JP4072704B2 - 熱アシスト記録再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱源により記録媒体を昇温させ、磁気的に情報を記録および再生を実行する熱アシスト記録再生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光技術と磁気記録再生技術との融合による高密度記録を実現する技術が開発されている。例えば、特開平4−176034号公報で開示されているように、磁気的補償温度が略室温であるフェリ磁性体の磁気記録媒体を使用する熱アシスト磁気記録再生方式が知られている。
【0003】
熱アシスト磁気記録再生方式では、記録時にはレーザ光により昇温させて媒体の保磁力を低下させた状態で記録用磁気ヘッドにより外部磁界(外部磁場)を印加して情報を記録する一方、再生時にもレーザ光により昇温させて昇温部位の残留磁化を増大させ、昇温部位の磁化による磁束を再生用磁気ヘッドで検出して情報を再生するようになっている。
【0004】
この熱アシスト磁気記録再生方式では、レーザ光により昇温されていない略室温領域では残留磁化がゼロに近いため、例えば記録媒体としてのディスク状記録媒体の半径方向に沿った、再生用磁気ヘッドの幅が情報が記録されているトラックピッチより大きくても隣接トラックからのクロストークを充分に小さく抑えることが可能となり、高密度の記録再生が実現できる。
【0005】
また、特開平4−95201号公報では再生すべきトラックの両側を光ビームで加熱して、磁気的補償温度付近まで昇温させて残留磁化をゼロにして隣接トラックの信号を減少させることによりクロストークを抑制する熱アシストによる磁気再生方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来提案されていた熱アシストによる再生方法は、再生領域を加熱して磁化を増大させ情報を取り出すか、又は再生領域周辺を加熱して磁化を減少させてクロストークを抑制して情報を取り出すかの2種類である。
【0007】
よって、加熱作用を施すのは再生トラック領域か又は再生トラックの両隣接トラックのどちらかに一方に限定されている。このように何れの手法においても非昇温領域と昇温領域とにおける残留磁化強度の違いを利用して、情報を再生している。
【0008】
フェリ磁性体の記録媒体では、その磁気的補償温度は記録媒体の組成に対して敏感に影響を受ける。つまり、僅かな組成比の変化により磁気的補償温度が大きく変動してしまう。
【0009】
本発明者らによる実験の結果に従えば、例えばTbFeCoの合金による磁性膜の場合、Tbと(FeCo)の組成比が数%異なることで磁気的補償温度は数10℃変動することが判明している。
【0010】
図16に、Tbと(FeCo)との組成比を横軸に磁気的補償温度(図中では補償温度と記載)を縦軸にして、組成比の依存性を示している。ここでは、組成比が1%変動すると磁気的補償温度は20℃変化している。
【0011】
よって、磁気記録媒体の製造バラツキにより磁気的補償温度を特定することが困難となる。また、実際の記録再生システムの動作状況を考えてみると、周囲温度は動作環境により大きく異なってくることが推測されるため、前述の熱アシスト再生では記録媒体の非昇温領域における温度を特定することが困難となる。
【0012】
以上のように、記録媒体の磁気的補償温度も非昇温領域における温度も特定が困難となる状況が発生してしまい、従来提案されていた熱アシスト再生では、クロストークを抑制するという最大の効果を得ることが不可能な場合があった。
【0013】
また、熱アシスト記録方法に関して従来提案されている内容は、記録領域を加熱して媒体の保磁力を小さくするか、又は媒体のキュリー温度近くまで昇温させて外部から磁界により情報を記録するというものである。
【0014】
本発明者らは、熱アシストによる磁気記録状態を確認するため、磁気的補償温度が室温より低い磁気記録媒体と、熱源としてスポットサイズ1.2μmの光ビームを使用して熱磁気記録の実験を行った。
【0015】
ここで、磁気的補償温度を室温より低く設定した理由は、室温にて記録ドメインを磁気的に観測できるように、室温で磁化が現れるようにするためである。光ビームの記録パワーは6mWであり、シミュレーションによれば磁気記録媒体の温度は、上記光ビームによって200℃付近まで上昇する。
【0016】
この光ビームで加熱を行い磁気ヘッドで信号を記録し、その記録ドメインを観測したところ、記録ビットが正常に形成されていない部分があることが判明した。本発明者らはこの要因について種々検討を行い次の結論に至った。
【0017】
本熱アシストによる磁気記録では、使用した記録ヘッドのギャップは0.3μmであり、トラック方向で考えると光ビームサイズが1.2μmであるから、圧倒的に昇温領域が磁界印加領域よりも大きいことになる。
【0018】
このことは、記録領域の冷却時には記録ヘッドからの磁界は既に無い状態にあることを意味する。従って、この冷却過程においては意図しない外部磁界の影響を強く受けることになる。
【0019】
つまり、記録領域の冷却過程で外部からの磁界の影響を受けて記録ドメインの形成が正常に実行されなかった訳である。今回の実験では、使用した磁気記録媒体は室温で磁化が発生するため、記録領域に隣接する非昇温領域のトラックからの磁化の影響を受けたものと判断できる。
【0020】
以上から、記録時には記録領域に隣接する領域の磁化はゼロに近いことが必要であることが判明した。よって、記録時においても磁気記録媒体の磁気的補償温度のバラツキと周囲温度の変化による影響が大きいことが実証された。
【0021】
本発明は、上記間題点に鑑みなされたものであって、その目的は磁気記録媒体の製造プロセスで発生する組成バラツキを要因とする磁気的補償温度のバラツキと、実動状態における磁気記録媒体の周囲温度に起因する記録媒体の温度変化とに対して強い、つまり上記バラツキや温度変化に基づく悪影響を防止できる熱アシスト記録再生方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点を解決するために鋭意検討した結果、本発明を見出したのである。すなわち、本発明に係る熱アシスト記録再生方法は、上記課題を解決するために、室温より高い磁気的補償温度を有する磁性膜を記録層として備える記録媒体に対し、磁気的補償温度に基づいて、到達温度が相異なる複数の加熱領域、例えば、磁気的補償温度に合わせた一つの加熱領域と、一つの加熱領域より高温となる他方の加熱領域をそれぞれ設定し、例えば他方の加熱領域の記録層において、情報を記録および/または再生することを特徴としている。
【0023】
これにより、上記方法では、記録媒体に対し、到達温度が相異なる複数の加熱領域をそれぞれ設定することによって、一つの加熱領域の加熱温度を磁気的補償温度となるように、かつ、他方の加熱領域の加熱温度を磁気的補償温度と異なるように設定できる。
【0024】
このことから、上記方法では、他方の加熱領域の記録層において、保磁力を小さく、かつ、残留磁化を増大できて、情報を記録および/または再生することができる。
【0025】
また、上記方法では、一つの加熱領域の記録層を実際に情報を記録又は再生を行う領域外に、かつ、磁気的補償温度となるように設定することにより、残留磁化を小さく実質的にゼロにできるので、情報が記録再生される他方の加熱領域の記録層に対する磁気的な影響を回避できる。
【0026】
したがって、上記方法では、記録層の磁気的補償温度に応じて、一つの加熱領域を設定できるので、上記領域外における記録層の磁気的補償温度のバラツキと環境温度の変化とに起因する不要磁化の発生を抑制することが可能となることから、記録再生をより安定化できる。
【0027】
上記方法では、情報を記録するときの加熱領域の温度と、情報の再生するときの加熱領域の温度とを、同一に設定してもよいし、また、互いに異なる、例えば情報を記録するときの加熱領域の温度を、情報の再生するときの加熱領域の温度より高く設定してもよい。同一に設定すれば、加熱制御を簡素化できる。一方、上記のように高く設定すれば、記録時の外部磁界の強度を小さくできて、記録を容易化できる。
【0028】
上記熱アシスト記録再生方法では、第1の加熱領域において、記録層の磁化が小さく抑制されて実質的にゼロとなる一方、第2の加熱領域において、記録媒体上の保磁力が小さくなり外部磁界により情報を記録することが好ましい。
【0029】
これにより、上記方法では、記録領域周辺(第1の加熱領域)の磁化を実質的にゼロとすることができるため、記録領域(第2の加熱領域)の冷却過程で隣接する領域からの磁化の影響を受けることが防止されるので、記録をより正常に実行できる。
【0030】
上記熱アシスト記録再生方法では、第1の加熱領域において、記録層の磁化は小さく抑制されて実質的にゼロとなる一方、第2の加熱領域において記録層の磁化は再生磁気ヘッドの検出レベルまで増大して、上記磁化の方向を情報として再生することが好ましい。
【0031】
これにより、上記方法では、再生領域周辺(第1の加熱領域)における記録媒体の磁化を実質的にゼロとすることができるため、再生磁気ヘッドの磁化検出有効面積が記録層上の再生領域(第2の加熱領域)より大きい場合にも、隣接領域からのクロストークが小さくS/Nの良い再生信号を得ることができる。
【0032】
上記熱アシスト記録再生方法では、さらに、第1の加熱領域は第2の加熱領域より広い面積を有し、第2の加熱領域は第1の加熱領域の内側に形成することが好ましい。
【0033】
これにより、上記方法では、第2の加熱領域において情報の記録および/または再生が実行される一方、情報の記録再生を実施する第2の加熱領域より広い、影響を受けやすい外側に隣接する第1の加熱領域においては磁化を実質的にゼロにまで小さく抑制することができる。
【0034】
したがって、上記方法では、情報を記録再生する第2の加熱領域の周囲となる第1の加熱領域からの磁気的な影響を抑制できるので、情報の記録再生をより安定して実行できる。
【0035】
上記方法では、第1の加熱領域と第2の加熱領域を例えば円形にそれぞれ設定した場合、それらの位置関係をそれぞれの円の中心を略一致させることが望ましい。
【0036】
これにより、内部に位置する第2の加熱領域にて情報の記録および再生が実行され、第2の加熱領域を、ほぼ均一に取り囲む第1の加熱領域においては、磁化を実質的にゼロとすることができて、前述したように、情報の記録再生をより安定して実行できる。
【0037】
上記熱アシスト記録再生方法では、第1の加熱領域は、再生磁気ヘッドの記録媒体上における磁界検出可能領域と同じか、又はそれより大きい面積となることが好ましい。
【0038】
すなわち、上記方法では、熱アシストによる情報の再生時に再生磁気ヘッドが読み出し領域(再生領域)以外の磁界を検出しないようにするためには、第1の加熱領域は再生磁気ヘッドの磁界検出可能領域と同じか、又はそれより大きい面積であることが好ましい。
【0039】
これにより、上記方法においては、再生磁気ヘッドは記録層の読み出し領域以外からの磁界を検出することが防止されるため、上記読み出し領域からのS/Nの良い信号再生が可能となる。
【0040】
上記熱アシスト記録再生方法では、さらに、一つの熱源を用いて第1の加熱領域と第2の加熱領域とを生成することが好ましい。これにより、上記方法では、第1の加熱領域の到達温度と第2の加熱領域の到達温度を連動して変化させることが容易に実現できる。
【0041】
本発明者らの実験で得られた磁気記録媒体の保磁力と残留磁化の温度特性では、第2の加熱領域となる、記録時の加熱温度であるキュリー点未満、かつ近傍の保磁力は、温度の増加と共に緩やかに低下しており、温度依存性が小さくなっている。また、第2の加熱領域となる、再生時の加熱温度に対応する残留磁化の最大強度付近の温度依存性も小さくなっている。ところが、第1の加熱領域となる、磁気的補償温度付近の残留磁化強度の温度依存性は大きい。また、通常では、第1の加熱領域の温度は、第2の加熱領域の温度より低くなるように設定されている。
【0042】
これらの特性を考慮すると、第2の加熱領域の到達温度と比較して第1の加熱領域の到達温度を精度よく設定することが必要である。つまり、第1の加熱領域の到達温度を主体に温度を調整することがより重要であることが判った。
【0043】
上記方法では、一つの熱源を用いて第1の加熱領域と第2の加熱領域とを生成するので、第1の加熱領域の到達温度と第2の加熱領域の到達温度とを連動して調整することになるため、第2の加熱領域における到達温度の設定精度は悪くなるが、上記したように磁気特性の温度依存性が小さいことから、実際の記録および再生への影響は小さい。
【0044】
その上、上記方法のように、第1の加熱領域と第2の加熱領域とを連動して制御することは、上記の第1の加熱領域と第2の加熱領域とを生成するための制御手段を簡便にできることに繋がり、上記方法を用いた記録再生システムにおいて利点となる。
【0045】
上記熱アシスト記録再生方法では、第1の加熱領域の到達温度と第2の加熱領域の到達温度とを別々に独立して変化させてもよい。
【0046】
これにより、上記方法では、第1の加熱領域の到達温度を第2の加熱領域の到達温度とは分離して調整することができるため、記録層の特性上のバラツキを充分に吸収して、再生時には第1の加熱領域では磁化を実質的にゼロとし、第2の加熱領域では磁化強度を最大値とすることが正確に実行でき、同様に、記録時には第1の加熱領域では磁化を実質的にゼロとし、第2の加熱領域では保磁力を小さくすることがより確実に実現される。
【0047】
上記熱アシスト記録再生方法では、記録媒体からの再生信号のジッタ値、エラーレート、信号レベルの内1つか又はそれらの複数を測定して、その結果に基づき第1の加熱領域の到達温度を設定することが好ましい。
【0048】
これにより、上記方法では、第1の加熱領域での磁化を実質的にゼロとするように精度よく到達温度を設定することが実現する。つまり、熱源の制御が、媒体上の昇温制御、磁化強度の制御、再生磁気ヘッドによる磁界検出、検出信号の増幅、信号処理、信号品質評価を経由して実行されることになり、熱源制御が閉ループを形成する。
【0049】
したがって、上記方法では、第1の加熱領域に対する到達温度を精度よく設定できるため、制御系等の回路のバラツキに起因する第1の加熱領域に対する温度設定の不安定化を軽減できるので、再生信号のS/Nを良好にすることが可能となる。
【0050】
上記熱アシスト記録再生方法では、予め設定された評価領域に記録された情報を再生評価し、その再生評価に基づいて第1の加熱領域の到達温度を設定することが好ましい。
【0051】
これにより、上記方法では、再生信号の品質評価が迅速に実行される。このとき、評価領域に記録されている情報が予め設定された情報であることは非常に有効である。つまり、固定された情報による信号品質評価となるため、評価が容易に実行でき、しかも評価精度を高めることが可能となる。例えば、予め設定された情報として、単純なパターン情報、単一周波数、ランダムパターンが挙げられる。
【0052】
さらに、上記方法では、ユーザデータ領域と評価領域を分離できることで、到達温度設定時の予期せぬ事態によりユーザデータを破損する危険性がなくなるという利点を発揮できる。
【0053】
また、上記方法では、記録媒体上に複数の評価領域を設けてもよい。それは、記録媒体が角速度一定で回転している場合、供給される熱量が一定であると記録媒体の内周と外周で線速度が変化するため、記録媒体上の単位面積当りに供給される熱量も変化してしまうからである。
【0054】
よって、上記方法では、記録媒体の内周から外周にかけて複数の評価領域を設けて、上記各評価領域からの再生信号に基づいて、それぞれ第1の加熱領域の到達温度を設定することが好ましい。さらに、上記方法では、再生信号の品質評価を実行する際に一番近くの評価領域にアクセスすればよいため、アクセス時間が短縮されるという利点も生じる。
【0055】
上記熱アシスト記録再生方法では、記録再生の待機時に第1の加熱領域の到達温度を変化させることが好ましい。これにより、上記方法では、実際の記録又は再生動作に影響を与えずに到達温度を調整することが可能となる。
【0056】
上記熱アシスト記録再生方法では、第1の加熱領域を加熱する手段として、レーザ光を使用することが好ましい。上記方法によれば、レーザ光を使用することで、光量に比例して到達温度を迅速に変化させることが可能となり、また加熱領域の位置を正確に制御することもできる。
【0057】
上記熱アシスト記録再生方法では、第1の加熱領域を加熱する手段として、抵抗成分で発生するジュール熱を利用してもよい。上記方法によれば、ジュール熱を使用することで、簡単な構成で広範囲の領域を加熱することが可能となる。
【0058】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
以下に、本発明の熱アシスト記録再生方法に係る実施の各形態について図1から図15を参照して説明する。本発明で使用する磁気記録媒体(記録媒体)は、ガラス等からなる透明支持基板上に、希土類遷移金属などのフェリ磁性体からなる磁性膜を記録層として有するものである。
【0059】
また、このような磁気記録媒体においては、記録層の磁気的補償温度は、40℃〜100℃、より好ましくは43℃〜80℃、さらに好ましくは46℃〜60℃の温度範囲内に設定されている。
【0060】
また、上記磁気記録媒体の記録層は、磁気的補償温度とキュリー点との間の温度において、残留磁化強度(飽和磁化)の極大値を有しており、その極大値は、150℃〜250℃、より好ましくは160℃〜240℃、さらに好ましくは170℃〜230℃の温度範囲内に設定されている。
【0061】
また、上記磁気記録媒体は、記録層のキュリー点が、200℃〜400℃、より好ましくは240℃〜360℃、さらに好ましくは280℃〜320℃の範囲内となるように設定されている。
【0062】
本実施の各形態にて使用するフェリ磁性体による記録媒体は全て共通で、例えば図2に示す残留磁化100と保磁力101の各温度特性をそれぞれ有するものであり、Tb,Fe,Coの3つの金属からなる合金の磁性膜を記録層として有するものである。
【0063】
このような合金からなる磁性膜では、Tbの含有量により磁気的補償温度が変化することが、一般的に知られている。ここで作製した磁性膜の組成は、例えば、Tb26Fe44Co30(数字はそれぞれ原子at%を示す)である。この組成の磁性膜は、磁気的補償温度が50℃、キュリー点が290℃、残留磁化が最大となる温度が150℃のものである。図2から判るように、上記記録媒体は、磁気的補償温度が室温より高く設定されており、残留磁化を実質的にゼロとするためには室温から磁気的補償温度に昇温することが必要なものである。
【0064】
次に、上記熱アシスト記録再生方法について説明する。図3は熱アシスト記録再生方法を使用した磁気記録再生装置の構成の一例を示している。
【0065】
まず、熱アシスト記録再生方法における記録動作を説明すると、記録される情報は、記録信号として外部(図示していない)から信号処理部6に入力され、コントローラ4の指示により信号処理部6において記録信号に対し、符号化により磁気記録に適した変調を行う。そして、この変調された変調信号は、前段処理部5で電流信号に変換され記録磁気ヘッドの記録コイルを駆動することで記録磁界を発生させる。
【0066】
一方、コントローラ4は、記録磁気ヘッドに対し記録媒体を挟んで対面するように配置された光照射装置7に対して記録のための光を照射するよう指示を与える。こうして、磁気記録媒体1は、記録磁界と光パワーとが供給されることにより、図2で示される第2の加熱領域としての高温領域(200℃以上、キュリー点未満)の保磁力が充分に小さくなった状態となり、情報に応じた記録磁界が記録層に記録される。
【0067】
次に、熱アシスト記録再生方法における再生動作を説明すると、まず、コントローラ4からの指示で光照射装置7は再生領域に対して光を照射して磁気記録媒体1を加熱する。これにより、磁気記録媒体1は第2の加熱領域としての図2で示される高温領域(150℃付近すなわち残留磁化の極大値付近)の残留磁化が最大となる状態になる。
【0068】
この残留磁化を再生磁気ヘッド2で検出し、その信号は前段処理部5で増幅され信号処理部6に送られる。信号処理部6では、再生信号の2値化を行い復調、エラー検出、エラー訂正を行い元の情報を復元して得ることができる。このような再生磁気ヘッド2としては、巻線を有する磁気ヘッドや、磁気抵抗効果を利用したMR(Magnet-Resistive) ヘッド、さらに高い磁界感度が得られるGMR(Giant Magnet-Resistive) ヘッドが挙げられる。
【0069】
次に、上記の熱アシスト記録再生方法の実施の形態1である、実際の記録および再生を行う領域である第2の加熱領域とそれを含めた周辺領域である第1の加熱領域を生成する方法について図1ないし図5と図8、図9とを用いて詳細に説明する。
【0070】
本実施の形態1における光照射装置7では、図4(a)および図4(b)に示すように、2焦点対物レンズ13を使用して一つの熱源であるレーザ10により、円形状の2つの各加熱領域つまり第1の加熱領域18および第2の加熱領域19を磁気記録媒体1の上に同心状に同時にそれぞれ生成している。
【0071】
つまり、レーザ10から出射された光はコリメートレンズ11で平行光に変換され、ビームスプリッタ12に導かれる。ビームスプリッタ12では入射光の約半分が透過して2焦点対物レンズ13に導かれる。
【0072】
2焦点対物レンズ13では、レンズ内周部の焦点距離は短く、レンズ外周部における焦点距離は内周部より長くなるように設計されている。例えば、内周部を通過する光束16により磁気記録媒体1に焦点を結ぶ制御を行う場合、内周部の光束16が磁気記録媒体1の記録層で反射し、その反射光は2焦点対物レンズ16を通過してビームスプリッター12において、その約半分の光量が反射され検出光学系14へと導かれる。
【0073】
検出光学系14では2焦点対物レンズ13の内周部からの光束16を検出器15上に結像させる。一方、2焦点対物レンズ13の外周部からの光束は磁気記録媒体1上で焦点ずれの状態であるため検出器15上には結像しない。よって、検出器15の情報に従い2焦点対物レンズ13を駆動して、光束16を常に磁気記録媒体1上に合焦状態に制御することができる。
【0074】
2焦点対物レンズ13の外周部の光束は、常に磁気記録媒体1上では焦点ズレの状態となっている。よって、第1の加熱領域18のスポットサイズ(面積)は、第2の加熱領域19のスポットサイズより大きく(広く)、例えば、スポットサイズの直径が6μm程度となっている。
【0075】
以上の結果から、磁気記録媒体1上においては、光束16による合焦点スポット(スポットサイズ直径1μm程度)と外周部光束による焦点ズレ・スポット(スポットサイズ直径6μm程度)の2つのスポットが形成されることになり、2つの第1および第2の加熱領域18、19、言い換えると第1の加熱領域18と、その内側に位置する(形成された)第2の加熱領域19とを同時にそれぞれ実現できる。
【0076】
それぞれの領域での到達温度はその領域での光エネルギー密度に比例するため、図4(c)に示すような第1の加熱領域18より第2の加熱領域19は高温となる熱分布プロファイルを有することになる。焦点ズレのスポットによる第1の加熱領域18と合焦スポットによる第2の加熱領域19との相対的な到達温度差は、2焦点対物レンズ13の設計により一義的に決定される。
【0077】
例えば、図2に示すように磁気的補償温度が50℃付近であり、かつ残留磁化強度が最大となる温度が150℃付近であれば、第1の加熱領域18と合焦点スポットによる第2の加熱領域19との到達温度差が100℃、すなわち磁気的補償温度近傍となる第1の加熱領域18と、残留磁化が最大となる温度近傍となる第2の加熱領域19となるように2焦点対物レンズ13を設計すればよい。設計時のパラメータは、焦点距離とレンズの開口数(NA)である。
【0078】
本実施の形態1では1つのレーザ10による1つの熱源によって2種類の加熱領域18、19をそれぞれ同時に生成しているため、各々の加熱領域18、19における到達温度はレーザ10の光出射パワーにより連動して変化させることができる。
【0079】
これにより、磁気記録媒体1で必要とされる2種類の加熱領域18、19の到達温度差は固定されているため、周囲温度等による動作周囲温度の変化に対して迅速かつ容易に追従させることが可能となる。
【0080】
到達温度の設定は次のように実施される。図3に示すように、磁気記録媒体1に記録された情報である磁化方向が、再生磁気ヘッド2により再生信号として検出される。検出された再生信号は前段処理部5において増幅され信号処理部6を経由してコントローラ4へ入力される。コントローラ4においては再生信号の品質を評価することが可能である。
【0081】
従って、コントローラ4は再生信号の品質を評価しながら光照射装置7内部のレーザ10の光出射パワーを制御できる。再生磁気ヘッド2のサイズは、例えば、ギャップ長が0.3μmで記録トラックの方向に対し垂直方向の長さ(ギャップ幅)が5μmに設定されており、本再生磁気ヘッド2で検出可能な磁気記録媒体1上の領域サイズもほぼ同程度である。
【0082】
従って、第1の加熱領域(直径6μm程度の円形)はこの検出可能領域を充分にカバーできるサイズを有している。つまり、光出射パワーを最適に設定すれば、再生磁気ヘッド2で検出される磁界は第2の加熱領域19において増幅された(増大化した)磁化の漏れ磁界だけとすることができる。
【0083】
また、記録時においては、記録領域(第2の加熱領域19)の周辺領域(第1の加熱領域18)は、磁化が実質的にゼロとなるため、記録領域に対して磁気的に影響を与えることは無くなる。ただし、本実施の形態1では光照射装置7の構成上、再生時および記録時における第2の加熱領域19の到達温度は等しくなる。つまり、再生光パワーと記録光パワーは同じとなっている。
【0084】
図1に上記の各スポットサイズの関係を示す。T1〜T7は磁気記録媒体1における各記録トラックの例である。図1では、記録トラックT4に記録されている記録ビット17を再生する場合の状況が示されている。第2の加熱領域19はほぼトラック幅相当となっており、一方、第1の加熱領域18は各記録トラックT1からT7に跨っており、第1の加熱領域18におけるトラック幅方向の長さがトラック幅より大きくなっている。
【0085】
第1の加熱領域18においては磁気記録媒体1の温度が磁気的補償温度に維持されるため、第2の加熱領域19以外の第1の加熱領域18内の記録ビット17は磁化が実質的にゼロであり再生磁気ヘッド2によって検出されない。
【0086】
第2の加熱領域19では、記録ビット17の残留磁化は増幅され再生磁気ヘッド2により上記記録ビット17からの漏洩磁界を記録された情報として検出することができる。再生磁気ヘッド2の検出部20におけるトラック幅方向の長さは第1の加熱領域18のトラック幅方向の長さよりも小さいため、再生磁気ヘッド2は、記録トラックT4の記録ビット17だけを検出することになる。
【0087】
次に再生信号の品質を評価する方法について説明する。再生信号の品質評価として、例えば、隣接トラックからのクロストーク量に注目して光出射パワーを決定することができる。この場合、クロストーク量そのものを直接評価することは難しいため、クロストーク量が反映される別の指標により評価することが望ましい。
【0088】
図5に、再生信号を2値化したデジタル信号のジッタ値を利用する場合の信号処理部6の構成を示している。ここで得られたジッタ値はコントローラ4に入力されて、コントローラ4が光照射装置7による光出射パワーを設定する際の判断情報にもなっている。
【0089】
図6には、2値化後のデジタル情報をデコードして得られるエラーレートを利用する場合の信号処理部6の構成を示している。デコードの過程で検出されるエラー数を一定時間計測することでエラーレートを求めている。
【0090】
ここで得られたエラーレートはコントローラ4に入力されて、コントローラ4が光照射装置7による光出射パワーを設定する際の判断情報にもなっている。つまり、信号処理部6において、ジッタ値およびエラーレートの少なくとも一方を求め、その値が最小となるようにコントローラ4は光出射パワーを設定する。こうして得られた光出射パワーにより生成される第1の加熱領域18では、磁気記録媒体1の残留磁化は実質的にゼロとなる。
【0091】
また、再生信号の品質評価を磁気記録媒体1上の予め決められた領域で実施することが望ましい。図9に示すように磁気記録媒体1の一部に、磁気記録媒体1の走査方向、例えば周方向に沿った評価領域28を設け、光出射パワーを設定する場合に、先ずこの評価領域28にアクセスを行い、そこに記録されている予め固定された情報パターンを再生して再生信号の品質を評価する。
【0092】
そして、その評価結果に基づき光出射パワーを設定する。この時、固定された情報パターンを使用すれば、再生評価が簡便にして迅速に実行可能となるため、光出射パワーの設定の信頼性が向上する。
【0093】
図10には、磁気記録媒体1上に複数の評価領域28が設けられている例を示している。一般に、磁気記録媒体1はアクセス性能の要求から角速度一定にて回転制御される。そのため、磁気記録媒体1の内周と外周とにおいて線速度の変化が生じることになる。つまり、外周の方が線速度は速く、内周に向かって遅くなって行く。このことは、光出射パワーが一定であれば、磁気記録媒体1上の単位面積当たりに供給される光パワーが一定でなくなることにつながる。
【0094】
従って、図10に示すように磁気記録媒体1の内周から外周にかけて複数の評価領域28を設けて、実際に再生する領域に近い評価領域28にて、再生信号の品質評価を行いそれに基づく光出射パワーの設定を実施することで、磁気記録媒体1全域に渡り信頼性の高い情報の再生および記録が可能となる。また、複数設けることで評価領域28へのアクセス時間を短縮できる効果もある。
【0095】
複数の評価領域28を設定する方法としては、磁気記録媒体1の半径方向に等間隔に設定してもよい。磁気記録媒体1を複数のトラック数でブロック化してゾーン分割した場合は、各ゾーン毎に評価領域28を設定することが望ましい。
【0096】
以上において、再生評価を実行するタイミングは、情報の記録又は再生の待機中に実施することが望ましい。待機中に実施することで、記録再生の実動作には影響を与えることが無くなるため、熱アシスト記録再生方法を用いた記録再生装置の記録再生能が低下することはない。
【0097】
〔実施の形態2〕
図2と図11を用いて本発明の実施の形態2を説明する。本実施の形態2における光照射装置7の詳細を図11に示す。ここでは、2つの光源、レーザA21とレーザB24を使用して前述と同様な2種類の各加熱領域18、19をそれぞれ生成している。
【0098】
つまり、上記光照射装置7では、レーザA21から出射された光はホログラム22を通過してコリメートレンズ11で平行光に変換され、ビームスプリッター12を通り対物レンズ23により磁気記録媒体1の記録層上に集光する。
【0099】
また、磁気記録媒体1の記録層で反射された光は対物レンズ23、ビームスプリッター12、コリメートレンズ11、ホログラム22を通って検出器15上に結像される。この検出器15の出力を使用して、対物レンズ23のサーボ制御を行っている。
【0100】
一方、レーザB24から出射された光はコリメートレンズ25で平行光に変換された後、絞り26にて光束の一部がけられる(遮断される)。けられた光束はビームスプリッター12で反射して対物レンズ23に向かい、対物レンズ23により磁気記録媒体1の記録層上に集光される。
【0101】
このように、レーザB24からの光束は絞り26によるけられが発生するため、対物レンズ23の一部しか励起しない。このため、レーザB24からの光束から集光されたビームスポットサイズは回折限界で絞られたスポットサイズより大きくなり、けられが大きいほどスポットサイズは大きくなる。
【0102】
したがって、レーザB24からの光により第1の加熱領域18を生成し、回折限界まで絞れるレーザA21からの光により第2の加熱領域19を生成できる。そして、第1の加熱領域18の面積は絞り26での光束のけられ量により決定される。
【0103】
また、本光照射装置7では2つのレーザA21およびレーザB24により2種類の加熱領域18、19をそれぞれ生成しているため、各々の加熱領域18、19における到達温度はそれぞれのレーザA21およびレーザB24の光出射パワーにより別々に変化させることができる。
【0104】
これにより、磁気記録媒体1で必要とされる2種類の加熱領域18、19の到達温度差が、用いた磁気記録媒体1毎に異なる場合においても最良の到達温度に設定することができる。
【0105】
つまり、磁気記録媒体1に応じて第1の加熱領域18の到達温度を磁気的補償点に近づけ、また、これとは独立して記録時における第2の加熱領域19の到達温度、さらには再生時における第2の加熱領域19の到達温度をそれぞれ独立して設定することができる。到達温度の設定は2つのレーザA21、レーザB24の光出射パワーをそれぞれ制御することで実施される。
【0106】
すなわち、前述の実施の形態1にて図2に基づき説明したように、再生磁気ヘッド2により検出された再生信号については、前段処理部5において増幅され信号処理部6を経由してコントローラ4に入力されており、コントローラ4において再生信号の品質を評価することが可能である。
【0107】
従って、コントローラ4は再生信号の品質を評価しながら光照射装置7内部のレーザA21、レーザB24の各々の光出射パワーを制御することが可能となる。具体的に説明すると、再生信号の品質評価は先ずレーザA21の光出射パワーを固定してレーザB24の光出射パワーを変化させて実施して、最適なレーザB24の光出射パワーを決定する。この光出射パワーにより生成される第2の加熱領域19では残留磁化は実質的にゼロとなる。
【0108】
その後、レーザB24の光出射パワーを固定してレーザA21の光出射パワーを変化させながら再生信号の品質を評価して最適なレーザA21の再生光出射パワーを決定する。一方、記録時においてはレーザB24の光出射パワーは再生時と同じとして、レーザA21の光出射パワーを変化させて記録を行い、上記の最適なレーザA21の再生光出射パワーで再生して記録状態を評価し最適な記録光出射パワーを決定する。
【0109】
以上の再生信号の品質評価に関する手法と実施タイミングは、実施の形態1で説明したものと同じであるため、本実施の形態2の説明では省略する。
【0110】
〔実施の形態3〕
図12と図13を用いて本発明の実施の形態3を説明する。本実施の形態3では、図12に示すように第1の加熱領域18を生成する手段として、発熱体3の発生するジュール熱を利用している。つまり、発熱体3は図示しない支持体により、再生磁気ヘッド2とは周方向に異なる位置に固定されており、磁気記録媒体1を非接触で加熱するものである。
【0111】
磁気記録媒体1は、発熱体3の直下で加熱されるが、磁気記録媒体1の回転に伴い再生磁気ヘッド2に面する位置に達した時点で温度は下がる。従って、この下がった温度が磁気記録媒体1の磁気的補償温度に近づくように発熱体3の発熱温度は制御されている。
【0112】
図13に本実施の形態3における装置のブロック図を示す。発熱体3はコントローラ4の指示に従い発熱体制御部9を通して発熱温度を設定できるようになっている。また、光照射装置7により第2の加熱領域19を生成している。第2の加熱領域19から得られる再生信号は、再生磁気ヘッド2で検出され前段処理部5にて増幅され、さらに、信号処理部6においてジッタ値、エラーレートが求められ、コントローラ4に入力される。
【0113】
コントローラ4はこのジッタ値、エラーレートが最小となるように、発熱体制御部9を通して発熱体3の発熱温度を設定する。また、光照射装置7からの光照射を停止させ、第2の加熱領域19を消失させた状態で再生磁気ヘッド2により検出される再生信号の信号レベルが最小となるように、発熱体制御部9を通して発熱体3の発熱温度を設定することも可能である。
【0114】
図7に、発熱温度の設定のために、A/D変換を使用する場合の信号処理部6の構成を示す。信号処理部6において、入力されたアナログの再生信号をA/D変換によりデジタル情報に変換したのち、コントローラ4に入力する。コントローラ4は入力されるデジタル情報に基づき再生信号が最小となるように発熱体制御部9を通して発熱体3の発熱温度を設定する。
【0115】
図8に、発熱温度の設定のために、コンパレータを使用する場合の信号処理部6の構成を示す。信号処理部6において、入力された再生信号は所定の基準値と比較され大小関係が判断される。この判断結果は、コントローラ4に入力される。コントローラ4は再生信号レベルが所定の基準値より小さくなるように、発熱体制御部9を通して発熱体3の発熱温度を設定する。
【0116】
ここでの所定の基準値は、許容される隣接トラックからのクロストーク量により決定される。また、記録時においても発熱体3の発熱温度は上記で得られた温度を維持する。発熱体3の具体的な例としてはセラミックヒーター等が挙げられる。
【0117】
また、発熱体3の形状は、図12に示すように磁気記録媒体1の内周から外周に渡って径方向に沿ってカバーできるサイズを有する長方形板状が望ましい。この形状およびサイズであれば、情報の記録および再生時に発熱体3が機械的に動く必要がなくなり、装置の小型化、薄型化、低コスト化に寄与できる。
【0118】
さらに、磁気記録媒体1が角速度一定で回転する場合は、発熱体3が磁気記録媒体1の内周から外周にかけて、つまり発熱体3の長手方向に沿って温度勾配を有するように設定されていることは非常に有効となる。それは、このような磁気記録媒体1では、線速度が外周から内周に向かって遅くなり、このため印加する熱量が一定の場合、磁気記録媒体1上の単位面積当りに供給される熱量が変化してしまうからである。
【0119】
具体的には、このような磁気記録媒体1に適用される発熱体3においては、内周側に内かつて発熱温度が低下するように設定されていることが望ましい。これにより、磁気記録媒体1上の記録および再生する領域が内周から外周へ、または外周から内周へと移動しても、迅速に第1の加熱領域18の到達温度を設定することができる。
【0120】
〔実施の形態4〕
図14と図15を用いて本発明の実施の形態4を説明する。本実施の形態4では複合ヘッド27を使用して情報の記録および再生を行っている。複合ヘッド27は、実施の形態1、2、および3で説明した再生磁気ヘッド2と光照射装置7の両方の機能を備えたヘッドで光源、磁界発生部、磁界検出部から構成されている。
【0121】
複合ヘッド27では磁気記録媒体1の片面のみで情報の記録および再生を実行できる。これにより、磁気記録媒体1の他方の面は完全にフリーな状態となるため、図14に示すように磁気記録媒体1の全体を覆うようなディスク状の発熱体3を磁気記録媒体1の他方の片面に同心状に設置している。
【0122】
従って、本実施の形態4では磁気記録媒体1の全体が第1の加熱領域18となり、磁気記録媒体1の全体の温度が磁気的補償温度に近い状態となる。発熱体3の発熱制御は上記実施の形態3と同様に実施できる。情報の記録および再生に際しては、複合ヘッド27からの光照射により第2の加熱領域19を読み出し領域として生成して所望の到達温度を得ることができる。
【0123】
また、図15には両面媒体に適用した例を示している。ここでは、2枚の各磁気記録媒体1が発熱体3を中間にして両側から厚さ方向にそれぞれ挟み込む構成となっている。複合ヘッド27はそれぞれの媒体面に1つずつ設置されており、両面同時に記録および再生を実行できる。
【0124】
本構成で使用される磁気記録媒体1は、少なくとも磁気的補償温度が互いに近い特性を有したものであることが望ましい。本実施の形態4のような磁気記録媒体1の全体に渡り発熱体3を設置する方法としては、磁気記録媒体1の裏面に発熱に必要な低抗成分を有する導電性薄膜を被着することで実現できる。
【0125】
【発明の効果】
本発明の熱アシスト記録再生方法は、以上のように、室温より高い磁気的補償温度を有する磁性膜を記録層として備える記録媒体に対し、到達温度が相異なる複数の加熱領域をそれぞれ設定し、一つの加熱領域の記録層において、情報を記録および/または再生する方法である。
【0126】
それゆえ、上記方法では、一つに加熱領域を記録媒体の磁気的補償温度に設定できるので、実際に情報を記録又は再生を行う領域外に設定できる。
【0127】
したがって、上記方法では、記録媒体の特性のバラツキや、動作環境の温度変化が生じても、領域外における不要磁化の発生を抑制することが可能となるので、記録媒体の特性のバラツキや動作環境の温度による影響を回避して信頼性の高い情報の記録および再生が実行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱アシスト記録再生方法における第1の加熱領域、第2の加熱領域、再生磁気ヘッドの検出部、記録トラック、記録ビットのサイズ関係を示す説明図である。
【図2】上記熱アシスト記録再生方法に係る実施の各形態1〜4で使用した磁気記録媒体の残留磁化強度と保磁力の温度特性を示すグラフである。
【図3】上記の実施の各形態1および2に係る、熱アシスト記録再生方法を行うための記録再生装置の構成図である。
【図4】上記の実施の形態1における光照射装置の説明図であり、(a)は詳細な構成図であり、(b)は第1および第2の加熱領域の説明図であり、(c)は第1および第2の加熱領域の温度プロファイルを示す説明図である。
【図5】上記熱アシスト記録再生方法において、再生信号のジッタ値を評価して第1の加熱領域の到達温度を設定する方法における信号処理部の構成図である。
【図6】上記熱アシスト記録再生方法において、再生信号のエラーレートを評価して第1の加熱領域の到達温度を設定する方法における信号処理部の構成図である。
【図7】上記熱アシスト記録再生方法において、第2の加熱領域を生成しないで、再生信号レベルをA/D変換して評価し、第1の加熱領域の到達温度を設定する方法における信号処理部の構成図である。
【図8】上記熱アシスト記録再生方法において、第2の加熱領域を生成しないで、再生信号レベルを基準値とコンパレータにより評価し、第1の加熱領域の到達温度を設定する方法における信号処理部の構成図である。
【図9】上記熱アシスト記録再生方法において、第1の加熱領域の到達温度を設定するために、評価するための再生信号を予め設定した評価領域を有する磁気記録媒体の説明図である。
【図10】上記評価領域を複数設定した磁気記録媒体の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態2における光照射装置の説明図であり、(a)は詳細な構成図であり、(b)は第1および第2の加熱領域の説明図であり、(c)は第1および第2の加熱領域の温度プロファイルを示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態3における発熱体と磁気記録媒体と磁気ヘッドの位置関係の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態3における熱アシスト記録再生方法を行うための記録再生装置の構成図である。
【図14】本発明の実施の形態4における熱アシスト記録再生方法を行うための記録再生装置の構成図である。
【図15】本発明の実施の形態4における両面磁気記録媒体の場合を示す説明図である。
【図16】磁気記録媒体の組成比と磁気的補償温度の依存性を説明する図である。
【符号の説明】
1 磁気記録媒体(記録媒体)
2 再生磁気ヘッド
3 発熱体
4 コントローラ
5 前段処理部
6 信号処理部
7 光照射装置
8 光照射制御部
9 発熱体制御部
10 レーザ
11 コリメータレンズ
12 ビームスプリッター
13 2焦点対物レンズ
14 検出光学系
15 検出器
21 レーザA
22 ホログラム
23 対物レンズ
24 レーザB
25 コリメータレンズ
27 複合ヘッド
28 評価領域
Claims (5)
- 磁気的補償温度が室温より高く設定されている磁性膜を記録層として備える記録媒体に対し、
情報の記録および再生を行う領域の外部領域である第1の加熱領域、ならびに、情報の記録および再生を行う第2の加熱領域をそれぞれ設定し、情報の記録および再生を行い、
記録時には、前記第1の加熱領域の温度を、前記磁気的補償温度まで昇温して、前記第2の加熱領域に影響を及ぼす残留磁化を小さくし、かつ、前記第2の加熱領域の温度を、情報を記録するための外部磁界の強度よりも前記磁性膜の保磁力が小さくなる温度であって、前記磁性膜の残留磁化が極大値になる温度まで昇温し、
再生時には、前記第1の加熱領域の温度を、前記磁気的補償温度まで昇温して、前記第2の加熱領域に影響を及ぼす残留磁化を小さくし、かつ、前記第2の加熱領域の温度を、前記磁性膜の残留磁化が極大値になる温度まで昇温し、
情報の記録時および再生時における、前記第1の加熱領域の昇温および前記第2の加熱領域の昇温を、一つの熱源を用いて、かつ、2焦点対物レンズを用いて行い、
前記記録媒体からの再生信号のジッタ値、エラーレート、信号レベルのうち1つ又は複数を測定して、その測定結果に基づき前記第1の加熱領域の到達温度を設定する熱アシスト記録再生方法であって、
前記記録媒体上には、前記記録媒体と同心円状で互いに半径が異なるように複数の評価領域が設けられ、
前記再生信号は、前記複数の評価領域のうち、再生する領域に近い前記評価領域に記録された情報を再生することによって得られる信号であることを特徴とする熱アシスト記録再生方法。 - 前記第1の加熱領域は前記第2の加熱領域より広い面積を有し、かつ、前記第2の加熱領域は前記第1の加熱領域の内側に形成することを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト記録再生方法。
- 前記第1の加熱領域は、再生磁気ヘッドの記録媒体上における磁界検出可能領域と同じか、又はそれより大きい面積となることを特徴とする請求項2に記載の熱アシスト記録再生方法。
- 記録および再生の待機中に、前記第1の加熱領域の温度を変化させることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の熱アシスト記録再生方法。
- 前記第1の加熱領域を生成する手段として、レーザ光を使用することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の熱アシスト記録再生方法。
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