JP4039728B2 - ステッピングモータの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステッピングモータの脱調を防止しながら、位置を制御する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のステッピングモータの制御装置は、ステッピングモータに対し、励磁シーケンスを切り換えるだけで、簡単に安価に高精度に、位置制御が可能なものとして、広く用いられてきた。
すなわち、このような開ループ制御装置の場合、回転子位置に関係なく、位置指令によって前記モータの励磁の切り換えを行っている。
【0003】
しかし、開ループで制御しているため、該ステッピングモータ自体の振動、負荷の変動や、外力による影響などで、いったん同期がはずれると指令された位置に追従できず、該指令位置に対して実際の停止位置がずれる、いわゆる脱調現象を生じる。このため、信頼性を要求する用途では、必要な回転力に対して余裕をもった大きなモータを使用するか、サーボモータなど他のモータを使用する必要があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の制御装置において、余裕をもった大きなモータを使用することは、該モータサイズの大型化を招き、装置自体の小型化を阻害するという問題点があった。また、モータサイズを大きくしても、脱調を完全になくすことはできないため、信頼性に問題が残ってしまう。
【0005】
他方、サーボモータなどの閉ループで制御するモータを使用することで、脱調をなくすことができるが、一般的に、サーボモータは、指令位置に対する実際の位置の偏差からモータに流す電流の大きさを制御するため、その制御が複雑で、コストが高くなるという問題点があった。
さらに、該モータが停止時に微振動を生じたり、負荷の変化に対する制御系の安定性を保つのが難しいという問題点もあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的は前記問題点を解消し、複雑な制御を用いることなく、脱調しない小型、安価で、信頼性が高いステッピングモータの制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の構成は、ステッピングモータの回転子位置を検出する位置検出部と、該検出部からの検出値と位置指令値とを比較し、その偏差により、該モータ巻線に流すべき電流に対応する信号を出力する制御部と、該制御部からの出力信号により、前記モータ巻線に流す電流を出力する駆動部とからなり、前記位置指令値により、前記モータの位置を制御する装置において、次のとおりである。
【0008】
前記制御部は、前記検出値の信号と、前記位置指令値の信号と、前記偏差の範囲信号と、前記偏差の方向信号とが入力され、これらの信号に基づいて該制御部に格納されているデータにより、前記駆動部にある複数のスイッチング素子のON、OFFを制御するとともに、前記偏差範囲信号が所定範囲内にあれば、前記位置指令値により指令される位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁し、前記偏差範囲信号が所定範囲外にあれば、前記検出値と前記偏差方向信号とにより、前記回転子位置に対応する位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁するような励磁シーケンスを発生するものである。
【0009】
前記制御装置は、直動ステッピング、すなわち、リニアステッピング駆動位置を制御することができる。
【0010】
前記制御装置は、マイクロステッピング駆動位置を制御することができる。
【0011】
前記偏差範囲信号が所定範囲外にある場合、前記制御部は、前記偏差範囲信号と前記回転子位置検出値に対応して発生する励磁シーケンスに対して、さらに、その時間的変化から、速度補正を行う機能を備える。このため、高速域まで制御することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。すなわち、本実施の形態のステッピングモータの制御装置における励磁シーケンス制御部は、常時、偏差範囲信号と偏差方向信号とが入力されており、該偏差範囲信号が所定範囲内にあれば、位置指令値による指令位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁するような励磁シーケンスを発生する。また、前記偏差範囲信号が所定範囲外にあれば、前記モータの回転子位置を検出する位置検出部からの検出値と前記偏差方向信号とにより、該回転子位置に対応する位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁するような励磁シーケンスを発生するものである。
【0013】
(実施例) 図1は、本発明のステッピングモータの制御装置の一実施例を示すブロック構成図、図2の図2(a)、図2(b)、図2(c)のそれぞれは、該制御装置の励磁シーケンス制御部のROM(read only memory)に格納されているアドレスに対するデータの内容を示す図である。
【0014】
図1において、ステッピングモータの制御装置Aは、ステッピングモータ1と、該モータ1の回転子に取り付けられる位置検出器としてのエンコーダ2と、指令カウンタ3と、回転子位置カウンタ4と、偏差カウンタ5と、励磁シーケンス制御部6と、前記モータ1を駆動する駆動部7とからなっている。
【0015】
前記ステッピングモータ1は、5相ハイブリッド型ステッピングモータで、その回転子の外周面に50個の回転子小歯が配設されている。該モータ1の回転軸には、該回転子の位置検出器として、1回転当たり1000パルスを出力するエンコーダ2が取り付けられている。位置指令としてはパルス信号が用いられ、移動量と移動速度を、パルス数とパルス周波数でそれぞれ指定している。
【0016】
前記指令カウンタ3は、20進のアップダウンカウンタで、位置指定として与えられるパルス信号の計数を行い、0から19の値を、5ビットのバイナリ信号を出力する。また、前記回転子位置カウンタ4は、20進のアップダウンカウンタで、前記エンコーダ2から出力される位置検出信号としての2相パルス信号の計数を行い、0から19の値を、5ビットのバイナリ信号を出力する。
【0017】
前記偏差カウンタ5は、前記位置指令パルスと前記エンコーダ2からの回転子位置パルス(フィードバックパルス)との差を計数する。該偏差カウンタ5から出力される2ビットのパルス信号は、偏差の方向と偏差の範囲を示す信号である。
ここで、前記偏差カウンタ5の該偏差方向は、偏差の極性が+(正、位置指令値>位置検出値)および0の場合はH信号を出力し、前記極性が−(負)の場合はL信号を出力する。また、前記偏差の範囲の信号としては、±5パルス以上であればH信号を出力し、±5パルスを超えなければL信号を出力する。
【0018】
前記励磁シーケンス制御部6はROMで構成され、前記指令カウンタ3、回転子位置カウンタ4のそれぞれから出力される5ビットのバイナリ信号と、前記偏差カウンタ5から出力される2ビットの信号との計12ビットの信号が入力されており、次段の駆動部7のスイッチング素子Q1,Q2,‥‥‥Q10をON,OFFを制御する10ビットの信号を出力する。
【0019】
該励磁シーケンス制御部6には、ROMのなかに図2(a)、図2(b)、図2(c)に示すようなデータが格納されており、図中、×印のある部分のデータは関係ないことを示す。なお、前記指令カウンタ3および回転子位置カウンタ4からそれぞれ出力される5ビットのデータは、10進数で表されている。また、励磁位置の数字は、前記駆動部7のなかの10個のスイッチング素子Q1,Q2,‥‥‥Q10のON,OFF制御する励磁シーケンスの状態を表している。
【0020】
図3は、前記駆動部7と5相ステッピングモータ1との結線図を示す。該駆動部7は、10個のスイッチング素子Q1,Q2,‥‥‥Q10からなるハーフブリッジインバータ回路で、直流電源に対して、直列接続されたそれぞれ一対の前記スイッチング素子Q1とQ2,Q3とQ4,Q5とQ6,Q7とQ8,Q9とQ10を並列に接続している。
そして、前記それぞれ一対に接続されたスイッチング素子Q1とQ2,Q3とQ4,Q5とQ6,Q7とQ8,Q9とQ10のそれぞれの接続点を、前記ステッピングモータ1のペンタゴン結線による環状に接続された各相巻線WA,WD,WB,WE,WCの接続点にそれぞれ結線している。この場合、前記ステッピングモータ1の各相巻線WA,WD,WB,WE,WCは、それぞれの巻始端と巻終端とを順次、直列に接続して環状に形成している。
【0021】
そして、この駆動部7の前記スイッチング素子Q1,Q2,‥‥‥Q10を介して行われる、前記励磁シーケンス制御部6による5相ステッピングモータ1の励磁シーケンス(4−5相励磁のハーフステップ駆動)を、図4に示す。図中、○印はその素子のON状態を示す。
【0022】
前記励磁シーケンスを1ステップずつ切り換えると、発生するトルクの電気的位相は18度ずつずれて、前記モータ1は、回転子小歯の1/20ピッチずつ移動しながら回転する。すなわち該モータ1に配設されている回転子小歯は50個であるので、1ステップで(1/50)×(1/20)=1/1000だけ回転する。
【0023】
次いで、本実施の形態の作用を説明する。
通常、特定の励磁シーケンスで励磁するときの前記ステッピングモータ1の発生するトルクと、励磁安定点に対する変位との関係は、前記回転子小歯のピッチを1サイクルとすると正弦波に近似される。この場合、発生するトルクは、1/4ピッチずれた位置で最大となり、1/2ピッチ以上ずれると発生するトルクの方向が変わり、元の安定点に戻ろうとはしなくなる。
【0024】
本実施例における前記制御装置Aは、前記モータ1が、トルクの最大となる1/4ピッチ以上ずれが発生した場合、常に指令された励磁安定点に向かうようなトルクを発生するように、前記エンコーダ2からの回転子の位置検出信号を基に、前記励磁シーケンス制御部6により、励磁シーケンスの切り換え制御を行い、該モータ1の脱調を防止している。
なお、前記1/4ピッチは、該モータ1の分解能、すなわち前記エンコーダ2の分解能の5パルスに相当する。
【0025】
図5は、初期状態として、励磁位置0を励磁したときの該モータ1の回転子位置の偏差(または、パルス数により表す変位)に対する発生トルクの関係を示す。このとき、外力がかかっていない場合は、回転子位置のカウンタ4も、0の位置で該モータ1は停止している。なお、図5中で、前記励磁位置0における発生トルクの全波形を示すが、他の励磁位置1,2,3,‥‥‥19における発生トルクの波形については、相互の位相関係のみを示し、他の波形部分を省略している。
この場合、各値の初期状態は、以下のようになる。図2(a)のとおり、
偏差範囲信号:L,偏差方向信号:(H),指令カウンタ値:0,回転子位置カウンタ値:0,励磁位置:0
【0026】
次に、回転子に外力を加え、回転軸を正転方向(軸端からみてCW方向)に回していくと、回転子位置カウンタ4の値は増加して、偏差の値はマイナス方向に増加する。
このとき、前記エンコーダ2の5パルスを超えない分までは、偏差範囲の信号がLであるため、励磁位置は、位置指令位置の値で決まり、0のままである。
【0027】
逆に、回転子に外力を加え、回転軸を逆転方向(軸端からみてCCW方向)に回していくと、回転子位置カウンタ4の値は減少して、偏差の値はプラス方向に増加する。
このとき、前記エンコーダ2の5パルス以上の場合は、偏差範囲の信号がHであるため、励磁位置は、回転子位置カウンタ4の値により決まり、図2(b)に示す位置になる。例えば、回転子位置検出値が15のとき、励磁位置は0になる。
【0028】
回転軸を前記正転方向に回したとき、さらに、該回転子に外力を加えて回転軸を正転方向に回し、回転子位置カウンタ4の値が6になると、偏差範囲信号はHとなり、そのときの励磁位置は、回転子位置カウンタ4の値と偏差方向信号とによって決まり、図2(c)より、回転子位置カウンタ4の値6と偏差方向信号Lとから励磁位置は1となる。
【0029】
以下、前記回転子位置カウンタ4の値が、7,8,9,‥‥‥と増加するごとに、励磁位置も2,3,4,‥‥‥と切り替わり、発生するトルクは、常に初期位置に戻ろうとするトルクを発生する。
【0030】
指令位置が、パルス入力信号によって変わったときや、外力により回転子の変位の方向を変えたときも、同様に、前記モータ1は図2(a)、図2(b)および図2(c)により、必ず指令位置に向かうトルクを発生し、脱調することはなくなる。
【0031】
本実施例の他の例を、以下に説明する。
本実施例において、ステッピングモータ1として、5相ステッピングモータについて説明してきたが、2相、3相または多相ステッピングモータでも、同様の制御装置により制御できることは明らかである。
また、回転機だけでなく、直動機(リニアステッピングモータ)についても、同様の制御装置により、簡単に制御できる。
【0032】
本実施例において、前記励磁シーケンス制御部6は、ROMを使用したハードウエアで構成されているが、同様の構成をソフトウエアにても実現できる。
【0033】
本実施例において、前記モータ1の分解能と同じ分解能を有するエンコーダ2を使用したが、必ずしも同じ分解能である必要はない。また、前記エンコーダ2に限らず、レゾルバなど、他の位置検出器を使用するも可能である。
【0034】
また、前記偏差範囲信号の切り換えは、ステッピングモータの発生トルクが最大となる1/4ピッチに相当するパルスで行ったが、0〜1/2ピッチのどこでも脱調しないような制御ができる。
【0035】
さらに、前記モータの位置情報の時間的変化、または該モータの位置検出信号に代える回転子速度検出器による回転速度信号により、偏差範囲および励磁位置の補正を行うことで、高速域までの制御することもできる。
さらに、前記回転子位置カウンタ4のカウント数、前記励磁シーケンス制御部6のデータ数を増加させることで、マイクロステップ駆動についても、同様に制御することができる。
【0036】
なお、本発明の技術は前記実施例における技術に限定されるものではなく、同様な機能を果す他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は前記構成の範囲内において種々の変更,付加が可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のステッピングモータの制御装置によれば、制御部は、前記検出値の信号と、前記位置指令値の信号と、前記偏差の範囲信号と、前記偏差の方向信号とが入力され、これらの信号に基づいて該制御部に格納されているデータにより、前記駆動部にある複数のスイッチング素子のON、OFFを制御するとともに、前記偏差範囲信号が所定範囲内にあれば、前記位置指令値により指令される位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁し、前記偏差範囲信号が所定範囲外にあれば、前記検出値と前記偏差方向信号とにより、前記回転子位置に対応する位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁するような励磁シーケンスを発生するので、従来のような複雑な制御を用いることなく、脱調しない小型、安価で、信頼性の高い制御装置にすることができる。
【0038】
本発明によれば、励磁シーケンスの切り換えのみで制御ができるため、サーボモータを使用した装置より安価で簡単な位置決め制御装置となる。また、モータの停止時に、微振動を生じることもなく、負荷変動に対して安定な制御装置にすることができる。
【0039】
さらに、通常、ステッピングモータを使用するときは、脱調の危険があるため、大きい安全率を見込んで該モータの選定を行うが、本発明によれば、脱調の危険がないため、より小さいステッピングモータを使用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステッピングモータの制御装置の一実施例を示すブロック構成図である。
【図2】図2(a)、図2(b)、図2(c)のそれぞれは、前記制御装置の励磁シーケンス制御部のROM(read only memory)に格納されているアドレスに対するデータの内容を示す図である。
【図3】スイッチング素子からなる駆動部と5相ステッピングモータとの結線図である。
【図4】励磁シーケンス制御部による5相ステッピングモータの励磁シーケンスを示す図である。
【図5】初期状態として、励磁位置0を励磁したときのステッピングモータの回転子位置の偏差(または、パルス数による変位)に対する発生トルクの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 5相ステッピングモータ
2 エンコーダ(位置検出器)
3 指令カウンタ
4 回転子位置カウンタ
5 偏差カウンタ
6 励磁シーケンス制御部
7 駆動部
A ステッピングモータの制御装置
Q1,Q2,‥‥‥Q10 スイッチング素子
Claims (4)
- ステッピングモータの回転子位置を検出する位置検出部と、該検出部からの検出値と位置指令値とを比較し、その偏差により、該モータ巻線に流すべき電流に対応する信号を出力する制御部と、該制御部からの出力信号により、前記モータ巻線に流す電流を出力する駆動部とからなり、前記位置指令値により、前記モータの位置を制御する装置において、
前記制御部は、前記検出値の信号と、前記位置指令値の信号と、前記偏差の範囲信号と、前記偏差の方向信号とが入力され、これらの信号に基づいて該制御部に格納されているデータにより、前記駆動部にある複数のスイッチング素子のON、OFFを制御するとともに、前記偏差範囲信号が所定範囲内にあれば、前記位置指令値により指令される位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁し、前記偏差範囲信号が所定範囲外にあれば、前記検出値と前記偏差方向信号とにより、前記回転子位置に対応する位置を安定点とする励磁シーケンスで励磁するような励磁シーケンスを発生することを特徴とするステッピングモータの制御装置。 - 前記制御装置が、直動ステッピング(リニアステッピング)駆動位置を制御することを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータの制御装置。
- 前記制御装置が、マイクロステッピング駆動位置を制御することを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータの制御装置。
- 前記制御部が、前記偏差範囲信号と前記回転子位置検出値に対応して発生する励磁シーケンスに対して、さらに、速度補正を行うことを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータの制御装置。
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