JP4121623B2 - ステッピングモータの起動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子の位置センサを備えるステッピングモータの起動方法に関し、特に、ワークを搬送するステッピングモータの起動に際し、その回転子の動きを抑制して、該ワークの破損を防止しながら起動する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ステッピングモータは、その制御が、簡単で、かつ安価にできるとともに、高い精度が得られるモータとして、例えば、半導体製造設備のような精密な位置決めが必要とされる用途に使われてきた。
【0003】
通常、この種のステッピングモータの起動方法としては、起動時に、その回転子の位置に関係なく、固定の励磁シーケンスを励磁する方法が採られてきた。
すなわち、起動時の励磁パターンは固定であり、励磁安定点は電気角で360゜おきに存在する。起動後の前記回転子は、近い方の励磁安定点に引き込まれて移動するため、最大、電気角で180゜、該回転子は移動する。該回転子の小歯数が50のステッピングモータでは、電気角180゜は機械角3.6゜に相当する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の起動方法にあっては、起動時、回転子の位置に関係なく、該モータが励磁されるため、前記回転子が、起動前の位置から励磁安定点まで動いてしまい、例えば、半導体ウェハーの製造などにおいて、微細な傷が問題とされるような場合では、モータ起動時のワークの動きにより、該ワークの破損につながるケースがあるという問題点があった。
【0005】
他方、起動時に、前記ステッピングモータの回転子の電気角位置を検出する方法として、絶対位置エンコーダを使用する方法が考えられるが、該絶対位置エンコーダは、一般に、高価で、位置情報を伝える信号線の数も多くなる。例えば、1回転1000相当の絶対位置の検出には、10ビットの信号が必要で、電源線も含めると、12本の信号線が必要となる。また、パルス検出値は、1回転当たりの絶対値で、回転子の電気角を計算して求めなければならないなどの問題点があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的は前記問題点を解消し、起動時に、ステッピングモータの回転子を、起動前の位置から励磁安定点まで動かさずに、円滑に起動させ得るステッピングモータの起動方法を提案することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ステッピングモータの回転子の電気角位置を検出するための位置センサとして、扱い易く、かつ安価なレゾルバを有するステッピングモータの起動方法を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の構成は、回転子の位置センサとしてのレゾルバを備えるステッピングモータの起動に際し、次のとおりである。
【0009】
レゾルバとともに前記回転子の位置を検出するディジタル変換部と、プリセットカウンタと、該モータを励磁するための励磁シーケンス部と、駆動部とにより、
(a)前記レゾルバと前記ディジタル変換部とにより、前記回転子の電気的位置を検出して、これをディジタル信号で出力し、
(b)前記回転子の動きを抑制するため、該ディジタル変換部から出力されるディジタル信号により、前記プリセットカウンタ起動時における該回転子の電気的位置プリセットするとともに、以後、外部から入力される位置指令信号により、アップ、又はダウンカウントするようにし
(c)次いで、前記励磁シーケンス部により、前記プリセットカウンタにプリセットされた起動時における該回転子の電気的位置が、無負荷時の安定点になる励磁パターンにして、前記駆動部により、前記モータを励磁して起動させるようにする。
【0010】
そして、前記レゾルバが、前記ステッピングモータの回転子の小歯数と同周期の2相正弦波信号を出力する可変磁気抵抗形レゾルバである。
【0011】
さらに、前記ディジタル変換部から出力されるディジタル信号は、0〜19のディジタル値であり、前記プリセットカウンタは、プリセット機能付き20進のアップダウンカウンタである。
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、起動時、ステッピングモータの回転子の電気角位置を、位置センサとしてのレゾルバを介して、検出し、励磁シーケンス回路により、その電気角位置を無負荷時の安定点とする励磁シーケンスを、初期状態として励磁することにより、円滑に起動させることができる。
また、前記レゾルバは、可変磁気抵抗形レゾルバが使用できるため、安価で、信号線の数が少なく(4本)、取扱いが容易になっている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
図1は、本発明のステッピングモータの起動方法の一実施例を示す制御ブロック図、図2は、該ステッピングモータの各励磁シーケンスの励磁安定点と、可変磁気抵抗形レゾルバ(以下、VR形レゾルバという)による位置検出値との関係を示す図である。
【0014】
図1において、ステッピングモータとしての5相ステッピングモータ1は、その回転子の小歯数が50であり、該モータ1に結合され、その回転子の位置センサとしてのVR形レゾルバ2は、前記回転子の小歯数と同数の、1回転50周期で、互いに90゜位相のずれた、回転子位置情報としての2相正弦波信号(電圧)3を出力する。
【0015】
前記レゾルバ2が結合される前記ステッピングモータ1の起動は、前記レゾルバ2とともに前記回転子の位置を検出するディジタル変換部4と、プリセットカウンタ5と、該モータ1を励磁するための励磁シーケンス部6と、該モータ1を駆動する駆動部7とにより行われる。
【0016】
該ディジタル変換部4は、前記レゾルバ2からの前記回転子位置信号としての2相正弦波信号3を、0〜19のディジタル値信号に変換して出力する。
前記プリセットカウンタ5は、プリセット機能の付いた20進のアップダウンカウンタであり、前記モータ1の起動時には、その回転子位置である、前記ディジタル変換部4からのディジタル信号を読み込んで初期値としてプリセットし、別に入力される位置指令信号(パルス信号)により、カウント値がアップ、又はダウンするとともに、該カウント値信号を、前記励磁シーケンス部に出力する。
【0017】
前記励磁シーケンス部6は、主に、ROM(read only memory)から構成され、前記駆動部7は、直流電源に接続される複数のスイッチング素子(スイッチングトランジスタ)Q1〜Q10から構成されている。前記励磁シーケンス部6は、前記プリセットカウンタ5からの前記カウント値信号を基に、前記ステッピングモータ1の励磁シーケンスに対応する、前記駆動部7のスイッチング素子Q1〜Q10をON,OFFする信号を出力する。そして、前記カウント値が変わるごとに励磁シーケンスが変わり、所要の励磁状態にて、前記駆動部7の前記スイッチング素子Q1〜Q10を介して、直流電源から前記モータ1に励磁電流が流れ、該モータ1が回転する。
【0018】
ここで、図2に、0〜19の各励磁シーケンスに対応する安定点と、0′〜19′の前記VR形レゾルバ2によって検出される前記回転子位置との関係を示す。
また、前記モータ1の無負荷時における前記ディジタル変換部4からの出力信号は、前記プリセットカウンタ5の出力信号と一致するように、前記VR形レゾルバ2を、該モータ1への組み付け時に調整が行われる。
【0019】
図3は、前記駆動部7と5相ステッピングモータ1との結線図を示す。該駆動部7は、10個のスイッチング素子Q1,Q2,‥‥‥Q10からなるハーフブリッジインバータ回路で、直流電源に対して、直列接続されたそれぞれ一対の前記スイッチング素子Q1とQ2,Q3とQ4,Q5とQ6,Q7とQ8,Q9とQ10を並列に接続している。
そして、前記それぞれ一対に接続されたスイッチング素子Q1とQ2,Q3とQ4,Q5とQ6,Q7とQ8,Q9とQ10のそれぞれの接続点を、前記ステッピングモータ1の、例えばペンタゴン結線による環状に接続された各相巻線WA,WD,WB,WE,WCの接続点にそれぞれ結線している。この場合、前記ステッピングモータ1の各相巻線WA,WD,WB,WE,WCは、それぞれの巻始端と巻終端とを順次、直列に接続して環状に形成している。
【0020】
そして、この駆動部7の前記スイッチング素子Q1,Q2,‥‥‥Q10を介して行われる、前記励磁シーケンス部6による5相ステッピングモータ1の励磁シーケンス(4−5相励磁のハーフステップ駆動)を、図4に示す。図中、○印はその素子のON状態を示す。
【0021】
前記励磁シーケンスを1ステップずつ切り換えると、発生するトルクの電気的位相は18度ずつずれて、前記モータ1は、回転子小歯の1/20ピッチずつ移動しながら回転する。すなわち該モータ1に配設されている回転子小歯は50個であるので、1ステップで(1/50)×(1/20)=1/1000だけ回転する。
【0022】
次いで、本実施例の作用を説明する。
前記ステッピングモータ1の起動に際して、前記構成各部に電源を投入すると、下記(a)〜(c)にしたがって、順次、行われる。
(a)前記レゾルバ2によって前記回転子の位置を検出して、2相正弦波電圧信号3を出力し、該信号3を前記ディジタル変換部4により、ディジタル信号に変換して出力する。これにより、前記回転子の電気角が検出される。
【0023】
(b)前記ディジタル変換部4からのディジタル信号により、前記プリセットカウンタ5に、起動時における該回転子位置をプリセットする。以後、該プリセットカウンタ5は、外部から入力される位置指令信号8により、アップ、又はダウンカウントされる。これにより、従来発生していた前記回転子の動きを抑制することができる。
【0024】
(c)次いで、前記励磁シーケンス部6により、前記プリセットカウンタ5にプリセットされた、起動時における該回転子位置が、無負荷時の安定点になる励磁パターンにして、前記駆動部7により、前記モータ1を励磁する。
この励磁により、前記モータ1は起動される。
【0025】
本実施例によれば、前記ステッピングモータ1の起動時の回転子の動きは、電気角で、9°(360°/( 20×2) =9°)以内となり、機械角で、0.18°以内に抑えることができる。
【0026】
本実施例の他の例を、以下に説明する。
本実施例において、ステッピングモータ1として、5相ステッピングモータについて説明してきたが、2相、3相または多相ステッピングモータでも、同様に、起動できることは明らかである。
また、回転機だけでなく、直動機(リニアステッピングモータ)についても、同様に、起動することができる。
【0027】
前記位置センサを、前記ステッピングモータ1の外部に装着する代わりに、該モータ1の回転子小歯を、磁気抵抗素子、又は検出コイルのインダクタンス変化として、該回転子の位置を検出することもできる。
また、前記位置センサとして、前記RV形レゾルバ2に限らず、エンコーダなど、他の位置センサを使用することも可能である。
【0028】
なお、本発明の技術は前記実施例における技術に限定されるものではなく、同様な機能を果たす他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は前記構成の範囲内において種々の変更、付加が可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明のステッピングモータの起動方法によれば、レゾルバと、ディジタル変換部と、プリセットカウンタと、該モータ励磁用の励磁シーケンス部と、駆動部とにより、(a)前記レゾルバと前記ディジタル変換部とにより、前記回転子の電気的位置を検出して、これをディジタル信号で出力し、(b)前記回転子の動きを抑制するため、該ディジタル変換部から出力されるディジタル信号により、前記プリセットカウンタ起動時における該回転子の電気的位置プリセットするとともに、以後、外部から入力される位置指令信号により、アップ、又はダウンカウントするようにし、(c)次いで、前記励磁シーケンス部により、前記プリセットカウンタにプリセットされた起動時における該回転子の電気的位置が、無負荷時の安定点になる励磁パターンにして、前記駆動部により、前記モータを励磁して起動させるので、該ステッピングモータの回転子を、起動前の位置から励磁安定点まで動かさずに、円滑に起動させることができる。
このため、この起動方法によれば、前記ステッピングモータの起動時、ワークの破損を防止することができる。
【0030】
また、ステッピングモータの回転子の電気角位置を検出するための位置センサとして、扱い易く、かつ安価なレゾルバを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステッピングモータの起動方法の実施の形態を示す制御ブロック図である。
【図2】該ステッピングモータの各励磁シーケンスの励磁安定点と、可変磁気抵抗形レゾルバによる位置検出値との関係を示す図である。
【図3】スイッチング素子からなる駆動部と、5相ステッピングモータとの結線図である。
【図4】励磁シーケンス制御部による5相ステッピングモータの励磁シーケンスを示す図である。
【符号の説明】
1 5相ステッピングモータ
2 可変磁気抵抗形レゾルバ(RV形レゾルバ)
3 2相正弦波信号
4 ディジタル変換部
5 プリセットカウンタ
6 励磁シーケンス部
7 駆動部
8 位置指令信号

Claims (3)

  1. 回転子の位置センサとしてのレゾルバを備えるステッピングモータの起動に際し、
    レゾルバとともに前記回転子の位置を検出するディジタル変換部と、プリセットカウンタと、該モータを励磁するための励磁シーケンス部と、駆動部とにより、
    (a)前記レゾルバと前記ディジタル変換部とにより、前記回転子の電気的位置を検出して、これをディジタル信号で出力し、
    (b)前記回転子の動きを抑制するため、該ディジタル変換部から出力されるディジタル信号により、前記プリセットカウンタ起動時における該回転子の電気的位置プリセットするとともに、以後、外部から入力される位置指令信号により、アップ、又はダウンカウントするようにし
    (c)次いで、前記励磁シーケンス部により、前記プリセットカウンタにプリセットされた起動時における該回転子の電気的位置が、無負荷時の安定点になる励磁パターンにして、前記駆動部により、前記モータを励磁して起動させることを特徴とするステッピングモータの起動方法。
  2. 前記レゾルバが、前記ステッピングモータの回転子の小歯数と同周期の2相正弦波信号を出力する可変磁気抵抗形レゾルバであることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータの起動方法。
  3. 前記ディジタル変換部から出力されるディジタル信号は、0〜19のディジタル値であり、前記プリセットカウンタは、プリセット機能付き20進のアップダウンカウンタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステッピングモータの起動方法。
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