JP4034621B2 - 車輌用操舵応答特性制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌の操舵制御装置に係り、更に詳細には操舵応答特性、即ち運転者の操舵操作に対する操舵輪操舵の操舵応答特性を制御する操舵応答特性制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平11−310145号公報
自動車等の車輌の操舵制御装置の一つとして、例えば本願出願人の一方の出願にかかる上記特許文献1に記載されている如く、走行路が左右の路面摩擦係数が相互に異なる所謂またぎ路である場合には、操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比を小さくする(操舵応答特性を高くして操舵感をクイックにする)よう構成された操舵制御装置が従来より知られている。
【0003】
かかる操舵制御装置によれば、走行路がまたぎ路であり路面より左右の車輪に作用する力が比較的大きく異なる場合には、操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比が小さくされ操舵応答特性が高くされるので、路面より左右の車輪に作用する力が比較的大きく異なることに起因して車輌の挙動が変化した場合に、運転者はその変化に対し効率的な操舵により対処し、従って伝達比が小さくされない場合に比して車輌の安定的な走行性を向上させることができる。
【0004】
【特許文献2】
特開平2000−177616号公報
尚本願出願人の一方の出願にかかる上記特許文献2には、車輌が緊急状態にある場合に回避操舵をクイックにするためにステアリングギヤ比を小さくする点が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、またぎ路の走行、横風、旋回中の加減速による操舵輪の接地荷重の変化等に起因するヨーモーメントや横力の如く、運転者が希望する車輌の走行運動を達成するためには修正操舵が必要とされる外乱、即ち車輌を偏向させる外乱が車輌に作用すると、運転者の希望する車輌走行方向に対し車輌が偏向するので、運転者は修正操舵を行って車輌に対する外乱の影響、即ち車輌の偏向を低減しようとする。
【0006】
従って運転者の修正操舵により車輌に対する外乱の影響を効果的に低減するためには、例えば操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比が小さくされ操舵輪が効率的に操舵される必要があるが、修正操舵された操舵輪により発生される逆方向のヨーモーメントや横力が外乱によるヨーモーメントや横力と釣り合う段階になると、操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比が小さく維持される必要がなくなる。
【0007】
しかるに上記特許文献1に記載されている如き従来の操舵制御装置に於いては、外乱が車輌に作用している間操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比が小さくされるようになっているため、運転者の修正操舵により外乱の影響が低減された状況に於いても操舵伝達比が小さい値に維持され、そのため操舵応答特性が高すぎ操舵感がクイックになりすぎて運転者が違和感を感じるという問題がある。
【0008】
本発明は、車輌に外乱が作用する状況に於いては操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比を小さくし操舵応答特性を高くするよう構成された従来の操舵制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、車輌に外乱が作用した状況に於ける操舵応答特性の最適値は運転者の修正操舵によって外乱の影響が低減される前と後とでは異なることに着目することにより、修正操舵によって外乱の影響を効果的に低減し得る状況を確保しつつ操舵感がクイックになりすぎて運転者が違和感を感じることを防止することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち運転者の操舵操作に対する操舵輪操舵の操舵応答特性を制御する車輌用操舵応答特性制御装置であって、運転者が希望する車輌の走行運動を達成するためには修正操舵が必要とされる車輌に対する外乱を判定し、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記操舵応答特性を通常時よりも高くし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記操舵応答特性を漸次低下させる車輌用操舵応答特性制御装置に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後外乱による車輌の挙動変化が低下し始めたときに前記操舵応答特性の漸次低下を開始することを特徴とする車輌用操舵応答特性制御装置、又は請求項2の構成、即ち運転者の操舵操作に対する操舵輪操舵の操舵応答特性を制御する車輌用操舵応答特性制御装置であって、運転者が希望する車輌の走行運動を達成するためには修正操舵が必要とされる車輌に対する外乱を判定し、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記操舵応答特性を通常時よりも高くし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記操舵応答特性を漸次低下させる車輌用操舵応答特性制御装置に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後運転者の操舵操作量の変化率の大きさが基準値以上になったときに前記操舵応答特性の漸次低下を開始することを特徴とする車輌用操舵応答特性制御装置によって達成される。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、判定された外乱の大きさが大きいほど前記操舵応答特性を高くする度合が高いよう構成される(請求項3の構成)。
【0013】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れか一つの構成に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後前記操舵応答特性の漸次低下を開始するまでの時間が短いほど前記操舵応答特性の漸次低下の勾配を大きくするよう構成される(請求項4の構成)。
【0014】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1及び2の構成によれば、運転者が希望する車輌の走行運動を達成するためには修正操舵が必要とされる車輌に対する外乱が判定され、外乱の大きさが所定値以上になると操舵応答特性が通常時よりも高くされ、しかる後外乱の大きさとは無関係に操舵応答特性が漸次低下されるので、所定値以上の大きさの外乱が車輌に作用したときには運転者は効率的に操舵輪を修正操舵することができ、これにより外乱の影響を効果的に低減することができ、また運転者による修正操舵が行われた後に操舵感がクイックになりすぎて運転者が違和感を感じる虞れを効果的に低減することができる。
【0016】
また一般に、運転者の運転技能が高く外乱に対処するための運転者の修正操舵の開始が早いほど、外乱の大きさが所定値以上になった後操舵応答特性の漸次低下を開始するまでの時間が短いことが好ましく、運転者の修正操舵の開始は外乱の大きさが所定値以上になった後外乱による車輌の挙動変化が低下し始めたことにより、又は外乱の大きさが所定値以上になった後運転者の操舵操作量の変化率の大きさが基準値以上になったことにより判定可能である。
【0017】
上記請求項1の構成によれば、外乱の大きさが所定値以上になった後外乱による車輌の挙動変化が低下し始めたときに操舵応答特性の漸次低下が開始され、上記請求項2の構成によれば、外乱の大きさが所定値以上になった後運転者の操舵操作量の変化率の大きさが基準値以上になったときに操舵応答特性の漸次低下が開始されるので、運転者の運転技能に応じて外乱の大きさが所定値以上になった後操舵応答特性の漸次低下を開始するまでの時間を可変することができ、例えば外乱の大きさが所定値以上になり操舵応答特性が高くされた直後に操舵応答特性が漸次低下されたり、外乱の大きさが所定値以上になった後一定の時間が経過したときに操舵応答特性が漸次低下されたりする場合に比して、操舵応答特性を過不足なく適正な時間に亘り高くすることができる。
また一般に、車輌に作用する外乱の大きさが大きいほど外乱が車輌に与える影響が高く、従って車輌に対する外乱の影響を効果的に低減するためには外乱の大きさが大きいほど操舵応答特性が高いことが好ましい。上記請求項3の構成によれば、判定された外乱の大きさが大きいほど操舵応答特性を高くする度合が高くされるので、外乱の程度に応じて操舵応答特性を適正に高くすることができ、例えば外乱の大きさに拘わらず操舵応答特性が一定の値に高くされる場合に比して車輌に対する外乱の影響を過不足なく効果的に低減することができる。
【0018】
また一般に、運転者の運転技能が高く外乱に対処するための運転者の修正操舵の開始が早いほど、換言すれば外乱による車輌の挙動変化の低下開始又は操舵操作量の変化率の大きさの増大が早いほど、外乱の大きさが所定値以上になった後操舵応答特性の漸次低下を開始するまでの時間が短くされるだけでなく、操舵応答特性が早く通常時の特性に戻されることが好ましい。
【0019】
上記請求項4の構成によれば、外乱の大きさが所定値以上になった後操舵応答特性の漸次低下を開始するまでの時間が短いほど操舵応答特性の漸次低下の勾配が大きくされるので、運転者の運転技能が高いほど早く操舵応答特性を通常時の特性に戻して運転者が違和感を感じることを確実に防止することができると共に、運転者の運転技能が低いほど遅く操舵応答特性を通常時の特性に戻し運転者が外乱に対処するための修正操舵を確実に行い得るようにすることができる。
【0020】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、検出又は推定又は予測により車輌に対する外乱を判定するよう構成される(好ましい態様1)。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、路面の摩擦係数を推定し、路面の摩擦係数が低いほど所定値が小さくなるよう路面の摩擦係数に応じて所定値を可変設定するよう構成される(好ましい態様2)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車速を検出し、車速が高いほど所定値が小さくなるよう車速に応じて所定値を可変設定するよう構成される(好ましい態様3)。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車輌の余剰のヨーモーメント若しくは車輌の余剰の横力を演算し、余剰のヨーモーメント若しくは車輌の余剰の横力の大きさが基準値以上になったときに操舵応答特性を通常時よりも高くするよう構成される(好ましい態様4)。
【0024】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車輌の余剰のヨーモーメント若しくは車輌の余剰の横力を演算し、余剰のヨーモーメント若しくは車輌の余剰の横力に基づき外乱の大きさを判定する外乱推定値を演算し、外乱推定値が基準値以上になったときに操舵応答特性を通常時よりも高くするよう構成される(好ましい態様5)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車輌用操舵応答特性制御装置は操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比を制御するものであり、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記伝達比を通常時よりも小さくし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記伝達比を漸次大きくするよう構成される(好ましい態様6)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様6の構成に於いて、基本伝達比と補正係数との積として伝達比を制御し、判定された外乱の大きさが所定値以上になると補正係数を通常時よりも小さくすることにより伝達比を通常時よりも小さくするよう構成される(好ましい態様7)。
【0027】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様7の構成に於いて、補正係数を漸次大きくすることにより外乱の大きさとは無関係に伝達比を漸次大きくするよう構成される(好ましい態様8)。
【0028】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様8の構成に於いて、補正係数が通常時の補正係数の値よりも小さい終了基準値以上になったときに補正係数を漸次大きくすることを終了し、通常時の補正係数の値に戻すよう構成される(好ましい態様9)。
【0029】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様9の構成に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後伝達比の漸次増大を開始するまでの時間が短いほど終了基準値が小さくなるよう、終了基準値は前記時間に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様10)。
【0030】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様6乃至10の何れか一つの構成に於いて、判定された外乱の大きさが大きいほど補正係数が小さくなるよう、補正係数を小さくする際の補正係数を外乱の大きさに応じて可変設定することにより、判定された外乱の大きさが大きいほど伝達比を小さくする度合を高くするよう構成される(好ましい態様11)。
【0031】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車輌用操舵応答特性制御装置は操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の変化率に対する操舵輪の操舵量の変化率の比を制御するものであり、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記変化率の比を通常時よりも高くし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記変化率の比を漸次低下させるよう構成される(好ましい態様12)。
【0032】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車輌用操舵応答特性制御装置は操舵輪の操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比を制御すると共に、運転者の操舵操作量の変化率に対する操舵輪の操舵量の変化率の比を制御するものであり、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記伝達比を通常時よりも小さくすると共に前記変化率の比を通常時よりも高くし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記伝達比を漸次大きくすると共に前記変化率の比を漸次低下させるよう構成される(好ましい態様13)。
【0033】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様12又は13の構成に於いて、変化率の比が通常時の変化率の比の値よりも大きい終了基準値以下になったときに変化率の比を漸次低下させることを終了し、通常時の変化率の比の値に戻すよう構成される(好ましい態様14)。
【0034】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様14の構成に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後変化率の比の漸次低下を開始するまでの時間が短いほど終了基準値が大きくなるよう、終了基準値は前記時間に応じて可変設定されるよう構成される(好ましい態様15)。
【0035】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様12乃至15の何れか一つの構成に於いて、判定された外乱の大きさが大きいほど変化率の比が高くなるよう、変化率の比を外乱の大きさに応じて可変設定することにより、判定された外乱の大きさが大きいほど変化率の比を高くする度合を高くするよう構成される(好ましい態様16)。
【0036】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至4の何れか一つの構成に於いて、車速が高いほど操舵応答特性を高くする度合が高いよう構成される(好ましい態様17)。
【0037】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、車輌の旋回挙動を示すパラメータに基づき車輌の挙動変化が低下し始めたことを判定するよう構成される(好ましい態様18)。
【0038】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様18の構成に於いて、車輌の旋回挙動を示すパラメータは車輌のヨーレートであるよう構成される(好ましい態様19)。
【0039】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2の構成に於いて、操舵速度に基づき運転者の操舵操作量の変化率の大きさが基準値以上になったことを判定するよう構成される(好ましい態様20)。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施の形態(以下単に実施形態という)について詳細に説明する。
【0041】
図1はパワーステアリング装置を備えた車輌に適用された本発明による車輌用操舵応答特性制御装置の一つの実施形態を示す概略構成図である。
【0042】
図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ車輌12の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌の左右の後輪を示している。操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール14の操作に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン型の油圧式又は電動式パワーステアリング装置16によりラックバー18及びタイロッド20L及び20Rを介して転舵される。パワーステアリング装置16はそれ自身周知の構造を有し、運転者によるステアリングホイール14の回転操作に伴い発生する操舵トルクに応じた操舵補助トルクを発生する。
【0043】
ステアリングホイール14はアッパステアリングシャフト22、ステアリングギヤ比可変装置24、ロアステアリングシャフト26、一対のユニバーサルジョイント28を介してパワーステアリング装置16のピニオンシャフト30に駆動接続されている。パワーステアリング装置16はラックバー18及びタイロッド20L及び20Rと共働してロアステアリングシャフト26の回転運動を左右の前輪10FL及び10FRの転舵運動に変換する操舵機構を構成している。
【0044】
ステアリングギヤ比可変装置24は電動モータ32を含み、入力部としてのアッパステアリングシャフト22に対し相対的に出力部としてのロアステアリングシャフト26を回転させることによりステアリングギヤ比Rsを変化させ、これにより操舵輪である左右の前輪10FL及び10FRの操舵量に対する運転者の操舵操作量の伝達比を変化させて運転者の操舵操作に対する前輪の実操舵の操舵応答特性を変化させるようになっている。尚ステアリングギヤ比可変装置24はステアリングギヤ比Rsを変化させることにより運転者の操舵操作に対する操舵輪の実操舵の操舵応答特性を変化させ得るものである限り、当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
【0045】
また図1には示されていないが、各車輪の制動力は制動力制御装置により通常時には運転者の制動操作量に応じて制御され、また何れかの車輪の制動スリップが過大になると制動スリップが低減されるよう当該車輪の制動力を増減するアンチスキッドが行われるようになっている。
【0046】
図示の実施形態に於ては、アッパステアリングシャフト22にはその回転角度を操舵角θとして検出する操舵角センサ40が設けられ、ステアリングギヤ比可変装置24にはアッパステアリングシャフト22に対するロアステアリングシャフト26の相対回転角度φを検出する回転角度センサ42が設けられ、操舵角θ及び相対回転角度φを示す信号は電子制御装置44へ入力される。また電子制御装置44には車速センサ46により検出された車速Vを示す信号及びヨーレートセンサ48により検出された車輌のヨーレートγを示す信号が入力され、更に図には示されていない横加速度センサにより検出された車輌の横加速度Gyを示す信号の如く車輌に対する外乱を推定するためのパラメータを示す信号も入力される。
【0047】
後述の如く電子制御装置44は、図2乃至図4に示されたフローチャートに従い、外乱の強さを示す外乱推定値として車輌の余剰のヨーモーメントΔM及び車輌の余剰の横力ΔFy、即ち運転者が希望する車輌の走行運動を達成するに必要なヨーモーメント及び横力に対する余剰のヨーモーメント及び余剰の横力を演算し、余剰のヨーモーメントΔM又は車輌の余剰の横力ΔFyの大きさが対応する基準値以上であるときには、余剰のヨーモーメントΔM及び余剰の横力ΔFyに基づき外乱の大きさを示す外乱評価値Wを演算する。
【0048】
そして電子制御装置44は、外乱評価値Wが大きいほどステアリングギヤ比Rsに対する補正ゲインαgが小さくなるよう補正ゲインαgを外乱評価値Wに基づいて演算し、外乱に対処する運転者の修正操舵により外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めるまでステアリングギヤ比Rsを1よりも小さい値に制御し、外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めると、補正ゲインαgを1へ向けて漸次増大させることによりステアリングギヤ比Rsを漸次増大させて1に復帰させる。
【0049】
この場合電子制御装置44は、ステアリングギヤ比Rsが上述の如く変化するよう、車速Vが高いほど大きくなるよう基本ステアリングギヤ比Rsbを演算し、補正ゲインαg、基本ステアリングギヤ比Rsb、操舵角θ等に基づきステアリングギヤ比可変装置24の第一の目標回転角度φt1を演算する。
【0050】
また電子制御装置44は、外乱評価値Wが大きいほど微分ゲインαdが大きくなるよう微分ゲインαdを外乱評価値Wに基づいて演算し、外乱に対処する運転者の修正操舵により外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めるまで微分ゲインαdを1よりも大きい値に制御し、外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めると、微分ゲインαdを1へ向けて漸次増大させることにより1に復帰させる。
【0051】
更に電子制御装置44は、操舵角θの変化率である操舵角速度θd及び微分ゲインαdに基づきステアリングギヤ比可変装置24の第二の目標回転角度φt2を演算し、第一の目標回転角度φt1と第二の目標回転角度φt2との和としてステアリングギヤ比可変装置24の目標回転角度φtを演算し、ステアリングギヤ比可変装置24の回転角度φが目標回転角度φtになるようステアリングギヤ比可変装置24の電動モータ32を制御する。
【0052】
尚図1には詳細に示されていないが、電子制御装置44はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。また操舵角センサ40及び回転角度センサ42はそれぞれ車輌の車輌の直進位置を基準に右旋回方向への操舵の場合を正として操舵角θ及び相対回転角度φを検出する。
【0053】
次に図2乃至図4に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於いて電子制御装置44により達成されるステアリングギヤ比可変装置24の制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。またイグニッションスイッチが閉成されると、ステップ10に先立ち全てのフラグFa〜Fcが0にリセットされる。
【0054】
まずステップ10に於いては操舵角θを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては横風の如き外乱の強さを示す外乱推定値として車輌の余剰のヨーモーメントΔM及び車輌の余剰の横力ΔFyが演算される。尚この場合余剰のヨーモーメントΔM及び横力ΔFyは当技術分野に於いて公知の任意の要領にて演算されてよい。
【0055】
例えば余剰のヨーモーメントΔMは車輌がまたぎ路を走行する際の制動時には左右の車輪の制動圧の差に基づいて演算され、また旋回中の加減速時には車輌の前後加速度等に基づき車輌の前後荷重移動量が演算され、その荷重移動量に基づいて演算される。また余剰の横力ΔFyは車速V及び左右前輪の実際の操舵角δに基づき車輌の目標横加速度Gytが演算され、目標横加速度Gytと車輌の実際の横加速度Gyとの差に基づき演算され、或いは横風を検出するセンサの検出結果に基づいて演算される。
【0056】
ステップ30に於いてはフラグFaが1であるか否かの判別、即ち外乱に対処するためのステアリングギヤ比Rsの低減制御中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそのままステップ80へ進み、否定判別が行われたときにはステップ40へ進む。
【0057】
ステップ40に於いては後述のステップ50の判別に供される基準値ΔMc及びΔFycが演算される。この場合各基準値は正の値であり、当技術分野に於いて公知の要領にて検出又は推定される路面の摩擦係数μが低いほど小さく、また車速Vが高いほど小さくなるよう路面の摩擦係数μ及び車速Vに応じて可変設定される。
【0058】
ステップ50に於いては余剰のヨーモーメントΔMの絶対値が基準値ΔMc以上又は余剰の横加速度ΔFyの絶対値が基準値ΔFyc以上であるか否かの判別、即ち車輌に対する外乱の大きさが大きい状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ60に於いて補正ゲインαg及び微分ゲインαdがそれぞれ1にセットされた後ステップ300へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ70に於いてフラグFaが1にセットされる。
【0059】
ステップ80に於いては余剰のヨーモーメントΔM及び余剰の横力ΔFyをパラメータとする関数f(ΔM,ΔFy)により外乱の大きさを示す外乱評価値W(正の値)が演算される。尚関数f(ΔM,ΔFy)は例えばΔMの絶対値及びΔFyの絶対値の線形和の如き関数であってよい。
【0060】
ステップ90に於いてはフラグFbが1であるか否かの判別、即ち外乱による車輌挙動の悪化度合が低下し始めたと既に判定されているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそのままステップ200へ進み、否定判別が行われたときにはステップ100へ進む。
【0061】
ステップ100に於いては例えば余剰のヨーモーメントΔM若しくは余剰の横力ΔFyの符号とヨーレートセンサ48により検出された車輌のヨーレートγの変化率とに基づき外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めたか否かの判別、即ち外乱に対処する修正操舵が運転者により行われたか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ110に於いてフラグFbが1にセットされ、否定判別が行われたときにはステップ120へ進む。
【0062】
例えば車輌が外乱により左旋回方向の余剰ヨーモーメントΔMを受けると、車輌のヨーレートγは左旋回方向に増大するが、運転者により修正操舵が行われ操舵輪により余剰ヨーモーメントΔMに対抗するヨーモーメントが発生されると、ヨーレートγの左旋回方向への増大率が低下し、これにより外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めたと判別される。
【0063】
また一般に、外乱に対処する修正操舵が運転者により行われると、外乱による車輌偏向方向とは逆方向への操舵角速度が一時的に大きくなる。従ってステップ100に於ける判別、即ち外乱に対処する修正操舵が運転者により行われたか否かの判別は、外乱による車輌偏向方向とは逆方向への操舵角速度が基準値以上になったか否かにより行われてもよい。
【0064】
ステップ120に於いては車速V及び外乱指標値Wに基づき図5に示されたグラフに対応するマップより補正ゲインαgが1以下の値に演算されると共に、図6に示されたグラフに対応するマップより微分ゲインαdが1以上の値に演算され、しかる後ステップ300へ進む。尚図5に示されている如く、補正ゲインαgは外乱指標値Wが大きいほど小さくなり車速Vが高いほど大きくなるよう演算される。また図6に示されている如く、微分ゲインαdは外乱指標値Wが大きいほど大きくなり車速Vが高いほど小さくなるよう演算される。
【0065】
ステップ200に於いては後述の図3に示されたルーチンに従って補正ゲインαg及び微分ゲインαdが補正され、ステップ300に於いては図4に示されたルーチンに従ってステアリングギヤ比可変装置24の目標回転角度φtが演算され、ステップ400に於いてはステアリングギヤ比可変装置24の回転角度φが目標回転角度φtになるようステアリングギヤ比制御装置24がフィードバック制御される。
【0066】
図3に示されたゲイン補正ルーチンのステップ210に於いては、フラグFcが1であるか否かの判別、即ちステアリングギヤ比Rsの復帰制御が開始されているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそのままステップ250へ進み、否定判別が行われたときにはステップ220へ進む。
【0067】
ステップ220に於いてはステアリングギヤ比Rsが低下された時間ΔT、即ちステップ50に於いて肯定判別が行われた時点よりステップ100に於いて肯定判別が行われた時点までの経過時間が演算され、ステップ230に於いては低下時間ΔTに基づき該時間が短いほど補正ゲインαg及び微分ゲインαdの復帰勾配が大きくなるよう後述のステップ250及び260の演算に供されるフィルタ定数Rg及びRgが演算され、ステップ240に於いてはフラグFcが1にセットされる。
【0068】
ステップ250に於いてはステップ230に於いて演算されたフィルタ定数Rgを使用する例えば一次ローパスフィルタ処理により補正ゲインαgが1へ向けて漸増するよう補正演算され、ステップ260に於いてはステップ230に於いて演算されたフィルタ定数Rdを使用する例えば一次ローパスフィルタ処理により微分ゲインαdが1へ向けて漸減するよう補正演算される。尚補正ゲインαgの漸増及び微分ゲインαdの漸減を達成する補正演算は、ローパスフィルタ処理以外の処理、例えばn次関数の如く当技術分野に於いて公知の任意の演算態様にて行われてよい。
【0069】
ステップ270に於いては基準値αgsを例えば0.95程度の1よりも小さい正の定数として補正ゲインαgが基準値αgs以上になったか否かの判別、即ち補正ゲインαgが実質的に1に復帰したか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ290へ進み、否定判別が行われたときにはステップ280へ進む。
【0070】
ステップ280に於いては基準値αdsを1.05程度の1よりも大きい正の定数として微分ゲインαdが基準値αds以下であるか否かの判別、即ち微分ゲインαdが実質的に1に復帰したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ300へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ290に於いて補正ゲインαg及びαdがそれぞれ1にセットされると共にフラグFa〜Fcがそれぞれ0にリセットされた後ステップ300へ進む。
【0071】
図4に示された目標回転角度φt演算ルーチンのステップ310に於いては、車速Vに基づき図7に示されたグラフに対応するマップよりステアリングギヤ比可変装置24の基本ステアリングギヤ比Rsbが演算され、ステップ320に於いてはステアリングギヤ比可変装置24の第一の目標回転角度φt1が下記の式1に従って補正ゲインαg、基本ステアリングギヤ比Rbs、操舵角θの積として演算される。
φt1=αg・Rsb・θ …(1)
【0072】
ステップ330に於いては操舵角θの時間微分値として操舵角速度θdが演算され、ステップ340に於いてはステアリングギヤ比可変装置24の第二の目標回転角度φt2が下記の式2従って微分ゲインαd、変換係数K(正の定数)、操舵角速度θdの積として演算され、ステップ350に於いてはステアリングギヤ比可変装置24の目標回転角度φtが下記の式3に従って第一の目標回転角度φt1と第二の目標回転角度φt2との和として演算され、しかる後ステップ400へ進む。
φt2=αd・K・θd …(2)
φt=φt1+φt2 …(3)
【0073】
かくして図示の実施形態によれば、ステップ20に於いて外乱の強さを示す外乱推定値として車輌の余剰のヨーモーメントΔM及び車輌の余剰の横力ΔFyが演算され、ステップ50に於いて余剰のヨーモーメントΔMの絶対値が基準値ΔMc以上又は余剰の横加速度ΔFyの絶対値が基準値ΔFyc以上であるか否かの判別により、車輌に対する外乱の大きさが所定値以上の大きい状況であるか否かの判別が行われ、車輌に対する外乱の大きさが大きい状況であるときにはステップ80に於いて余剰のヨーモーメントΔM及び余剰の横力ΔFyに基づき外乱の大きさを示す外乱評価値Wが演算される。
【0074】
そしてステップ100に於いて外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めたと判定されるまで、ステップ120に於いて車速V及び外乱指標値Wに基づき補正ゲインαgが1よりも小さい値に演算されると共に、微分ゲインαdが1よりも大きい値に演算され、ステップ300に於いて補正ゲインαgを使用して第一の目標回転角度φt1が演算され、微分ゲインαdを使用して第二の目標回転角度φt2が演算され、ステアリングギヤ比可変装置24の目標回転角度φtがそれらの和として演算され、ステップ400に於いてステアリングギヤ比可変装置24がその回転角度φが目標回転角度φtになるようフィードバック制御されることにより、外乱の大きさが大きいほど小さくなるようステアリングギヤ比Rsが低減制御される。
【0075】
更にステップ100に於いて外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めたと判定されると、即ち外乱に対処する修正操舵が運転者により行われたと判定されると、ステップ200に於いて補正ゲインαg及び微分ゲインαdが漸次1に復帰するよう補正され、ステップ300に於いてその補正された補正ゲインαg及び微分ゲインαdを使用してステアリングギヤ比可変装置24の目標回転角度φtが演算され、ステップ400に於いてステアリングギヤ比可変装置24がその回転角度φが目標回転角度φtになるようフィードバック制御されることにより、ステアリングギヤ比Rsが漸次通常時の値になるよう制御される。
【0076】
従って図示の実施形態によれば、基準値以上の大きさの外乱が車輌に作用すると、補正ゲインαgが1よりも小さい値に設定され、ステアリングギヤ比Rsがαg・Rsbに低下されるので、運転者は効率的に修正操舵を行うことができ、これにより外乱の影響を効果的に低減することができ、また運転者により修正操舵が行われたと判定されると、補正ゲインαgが漸次1に復帰するよう補正され、ステアリングギヤ比Rsが漸次Rsbに復帰せしめられるので、運転者による修正操舵が行われた後に操舵感がクイックになりすぎて運転者が違和感を感じる虞れを効果的に低減することができる。
【0077】
特に図示の実施形態によれば、補正ゲインαgは外乱の大きさを示す外乱指標値Wが大きいほど小さくなるよう外乱指標値Wに応じて可変設定されるので、基準値以上の大きさの外乱が車輌に作用すると補正ゲインαgが外乱の大きさに関係なく一定の値に低下される場合に比して、外乱の大きさに応じて修正操舵の効果の現れ易さを適正に変化させ、車輌に対する外乱の影響を効果的に低減することができる。
【0078】
また図示の実施形態によれば、運転者により修正操舵が行われたと判定されると、補正ゲインαgが漸次1に復帰するよう補正され、ステアリングギヤ比Rsが漸次Rsbに復帰せしめられるので、例えば外乱の大きさが基準値以上になりステアリングギヤ比が小さくされた直後にステアリングギヤ比が漸次大きくされたり、時間ΔTが一定の値に設定され外乱の大きさが基準値以上になった時点より一定の時間ΔTが経過したときにステアリングギヤ比が漸次大きくされたりする場合に比して、ステアリングギヤ比を過不足なく適正な時間に亘り小さくすることができる。
【0079】
また図示の実施形態によれば、ステアリングギヤ比Rsが低下された時間ΔTに基づき該時間が短いほど補正ゲインαgの復帰勾配が大きくなるよう、補正ゲインαgの復帰勾配が時間ΔTに応じて可変設定されるので、外乱による車輌の挙動変化の低下開始又は操舵操作量の変化率の大きさの低下が早いほど、換言すれば運転者の運転技能が高く外乱に対処するための運転者の修正操舵の開始が早いほど早くステアリングギヤ比を通常時のステアリングギヤ比に戻して運転者が違和感を感じることを確実に防止することができると共に、運転者の運転技能が低いほど遅くステアリングギヤ比を通常時のステアリングギヤ比に戻し運転者が外乱に対処するための修正操舵を確実に行い得るようにすることができる。
【0080】
また図示の実施形態によれば、増減が補正ゲインαgとは逆である点を除き同様に微分ゲインαdが増減されるので、微分ゲインαdが増減されない場合に比して効果的に操舵応答特性を増減することができ、上述の各作用効果を一層効果的に達成することができる。
【0081】
例えば図8は外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めるまでに要した時間ΔTが長い場合(A)及び短い場合(B)について、外乱の大きさが大きい状況(実線)及び小さい状況(破線)に於ける補正ゲインαg及び微分ゲインαdの変化の例を示すグラフである。
【0082】
尚図8に於いて、時点t1は外乱の大きさが基準値以上であると判定された時点を示し、時点t2は運転者による修正操舵が行われたと判定された時点を示し、時点t3及び時点t4はそれぞれ外乱の大きさが大きい状況(実線)及び小さい状況(破線)に於いて補正ゲインαg若しくは微分ゲインαdが実質的に1になったと判定された時点を示している。また図8に於いて、二点鎖線は従来の操舵制御装置に於ける補正ゲインαg及び微分ゲインαdを示している。
【0083】
図8(A)及び(B)の実線と破線との比較より解る如く、図示の実施形態によれば、車輌に対する外乱の大きさが大きいほど補正ゲインαgを小さくすると共に微分ゲインαdを大きくすることができ、また図8の(A)と(B)との比較より解る如く、図示の実施形態によれば、時間ΔTが短いほど補正ゲインαg及び微分ゲインαdの復帰勾配を大きくし、これらのゲインを早期に通常時の値に戻すことができる。
【0084】
また図示の実施形態によれば、補正ゲインαgは車速Vが高いほど大きくなるよう車速Vに応じて可変設定され、微分ゲインαdは車速Vが高いほど小さくなるよう車速Vに応じて可変設定されるので、基準値以上の大きさの外乱が車輌に作用すると補正ゲインαgが車速に関係なく一定の値に低下され、微分ゲインαが車速に関係なく一定の値に増大される場合や、これらのゲインが外乱の大きさのみに応じて可変設定される場合に比して、車速に応じて、即ち外乱による車輌への影響の現われ易さに応じて修正操舵の効果の現れ易さを適正に変化させ、車輌に対する外乱の影響を効果的に低減することができる。
【0085】
また図示の実施形態によれば、ステップ50に於ける外乱の大きさの大小判別に供される基準値ΔMc及びΔFycは路面の摩擦係数μが低いほど小さくまた車速Vが高いほど小さくなるよう路面の摩擦係数μ及び車速Vに応じて可変設定されるので、路面の摩擦係数μが低く修正操舵の効果が発揮されにくいほど早期にステアリングギヤ比の低下による修正操舵の効率化を達成することができ、また車速Vが高く外乱による車輌の影響が高くなり易いほど早期にステアリングギヤ比の低下による修正操舵の効率化を達成することができる。
【0086】
また図示の実施形態によれば、補正ゲインαgが0.95程度の基準値αgs以上になった場合又は微分ゲインαdが1.05程度の基準値αds以下になった場合に補正ゲインαg及び微分ゲインαdが1に戻されるので、例えば補正ゲインαg及び微分ゲインαdが一定の時間補正された後に1に戻される場合に比して、補正ゲインαg及び微分ゲインαdの急変に起因するステアリングギヤ比の急変を確実に防止することができる。
【0087】
また図示の実施形態によれば、外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めたと判定されるまで、ステップ120に於いて車速V及び外乱指標値Wに基づき補正ゲインαgが1よりも小さい値に演算されると共に、微分ゲインαdが1よりも大きい値に演算され、ステップ300に於いて補正ゲインαgを使用して第一の目標回転角度φt1が演算され、微分ゲインαdを使用して第二の目標回転角度φt2が演算され、ステアリングギヤ比可変装置24の目標回転角度φtがそれらの和として演算され、ステップ400に於いてステアリングギヤ比可変装置24がその回転角度φが目標回転角度φtになるようフィードバック制御されるので、外乱の大きさが高いほど効果的に操舵応答の遅れを低減し、このことによっても修正操舵の効果の現れ易さを外乱の大きさに応じて適正に制御することができる。
【0088】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0089】
例えば上述の実施形態に於いては、外乱の強さを示す外乱推定値として車輌の余剰のヨーモーメントΔM及び車輌の余剰の横力ΔFyが演算され、余剰のヨーモーメントΔM及び余剰の横力ΔFyに基づき外乱の大きさを示す外乱評価値Wが演算されるようになっているが、外乱推定値は余剰のヨーモーメントΔM又は車輌の余剰の横力ΔMyであってもよく、また外乱の強さ又は大きさは当技術分野に於いて公知の任意の態様にて検出又は推定又は予測されてよく、またステップ50に於ける外乱の大きさが基準値以上であるか否かの判定は外乱評価値Wに基づいて行われるよう修正されてもよい。
【0090】
また上述の実施形態に於いては、補正ゲインαg及び微分ゲインαdは運転者により修正操舵が開始されたと判定されると漸次1に復帰するよう補正されるようになっているが、補正ゲインαg及び微分ゲインαdは外乱の大きさが基準値以上になりそれが1以外に変更された直後より漸次1に復帰するよう修正されてもよく、また時間ΔTが一定の時間に設定され、補正ゲインαg及び微分ゲインαdはそれが1以外に変更された時点より時間ΔTが経過したときに漸次1に復帰するよう修正されてもよい。
【0091】
また上述の実施形態に於いては、ステアリングギヤ比Rsが低下された時間ΔTに基づき該時間が短いほど補正ゲインαg及び微分ゲインαdの復帰勾配が大きくなるよう、補正ゲインαg及び微分ゲインαdの復帰勾配が時間ΔTに応じて可変設定されるようになっているが、補正ゲインαg及び微分ゲインαdは時間ΔTに関係のない勾配にて復帰されるよう修正されてもよい。
【0092】
また上述の実施形態に於いては、補正ゲインαgは車速Vが高いほど小さくなり、微分ゲインαdは車速Vが高いほど大きくなるよう車速Vに応じて可変設定されるようになっているが、補正ゲインαg及び微分ゲインαdは外乱の大きさのみに応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
【0093】
また上述の実施形態に於いては、基準値ΔMc及びΔFycは路面の摩擦係数μが低いほど小さくまた車速Vが高いほど小さくなるよう路面の摩擦係数μ及び車速Vに応じて可変設定されるようになっているが、基準値ΔMc及びΔFycは路面の摩擦係数μ及び車速Vの一方のみに応じて可変設定されるよう修正されてもよく、また一定の値に設定されてもよい。
【0094】
また上述の実施形態に於いては、補正ゲインαgの復帰の基準値αgs及び微分ゲインαdの復帰の基準値αdsは一定値であるが、上記時間ΔTが短いほど基準値αgsが小さくなり基準値αdsが大きくなるよう、基準値αgs及び基準値αdsは上記時間ΔTに応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
【0095】
更に上述の実施形態に於いては、補正ゲインαgが基準値αgs以上になった場合又は微分ゲインαdが基準値αds以下になった場合に補正ゲインαg及び微分ゲインαdが同時に1に戻されるようになっているが、補正ゲインαg及び微分ゲインαdは相互に関係なく1に戻されるよう修正されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】パワーステアリング装置を備えた車輌に適用された本発明による車輌用操舵応答特性制御装置の一つの実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図示の実施形態に於けるステアリングギヤ比可変装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2に示されたフローチャートのステップ200に於ける補正ゲインαg、微分ゲインαd補正ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図2に示されたフローチャートのステップ300に於けるステアリングギヤ比可変装置の目標回転角度φt演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】車速V及び外乱評価値Wと補正ゲインαgとの間の関係を示すグラフである。
【図6】車速V及び外乱評価値Wと微分ゲインαdとの間の関係を示すグラフである。
【図7】車速Vとステアリングギヤ比可変装置の基本ステアリングギヤ比Rsbとの間の関係を示すグラフである。
【図8】外乱に起因する車輌挙動の悪化度合が低下し始めるまでに要した時間ΔTが長い場合(A)及び短い場合(B)について、外乱の大きさが大きい状況(実線)及び小さい状況(破線)に於ける補正ゲインαg及び微分ゲインαdの変化の例を示すグラフである。
【符号の説明】
10FR〜10RL…車輪
16…パワーステアリング装置
22…アッパステアリングシャフト
24…ステアリングギヤ比可変装置
26…ロアステアリングシャフト
32…電動モータ
40…操舵角センサ
42…回転角度センサ
44…電子制御装置
46…車速センサ
48…ヨーレートセンサ
Claims (4)
- 運転者の操舵操作に対する操舵輪操舵の操舵応答特性を制御する車輌用操舵応答特性制御装置であって、運転者が希望する車輌の走行運動を達成するためには修正操舵が必要とされる車輌に対する外乱を判定し、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記操舵応答特性を通常時よりも高くし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記操舵応答特性を漸次低下させる車輌用操舵応答特性制御装置に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後外乱による車輌の挙動変化が低下し始めたときに前記操舵応答特性の漸次低下を開始することを特徴とする車輌用操舵応答特性制御装置。
- 運転者の操舵操作に対する操舵輪操舵の操舵応答特性を制御する車輌用操舵応答特性制御装置であって、運転者が希望する車輌の走行運動を達成するためには修正操舵が必要とされる車輌に対する外乱を判定し、判定された外乱の大きさが所定値以上になると前記操舵応答特性を通常時よりも高くし、しかる後外乱の大きさとは無関係に前記操舵応答特性を漸次低下させる車輌用操舵応答特性制御装置に於いて、外乱の大きさが所定値以上になった後運転者の操舵操作量の変化率の大きさが基準値以上になったときに前記操舵応答特性の漸次低下を開始することを特徴とする車輌用操舵応答特性制御装置。
- 判定された外乱の大きさが大きいほど前記操舵応答特性を高くする度合が高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の車輌用操舵応答特性制御装置。
- 外乱の大きさが所定値以上になった後前記操舵応答特性の漸次低下を開始するまでの時間が短いほど前記操舵応答特性の漸次低下の勾配を大きくすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の車輌用操舵応答特性制御装置。
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