JP4311587B2 - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、耐水性及び靭性に優れる硬化物を与えるエポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成型材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂としてビスフェノ−ルAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる液状および固形のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂がある。その他液状のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂にテトラブロムビスフェノ−ルAを反応させて得られる難燃性固形エポキシ樹脂などが汎用エポキシ樹脂として工業的に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したような汎用エポキシ樹脂は分子量が大きくなるにつれて、それを使用して得られる硬化物の靭性は向上するものの耐熱性が低下するという欠点がある。また、汎用エポキシ樹脂にo−クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂を添加した場合、その硬化物の耐熱性は向上するものの、耐水性及び靭性が低下するという問題点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、耐熱性、耐水性及び靭性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂を求めて鋭意研究した結果、特定の分子構造(液晶性)を有するエポキシ樹脂が、その硬化物において優れた耐熱性、耐水性及び靭性を発現するものであることを見いだし本発明を完成させるに到った。即ち、本発明は、
(1)式(1)
【0005】
【化2】
Figure 0004311587
【0006】
(式中、Gはグリシジル基を示す。複数存在するRは独立して水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基またはハロゲン原子を示す。nは平均値であり、0〜20の実数を示す。複数存在するjは独立して1〜3の整数を示す。)で表されるエポキシ樹脂、
(2)上記(1)記載のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物、
(3)上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
(4)上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシ樹脂は前記式(1)で表される。式(1)のRにおける炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基があげられる。式(1)のRにおけるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。好ましいRとしては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基があげられ、特に水素原子、メチル基が好ましい。式(1)におけるnは、平均値で、0〜20の実数であり、0〜3の実数が好ましい。このnはゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定される。また、複数存在するjは独立して1〜3の整数を示す。Rの置換位置は、フェニル基上のエ−テル結合部位に対しオルソ位であることが好ましい。
【0008】
前記(1)記載の式(1)で表される本発明のエポキシ樹脂は例えば、式(2)
【0009】
【化3】
Figure 0004311587
【0010】
(式中、R、n、及びjは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表される化合物にエピハロヒドリンをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより得ることができる。式(2)におけるRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい基として挙げられ、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
【0011】
この反応に使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン等があるが、工業的に入手し易く安価なエピクロルヒドリンが好ましい。
【0012】
式(2)で表される化合物から本発明のエポキシ樹脂を得る方法としては公知の方法が採用できる。例えば式(2)の化合物とエピクロルヒドリンの混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体を添加し、または添加しながら20〜120℃で0.5〜10時間反応させる。この際アルカリ金属水酸化物は水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物を連続的に添加すると共に反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピクロルヒドリンを留出せしめ、更に分液し、水は除去し、エピクロルヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0013】
上記の方法においてエピクロルヒドリンの使用量は、式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対して、通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量は、式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対し、通常0.8〜2.0モル、好ましくは0.9〜1.8モルである。また、反応を円滑に進行させるために、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒を添加して反応を行うことが好ましい。非プロトン性極性溶媒の使用量はエピクロルヒドリンの重量に対し5〜200%、好ましくは10〜100%である。
【0014】
また、式(2)で表される化合物と過剰のエピハロヒドリンの混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩を触媒として使用し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、20〜120℃で1〜10時間反応させる方法でもよい。この場合の第四級アンモニウム塩の使用量は、式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対して、通常0.001〜0.2モル、好ましくは0.05〜0.1モルである。
【0015】
通常、これらの反応生成物は水洗後、または水洗無しに加熱減圧下過剰のエピハロヒドリンを除去した後、再びトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて再び反応を行う。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量は式(2)の化合物の水酸基1当量に対して通常0.01〜0.2モル、好ましくは0.05〜0.1モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0016】
反応終了後副生した塩をろ過、水洗などにより除去し、さらに加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒を留去することにより本発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記式(1)のエポキシ樹脂を含有する。本発明のエポキシ樹脂組成物において前記式(1)のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂と併用されうる他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、通常エポキシ樹脂の硬化剤を含有する。硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ル類ノボラック、トリスフェノ−ルメタン、フェノ−ル類・ジシクロペンタジエン重縮合物、フェノ−ル類・キシリレングリコ−ル類重縮合物、フェノ−ル類・ビフェニルジメタノ−ル類重縮合物、イミダゾ−ル、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、0.6〜1.2当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0021】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。硬化促進剤を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0022】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてシリカ、アルミナ、タルク等の充填材やシランカップリング剤、離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂と硬化剤、必要により硬化促進剤及び充填材等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合して本発明のエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成型機などを用いて成形し、さらに80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
【0024】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。この際用いる希釈溶剤の使用量は本発明のエポキシ樹脂組成物と該希釈溶剤の合計重量に対し通常10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%である。
【0025】
本発明の半導体装置は前記の本発明のエポキシ樹脂組成物で封止されたもの等の本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を有する。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等が挙げられる。
【0026】
【実施例】
以下本発明を実施例で更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例中のエポキシ当量の単位はg/eqである。
【0027】
実施例1
上記式(2)のRが水素原子である化合物(融点214℃)137重量部、エピクロルヒドリン370重量部、ジメチルスルホキシド185重量部を加えて溶解後、70℃に加熱し、フレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)53重量部を100分かけて添加し、その後、70℃で3時間反応させた。ついで水洗を繰り返し中性に戻した後、油層から加熱減圧下、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物に400重量部のMIBKを添加し溶解した。更に、このMIBKの溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10重量部を添加し、1時間反応させた後、水洗を繰り返し行い中性とした。ついで油層から加熱減圧下MIBKを留去することにより、上記式(1)のRが水素原子で、nが0.28である化合物(本発明のエポキシ樹脂(A))187重量部を得た。得られたエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は239、軟化点は115℃であった。
【0028】
実施例2
実施例1において、上記式(2)のRが水素原子である化合物の代わりに、上記式(2)のRがメチル基でjが2である下記式
【0029】
【化4】
Figure 0004311587
【0030】
で表される化合物165重量部を用いた以外は実施例1と同様にエポキシ化を行い、下記式
【0031】
【化5】
Figure 0004311587
【0032】
(式中、Gはグリシジル基を示す。nは平均値で、0.24である。)
で表される本発明のエポキシ樹脂(B)200重量部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は267、軟化点は95℃であった。
【0033】
実施例3〜4
実施例1〜2で得られたエポキシ樹脂(A)〜(B)を使用し、これらエポキシ樹脂1エポキシ当量に対して硬化剤(フェノールノボラック樹脂(日本化薬(株)製、PN−80、150℃におけるICI粘度1.5ps、軟化点86℃、水酸基当量106)を1水酸基当量配合し、更に硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル)をエポキシ樹脂100重量部当り1重量部配合し、トランスファー成型により樹脂成形体を調製し、160℃で2時間、更に200℃で5時間で硬化させた。このようにして得られた硬化物の物性を測定した結果を表1に示す。
【0034】
物性値の測定は以下の方法で行った。
Figure 0004311587
【0035】
【表1】
Figure 0004311587
【0036】
表1より本発明の硬化物はガラス転移温度が高く耐熱性に優れ、吸水率が低いため耐湿性に優れ、また曲げ強度が高く機械的強度に優れる。
【0037】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物はその硬化物において優れた耐熱性、耐湿性(耐水性)及び機械的強度に優れるため、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板など)やCFRPを始めとする各種複合材料用、接着剤、塗料等に使用する場合に極めて有用である。

Claims (4)

  1. 式(1)
    Figure 0004311587
    (式中、Gはグリシジル基を示す。複数存在するRは独立して水素原子またはメチル基を示す。nは平均値であり、0〜20の実数を示す。複数存在するjは2である。)で表されるエポキシ樹脂。
  2. 請求項1記載のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物。
  3. 請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  4. 請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置。
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