JP4040576B2 - 光集積化ユニットおよびそれを用いる光ピックアップ装置、光ディスク装置 - Google Patents

光集積化ユニットおよびそれを用いる光ピックアップ装置、光ディスク装置 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体に光学的に情報を記録または再生する光ディスク装置に用いられる光集積化ユニットおよびそれを用いる光ピックアップ装置、光ディスク装置に関する。
背景技術
前記光ピックアップ装置を、小型化、薄型化および高信頼性化を図る手段として、ホログラムを用いたものが考案されている。その光ピックアップ装置のDVD(デジタルビデオディスク)用の基本的な構造として、日本国の公開特許公報「特開平9−161282号公報(公開日:1997年6月20日)」に記載された構造が挙げられる。
上記公報に記載されているホログラムは、ディスク半径方向に2分割されており、かつその一方は、さらにトラック方向に2分割されている。そして、前記ディスクからの反射ビームの半分でフォーカス誤差信号を、もう半分でトラック誤差信号を、ビーム全面で情報信号を検出するものである。前記トラック誤差信号には、前記ディスク半径方向に半分に分割されたビームをさらに前記トラック方向に2分割することで、トラックに対する位置信号、いわゆるプッシュプル信号(PP信号)を検出できる構成となっている。
このように構成されるホログラムを用いた光集積化ユニットと、該光集積化ユニットから出射されたレーザ光をディスク上に集光させるための対物レンズ手段とによって光ピックアップ装置が構成されている。
上述のように構成される光集積化ユニットを用いたピックアップ装置では、以下に示すような問題が発生する。
トラック誤差信号を生成する際には、ディスクの反射光の左右(トラック方向の分割線で分割された、半径方向内方側の部分と外方側の部分と)の光量分布の差を、2分割検出器で検出する。
ここで、対物レンズが半径方向にずれた場合、ディスクからの反射光の光軸がずれ、2分割検出器の中心からビーム中心がずれる。また、前記対物レンズは、ディスク偏心に対応可能なように、±0.3mm程度は変位可能となっており、ディスク偏心によっても対物レンズのずれが発生する。
また、ディスクが傾いた場合も同様に、反射光のビーム中心がずれる。したがって、何れの場合も、トラッキングが合っているにもかかわらず、2分割検出器の差動信号にオフセットが発生し、ディトラックと判定してしまうことになる。
ここで、一般的に、トラッキングサーボの手法としては、上述のプッシュプル法(PP法)の他に、3ビーム法やディファレンシャルプッシュプル法(DPP法)が挙げられる。
どの手法も、複数の光受光部の光量差を検出することで、ディトラック量を検出する手法であり、光量差が無い場合をジャストトラックと判断する。
そして、前記3ビーム法の場合、ビームを、メインビームと、その前後のサブビームとによって構成し、トラック誤差はサブビームの差信号から検出する。また、DPP法は、1ビームのPP法と前記3ビーム法とを組合わせたもので、メインビームと、その前後のサブビームとのそれぞれのトラック方向に分割した差信号からトラック誤差を検出する。
このため、前述のPP法の場合に発生するオフセットを抑圧可能であり、トラッキングサーボの手法として良く用いられている。
しかしながら、これらの手法では、1個の光源から3個のビームを生成しているので、記録に関与するメインビームの光量が低下し、その結果、記録スピードが遅くなり、記録の高速化の妨げになるという問題がある。
本発明の目的は、1ビーム法を用いることでメインビームの光量低下が無く、かつ対物レンズのシフトやディスクの傾きに対するオフセットを抑圧し、安定したトラッキングサーボ性能を得ることができる光集積化ユニットおよびそれを用いる光ピックアップ装置、光ディスク装置を提供することである。
発明の開示
本発明の光集積化ユニットは、前記目的を達成すべく、ディスク状の情報記録媒体へレーザ光を照射する発光部と、前記情報記録媒体での反射光を反射させてホログラムへと導く光分岐素子と、前記光分岐素子からの光を回折させて受光部へと光を導くホログラムと、前記ホログラムで回折された光を受光する受光部とを具備する光集積化ユニットにおいて、前記ホログラムと受光部との間に配置され、ディスクの半径方向に透過率が変化する光学素子を含むことを特徴とする。
上記の構成によれば、ディスク状の情報記録媒体へ照射するレーザ光を1ビームとして、記録光量、したがって記録スピードを大きくすることができる1ビームトラッキング法を用いるにあたって、トラッキングのための回折光を得るホログラムと受光部との間に、さらに光学素子を配置し、その透過率をディスクの半径方向に変化させる。
したがって、対物レンズがシフトしたり、ディスクが傾いたりして、該光学素子への入射光が前記ディスクの半径方向にシフトすると、該光学素子の透過率、したがって受光部での受光光量に変化が生じることになる。その変化を打消すようにトラッキングサーボを行うことで、前記対物レンズのシフトやディスクの傾きによるオフセットを補正することが可能となり、安定したトラッキングサーボ性能を得ることができる。
これによって、該光集積化ユニットと、該光集積化ユニットから出射されたレーザ光をディスク上に集光させるためのレンズ手段とを組合わせて光ピックアップ装置を構成することによって、光ピックアップ装置を必要最小限の光学部品で構成でき、かつ信号検出系の調整も不要となり、小型、薄型で、かつ組立て性が良く、信頼性にも優れ、安定したトラッキングサーボ性能を有する光ピックアップ装置を得ることができる。
なお、本発明の光集積化ユニットは、ディスク状の情報記録媒体へ照射するレーザ光を1ビームとして、記録光量、したがって記録スピードを大きくすることができる1ビームトラッキング法を用いるようにした光集積化ユニットにおいて、ホログラムと受光部との間に、さらに光学素子を配置し、その透過率をディスクの半径方向に異ならせた構成である、と表現することもできる。
また、本発明の光集積化ユニットでは、前記光分岐素子は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする。
上記の構成によれば、ハーフミラーなどに比べて、発光部から出射された光を効率良く情報記録媒体に入射し、さらに前記情報記録媒体での反射光を効率良くホログラムへと導くことができる。
さらにまた、本発明の光集積化ユニットでは、前記ホログラムにおいて、格子基板の屈折率をn、光の波長をλ、kを整数とするとき、回折格子の溝深さdを、d×(n−1)=(k+1/2)λに形成することを特徴とする。
上記の構成によれば、ホログラムの0次回折光(透過光)を略0とすることができ、光利用効率を高めることができる。
また、本発明の光集積化ユニットでは、前記受光部は、前記ホログラムの+1次回折光および−1次回折光のそれぞれに対応した受光領域を有することを特徴とする。
上記の構成によれば、光利用効率を高めることができる。
さらにまた、本発明の光集積化ユニットは、前記ホログラムのどちらか一方の1次回折光のみが透過するように、前記光学素子が設置されることを特徴とする。
ここで、光学素子を通過した光は光量損失が発生し、信号S/Nの低下が懸念される。
これに対して、上記の構成によれば、光学素子を設けるのをどちらか一方の1次回折光のみとすることで、該光学素子を通らない側の1次回折光の光量損失を無くせる。したがって、特に高い信号S/Nが要求されるRF信号に好適である。
また、本発明の光集積化ユニットは、発光部からディスク状の情報記録媒体へレーザ光を照射し、その反射光に基づいて前記レーザ照射のためのサーボ制御が行われる光集積化ユニットにおいて、前記反射光の経路に、ディスクの半径方向に透過率が変化する光学素子を有することを特徴とする。
さらにまた、本発明の光集積化ユニットでは、前記光学素子は、格子長手方向が前記ディスクの半径方向となるように配置され、前記格子長手方向に回折効率が変化する回折格子であることを特徴とする。
上記の構成によれば、薄膜コーティングなどに比べて、前記光学素子を簡単なプロセスで作成することができる。
また、本発明の光集積化ユニットでは、前記回折格子は、格子の山幅と溝幅との比を前記格子長手方向に連続的に変化させたことを特徴とする。
上記の構成によれば、簡単なプロセスで前記格子長手方向に対して回折効率を変化させることができる。
また、本発明の光集積化ユニットは、回折格子の格子の山幅と溝幅との比を前記格子長手方向に非線形に連続的に変化させ、回折効率の変化率が一定である領域を拡大したことを特徴としている。
上記の構成によれば、対物レンズのシフト検出信号の変化も一定となるため、対物レンズ位置によらず、安定したオフセット補正が可能となる。
なお、本発明の集積化ユニットは、前記回折格子は、格子長手方向に回折効率が変化する回折格子であり、回折効率の変化率は場所によらず一定である、と表現することもできる。
また、本発明の集積化ユニットは、前記回折格子は、格子の溝深さを前記格子長手方向に変化させたことを特徴としている。
この溝深さは、連続的に変化させてもよいし、または段階的に変化させてもよい。
このように、回折格子の溝深さを変化させることによっても、格子長手方向に回折効率を変化させることができる。したがって、上述の集積化ユニットを実現できる。
また、格子溝幅が狭い場合であっても、溝深さは高い加工精度で作成できるので、所望の透過率を得ることができる。
さらにまた、本発明の光集積化ユニットでは、前記回折格子は、格子長手方向と垂直な方向に対して複数の領域に分割され、さらに複数の領域に分割された回折格子の格子長手方向の回折効率の変化率をそれぞれ異ならせることを特徴とする。
上記の構成によれば、同じピックアップ構成で、対物レンズのシフト検出信号の感度を高くすることができ、対物レンズのシフト検出信号により、前記対物レンズのシフトやディスクの傾きによるオフセットをより正確に補正することが可能となる。
なお、本発明の光集積化ユニットは、上記構成において、前記回折格子が、格子長手方向と平行方向を分割線方向として分割された複数の領域を含み、この複数の領域ごとの、格子長手方向の回折効率の変化率が異なっている構成である、と表現することもできる。この構成の場合、複数の領域における変化率が全て異なっている必要はなく、少なくとも一つの領域が異なっていればよい。この構成によれば、変化率を適切に異ならせて、検出信号の感度を高めることができる。
さらにまた、本発明の光集積化ユニットでは、前記回折格子は、格子長手方向と垂直な方向に対して複数の領域に分割され、さらに分割された複数の領域において、格子長手方向に格子の山幅と溝幅との比が連続的に変化し、回折効率が連続的に変化する領域と、格子の山幅と溝幅との比が一定であり回折効率が一定である領域とを含むことを特徴とする。
上記の構成によれば、対物レンズのシフト検出信号の感度を高くしつつ、前記ディスク状の情報記録媒体からの反射光が格子の山幅と溝幅との比が連続的に変化する領域を透過しない場合にも、格子の山幅と溝幅との比が一定である領域を透過するので、反射光の光量変化が少なく、対物レンズのシフト検出信号のオフセットをより生じにくくすることができる。
また、本発明の光集積化ユニットは、上記構成において、前記回折格子が、格子長手方向と平行方向に分割された複数の領域を含み、この複数の領域ごとの、格子長手方向の回折効率の変化率が異なっている構成である、と表現することもできる。この構成の場合、複数の領域における変化率が全て異なっている必要はなく、少なくとも一つの領域が異なっていればよい。また、上記構成は、例えば、上記複数の領域のうち、上記変化率が0である領域を含んでいる構成であってもよい。
さらにまた、本発明の集積化ユニットでは、前記回折格子が、格子長手方向と垂直な方向に対して2分割される際の分割線位置は、溝形状を有する前記情報記録媒体からの反射回折光の0次回折光と±1次回折光が重なり合う領域が透過する部分を含む回折格子と、重なり合わない領域が透過する部分を含む回折格子とに分割されることを特徴とする。
上記の構成によれば、格子長手方向と垂直な方向における必要最小限の分割数で、対物レンズのシフト検出信号の感度を高くすることができ、信頼性にも優れた光集積ユニットとすることができる。
さらにまた、本発明の集積化ユニットでは、前記回折格子が、格子長手方向と垂直な方向に対して複数の領域に分割され、複数の領域に分割された回折格子の回折効率の変化率を異ならせる際に、溝形状を有する前記情報記録媒体からの反射回折光の0次回折光と+1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子の総合的な回折効率と、反射回折光の0次回折光と−1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子の総合的な回折効率とをほぼ等しくすることを特徴とする。
上記の構成によれば、格子長手方向と垂直な方向に対して分割数を増やすことで対物レンズのシフト検出信号の感度をさらに高くしつつ、対物レンズのシフト検出信号に残留するプッシュプル成分を少なくすることができる。
また、本発明に係る光集積化ユニットは、情報記録媒体からの光を受光する受光部を備えた光集積化ユニットにおいて、所定の方向に照射効率が変化している光学素子を備え、前記光学素子を介して前記情報記録媒体からの光が前記受光部に入射することを特徴としている。
ここで、照射効率とは、例えば透過率または反射率である。光学素子は、情報記録媒体からの光を、例えば透過させ、または反射させて、受光部へと導く。
上記構成によれば、情報記録媒体からの光が、光学素子上の上記所定の方向と平行に移動すると、この移動に応じて受光部にて受光する受光量が変化する。
ここで、一般に、光集積化ユニットを備えた光ピックアップ装置、光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置においては、対物レンズのずれ、またはディスクの偏心によって、トラック誤差信号のオフセット(ゼロ点のずれ)が生じてしまう。
そこで、本発明に係る上記の光集積化ユニットを備えた光ピックアップ装置、この光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置においては、ディスクからの反射光が上述の対物レンズのずれの際に光学素子上において移動する方向と、上記所定の方向とが平行となるように、上記光学素子の向きを設定する。または、例えば、ディスクからの反射光が上述のディスクの偏心の際に光学素子上において移動する方向と、上記所定の方向とが平行となるように、上記光学素子の向きを設定する。このように、上記所定の方向が所望の方向となるように上記光集積化ユニットを備え付けた、光ピックアップ装置、光ディスク装置を実現できる。
上記構成によれば、対物レンズのずれ、またはディスクの偏心に応じて、受光部にて受光する受光量が変化する。したがって、上述のトラック誤差信号のオフセットを、受光量の変化として検出できる。
したがって、得られたオフセットを用いてトラック誤差信号を補正できる。これによって、安定したトラックサーボ性能を得ることができる。
また、上記光集積化ユニットは、上記構成に加えて、前記情報記録媒体からの光を分配する光分配素子を備え、前記受光部が、前記光分配素子からの光を受光する第1の受光領域と前記光分配素子から前記光学素子を介した光を受光する第2の受光領域とを含んでいる構成であってもよい。
この光分配素子とは、例えばホログラムによって実現できる。すなわち、例えばホログラムの+1次回折光を、光学素子を介して第2の受光領域へと照射する。また、ホログラムの−1次回折光を第1の受光領域へと照射する。
この構成によれば、第2の受光領域にて検出するオフセットを用いて、第1の受光領域にて検出するトラック誤差信号を補正することができる。より詳細には、トラック誤差信号と、所定の係数で重み付けしたオフセットとの差を計算することによって、補正したトラック誤差信号を得ることができる。
また、この場合に、オフセットを用いた補正における所定の係数を、情報記録媒体の種類に応じて適切に変化させてもよい。
なお、上記光学素子は、例えば回折格子であってもよい。この回折格子は、例えば格子長手方向に格子の山幅と溝幅との比を変化させることによって、照射効率としての回折効率を変化させていてもよい。
また、上記光学素子は、回折格子のみに限るものではなく、例えば、基板上に形成された電極と、入射される光に対する透過率(または屈折率)が前記電極に印加される電圧に応じて変化する光学媒質と、前記電極に電圧を印加する駆動回路とを含んでいる光学素子であってもよい。すなわち、上記光学素子は、例えば制御信号に応じて、所定の方向に照射効率が変化した状態となる光学素子であってもよい。
また、光学素子は、複数の部材を組み合わせた構成であってもよい。例えば、回折格子と、上述の電極、光学媒質および駆動回路を含む光学素子とからなる構成であってもよい。
また、本発明の集積化ユニットは、上記構成において、前記回折格子は、光ビームが回折格子に照射される領域に対応するように、2以上に分割されて形成されていることを特徴としている。
この分割は、格子長手方向に対して垂直方向の分割である。
上記の構成によれば、対物レンズのシフト検出信号の感度を向上させることが可能となる。
なお、本発明の集積化ユニットは、前記回折格子は、複数に分割されており、分割された各回折格子毎に、回折効率、及び、回折効率の変動量を設定可能である、と表現することもできる。
また、本発明の光集積化ユニットは、回折格子は、光ビームが回折格子に照射される領域に対応するように、2以上に分割されて形成されているため、分割された各回折格子毎に、回折効率、及び、回折効率の変動量を設定可能である、と表現することもできる。
さらにまた、本発明の光ピックアップ装置は、上記のいずれかの光集積化ユニットと、該光集積化ユニットから出射されたレーザ光をディスク上に集光させるための対物レンズ手段とが組合わせられて構成されることを特徴とする。
上記の構成によれば、前述のように、該光ピックアップ装置を必要最小限の光学部品で構成でき、かつ信号検出系の調整も不要となり、小型、薄型で、かつ組立て性が良く、信頼性にも優れ、安定したトラッキングサーボ性能を有する光ピックアップ装置を得ることができる。
また、上記光ピックアップ装置は、対物レンズ手段と光ピックアップ装置との間に、λ/4板(1/4波長板)を備えている構成であってもよい。この場合、光集積化ユニットの光分岐素子が偏光ビームスプリッタを含んでいる構成も好ましい。
また、本発明に係る光ディスク装置は、上述の光ピックアップ装置を備えていることを特徴としている。
上述の光ピックアップ装置を用いれば、情報記録媒体の再生・記録を行う際に、安定したトラッキングサーボ性能によって、安定した再生・記録を行うことができる。
さらにまた、本発明の光ディスク装置は、ディスク状の情報記録媒体へレーザ光を照射する発光部と、前記情報記録媒体へ集光させる対物レンズと前記情報記録媒体からの反射光を反射させてホログラムへと導く光分岐素子と、前記光分岐素子からの光を回折させて受光部へと光を導くホログラムと、前記ホログラムで回折された光を受光する受光部とを具備し、前記ホログラムと受光部との間に配置され、ディスクの半径方向に透過率が変化する光学素子を含む光ピックアップ装置を有し、前記光ピックアップ装置から得られた信号を演算してトラッキングを行って記録/再生を行い、前記トラッキングエラー信号の演算における定数の極性を反転させることで、異なる規格のディスクに適応可能としている。
上記の構成によれば、同じピックアップ構成で、異なる規格のディスクに対応でき、演算定数の極性を変化させるだけで、何れのディスクを記録再生する場合でも、対物レンズシフトによるオフセットが少ない光ディスク装置が得られる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
発明を実施するための最良の形態
本発明の一実施形態について、添付する図面を参照しつつ説明すれば以下のとおりである。
図1は、本発明の実施の一形態の光集積化ユニット1の概略的構成を示す断面図である。この光集積化ユニット1は、光集積化ユニット1から出射されたレーザ光をディスク上に集光させるための対物レンズ手段と組合わせられて、前記DVDの光ピックアップ装置を構成するものである。光集積化ユニット1は、大略的に、ステム2に搭載されたLD(レーザダイオード)チップ3と、受光部4と、光分岐素子5と、ホログラム素子6とを備えて構成されている。
LDチップ(発光部)3は、ディスク状の情報記録媒体としての例えばDVD(Digital Versatile Disc,Digital Video Disk)にレーザ光を照射するものである。光分岐素子5は、例えばDVDでの反射光を反射させてホログラム素子6のホログラム7へと導くものである。ホログラム7は、光分岐素子5からの光を回折させて受光部4へと導くものである。受光部4は、ホログラム7にて回折された光を受光するものである。
ホログラム素子6のホログラム7は、図2で示すように、ディスク半径方向Xを分割線方向として2つに分割されており、かつその一方は、さらにトラック方向Yを分割線方向として2分割されている。そして、ディスクからの反射ビームにおけるディスク半径方向Xの分割領域7aでフォーカス誤差信号を、さらにトラック方向Yの分割領域7b,7cでトラック誤差信号を、ビーム全面で情報信号を、それぞれ回折させて受光部4にて検出させる1ビームPP法を採用している。各分割領域7a,7b,7cには、相互に異なる格子が形成されている。
図1に戻ると、LDチップ3から出射された光は、光分岐素子5のA面を透過した後、ディスクに入射する。ディスクからの反射光は、光分岐素子5のA面で反射し、さらに、B面でも反射した後、ホログラム7へ入射する。ホログラム7の±1次回折光は、受光部4に入射する。
受光部4は、図2に示すように、光分岐素子5からホログラム7を介した±1次の回折光の内、どちらか一方(図2では+1次の回折光)を受光するための、受光領域4a〜4fを備えている。各受光領域4a〜4fのうち、ホログラム7からディスク半径方向Xに略同方向に、かつトラック方向Yに並んで受光領域4a,4bが配置される。これらの受光領域4a,4bを基準として、そのトラック方向Yの前後に受光領域4c,4dが配置される。受光領域4a,4bと4c,4dとの間に受光領域4e,4fがそれぞれ配置される。このような構成は、DVD用の光集積化ユニットの基本的な構造である特開平9−161282号と同様である。
注目すべきは、本発明では、ホログラム素子6において、図1に示すように、ホログラム7の反対面に回折格子8が形成されていることである。この回折格子8は、ホログラム7を介する光分岐素子5からの±1次の回折光の内、どちらか一方(図2では受光領域4a〜4fへの+1次の回折光)のみが入射するように配置されている。すなわち、この回折格子8(光学素子)は、ホログラム7と受光部4との間に配置されている。また、この回折格子8は、ディスクからの反射光の経路に配置されている。また、この回折格子8は、後述するようにディスクの半径方向に透過率が変化している。
したがって、トラッキングおよびフォーカシングの誤差が無い状態では、図2で示すように、ホログラム7の分割領域7aでの+1次の回折光の内、回折格子8の0次の透過光は受光領域4a,4bに入射し、−1次の回折光は受光領域4aの外方に入射し、+1次の回折光は受光領域4bの外方に入射する。同様に、ホログラム7の分割領域7bでの+1次の回折光の内、回折格子8の0次の透過光は受光領域4d,4fの間に入射し、−1次の回折光は受光領域4fに入射し、+1次の回折光は受光領域4dに入射する。また、ホログラム7の分割領域7cでの+1次の回折光の内、回折格子8の0次の透過光は受光領域4c,4eの間に入射し、−1次の回折光は受光領域4cに入射し、+1次の回折光は受光領域4eに入射する。
ここで、光分岐素子5のA面を偏光ビームスプリッタとする。さらに光分岐素子5の上面にλ/4板を装着する。すると、LDチップ3からの直線偏光である出射光は、このA面をほぼ100%透過し、λ/4板を透過して円偏光となってディスクに入射する。そして、反射光が再びλ/4板を透過して、今度は90°回転した直線偏光となり、A面で略100%反射させることが可能となる。したがって、ハーフミラーなどに比べて、LDチップ3から出射された光を効率良くディスクに入射し、さらにディスク反射光を効率良くホログラム7へと導くことが可能となっている。
また、受光部4において、光分岐素子5からホログラム7を介した±1次の回折光の内、どちらか他方(図2では−1次の回折光)に対しては、ホログラム7からディスク半径方向Xとは逆方向に配置される受光領域4ABと、受光領域4ABを基準として、そのトラック方向Yの前後に配置される受光領域4C,4Dとが設けられている。
したがって、トラッキングおよびフォーカシングの誤差が無い状態では、図2で示すように、ホログラム7の分割領域7aでの−1次の回折光は受光領域4ABに入射し、分割領域7bでの−1次の回折光は受光領域4Cに入射し、分割領域7cでの−1次の回折光は受光領域4Dに入射する。このように、受光部4には、ホログラム7の+1次回折光および−1次回折光のそれぞれに対応した受光領域4a,4b,4c,4d,4e,4fおよび4AB,4C,4Dが設けられている。こうして、受光部4は、受光領域4a,4b,4c,4d,4e,4f;4AB,4C,4Dの9セグメントの光検出器で構成され、+1次の回折光と−1次の回折光とを共に利用することで、光利用効率を高めることができる。
また、ホログラム7の0次透過光量と、±1次の回折光量とは、回折格子の溝深さdによって制御することができる。単純には、ホログラム7は、
d×(n−1)=(k+1/2)λ …(1)
と設定されている。このときに、0次透過光量は0、±1次の回折光量はそれぞれ40%程度とすることができ、反射は格子基板表面で生じるのみである。ただし、nは格子基板(ホログラム7の格子基板)の屈折率、kは整数、λは光の波長である。このように0次透過光量を略0とすることで、これによってもまた、光利用効率を高めることができる。
なお、図2は、ホログラム7と回折格子8と受光部4との関係を模式的に表現したものである。実際にはホログラム素子6の大きさは、たとえば□3〜4mm程度である。受光部4の各受光領域4a〜4f;4AB,4C,4Dのサイズは、50μm×200μm程度で、かつホログラム7の中心より数百μmの距離に位置している。
上述のように構成される受光部4において、各受光領域4a,4b,4c,4d,4e,4f;4AB,4C,4Dからの出力信号をそれぞれSa,Sb,Sc,Sd,Se,Sf;SAB,SC,SDとするとき、上述のフォーカス誤差信号FESは、
FES=Sa−Sb …(2)
から求められる。また、上述の情報信号(RF信号)は、
RF=SAB+SC+SD …(3)
から求められる。
ここで、回折格子8を通過した光は、回折によって光量損失が発生し、信号S/Nの低下が懸念される。しかしながら、上述の構成によれば、情報信号である高帯域の信号(RF信号)は、回折格子8を通らない側の受光領域4AB,4C,4Dで受光するようになっている。また、高帯域を必要としないサーボ信号は、回折格子8を通る側の受光領域4a,4b,4c,4d,4e,4fで受光するようになっている。このため、特に高い信号S/Nが要求されるRF信号は、回折格子8の影響を全く受けることなく得ることができる。
一方、上述のトラック誤差信号TESは、
TES=(SD−SC)
−α×((Sa+Sb)−β×(Sc+Sd+Se+Sf))
…(4)
から求められる。係数α、βについては後述する。
図3は、回折格子8の一例を示す図である。この回折格子8は、図示している通り、格子間ピッチPは一定に形成されるけれども、グルーブ幅(溝幅)WGとランド幅(山幅)WLとの比に相当するデューティが、格子長手方向に変化している。また、このデューティの変化は連続的なものである。また、回折格子8の格子長手方向は、ディスクの半径方向Xと平行になるように配置されている。ここで、図3においては、グルーブ領域を斜線にて示して、ランド領域と区別しているが、この斜線は単に区別のためのものである。
具体的には、回折格子8は、図中の下端の方がグルーブ幅WGが広く、±1次回折効率が高くなっているとともに、0次効率が低くなっている。一方、回折格子8は、上端の方がグルーブ幅WGが狭く、±1次回折効率が低くなっているとともに、0次効率が高くなっている。すなわち、回折格子8は、格子長手方向に回折効率が変化している。この回折効率とは、透過率に相当する。
ここで、溝形状と回折効率との関係について、図20に基づいて説明する。図20(a)は、回折格子8の1ピッチ分の溝の断面を示すものであり、1ピッチの長さを2πとしたときのグルーブ幅(溝幅)WGをaで表す。このとき、0次回折効率は、図20(b)に示すように、
(0次回折効率)=(Q/π)(a−π)−Q+1
となる。ここで、Qは、格子基板の屈折率、格子溝深さ、波長によって決まる定数である。一方、1次回折効率は、図20(c)に示すように、
(1次回折効率)=(2Q/π)(1−cos(a))
となる。よって、aが0〜πの範囲では、aの増加に伴い0次回折効率は減少し、1次回折効率は増加する。なお、a=πは、デューティが1:1を意味する。またaがπ〜2πの範囲では、aの増加に伴い0次回折効率は増加し、1次回折効率は減少する。
上記構成において、例えば対物レンズがトラッキングの際にディスクの半径方向Xにずれると、回折格子8での回折効率に変化が生じる。その変化は上述のように±1次回折光と0次透過光とで相反方向になる。したがって、これらを別々に検出し、差動を取ることで、対物レンズのシフト量を検出可能であることが理解される。
たとえば、図4において参照符L0で示すように、対物レンズシフトが0のとき、
(0次透過光)−β×{(+1次回折光)+(−1次回折光)}=0
…(5)
となるように係数βを決定する。その後、上式の左辺が正になる場合は、0次透過光が増加したことに相当し、参照符L1で示すように図中の上方向に、対物レンズがシフトしたことになる。逆に上式の左辺が負になる場合は、0次透過光が減少したことに相当し、参照符L2で示すように図中の下方向に、対物レンズがシフトしたことになる。なお、ここでは、(0次透過光)とは、Sa+Sbを意味する。また、(+1次回折光)とは、Sd+Seを意味する。また、(−1次回折光)とは、Sc+Sfを意味する。
ここで、式(4)のトラック誤差信号TESの演算式に戻ると、(SD−SC)の成分はプッシュプル信号(PP信号)であり、係数α以降の成分は対物レンズシフトによるオフセット補正信号である。このオフセット補正信号において、(Sc+Sd+Se+Sf)は±1次回折光の和であり、(Sa+Sb)は0次透過光の和である。このオフセット補正信号は、式(5)の左辺のように、これらの差動によって、対物レンズのシフト量を演算している。係数βは、格子溝深さで決定される0次透過光と±1次回折光との回折効率差を調整する係数である。係数αは、レンズシフト量をPP信号におけるオフセット量に換算するための係数である。
また、ディスクの半径方向Xの傾き(チルト)においても、回折格子8上で、ビームがディスクの半径方向Xに移動する。したがって、上述のレンズシフト量と同様にチルト量を検出可能である。
このようにホログラム7と受光部4との間に、ホログラム7で回折された光を、さらに3ビームに分割するための回折格子8を設けた。また、回折格子8の回折効率をディスクの半径方向Xに異ならせた。これによって、メインビームの光量低下が無い1ビーム法を用いて、対物レンズのシフトやディスクの傾きに対するオフセットを抑圧し、安定したトラッキングサーボ性能を得ることができる。すなわち、1ビーム法においては、1個の光源から生成した1個のビームをディスクに照射するので、記録に関与するメインビームの光量を低下させることがない。また、本実施形態においては、ディスクからの反射光を分割し、上述のように複数の受光領域にて検出して、オフセットを抑圧できる。
また、光集積化ユニット1と、光集積化ユニット1から出射されたレーザ光をディスク上に集光させるためのレンズ手段とを組合わせて光ピックアップ装置を構成した。これによって、光ピックアップ装置を必要最小限の光学部品で構成できる。また、光ピックアップ装置の信号検出系の調整も不要となる。また、得られる光ピックアップ装置は、小型、薄型で、かつ組立て性が良いものとなる。また、信頼性にも優れ、安定したトラッキングサーボ性能を有する光ピックアップ装置を得ることができる。
なお、トラック誤差信号TESは、
TES=(SD−SC)
−α’×(SAB−β’×(Sa+Sb)) …(6)
または、
TES=(SD−SC)
−α”×((SC+SD)−β”×(Sc+Sd+Se+Sf))
…(7)
からも求めることができる。なお、α’、α”は、式(4)におけるαと同様の係数であり、β’、β”は式(4)におけるβと同様の係数である。
式(4)では、係数α以降の演算は、回折格子8の0次透過光と、±1次回折光との差動を演算しているので、対物レンズのシフトに対する感度は高くなる。これに対して、上記式(6)および(7)では、0次透過光と、±1次回折光との何れか一方のみを利用しているので、上述の感度は低くなる。しかしながら、式(6)では受光領域4c〜4fが不要になる。したがって、光集積化ユニット1内の演算回路規模を小さく、かつピン数も少なくでき、光集積化ユニット1をさらに小型化することができる。
すなわち、受光部4の変形例は、受光部4a、4bのみを備えている構成であってもよい。この構成であれば、式(6)を用いて検出を行うことができる。
また、式(6),(7)では、ホログラム7のトラック方向Yの分割領域7a;7b+7cの内、一方の領域(式(6)では7a、式(7)では7b+7c)しか利用していないので、ホログラム7に落射する光ビームのトラック方向Yのアンバランスの影響を受け難い。
例えば、式(7)を用いる場合、ホログラム7の同一領域7b、7cからの各々±1次回折光を用いることになるため、入射光量の変動に対して安定である。例えば、ホログラム7に入射する光ビームの位置が図2のY方向にシフトした場合に発生する光量変動の影響をキャンセルすることができる。
図3および図4を用いて説明を行った回折格子を、本発明の光集積化ユニットまたは光ピックアップに適応させた場合の具体例について、説明をする。
図5は、図3に記載の回折格子8のデューティと±1次回折効率の和との関係を示したものである。ここで、デューティ0.5は溝幅と山幅が1:1であることを示しており、また例えばデューティが0.2とは、溝幅と山幅が0.2:0.8すなわち1:4であることを示している。すなわち、図3に示すように、回折格子8は、図中の下端の方が溝幅が大きく、デューティが大きくなっている。
なお、デューティが0〜0.5の範囲では、デューティが増加すると±1次回折効率の和も増加する。一方、デューティが0.5〜1の範囲では、デューティが増加すると±1次回折効率の和は減少する。つまり、デューティが0.5のとき、回折効率は最大となる。
ここで、図5から、デューティ0.2から0.35までは、図中に点線で記載した通り、ほぼ、回折効率の変化もデューティに比例していることがわかる。したがって、この直線性のよい部分に相当するデューティを有する回折格子8の領域に、ホログラム回折光を照射させる構成とすることが好ましい。このような、直線性の良好な回折格子を用いる理由は、直線からズレた部分での対物レンズのシフトに対する感度が低くなるからである。
しかし、上記記載のようにデューティ変化を0.2から0.35までとすると、感度低下は無いものの、平均的な感度が低下してしまうという問題が発生する。すなわち、デューティ変化に応じて回折効率は変化するが、そもそも得られる回折効率を十分高い値にできない。そのため、可能な限り、デューティと回折効率の関係を直線的にすることがもっとも好ましい。すなわち、デューティと回折効率との関係が直線的となる領域を拡大することが好ましい。これによって、得られる回折効率を高めることができる。
ここで、図3および図7(a)に示す回折格子8では、デューティを線形的に変化させていたが、回折格子のデューティ変化を非線形にすることで、回折格子内の回折効率の変化率をより広い領域で一定にすることが可能である。
このような、デューティ変化が非線形である回折格子の一例を図7(b)に示す。この図7(b)に示す回折格子は、デューティを格子長手方向に非線形に連続的に変化させている。また、図7(b)に示す回折格子から得られる回折効率を、デューティの値に対してプロットしたグラフを図6に示す。ここでは、デューティが0.2以下および0.35以上の領域において回折格子を線形的変化から非線形に変化させることで、デューティ0.1から0.5の範囲で回折効率を直線的に変化させることが可能となった。
以上のように、回折格子のデューティ変化を非線形にすることで、回折格子内での回折効率の変化率を一定にできる領域を拡大することが可能となり、結果として、対物レンズのシフトに対する感度を一定にすることができ、平均的な感度も向上させることができる。
ここで、本発明に係る光ピックアップ装置を備えた、本発明に係る光ディスク装置の一例について説明する。
光ディスク装置15は、図19に示すように、光ピックアップ装置16、制御部19、サーボ駆動系20、およびスピンドルモータ21を備えている。
光ピックアップ装置16は、光ビームを生成し、光ディスクDからの反射光を検出するためのものである。光ピックアップ装置16は、光集積化ユニット1、λ/4板(1/4波長板)17および対物レンズ部18を備えている。光集積化ユニット1から、λ/4板17、対物レンズ部18を介して光ディスクDに光を照射する。光ディスクDからの反射光は、対物レンズ部18、λ/4板17を介して光集積化ユニット1に導かれる。光集積化ユニット1の受光部4にて検出された信号は、制御部19へと出力される。
制御部19は、光ディスク装置15の制御を行うためのものである。制御部19は、光ピックアップ装置16の制御とともに、光ピックアップ装置16で検出された信号に基づいて、光ディスクDに記録された情報の再生を行う。再生された情報は、例えば図示しない外部装置へと送信される。また、制御部19は、光ピックアップ装置16で検出されたトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号に基づき、サーボ駆動系20を制御することによって、トラッキング、フォーカシングをして、光ビームの位置合わせの制御も行う。また、制御部19は、例えば外部から入力される情報に基づいて、光ディスクDへ情報の記録を行うこともできる。
さらに制御部19は、スピンドルモータ21を制御して、光ディスクDの回転速度を制御する。
サーボ駆動系20は、制御部19からの制御命令に応じて、光ピックアップ装置16などの位置を調整して、光ビームの焦点位置の位置合わせを行うためのものである。
スピンドルモータ21は、光ディスクDを回転させるためのものであり、制御部19からの制御命令に応じた回転速度で光ディスクDを回転させる。
ここで、光ピックアップ装置16においては、制御部19からの制御命令に応じて光集積化ユニット1のLDチップ3が光ビームを発生させて、光ディスクDに光ビームを照射する。また、光ピックアップ装置16は、光ディスクDの記録情報や、トラッキングやフォーカスを行うための信号(トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号)を検出し、制御部19へと出力する。
より詳細には、光ディスク装置15が、光ディスクDに記録された情報を再生する際には、制御部19によって、スピンドルモータ21を所定の回転速度で回転させ、サーボ駆動系20で光ピックアップ装置16などの位置を調整する。そして、光ピックアップ装置16のLDチップ3から再生レーザが照射される。光ディスクDからの反射光を光ピックアップ装置16で検出し、制御部19にて光ディスクDに記録された情報の再生を行う。このように、トラッキング、フォーカシング、回転速度の調整などを行いながら、光ディスクDに光ビームを照射する。記録の場合には、LDチップ3からの光を光ディスクDの所望の位置に照射して、情報の記録を行う。
このように、光集積化ユニット1を備えた光ピックアップ装置16、光ディスク装置15においては、安定したトラッキングサーボを行うことができる。
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、回折格子の他の実施の形態について説明する。また、ここでは、上述の実施の形態と同様の構成、同様の働きの部材については、同じ符号を用いて参照し、説明は省略する。
図8および図9は、上記実施の形態で示した本発明の光集積化ユニットにおける他の一例の回折格子11,12の斜視図である。
前述の回折格子8は、図3および図4で示すように、格子間ピッチPは一定で、グルーブ幅WGとランド幅WLとで表されるデューティをディスク半径方向X(格子長手方向)に変化することで回折効率を変化していた。
一方、回折格子11,12では、格子間ピッチP、グルーブ幅WGおよびランド幅WLが一定のままで、したがってデューティが一定のままで、溝深さを格子長手方向に沿ってDTからDEまで変化することで回折効率を変化している。そして、この格子長手方向が、ディスク半径方向Xとなっている。図8の回折格子11では溝深さはDTからDEまで連続的に変化している。図9の回折格子12ではDTからDEまで段階的に変化している。
回折格子11,12の回折効率は、この溝深さに応じて変化する。したがって、回折格子8と同様に、式(5)の演算式から、対物レンズのシフト量およびディスクのチルト量を検出可能である。
なお、前述の回折格子8と上述の回折格子11,12とは、格子溝幅(グルーブ幅WG)によって選択すればよい。格子溝幅が、たとえば0.8〜0.9μm以上である場合には、格子の山幅と溝幅との比を変化させる回折格子8を使用することで、簡単なプロセスで作成することができる。
また、格子溝幅が0.8〜0.9μm未満の狭い溝幅である場合には、現在のプロセスでは上述の溝幅の加工誤差が大きくなって所望の透過率を得難くなる。したがって、格子の溝深さを変化させる回折格子11,12を使用することで、プロセスは多少複雑になるけれども、溝深さは高い加工精度で作成することができ、所望の透過率を得ることができる。
なお、プロセスの進歩によって溝幅の加工誤差が改善されると、0.8〜0.9μm未満の狭い溝幅にも回折格子8が適用されてもよいことは言うまでもない。
さらにまた、対物レンズのシフト方向に対する回折効率の変化は、対物レンズのシフト方向に透過率が変化する薄膜をコーティングすることなどでも実現することができる。すなわち、回折格子は、透過率が1方向に変化する薄膜をコーティングした回折格子であってもよい。しかしながら、その薄膜コーティングに比べて、回折格子8,11,12は、簡単なプロセスで作成することができる。
図8,9に示す様に、溝深さで、回折効率を変化させる場合において、この溝深さを非線形に変化させることも可能である。この場合、上述のように、デューティを非線形に変化させた場合と同様に、回折格子内での回折効率の変化率を一定にできる領域を拡大することができる。したがって、結果として、対物レンズのシフトに対する感度を一定にすることができ、平均的な感度も向上できる。
以上のように、回折格子のデューティや溝深さを非線形に変化させることで、回折格子内での回折効率の変化率を一定にできる領域を拡大させて、平均的な感度を向上できる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態について説明する。ここでは、上述の実施の形態と同様の構成、同様の働きの部材については、同じ符号を用いて参照し、説明は省略する。
図1におけるホログラム7で分割・回折されたビームが回折格子8に照射される領域に対応して、回折格子8を分割することでも、平均的感度を向上させることができる。この具体的な実施例について図10(a)(b)に基づいて説明する。
図10(a)(b)は、先の実施例において、図1におけるホログラム7で分割・回折されたビームが、斜線部で示す回折格子上に入射した場合のビーム形状7a、7b、7cを模式的に示した図である。なお、図6では、回折格子の回折効率が直線的に使用できる範囲をデューディ0.1〜0.5の範囲とした場合について説明を行ったが、ここで示す実施例では、0.1〜0.4にデューティを変化させた回折格子を用いた。
図10(a)は、ホログラムで回折された一方の一次回折光に対して、回折格子が一様に形成されている。図10(b)はビームに対応して回折格子を分割して形成している。
図10(a)に示すように、一様な回折格子を用いる場合には、1/4円状のビーム7cと7bとにおいて、回折格子のデューティ変化幅の半分程度しか使用できないことが分かる。すなわち、図中の右端部にデューティを記載した通り、ビーム7bはデューティ0.1〜0.25の間に、また、ビーム7cはデューティ0.25〜0.4の間に位置している。
この場合には、ビームが格子長手方向(図中上下方向)に移動した場合の回折効率の変化が小さい、すなわち、対物レンズのシフトに対する感度が低いということになる。
そこで、図10(b)に示すように、回折格子を2分割し、ビーム7b、7cのそれぞれに対応するように、回折格子8−1、8−2を配置する。すなわち、この回折格子8−1、8−2は、格子長手方向と垂直な方向に対して2つの領域に分割されている。言い換えると、この回折格子8−1、8−2は、格子長手方向と平行方向を分割線方向として分割されている
この構成によれば、図中にデューティを記載した通り、各ビームとも、デューティ変化を0.1〜0.4の全範囲に渡って使用できることになる。したがって、ビームが格子長手方向に移動した場合の回折効率の変化が大きい、すなわち、対物レンズのシフトに対する感度を高くすることができる。
また、2分割することで回折格子による回折効率を等しく設定できるため、両受光素子から得られた信号のゲインを等しく設定でき、光の利用効率が上がる。
なお、例えば図10(b)に示した構成においては、ビーム形状7aに対応する位置には、回折格子を設けなくてもよいし、設けてもよい。ここで回折格子を設けない場合には、例えば上述の式(7)に対応する受光部4を用いればよい。
図11(a)(b)は、ホログラム7で分割・回折されたビームが、回折格子に入射した場合のビーム形状(7a、7d、7e、7f、7g)を模式的に示した図である。
本発明の回折格子は、図11(a)に示すように、図10(b)における回折格子8−1、8−2を、格子長手方向と平行な方向に分割線を位置させてそれぞれ2分割した形状の、回折格子8−3、8−4、8−5、8−6であってもよい。ここで、ビーム形状7d、7eは、図10(b)に示すビーム形状7bに相当する領域のうち、それぞれ回折格子8−3、8−4に含まれている領域を表す。また、ビーム形状7f、7gは、図10(b)に示すビーム形状7cに相当する領域のうち、回折格子8−5、8−6に含まれている領域を表す。
ここでは、格子長手方向のビームの大きさが7d、7eで異なる。このため、回折格子8−3は、7dのビーム形状に対応して格子長手方向の長さを短くした。また、この短くした格子長手方向の長さにわたるデューティ変化を0.1〜0.4とする。
このように、回折格子8−3、8−4は、格子長手方向と垂直な方向に対して分割されている。言い換えると、この回折格子8−3、8−4は、格子長手方向と平行方向に分割されている。また、回折格子8−3、8−4は、格子長手方向の回折効率の変化率がそれぞれ異なっている。また、回折格子8−3、8−4は、例えば格子長手方向にデューティが連続的に変化して、回折効率が連続的に変化している。
この際、回折格子8−3と8−4とで、デューティが0.4となる格子長手方向の位置を同一としている。これによって、ビーム7dが格子長手方向に位置ずれする際の公差マージンを確保できる。
同様に、格子長手方向のビームの大きさが7f、7gで異なる。このため、回折格子8−5は、7fのビーム形状に対応して回折格子の格子長手方向の長さを短くした。また、この短くした格子長手方向の長さにわたるデューティ変化を0.1〜0.4とする。
このように、回折格子8−5、8−6は、格子長手方向と垂直な方向に対して分割されている。言い換えると、この回折格子8−5、8−6は、格子長手方向と平行方向に分割されている。また、回折格子8−5、8−6は、格子長手方向の回折効率の変化率がそれぞれ異なっている。また、回折格子8−5、8−6は、例えば格子長手方向にデューティが連続的に変化して、回折効率が連続的に変化している。
この際、回折格子8−5と8−6とで、デューティが0.1となるラインを同一ラインとしている。これによって、ビーム7fが格子長手方向に位置ずれする際の公差マージンを確保できる。
以上の構成によれば、図11(a)に示すビーム7d,7fにおいても、デューティ変化を0.1〜0.4の全範囲に渡って使用できることになる。したがって、ビームが格子長手方向に移動した場合の回折効率の変化が更に大きいので、対物レンズのシフトに対する感度を更に高くすることができる。
また、図11(b)に示すように、図11(a)に示す構成に加えて、さらに一定の回折効率である回折格子8−8、8−10、8−12、8−14を設けることもできる。すなわち、ビーム7d、7e、7f、7gに対応して、回折格子の格子長手方向の長さを短くし、対物レンズのシフトに対する感度を更に高くした場合に、一定の回折効率となる回折格子8−8、8−10、8−12、8−14を設けることもできる。
例えばこの回折格子8−8、8−10は、回折格子8−7、8−9に対して、格子長手方向と垂直方向に分割されている。また、回折格子8−12、8−14は、回折格子8−11、8−13に対して、格子長手方向と垂直方向に分割されている。
この際、例えば8−10と8−14のデューティは0.1とする。また、例えば8−8と8−12のデューティは0.4とする。これによって、ビーム7d、7e、7f、7gが格子長手方向に位置ずれする際に、光ビームが回折格子を透過しないことがなくなる。言い換えると、光ビームが回折格子を透過するようにできる。したがって、例えば受光部4が式(7)に対応する構成の場合に、演算式(7)第2項α以下の(SC+SD)−β×(Sc+Sd+Se+Sf)において、(Sc+Sd+Se+Sf)の変動を少なくできる。したがって、最適なβの変動を少なくして、TESのオフセットが生じにくくなる。
図12(a)は、ホログラム7で分割・回折されたビームが、回折格子に入射した場合のビーム形状(7a、7h、7i、7j、7k)を模式的に示した図である。
より詳細には、図21(a)〜(e)に示すようになる。
すなわち、図21(a)に示すように、ディスクにて回折されたビームは、仮想面Tの位置において、0次反射光と±1次回折光とが重なりあう。このように重なり合いのある反射光が、光分岐素子5からホログラム7を介して回折格子の位置に入射される。
ここで、図21(b)に示すように、領域7iは、図21(d)に示す領域8−16に入射するビーム形状を表している。そして、図21(b)において斜線にて示す領域が、0次反射光と±1次回折光とが重なりあう領域である。また、重なり合う領域の境界を点線にて示す。また、重なり合う領域の境界の終点を黒点にて示す。なお、領域7k、領域8−18についても、それぞれ領域7i、領域8−16と同様である。
また、図21(c)には、図21(e)に示す領域8−15に入射するビーム形状7hを示す。この場合、領域8−15には、0次反射光と±1次回折光とが重なり合う領域は含まれないようになっている。なお、領域7j、領域8−17についても、領域7h、領域8−15と同様である。
このように、格子長手方向と平行な方向の分割線の位置に関しては、図12(a)に示すように、ディスクに光ビームを照射した際の、その反射回折光の0次回折光と±1次回折光が重なり合う領域が回折格子8−15、8−17上に存在しないような構成にしている。すなわち、上記0次回折光と±1次回折光が重なり合っている境界線の終点に分割線を位置するようにしている。
すなわち、回折格子8−15と8−16、または回折格子8−17と8−18のように回折格子を分割して、0次回折光と±1次回折光が重なり合う領域を含む回折格子と、重なり合う領域を含まない回折格子とを配置する。
これによって、ディスクに光ビームを照射した際の、その反射回折光の0次回折光と+1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子8−16の総合的な回折効率(=Σ(Δ面積×Δ面積に対応した回折格子の回折効率))、反射回折光の0次回折光と−1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子8−18の総合的な回折効率(=Σ(Δ面積×Δ面積に対応した回折格子の回折効率))とをほぼ等しくしておく。
これによって、演算式(7)第2項α以下(SC+SD)−β×(Sc+Sd+Se+Sf)において、PP成分の残留が少なくなるので、メインのプッシュプル信号である(SD−SC)に含まれるPP信号振幅に対して、TESに含まれるPP信号振幅の変動を少なくすることができる。
また、演算式(7)における係数αは、レンズシフト量をPP信号におけるオフセット量に換算するための係数であるが、対物レンズのシフトに対する感度を高くした場合には、αの値が相対的に小さくなる。
従って、仮に演算式(7)第2項α以下(SC+SD)−β×(Sc+Sd+Se+Sf)において、PP成分の残留があったとしてもαの値が小さくなる為、PP成分の残留がTESに含まれるPP信号振幅の変動に及ぼす影響をより少なくできる。
従って、TESに含まれるPP信号振幅の低下が起こりにくい為、信号S/Nが低下してしまうことがなく、安定したトラッキングサーボ性能を有する光ピックアップ装置を得ることができる。
また、上記の説明においては、例えば図10(b)における回折格子8−1、8−2を、格子長手方向と垂直な方向にそれぞれ2分割する方法について述べた。しかしながら、これに限るものではなく、格子長手方向と垂直な方向に対する分割数を更に多くすることで、対物レンズのシフトに対する感度を更に高くすることができる。
ここで、図12(b)は、ホログラム7で分割・回折されたビームが、回折格子に入射した場合のビーム形状(7a、7l、7m、7n、7o、7p、7q、7r、7s)を模式的に示した図である。
図12(b)に示すように、ビーム7l、7m、7n、7oのそれぞれのビーム形状に対応するように、回折格子8−19、8−20、8−21、8−22を配置する。また、ビーム7p、7q、7r、7sのそれぞれのビーム形状に対応するように、回折格子8−23、8−24、8−25、8−26を配置する。なお、ビーム形状7l、7m、7n、7oは、図10(b)に示すビーム形状7bに相当する領域のうち、それぞれ回折格子8−19、8−20、8−21、8−22に含まれている領域を表す。また、ビーム形状7p、7q、7r、7sは、図10(b)に示すビーム形状7cに相当する領域のうち、それぞれ回折格子8−23、8−24、8−25、8−26に含まれている領域を表す。
図中に記載した通り、格子長手方向のビームの大きさが7l、7m、7n、7oで異なる。このため、それぞれのビーム形状に対応して、回折格子8−19、8−20、8−21、8−22の格子長手方向の長さを異ならせた。また、このように異ならせた各回折格子の格子長手方向の長さにわたるデューティ変化を0.1〜0.4とする。
同様に、格子長手方向のビームの大きさが7p、7q、7r、7sで異なる。このため、それぞれのビーム形状に対応して、回折格子8−23、8−24、8−25、8−26の格子長手方向の長さを異ならせた。また、このように異ならせた各回折格子の格子長手方向の長さにわたるデューティ変化を0.1〜0.4とする。
このように、回折格子8−19、8−20、8−21、8−22、および8−23、8−24、8−25、8−26は、光ビームが回折格子に照射される領域に対応するように、分割されて形成されている。そして、分割された各領域ごとに、回折効率、および回折効率の変動量が設定されている。
そうすることで、更に、ビームが格子長手方向に移動した場合の回折効率の変化が更に大きいので、対物レンズのシフトに対する感度を更に高くすることができる。
もちろん、図12(b)に示すように、回折格子の格子長手方向と垂直な方向に対する分割数を更に多くした場合においても、図11(b)に示すような一定の回折効率となる回折格子を付加することができる。
また、図12(b)に示すように、回折格子の格子長手方向と垂直な方向に対する分割数を更に多くした場合において、図12(a)に示すようなディスクに光ビームを照射した際の、その反射回折光の0次回折光と+1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子の総合的な回折効率と、反射回折光の0次回折光と−1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子の総合的な回折効率とをほぼ等しくしておくこともできる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態について説明する。
ここでは、1ビーム方式において、対物レンズがシフトした際に発生するオフセットを補償する、上述の光集積化ユニットを、光ディスク装置に用いる場合について説明する。特に、ディスクの互換性を考慮した場合の構成について説明する。また、ここでは、上述の実施の形態と同様の構成、同様の働きの部材については、同じ符号を用いて参照し、説明は省略する。
記録可能な光ディスクの一例としては、大別してDVD−R・RWのディスクとDVD−RAMのディスクが提案されており、両ディスクでは、案内溝形状が大きく異なる。
図13(a)(b)は、上記各光ディスクの溝形状、及び各光ディスクに光ビームを照射した際の反射回折光を示す。ここで図13(a)はDVD−R・RWの場合を示す。図13(b)はDVD−RAMの場合を示す。
図13(a)に示すように、DVD−R・RWは、案内溝(グルーブ)幅がピッチの半分よりやや広く形成されている。このDVD−R・RWは、グルーブのみに情報を記録するグルーブディスクである。
一方、図13(b)に示すように、DVD−RAMはグルーブとランドの幅がほぼ1:1となっている。このDVD−RAMは、ランドとグルーブの両方に情報を記録するランド/グルーブディスクである。
したがって、同一のピッチであっても、両者の溝幅は大きく異なる。
したがって、これらの光ディスクに対する反射回折パターンは異なる。
具体的には、ピッチの大きい図13(b)のDVD−RAMの場合は、ディスクによる±1次反射回折光が、図13(b)に示すように、重なり合ってしまう。
そのため、本発明に適応する回折格子の最適値も異なることになる。
ところが、実際の使用において、ディスクに応じて、回折格子を換えることは非常に困難である。このため、以下に説明するように、同一の回折格子を使用して、案内溝幅が狭く±1次回折光が重なり合わない場合と案内溝幅が広く±1次回折光が重なり合う場合とで、各受光領域の光検出器からの出力信号を用いて信号を計算する演算式を切り替える。具体的には、DVD−R・RWディスクとDVD−RAMディスクとで、光検出器からの信号の演算式を切り替えることによって対応できる。
具体的な演算例を、TESの演算式(7)、図14(a)(b)、図15を用いて説明する。
図14(a)(b)は、ディスク上のスポットがディスクのラジアル(半径)方向へ移動した場合の各出力信号を表したものである。すなわち、図14(a)は、従来のホログラム7のみを用いた場合と同様の各出力信号SCとSDおよびそれらの和信号SC+SDと差信号SC−SDを示している。
このような構成の場合、図に示すように通常SC、SDの各出力信号は位相がπずれたほぼ同じ出力値となる。このため、それらの差信号SC−SDはPP信号であるが、和信号であるSC+SDは、PP信号のないDC成分のみとなる。
このことは、演算式(7)のようなSc+Sd+Se+Sfの項についても同様である。例えば従来の構成において、受光部4を用いるとしても、Sc+Sd+Se+Sfの項は、PP信号のないDC成分のみとなる。また、回折格子8がない従来の構成では、当然のことながらレンズシフト成分も含まれない。
一方、本発明のように、±1次回折光の一方に回折格子を挿入した構成の場合を図14(b)に示す。SC+SDは従来と同様、PP成分のないDC成分のものとなる。しかしながら、Sc+SeとSd+Sfの各信号出力については、レンズシフト成分を検出するために、回折格子の回折効率をビームが入射する位置によって変化させていることから、Sc+SeとSd+Sfの振幅に差を生じることになる。したがって、Sc+Se+Sd+Sfの和信号にPP信号が残留してしまう。
演算式(7)において、(SC+SD)−β×(Sc+Sd+Se+Sf)は、対物レンズがシフトした際に生じるトラックオフセット分を演算する部分である。このため、ここにPP成分が余分に残留してしまうと、トラック誤差信号TESとしては、メインのPP信号であるSD−SCから、残留したPP成分を引いた値が得られることになる。結果として、トラック誤差信号TESに含まれるPP信号振幅が小さくなり、信号S/Nが低下してしまう。
そのため、(SC+SD)−β×(Sc+Sd+Se+Sf)には、つまりは、Sc+Sd+Se+Sfに残留するPP成分を抑えるのが好ましいわけである。この残留PP成分を引き出す、上記振幅の差は、前述の±1次回折光の状態によって大きく変化することになる。
したがって、ある特定のディスクに対応させる場合は、回折格子をディスク規格に合わせて最適設計をすることで、できるだけ上記振幅差を小さくしてPP信号の残留を抑えることが可能である。しかしながら、ディスク規格が異なる場合には、十分な対応ができない。
そこで、異なる規格のディスクを用いて記録再生を行う場合でも、TES信号のAC成分を除去するための方法について説明する。ここで、このAC成分とは、回折格子の回折効率を場所ごとに変化させたことによって生ずる、上述した余分の成分のことである。
図15には、メインPP信号を模式的に示す。このメインPP信号のトラックずれの信号成分をB(短周期)、オフセット信号成分A(長周期)とした場合に、A/Bを小さくすることでAC成分を除去できる。
したがって、1次回折光の重複度に応じて、TESの演算式(7)の定数αの極性及び絶対値を設定し、対物レンズシフトによるオフセット信号成分Aを小さく、トラックずれによるPP信号成分Bを大きくする。これによって、以下に説明するように、見かけ上、AC成分を抑圧することができる。
ここで、DVD−R・RWディスクに最適設計された回折格子を用いてTESを測定した結果を図16に示す。ここではTES信号は、ほぼDC成分のみとなり、適切な信号が得られた。
しかし、同様に、TESの演算式(7)の定数αの極性をそのままとして、絶対値のみを変化させて、DVD−RAMディスクに適応した場合の結果を図17に示す。ここでは、TES信号にAC成分が含まれている。そのため、レンズシフトによるオフセットを除去できない結果となった。
そこで、上記説明を行ったA/Bを最小化するため、定数αの極性を反転させ、また絶対値を変化させた。その結果を図18に示す。A/Bは最小となり、レンズシフトによるTES信号のオフセットが除去可能となった。
以上のことからDVD−R・RWディスクに最適設計された回折格子を用いて、DVD−RAMディスクを記録・再生する場合、(7)式の演算されたTESのA/Bを抑えることが可能であることがわかる。
また、DVD−RAMディスクに最適設計された回折格子を用いて、DVD−R・RWディスクを記録・再生する場合、(7)式の演算されたTESにおいて、上述のA/Bを抑えることが可能であることも確認した。
以上の結果から、TES信号のレンズシフトのオフセットを除去し、DVD−R・RWディスクとDVD−RAMディスクの互換性を確保するためには、どちらかのディスクに最適になるように回折格子の設計を行い、定数の極性を反転させ、かつ絶対値を変えることで対応可能であることがわかる。
すなわち、上述の光ディスク装置は、トラッキングエラー信号の演算における定数の極性を反転させることで、異なる規格のディスクに適応可能とした光ディスク装置である。
なお、上述の実施の形態においては、情報記録媒体の例としてDVDディスクについて説明したが、情報記録媒体はこれに限るものではなく、CD(Compact Disk)などの光ディスク、MO(Magneto Optical)ディスクなどの光磁気ディスクであってもよい。
発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と請求の範囲に記載した事項の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
また、請求の範囲に記載した事項や、発明を実施するための最良の形態に記載した技術的手段は、適宜組み合わせることができ、この組み合わせによって得られる事項も本発明の技術的範囲に含まれる。
産業上の利用の可能性
本発明の光集積化ユニットによれば、メインビームの光量低下が無い1ビームトラッキング法を用いて、対物レンズのシフトやディスクの傾きに対するオフセットを抑圧し、安定したトラッキングサーボ性能を得ることができる。また、これを用いる光ピックアップ装置、光ディスク装置によれば、信号検出系の調整も不要となり、小型、薄型で、かつ組立て性が良く、信頼性にも優れた光ピックアップ装置、光ディスク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の一形態の光集積化ユニットの概略的構成を示す概略図である。
図2は、図1で示す光集積化ユニットにおいて、ホログラムの形状およびホログラム素子と受光部との関係を示す平面図である。
図3は、本発明の実施の一形態の回折格子の正面図である。
図4は、図3の回折格子上におけるディスク反射光の、対物レンズの変位やディスクチルトによる動きを示す正面図である。
図5は、本発明の回折格子の回折効率とデューティの関係を示すグラフである。
図6は、本発明の回折格子の回折効率とデューティとの直線性を拡大させた場合のグラフである。
図7(a)は本発明の回折格子の正面図であり、図7(b)は回折格子のデューティを非線形に変化させた場合の回折格子の正面図である。
図8は、本発明の実施の他の形態の光集積化ユニットにおける回折格子の斜視図である。
図9は、本発明の実施のさらに他の形態の光集積化ユニットにおける回折格子の斜視図である。
図10(a)はビームに対して一つの回折格子を形成した場合の回折格子の平面図であり、図10(b)は回折格子をビームに対応して分割して形成した場合の回折格子の平面図である。
図11(a)は回折格子を格子長手方向に平行な方向に分割線を位置させて2分割し、格子長手方向の回折効率の変化率をそれぞれ異ならせて形成した回折格子の一例を示す平面図であり、図11(b)はさらに格子長手方向に一定の回折効率となる回折格子を加えた構成を示す平面図である。
図12(a)は、格子長手方向と平行な方向にそれぞれ2分割する際の分割線の位置を示した、回折格子の平面図であり、図12(b)は多分割して形成した回折格子を示す平面図である。
図13(a)は記録可能な光ディスクとしてのDVD−Rディスクの案内溝での反射光を示す説明図であり、図13(b)は記録可能な光ディスクとしてのDVD−RAMディスクの案内溝での反射光を示す説明図である。
図14(a)はディスクのスポットがディスクの半径方向へ移動した場合のトラッククロス信号の成分を示したグラフであり、図14(b)はディスクのスポットがディスクの半径方向へ移動した場合のトラッククロス信号の他の成分を示したグラフである。
図15は、対物レンズシフト時のPP信号とオフセットの関係を示す概略のグラフである。
図16は、DVD−Rディスクでの対物レンズシフト時のPP信号とオフセットの関係を測定したグラフである。
図17は、DVD−RAMディスクでの対物レンズシフト時のPP信号とオフセットの関係を測定したグラフである。
図18は、DVD−RAMディスクで式(7)におけるαの極性反転を行った場合の対物レンズシフト時のPP信号とオフセットの関係を測定したグラフである。
図19は、本発明に係る光ピックアップ装置を備えた、本発明に係る光ディスク装置を示す概略のブロック図である。
図20(a)は回折格子の1ピッチ分の断面形状を示す概略図であり、図20(b)は1ピッチ分の長さに対して溝幅を変化させたときの0次回折効率の変化を示すグラフであり、図20(c)は1ピッチ分の長さに対して溝幅を変化させたときの1次回折効率の変化を示すグラフである。
図21(a)は図12(a)における構成を詳細に説明するための説明図であり、図21(b)は上記構成におけるビーム形状の一例を示す平面図であり、図21(c)は上記構成におけるビーム形状の他の一例を示す平面図であり、図21(d)は上記ビーム形状の一例が入射する回折格子の一例を示す平面図であり、図21(e)は上記ビーム形状の他の一例が入射する回折格子の一例を示す平面図である。

Claims (18)

  1. ディスク状の情報記録媒体へレーザ光を照射する発光部と、前記ディスク状の情報記録媒体での反射光を反射させてホログラムヘと導く光分岐素子と、前記光分岐素子からの光を回折させて受光部へと光を導くホログラムと、前記ホログラムで回折された光を受光する受光部とを具備する光集積化ユニットにおいて、
    前記ホログラムと受光部との間に配置され、前記ディスク状の情報記録媒体の半径方向に透過率が変化する光学素子を含むことを特徴とする光集積化ユニット。
  2. 前記光分岐素子は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1記載の光集積化ユニット。
  3. 前記ホログラムにおいて、格子基板の屈折率をn、光の波長をλ、kを整数とするとき、回折格子の溝深さdを、
    d×(n−1)=(k+1/2)λ
    に形成することを特徴とする請求項1または2記載の光集積化ユニット。
  4. 前記受光部は、前記ホログラムの+1次回折光および−1次回折光のそれぞれに対応した受光領域を有することを特徴とする請求項1または2記載の光集積化ユニット。
  5. 前記ホログラムのどちらか一方の1次回折光のみが透過するように、前記光学素子が設置されることを特徴とする請求項4記載の光集積化ユニット。
  6. 発光部からディスク状の情報記録媒体へレーザ光を照射し、その反射光に基づいて前記レーザ照射のためのサーボ制御が行われる光集積化ユニットにおいて、
    前記反射光の経路に、格子長手方向が前記ディスク状の情報記録媒体の半径方向となるように配置され、前記格子長手方向に回折効率が変化する回折格子を有することを特徴とする光集積化ユニット。
  7. 前記光学素子は、格子長手方向が前記ディスク状の情報記録媒体の半径方向となるように配置され、前記格子長手方向に回折効率が変化する回折格子であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光集積化ユニット。
  8. 前記回折格子は、格子の山幅と溝幅との比を前記格子長手方向に連続的に変化させたことを特徴とする請求項6または7記載の光集積化ユニット。
  9. 前記回折格子の格子の山幅と溝幅との比を前記格子長手方向に非線形に連続的に変化させることにより、回折効率の変化率が一定である領域を、前記回折格子の格子の山幅と溝幅との比を前記格子長手方向に線形に連続的に変化させたときの回折効率の変化率が一定である領域よりも拡大したことを特徴とする請求項8記載の光集積化ユニット。
  10. 前記回折格子は、格子の溝深さを前記格子長手方向に変化させたことを特徴とする請求項6または7記載の光集積化ユニット。
  11. 前記回折格子は、格子長手方向と垂直な方向に対して複数の領域に分割され、さらに複数の領域に分割された回折格子の格子長手方向の回折効率の変化率をそれぞれ異ならせることを特徴とする請求項6または7記載の光集積化ユニット。
  12. 前記回折格子は、格子長手方向と垂直な方向に対して複数の領域に分割され、さらに分割された複数の領域において、格子長手方向に格子の山幅と溝幅との比が連続的に変化し回折効率が連続的に変化する領域と、格子の山幅と溝幅との比が一定であり回折効率が一定である領域とを含むことを特徴とする請求項11記載の光集積化ユニット。
  13. 格子長手方向と垂直な方向に対して、前記回折格子を2分割する際の分割線位置は、前記回折格子が、溝形状を有する前記ディスク状の情報記録媒体からの反射回折光の0次回折光と±1次回折光が重なり合う領域が透過する部分を含む回折格子と、重なり合わない領域が透過する部分を含む回折格子とに分割される位置であることを特徴とする請求項11に記載の光集積化ユニット。
  14. 前記回折格子が、格子長手方向と垂直な方向に対して複数の領域に分割され、複数の領域に分割された回折格子の回折効率の変化率を異ならせる際に、溝形状を有する前記ディスク状の情報記録媒体からの反射回折光の0次回折光と+1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子の総合的な回折効率と、反射回折光の0次回折光と−1次回折光が重なり合う領域が透過する部分に対応する回折格子の総合的な回折効率とをほぼ等しくすることを特徴とする請求項11記載の光集積化ユニット。
  15. 前記回折格子は、光ビームが回折格子に照射される領域に対応するように、2以上に分割されて形成されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の光集積化ユニット。
  16. 前記請求項1〜15の何れか1項に記載の光集積化ユニットと、該光集積化ユニットから出射されたレーザ光をディスク状の情報記録媒体上に集光させるための対物レンズ手段とが組合わせられて構成されることを特徴とする光ピックアップ装置
  17. 請求項16に記載の光ピックアップ装置を備えている光ディスク装置
  18. ディスク状の情報記録媒体へレーザ光を照射する発光部と、前記ディスク状の情報記録媒体へ集光させる対物レンズと前記ディスク状の情報記録媒体からの反射光を反射させてホログラムヘと導く光分岐素子と、前記光分岐素子からの光を回折させて受光部へと光を導くホログラムと、前記ホログラムで回折された光を受光する受光部とを具備し、前記ホログラムと受光部との間に配置され、前記ディスク状の情報記録媒体の半径方向に透過率が変化する光学素子を含む光ピックアップ装置を有し、前記光ピックアップ装置から得られた信号を演算してトラッキングエラー信号を算出し、算出したトラッキングエラー信号に基づいてトラッキングを行って記録/再生を行う光ディスク装置であって、
    前記光学素子は回折格子であり、
    前記トラッキングエラー信号の演算式
    TES=(SD−SC)−α×((Sa+Sb)−β×(Sc+Sd+Se+Sf))
    (但し、TES:トラッキングエラー信号、Sa+Sb:前記ホログラムにおいて前記半径方向を分割線方向として分割された一方の領域での+1次の回折光の内、前記回折格子の0次の透過光を前記受光部にて受光することにより得られた信号、Sc+Sd+Se+Sf:前記ホログラムにおいて前記半径方向を分割線方向として分割された他方の領域での+1次の回折光の内、前記回折格子の±1次の透過光を前記受光部にて受光することにより得られた信号、SC:前記ホログラムにおいて前記半径方向を分割線方向として分割された他方の領域を、さらに前記ディスク状の情報記録媒体のトラック方向を分割線方向として分割された一方の領域での−1次の回折光を前記受光部にて受光することにより得られた信号、SD:前記ホログラムにおいて前記半径方向を分割線方向として分割された他方の領域を、さらに前記ディスク状の情報記録媒体のトラック方向を分割線方向として分割された他方の領域での−1次の回折光を前記受光部にて受光することにより得られた信号、α,β:係数)
    における係数αの極性を反転させるとともに、絶対値を変えることによって、前記回折格子を、前記ディスク状の記録媒体における案内溝幅とは異なる案内溝幅を有する規格のディスク状の情報記録媒体に適応可能としたことを特徴とする光ディスク装置。
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