JP2002363447A - 非粘着性エラストマー成形体の製造方法、得られた非粘着性エラストマー成形体並びにその用途 - Google Patents

非粘着性エラストマー成形体の製造方法、得られた非粘着性エラストマー成形体並びにその用途

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JP2002363447A
JP2002363447A JP2001172774A JP2001172774A JP2002363447A JP 2002363447 A JP2002363447 A JP 2002363447A JP 2001172774 A JP2001172774 A JP 2001172774A JP 2001172774 A JP2001172774 A JP 2001172774A JP 2002363447 A JP2002363447 A JP 2002363447A
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silicone
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JP2001172774A
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English (en)
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Masayuki Toki
岐 真 之 土
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Nippon Valqua Industries Ltd
Nihon Valqua Kogyo KK
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Nippon Valqua Industries Ltd
Nihon Valqua Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】ゴム材が本来有する強度、圧縮永久歪、シール
性、変形追随性等の特性を保持しつつ非粘着性、耐プラ
ズマ性等のバランスが良い非粘着性シリコーン系エラス
トマー成形体の製造方法の提供 【解決手段】重合性官能基を分子中に1個のみ含有する
フッ素系モノマーと重合開始剤と溶剤とを含有する処理
液(a)と、シリコーン系またはフッ素系エラストマー
基材とを接触させた後、得られた接触処理エラストマー
基材を減圧下で加熱することにより該モノマーを重合さ
せ、該基材表面とその近傍を改質する。上記処理液
(a)が非粘着性シリコーン系エラストマー成形体製造
用の場合、さらに重合性官能基含有炭化水素系モノマー
を含有することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、非粘着性エラストマー成
形体の製造方法、得られた非粘着性エラストマー成形体
並びにその用途に関し、さらに詳しくはゴム材料が本来
有する圧縮永久歪、ゴム弾性、機械的強度、変形追従性
を保持しつつ、非粘着性、耐プラズマ性などにバランス
よく優れたゴムが得られるような非粘着性エラストマー
成形体の製造方法、非粘着性エラストマー成形体並びに
その用途に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】ゴム成形体は、例えば、化学機
器、液晶・半導体製造装置(例:プラズマ処理装置な
ど)、薬液配管・タンク類、食品製造装置等のシール材
として広く用いられている。例えば、液晶・半導体製造
工程では、プラズマ処理装置を用いて各種金属、有機物
膜を除去する工程(エッチング、アッシング)が存在す
る。それら装置には、多数のゴム材料がシール材として
用いられているが、照射されたプラズマの影響によりゴ
ム材料の劣化、またゴム材料が劣化して生じたパーティ
クルによるプラズマ処理装置内の汚染あるいは、ゴム材
料の劣化による真空保持能力の低下等が大きな問題とな
っている。
【0003】また、近年の半導体産業の成長にともな
い、プラズマ処理装置等の生産能力は益々高められてお
り、該装置のメンテナンス間隔を延ばし、かつ短時間の
メンテナンスで済むようにする「メンテナンス性」の向
上も求められている。しかしながら、特にプラズマ発生
部分近傍で使用されているシール用ゴム材料は、相手材
である石英ベルジャーもしくはアルミやSUS等の金属部
材などに対する強固な固着現象を引き起こすことが多
く、そのため固着したゴムを削り落としたり、部品を取
り外して洗浄する必要性が生じるなど、メンテナンスに
長期間要するという問題点があり、また、このような部
位で使用されているシール材にこのような劣化、固着等
が生ずると、該シール材が動的箇所に装着されている場
合には、その装着溝からシール材が脱落することなどに
よるトラブルが原因となり、機器の運転停止である「ダ
ウンタイム」を引起こす恐れもある。
【0004】さらに具体的に詳説すれば、現在、このよ
うな半導体製造装置のプラズマ発生部分近傍で使用され
ているシール材としては、シリコーン系エラストマー及
びフッ素系エラストマーが大半を占めているが、両エラ
ストマー共にそれぞれ問題点がある。例えば、シリコー
ン系エラストマーは、酸素プラズマに対する耐性の点で
は、見かけ上、フッ素系エラストマーより優れている。
【0005】(なお、O2プラズマ雰囲気下におけるシ
リコーン系エラストマーは、ポリマー主鎖切断による軟
化劣化以上の速度で、メチル基からのH原子引き抜きに
端を発する硬化反応も生じるため、見かけ上は重量減少
がフッ素系エラストマーよりも少ないのであろうと本発
明者らは考えている。) このため、事実上、酸素プラズマを発生させるアッシン
グ装置用のシール材としては、シリコーン系エラストマ
ーが多用されているが、シリコーン系エラストマーで
は、例えば、3ヶ月間使用後のメンテナンス時において
は、多くの場合、既に石英ベルジャーに強固に固着して
しまっていて、簡単にシール材を交換することができ
ず、石英ベルジャーの酸洗浄などを必要としており、メ
ンテナンスに時間とコストが嵩むなどの問題点を抱えて
いる。
【0006】一方、フッ素系エラストマーは、エッチン
グ装置やCVDプロセスのウェーハ処理チャンバーや、
ウエハの出し入れ口のゲートに使用されているシール材
として多用されている。しかしながら、近年の半導体デ
ザインルール(半導体の高集積度化に伴い、求められる
加工線幅等も微細となっているが、微細加工技術のレベ
ルの目安のこと)の微細化に伴いウエハ処理条件の過酷
さが増し、シール材として用いられているフッ素系エラ
ストマーの材料劣化が生じたり、相手材となるSUSやア
ルミなどの金属に固着してしまうといった問題が頻発し
ている。(なお、このような固着は、フッ素系エラスト
マー分子が切断され、エラストマーが軟化、劣化するな
ど分子構造に変化が生じ、シール材と相手材の接触面積
が増加することや、また、極性基を含有するゴム配合薬
品の配合等により金属との親和性が高いことに起因する
のであろうと本発明者らは考えている。) ここで、フッ素系エラストマーに代えて、前記アッシン
グ装置に利用されている前記シリコーン系エラストマー
を使用すると、硬化反応速度以上のポリマー主鎖切断に
伴う重量減少が生じ、シール材が粉末化することさえあ
る。したがって、事実上エッチングやCVDプロセスの
シール材としては、これまでのところフッ素系エラスト
マーが使用されているが上記問題点を有しており、充分
でない。
【0007】そこで係る問題点を解決すべく鋭意研究を
重ねた結果、本発明者らは、特に、特定の重合性モノマ
ー(好ましくは重合性官能基の炭素・炭素2重結合を1
個のみ含有するもの)と重合開始剤(好ましくは有機過
酸化物)と溶剤とを含有する処理液(a)と、シリコー
ン系あるいはフッ素系エラストマー基材(b)とを接触
させた後、得られた接触処理エラストマー基材を減圧下
で加熱することにより該モノマーを重合させ、該基材表
面とその近傍を改質すると、非粘着性、耐プラズマ性等
にバランス良く優れた非粘着性エラストマー成形体が得
られることを見出すと共に、処理すべき基材がシリコー
ン系の場合には、上記処理液(a)にはモノマーとし
て、上記重合性官能基含有フッ素系モノマー(i)と共に
重合性官能基含有炭化水素系モノマー(ii)を併用する
と、いっそう非粘着性、耐プラズマ性等にバランス良く
優れた非粘着性エラストマー成形体が得られることなど
を見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】ところで、本願出願人は、先に、:特開
平11−172027号公報にて、重合性二重結合含有
モノマーと重合開始剤と溶剤とを含有する処理液と、ゴ
ム基材とを接触させた後、得られた接触処理ゴム基材を
加熱することにより、該モノマーを重合させ、ゴム基材
表面とその近傍を改質することを特徴とする表面改質ゴ
ムの製造方法を提案している。該公報には、該製法で得
られた表面改質ゴムは、プラズマ処理装置用シール材と
して好適であることも記載されている。また、該公報に
は、上記重合性二重結合含有モノマーが、エチレン性不
飽和含フッ素化合物類および/またはエチレン性不飽和
オルガノシロキサン類である態様、ゴム基材がフッ素ゴ
ムである態様、上記反応を真空条件下または不活性ガス
存在下に行う態様などについても記載されている。
【0009】しかしながら、該公報には、上記のよう
に特定のモノマーなどを含有する処理液(a)と、特定
のゴム基材(b)とを上記のように組み合わせて用いる
と、ゴム材が本来有する強度、圧縮永久歪、シール性、
変形追随性等の特性を保持しつつ、特に非粘着性、耐プ
ラズマ性にバランス良く優れた非粘着性エラストマー成
形体が得られることなどについてまでは、具体的に記載
されていない。
【0010】また、本願出願人は、:特開平11−1
99691号公報には、重合可能な官能基を2個以上含
有する官能基含有モノマーおよび溶剤を含有する処理液
を、ゴム基材と接触させて、少なくとも官能基含有モノ
マーをゴム基材表面およびゴム基材内部に存在させた
後、得られた接触処理ゴム基材を加熱することにより、
該モノマーをその官能基間の反応により重合させ、ゴム
基材表面とその近傍の改質を行う、ゴムの表面改質法を
提案している。しかしながら、該公報には、炭素炭素
二重結合等の重合性官能基を1個のみ有するモノマーを
用いたゴムの表面改質法は記載されていない。
【0011】また、:特公平7−103258号公報
には、表面に多官能性不飽和化合物および有機過酸化物
を付着させた加硫フッ素ゴム成形品を該有機過酸化物分
解温度に加熱する、加硫ゴム成形品の表面処理方法が記
載され、該方法によれば、加硫フッ素ゴム成形品表面の
低摩擦化、非粘着化が可能である旨記載されている。ま
た、多官能性不飽和化合物としては、トリアリルイソシ
アヌレートなど非フッ素系化合物のみが挙げられてい
る。また、加硫フッ素ゴム成形品表面に上記多官能性不
飽和化合物および有機過酸化物を付着させる際に、アセ
トンなどにて可溶性溶媒溶液などとして用いられる旨記
載されている。
【0012】しかしながら、該公報に記載の方法でフ
ッ素ゴムの表面処理を行っても、(i)非フッ素系化合物
であるため半導体用途で要求される耐プラズマ性、非粘
着性を十分に付与できず、また、(ii)表面硬度の上昇が
避けられず、シール性の点で充分でない。また、:特
開平5−271448号公報には、下記の(1)、(2)及び
(3)から選ばれた、耐熱性が200℃以上で、アミド
基、イミド基等の窒素含有官能基及び/または水酸基を
有する熱硬化性樹脂が10μm以下の厚さで表面にコー
ティングされており、該熱硬化性樹脂が、硬化前には、
有機溶媒に可溶であり、加熱によって不溶化できる、表
面にコーティングされたフッ素ゴム成形品が記載されて
いる。
【0013】(1)フェノールとα、α'-ジメトキシパラ
キシレンとからなるフェノール樹脂、(2)該成分の酸無
水物が、無水マレイン酸であるポリアミド樹脂、(3)酸
成分の酸無水物が芳香族環を有する無水物であるポリイ
ミド樹脂。また該公報には、このフッ素ゴム成形品
は、粘着性、接着性ともに顕著な効果が得られると記載
されている。
【0014】しかしながら該公報に記載のフッ素ゴム
成形品あるいはその製法では、シール材として使用され
た場合、圧縮に伴うクラックの発生、コーティングの剥
離という問題点がある。また:特開昭56−6343
2号公報には、ゴムの加硫物表面を分子中に「−C(=
O)−N(−X)−:(Xはハロゲン)」を有する有機
活性ハロゲン化合物と接触させることによって、摩擦係
数が小さく、耐オゾン性の改良されたゴム加硫物表面の
処理方法が記載され、上記有機活性ハロゲン化合物とし
ては、N−ブロムサクシンイミド、トリクロロイソシア
ヌル酸などのBr系、Cl系有機活性ハロゲン化合物が
挙げられているが、重合性官能基を1個のみ有するフッ
素系モノマー(重合性官能基含有フッ素系モノマーとも
言う)は具体的には何等記載されていない。
【0015】また、この引用文献に記載の方法で、加
硫物の表面を処理しても、ゴム中に残留したハロゲンが
放出ガスとなって、汚染をまねくという問題点がある。
【0016】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に伴う
問題点を解決しようとするものであって、ゴム材が本来
有する強度、圧縮永久歪、シール性、変形追随性等の特
性を保持しつつ、非粘着性、耐プラズマ性等にバランス
良く優れた非粘着性シリコーン系あるいはフッ素系エラ
ストマー成形体が得られるような非粘着性エラストマー
成形体の製造方法、得られた非粘着性シリコーン系ある
いはフッ素系エラストマー成形体並びにその用途を提供
することを目的としている。
【0017】
【発明の概要】本発明に係る非粘着性シリコーン系エラ
ストマー成形体の製造方法では、重合性官能基を分子中
に1個のみ含有するフッ素系モノマーと重合開始剤と溶
剤とを含有する処理液(a)と、シリコーン系エラスト
マー基材(b-1)とを接触させた後、得られた接触処理
エラストマー基材を減圧下で加熱することにより該モノ
マーを重合させ、該基材表面とその近傍を改質すること
を特徴としている。
【0018】上記本発明では、フッ素系モノマーは、重
合性官能基としての炭素・炭素二重結合を1個のみ有す
るものであることが望ましい。上記本発明では、非粘着
性シリコーン系エラストマー成形体製造用の上記処理液
(a)は、さらに重合性官能基含有炭化水素系モノマー
を含有することが好ましく、また重合開始剤は有機過酸
化物であることが望ましい。
【0019】本発明に係る非粘着性シリコーン系エラス
トマー成形体は、上記記載の方法で得られたものである
ことを特徴としている。特に上記製法で得られた本発明
に係る該非粘着性シリコーン系エラストマー成形体は、
プラズマアッシング装置の石英ベルジャーなど石英部材
との非粘着性に優れており、該装置の石英部材との接触
部用シール材として用いられることが好ましい。
【0020】本発明に係る非粘着性フッ素系エラストマ
ー成形体の製造方法では、重合性官能基を分子中に1個
のみ含有するフッ素系モノマーと重合開始剤と溶剤とを
を含有する処理液(a)と、フッ素系エラストマー基材
(b-2)とを接触させた後、得られた接触処理エラスト
マー基材を減圧下で加熱することにより該モノマーを重
合させ、該基材表面とその近傍を改質することを特徴と
している。
【0021】上記本発明では、フッ素系モノマーは、重
合性官能基としての炭素・炭素二重結合を1個のみ有す
るものであることが望ましく、また重合開始剤は有機過
酸化物であることが望ましい。本発明に係る非粘着性フ
ッ素系エラストマー成形体は、上記記載の方法で得られ
たものであることが好ましい。
【0022】特に、上記製法で得られた本発明に該非粘
着性フッ素系エラストマー成形体は、エッチングやCV
Dなどを行うプラズマ処理装置の、SUSやアルミ等で
できた金属製部材との非粘着性に優れており、これらの
金属との接触部用シール材として用いられることが好ま
しい。本発明によれば、ゴム材が本来有する強度、圧縮
永久歪、シール性、変形追随性等の特性を保持しつつ、
非粘着性、耐プラズマ性等にバランス良く優れた非粘着
性シリコーン系およびフッ素系エラストマー成形体等の
非粘着性エラストマー成形体が得られるような非粘着性
エラストマー成形体の製造方法、得られた非粘着性エラ
ストマー成形体並びにその用途が提供される。
【0023】本発明により提供される非粘着性エラスト
マー成形体はシール材に好適に使用されるが、非粘着性
エラストマー成形体のうち、シリコーン系エラストマー
成形体は、半導体製造装置、好ましくは上記のアッシン
グ装置内において、石英と接触する部分のシール材とし
て用いられ、フッ素系エラストマー成形体は、アッシン
グ装置を除くプラズマ処理装置(例:エッチング装置や
CVD装置)のあらゆる箇所に好適に用いられる。
【0024】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る非粘着性シリ
コーン系あるいはフッ素系エラストマー成形体が得られ
るようなこれら非粘着性エラストマー成形体の製造方
法、得られたこれら非粘着性エラストマー成形体並びに
その用途について具体的に説明する。<非粘着性エラストマー成形体の製造方法> 本発明に係
る非粘着性シリコーン系エラストマー成形体および非粘
着性フッ素系エラストマー成形体(以下、両者をまとめ
て、非粘着性エラストマー成形体、非粘着性ゴム等とも
言う。)の製造方法では、重合性官能基を分子中に1個
のみ含有するフッ素系モノマー(単に、「フッ素系モノ
マー」とも言う。)と重合開始剤と溶剤とを含有する処
理液(a)と、シリコーン系あるいはフッ素系エラスト
マー基材((b-1)、(b-2)、これら基材をまとめて
エラストマー基材(b)等とも言う。)とを接触させた
後、得られた接触処理エラストマー基材を減圧下で加熱
することにより上記モノマーを重合させ、該基材表面と
その近傍の改質を行っている。
【0025】特に、本発明では、上記エラストマー基材
が、シリコーン系である場合には、上記処理液(a)に
は、さらに重合性官能基含有炭化水素系モノマーが含有
されていることが好ましい。以下、上記フッ素系モノマ
ーと重合開始剤と溶剤と、必要により重合性官能基含有
炭化水素系モノマーとを含有する処理液(a)について
まず初めに説明する。
【0026】[処理液(a)]<フッ素系モノマー(i)> 該処理液(a)に含まれるフ
ッ素系モノマー(i)としては、分子中に1個の重合性官
能基を有するエチレン性不飽和含フッ素化合物類が用い
られる。本発明では、このようにフッ素系モノマー(i)
として、重合性官能基を分子中に1個のみ有するものを
含んでいるため、該処理液(a)にて処理して得られる
非粘着性エラストマー成形体では、該成形体表面のフッ
素濃度を高く設定可能である。
【0027】このような官能基としては、ラジカル反応
性を示すビニル基、ビニリデン基、イソプロペニル基、
メタクリロキシプロピル基等のように、エチレン結合
(C=C)を有する官能基が挙げられる。このような官
能基である炭素・炭素二重結合は、該モノマー(i)の片
末端あるいは側鎖などに1個のみ存在している。このよ
うな官能基を有するフッ素系モノマー(i)すなわちエチ
レン性不飽和含フッ素化合物類として、具体的には、
(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキ
シル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン、
(パーフルオロデシル)エチレン、1−メトキシ−(パ
ーフルオロ−2−メチル−1−プロペン)、2,2,2
−トリエチルフルオロアクリレート、2,2,3,3−
テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5
H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1
H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレー
ト、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレー
ト、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタク
リレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオ
ロデシルメタクリレートなどが挙げられる。
【0028】本発明では、これらのフッ素系モノマー
は、1種または2種以上組み合わせて用いることができ
る。<重合性官能基含有炭化水素系モノマー(i-1)> 特に、
処理すべきエラストマー基材(b)がシリコーン系であ
る場合には、上記処理液(a)には、さらに、重合性官
能基含有炭化水素系モノマー(i-1)が配合されることが
好ましい。このような重合性官能基含有炭化水素系モノ
マー(i-1)が配合されると、得られるシール材などのシ
リコーン系エラストマー成形体は、例えば、液晶・半導
体製造工程で用いられるプラズマ処理装置のプラズマ発
生部近傍に組み込まれて用いられた際に、該シリコーン
系成形体が接触する相手材が特に石英ベルジャー等であ
る場合に、この石英製相手材との強固な固着現象を著し
く低減でき、しかもプラズマに侵され難い特性である
「耐プラズマ性」を向上できるという効果をいっそう発
揮することができる。
【0029】このように非粘着性シリコーン系エラスト
マー成形体はプラズマが発生するような環境下でシール
材等として使用されても、用いられる上記石英製相手材
との固着現象を生じにくく、該装置に固着したゴム(シ
ール材)を削り落としたり、プラズマ処理装置を構成す
る各種部品を洗浄するなどのメンテナンス間隔を延長で
きるといった効果が得られる。
【0030】このような重合性官能基含有炭化水素系モ
ノマー(i-1)としては、1個または2個以上の重合性官
能基(C=C)を有し、また、その分子中にアルキル
基、エーテル基、水酸基、カルボン酸あるいはその誘導
体(例:エステル)、アミン、グリコールなどの部分構
造を持つエチレン性不飽和炭化水素化合物(i-1)が用い
られる。
【0031】このようなエチレン性不飽和炭化水素化合
物(i-1)として、具体的には、例えば、イソブチルアク
リレート、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレ
ート、アセチルアクリレート、ステアリルアクリレー
ト、2−メトキシメチルアクリレート、3−メトキシブ
チルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、
フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリ
ルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールア
クリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロ
キシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエ
チルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシ
プロピルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチ
ルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレー
ト、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9
−ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロ
パントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアク
リレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートな
どが挙げられる。
【0032】本発明では、これらの重合性官能基含有炭
化水素系モノマー(i-1)は、1種または2種以上組み合
わせて用いることができる。本発明ではこのように、処
理すべき基材がシリコーン系エラストマーであるかフッ
素系エラストマーであるかにより、処理液(a)に含ま
れるモノマーが異なっている。これは、それぞれのエラ
ストマーが使用される相手材が金属、石英という異なっ
たものを対象としているためである。このように相手材
の種類に応じて異なったモノマーを含む処理液(a)を
用いることにより、相手材に対する非粘着効果をよりい
っそう発揮させることができる。<重合開始剤(ii)> 重合開始剤(ii)としては、ラジカル
重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤
など、本願出願人が先に提案した特開平11−1720
27号公報[0054]〜[0058]欄に記載されて
いるような、従来より公知の種々のものを使用しうる
が、本発明では、ラジカル重合開始剤が好ましく用いら
れる。
【0033】ラジカル重合開始剤としては、無機または
有機の過酸化物、アゾ化合物、有機金属化合物、金属等
が挙げられる。上記無機または有機の過酸化物として
は、例えば、3,5,6−トリクロロパーフロロヘキサ
ノイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過酸化水
素等が挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、アゾビ
スイソブチロニトリルが挙げられ、金属としては、例え
ば、Li、K、Na、Mg、Zn、Hg、Al等が挙げ
られる。これらのラジカル重合開始剤のうちでも、有機
過酸化物が特に好ましく用いられる。
【0034】本発明では、重合開始剤として特に有機過
酸化物を用いることにより、液晶・半導体製造装置にお
いて、最も敬遠される無機(金属)化合物が、得られる
シール材等の各種非粘着性エラストマー成形体(成形
体)に残存することがなくなるという効果が得られる。
また基材(b)の表面改質処理に際し、重合反応処理工
程を実施している最中に、処理すべきシール材(基材
(b))から有機過酸化物自身が飛散したり溶出するこ
とを未然に防止できる。
【0035】このような有機過酸化物として、具体的に
は、3,5,6−トリクロロパーフルオロヘキサノイル
パーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジ
クロロベンゾイルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオ
キサイド、t−ブチルジクミルパーオキサイド、ベンゾ
イルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ
(t−ブチルパーオキシド)ヘキシン−3,2,5−ジ
メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサ
ン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオ
キシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキ
シ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキ
シイソプロピルカーボネート、パラクロルベンゾイルパ
ーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート等を挙げる
ことができる。これらの有機過酸化物のうちでは、2,
4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパー
オキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、α,α’−ビ
ス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼ
ンが好ましく用いられる。
【0036】これら有機過酸化物は、1種または2種以
上組み合わせて用いることができる。 <溶剤(iii)>溶剤(溶媒)(iii)としては、該重合性官
能基を1つのみ含有するフッ素系モノマー(i)、重合開
始剤(ii)、および、必要により用いられる重合性官能基
含有炭化水素系モノマー(i-1)などを溶解させることが
でき、処理すべきシリコーン系エラストマー基材または
フッ素系エラストマー基材に含浸(浸入)・拡散して該
基材を膨潤させることが可能であれば種類を問わない。
【0037】本発明では、溶媒としては、該モノマーの
溶解度およびエラストマー基材の膨潤度の大小に関係な
く使用できるが、その溶解度および膨潤度の大きい溶媒
の方が好ましい。このような好ましい溶剤としては、特
開平11−172027号公報[0058]〜[006
2]欄に記載されているような、例えば、アセトン、ヘ
キサン、ヘプタン、メチルエチルケトン(MEK)、テ
トラヒドロフラン(THF)等が挙げられ、用いるゴム
基材(エラストマー基材(b))の種類に応じて1種ま
たは2種以上、適宜選定される。また、該溶剤は最終的
にゴム基材の外部に蒸発等により留去されるものであれ
ば、溶剤の留去される時期は、該モノマー同士あるいは
該モノマーと基材(b)との反応中でも反応後でもいつ
でも良い。ただし、該溶媒がエラストマー基材表面ある
いは内部において、なんらかの結合に関与した成分につ
いてはこの限りではない。
【0038】本発明では、上記重合性官能基を1つのみ
含有するフッ素系モノマー(i)、重合性官能基含有炭化
水素系モノマー(i-1)などの重合性官能基含有不飽和モ
ノマーは、合計で、上記の溶液(a)中の溶媒100重
量部に対して、通常10〜80部、好ましくは20〜5
0重量部の量で、また、重合開始剤(ii)、特に有機過酸
化物に代表されるラジカル重合開始剤は、溶媒(iii)1
00重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましく
は5〜30重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0039】特に、本発明では、重合性官能基を1つの
み含有するフッ素系モノマー(i)と重合性官能基含有炭
化水素系モノマー(i-1)とを併用する場合には、これら
の合計((i)+(i-1))100重量%中に、上記重合性官
能基含有フッ素系モノマー(i)は50〜90重量%、好
ましくは60〜80重量%の量で、また重合性官能基含
有炭化水素系モノマー(i-1)は残部量で含まれているこ
とが好ましい。
【0040】このような量のモノマーに対し、2〜4倍
量(重量)の溶剤を加えることで、溶剤による基材の膨
潤効果も適度となり、モノマーを基材中に適度に含浸・
拡散させて基材表面及びその近傍(すなわち基材の内部
で表面に近い部分)の改質を良好に行うことができ、強
固な処理層を形成できるなどの傾向がある。また、上記
量で重合開始剤(ii)が処理液(a)中に含まれている
と、モノマー同士の重合などを良好に進行させて、基材
表面あるいは基材表面近傍のエラストマー基材分子鎖に
固定化させ、改質させることができる傾向がある。
【0041】このような処理液(a)を調製するには、
上記のような量で該処理液に含まれる各成分であるモノ
マー(i)、(i-1)、重合開始剤(ii)、溶剤(iii)などを任
意の順序で添加混合等すればよい。[エラストマー基材(b)] 本発明では、上記処理液
(a)にて処理されるエラストマー基材(b)として
は、上記シリコーン系エラストマー基材(b-1)あるい
はフッ素系エラストマー基材(b-2)が用いられる。
【0042】<シリコーン系エラストマー基材(b-1)
シリコーン系エラストマー基材(b-1)としては、具
体的には、例えば、以下のものが挙げられる。シリコー
ン系エラストマー基材としては、その形状、寸法なども
特に限定されず、また処理前の性状が、固型、液状等の
何れでも良く、例えば、熱加硫型シリコーンゴム、室温
硬化型シリコーンゴム等が挙げられる。
【0043】該熱加硫型シリコーンゴムとしては、例え
ば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーン
ゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルフルオロ
アルキルシリコーンゴム、メチルフルオロアルキルシリ
コーンゴムが挙げられる。これらのゴムは、従来より公
知の方法で配合、成型される。また、これらのゴムに
は、補強充填剤、可塑剤、添加剤、加硫剤、着色剤が配
合されていてもよい。
【0044】室温硬化型シリコーンゴムとしては、硬化
反応機構、硬化条件等の種類に依らず何れのタイプのも
のでも使用でき、例えば、縮合型、付加型、ラジカル型
等の何れでもよく、1液型、2液型等の何れでもよい。
このような液状シリコーンゴムとしては、具体的には、
例えば、信越シリコーン社製「KE1915」、「KE
1961」、「KE1972」等が挙げられる。
【0045】この液状シリコーンゴムは、例えば、所望
形状に硬化させて、本発明における改質処理すべきエラ
ストマー基材(b)として用いられる。本発明では、上
記のシリコーン系エラストマー基材のうちでは、メチル
フルオロアルキル型シリコーンゴム基材がフッ素モノマ
ーとの相溶性がよい点で望ましい。 <フッ素系エラストマー基材(b-2)>フッ素系エラス
トマー基材(b-2)としては、何れのタイプのポリマー
構造を有していてもよいが、例えば、熱可塑性フッ素ゴ
ム;テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体;
フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合
体、フッ化ビニリデン/トリフルオロクロロエチレン系
共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレ
ン系共重合体、等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム;
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフ
ルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テト
ラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエー
テル系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエ
チレン/プロピレン系共重合体等の3元系のフッ化ビニ
リデン系ゴム;等が挙げられる。
【0046】これらのフッ素系エラストマー基材のうち
では、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘ
キサフルオロプロピレン系共重合体、熱可塑性フッ素ゴ
ムなどが好ましい。このフッ化ビニリデン/テトラフル
オロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体な
どのフッ素系エラストマー基材を改質処理して得られる
シール材などの各種フッ素系成形体は、例えば、液晶・
半導体製造工程で用いられるプラズマ処理装置のプラズ
マ発生部近傍に組み込まれて用いられた際に、相手材と
なる特に金属部材(例:アルミ、SUS等)との強固な
固着現象を著しく低減でき、しかも耐プラズマ性を向上
できる。それにより、該装置に固着したゴム(シール
材)を削り落としたり、部品を洗浄するなどのメンテナ
ンス間隔を延長でき、シール材が動的箇所の装着溝から
脱落してしまうというようなトラブルによる機器の運転
停止(タイムアウト)を引き起こす恐れを低減できるな
どの点で望ましい。
【0047】なお、上記熱可塑性フッ素ゴムは、放射線
架橋等の架橋処理がされていてもよい。 [接触処理]本発明では、上記フッ素系モノマー(i)と
重合開始剤と溶剤とを含有する処理液(a)と、シリコ
ーン系エラストマー基材(b-1)あるいはフッ素系エラ
ストマー基材(b-2)(これらの基材をまとめて、エラ
ストマー基材(b)、基材(b)等とも言う。)とを接
触させている。
【0048】ここで、改質処理すべきエラストマー基材
(b)の種類が、シリコーン系である場合には、前述し
たように、上記処理液(a)をそのまま用いてもよい
が、該処理液(a)としては、さらに重合性官能基含有
炭化水素系モノマーが含有されているものを用いること
が好ましい。また、改質すべき基材がフッ素系エラスト
マー基材(b-2)である場合には、この処理液(a)に
は、重合性官能基含有炭化水素系モノマー(i-1)を配合
することも可能であるが、本発明では該モノマー(i-1)
を含まない、上記の重合性官能基含有フッ素系モノマー
(i)と重合開始剤と溶剤とを含有する処理液(a)を用
いることが好ましい。
【0049】上記処理液(a)と基材(b)との接触方
法は特に限定されず、例えば、処理液(a)にエラスト
マー基材(b)を浸漬させてもよく、スプレー等の方法
で処理液を基材に吹付け、散布してもよく、刷毛等を用
いてエラストマー基材(b)に処理液(a)を塗布する
などの方法が挙げられる。また、この接触量、接触時
間、温度、圧力等は特に限定されず、例えば、エラスト
マー基材(b)を処理液(a)に常温(15〜25
℃)、常圧(1気圧)下で接触させる場合には、通常1
秒〜24時間程度、さらに好ましくは1分〜1時間程度
接触させることが望ましい。
【0050】このように処理液(a)とエラストマー基
材(b)とを接触させると、該処理液中の溶媒分子のエ
ラストマー基材(b)中への含浸・拡散がきっかけとな
り、該モノマーおよび重合開始剤がエラストマー基材
(b)中へ含浸・拡散し、ゴム基材は次第に膨潤してく
る。このように膨潤した基材(b)は、通常、速やかに
下記の加熱処理を行う。なお、該基材(b)に含浸・拡
散しているモノマー、重合開始剤がブリードアウトして
しまわない限り、適宜期間経過後に下記加熱処理を行っ
てもよい。
【0051】[熱処理(加熱)]次いで、本発明では、
このようなモノマーおよび重合開始剤がエラストマー基
材(b)中へ含浸・拡散した状態の基材すなわち接触処
理エラストマー基材を、減圧下で加熱(熱処理)するこ
とにより該モノマーを重合させ、該基材表面とその近傍
を改質することにより、非粘着性シリコーン系あるいは
フッ素系のエラストマー成形体(両者をまとめて非粘着
性エラストマー成形体とも言う。)を製造している。
【0052】すなわち、本発明では、上記処理液(a)
で処理したエラストマー基材(b)(接触処理ゴム基材
(b)とも言う。)を加熱して重合開始剤を誘起させ、
好ましくはラジカル重合開始剤を分解させることによる
ラジカル反応を誘起させて、該モノマー同士を重合さ
せ、あるいは該モノマーとゴム基材(b)とを反応させ
ることなどにより、ゴム基材の表面とその内部(特に、
処理液(a)の含浸・拡散したエラストマー基材表面近
傍)の改質を行っている。
【0053】なお、シリコーン系エラストマー基材の場
合は、重合性官能基含有不飽和モノマーとして上記エチ
レン性不飽和含フッ素化合物類(i)及びエチレン性不飽
和炭化水素化合物類(i-1)を、(i)単独好ましくは(i)及
び(i-2)の組み合わせにより基材表面近傍に反応固化さ
せている。また、フッ素系エラストマー基材の場合は、
重合性官能基含有不飽和モノマーとしてエチレン性不飽
和含フッ素化合物類(i)を単独で基材表面近傍に反応固
化させている。
【0054】また、本発明では、上記加熱(熱処理)を
大気圧以下の減圧下で行うことにより、エラストマー基
材(b)内部の低分子量化合物も内部より取除かれ、シ
ール材に要求される性能の一つである低放出ガス性にも
優れたシール材等の各種非粘着性エラストマー成形体
(成形体)が得られる傾向がある。このような熱処理
は、シリコーン系エラストマー中またはフッ素系エラス
トマーに浸透、拡散している重合性官能基含有不飽和モ
ノマーを通常、35〜400℃の温度で、通常1秒間〜
720時間、好ましくは50〜250℃で1秒間〜72
時間(3日間)程度行われる。
【0055】このように加熱処理すると、所望の非粘着
性エラストマー成形体が得られる。[非粘着性エラストマー成形体及びその用途] 本発明に
係る非粘着性エラストマー成形体、すなわち非粘着性シ
リコーン系エラストマー成形体および非粘着性フッ素系
エラストマー成形体は、上記記載の方法で得られたもの
であることを特徴としている。
【0056】この非粘着性フッ素系エラストマー成形体
は、ゴム材が本来有する強度、圧縮永久歪、シール性、
変形追随性等の特性を保持しつつ、非粘着性、耐プラズ
マ性等にバランス良く優れている。このような本発明に
係る非粘着性エラストマー成形体は、例えば、化学機
器、液晶・半導体製造装置(例:プラズマ処理装置な
ど)、薬液配管・タンク類、シール材などとして広く用
いられる。
【0057】特に、上記製法で得られた本発明に係る非
粘着性シリコーン系エラストマー成形体は、半導体製造
装置のうちでも、プロセスガスとして酸素のみ、または
酸素を含む混合気体を使用するプラズマ処理装置(例え
ば、アッシング装置)で好適に使用され、プラズマアッ
シング装置等で用いられる石英ベルジャーに対する非粘
着性に非常に優れている。よって非粘着性シリコーン系
エラストマー成形体は、プラズマアッシング装置などの
石英部材との接触部用シール材として用いられることが
好ましい。
【0058】また、上記製法で得られた本発明に係る非
粘着性フッ素系エラストマー成形体は、プロセスガスを
問わず、アッシング装置を除くプラズマ処理装置(例え
ば、エッチング装置やCVD装置)のドライプロセスに
使用されると、これらエッチング装置やCVDプロセス
のウェーハ処理チャンバーや、ウェーハの出し入れ口の
ゲートなどで用いられるアルミやSUS等の金属に対する
非粘着性に非常に優れている。よって、この非粘着性フ
ッ素系エラストマー成形体は、エッチングやCVD(Ch
emical Vapour Deposition,化学気相蒸着法)を実施す
るプラズマ処理装置のSUSやアルミ等の金属との接触
部用シール材として用いられることが好ましい。
【0059】なお、本発明に係るこの非粘着性シリコー
ン系エラストマー成形体や非粘着性フッ素系エラストマ
ー成形体の場合には、次のような理由により非粘着性、
耐プラズマ性に優れるのであろうと考えられる。まず、
非粘着性シリコーン系エラストマー成形体の場合につい
て詳述する。この非粘着性シリコーン系エラストマー成
形体では、上記のように非粘着性シリコーン系エラスト
マー成形体の製造の際に、処理液(a)に含まれる重合
性官能基含有不飽和モノマーが重合性官能基含有フッ素
系モノマー(i)1種である場合には、上記溶剤(iii)が、
エラストマー基材(b)(ゴム基材)を膨潤させること
を利用して、通常、ゴム基材との相溶性が異なる該モノ
マー(i)のゴム基材内への浸透、拡散を容易にして、モ
ノマー(i)を該基材内に浸透、拡散させている。そこ
で、その基材内に浸透した該モノマーなどを加熱するこ
とにより、基材内にモノマー(i)と共に浸透している重
合開始剤(ii)の分解により該モノマーの(ラジカル)反
応を誘起させ、該モノマー(i)をゴム基材内に反応、固
定化させている。このため、基材表面あるいはその近傍
(表面層とも言う。)のSi元素含有率が低下すると同
時にF元素含有率が増加した部分(処理層)が形成され
ると考えられる。
【0060】すなわち、熱処理後は、熱処理前の基材表
面層にエチレン性不飽和含フッ素化合物類(i)が部分的
に結合した状態となり、その結果、元のシリコーン系エ
ラストマー基材(b)からみれば、該シリコーン系エラ
ストマー基材(b)と、石英ベルジャー等の相手材との
間に処理層が生成しており、元のエラストマー基材
(b)表面に存在したSi元素と相手材のSi元素の距
離が、この処理層が形成されたことにより開くことにな
るため、両Si元素間の親和力が減衰し、シリコーン系
エラストマー基材(b)が本来持っていなかった機能で
ある、石英との非粘着性が、このシリコーン系エラスト
マー成形体には新たに付与されるのであろうと考えられ
る。
【0061】また、重合性官能基含有不飽和モノマーと
して、前記重合性官能基含有フッ素系モノマー(エチレ
ン性不飽和含フッ素化合物類)(i)と、重合性官能基含
有炭化水素系モノマー(エチレン性不飽和炭化水素化合
物類)(i-1)とを組み合わせて用いた場合には、次のよ
うに考えられる。すなわち、上記と同様に、基材(b)
表面にエチレン性含フッ素化合物類(i)が反応固定化す
るため、基材表面層のSi元素含有率が低下すると同時
にF元素含有率が増加する。また、熱処理後は、基材表
面あるいはその近傍(基材表面層)にエチレン性不飽和
含フッ素化合物類(i)またはエチレン性不飽和炭化水素
化合物類(i-1)が部分的に結合した状態となるため、処
理前のシリコーン系エラストマーと比べると、熱処理後
のものでは、上記と同様にシリコーン系エラストマー基
材(b)と相手材(例:石英ベルジャー)との間にフッ
素系モノマー(i)から誘導される成分単位(ユニット)
の連鎖、炭化水素系モノマー(i-1)ユニットの連鎖、さ
らには、これらの結合したものなどが生じて、該処理層
は、全体としてみれば、ポリマー分子鎖が複数の結合点
を有することにより立体的な構造となり、エラストマー
基材(b)のSi元素と、相手材石英ベルジャーのSi
元素との間の距離も、フッ素系モノマー(i)のみを用い
る場合に比して更に増大することとなる。
【0062】その結果、相手材がこのように石英の場合
には、基材のSi元素と相手材のSi元素の距離が処理
前よりもいっそう開くため、両Si元素間の親和力が減
衰し、エラストマー基材(b)が本来持っていなかった
機能である石英との非粘着性を新たに付与できるのであ
ろうと考えられる。また、このようにモノマー(i)と(i-
1)とを組み合わせて用いた処理液(a)にてエラストマ
ー基材(b)を処理した場合には、基材表面近傍に結合
したモノマーユニットが前述の通り複数の結合点を有す
る立体的な(架橋)構造をとるため、プラズマのエラス
トマー基材に対する攻撃を抑制し、その性能を保持する
働きも一層発揮するのであろうと考えられる。
【0063】よって、本発明のシリコーン系エラストマ
ー成形体は、プラズマアッシング装置の石英と接触する
部分でシール材として用いると、プラズマ雰囲気下にさ
らされても、相手材である石英にほとんど固着せず、該
シール材取り外しの際は材料破壊を起することがないと
いう効果が得られているのであろうと考えられる。ま
た、本発明のシリコーン系エラストマー成形体がアッシ
ングという特殊な環境下で使用されてもシール材の劣化
がほとんど起こらず、石英表面との化学結合が極めて生
じにくいという効果が得られているのであろうと考えら
れる。
【0064】このように、本発明のシリコーン系エラス
トマー成形体からなるシール材は、プラズマ雰囲気下
で、石英と接触する部分で使用しても、石英−シリコー
ン系エラストマー間のシリコーン成分同士の親和力が抑
制されるために固着することはなく、その結果、装置の
メンテナンス工程を大きく簡略化することができる。と
ころで、本発明では、上記シリコーン系エラストマー成
形体製造時に用いられる処理液(a)中に配合されるモ
ノマーとしては、重合性官能基含有フッ素系モノマー
(i)単独よりも、このモノマー(i)と重合性官能基含有炭
化水素系モノマー(i-1)とを併用すると、シリコーン系
エラストマー表面層に固定化されたフッ素成分の作用に
より、石英−シリコーン系エラストマー間の親和力がよ
りいっそう抑制され、非粘着性が発揮される傾向があ
る。
【0065】また、用いられる処理液(a)中の重合開
始剤(ii)が有機過酸化物であると、加熱工程中に、反応
後の有機過酸化物の分解物が揮散するため、熱処理工程
中に該重合開始剤(ii)が反応系内に残存することはな
く、液晶・半導体などの製造時のクリーン性も担保でき
るメリットがある。次に、非粘着性フッ素系エラストマ
ー成形体の場合について詳述する。
【0066】非粘着性フッ素系エラストマー成形体の場
合には、次のような理由により非粘着性、耐プラズマ性
に優れるのであろうと考えられる。ベースゴム基材表面
中には、SUSやアルミ等の金属に対する親和力が高い
領域が散在していると考えられる。そのような領域の存
在は、基材ゴム中の各種極性原子あるいは基を有する配
合薬品に起因するものであると考えられる。
【0067】重合性の官能基を1つのみ有する含フッ素
系モノマー(i)をゴム基材表面あるいはその近傍内に反
応固定化することにより、基材表面中の前記領域の露出
面積を少なくし、基材表面のF元素含有率を増加させる
ことで、非粘着性が付与され、あるいは向上するのであ
ろうと考えている。このようにして得られた非粘着性フ
ッ素系エラストマー成形体は、エッチング装置やCVD
装置のウエハ処理チャンバーや、ウエハの出し入れ口の
ゲートに使用されているシール材として、優れた非粘着
性、耐プラズマ性などの特性を生かして好適に使用でき
る。すなわち、従来のフッ素系エラストマーでは、過酷
なプラズマ雰囲気下にさらされ、フッ素系エラストマー
の材料劣化および相手材への固着が頻発していたような
部位にも好適に使用できる。
【0068】すなわち従来のフッ素系エラストマーで
は、このような条件下で使用されるとその分子構造に変
化が生じ、シール材と相手材の接触面積の増加(分子鎖
切断に伴う軟化劣化による)や、基材表面に露出した各
種配合薬品等が恐らくは原因となり、金属との親和性が
高くなり、相手材への固着などが生じていたと考えられ
る。しかしながら、本発明のフッ素系エラストマー成形
体からなるシール材は、フッ素系エラストマー表面層に
フッ素系モノマー(i)が強固に反応、固定化されている
ために、プラズマ雰囲気下、SUSやアルミなどの金属
と接触する部分で使用しても、非粘着性などに優れこれ
ら金属に固着することはなく、従ってプラズマ発生装置
などのメンテナンスを大いに簡略化することができるメ
リットがある。
【0069】また、基材の相手金属部材に対する固着作
用も、モノマー(i)などがエラストマー基材(b)に反
応、固定化されるため、基材中の相手金属部材との親和
力が抑制され、その結果非粘着性フッ素系エラストマー
成形体の非粘着性、耐プラズマ性などの特性がより発揮
されるのであろうと考えられる。また、本発明では、上
記処理に用いる処理液(a)には(ラジカル)重合開始剤
として、好ましくは、有機過酸化物が用いられているた
め、モノマー(i)などを含浸・拡散させたエラストマー基
材(b)の熱処理工程中に該重合開始剤が反応系内(エ
ラストマー基材(b)内)に残存することはなく、非粘
着性エラストマー成形体の「純粋性」も保持される。な
お、純粋性(ガス放出性など)は、試料からの放出ガス
量、および放出ガスのマススペクトルを測定して評価で
きる。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、既知の方法で成形され
たシリコーン系エラストマー基材またはフッ素系エラス
トマー基材を、有機過酸化物に代表される重合開始剤と
フッ素系官能基含有不飽和モノマーと溶剤とを含む処理
液(a)に接触させ、その後有機過酸化物の分解温度以
上で熱処理することにより該モノマーを重合させ、シリ
コーン系またはフッ素系エラストマー基材表面とその近
傍を改質しているので、相手部材である石英部材あるい
はアルミやSUS等の金属部材に対する固着現象が改善
された、半導体製造装置用シール材として好適に使用可
能な非粘着性エラストマー成形体が提供される。
【0071】特に、本発明により提供されるシール材な
どのエラストマー成形体のうち、シリコーン系エラスト
マー成形体は、液晶・半導体製造装置のうちで、プロセ
スガスとして酸素のみ、または酸素を含む混合気体を使
用するプラズマ処理装置(例えば、アッシング装置)で
石英と接触する部分用のシール材として好適に使用され
る。
【0072】また、特にフッ素系エラストマー成形体
は、プロセスガスを問わず、アッシング装置を除くプラ
ズマ処理装置(例えば、エッチング装置やCVD装置)
のドライプロセスに好適に使用される。また、このよう
なシール材によれば、メンテナンス性の向上、該装置稼
働時間の延長を実現することができる。
【0073】また、上記エラストマー基材の改質処理に
際して、上記熱処理を大気圧以下の減圧下で行うことに
より、エラストマー内部の低分子量化合物を内部より取
り除き、シール材に要求される性能の一つである低放出
ガス性も付与されたシール材などの非粘着性エラストマ
ー成形体を提供することができる。
【0074】
【実施例】以下、本発明について実施例によりさらに具
体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何等限
定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例な
どにおける配合成分組成は、重量部表示である。
【0075】また、以下の実施例、比較例などにおける
固着力の評価方法及びその基準、耐プラズマ性の測定方
法及びその評価指数の分類基準等は、以下の通り。 <固着力等の測定条件>固着力は、図1(a)に示すよう
に、相手材であるアルミ板又は石英板の上に金線を置
き、この金線の一部を跨ぐようにして試料であるエラス
トマー成形体を載せ、次いで図1(b)に示すように圧縮
治具で試料を金線ごと下記に示す条件下に圧縮した。次
に、圧縮を解除してそのまま2時間放冷した。次いで図
1(c)に示すように金線を荷重計に引っ掛け、相手材の
アルミ板又は石英板を下方に移動させたときに、相手材
から試料が引き剥がされるのに要する力の最大値を測定
し、これを固着力とした。
【0076】固着力の評価は、5段階で行い、固着力が
小さいものから大きくなる順に0〜5として評価した。 <固着力評価基準(フッ素系、シリコーン系共通)>
(単位:kgf) 1:0.3kgf未満 2:0.3kgf以上〜1.0kgf未満 3:1.0kgf以上〜3.0kgf未満 4:3.0kgf以上〜5.0kgf未満 5:5.0kgf以上。 <固着力測定条件> (イ)実施例A1〜A4、比較例A1〜A3の場合は相
手材としては石英を使用。 (ロ)実施例B1、比較例B1〜B2、参考例B1の場
合は、相手材としてはアルミを使用。
【0077】相手材;石英(寸法など:80mm×12
0mm×2mmt(厚)) アルミ(A5052)(寸法など:同上) 圧縮時間;72時間、圧縮温度;150℃、引張速度;
100mm/min < 耐プラズマ性測定条件>SAMCO社製のプラズマ
発生装置「PLASMA DEPOSITIONMOD
EL PD−2」を用いて以下の条件で基材がフッ素系
ゴムの場合は酸素と四フッ化メタンの混合、基材がシリ
コーン系ゴムの場合は酸素のみを用いてプラズマを照射
を行い、プラズマ照射後の試料の重量減少率を精密天秤
にて測定して、耐プラズマ性を評価した。耐プラズマ性
の評価は、5段階で行い、耐プラズマ性が小さいものか
ら大きくなる順に1〜5として評価した。 <耐プラズマ性評価基準> (単位:%(重量減少
率)) (フッ素系) 1:5%未満 2:5%以上〜10%未満 3:10%以上〜15%未満 4:15以上〜20%未満 5:20%以上。 (シリコーン系) 1:3%未満 2:3%以上〜5%未満 3:5%以上。
【0078】<基材が、シリコーン系エラストマー基材
(b1)の場合>
【0079】
【実施例A1】 <メチルフルオロ型シリコーン系エラストマー基材(b1)用ゴム組成物の配 合組成> メチルフルオロ型シリコーンゴム(FE271-U:信越シリコーン社製)100重量部 2,5ジメチル-2,5ビス(t-プチルパーオキシ)ヘキサン(C-8A:信越シリコーン 社製) 0.8重量部 <加硫ゴムの作成>上記配合成分をそれぞれ上記量でオ
ープンロールを用いて既知の方法にて配合した。次い
で、170℃×15分間プレス成型を行った後、200
℃×8時間二次加硫を行い、150mm×190mm×
2mmt(厚)のゴムシートに成形した。 <加硫ゴムの改質処理>次いで、表1に示すように、処
理液(a1)にエラストマー基材(b1)を浸漬した
後、減圧下(圧力:105〜10-2Pa)で加熱処理し
た。
【0080】得られた非粘着性シリコーン系エラストマ
ー成形体について、表2に示す条件下で、非粘着性(固
着力)、耐プラズマ性を測定した。結果を表3に示す。
【0081】
【実施例A2、比較例A1〜A2】実施例A1におい
て、「加硫ゴムの改質処理」を表3に示す条件下で行っ
た以外は、実施例A1と同様にして得られたシリコーン
系エラストマー成形体について、表2に示す条件下で、
非粘着性(固着力)、耐プラズマ性を測定した。結果を
表3に示す。
【0082】
【実施例A3〜A4、比較例A3】実施例A1におい
て、「ゴム組成物」として下記配合組成のものを用い、
また、「加硫ゴムの改質処理」を表3に示す条件下で行
った以外は、実施例A1と同様にして得られたシリコー
ン系エラストマー成形体について、表2に示す条件下
で、非粘着性(固着力)、耐プラズマ性を測定した。
【0083】結果を表3に示す。 <ゴム組成物の配合組成> メチルビニル型シリコーンゴム(KE931-U:信越シリコーン社製) 100重量部 2,5ジメチル-2,5ビス(t-プチルパーオキシ)ヘキサン(C-8A:信越シリコーン 社製) 0.8重量部
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】<考察など> (a)実施例A1について:フロロシリコーンゴムに、処
理液(a)に含まれるモノマーとして、重合性官能基を
1つのみ有するモノマー(フッ素系モノマー)及び炭化
水素系モノマーを含むものを使うことにより固着力、耐
プラズマ性共に、最も良好な結果となった。固着力に関
しては、基材のフッ素含有量がシリコーンゴムに比べて
多く、かつ基材表面近傍に結合したモノマーが相手材と
基材間の化学的結合の生成を抑制していることが影響し
ていると考えられる。耐プラズマ性に関しては、処理液
(a)に含まれるモノマーとして、フッ素系モノマーと
炭化水素系モノマーを組み合わせて用いることにより、
基材表面近傍に複数の結合点を有する立体的な架橋が生
成され、それがプラズマの遮蔽効果を発揮したためと考
えられる。 (b)実施例A2について:実施例A1と同様、固着力、
耐プラズマ性共に良好な結果となったが、処理液(a)
としては炭化水素系モノマーを含まないものを用いたこ
とから実施例A1よりやや劣る結果となった。これは、
処理液(a)に炭化水素系モノマーを含まないことによ
り、フッ素系モノマーが結合点を1点とした鎖状の結合
状態となっており、基材表面に立体的な架橋が生成され
ず、フッ素系モノマーを炭化水素系モノマーとともに用
いた場合よりも基材ゴム−相手材のSi元素間の距離が
近いことがSi元素間に親和力を完全に抑制できず、実
施例A1に比べ固着力が劣る結果になったものと考えら
れる。また、基材表面に鎖状に結合したモノマーユニッ
トは、立体的に架橋したものよりもプラズマの遮蔽効果
を発揮しないことが考えられる。 (c)実施例A3について:メチルビニル型シリコーンゴ
ムに実施例A1と同様の処理を施したが、フロロシリコ
ーンゴムに施した際のような非粘着性は発揮しなかっ
た。これは基材表面のSi含有量がフロロシリコーンゴ
ムに比べて多く、相手材と基材との間の化学結合生成の
機会が多くなるためであると考えられる。 (d)実施例A4について:実施例A2における基材:メ
チルフルオロアルキル型シリコーンゴムから、メチルビ
ニル型シリコーンゴムに変えた以外は、実施例A2と同
様の処理を基材に施したが、実施例A2のフロロシリコ
ーンゴムに施した際のような非粘着性は本実施例では発
揮しなかった。これは基材表面のSi含有量がフロロシ
リコーンゴムに比べて多く、相手材と基材との間の化学
結合生成の機会が多くなるためであると考えられる。ま
た、実施例A2同様、基材表面に鎖状に結合したモノマ
ーユニットは立体的に架橋したものよりもプラズマの遮
蔽効果を発揮しないことが考えられる。 (e)比較例A1について:アセトンと共に、ラジカル重
合開始剤のみを含浸させたが、顕著な改善点は見られな
かった。 (f)比較例A2について:メチルフルオロアルキル型シ
リコーンゴムに表面処理を施していない未処理品であ
る。 (g)比較例A3について:メチルビニル型シリコーンゴ
ムに表面処理を全く行わない未処理品である。
【0088】<基材が、フッ素系エラストマー基材(b
2)の場合>
【0089】
【実施例B1】 <フッ素系エラストマー基材(b2)用ゴム組成物の配合組成> フッ素系ゴム(フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプ ロピレン系フッ素ゴム、ダイエルG902:ダイキン工業社製) 100重量部 2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−プチルパーオキシ)ヘキサン 1.5重量部 トリアリルイソシアヌレート 4 重量部 MTカーボン 20 重量部 <加硫ゴムの作成>上記配合成分をそれぞれ上記量でオ
ープンロールを用いて既知の方法にて配合した。次い
で、170℃×10分間プレス成型を行った後、180
℃×4時間二次加硫を行い、150mm×190mm×
2mmt(厚)のゴムシートに成形した。 <加硫ゴムの改質処理>次いで、表4に示すように、処
理液(a2)にエラストマー基材(b2)を浸漬した
後、減圧下(105〜10-2Pa)で加熱処理した。
【0090】得られた非粘着性フッ素系エラストマー成
形体について、次いで、表5に示す条件下で、非粘着性
(固着力)、耐プラズマ性を測定した。結果を表6に示
す。
【0091】
【比較例B1〜B2】実施例B1において、「加硫ゴム
の改質処理」を表6に示す条件下で行った以外は、実施
例B1と同様にして得られたフッ素系エラストマー成形
体について、表5に示す条件下で、非粘着性(固着
力)、耐プラズマ性を測定した。結果を表6に示す。
【0092】
【参考例B1】参考例として以下のゴム組成の試料につ
いて非粘着性、耐プラズマ性を評価した。結果を表6に
示す。 <ゴム組成>テトラフルオロエチレン/パープルオロア
ルキルビニルエーテル共重合体 <ゴム組成物の配合組成>テトラフルオロエチレン/パ
ープルオロアルキルビニルエーテル共重合体としては、
テトラフルオロエチレン/パープルオロアルキルビニル
エーテル系ふっ素ゴム(Du Pont社より市販の「Kalrez4
079」(シート状成形品))を入手し、そのまま用いて
上記と同様の試験を行った。
【0093】結果を表6に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】<考察など> (a)実施例B1について:3元系フッ素ゴムに、処理液
(a)としてフッ素系単官能モノマーを含むものを使う
ことにより固着力、耐プラズマ性共に、良好な結果とな
った。これは基材表面近傍のF含有量が増加すること、
また結合したモノマー鎖によるプラズマ遮蔽効果が発揮
され、基材ゴムとアルミ間の親和力が低下したことによ
り非粘着性が改善されたと考えられる。詳説すれば以下
のように考えられる。
【0098】すなわち、ベースゴム基材表面中には、恐
らくは基材ゴム中の各種極性原子あるいは基を有する配
合薬品に起因して、SUSやアルミ等の金属に対する親
和力が高い領域が散在しているものと考えられる。ゴム
基材表面のそのような領域に対して、重合性の官能基を
1つのみ有する含フッ素系モノマー(i)をゴム基材表面
あるいはその近傍内に反応固定化することにより、基材
表面中の前記領域の露出面積を少なくし、基材表面のF
元素含有率を増加させることで、プラズマ遮蔽効果が発
揮されアルミなどに対する非粘着性が付与され、基材ゴ
ムとアルミ間の親和力が低下したことにより非粘着性が
改善されたと考えられる。 (b)比較例B1について:アセトンと共に、ラジカル重
合開始剤のみを含浸させたが、実施例B1ほどの非粘着
性及び耐プラズマ性は発揮されなかった。 (c)比較例B2について:3元系フッ素ゴムに表面処理
を施していない未処理品である。 (d)参考例B1について:半導体用途向け汎用シール材
として利用されているパーフロロエラストマーで、表面
処理は全く行わない未処理品である。耐プラズマ性につ
いては優れた性能を発揮したものの、強固な固着力を示
した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明において用いられる固着力測定
装置を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 7/16 CFH C08J 7/16 CFH C09D 5/00 C09D 5/00 Z // C08L 83:04 C08L 83:04 Fターム(参考) 4D075 BB26Z BB56Z CA06 CA13 CA31 CA32 CA40 CA44 DA06 DA23 DB35 DB39 DB54 DC05 DC16 DC19 DC21 EA07 EB16 EB22 EB24 EC30 EC37 4F073 AA05 AA10 BA33 BB01 FA06 4F100 AH05B AK17B AK52A AN02A BA02 BA07 CA30B EH46 EJ42 GB90 JL13 4J038 FA012 FA051 FA122 FA142 FA152 GA12 KA03 KA06 NA10 PA17 PB06 PB09 PC08

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合性官能基を分子中に1個のみ含有する
    フッ素系モノマーと重合開始剤と溶剤とを含有する処理
    液(a)と、 シリコーン系エラストマー基材(b-1)とを接触させた
    後、得られた接触処理エラストマー基材を減圧下で加熱
    することにより該モノマーを重合させ、該基材表面とそ
    の近傍を改質することを特徴とする非粘着性シリコーン
    系エラストマー成形体の製造方法。
  2. 【請求項2】上記フッ素系モノマーは、重合性官能基の
    炭素・炭素2重結合を1個のみ含有するものであること
    を特徴とする請求項1に記載の非粘着性シリコーン系エ
    ラストマー成形体の製造方法。
  3. 【請求項3】上記処理液(a)は、さらに重合性官能基
    含有炭化水素系モノマーを含有することを特徴とする請
    求項1〜2の何れかに記載の非粘着性シリコーン系エラ
    ストマー成形体の製造方法。
  4. 【請求項4】上記請求項1〜3の何れかに記載の方法で
    得られた非粘着性シリコーン系エラストマー成形体。
  5. 【請求項5】上記非粘着性シリコーン系エラストマー成
    形体が、プラズマアッシング装置の石英との接触部用シ
    ール材であることを特徴とする請求項4に記載の非粘着
    性シリコーン系エラストマー成形体。
  6. 【請求項6】重合性官能基を分子中に1個のみ含有する
    フッ素系モノマーと重合開始剤と溶剤とを含有する処理
    液(a)と、 フッ素系エラストマー基材(b-2)とを接触させた後、
    得られた接触処理エラストマー基材を減圧下で加熱する
    ことにより該モノマーを重合させ、該基材表面とその近
    傍を改質することを特徴とする非粘着性フッ素系エラス
    トマー成形体の製造方法。
  7. 【請求項7】上記フッ素系モノマーは、重合性官能基の
    炭素・炭素2重結合を1個のみ含有するものであること
    を特徴とする請求項6に記載の非粘着性フッ素系エラス
    トマー成形体の製造方法。
  8. 【請求項8】上記請求項6〜7の何れかに記載の方法で
    得られた非粘着性フッ素系エラストマー成形体。
  9. 【請求項9】上記の非粘着性フッ素系エラストマー成形
    体が、プラズマ処理装置の金属との接触部用シール材で
    あることを特徴とする請求項8に記載の成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007517076A (ja) * 2003-07-04 2007-06-28 ナノン アクティーゼルスカブ 相互侵入高分子網目の製法、相互侵入高分子網目及びその使用

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