JP4033998B2 - 熱アシスト磁気信号再生装置及び熱アシスト磁気信号再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は記録媒体を昇温させながら磁気的に再生を行う磁気信号再生装置及び磁気信号再生方法に関し、特に、隣接トラック等からのクロストークを抑制できる磁気信号再生装置及び磁気信号再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マルチメディア技術が発達し、大容量の情報を扱うために、より大容量のメモリデバイス需要が高まっており、中でも書き換え可能な光ディスクや磁気ディスク、磁気テープを中心にその高密度化技術の検討が活発に進められている。
【0003】
その中で、温度により磁気特性の変化する磁気記録媒体を用い、光を照射するなどの手段で媒体に局所的に昇温領域を設け、昇温領域のみを選択的に磁気的に記録もしくは再生することで、高密度記録再生を可能とする磁気信号記録再生方法(本願ではこれを熱アシスト磁気信号記録再生方法と呼び、またその再生方法を熱アシスト磁気信号再生方法と呼ぶ)が提案されている。
【0004】
この熱アシスト磁気信号記録再生方法について、特開平4−176034号公報に記載された一例を説明する。
【0005】
ここでは、記録媒体として室温近傍に磁化がゼロとなる温度(本願ではこれを磁気補償点温度と呼ぶ)を有するフェリ磁性体が用いられている。そして、記録時には、記録媒体における記録すべき領域に光ビームを照射し、それをキュリー温度近傍に昇温させ、記録用ヘッドにより外部磁場を印加して情報記録する。一方、再生時には、記録媒体における再生すべき領域に光ビームを照射して昇温することで、再生部位の磁化を大きくした上でそこから漏れ出る磁束を再生用ヘッドにより検知する。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の熱アシスト磁気信号再生方法(特開平4−176034号公報など)で高密度再生を実現するためには、再生すべき領域(以後、これを再生部位と呼ぶ)の隣接領域における磁化をなるべく小さくしなくてはならない。このため、隣接領域の媒体温度をなるべく正確に磁気補償点温度に制御する必要があり、これがずれると、隣接領域からの情報が再生信号に重畳してしまい、正確な再生信号が得られないという問題がある。以下に具体的に示す。
【0007】
図12は、磁気記録媒体上における情報の記録状態(ビットパターン)を模式的に示した図である。ここでは、異なる3種類のパターンに磁化したことで記録された3トラックの磁気記録情報を記している。このうち、中央の1トラックの磁気記録情報のみを、3トラック幅分の再生ヘッド信号検出領域100を持つ再生ヘッド(例えばMRヘッド等)を用いて再生する場合を考える。但し、磁気記録媒体は図11に示す磁化の温度特性を持つ、一般的なn型フェリ磁性体であるとし、その磁気補償点温度は昇温を行わない状態での再生ヘッド直下付近の媒体温度と略一致するものとする。
【0008】
図12の中央トラックのみを再生する場合、その中央トラックのみを光ビーム等で昇温する。ここで、昇温領域101(中央トラック)の温度をT3近傍(図11参照)とし昇温されていない領域(両隣接トラック)の温度が磁気補償点温度T1近傍(図11参照)であるとすると、昇温領域101(中央トラック)では磁気記録媒体の磁化が十分大きくなり、昇温されていない領域(両隣接トラック)の磁化が十分小さくなる。よって、再生信号は図13に示すごとく、昇温部位における磁気信号のみとなるので、中央トラックの磁気記録情報のみを選択的に再生することができる。
【0009】
しかしながら、環境温度の上昇等が生じると、両隣接トラックすなわち非昇温領域の温度が変化して磁気補償点温度からずれ、そこに磁化が現われてくる。この場合、この領域における記録情報が再生信号に混入することになる。例えば、両隣接トラックにおける温度がT1からT2(図11参照)にそれぞれ上昇し、再生信号において昇温領域に対して1/2の寄与をする強度の磁化を有する状態になると、図12のビットパターンに対応する再生信号は、図14に示すごとくなる。すなわち、両隣接トラックからの信号がノイズとして重畳された再生信号となる。この場合、中央トラックにおける磁気記録情報を正しく再生できない。
【0010】
上述のように、従来示されている熱アシスト磁気信号再生方法において再生ヘッドの磁化検出領域よりさらに小さい領域での高密度再生を行うには、非昇温領域における磁化が十分に小さいことが要求され、すなわち媒体温度の磁気補償点温度からのずれが小さいことが要求される。ところが、たとえごく一般的に考えられる使用環境においても季節や時間、また使用場所により数十℃の環境温度変化は存在し、さらに、媒体近傍には再生ヘッドやモータ、電子回路といった発熱源が多数存在するため、媒体の非昇温領域における温度を磁気補償点温度付近に保つのは容易でない。
【0011】
また、フェリ磁性体の磁気補償点温度は磁性体の組成比に敏感であり、磁気補償点温度が記録領域全てにわたって一定の媒体を生産性良く作成するの困難であるという技術的課題もあった。
【0012】
以上のように、上述した従来の熱アシスト磁気信号再生方法では、再生されるトラックの近隣トラックからの影響即ちクロストークを抑えて高密度再生を行うために、磁気記録媒体を組成比を極めて厳密に制御することによって磁気補償点温度が記録領域全てにわたってほぼ一定に作成するとともに、再生ヘッドにおける磁化検出領域という極めて微小な領域に対して温度を監視、制御することが必要であり、これは技術的に非常に困難であった。
【0013】
本発明は、従来の熱アシスト磁気信号再生方法における上述のような問題点を解決し、簡便でかつ再生時のS/Nに優れた磁気信号再生装置及び磁気信号再生方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、磁気記録媒体の再生領域を局所的に昇温させる昇温手段と、昇温時の温度状態にある前記再生領域の磁化情報を読み取ることで第1再生信号を得る第1再生手段と、昇温時の温度状態とは異なる非昇温時の温度状態にある前記再生領域と略同一領域の磁化情報を読み取って、第2再生信号を得る第2再生手段と、第1再生信号と第2再生信号のどちらか一方から他方を減算して、前記再生領域の記録情報を表す情報再生信号とする補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、請求項1に記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、第1再生手段と第2再生手段は単一の再生ヘッドからなり、前記再生領域の磁化情報を複数回読み取ることで第1再生信号及び第2再生信号を得ることを特徴とする。
【0016】
同一の再生ヘッドからなることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、請求項1に記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、第1再生手段と第2再生手段は、異なる再生ヘッドからなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、請求項3に記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、第2再生手段は、第1再生手段に対して磁気記録媒体のトラック方向に並設されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、前記補正手段での補正動作に際し、第1再生信号と第2再生信号の時間軸調整を行う遅延手段を有することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、前記昇温手段は、第1再生手段による磁化情報の読み取り時と、第2再生手段による磁化情報の読み取り時とで、発する熱出力を変化させることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の熱アシスト磁気信号再生装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、前記昇温手段は、第1再生手段による磁化情報の読み取り時におけるその読み取り位置に対する相対的な熱の供給位置と、第2再生手段による磁化情報の読み取り時におけるその読み取り位置に対する相対的な熱の供給位置とを変化させることを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の熱アシスト磁気信号再生方法は、磁気記録媒体の再生領域を昇温手段により局所的に昇温させ、昇温時の温度状態にある前記再生領域の磁化情報を第1再生手段により読み取ることで第1再生信号を得る熱アシスト磁気信号再生方法において、第2再生手段により、昇温時の温度状態とは異なる非昇温時の温度状態にある前記再生領域と略同一領域の磁化情報を読み取って、第2再生信号を得て、第1再生信号と第2再生信号のどちらか一方から他方を減算して、前記再生領域の記録情報を表す情報再生信号とすることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本実施の形態の磁気記録再生装置は、まず非昇温の状態(第2の温度状態)で磁気記録媒体のある領域における磁気信号を再生ヘッドを用いて再生し(得られた再生信号を非昇温時再生信号(第2再生信号)と記す)、次に同領域内に局所昇温装置を用いて昇温部位を設けて昇温状態(第1の温度状態)の上記領域における磁気信号を先の再生ヘッドを用いて再生する(得られた再生信号を昇温時再生信号(第1再生信号)と記す)し、非昇温時再生信号から昇温時再生信号を減算回路(補正手段)により減算する。
【0025】
以下に、まず本実施の形態の磁気記録再生装置の構成を図1〜3を用いて説明し、続いて、その動作を図4〜7を用いて説明する。
【0026】
《構成》
図1は本磁気記録再生装置の構成を示す説明図である。この図に示すように、磁気記録媒体2を挟んで熱供給源である局所昇温装置1(レーザー光を収束照射することが望ましい)、及び、磁気記録媒体2の磁気信号を再生する再生ヘッド3を配置している。磁気記録媒体2は円盤状であり、媒体回転装置13によって一定角速度で回転している。再生ヘッド3はスライダ15に固定されており、このスライダ15はアクチュエータ16により駆動される。また、図示されてはいないが、アクチュエータ16はスライダ15の位置情報を制御装置5へ出力する。
【0027】
図2は、図1におけるスライダ15,アクチュエータ16の動作を説明する図であるが、この図に示すように、アクチュエータ16は磁気記録媒体2の半径方向へ移動する。これにより、再生ヘッド3は磁気記録媒体2のほぼ全面にアクセスでき、そこから磁気信号が再生できるようになっている。
【0028】
磁気記録媒体2における磁性材料としては、従来より熱アシスト磁気信号再生方法にて提案されているものと同様に、n型フェリ磁性体を用いたものが望ましい。
【0029】
局所昇温装置1はレーザー光源と収束レンズから構成され、磁気記録媒体2の記録領域上に局所昇温作用がもたらされるように配置調整されている。局所昇温装置駆動装置4は、制御装置5からの制御信号に従い、局所昇温装置1をオンオフ制御する機能を有する。また、図3に示すように、局所昇温装置1は再生ヘッド3に追従し、常に昇温部位が再生ヘッド3の磁化検出領域内に位置するように移動する機能を有する。
【0030】
再生ヘッド3は局所昇温装置1により磁気記録媒体2上に生じる昇温部位上に配置調整されている。その磁化検出領域は磁気記録媒体2の記録領域を含む。再生ヘッド3の出力である再生信号は前置増幅器6への入力となる。以後、磁気記録媒体2における磁気記録情報が再生ヘッド3の出力に寄与する領域、すなわち、磁気記録媒体2における再生ヘッド3の磁化検出領域に含まれる領域を再生領域と呼ぶ。
【0031】
前置増幅器6は再生ヘッド3からの再生信号を増幅し、A/D変換器7へ出力する。A/D変換器7は前置増幅器6からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、分岐回路8へ出力する。分岐回路8はA/D変換器7からの増幅信号を、制御装置5からの制御信号により、減算回路11への入力、もしくは、遅延回路10への入力として選択的に出力する機能を有する。遅延回路10は入力された信号を、制御装置5に指定される時間だけ遅延させて減算回路11へのもう一方の入力へ出力する。遅延回路10は具体的にはシフトレジスタ、又はバッファメモリ等で構成される。遅延時間は、この例では磁気記録媒体2が1回転するのに要する時間とする。減算回路11は、2つの入力の減算値を、信号処理回路12への入力として出力する。信号処理回路12は、減算回路11の出力である減算信号から、磁気記録媒体2に記録されていたデータを再生する。
【0032】
《動作》
上記した図1の磁気記録再生装置の動作について以下に説明する。
尚、従来技術との比較のため、以下では図12に示したようなビットパターンを、同図に示すような位置関係にある局所昇温装置1(昇温領域101),再生ヘッド3(再生ヘッド信号検出領域100)で再生するものとする。また、磁気記録媒体2は、磁化と温度の関係が図11に示した特性を有し、局所昇温装置1による昇温時の媒体温度がT3、非昇温時の媒体温度がT2であるものとする。即ち、熱アシスト磁気信号再生時において、昇温部位以外、即ち両隣接トラックにおいて磁化が存在し、それぞれ再生信号において、昇温部位における磁化に対して約1/2の強度比で寄与する状態を扱うものとする。
【0033】
以下、本磁気記録再生装置の動作を図7に基づいて説明する。
【0034】
(ステップ1)
まず、制御装置5からの制御信号を受けた局所昇温装置駆動装置4により、局所昇温装置1を作動しない状態とする。同じく、分岐回路8の出力を遅延回路10に接続する。なお、遅延回路10の遅延時間は、磁気記録媒体2が1回転するのに要する時間が制御装置5により指定されている。
【0035】
(ステップ2〜5)
再生ヘッド3により、磁気記録媒体2の非昇温状態での磁気信号(非昇温時再生信号)を読み取り、これが前置増幅器6、A/D変換器7を経て量子化されたデジタル値として遅延回路10に入力する。このとき遅延回路10に入力される信号波形を図5に示す(本願では理解しやすいようにこれら信号波形をアナログ量で示す)。以後は、再生ヘッド3からの非昇温時再生信号が前置増幅器6により増幅され、A/D変換器7により量子化された信号のことも再生信号と呼ぶ。
【0036】
(ステップ6)
再生ヘッド3により再生された非昇温時再生信号が前置増幅器6に入力される時刻以降に、分岐回路8の出力を減算回路11への入力に接続し、かつ制御装置5の局所昇温装置1に対する制御信号を切り替え、局所昇温装置1を作動させ、上記ステップ2で再生した領域と同一領域に昇温部位を設ける。
【0037】
(ステップ7〜9)
再生ヘッド3により、磁気記録媒体2の再生領域における昇温状態での磁気信号(昇温時再生信号)を読み取り、前置増幅器6、A/D変換器7を経て量子化されたデジタル値として分岐回路8を経て減算回路11の一方に入力する。この入力信号波形を図4に示す。なお、減算回路11のもう一方の入力には、遅延回路10を経て遅延された、同一領域における非昇温時再生信号、即ち図5に示す信号が同時に入力される。
【0038】
(ステップ10,11)
減算回路11に対して2つの入力信号、即ち図4に示す信号(昇温時再生信号)と図5に示す信号(非昇温時再生信号)が与えられた時点でこれを作動させ、この2つの信号の減算値を演算し、出力する。図6は、その信号を示す図である。この減算値の信号が信号処理回路12に出力される。
【0039】
信号処理回路12は、入力された図6に示す信号を2値化し、これを出力信号とする。この出力信号は、図12に示す磁気記録情報のうち、中央トラックのみの情報を表す信号となる。
【0040】
以上説明したように、本磁気記録再生装置では、ある領域における温度の低い状態での再生信号から略同一領域における温度の高い状態での再生信号を減算することで、磁気記録情報を再生する。このため、環境温度の変化等が生じたときでも、目標トラックからの情報を正確に得ることが可能となる。
【0041】
尚、本形態において局所昇温装置1と再生ヘッド3の位置関係は固定されており、媒体温度は局所昇温装置駆動装置4により局所昇温装置をオンオフ制御することで変化させているが、局所昇温装置1と再生ヘッド3の位置関係を任意として、局所昇温領域を磁気ヘッド3と独立に移動させる機構、もしくは可動反射鏡などを用いた昇温部位移動機構により、昇温部位と再生領域の相対的な位置関係を変化させることにより、再生領域における媒体温度を変化させる方法も可である。
【0042】
また、ここでは、局所昇温装置1をオフすることで昇温時の再生信号(第1再生信号)を補正するための信号(ここでは非昇温時再生信号)を得たが、局所昇温装置1のオン状態への立ち上がり時間が長いなどの場合はこの限りではなく、オン状態で出力を制御する(熱出力を変化させる)ことで補正用の再生信号を得てもよい。
【0043】
また、例えば制御装置5における局所昇温装置駆動装置4のオンオフ制御を反転することなどで、昇温状態における再生信号を先に得て、非昇温状態における再生信号を後に得、前者から後者を減算する方法も可である。
【0044】
さらに、ここでは遅延回路10の遅延時間を磁気記録媒体2が1回転するのに要する時間に設定しているが、これに限るものではない。但し、遅延時間は、再生ヘッド3により磁気記録媒体上2の同一領域を非昇温時、昇温時の2回再生する場合に無駄な待ち時間が生じないようにするために、磁気記録媒体2の回転時間の整数倍に設定することが望ましい。
【0045】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、1つの再生ヘッドにより磁気記録媒体上の同一領域を2回(非昇温時,昇温時)再生し、非昇温時再生信号と昇温時再生信号との減算を行ったが、ここでは、磁気記録媒体における略同一領域の非昇温時再生信号と昇温時再生信号を2つの再生ヘッドを用い独立に得て、それらの減算を行う。以下、本実施の形態の磁気記録再生装置の構成,動作を順に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0046】
《構成》
図8は、本実施の形態に係る磁気信号再生装置の構成を説明する模式図である。局所昇温装置1と再生ヘッド3,14が磁気記録媒体2を挟んで配置されている。
【0047】
図9は再生ヘッド3,14の配置を説明する図であるが、この図に示すように、これら2つは媒体移動方向(トラック方向)に並設されている。再生ヘッド3は局所昇温装置1による昇温領域9に対向する位置に配置されている。一方、再生ヘッド14は、再生ヘッド3の回転方向前方の磁気記録媒体2における昇温領域9の範囲外に対応して配置されている。このような配置では、媒体回転装置13による磁気記録媒体2の回転駆動により、再生ヘッド14で再生した領域と同一領域を再生ヘッド3がその後に再生することになる。なお、再生ヘッド14と再生ヘッド3は同一のスライダ15に固定されている。
【0048】
再生ヘッド3の出力は前置増幅器6の入力となり、これにより増幅された磁気信号がA/D変換器7へ入力され、量子化されたデジタルデータとして減算回路11への一方の入力へ出力される。再生ヘッド14の出力は前置増幅器17の入力となり、これにより増幅された磁気信号がA/D変換器18へ入力され、量子化されたデジタルデータとして遅延回路10へ入力される。遅延回路10は入力された信号を制御装置19に指定された時間の遅延を経て、減算回路11のもう一方の入力へと出力する。減算回路11の出力は信号処理回路12へ入力される。
【0049】
制御装置19は、アクチュエータ16からの、スライダ15の位置情報により、遅延時間を計算し、遅延回路10の遅延時間を制御する。この遅延時間は、磁気記録媒体2の回転により、再生ヘッド14により再生された領域が移動して再生ヘッド3の磁化検出領域と略一致するまでの時間であり、具体的には回転角速度をω(/秒)、回転中心からのスライダの距離をr(m)、再生ヘッド3と再生ヘッド14の磁化検出領域略中央部間の距離をd(m)とすると、dがrに比べて十分に小さいという仮定の下では、ほぼd/(r×ω)(秒)である。例えば、再生ヘッド3と再生ヘッド14の距離が20μm、磁気記録媒体2が毎分3600回転していると仮定すると、中心から5cmの位置における遅延時間は、約1.06×10-6秒となる。
このように、遅延時間を再生領域の半径位置によって異なる値に設定すれば、磁気記録媒体2が角速度一定で駆動されている場合にも、再生領域の線速度に応じて適切な遅延時間を設定でき、正確な再生動作を実現できる。
【0050】
《動作》
次に、本磁気記録再生装置の動作について図10に基き以下に説明する。
【0051】
(ステップ51)
媒体回転装置13により磁気記録媒体2を一定角速度で回転させ、局所昇温装置1により磁気記録媒体2を昇温する。この昇温動作は再生時中実行する。
【0052】
(ステップ52)
再生ヘッド14により、再生領域の信号が読み取る。上述したように再生ヘッド14は磁気記録媒体2における非昇温領域に対応して配置されているため、このときの再生信号は非昇温時再生信号となる。
【0053】
(ステップ53〜55)
非昇温時再生信号は、前置増幅器17、A/D変換器18を経て増幅、量子化されて遅延回路10に入力される。
【0054】
(ステップ56,57)
ステップ52での再生ヘッド14による信号読み取り後、その再生領域は媒体回転装置13により移動され、再生ヘッド3における磁化検出領域及び局所昇温装置1による昇温領域の略直下にくる。ここで再生ヘッド3が上記再生領域から信号(昇温時再生信号)を読み取る。
【0055】
(ステップ58,59)
昇温時再生信号が前置増幅器6、A/D変換器7を経て増幅、量子化されて減算回路11へ入力される。
【0056】
(ステップ60,61)
このとき、減算回路11のもう一方の入力には、遅延回路を経た略同一領域における再生ヘッド14による再生信号(非昇温時再生信号)が与えられている。ここで減算回路11は、両者の減算値を信号処理回路12へ出力する。
【0057】
以上により、磁気記録媒体2における磁気記録領域の昇温状態での磁気信号と、略同一領域における非昇温状態での磁気信号の減算値を出力として得ることが可能になる。
【0058】
尚、一般的に局所加熱による非昇温状態から昇温状態への遷移時間のほうが自然放熱による昇温状態から非昇温状態への遷移時間より短いので、上述のように、非昇温状態における磁気信号を再生する再生ヘッド14を昇温状態における磁気信号を再生する再生ヘッド3に先行させて配置すればこの順序が逆の配置よりもより温度の変化を大きくすることができる。しかし、上述の遷移時間の長短が逆である場合には、局所昇温装置1の昇温領域を再生ヘッド14の直下に配置するという構造にして、磁気記録媒体2の昇温状態での再生信号を遅延させ、同領域における非昇温状態での磁気信号との減算をとる方法が望ましい。
【0059】
また、以上の実施の形態では、信号の保存性と信号処理の柔軟性よりデジタル信号処理を用いているが、遅延回路10における遅延時間が、アナログ遅延回路を用いても再生信号の保存性が十分であると期待される程度である場合、A/D変換器7とA/D変換器18を省き遅延回路10と減算回路11をアナログ処理に変更した構成にてアナログ信号処理により減算を実現することも可である。
【0060】
また、以上の実施の形態では、装置構成の容易さ等から再生信号の補正に減算処理を用い補正手段として減算回路を用いたが、再生信号の補正に比較処理を用い補正手段として比較回路を用いることも可である。
【0061】
さらに、以上の実施の形態では、再生信号(昇温時再生信号)の補正のために1つの再生信号(非昇温時再生信号)を用いたが、複数の再生信号を用いて再生信号の補正を行ってもかまわない。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、磁気記録媒体上の略同一領域において、媒体温度を変化させて複数の再生信号を得て、それらを演算処理することによって、隣接トラック等からの混入磁気信号を除去することができるので、狭トラック幅での磁気信号再生を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気信号再生装置の主要構成を説明する概略図である。
【図2】図1の磁気信号再生装置の、磁気記録媒体2,スライダ15,アクチュエータ16の磁気記録媒体2の記録面から見た位置関係を表す概略図である。
【図3】図1の磁気信号再生装置の、スライダ15,再生ヘッド3,磁気記録媒体2,局所昇温装置1の位置関係を側面から表す要部拡大図である。
【図4】図1の磁気信号再生装置による、昇温状態での減算回路への入力信号の一例を表す説明図である。
【図5】図1の磁気信号再生装置による、非昇温状態での減算回路への入力信号の一例を表す説明図である。
【図6】図4と図5の信号を減算することで得られた再生信号を表す説明図である。
【図7】図1の磁気信号再生装置の動作を示す流れ図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る磁気信号再生装置の主要構成を説明する概略図である。
【図9】図8に示す磁気信号再生装置の、スライダ15,再生ヘッド14,再生ヘッド3,磁気記録媒体2,局所昇温装置1の位置関係を側面から見た様子を表す要部拡大図である。
【図10】図8の磁気信号再生装置の動作を示す流れ図である。
【図11】一般的なn型フェリ磁性体における、温度と飽和磁化の関係を表す説明図である。
【図12】従来提案されている、熱アシスト磁気信号再生方法における再生方法の一例を示す説明図である。
【図13】図12に示す再生方法にて、非昇温領域における媒体温度が磁気補償点温度である場合の磁気ヘッドからの信号出力波形を表す説明図である。
【図14】図12に示す再生方法にて、非昇温領域からの信号が混入した場合の信号出力波形を表す説明図である。
【符号の説明】
1 局所昇温装置
2 磁気記録媒体
3 再生ヘッド
4 局所昇温装置駆動装置
5 制御装置
6 前置増幅器
7 A/D変換器
8 分岐回路
9 昇温領域
10 遅延回路
11 減算回路
12 信号処理回路
13 媒体回転装置
14 再生ヘッド
16 アクチュエータ
17 前置増幅器
18 A/D変換器
19 制御装置
25 スライダ
Claims (8)
- 磁気記録媒体の再生領域を局所的に昇温させる昇温手段と、
昇温時の温度状態にある前記再生領域の磁化情報を読み取ることで第1再生信号を得る第1再生手段と、
昇温時の温度状態とは異なる非昇温時の温度状態にある前記再生領域と略同一領域の磁化情報を読み取って、第2再生信号を得る第2再生手段と、
第1再生信号と第2再生信号のどちらか一方から他方を減算して、前記再生領域の記録情報を表す情報再生信号とする補正手段と、を備えたことを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 請求項1に記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、
第1再生手段と第2再生手段は単一の再生ヘッドからなり、前記再生領域の磁化情報を複数回読み取ることで第1再生信号及び第2再生信号を得ることを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 請求項1に記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、
第1再生手段と第2再生手段は、異なる再生ヘッドからなることを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 請求項3に記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、
第2再生手段は、第1再生手段に対して磁気記録媒体のトラック方向に並設されていることを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、
前記補正手段での補正動作に際し、第1再生信号と第2再生信号の時間軸調整を行う遅延手段を有することを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、
前記昇温手段は、第1再生手段による磁化情報の読み取り時と、第2再生手段による磁化情報の読み取り時とで、発する熱出力を変化させることを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の熱アシスト磁気信号再生装置において、
前記昇温手段は、第1再生手段による磁化情報の読み取り時におけるその読み取り位置に対する相対的な熱の供給位置と、第2再生手段による磁化情報の読み取り時におけるその読み取り位置に対する相対的な熱の供給位置とを変化させることを特徴とする熱アシスト磁気信号再生装置。 - 磁気記録媒体の再生領域を昇温手段により局所的に昇温させ、昇温時の温度状態にある前記再生領域の磁化情報を第1再生手段により読み取ることで第1再生信号を得る熱アシスト磁気信号再生方法において、
第2再生手段により、昇温時の温度状態とは異なる非昇温時の温度状態にある前記再生領域と略同一領域の磁化情報を読み取って、第2再生信号を得て、第1再生信号と第2再生信号のどちらか一方から他方を減算して、前記再生領域の記録情報を表す情報再生信号とすることを特徴とする熱アシスト磁気信号再生方法。
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