JP3651702B2 - 変性フェノール類ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

変性フェノール類ノボラック樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は機械的強度に優れ、誘電率の低い硬化物を与える変性フェノール類ノボラック樹脂、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から電気・電子部品、ICの封止材の分野では、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、硬化促進剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。近年のICにおける高密度、高集積化はその封止材に対して高耐熱化、及び高靭性化を要求するようになった。とりわけICの高密度実装における半田浴浸漬という過酷な条件は、硬化物に対する高靭性化の要求を益々強めている。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら従来の封止材用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂として一般に用いられているクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、高耐熱性は有するものの、靭性の点で劣るという欠点がある。
【0004】
一方、硬化剤として一般に使用されているフェノールノボラック樹脂も靭性の面で未だ不十分であり、益々過酷になっていく前記の様な条件下では満足な結果をもたらしていない。
【0005】
また、近年、プリント配線基板の多層化に伴い、おもに信号速度向上の目的から樹脂の低誘電性が要求されてきている。この要求に答えるための手段として従来のエポキシ樹脂組成物では、低誘電性の熱可塑性樹脂の添加が周知であるが、この方法によれば硬化物の耐熱性を損なう欠点がある。そこで従来の耐熱性を保持したまま、高靭性でしかも低誘電率等の特性の優れた硬化物を与える樹脂の開発が待ち望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、靭性に優れ、しかも誘電率の低い硬化物を与えるエポキシ樹脂を求めて鋭意研究した結果、特定の分子構造を有する変性フェノール類ノボラック樹脂及びそれをグリシジルエーテル化することにより得られるエポキシ樹脂が、その硬化物において高い靭性及び低い誘電率を付与するものであることを見い出して本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち本発明は
(1)式(1)
【0008】
【化3】
Figure 0003651702
【0009】
(式(1)中、nは平均を表し正数を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基のいずれかを表し互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるフェノール類ノボラック樹脂と、ポリブタジエンの2重結合とを酸触媒の存在下で付加反応させることにより得られる式(2A)或いは(2B)
【0010】
【化4】
Figure 0003651702
【0011】
(式(2A)及び(2B)中、Rは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表される結合を分子中に有する変性フェノール類ノボラック樹脂、
(2)上記(1)記載の変性フェノール類ノボラック樹脂の水酸基をグリシジルエーテル化することにより得られるエポキシ樹脂、
(3)(a)エポキシ樹脂
(b)上記(1)記載の変性フェノール類ノボラック樹脂
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(4)(a)上記(2)記載のエポキシ樹脂
(b)硬化剤
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
【0012】
(5)(a)上記(2)記載のエポキシ樹脂
(b)上記(1)記載の変性フェノール類ノボラック樹脂
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(6)硬化促進剤を含有する上記(3)、(4)または(5)記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)無機充填剤を含有する上記(3)、(4)、(5)または(6)記載のエポキシ樹脂組成物、
(8)上記(3)、(4)、(5)、(6)または(7)記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
を提供するものである。
【0013】
本発明における変性フェノール類ノボラック樹脂はフェノール類ノボラック樹脂と、ポリブタジエンの2重結合とを酸触媒の存在下で付加反応させることにより得ることができる。
【0014】
また本発明におけるエポキシ樹脂は、例えば上記の変性フェノール類ノボラック樹脂とエピハロヒドリンとの反応をアルカリ金属水酸化物の存在下で行うことにより得ることができる。
【0015】
式(1)で表されるフェノール類ノボラック樹脂は、フェノール類とホルマリンとを酸触媒の存在下で縮合反応させることにより得ることができる。式(1)中でnは正数を表すが、好ましくは0.01〜10、特に好ましくは0.05〜5である。
【0016】
本発明において用いるフェノール類はフェノール性水酸基を少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。用いうるフェノール類の具体例としては、フェノールまたは、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、メチルブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール等のアルキルフェノールの各種o−,m−,p−異性体、またはビニルフェノール、アリルフェノール、プロペニルフェノール、エチニルフェノールの各種o−,m−,p−異性体、またはシクロペンチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、シクロヘキシルクレゾール等のシクロアルキルフェノール、またはフェニルフェノールなどの置換フェノール類が挙げられる。
これらのフェノール類は1種類のみを用いても用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記縮合反応を行う場合、公知のいかなる方法でも用いることが出来る。ホルマリンの使用量はフェノール類1モルに対して、通常0.01〜0.95モル、好ましくは0.1〜0.9モルである。
【0018】
上記縮合反応においては、通常酸触媒を用いるのが好ましく、酸触媒としては種々のものが使用できるが塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの無機或いは有機酸または、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸が好ましく、特にp−トルエンスルホン酸、シュウ酸が好ましい。また、これらの酸のうち例えば塩化水素のような常温で気体のものを用いる場合、反応混合物中に該気体を吹き込みながら反応を行ってもよい。これら酸触媒の使用量は特に限定されるものではないが、フェノール類1モルに対して0.001〜0.1モルの範囲で選定することが出来る。
【0019】
上記縮合反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。用いうる有機溶剤の具体例としてはトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。有機溶剤の使用量は仕込んだ原料の総重量に対して、通常50〜300重量%であり、100〜250重量%が好ましい。反応温度は通常20〜200℃であり、25〜190℃が好ましい。また反応時間は通常1〜30時間であり、2〜20時間が好ましい。また反応中生成する水を反応混合物外に留去することは、反応をスムーズに行う上で好ましい。
【0020】
反応終了後、洗浄液のpH値が3〜7好ましくは5〜7にまるまで水洗処理を行う。水洗処理を行う場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、リン酸二水素ナトリウムさらにはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、フェニレンジアミンなどの有機アミン、シュウ酸ナトリウムなど様々な塩基性物質等を中和剤として用いて処理してもよい。また水洗処理の場合は常法にしたがって行えばよい。例えば反応混合物中に上記中和剤を溶解した水を加え分液抽出操作をくり返す。
【0021】
水洗処理を行った後、減圧加熱下で未反応のフェノール類及び溶剤を留去し生成物の濃縮を行い、式(1)で表されるフェノール類ノボラック樹脂を得ることが出来る。
【0022】
このようにして得られたフェノール類ノボラック樹脂とポリブタジエンの2重結合とを付加反応させることにより本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂を得ることができる。この付加反応は、従来公知の、オレフィンに対するフェノール類の付加反応を適用することが出来る。例えば加熱溶融状態のフェノール類ノボラック樹脂に酸触媒の存在下で、ポリブタジエンを付加反応させる方法が挙げられる。
【0023】
上記付加反応におけるポリブタジエンは数平均分子量が通常300〜3000のものが使用され、特に500〜2000のものが好ましい。またポリブタジエンは、通常、フェノール類ノボラック樹脂中のフェノール性水酸基を有する芳香環1個に対して、ポリブタジエンの2重結合が0.01〜2個の割合、好ましくは0.05〜1.5個の割合となる量を使用する。
【0024】
上記付加反応においては酸触媒を用いる。酸触媒として種々のものが使用できるが、三弗化ホウ素またはこれとエーテル類とのコンプレックス、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛、硫酸、塩化チタンなどのルイス酸が好ましく、特に三弗化ホウ素またはこれとエーテル類とのコンプレックス、無水塩化アルミニウムが好ましい。この酸触媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これら酸触媒の使用量は特に限定されるものではないが、使用するポリブタジエン中の2重結合1モルに対して通常0.001〜0.1モルである。またこれら酸触媒を反応混合物内に添加する場合は予めフェノール類ノボラック樹脂の加熱溶融物に添加しておいたり適当な溶剤、例えば下記する反応に不活性な溶媒で希釈したりして徐々に添加することも可能である。
【0025】
また、この反応中で使用されるフェノール類ノボラック樹脂には酸化され易いものが多いために一連の反応操作中は反応容器内を窒素ガスなどでパージしておくことが好ましい。更にこの付加反応は大きな発熱を伴うことが多く通常フェノール類ノボラック樹脂の加熱溶融物や溶媒溶解物に予め上記酸触媒を添加しておき、反応温度を確認しながらポリブタジエンを反応容器内に導入することが好ましい。
【0026】
付加反応は通常40〜180℃、好ましくは80〜160℃の範囲で行われ、反応時間は通常0.5〜10時間である。またこれらの反応はニトロベンゼン、ジフェニルエーテル、ジクロロベンゼン、二硫化炭素など反応に不活性な溶媒の存在下で行うこともできる。更にこうして得られた反応物について中和を行ったり、溶媒の存在下に水洗を繰り返した後、水を分離排水後、加熱減圧下で溶媒を除去することにより、本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂を得ることができる。
【0027】
本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂から本発明のエポキシ樹脂を得る方法としては公知の方法が採用できる。例えば得られた変性フェノール類ノボラック樹脂と過剰のエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンの溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃の温度で1〜10時間反応させることにより本発明のエポキシ樹脂を得ることが出来る。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応混合物内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物内に連続的に戻す方法でもよい。
【0029】
また、変性フェノール類ノボラック樹脂とエピハロヒドリンの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる変性フェノール類ノボラック樹脂のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃の温度で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0030】
これらの反応において使用されるエピハロヒドリンの量は変性フェノール類ノボラック樹脂の水酸基1当量に対し通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量は変性フェノール類ノボラック樹脂の水酸基1当量に対し0.8〜1.5モル、好ましくは0.9〜1.1モルである。更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノールなどのアルコール類の他、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0031】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し通常2〜20重量%、好ましくは4〜15重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜90重量%である。
【0032】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応を行い閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した変性フェノール類ノボラック樹脂の水酸基1当量に対して好ましくは0.01〜0.3モル、特に好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0033】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は本発明のエポキシ樹脂及び/または本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂を必須成分とし、更に必要により硬化促進剤等を添加することにより得ることができる。前記(3)、(5)、(6)、(7)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂は単独で、または他の硬化剤と併用して使用することが出来る。併用する場合本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂が全硬化剤中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂と併用し得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド等のアミン系化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂及びこれらの変性物、イミダゾール、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられる。これらの硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記(4)、(5)、(6)、(7)記載の本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは、他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂が全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、40重量%以上が特に好ましい。この場合、用いられるエポキシ樹脂は通常は1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ電子機器用として一般に用いられるものであれば特に制限はない。併用しうるエポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールI型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの芳香族2価フェノール類から得られるエポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸とエピハロヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、またジアミノジフェニルメタン、イソシアヌール酸などのポリアミンとエピハロヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0036】
前記(3)、(6)、(7)記載のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂の他に前記他のエポキシ樹脂が挙げられる。また、前記(4)、(6)、(7)記載のエポキシ樹脂組成物において硬化剤としては、本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂の他に前記他の硬化剤が挙げられる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0038】
また本発明のエポキシ樹脂組成物中には硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0039】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填材を含有しうる。用い得る無機充填材の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填材はエポキシ樹脂組成物中で0〜90重量%を占めるよう使用される。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料等種々の配合剤を添加することができる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ樹脂(成分(a))と硬化剤(成分(b))、無機充填材及びその他の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成形機などを用いて成形し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することによりその硬化物を得ることができる。
【0041】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物において、溶剤の占める割合が通常10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%となる量使用する。
【0042】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0043】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、下記式(3)
【0044】
【化5】
Figure 0003651702
【0045】
で表される軟化点45.8℃のフェノールノボラック樹脂(n=0.90)200部を仕込み、窒素を吹き込みながら油浴中で120℃まで昇温し撹拌した。次いで三弗化ホウ素ジエチルエーテルコンプレックス1部を添加し、数平均分子量が700であるポリブタジエン(日本石油(株)製、B−700)を54部を30分かけて滴下した。その後さらに120℃で5時間反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン500部を加え、完全に溶解した後、リン酸二水素ナトリウム20重量%水溶液20部を加えて中和し、更に水洗を数回繰り返した後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、分子中に下記式(4A)或いは(4B)
【0046】
【化6】
Figure 0003651702
【0047】
で表される結合を有する本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂(A)238部を得た。得られた変性フェノール類ノボラック樹脂の軟化点は92.1℃、水酸基当量は127g/eqであった。
【0048】
実施例2
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られた化合物127部、エピクロルヒドリン370部、メタノール26部を仕込み溶解させた。更に70℃に加熱し還流下でフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)40.4部を90分かけて分割添加し、その後更に70℃で70分反応させた。反応終了後、温水150部を加え水洗した後、油層を130℃で加熱減圧下で濃縮してエピクロルヒドリンを留去し、残留物に370部のメチルイソブチルケトンを加え溶解した。
【0049】
更にこのメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を添加し1時間反応させた後、水洗を3回繰り返し洗浄液のpHを中性とした。更に水層は分離除去し、ロータリエバポレーターを使用して油層から加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂の水酸基が全てグリシジルエーテルである本発明のエポキシ樹脂(B)170部を得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は75.6℃、エポキシ当量は199g/eqであった。
【0050】
実施例3〜5、比較例1
実施例3としてエポキシ樹脂にo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂EOCN1020(エポキシ当量200g/eq、日本化薬(株)製)を、硬化剤に得られた変性フェノール類ノボラック樹脂(A)を、実施例4としてエポキシ樹脂にエポキシ樹脂(B)を、硬化剤にフェノールノボラック樹脂(水酸基当量106g/eq、軟化点83℃、日本化薬(株)製)を、更に実施例5としてエポキシ樹脂に得られたエポキシ樹脂(B)を、硬化剤に得られた変性フェノール類ノボラック樹脂(A)を、比較例1としてエポキシ樹脂にEOCN1020を、硬化剤に上記フェノールノボラック樹脂を、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)を用い、表1の配合物の組成の欄に示す組成で配合して、70℃で15分ロールで混練し、150℃、成形圧力50kg/cm2 で180秒間トランスファー成形して、その後160℃で2時間、更に180℃で8時間硬化せしめて試験片を作成し、ガラス転移点、破壊靭性、誘電率を測定した。結果を表1に示す。尚、ガラス転移点、破壊靭性、誘電率の測定条件は次の通りである。また、表中、配合物の組成の欄の数値は重量部を示す。
【0051】
ガラス転移点
熱機械測定装置(TMA):真空理工(株)製 TM−7000
昇温速度:2℃/min
破壊靭性
ASTM−E−399に準拠して行った。
誘電率
JIS 6481(誘電率及び誘電正接)に準拠して行った。
【0052】
【表1】
Figure 0003651702
【0053】
表1より本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂またはエポキシ樹脂の硬化物は、高いガラス転移点を保持したまま高い靭性及び低い誘電率を示した。
【0054】
【発明の効果】
本発明の変性フェノール類ノボラック樹脂またはエポキシ樹脂は靭性及び誘電率に優れた特性を兼ね備えた硬化物を与えることができ、成形材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジストなど広範囲の用途にきわめて有用である。

Claims (3)

  1. 式(1)
    Figure 0003651702
    (式(1)中、nは0.01〜10の正数であり平均値を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基のいずれかを表し互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表されるフェノール類ノボラック樹脂と、ポリブタジエンの2重結合とを酸触媒の存在下で付加反応させることにより得られる式(2A)或いは(2B)
    Figure 0003651702
    (式(2A)及び(2B)中、Rは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)で表される結合を分子中に有する変性フェノール類ノボラック樹脂の水酸基をグリシジルエーテル化することにより得られるエポキシ樹脂。
  2. (a)請求項1記載のエポキシ樹脂及び(b)硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
  3. 請求項2記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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