持(コールドフロー)性
露光前の樹脂版が積み重ねられたりしたときの荷重下の寸法維持性を評価するため、大きさ5×5cm露光前の樹脂版の上に720gの重りを乗せ、40℃7日後の版厚の低下率(%)を測定した。版厚低下率(%)が5%以下のものを○、それより大きなものを×とした。
【0042】
【実施例1〜4】
評価結果を表2に示す。
【0043】
【比較例1】
評価結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
得られたすべての印刷版は、90℃でも熱現像が可能で、すべてネガに相当する画像が得られた。
表2の比較例1から明らかなように、ゲル分率が低いと、寸法維持性が低下することが分かる。
【0046】
【実施例1、実施例5〜7】
評価結果を表3に示す。
【0047】
【比較例2〜4】
評価結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
90℃で熱現像が可能な樹脂版(実施例1、実施例5〜7、比較例4)は、すべてネガに相当する画像が得られた。
表3から明らかなように、共重合体微粒子(A)と熱可塑性樹脂(B)の質量の和が、比較例2のように感光性樹脂組成物の70wt%を越えると、より低い温度の90℃で熱現像が不可能になることが分かる。また、比較例3のように熱可塑性樹脂(B)の質量が感光性樹脂組成物に含まれる液状の成分の1.8倍を越えると、より低い温度の90℃で熱現像が不可能になることが分かる。また、比較例4や5のように、共重合体微粒子(A)がないと、より低い温度の90℃で熱現像が不可能になったり、寸法維持性が低下したり、これらの両特を両立できないことが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の感光性樹脂組成物を用いることより、露光前の樹脂版が積層などされたときの寸法安定性が優れ、且つより低温で熱現像が可能となり、高温における履歴が抑えられ印刷版の画像部や支持体の熱変形を抑制し易い。
Claims (4)
- 感光性樹脂組成物の非露光部を、加熱溶融し、吸収層を接触させ、吸収除去する現像工程(以下、熱現像)を包含する製版方法に用いる凸版印刷用感光性樹脂組成物が、
(A)共重合体微粒子、
(B)熱可塑性樹脂、
(C)光重合性不飽和単量体、及び
(D)光重合開始剤
を含有し、
(1)共重合体微粒子(A)が、トルエンを用いて測定したゲル分率が80〜99%、
(2)共重合体微粒子(A)と熱可塑性樹脂(B)の質量の和が、感光性樹脂組成物中の50〜70wt%、且つ
(3)熱可塑性樹脂(B)の質量が、感光性樹脂組成物の光重合性不飽和単量体や可塑剤等の液状の成分の総質量の1.8倍以下、
であることを特徴とする凸版印刷用感光性樹脂組成物。 - 熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
- 共重合体微粒子(A)の数平均粒子径が、20nm〜200nmである請求項1〜2のいずれかに記載の凸版印刷用感光性樹脂組成物。
- 支持体と、その面上に形成された請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の層からなる積層構造を有する凸版印刷版用感光性構成体。
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