JP4036289B2 - 液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、耐水性に優れる硬化物を与える液状エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来工業的に最も使用されている液状エポキシ樹脂としてはビスフェノールAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。また、耐熱性が要求される分野においてはトリフェニルメタン型エポキシ樹脂などが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したようなトリフェニルメタン型エポキシ樹脂はその硬化物の耐熱性は高いものの、樹脂そのものの状態は常温において半固形、もしくは軟化点50〜80℃の固形であり、液状組成物として用いるには作業性に問題がある。また、反応性希釈剤を添加することにより粘度を低下させる方法も試みられてはいるが、一般的に低粘度の反応性希釈剤は硬化物の諸特性を低下させる傾向が指摘されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、耐熱性、耐水性が高く、しかも粘度の低い液状エポキシ樹脂を求めて鋭意検討した結果、特定の分子構造を有するエポキシ樹脂が、これらの特性を満たすことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は
(1)式(1)
【0006】
【化2】
(式中、nは平均値であり正数を表す。)
で表される液状エポキシ樹脂、
(2)上記(1)記載の液状エポキシ樹脂、硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(3)硬化促進剤を含有する上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物、
(4)無機充填剤を含有する上記(2)または(3)記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)上記(2)、(3)または(4)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
式(1)で表されるエポキシ樹脂は例えば下記式(2)
【0008】
【化3】
【0009】
で表される化合物とエピハロヒドリンとの反応をアルカリ金属水酸化物の存在下で行うことにより得ることが出来る。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを流出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対して通常0.9〜1.2モルであり、好ましくは0.95〜1.1モルである。
【0011】
また式(2)で表される化合物とエピハロヒドリンの混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で0.5〜8時間反応させて得られる式(2)の化合物のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0012】
本発明において、エピハロヒドリンの使用量は式(2)の化合物の水酸基1当量に対し通常1〜20モル、好ましくは1.5〜15モルである。この際、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0013】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し通常2〜20重量%、好ましくは4〜15重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜150重量%、好ましくは10〜140重量%である。
【0014】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した式(2)の化合物の水酸基1当量に対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0015】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0016】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂が全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール共縮合型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられるがこ、れらは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用い得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0020】
また本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤を使用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要により無機充填剤を含有しうる。用いうる無機充填剤の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填剤は本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ樹脂と本発明のエポキシ樹脂及び硬化剤並びに必要により硬化促進剤、無機充填剤及び配合剤とを、必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0023】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱半乾燥して得たプリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
【0024】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0025】
実施例1
前記式(2)で表される化合物114部に対しエピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド92.5部を加え撹拌下で溶解し、50℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム40部を100分かけて分割添加した後、更に50℃で2時間、70℃で1時間、後反応を行った。反応終了後ロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン、ジメチルスルホキシドなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン340部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30%の水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、1時間反応を行った後、水洗を3回行い、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、前記式(1)で表される本発明の液状エポキシ樹脂(A)162部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は182g/eqであった。
【0026】
実施例2、比較例1
実施例2として得られたエポキシ樹脂(A)を、比較例1としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(RE−303S 日本化薬(株)製 エポキシ当量170g/eq)に対し硬化剤としてカヤハードMCD(日本化薬(株)製)、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を用いて表1の「配合物の組成」の欄に示す重量比で配合し、均一に混合した後、金型に注型し80℃で2時間、120℃で2時間、180℃で4時間硬化せしめて試験片を作成し、下記の条件でガラス転移温度、及び吸水率を測定し表1の「硬化物の物性」の欄に示した。
【0027】
【0028】
【0029】
このように本発明の液状エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は表1に示されるように優れた耐熱性(ガラス転移点が高いことから判断される)、耐水性(吸水率が低いことから判断される)を示した。
【0030】
【発明の効果】
本発明の液状エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物は、従来一般的に使用されてきた液状エポキシ樹脂組成物と比較して耐熱性、耐水性に優れた硬化物を与える。
従って、本発明のエポキシ樹脂組成物は電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途にきわめて有用である。
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