JP3736700B2 - ポリフェノール類、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
ポリフェノール類、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、機械的強度に優れる硬化物を与えるポリフェノール類、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物およびその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂としてビスフェノ−ルAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる液状および固形のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂がある。その他液状のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂にテトラブロムビスフェノ−ルAを反応させて得られる難燃性固形エポキシ樹脂などが汎用エポキシ樹脂として工業的に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したような汎用エポキシ樹脂は分子量が大きくなるにつれて、それを使用して得られる硬化物の靭性は増加するものの耐熱性は低下するという欠点がある。また、耐熱性の低下を補うためにクレゾールノボラックエポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂を混合した場合に得られる硬化物は耐熱性は高くなるものの、靭性が低下するという欠点がある。一方、最近の電子産業などの目ざましい発達に伴い、これらに使用される電気絶縁材料などに要求される耐熱性及び機械的強度(靭性)は益々厳しくなっており、これらの特性に優れたエポキシ樹脂の出現が待ち望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、耐熱性及び機械的強度に優れる硬化物を与えるエポキシ樹脂を求めて鋭意研究した結果、特定の分子構造を有するエポキシ樹脂が、その硬化物において優れた耐熱性及び機械強度を付与するものであることを見い出して本発明を完成させるに到った。
【0005】
すなわち本発明は
(1)式(1)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、nは平均値を表し、0〜10の値を示す。P、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、またはアリール基のいずれかをそれぞれ表し個々のP、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0008】
で表されるポリフェノール類、
(2)式(2)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、n、P、Rは式(1)におけるのと同様の意味を表す。Gはグリシジル基を表す。)
【0011】
で表されるエポキシ樹脂、
(3)(a)エポキシ樹脂
(b)上記(1)記載のポリフェノール類
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(4)(a)上記(2)記載のエポキシ樹脂
(b)硬化剤
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(5)(a)上記(2)記載のエポキシ樹脂
(b)上記(1)記載のポリフェノール類
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(6)硬化促進剤を含有する上記(3)、(4)または(5)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)無機充填材を含有する上記(3)、(4)、(5)または(6)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(8)上記(3)、(4)、(5)、(6)または(7)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
前記(1)記載の式(1)で表される化合物は例えば、式(3)
【0013】
【化5】
【0014】
(式中、Pは式(1)におけるのと同様の意味を表す。)
【0015】
で表される化合物とフェノール類とを酸触媒の存在下縮合反応させることにより得ることができる。
【0016】
前記(2)記載の式(2)で表される化合物は例えば、式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンとの反応をアルカリ金属水酸化物の存在下で行うことにより得ることができる。
【0017】
前記縮合反応において用いうるフェノール類の具体例例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、メチルブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノールのo−、m−、p−異性体、またはビニルフェノール、アリルフェノール、プロペニルフェノール、エチニルフェノールなどの各種o−、m−、p−異性体、またはシクロペンチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、シクロヘキシルクレゾールなどのシクロアルキルフェノール、またはフェニルフェノール等の置換フェノール類が挙げられる。これらのフェノール類は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
フェノール類の使用量は式(3)で表される化合物1モルに対して通常0.6〜10モル、好ましくは0.7〜8モルであ。
【0019】
上記縮合反応においては酸触媒を用いる。酸触媒としては種々のものが使用できるが塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの無機あるいは有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸が好ましく、得にp−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸が好ましい。これら酸触媒の使用量は特に限定されるものではないが、式(3)で表される化合物1モルに対して0.001〜0.1倍モルである。
【0020】
上記縮合反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。有機溶剤を使用する場合の用いうる具体例としてはトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。有機溶剤の使用量は仕込んだ原料の総重量に対して通常50〜300重量%、好ましくは100〜250重量%である。
【0021】
反応終了後、洗浄液のpHが3〜7、好ましくは5〜7なるまで水洗処理を行う。水洗処理は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、リン酸二水素ナトリウムさらにはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、フェニレンジアミンなどの有機アミンなど様々な塩基性物質等を中和剤として用いて行ってもよい。また水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば反応生成系中に必要により上記中和剤を溶解した水を加え分液抽出操作をくり返す。
【0022】
中和処理を行った後、減圧加熱下で未反応のフェノール類及び溶剤を留去し生成物の濃縮を行い、式(1)で表される本発明のポリフェノール類を得ることが出来る。
【0023】
式(1)の化合物から式(2)で表される本発明のエポキシ樹脂を得る方法としては公知の方法が採用できる。例えば、得られたポリフェノール類と過剰のエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンの混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を一括添加あるは徐々に添加しながら好ましくは、20〜120℃で1〜10時間反応させることにより本発明のエポキシ樹脂を得ることが出来る。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを流出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0025】
また、式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンの混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で0.5〜3時間反応させて得られる式(1)の化合物のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0026】
通常これらの反応において使用されるエピハロヒドリンの量はポリフェノール類の水酸基1当量に対し通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量はポリフェノール類の水酸基1当量に対し通常0.8〜15モル、好ましくは0.9〜11モルである。更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0027】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し5〜100重量%、より好ましくは10〜90重量%である。
【0028】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、150〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや添加溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用したポリフェノール類の水酸基1当量に対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0029】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0030】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。前記(3)、(5)、(6)、(7)記載のエポキシ樹脂組成物において本発明のポリフェノール類はエポキシ樹脂の硬化剤として作用し、この場合本発明のポリフェノール類を単独でまたは他の硬化剤と併用することが出来る。併用する場合、本発明のノボラック型の全硬化剤中に占める割合は30重量%以上が好ましく40重量%以上が特に好ましい。
【0031】
本発明のポリフェノール類と併用される他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用い得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるが、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであればこれらに特に限定されない。これら硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
前記(4)、(5)、(6)、(7)記載のエポキシ樹脂組成物において本発明のエポキシ樹脂は単独でまた他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂と併用しうる他のエポキシ樹脂の具体例としてはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
前記(3)、(6)、(7)のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として本発明のポリフェノール類を用いる場合、エポキシ樹脂としては前記の他のエポキシ樹脂や本発明のエポキシ樹脂を用いることが出来る。
【0035】
また前記(4)、(6)、(7)のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂として本発明のエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては前記の他の硬化剤や本発明のポリフェノール類を用いることが出来る。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して通常0.7〜1.2当量である。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0037】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂は必要により無機充填材を含有する。用いうる無機充填材の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填材は本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜90重量%を占める量が必要に応じ用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。例えば、本発明のエポキシ樹脂及び/または本発明のポリフェノール類、必要により他のエポキシ樹脂及び/または他の硬化剤、必要により硬化促進剤、無機充填材並びに配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、該エポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成形機などを用いて成形し、好ましくは、80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
【0040】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%、特に好ましくは15〜65重量%を占める量を用いる。
【0041】
こうして得られる硬化物は耐熱性、耐水性及び機械強度に優れているため、耐熱性、耐水性、高機械的強度の要求される広範な分野で用いることができる。具体的には封止材料、積層板、絶縁材料などのあらゆる電気・電子材料として有用である。また、成型材料、接着剤、複合材料、塗料などの分野にも用いることができる。
【0042】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0043】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノール940部、下記式(4)
【0044】
【化6】
【0045】
で表される化合物99部を仕込み、撹拌下で130℃まで昇温し完全に溶解した。次いでパラトルエンスルホン酸0.1部を加え更に5時間撹拌して反応させた。その後、リン酸二水素ナトリウム20重量%水溶液20部を加え、撹拌した後、加熱減圧下で過剰のフェノールを除去することにより下記式(5)
【0046】
【化7】
【0047】
で表される本発明のポリフェノール類(A)158部(n=1.07(平均値))を得た。得られたポリフェノール類の軟化点は93.4℃、水酸基当量は127g/eqであった。
【0048】
実施例2
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら実施例1で得られた化合物127部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド92.5部を仕込み溶解させた。更に45℃に加熱しフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)40.4部を90分かけて分割添加し、その後更に45℃で2時間、70℃で1時間反応させた。反応終了後、130℃で加熱減圧下ジメチルスルホキシド及び過剰のエピクロルヒドリン等を留去し、残留物に366部のメチルイソブチルケトンを加え溶解した。
【0049】
更にこのメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を添加し1時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで洗浄を繰り返した。更に水層は分離除去し、ロータリエバポレーターを使用して油層から加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(6)
【0050】
【化8】
【0051】
で表される本発明のエポキシ樹脂(B)177部(n=1.07(平均値))を得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は72.3℃、エポキシ当量は199g/eqであった。
【0052】
実施例3〜5
得られたポリフェノール類(A)に対しエポキシ樹脂としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020、日本化薬(株)製、軟化点65.1℃、エポキシ当量200g/eq)を、また得られたエポキシ樹脂(B)に対し硬化剤としてフェノールノボラック(軟化点83℃、水酸基当量106g/eq)、または及び得られたポリフェノール類(A)を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)を用いて表1の配合物の組成の欄に示す割合で配合して、70℃で15分ロールで混練し、150℃、成形圧力50kg/cm2 で180秒間トランスファー成形して、その後160℃で2時間、更に180℃で8時間硬化せしめて試験片を作成し、ガラス転移点、及び機械的強度を測定した。結果を表1に示す。なお、ガラス転移点及び機械的強度(曲げ強度)の測定条件は次の通りである。また、表中、配合物の組成の欄の数値は重量部を示す。
【0053】
ガラス転移点
熱機械測定装置(TMA):真空理工(株)製 TM−7000
昇温速度:2℃/min
曲げ強度
JIS K−6911に準拠し測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1より本発明のエポキシ樹脂またはポリフェノール類の硬化物は、高いガラス転移点でかつ高い機械的強度を示すことが明らかである。
【0056】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂は、従来一般的に使用されてきたエポキシ樹脂と比較して、耐熱性、耐水性及び機械的強度に優れた硬化物を与える。
すなわち本発明のエポキシ樹脂は耐熱性、耐水性及び機械的強度に優れた特性を兼ね備えた硬化物を与えることができ、成形材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジストなどの広範囲の用途にきわめて有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、機械的強度に優れる硬化物を与えるポリフェノール類、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物およびその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂としてビスフェノ−ルAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる液状および固形のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂がある。その他液状のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂にテトラブロムビスフェノ−ルAを反応させて得られる難燃性固形エポキシ樹脂などが汎用エポキシ樹脂として工業的に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したような汎用エポキシ樹脂は分子量が大きくなるにつれて、それを使用して得られる硬化物の靭性は増加するものの耐熱性は低下するという欠点がある。また、耐熱性の低下を補うためにクレゾールノボラックエポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂を混合した場合に得られる硬化物は耐熱性は高くなるものの、靭性が低下するという欠点がある。一方、最近の電子産業などの目ざましい発達に伴い、これらに使用される電気絶縁材料などに要求される耐熱性及び機械的強度(靭性)は益々厳しくなっており、これらの特性に優れたエポキシ樹脂の出現が待ち望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、耐熱性及び機械的強度に優れる硬化物を与えるエポキシ樹脂を求めて鋭意研究した結果、特定の分子構造を有するエポキシ樹脂が、その硬化物において優れた耐熱性及び機械強度を付与するものであることを見い出して本発明を完成させるに到った。
【0005】
すなわち本発明は
(1)式(1)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、nは平均値を表し、0〜10の値を示す。P、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、またはアリール基のいずれかをそれぞれ表し個々のP、Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0008】
で表されるポリフェノール類、
(2)式(2)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、n、P、Rは式(1)におけるのと同様の意味を表す。Gはグリシジル基を表す。)
【0011】
で表されるエポキシ樹脂、
(3)(a)エポキシ樹脂
(b)上記(1)記載のポリフェノール類
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(4)(a)上記(2)記載のエポキシ樹脂
(b)硬化剤
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(5)(a)上記(2)記載のエポキシ樹脂
(b)上記(1)記載のポリフェノール類
を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(6)硬化促進剤を含有する上記(3)、(4)または(5)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(7)無機充填材を含有する上記(3)、(4)、(5)または(6)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、
(8)上記(3)、(4)、(5)、(6)または(7)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
前記(1)記載の式(1)で表される化合物は例えば、式(3)
【0013】
【化5】
【0014】
(式中、Pは式(1)におけるのと同様の意味を表す。)
【0015】
で表される化合物とフェノール類とを酸触媒の存在下縮合反応させることにより得ることができる。
【0016】
前記(2)記載の式(2)で表される化合物は例えば、式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンとの反応をアルカリ金属水酸化物の存在下で行うことにより得ることができる。
【0017】
前記縮合反応において用いうるフェノール類の具体例例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、メチルブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノールのo−、m−、p−異性体、またはビニルフェノール、アリルフェノール、プロペニルフェノール、エチニルフェノールなどの各種o−、m−、p−異性体、またはシクロペンチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、シクロヘキシルクレゾールなどのシクロアルキルフェノール、またはフェニルフェノール等の置換フェノール類が挙げられる。これらのフェノール類は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
フェノール類の使用量は式(3)で表される化合物1モルに対して通常0.6〜10モル、好ましくは0.7〜8モルであ。
【0019】
上記縮合反応においては酸触媒を用いる。酸触媒としては種々のものが使用できるが塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの無機あるいは有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸が好ましく、得にp−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸が好ましい。これら酸触媒の使用量は特に限定されるものではないが、式(3)で表される化合物1モルに対して0.001〜0.1倍モルである。
【0020】
上記縮合反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。有機溶剤を使用する場合の用いうる具体例としてはトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。有機溶剤の使用量は仕込んだ原料の総重量に対して通常50〜300重量%、好ましくは100〜250重量%である。
【0021】
反応終了後、洗浄液のpHが3〜7、好ましくは5〜7なるまで水洗処理を行う。水洗処理は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、リン酸二水素ナトリウムさらにはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、フェニレンジアミンなどの有機アミンなど様々な塩基性物質等を中和剤として用いて行ってもよい。また水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば反応生成系中に必要により上記中和剤を溶解した水を加え分液抽出操作をくり返す。
【0022】
中和処理を行った後、減圧加熱下で未反応のフェノール類及び溶剤を留去し生成物の濃縮を行い、式(1)で表される本発明のポリフェノール類を得ることが出来る。
【0023】
式(1)の化合物から式(2)で表される本発明のエポキシ樹脂を得る方法としては公知の方法が採用できる。例えば、得られたポリフェノール類と過剰のエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンの混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を一括添加あるは徐々に添加しながら好ましくは、20〜120℃で1〜10時間反応させることにより本発明のエポキシ樹脂を得ることが出来る。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを流出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0025】
また、式(1)で表される化合物とエピハロヒドリンの混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で0.5〜3時間反応させて得られる式(1)の化合物のハロヒドリンエーテル化物にアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。
【0026】
通常これらの反応において使用されるエピハロヒドリンの量はポリフェノール類の水酸基1当量に対し通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量はポリフェノール類の水酸基1当量に対し通常0.8〜15モル、好ましくは0.9〜11モルである。更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0027】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し5〜100重量%、より好ましくは10〜90重量%である。
【0028】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、150〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや添加溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用したポリフェノール類の水酸基1当量に対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0029】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0030】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。前記(3)、(5)、(6)、(7)記載のエポキシ樹脂組成物において本発明のポリフェノール類はエポキシ樹脂の硬化剤として作用し、この場合本発明のポリフェノール類を単独でまたは他の硬化剤と併用することが出来る。併用する場合、本発明のノボラック型の全硬化剤中に占める割合は30重量%以上が好ましく40重量%以上が特に好ましい。
【0031】
本発明のポリフェノール類と併用される他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用い得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3 −アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるが、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであればこれらに特に限定されない。これら硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
前記(4)、(5)、(6)、(7)記載のエポキシ樹脂組成物において本発明のエポキシ樹脂は単独でまた他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂と併用しうる他のエポキシ樹脂の具体例としてはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0034】
前記(3)、(6)、(7)のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として本発明のポリフェノール類を用いる場合、エポキシ樹脂としては前記の他のエポキシ樹脂や本発明のエポキシ樹脂を用いることが出来る。
【0035】
また前記(4)、(6)、(7)のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂として本発明のエポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては前記の他の硬化剤や本発明のポリフェノール類を用いることが出来る。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して通常0.7〜1.2当量である。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0037】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂は必要により無機充填材を含有する。用いうる無機充填材の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填材は本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜90重量%を占める量が必要に応じ用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。例えば、本発明のエポキシ樹脂及び/または本発明のポリフェノール類、必要により他のエポキシ樹脂及び/または他の硬化剤、必要により硬化促進剤、無機充填材並びに配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、該エポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成形機などを用いて成形し、好ましくは、80〜200℃で2〜10時間加熱することにより本発明の硬化物を得ることができる。
【0040】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%、特に好ましくは15〜65重量%を占める量を用いる。
【0041】
こうして得られる硬化物は耐熱性、耐水性及び機械強度に優れているため、耐熱性、耐水性、高機械的強度の要求される広範な分野で用いることができる。具体的には封止材料、積層板、絶縁材料などのあらゆる電気・電子材料として有用である。また、成型材料、接着剤、複合材料、塗料などの分野にも用いることができる。
【0042】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0043】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノール940部、下記式(4)
【0044】
【化6】
【0045】
で表される化合物99部を仕込み、撹拌下で130℃まで昇温し完全に溶解した。次いでパラトルエンスルホン酸0.1部を加え更に5時間撹拌して反応させた。その後、リン酸二水素ナトリウム20重量%水溶液20部を加え、撹拌した後、加熱減圧下で過剰のフェノールを除去することにより下記式(5)
【0046】
【化7】
【0047】
で表される本発明のポリフェノール類(A)158部(n=1.07(平均値))を得た。得られたポリフェノール類の軟化点は93.4℃、水酸基当量は127g/eqであった。
【0048】
実施例2
温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら実施例1で得られた化合物127部、エピクロルヒドリン370部、ジメチルスルホキシド92.5部を仕込み溶解させた。更に45℃に加熱しフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)40.4部を90分かけて分割添加し、その後更に45℃で2時間、70℃で1時間反応させた。反応終了後、130℃で加熱減圧下ジメチルスルホキシド及び過剰のエピクロルヒドリン等を留去し、残留物に366部のメチルイソブチルケトンを加え溶解した。
【0049】
更にこのメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10部を添加し1時間反応させた後、洗浄液のpHが中性となるまで洗浄を繰り返した。更に水層は分離除去し、ロータリエバポレーターを使用して油層から加熱減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(6)
【0050】
【化8】
【0051】
で表される本発明のエポキシ樹脂(B)177部(n=1.07(平均値))を得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は72.3℃、エポキシ当量は199g/eqであった。
【0052】
実施例3〜5
得られたポリフェノール類(A)に対しエポキシ樹脂としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1020、日本化薬(株)製、軟化点65.1℃、エポキシ当量200g/eq)を、また得られたエポキシ樹脂(B)に対し硬化剤としてフェノールノボラック(軟化点83℃、水酸基当量106g/eq)、または及び得られたポリフェノール類(A)を用い、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)を用いて表1の配合物の組成の欄に示す割合で配合して、70℃で15分ロールで混練し、150℃、成形圧力50kg/cm2 で180秒間トランスファー成形して、その後160℃で2時間、更に180℃で8時間硬化せしめて試験片を作成し、ガラス転移点、及び機械的強度を測定した。結果を表1に示す。なお、ガラス転移点及び機械的強度(曲げ強度)の測定条件は次の通りである。また、表中、配合物の組成の欄の数値は重量部を示す。
【0053】
ガラス転移点
熱機械測定装置(TMA):真空理工(株)製 TM−7000
昇温速度:2℃/min
曲げ強度
JIS K−6911に準拠し測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1より本発明のエポキシ樹脂またはポリフェノール類の硬化物は、高いガラス転移点でかつ高い機械的強度を示すことが明らかである。
【0056】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂は、従来一般的に使用されてきたエポキシ樹脂と比較して、耐熱性、耐水性及び機械的強度に優れた硬化物を与える。
すなわち本発明のエポキシ樹脂は耐熱性、耐水性及び機械的強度に優れた特性を兼ね備えた硬化物を与えることができ、成形材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジストなどの広範囲の用途にきわめて有用である。
Claims (8)
- (a)エポキシ樹脂
(b)請求項1記載のポリフェノール類
を含有してなるエポキシ樹脂組成物。 - (a)請求項2記載のエポキシ樹脂
(b)硬化剤
を含有してなるエポキシ樹脂組成物。 - (a)請求項2記載のエポキシ樹脂
(b)請求項1記載のポリフェノール類
を含有してなるエポキシ樹脂組成物。 - 硬化促進剤を含有する請求項3、4または5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を含有する請求項3、4、5または6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項3、4、5、6または7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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