JP4030637B2 - 表面改質ゴムの製造方法、表面改質ゴムおよびシール材 - Google Patents

表面改質ゴムの製造方法、表面改質ゴムおよびシール材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は表面改質ゴムの製造方法、表面改質ゴムおよびシール材に関し、さらに詳しくはゴム材料が本来有する圧縮永久歪、ゴム弾性、機械的強度、変形追従性を保持しつつ、低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性および耐プラズマ性に優れたゴムが得られるような表面改質ゴムの製造方法、および表面改質ゴムならびに表面改質ゴムから得られたシール材に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ゴム成形体は、例えば、化学機器、半導体製造装置、薬液配管・タンク類、食品製造装置等のシール材として広く用いられている。
【0003】
このようなゴム成形体に低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性を付与する手法としては、下記▲1▼〜▲2▼に示すようなゴム材自体を改質する方法、▲3▼〜▲5▼に示すようなゴム材の表面あるいはその近傍を改質する方法などが知られている。
【0004】
▲1▼ゴム材料にPE、PTFE、POM、ポリエステル等の樹脂粉末を混入する方法(固体潤滑剤添加法)、
▲2▼ゴム材料にPEG、シリコーンオイル、フッ素化オイル等のオイルを混入する方法(ブリード法)、
▲3▼ゴム成形体の表面を樹脂にて被覆する方法(表面被覆法)、
▲4▼ゴム成形体の表面に架橋剤を含浸させ、加熱によりゴム表面近傍での架橋を進行させる方法(架橋剤含浸法)、
▲5▼ゴム成形体の表面から内部に、ゴムと相溶性のあるモノマーを含浸し重合させることにより、その表面近傍を硬化させる方法(表面重合硬化法:特開平4-202239号公報参照)など。
【0005】
これらのうちで上記固体潤滑剤添加法▲1▼では、ゴム成形体の表面にゴム材料に混入されている固体潤滑剤が突出しにくいことなどから、低摩擦性、非粘着性などの機能が充分に発現しない。しかしながら、この固体潤滑剤添加法において、ゴム材表面の上記機能を向上させるために固体潤滑剤をゴム基材に多量に添加すれば、上記機能を向上させることができるとしても、得られるゴム成形体の機械的強度およびゴム弾性が低下し、相手材への追従性が劣るようになる傾向があり、その上圧縮永久歪も大きくなる傾向がある。
【0006】
ブリード法▲2▼では、得られるゴム成形体の機械的強度が小さく、しかもゴム材に混入されているオイルのブリード(滲出)速度が大きく、またそのブリード量に応じてゴム成形体表面の潤滑性が異なったり、ブリード完了後には、急激にゴム成形体の摩擦係数が上昇するなどの現象が見られ、ゴム成形体は、長期間に渡って安定した潤滑性を保持することができない。また、ゴム成形体から滲出したオイルが相手材を汚染したりするという問題点もある。
【0007】
表面被覆法▲3▼では、得られる樹脂被覆成形体を構成しているゴム成形体と表面被覆層との密着性が低下する虞があるため、シール部材として実際に機器に組み込んで動的状態で使用するには不向きであり、また樹脂被覆成形体表面のゴム弾性が低下して相手材への追随性が劣るようになる傾向がある。
【0008】
上記▲1▼〜▲3▼の手法においては、ゴム成形体の表面にその表面エネルギーを低下させ得る物質をゴム材表面に介在・被覆させるかゴム材に配合することにより、低摩擦性、非粘着性などの機能を発現させようとしているのに対して、
架橋剤含浸法▲4▼では、ゴム材表面近傍を架橋処理することにより表面硬度を上昇させ、主に相手面との接触面積を低下させることでその機能を発現させようとしている。しかしながら、この架橋剤含浸法▲4▼では、ゴム成形体表面の組成自体は他の部位と変わらないのでその機能発現レベルは、表面架橋の度合いに依存する。それゆえ、機能発現レベルを上げるべくゴム材表面近傍(表面層)での架橋を進行させるとゴム成形体表面でのクラック発生がさらに進行するとともに、相手面への変形追随性が劣るようになるため、このようなゴム成形体をシール部材として使用した場合には、漏洩につながり易いという問題点がある。
【0009】
特開平4−202239号公報に示されるように、表面重合硬化法▲5▼では、ゴム材に含浸・重合させるモノマーとしては、該ゴム材と相溶性を有するモノマーに限定され、かつ、該モノマーとしては、ゴム網目鎖中へ拡散可能なように(メタ)アクリル酸及びその誘導体など、その分子量が比較的小さなものしか、ゴム材表面近傍に有効に拡散できず、ゴム材とモノマーとの相溶性が乏しければ乏しいほど(溶解度指数が相違するほど)、またモノマーの分子量が大きければ大きいほど、該モノマーをゴム材表面近傍に含浸・拡散させることは困難となり、従って低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性等の機能をゴム成形体表面に効果的に発現させることも困難となる。
【0010】
このため、この表面重合硬化法▲5▼において、もしモノマーとしてシリコン系モノマーやフッ素系モノマーを用いることができれば、ゴム成形体の表面エネルギーは著しく低減でき、低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性、シール性等の機能発現に最も効果的であろうと思われるが、これらのモノマーと殆どのゴムとの組み合わせにおいて相溶性が乏しく、例えば、シリコン系モノマーとHNBR,NBR,SBR,ACM,FKM,CR,CSM,T,CO,ECO,ACM,ANMあるいはUの組み合わせ、およびフッ素系モノマーと、HNBR,NBR,Q,SBR,ACM,CR,CSM,T,CO,ECO,ACM,ANMあるいはUの組み合わせにおいて、相溶性が乏しい。
【0011】
そのため、この表面重合硬化法▲5▼では、シリコン系モノマーやフッ素系モノマーを広範なゴム材の表面近傍に含浸・拡散させ、重合して、低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性等に優れたゴム成形体を得ることができない。しかもこの表面重合硬化法▲5▼では、得られるゴム成形体の表面硬度が上昇すれば、前記架橋剤含浸法▲4▼と同様、その表面に微細クラックが生じやすくなり、また相手面への変形追随性が低下する傾向があり、シール性が低下する虞がある。
【0012】
このように上記した固体潤滑剤添加法▲1▼、ブリード法▲2▼のようなゴム材自身を改質する方法では、ゴム材の表面あるいはその近傍だけを改質することはできず、固体潤滑剤等をゴム材に添加することにより、得られるゴム成形体の機械的強度、圧縮永久歪、ゴム弾性など、ゴム材自体の物性が低下するとの問題点があり、
また表面被覆法▲3▼、架橋剤含浸法▲4▼、表面重合硬化法▲5▼のようなゴム材表面あるいは表面近傍を改質する方法では、得られたゴム成形体の表面近傍が硬化して微細クラックが生じたり、相手面に対する変形追随性が低下するとの問題点があり、さらに、表面被覆法▲3▼では、ゴム材と異なる性質を持つ被覆材は、内部のゴム材との相溶性に欠けるため内部のゴム材の表面に固定化できず、ゴム材と表面被覆層との密着性が乏しくなるとの問題点もある。
【0013】
なお、特許第2536777号(特開平1-301725号公報)には、フッ素ゴムを加硫してフッ素ゴムに二重結合を形成させる工程、前記フッ素ゴム表面に反応性シリコーン樹脂を浸透させる工程、前記浸透せしめた反応性シリコーン樹脂をフッ素ゴムと反応させる工程を含む非粘着性フッ素ゴムの製造方法が開示され、フッ素ゴム表面に反応性シリコーン樹脂を浸透させる工程としては、アセトン等の溶媒に反応性シリコーン樹脂を溶解させてなる反応性シリコーン樹脂溶液へフッ素ゴムを浸漬させる方法が挙げられている。しかしながら、該方法によれば、表面非粘着処理可能なゴムとしては、二重結合が導入されたフッ素ゴムに限定され、表面処理に使用可能な表面改質剤の種類も限定されている。また、この特許(特許第2536777号)では、表面改質剤として反応性シリコーン樹脂を用いている。このシリコーン樹脂は、高分子化合物であるため、ゴム基材を該特許文献に記載されているような溶媒にて膨潤させても、分子量が大きすぎるためゴム表面から内部に含浸させることは困難である。
【0014】
そこで、本発明者らは、この引用特許文献に表面改質剤として記載されているような高分子化合物を含めてゴムの表面改質が期待できそうな種々の高分子化合物を如何にしてゴム表面のみならず、ゴム表面層(ゴム内部)に存在させ、効果的にゴムの表面改質を行うかという課題を解決しようとして鋭意研究を重ねたところ、
この特許文献に記載されているように、高分子化合物をそのまま溶剤とともにゴム内に浸透(含浸)させようとしても困難であるが、モノマーの状態であれば分子量も小さくゴム内に含浸させ易く、また、重合性二重結合がモノマー中に存在すると一般的にポリマーへのモノマーの溶解性が増す傾向にあることなどを見出すと共に、表面改質剤として、高分子化合物を構成する重合性二重結合含有モノマーを溶剤で膨潤されたゴム内に含浸させ、ゴム内で重合させて高分子化させると、ゴム材料が本来有する圧縮永久歪等の特性を保持しつつ、低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性、耐プラズマ性に優れ、耐オゾン性、耐油膨潤性など、用いられるモノマーの構造に起因した機能が発現した表面改質ゴムが得られることなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
ところで、種々の材質からなるゴム成形体のうちで、特にフッ素ゴム系のものは、耐熱性、耐薬品性、耐プラズマ性に優れるとともに、ポリマー自身が安定であり、他のゴム基材に一般的に用いられる老化防止剤等のような、半導体製品等の汚染原因となるような不純物が配合されないため、材料自身の純粋性に優れるという利点があり、液晶・半導体製造装置用、食品工業用等のシール材として用いられている。
【0016】
しかしながら、このフッ素ゴム系成形体は、例えば、装置の開閉部に装着して使用すると、相手材と固着し易いという性質(固着性、粘着性ともいう)があり、装置の開閉作業性に劣るという問題点がある。しかも、この固着性はフッ素ゴム系シール材が高温で用いられるほど顕著に現れる傾向があり、従来のフッ素ゴム系成形体では、常温以上の温度で用いられることも多い上記液晶・半導体製造装置用、食品工業用等のシール材としては、低摩擦性、非粘着性等の点で改良の余地があった。さらに、半導体装置として、近年プラズマ発生装置が用いられるようになっており、真空下に効率よく所望のプラズマを発生させるべく、プラズマ発生装置に代表されるプラズマ処理装置のシール材には、プラズマに対する耐久性が要求されるとともに、チャンバー内等のクリーンな真空状態を維持できるように、シール材自身からガス等を放出しないような性質(低ガス放出性)も求められる。
【0017】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、ゴム材が本来有する強度、圧縮永久歪、シール性、変形追随性等の特性を保持しつつ、非粘着性、低摩擦性、耐摩耗性および耐プラズマ性に優れ、耐オゾン性、耐油性など、用いられるモノマーの構造に起因した機能が発現できるゴム成形体が得られるような表面改質ゴムの製造方法を提供することを目的としている。
【0018】
また本発明は、ゴム材が本来有する強度、圧縮永久歪、シール性、変形追随性等の特性を保持しつつ、非粘着性、低摩擦性、耐摩耗性および耐プラズマ性に優れ、耐オゾン性、耐油性など、用いられるモノマーの構造に起因した機能が発現できる表面改質ゴム、さらにこのような表面改質ゴムを用いたシール材を提供することを目的としている。
【0019】
【発明の概要】
本発明に係る表面改質ゴムの製造方法は、
重合性二重結合含有モノマーと重合開始剤(好ましくはラジカル重合開始剤)と溶剤とを含有する処理液(a)と、ゴム基材(b)とを接触させた後、
得られた接触処理ゴム基材を加熱することにより、該モノマーを重合させ、ゴム基材表面とその近傍を改質することを特徴としている。
本発明の製造方法では、上記処理液とゴム基材とを接触させて、ゴム基材中に重合性二重結合含有モノマーおよび重合開始剤を含浸させた状態で重合性二重結合含有モノマーを重合させることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法では、上記接触処理ゴム基材を、酸素分子の存在量が1.0×1019個/cm3以下、好ましくは5.6×1018個/cm3以下の条件下で加熱することが望ましい。
【0021】
本発明の製造方法では、上記重合性二重結合含有モノマーが、エチレン性不飽和含フッ素化合物類および/またはエチレン性不飽和オルガノシロキサン類であることが好ましく、特に上記重合性二重結合含有モノマーが、エチレン性不飽和オルガノシロキサン類であることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法では、ゴム基材が、フッ素ゴムであることが好ましい。
本発明の製造方法では、上記反応を真空条件下または不活性ガス存在下に行うことが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法では、上記処理液にゴム基材を浸漬することにより、該処理液とゴム基材とを接触させることが好ましい。本発明に係る表面改質ゴムは、上記製造方法で得られることを特徴としている。また、該表面改質ゴムはシール材用に好ましく用いられ、該シール材が液晶・半導体製造装置用であることが好ましく、さらに好ましくは該シール材が液晶・半導体製造におけるプラズマ処理装置用シール材であることが望ましい。
【0024】
このような本発明によれば、ゴム材料が本来有するゴム弾性、圧縮永久歪、機械的強度、変形追従性を保持しつつ、低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性および耐プラズマ性に優れ、耐オゾン性、耐油膨潤性(耐油性)など、用いられるモノマーの構造に起因した機能が発現できる表面改質ゴム、および該ゴムを用いたシール材が得られる。
【0025】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る表面改質ゴムの製造方法、表面改質ゴムおよびシール材について具体的に説明する。
【0026】
本発明では、重合性二重結合含有モノマーと重合開始剤(好ましくはラジカル重合開始剤)と溶剤とを含有する処理液(a)と、ゴム基材(b)とを接触させた後、得られた接触処理ゴム基材を加熱することにより、該モノマーを重合させ、ゴム基材表面とゴム基材の内部(特にその表面近傍)の改質を行っている。
【0027】
重合性二重結合含有モノマーとラジカル重合開始剤と溶剤とを含有する処理液(a)についてまず初めに説明する。
[処理液(a)]
<重合性二重結合含有モノマー>
この処理液(a)に含まれる上記重合性二重結合含有モノマーは、分子骨格中に1つ以上の重合反応性二重結合を有するモノマーであり、このような重合性二重結合含有モノマーとしては、(i)エチレン性不飽和含フッ素化合物類と、(ii)エチレン性不飽和オルガノシロキサン類が挙げられ、本発明では(i)または(ii)のいずれか一方を単独で用いてもよく、(i)と(ii)の両方を併用してもよい。
【0028】
このエチレン性不飽和含フッ素化合物類およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類は、低摩擦・非粘着性・耐プラズマ性をゴム成形体に付与する部位とモノマー含浸後の加熱処理時に化学反応性を示す部位とを有するモノマーあるいはマクロモノマーであって、ゴム基材を、このような成分(i)及び/または(ii)が含まれた処理液(a) で含浸処理し、加熱処理することにより、耐摩耗性、低摩擦性、非粘着性および耐プラズマ性に優れたゴム成形体を製造することができる。ここで、マクロモノマーとは、通常、その分子量が数百〜数万程度であり、重合性官能基を有し、モノマーとみなし得る化合物をいう。なお、このような重合性二重結合含有モノマーは、単独で広範なゴム基材に含浸させようとしても、分子量が大きかったり、一般にゴム基材との相溶性が乏しかったりするために、ゴム基材中に含浸させることができないが、本発明では、該モノマーと重合開始剤と、これらの両者に対して相溶性のある溶剤とを一緒にした処理液(a)を用いてゴム基材(b)を処理しているので、ゴム基材に良好にこれら成分を含浸させることができ、上記のような優れたゴム成形体を得ることができる。
【0029】
特に、ゴム成形体が、液晶・半導体製造装置用シール材、プラズマ処理装置用等の耐プラズマ性、とりわけ、ガスの種類が酸素および酸素を含むガスを使用した場合の耐プラズマ性が要求されるシール材、食品工業用シール材である場合には、上記重合性二重結合含有モノマーがエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)あるいはエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)であることが好ましい。
【0030】
エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)は、低摩擦・非粘着性をゴム成形体に付与せしめる(ポリ)フルオロアルキル、(ポリ)フルオロアルキレン、(ポリ)フルオロエーテル等から選ばれる少なくとも一種類を分子骨格中に保有している。一般にフッ素系ポリマー自身、炭化水素系ゴムと比較してプラズマに侵され難い性質(耐プラズマ性)を有している。すなわち、フッ素ゴム以外の一般の合成ゴム(例:NBR、SBR、EPDM等)をゴム基材にして、エチレン性不飽和含フッ素化合物類を用いた処理を施せば、用いたそのゴム基材に対して耐プラズマ性を向上させることが可能となる。また、エチレン性不飽和含フッ素化合物類と比較してエチレン性不飽和オルガノシロキサン類を用いた場合のメリットは、耐酸素プラズマ性が良好な点にある。
【0031】
エチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)は、低摩擦・非粘着性・耐プラズマ性をゴム基材に付与せしめるジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、トリメチルフルオロプロピルシロキサン等のオルガノシロキサンの単独重合体または共重合体から誘導される。この単独重合体または共重合体から誘導される部位には、長鎖アルキル基、フロロアルキル基、アルキレンオキシド基等が付加して変性されていてもよい。また、上記オルガノシロキサンの単独重合体または共重合体から誘導される部位に、アルキレンオキシド、シルフェニレン、シルエチレン、スチレン等の重合性モノマーを共重合させ、あるいはポリカーボネート、ナイロン、ポリウレタン等のポリマーを結合させることにより、上記オルガノシロキサンの単独重合体または共重合体から誘導される部位が変性されていてもよい。
【0032】
上記エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)には、化学反応性を示す、ビニル基、ビニリデン基、イソプロペニル基、メタクリロキシプロピル基等のエチレン結合(C=C)を有する官能基が存在している。
【0033】
このエチレン結合を有する官能基は、エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)の片末端あるいは両末端に存在していてもよく、また側鎖(ブランチ)に存在していてもよい。また、エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)およびエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)中に存在するエチレン結合の個数は、1個以上であれば特に限定されない。
【0034】
エチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)としては、
▲1▼(メタ)アクリル酸と炭素数が1〜20、好ましくは2〜15、さらに好ましくは8〜15程度の含フッ素アルコールとのエステル[但し、該含フッ素アルコールには、炭素数1〜5程度の低級アルキル基、−OH基などからなる分岐を有していてもよく、該アルコール中の主鎖炭素原子は、「−SO2N(R)−」などで置換されていてもよく、該「−SO2N(R)−」中のRは、水素原子または炭素数1〜10程度のアルキル基を示す。]、
▲2▼エチレン性二重結合を1〜5個程度含有する、上記▲1▼エステル以外の含フッ素不飽和炭化水素系化合物などが挙げられる。
【0035】
このようなエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)の分子量は、通常、100〜10000(1万)、好ましくは150〜5000、さらに好ましくは200〜1000程度である。
【0036】
このようなエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)としては、例えば下記表1〜5に示す化合物番号(i-1) 〜(i-54)の化合物が挙げられ、このうち化合物番号(i-1)〜(i-8)の化合物は▲2▼に包含され、それ以外は▲1▼に包含される。
【0037】
このような表1〜5に示すエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)の中では、上記▲1▼[(メタ)アクリル酸と含フッ素アルコールとのエステル]が好ましく、さらには、化合物番号(i-11)〜(i-14)、(i-24)〜(i-27)、(i-30)、(i-34)、(i-36)、(i-38)、(i-40)、(i-47)〜(i-50)、(i-53)、(i-54)の化合物が好ましく用いられる。これらの含フッ素化合物類は、1種または2種以上組合せて用いることができる。なお、以下の表中Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004030637
【0039】
【表2】
Figure 0004030637
【0040】
【表3】
Figure 0004030637
【0041】
【表4】
Figure 0004030637
【0042】
【表5】
Figure 0004030637
【0043】
エチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)としては、例えば下記表6〜10に示す化合物番号(ii-1)〜(ii-17) の化合物が挙げられる。このエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)は、上述のようにビニル基、イソプロペニル基、メタクリロキシ基等のエチレン結合(C=C)を有する官能基が存在している。
【0044】
このような(ii-1)〜(ii-17) の化合物のうち、(ii-1)〜(ii-7)の化合物は、両末端にビニル基またはイソプロペニル基を有するエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)であり、
(ii-8)〜(ii-13) の化合物は、片末端にビニル基またはイソプロペニル基を有するエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)であり、
(ii-14) 〜(ii-17) の化合物は、側鎖にビニル基またはイソプロペニル基を有するエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)である。
【0045】
これら(ii-1)〜(ii-17) の化合物の中では、両末端にビニル基を有する(ii-1)〜(ii-3)、両末端にイソプレニル基を有する(ii-7)、片末端にイソプロペニル基を有する(ii-10) 〜(ii-11) の化合物が好ましく用いられる。
【0046】
このようなエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)の分子量は、通常100〜10万、好ましくは200〜5万であり、さらに好ましくは250〜2万5千である。
【0047】
またエチレン性不飽和オルガノシロキサン類(ii)の粘度(25℃で測定)は、通常1〜2万cst、好ましくは2〜1万5千cstであり、さらに好ましくは3〜5千cstである。
【0048】
これらのオルガノシロキサン類は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
【表6】
Figure 0004030637
【0050】
【表7】
Figure 0004030637
【0051】
【表8】
Figure 0004030637
【0052】
【表9】
Figure 0004030637
【0053】
【表10】
Figure 0004030637
【0054】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤など、従来より公知の種々のものを使用しうるが、本発明では、ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0055】
ラジカル重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物、アゾ化合物、有機金属化合物、金属等が挙げられる。上記無機または有機の過酸化物としては、例えば、3,5,6−トリクロロパーフロロヘキサノイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられ、金属としては、例えば、Li、K、Na、Mg、Zn、Hg、Al等が挙げられる。これらのうち、有機過酸化物が好ましく用いられる。
【0056】
このような有機過酸化物として、具体的には、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラクロルベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート等を挙げることができる。
【0057】
これらの内では、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンが好ましく用いられる。
【0058】
また、これらの有機過酸化物は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
<溶剤>
溶剤としては、重合性二重結合含有モノマーおよび重合開始剤を溶解させることができ、ゴム基材を膨潤させることが可能であれば、ゴム基材との相溶性の乏しい1種の重合性二重結合含有モノマーあるいは2種以上の重合性二重結合含有モノマーの混合物であってもゴム基材内へ容易に含浸(浸入)・拡散させることができるため特に限定されず、広く使用可能である。
【0059】
このように本発明では溶剤としては、溶解しうる重合性二重結合含有モノマー量の多少(溶解性の大小)、ゴム基材の膨潤度の大小などに関係なく上記機能を発揮しうる限り使用できるが、重合性二重結合含有モノマーの溶解度およびゴム基材の膨潤度の大きい溶剤が好ましい。
【0060】
例えば、本発明で好ましく用いられる溶剤としては、溶剤100重量部に対して、20℃において、重合性二重結合含有モノマーを通常0.005重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上の量で溶解しうるものが好ましい。
【0061】
本発明で使用可能な溶剤としては、具体的には、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)等のケトン類;
ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、THF(テトラヒドロフラン)、ベンゼン、リグロイン、イソパラフィン等の脂肪族・芳香族炭化水素類;
クロロトリフルオロメタン(CClF3 )、CClF2−CF3 等のフロン類(ハロゲン化炭化水素類);
イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール類;
水;
ジオキサン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;が挙げられる。これらの溶剤は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよく、用いられるゴム基材に応じて適時選定される。
【0062】
また、該溶剤は最終的にゴム基材外に蒸発等により留去されれば、その留去される時期は該モノマーの反応中でも反応後でもいつでも良い。ただし、該溶剤が、ゴム基材表面あるいは内部においてなんらかの結合に関与する場合においては、留去されなくともよい。
【0063】
なお、該処理液(a)には、さらにメチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが含まれていてもよく、このような処理液を使用することにより、相手材によっては、得られるゴム成形体の低摩擦性、非粘着性をいっそう高めることができる。
【0064】
特にゴム基材が、後述するようなフッ素ゴム(FKM系ゴム)である場合は、該処理液(a)にメチルハイドロジェンシリコーンオイルが含まれていると、相手材がとりわけアルミやSUSの場合に、表面改質ゴムの非粘着性がより優れるので好ましい。
【0065】
本発明では、上記処理液(a)中には、重合性二重結合含有モノマーは、溶剤100重量部に対して、通常0.1〜10000重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは1〜50重量部の濃度範囲で、
重合開始剤、特にラジカル重合開始剤は、溶剤100重量部に対して、通常0.01〜10000重量部、好ましくは0.1〜1000重量部、さらに好ましくは0.5〜100重量部の濃度範囲で用いられることが望ましい。
【0066】
この重合性二重結合含有モノマー濃度が、溶剤100重量部に対して0.1重量部未満であると、処理をするゴム基材の表面での該モノマー存在量が少なくなりすぎ、10000重量部を超えると溶剤によるゴム基材の膨潤効果が薄れるため該モノマーを有効にゴム表面とその近傍(すなわちゴム基材内部)へ含浸、拡散できなくなる傾向がある。
【0067】
また、重合開始剤濃度が、溶剤100重量部に対して0.01重量部未満ではラジカル生成濃度が少なすぎてゴム基材表面とその近傍において該モノマーを重合反応させ、生じたポリマーを有効にゴム基材表面あるいはゴム基材表面近傍(内部)のゴム分子鎖中に固定化させることができなくなり、10000重量部を超えるとゴム表面とその近傍での重合開始剤に基づく成分の存在量が多くなりすぎてモノマーの化学構造例えば、シロキン結合に起因する部分の粘着性低減効果が小さくなると同時に、本来、モノマーを重合反応させゴム基材に固定化(反応・固定化ともいう)させる役割で用いられている重合開始剤が、その濃度増大に伴いゴム表面付近の架橋反応に消費される量が増えてくるため、ゴム表面付近のクラックに結びつきシール性に悪影響をもたらす傾向がある。いずれにおいても上記範囲を外れると低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性発現効果が著しく損なわれる傾向がある。
【0068】
なお、本発明においては、重合性二重結合含有モノマーと重合開始剤と溶剤とを含有する上記処理液とゴム基材とを接触させて、ゴム基材中に重合性二重結合含有モノマーおよび重合開始剤を含浸(浸入)させた状態で重合性二重結合含有モノマーを重合させると、上記のようにゴム基材表面あるいはその近傍(すなわちゴム基材内部)は改質されるが、そのメカニズムは明かでない。恐らくは、ゴム基材表面あるいはゴム基材内部で、重合性二重結合含有モノマーが重合開始剤によって重合反応を開始されてポリマーを生じ、このポリマーがゴム基材を構成しているゴム分子鎖あるいはゴム分子網目に一部絡み合うことによりゴム基材に固定化され、場合によっては、一部の重合性二重結合含有モノマーあるいは一部の上記ポリマーとゴム基材との反応も生じて、上記モノマーあるいはポリマーはゴム基材に固定化され、ゴム基材の表面あるいはその近傍の改質が行われるのであろうと推測される。
【0069】
なお、必要により配合されるメチルハイドロジェンシリコーンオイルは、溶剤100重量部に対して0〜10000重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは0〜50重量部の濃度範囲で用いられる。
【0070】
<ゴム基材>
本発明で用いられるゴム基材(b)としては、材質、形状、寸法など特に限定されず、従来より公知の種々のものを用いることができる。
【0071】
ゴム基材の材質としては、例えば、NBR,HNBR,SBR,ACM,U,FKM,Q,CR,NR,IIR,BR等を挙げることができる。これらのゴム基材のうち、ゴム基材がパーオキサイド架橋可能なゴム基材であると、より有効に該モノマーを重合させゴム基材中に固定化させることができて、非粘着性、低摩擦性、耐摩耗性、耐プラズマ性などの機能を発現させることができるので好ましい。
【0072】
本発明では、ゴム基材がパーオキサイド架橋可能なゴム基材であると、該モノマーが重合するだけでなく、該モノマーがゴム基材中のゴム分子鎖にグラフトおよび/またはゴム分子鎖間の橋架けを行うラジカル反応を起こすために、ゴム基材表面あるいはその近傍に耐摩耗性、低摩擦性、非粘着性、耐プラズマ性などの機能発現に、より効果的であるものと推測される。
【0073】
また、本発明では上記パーオキサイド架橋可能なゴム基材が、フッ素ゴム(FKM)であると、非粘着性、耐摩耗性、圧縮永久歪等がより向上するので特に好ましい。
【0074】
このようなフッ素ゴム(FKM)としては、具体的には、
▲1▼熱可塑性フッ素ゴム;
▲2▼テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体;
▲3▼テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体;
▲4▼フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/トリフルオロクロロエチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン系共重合体等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム;
▲5▼フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体等の3元系のフッ化ビニリデン系ゴム;
などを挙げることができる。なお、上記熱可塑性フッ素ゴム▲1▼は、放射線架橋等の架橋処理がされていてもよい。また、上記テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体▲2▼も同様に放射線架橋等の架橋処理がされていてもよく、このような放射線架橋品としては、例えば、デュポン社製の「カルレッツ」、ダイキン工業製の「パーフロ」等が挙げられる。
【0075】
本発明において、熱可塑性フッ素ゴムとは、エラストマー性ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性ポリマー鎖セグメントとを含み、かつこれらのセグメントのうち少なくとも一方が含フッ素ポリマー鎖セグメントであるものであって、室温付近の温度では、エラストマー性ポリマー鎖セグメントが何らかの形でその塑性変形が阻止されているためゴム弾性を示すが、温度が上昇して非エラストマー性ポリマー鎖セグメントより形成される硬質ブロックが軟らかくなると塑性変形を示すものをいう。
【0076】
このような熱可塑性フッ素ゴムのうちでは、エラストマ−性ポリマー鎖セグメント(i)と非エラストマー性ポリマー鎖セグメント(ii)との比率は、重量比((i)/(ii))で40〜95/60〜5、好ましくは70〜90/30〜10(但し、(i)+(ii)=100重量部とする)であることが望ましい。
【0077】
この熱可塑性フッ素ゴムの具体的構造は、上記のエラストマー性ポリマー鎖セグメント(i)と非エラストマー性ポリマー鎖セグメント(ii)とからなる連鎖と、この連鎖の一端に存在するヨウ素原子と、該連鎖の他端に存在するアイオダイド化合物から少なくとも1個のヨウ素原子を除いた残基とからなっている。
【0078】
エラストマー性ポリマー鎖セグメント(i)は、
(1):フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンまたはペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン(モル比40〜90/5〜50/0〜35)の共重合体、あるいは
(2):パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン(モル比15〜75/0〜85/0〜85)の共重合体であって、分子量は、30,000(3万)〜1,200,000(120万)である。
【0079】
また非エラストマー性ポリマー鎖セグメント(ii)は、
(3):フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン(モル比0〜100/0〜100)の共重合体、あるいは
(4):エチレン/テトラフルオロエチレン/[ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン-1、2-トリフルオロメチル-3,3,3−トリフルオロプロピレン-1またはパーフルオロアルキルビニルエーテル](モル比40〜60/60〜40/0〜30)の共重合体であって、分子量は3,000〜400,000(40万)である。但し、各共重合体における各成分のモル数の総和は何れも100モルとする。このような熱可塑性フッ素ゴムのうちでは、上記(1)のエラストマー性ポリマー鎖セグメントと、(4)の非エラストマー性ポリマー鎖セグメントとからなるものが好ましく用いられる。
【0080】
このような熱可塑性フッ素ゴムに関する詳細は、特開昭53-3495号公報、特公平6-53823号公報に記載されており、このようなエラストマーとしては、例えば、ダイキン工業(株)よりダイエルサーモプラスチックなる商品名で、また日本バルカー工業(株)より「バルフロン クリスタルラバー」なる商品名で発売されているもの(いずれも放電架橋品)が挙げられる。
【0081】
本発明において、フッ素ゴム(FKM)としては、上記▲1▼〜▲5▼のポリマーを含むものであればよく、フッ素ゴムには他のモノマーから誘導される単位が導入されていてもよく、また▲1▼〜▲5▼のポリマーは、変性されていてもよい。また、上記▲1▼〜▲5▼のポリマーを何れか1種または2種以上含むものであってもよい。
【0082】
本発明で用いられるゴム基材の形状としては、例えば、シート状、板状、棒状、リング状、各種の複雑なブロック形状等その用途に応じて任意の形状が挙げられ、特に限定されない。
【0083】
<接触処理>
本発明では、重合性二重結合含有モノマーと重合開始剤(好ましくはラジカル重合開始剤)と溶剤とを含有する上記処理液(a)と、ゴム基材(b)とを接触させている。
【0084】
このような処理液(a)とゴム基材(b)とを接触させる方法としては、該処理液にゴム基材を浸漬してもよく、該処理液をゴム基材に掛けてもよく、スプレー等で吹付てもよく、刷毛等で塗布してもよく、従来より公知の種々の接触方法を採用しうるが、特にゴム基材(b)を上記処理液(a)に浸漬することが好ましい。
【0085】
このように該処理液とゴム基材とを接触させると、該処理液中の溶媒分子のゴム基材中への含浸・拡散がきっかけとなり、該モノマーおよび重合開始剤がゴム基材中へ含浸・拡散し、ゴム基材は次第に膨潤してくる。
【0086】
ゴム基材への該処理液の含浸量、ゴム基材の膨潤量は、用いられる該処理液中のモノマーの種類と分子量、ゴムの種類、ゴムの架橋密度、重合開始剤の種類、溶剤の種類、処理液の濃度、上記処理液とゴム基材との接触時間(浸漬時間)、浸漬温度あるいは、処理液と接触後に加熱処理するまでの保存期間等にもより異なり、一概に決定されない。
【0087】
本発明では、重合性二重結合含有モノマーと重合開始剤と溶剤とをそれぞれ上記のような量で含有する処理液(a)と、ゴム基材(b)とを、例えば、常温すなわち15〜25℃の温度、および常圧(1気圧)下で接触させる場合には、通常0.1秒以上、好ましくは1秒〜1ヶ月間程度、さらに好ましくは1秒〜72時間程度接触させることが望ましく、さらに好ましくはこのような条件下でゴム基材(b)を該処理液(a)に浸漬することが望ましい。
【0088】
また浸漬等の接触処理後、直ちに下記の加熱処理をしてもよいし、1ヶ月程度経過時に下記の加熱処理をしてもよい。本発明では、ゴム基材(b)を処理液(a)に長時間浸漬すれば、平衡に達する前は、時間とともに処理液は、深く浸入するが、平衡膨潤に達すると含浸・拡散は見掛け上止まる。
【0089】
そして該浸漬処理後のゴム基材では、ゴム基材表面と内部に拡散、浸透している処理液(a)中の該モノマーなどが時間経過とともにゴム基材外へブリードしてくるため、拡散・浸透(含浸)されているモノマーが少なくとも完全にブリードアウトしてしまう以前にモノマーを反応に寄与させる必要がある。例えば、ゴム基材表面から内部へのモノマーの反応−固定化層の厚さ(深さ)を大きくしたい場合には、可能な限り早く下記の加熱処理を施し、ラジカル重合反応などの重合反応を起こさせると良い。
【0090】
なお、接触処理後のゴム基材(接触処理ゴム基材)の保存温度を常温よりも低い温度、例えば+10℃〜−210℃の温度にすれば、処理液(a)のブリード(滲出)速度を抑制することが可能である。従って、そのような低温下では、溶剤処理ゴム基材を下記のような加熱処理を行っていない状態で保存することも可能であるため、浸漬処理から加熱処理までの時間は、特に限定されないが、常温、常圧中においては、接触処理後、加熱処理まで上記期間すなわち1秒〜1ヶ月程度保存可能である。
【0091】
<加熱処理>
本発明では、上記処理液(a)で処理したゴム基材(b)(接触処理ゴム基材)を、加熱して、重合開始剤を誘起させ、好ましくはラジカル重合開始剤を分解させることによるラジカル反応を誘起させて、該モノマー同士を重合させ、あるいは該モノマーとゴム基材とを反応させることなどにより、ゴム基材の表面とその内部(特に、処理液(a)の含浸・拡散したゴム基材表面近傍)の改質を行っている。
【0092】
このように接触処理したゴム基材表面あるいは内部の改質を行うには、体積(空間、液体中の何れでもよい)1ml(1cm3)中に存在する酸素分子の個数が好ましくは1.0×1019個以下、さらに好ましくはその酸素分子の個数が5.6×1018個以下/mlの条件(環境)が挙げられ、単位体積当たりに存在する酸素分子の個数が少ないほど、該モノマーを有効に反応・固定化させるために好ましい。
【0093】
なお、通常、大気中の化学成分のうち水蒸気を除いた酸素の容量百分率は、20.93%程度を占めており、0℃,1atm,1mlの大気中には、酸素分子が約5.6×1018個存在している。すなわち、本発明の好ましい態様においては、反応時の圧力条件としては、上記したように例えば大気圧以下の減圧下(その酸素分子の個数が5.6×1018個以下/mlの条件、下記(ロ))が採用できる。
本発明では、上記のような酸素濃度で上記反応を行うには、好ましくは下記(イ)〜(ハ)に示すような方法を採用することができる。
【0094】
(イ)炭酸ガスや不活性ガス(例:窒素ガス、ヘリウムガス)気流中あるいは、これらガスによりガス置換された条件(環境)下で反応を行う方法。
なお、ここでいうガスとしては、上記ラジカル反応等の重合反応を阻害しないガス(気体)であれば種類を問わないが、上記した炭酸ガス、窒素ガス、ヘリウムガス等のガス(気体)が好ましく用いられる。
【0095】
(ロ)真空ポンプ、吸引ポンプ等を用いて真空引きをし、大気圧以下に減圧した条件下で上記反応を行う方法。
(ハ)オイルや溶剤等の液体中で反応させ、あるいはこれらの液体をゴム基材の表面に塗布して加熱下に上記ラジカル反応をさせるなど、反応部位での酸素濃度を大気中よりも低くした条件下に上記反応を行う方法。
【0096】
上記した方法は、1種単独でも2種類以上組み合わせてもよく、また、上記した方法(環境)以外でも、空間1ml中に存在する酸素分子の個数が1.0×1019個以下好ましくは5.6×1018個以下の環境下である限り、特に限定されない。
【0097】
本発明では、上記条件下での加熱処理は、ゴム基材内に含浸し、浸透・拡散している重合性二重結合含有モノマーをラジカル反応などにて重合させ、ゴム基材表面あるいは内部に固定化しうる限り特に限定されないが、通常、35〜400℃の温度で、通常1秒間〜720時間、好ましくは50〜350℃の温度で1秒間〜72時間程度行われる。
【0098】
このように加熱処理すると、ゴム基材内に含浸し、浸透・拡散している重合性二重結合含有モノマーは、加熱分解されたラジカル重合開始剤によってラジカル反応などを起こして重合し、ゴム基材内、ゴム基材表面に固定化される。なお、加熱処理温度を上記範囲で上昇させてもモノマーブリード速度があまり増加せず、重合反応速度がこれに比して著しく増加する場合には、より高温例えば、100〜300℃の温度でゴム基材を加熱処理して、ゴム基材の深くまで改質できる。
【0099】
なお、前述したように、同一の処理液(a)を用いても、該処理液(a)中の重合性二重結合含有モノマーが反応固定化される深さ、すなわちゴム基材表面から内部方向の距離は、該処理液(a)の濃度、該処理液(a)への浸漬時間、反応速度、該モノマーのゴム基材外へのブリード速度等により決定されるため、これら諸因子を適宜コントロールすることにより、その処理の深さ、換言すれば、該モノマーが重合反応し固定化される層(反応固定化層)の厚みを調整できる。例えば、ゴム基材の改質処理をゴム基材深くまで行うためには、ゴム基材(b)を処理液(a)に長時間浸漬し、浸漬後は、可能な限り早く加熱処理を施し、ラジカル反応等の重合反応をさせると良い。なお、加熱処理温度を上昇させた場合に、温度上昇によるモノマーブリード速度の増加よりラジカル反応速度の増加が著しい系においては、その温度を上げることでゴム基材深部まで改質処理を進めることができる。
【0100】
なお、このような改質処理の結果、明確に改質処理されていると判断しうる部分の深さ(厚み)は、例えば、ゴム基材がHNBR系ゴムである場合は、アセトン100重量部に対して、メタクリル変性シリコーンオイル(2種以上の場合は合計量)5〜20重量部、ジクミルペルオキシド0.5〜3重量部からなる処理液に、厚さ2mm程度のHNBR系ゴム基材を1〜4分間程度浸漬した後、170℃で3時間程度真空加熱処理すると、通常HNBR表面より600μm以下程度になる。また、ゴム基材がFKM系ゴムである場合は、アセトン100重量部に対してメタクリル変性シリコーンオイル5〜25重量部、ジクミルペルオキシド0.5〜3重量部からなる処理液に、厚さ2mm程度のFKM系ゴム基材を1〜10分間程度浸漬した後、170℃で3時間程度真空加熱処理した場合には、明確に改質処理されていると判断しうる部分の深さ(厚み)は通常、FKM表面より1000nm(ナノメータ)程度になる。
【0101】
<シール材>
本発明のシール材は、種々の用途に用いることができ、特定の用途に限られるものではないが、例えば液晶・半導体製造装置用、食品工業用等のシール材として好ましく用いられる。
【0102】
具体的には、半導体製造装置用シール材等としては、
コーターアンドデベロッパー、エッチング装置(プラズマエッチング装置等)、プラズマアッシング(ashing)装置、レジスト剥離装置、洗浄・乾燥装置等のシール材;
酸化・拡散炉、ランプアニール装置等の炉体のシール材;
メタルCVD装置、プラズマCVD装置、LP−CVD装置等のCVD装置、およびスパッタリング装置等のシール材;
各種搬送装置(ウエハ搬送機器の搬送用オーリング(O-ring)または搬送ベルト等);
各種レジスト搬送装置(レジスト搬送容器のキャップシール材等);
各種検査装置群;
等に好ましく用いられ、これらのうち、プラズマエッチング装置、プラズマアッシング装置、プラズマCVD装置およびこれら装置の付属機器であるウエハ搬送機器等の耐プラズマ性が要求される装置類(これらをまとめて「プラズマ処理装置」とも言う)に特に好ましく用いられる。
【0103】
また、液晶製造装置用シール材等としては、具体的には、
スパッタリング装置のシール材;
CVD装置(プラズマCVD、レーザーCVD等)のシール材;
エッチング装置(ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置等)のシール材;
剥離装置のシール材;
酸化・拡散・イオン注入装置のシール材;
蒸着装置(真空蒸着装置、蒸着重合装置等)のシール材;
洗浄装置(ドライ洗浄方式のもの、ウェット洗浄方式のもの)のシール材;
各種検査装置(マスク検査装置、パターン検査装置等)のシール材;
露光装置(プロキシミティ方式のもの、ステッパー方式のもの)のシール材;
アニール装置(ランプアニール装置、エキシマレーザーアニール装置等)のシール材;
各種搬送装置群;
液晶注入装置のシール材;
等が挙げられる。
【0104】
本発明のシール材は、上記以外のその他の用途にも用いられ、例えば、
スピンコーター、ガラスポリシング装置、カラーフィルター電着装置、乾燥装置、レジストベーキング装置、焼成装置、薬液供給装置、封孔装置、イオンドーピング装置、イオンシャワー装置、イオンミキシング装置、レーザーリペア装置等のシール材等としても使用できる。
【0105】
なお、本発明にいう耐プラズマ性は、特定の種類のプラズマに対する耐久性に限定されるものではないが、本発明のシール材は特にシリコーン系のモノマーを用いた場合、酸素プラズマ、および酸素を含有するプラズマに対して耐久性が優れている。
【0106】
このような本発明のシール材を用いたプラズマ処理装置によれば、プラズマが化学的に高活性なことを利用して、半導体を高精度にエッチングしたり、半導体上のレジストをアッシングしたりすることができる。
【0107】
詳説すれば、半導体製造時のこのようなプラズマ処理は、所望のプラズマを効率よく発生させるために、真空条件下で行われることが多い。それゆえ、プラズマ処理装置のシール材には、プラズマに対する耐久性が要求されるとともに、チャンバー等の真空状態を維持し、ウエハー等の製品を汚染しないように、シール材自身からガス等を放出しにくい特性も求められるが、本発明のシール材は、これらの特性を備えておりプラズマ処理装置のシール材として好適であり、上記の低摩擦性、非粘着性等に加えて、化学的に高活性なプラズマの暴露に対する耐プラズマ性が著しく優れている。
【0108】
また、食品工業用等のシール材としては、飲料水配管の継手シール等のように汚染を嫌う部位でのシールで用いられ、とくに温度の上昇等により固着が発生するような使用環境において好ましく用いられる。
【0109】
【発明の効果】
本発明にかかる表面改質ゴムの製造方法によれば、ゴム材料が本来有するゴム弾性、機械的強度、弾性、圧縮永久歪、変形追従性、シール性等の特性を保持しつつ、低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性、耐プラズマ性に優れたゴムが得られる。
【0110】
また本発明に係る表面改質ゴム、および該ゴムを用いたシール材は、上記製造方法によって得られるので低摩擦性、非粘着性、耐摩耗性、耐プラズマ性に優れており、さらに、耐オゾン性、耐油性など、用いられるモノマーの構造に起因した機能も発現可能となっており、このようなシール材は、プラズマ処理装置用、液晶・半導体製造装置用、食品工業用のシール材として好適に用いることができる。
【0111】
本発明では、前記表面重合硬化法、特に特開平4-202239号公報におい ては使用困難とされるような相溶性の異なるモノマーであっても、用いられる溶剤に溶かしうるものであればゴム基材(ゴムの網目)への含浸・拡散が容易に実施でき、使用可能なモノマーは特に限定されない。また本発明では、ゴム基材の表面改質量(ゴム基材表面から内部までの改質の深さ)をコントロールし易い。例えば、モノマーの濃度を薄く調整できるので、改質度合のコントロールが容易にできる。また本発明では、分子量の大きいモノマー例えば、分子量が数百〜数万程度のマクロマーでも、ゴム基材とモノマーとの相溶性の如何に依らず、ゴム基材へ含浸・拡散させることができる。
【0112】
例えば、一般的にゴム基材との相溶性の乏しいモノマーであるフッ素系あるいはシリコン系モノマーであっても、モノマーと溶剤とを含む処理液を用いることによって、モノマーを溶剤と共にゴム基材内へ容易に含浸・拡散させることができ、そのゴム基材内に含浸した該モノマーは、該モノマーと共に含浸している重合開始剤の加熱分解により、ゴム基材表面もしくはその近傍(表面層)へ重合反応して強固に固定化させることが可能となる。なお、上記フッ素系あるいはシリコン系モノマーは、何れか1種であってもよく、また2種以上のフッ素系モノマー、2種以上のシリコン系モノマーであってもよく、またフッ素系モノマーとシリコン系モノマーとの混合物の何れであってもよい。
【0113】
特に、重合開始剤がラジカル重合触媒である場合には、ラジカル重合触媒が加熱分解されるとラジカル反応が誘起されるので、ゴム基材表面もしくはその近傍(表面層)へより強固に反応、固定化させることが可能となる。
【0114】
【実施例】
以下、本発明にかかる表面改質ゴムの製造方法およびシール材について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこのような実施例により何等限定されるものではない。
【0115】
【実施例A1〜A7、B1〜B5、比較例A1〜A2、B1〜B5】
表11〜14に示すような組成の溶液(処理液)を調整し、ゴム成形体をその溶液に所定時間浸漬した後、炭酸ガス気流中または真空電気炉にて加熱処理を行った。なお、組成物の成分組成は、重量部表示である。
【0116】
表11〜12の処理に使用したゴム基材(実施例A1〜A7、比較例A1〜A2)は、水素化ニトリルゴム(HNBR)ベース配合70度品、表13〜14の処理に使用したゴム基材(実施例B1〜B5、比較例B1〜B5)は、フッ素ゴム(FKM)ベース配合65度品を用いた。
【0117】
なお、ゴム成形体の溶液への浸漬時間およびその熱処理条件についても表7〜10に示した。
また得られたゴム成形体について、引張強度、伸び、硬さ等の加硫物性、粘着性、摩擦係数、摩耗量を測定した。
【0118】
その測定結果についても表11〜14に示した。
[表中に使用した原料、試験方法および試験条件等を以下に示す。]
(i)加硫物性
JISK6301に準拠して測定。
(ii)粘着試験
レスカ社製タッキング試験機タックIIを用いて以下の測定条件のもと粘着力を測定した。
【0119】
測定条件:相手材SUSφ5、荷重0.5Kgf/cm2(0.049MPa)、引離し速度600mm/分、温度25℃または150℃、圧締時間1分および10分。
(iii)松原式摩擦、摩耗試験
スラスト式摩擦試験機を用いて、図1に概念的に示すような方法で被測定物(加硫ゴム成形体)の摩擦係数を測定した。すなわち、被測定物(各加硫ゴム成形体)1の上部に付番3で示すリング状の金属SS41をセットし、この加硫ゴム成形体1の下方から上方のリング状金属3に向かって荷重2Kgf/cm2を加えた状態で、速度0.1m/秒の条件のもとにこの加硫ゴム成形体1上の金属リング3を回転させることにより、被測定物の摩擦係数および摩耗量を測定した。
【0120】
摩擦係数測定条件、摩擦係数の算出法、摩耗量の算出法を以下に示す。
[摩擦係数測定条件]
機種:スラスト式摩擦磨耗試験機TT100C型(三井造船(株)製)
金属リング材質:SS41、 Rmax2μm程度
面圧:0.196MPa(*ただし、FKMベースの試料を用いる場合は、0.098MPa)
速度:0.1m/s(*ただし、FKMベースの試料を用いる場合は、0.05m/s)
摺動距離:5km(時間:13.889hr)
(*ただし、FKMベースの試料を用いる場合は、720m(時間:2hr))
[摩擦係数の算出法]
単位時間に得られる摩擦係数の値は、摺動時間とともに経時変化するため、摩擦係数の平均値として求める。
[摩耗量の算出法]
上記した摩擦係数測定前後の試料の重量変化より摩耗量を算出した。
(iv) ボール圧子摩擦試験
ヘイドン表面性試験機 TYPE:HEIDON−14D(新東科学株式会社製)を用い、ボール圧子(SUS φ6)法により被測定物(加硫ゴム成形体)の摩擦係数を測定した。図2に本試験の原理図を示す。
【0121】
このヘイドン表面性試験機では、図2に示すように垂直荷重用分銅が支持部材を介してSUS製ボール上に取付られており、このSUS製ボールをゴムシート上に垂直荷重用分銅(200g)の重さで押し付ける。そして、ゴムシートを紙面に向かって右方向に移動させるときに生じる摩擦力を計測する。
【0122】
該試験機でのその他の測定条件を以下に記す。
測定治具;ボール圧子(SUS φ6)
試料サイズ;100×150×2tmm以上のゴムシート(最大240×110×8tmm)
試験荷重;200g(垂直荷重用分銅)
試験速度;0.0005m/s、0.005m/s
雰囲気;23℃±2、 50%±10RH(空調範囲内 結露無きこと)
[表中に使用した原料の説明]
1.アセトン:試薬特級
2.フッ素系モノマー:パーフロロアルキルアクリレート[2−(Nエチルパーフロロオクタスルホアミド)エチルアクリレート]。
3.変性シリコーンモノマー
(3aタイプ).
両末端メタクリル変性シリコーンオイル、粘度58cs(25℃)、
比重0.98、屈折率1.410、官能基当量1630g/mol
(3bタイプ).
両末端メタクリル変性シリコーンオイル、粘度94cs(25℃)、
比重0.98、屈折率1.408、官能基当量2370g/mol
(3cタイプ).
片末端メタクリル変性シリコーンオイル、粘度5cs(25℃)、
比重0.93、屈折率1.418、官能基当量420g/mol
4.メチルハイドロジェンシリコーンオイル、粘度30cSt(25℃)、
比重1.00、屈折率1.396
5.ジクミルペルオキシド、純度97%、分子量 290。
【0123】
【表11】
Figure 0004030637
【0124】
【表12】
Figure 0004030637
【0125】
【表13】
Figure 0004030637
【0126】
【表14】
Figure 0004030637
【0127】
【実施例C1〜C2、比較例C1〜C3】
表15に示すような組成の溶液(処理液)を調整し、ゴム成形体(フッ素ゴム成形体)をその溶液に所定時間浸漬した後、真空電気炉にて加熱処理を行った。
【0128】
表15の処理に使用したゴム基材(実施例C1〜C2、比較例C1〜C3)はフッ素ゴム(FKM)ベース配合65度品であり、以下の物性値を有する。
なお、比較例C2では、処理液に浸漬する前に予めアセトンに浸漬して乾燥したゴム基材を用いた。
【0129】
ゴム基材の物性値:
エラストマー性ポリマー鎖セグメント(i)が、(イ)フッ化ビニリデン/(ロ)ヘキサフルオロプロピレン/(ハ)テトラフルオロエチレンからなり、そのモル比((イ)/(ロ)/(ハ))が40〜90/5〜50/0〜35(合計100モル)であり、分子量が3万〜120万であり、
非エラストマー性ポリマー鎖セグメント(ii)が、(チ)エチレン/(リ)テトラフルオロエチレン/(ヌ)ヘキサフルオロプロピレンからなり、そのモル比((チ)/(リ)/(ヌ))が40〜60/60〜40/0〜30(合計100モル)であり、分子量が3万〜40万であり、両セグメントの重量比((i)/(ii))が40〜95/60〜5(合計100重量部)のもの,ダイキン工業社製,商品名:ダイエルサーモプラスチックT530。
【0130】
なお、ゴム成形体の溶液への浸漬時間およびその熱処理条件についても表15に示した。
また得られたゴム成形体について、引張強度、伸び、硬さ、耐薬品性等の加硫物性、固着量、耐酸素プラズマ性、純粋性(低ガス放出特性)を測定した。その測定結果についても表15に示した。
【0131】
[表中に使用した原料、試験方法および試験条件等]
(i)加硫物性
JISK6301に準拠して測定。
(ii) 固着力
図3(a)に示すように、相手材(アルミ板)の上に金線を置き、この金線の一 部を跨ぐようにして試料(ゴム成形体)を載せ、次いで図3(b)に示すように圧 縮治具で試料を金線ごと下記に示す条件下に圧縮した。次に、圧縮を解除してそのまま2時間放冷した。次いで図3(c)に示すように金線を荷重計に引っ掛け、 相手材のアルミ板を下方に移動させたときに、相手材から試料が引き剥がされるのに要する力の最大値を測定し、これを固着力とした。
固着力の評価は、5段階で行い、固着力が小さいものから大きくなる順に1〜5として評価した。
【0132】
<固着力測定条件>
相手材;アルミ(A5052)φ3.5×50mm
圧縮時間;72時間、圧縮温度;150℃、引張速度;100mm/min(iii) 耐プラズマ性
SAMCO社製PLASMA DEPOSITION MODEL PD−2を用いて以下の条件で酸素プラズマを照射し、プラズマ照射後の試料の重量減少率を測定して、耐プラズマ性を評価した。
耐プラズマ性の評価は、5段階で行い、耐プラズマ性が小さいものから大きくなる順に1〜5として評価した。
【0133】
測定条件:
試料;10mm×10mm×2mmt、照射時間;120分、
導入ガス;O2 、流量;10ml/min、真空度;0.75Torr
RF出力;67W
(iv) 純粋性(ガス放出性)
純粋性(ガス放出性)は、試料からの放出ガス量、および放出ガスのマススペクトルを測定して評価した。
【0134】
測定試料を、測定室(チャンバー)内に、常温(25±3℃)、真空下10-8Torrオーダーで50時間載置し、測定室(チャンバー)内の分圧の変化を電離真空計で測定し、放出ガス量を求めた。評価は5段階で行い、放出ガス量が少ないものから多くなる順に1〜5として評価した。
【0135】
評価基準は以下のとおり。
1・・・・50時間後の放出ガス量が1×10-5程度とし、5・・・・50時間後の放出ガス量が1×10-3程度とし、5段階に区切った。
【0136】
さらにこの放出ガス量の内、チャンバーからの放出ガス量を差し引いたものを試料からの放出ガス量とし、試料からの放出ガス量のマススペクトルを四重極型質量分析計で測定した。これらの測定条件を以下に示す。
【0137】
<質量分析計での測定条件>
質量数;1〜200、イオン電流値;1×105〜1×1010A、
走査速度;0.5s/amu、印加電圧;2.0kV
【0138】
【表15】
Figure 0004030637

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例、比較例で用いられる摩擦摩耗試験機(松原式摩擦摩耗試験機の原理説明図である。
【図2】図2は、本発明の実施例において摩擦係数を測定するためのヘイドン表面性試験機の原理説明図である。
【図3】図3は、本発明において用いられる固着力測定装置を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・被測定物(各加硫ゴム成形体)
3・・・・リング状の金属(SS41)

Claims (10)

  1. 重合性二重結合含有モノマーとしてのエチレン性不飽和オルガノシロキサン類と重合開始剤と溶剤とを含有する処理液と、ゴム基材としてのパーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとを接触させた後、得られた接触処理ゴム基材を加熱することにより、該モノマーを重合させ、ゴム基材表面とその近傍を改質することを特徴とする液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  2. 上記処理液とゴム基材とを接触させて、ゴム基材中に重合性二重結合含有モノマーおよび重合開始剤を含浸させた状態で重合性二重結合含有モノマーを重合させることを特徴とする請求項1に記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  3. 上記重合開始剤が、ラジカル重合開始剤である請求項1または2に記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  4. 上記接触処理ゴム基材を、酸素分子の存在量が1.0×1019個/cm3以下の条件下で加熱する請求項1〜3の何れかに記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  5. 上記接触処理ゴム基材を、酸素分子の存在量が5.6×1018個/cm3以下の条件下で加熱する請求項1〜4の何れかに記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  6. 上記反応を、真空条件下または不活性ガス存在下に行うことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  7. 上記処理液には、さらにメチルハイドロジェンシリコーンオイルが含有されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  8. 上記処理液にゴム基材を浸漬することにより、該処理液とゴム基材とを接触させることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液晶・半導体製造装置用シール材の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れかの方法で得られることを特徴とする液晶・半導体製造装置用シール材。
  10. 請求項1〜8の何れかの方法で得られることを特徴とする、液晶・半導体製造におけるプラズマ処理装置用シール材。
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