JP4030244B2 - インクジェット記録材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録材料の製造方法に関し、特にインク吸収性が高く、かつインク受容層の塗布故障筋やインク受容層表面のひび割れが無く光沢性に優れたインクジェット記録材料を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0004】
また、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平10−81064号、同平10−100397号、同平10−119423号、同平10−203006号公報等には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いたインクジェット記録材料が提案されている。
【0005】
上述した記録材料の支持体としては、従来、紙が一般的に用いられており、紙自体にインク吸収層としての役割を持たせていた。近年、フォトライクの記録シートが要望される中、紙支持体を用いた記録シートは、光沢、質感、耐水性、印字後のコックリング(皺あるいは波打ち)等の問題があり、耐水性の支持体、例えば、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム支持体、紙の両面にポリエチレン樹脂等をラミネートした樹脂ラミネート紙等が用いられるようになってきた。しかしながら、これらの耐水性支持体は、紙支持体と違ってインクを吸収することができないため、耐水性支持体上に設けられたインク受容層自体のインク吸収性が重要となり、多量の顔料を塗布する必要があったり、顔料に対するバインダーの比率を小さくする等の工夫がなされている。
【0006】
上記の気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数nm〜数十nmの微粒子であり、一般的には固形の気相法シリカ微粒子を水中に添加してホモジナイザー等で分散し、次いでポリビニルアルコール水溶液等のバインダーを添加し同様に分散して作製した塗布液を支持体上に塗布後、乾燥する製造方法が知られている(上記特許を参照)。
【0007】
しかしながら、気相法シリカのような固形微粒子を分散して製造した耐水性支持体のインクジェット記録材料は、高い光沢が得られ易いという利点がある反面、塗布乾燥時にしばしばハジキや筋状の塗布故障が発生したり、ひび割れが生じ易く、光沢が高いインクジェット記録材料を安定して製造できないという問題を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、生産性が高く、且つひび割れがなく、インク吸収性及び光沢に優れたインクジェット記録材料の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、カチオンポリマーを用いてシリカ微粒子を分散した分散液で調製した塗布液を耐水性支持体上に塗布してインクジェット記録材料を製造する方法において、該シリカ微粒子の分散を終了してから該分散液を8時間以上経時した後に、該シリカ微粒子のバインダーとしてのポリビニルアルコールを該分散液に添加して塗布液を調製することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法により達成された。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の1実施形態は、固形のシリカ微粒子を水に分散し、この分散液を8時間以上経時させ、次いでバインダー等の必要な添加剤を加え分散して塗布液を調製し耐水性支持体上に塗布して製造する方法である。
【0011】
気相法シリカは、実質的に水もしくは少量の有機溶剤(低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20重量%以下、更には10重量%以下であることが好ましい)を混合した水の中で分散され(シリカ分散液)、次いでバインダーその他の必要な添加剤を加えて塗布液とすることが好ましいが、バインダー水溶液中に気相法シリカを添加分散して塗布液としてもよい。本発明で言うシリカ分散液とはこのような実質的にバインダーを含まないシリカ分散液を意味し、少なくともバインダーを含むシリカ分散液は塗布液を意味するものとする。
【0012】
シリカ分散液の経時時間は、5時間以上、好ましくは8時間以上である。上限は制限がなく、数日から数十日であってもよい。経時する温度は約10℃〜約50℃、好ましくは約15℃〜約40℃である。微粒子が沈降しないよう、経時中に緩く攪拌してもよい。
【0013】
また本発明の目的は、シリカ微粒子の分散を終了してから該分散液を50℃以上の加熱処理を施こすことを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法によっても達成された。特にシリカ分散液を50℃〜85℃、好ましくは60〜80℃の範囲で、約30分以上(上限はないが約1時間以上、約10時間以下が好ましい)の加熱処理を施した後、塗布液を調製し、塗布することが好ましい。さらにシリカ分散液の上記した5時間以上の経時時間と加熱処理を組み合わすことが特に好ましい。
【0014】
本発明に特に好ましく用いられる気相法シリカは、湿式法シリカに対して乾式法シリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0015】
本発明に用いられる固形微粒子、特に気相法シリカ微粒子の一次粒子の平均粒径は、通常30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下(好ましくは3〜10nm)であり、かつBET法による比表面積が200m2/g以上(好ましくは250〜500m2/g)のものを用いるのが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0016】
本発明において、インク受容層に含有させるシリカ微粒子の量は、8g/m2以上が好ましく、10〜30g/m2の範囲がより好ましい。シリカ微粒子を含有するインク受容層は、皮膜としての特性を維持するためにバインダーを有していることが好ましい。このバインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0017】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0018】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0019】
また、他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20重量%以下であることが好ましい。シリカ微粒子と共に用いられる親水性バインダーの量は、シリカ微粒子に対して、50重量%以下、好ましくは10〜40重量%の範囲である。
【0020】
気相法シリカのようなシリカ微粒子の分散(分散液、塗布液)には、高圧ホモジナイザー、ボールミル等の一般に知られている分散機を用いることができる。具体的には水等の分散媒にシリカ微粒子を添加し混合(予備混合)してシリカスラリーを作製し、このシリカスラリーを上記のような分散機で分散する。予備混合するときの液温は、20℃以下が好ましい。特に15℃以下が好ましい。これによって、高濃度のシリカスラリーが安定して作製できる。この場合、シリカ微粒子を添加する前の分散媒を20℃以下の温度にしておいてもよいし、予備混合中に冷却して20℃以下に下げてもよい。また、シリカスラリーの温度が20℃以下、さらには15℃以下の状態で分散機に注入するのが好ましい。これによって更に安定した分散液が得られる。
【0021】
予備混合は、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。また、分散液中のシリカ濃度をより高濃度にするために、段階的にシリカを添加する方法を採用することができる。高圧ホモジナイザーを用いた分散は、例えば特開平10−310416号公報に記載の方法を用いることができる。また、上記シリカスラリーを高圧ホモジナイザーで処理する回数は、1〜数十回の範囲から選ばれる。この分散液の調製において、上記の予備混合あるいは高圧ホモジナイザー等での分散時に、予め分散媒中にカチオンポリマーを含有させておく、あるいは分散中にカチオンポリマーの溶液を添加する等の公知の方法によりカチオンポリマーを用いてシリカ微粒子の分散液を調製する。
【0022】
高濃度の分散を安定的に作成もしくは液を安定的に経時するのは難しく、塗布液中の気相法シリカの濃度は、高くても10重量%程度である。実用的には、塗布適性等を考慮すれば5〜8重量%程度である。
【0023】
本発明において、インク受容層の塗布液は、固形微粒子(気相法シリカ)、バインダー(水溶性ポリマー)、架橋剤、カチオン性ポリマー、界面活性剤等が水を主体とする溶媒(少量の有機溶剤を含む場合もある)に溶解及び分散された液体である。塗布液は、支持体上に数十〜数百μmの厚みの塗布層が形成されるように塗布され、 次いで乾燥される。塗布液の温度は一般的に30℃〜45℃程度であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、塗布液が塗布された後、15℃以下、好ましくは10℃以下の空気で冷却するのが好ましく、次いで高温低湿の空気、例えば30〜60℃、相対湿度25%以下、好ましくは20%以下の空気で乾燥させる。この乾燥過程において塗布層の固形分濃度が95重量%から乾燥終了までを相対湿度20〜60%の空気で乾燥することが好ましい。該空気の温度は、27〜43℃程度が好ましく、特に30〜40℃が好ましい。塗布層の固形分濃度とは、塗布液中の全固形分の比率を表し、乾燥過程において塗布層中の溶媒(水分)は蒸発して、徐々に固形分濃度が上昇し乾燥が終了する。本発明は、乾燥時間、即ち塗布液が支持体上に塗布されてから乾燥終了までの時間が6分以内、更には5分30秒以内、特に5分以内の場合に有効である。
【0025】
本発明において、耐水性を向上させるためにカチオンポリマーを含有させるのが好ましい。カチオンポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59ー33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0026】
これらのカチオンポリマーの使用量はシリカ微粒子に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。
【0027】
本発明におけるインク受容層は、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することが好ましいが、そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01重量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50重量%の範囲で用いることができる。
【0028】
本発明において、インク受容層には、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で適当な硬膜剤で硬膜することができる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する水溶性ポリマー100gに対して0.01〜10gが好ましく、より好ましくは0.1〜5gである。
【0029】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0030】
本発明において、塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
【0031】
本発明において、インク受容層は、1層であっても複数層で構成されていてもよい。複数層の場合、機能によって層を分けてもよい。2層以上のインク受容層を同時塗布する場合は、全層の合計の固形分濃度及び合計の塗布量を意味する。
【0032】
本発明に用いられる耐水性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等の樹脂フィルム、また、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂で紙を被覆(ラミネート)した支持体、更にガラス板等が挙げられる。
【0033】
これらの支持体は、透明であっても不透明であってもよい。本発明に用いられる耐水性支持体の厚みは、約50〜200μm程度のものが好ましい。本発明において好ましい支持体は、ポリエチレンテレフタレートやポリオレフィン樹脂被覆紙である。以下、ポリオレフィン樹脂被覆紙について詳細に説明する。
【0034】
ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0035】
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0036】
また、原紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
【0037】
樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0038】
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0039】
本発明において好ましく用いられる支持体である樹脂被覆紙は、走行する原紙上にポリオレフィン樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク受容層が塗布される面(表面)は、その用途に応じて光沢面、マット面などを有し、特に光沢面が優位に用いられる。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、樹脂被覆層の厚みとしては特に制限はないが、一般に5〜50μmの厚味に表面または表裏両面にコーティングされる。
【0040】
本発明における支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0042】
実施例1
支持体として、LBKP(50部)とLBSP(50部)のパルプ配合からなる120g/m2の基紙の表面に低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布し、裏面に高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布してなる樹脂被覆紙を用意した。
【0043】
次のようにして、シリカ分散液を作製した。尚、部とは重量部を表す。
【0044】
水 430部
変性エタノール 22部
ポリジアリルアミン誘導体のカチオンポリマー 3部
(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー
第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、平均分子量9000)
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
ポリビニルアルコール 20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
硼酸 6部
界面活性剤 0.3部
【0045】
分散媒の水と変性エタノールの中にカチオンポリマーを添加し、次いで気相法シリカを添加し予備混合してシリカスラリーを作製した。次にこのシリカスラリーを高圧ホモジナイザーで1回処理して、シリカ濃度が約18重量%のシリカ分散液を作製した。次にこのシリカ分散液にポリビニルアルコール水溶液を添加しさらに硼酸および界面活性剤を添加して高圧ホモジナイザーで分散しインク受容層塗布液を作製した。インク受容層塗布液は、気相法シリカが8重量%の固形分濃度になるように調整した。
【0046】
この際、上記シリカ分散液を20℃で30分、3時間、6時間、12時間、1日及び5日間経時した後にポリビニルアルコール等を加えて塗布液とした。これを順次記録シート1〜6とする。
【0047】
上記支持体に上記のインク受容層塗布液をスライドビード塗布装置で塗布し乾燥した。塗布は、塗布液が出来てから1時間以内に塗布液温度36℃で塗布した。このようにして塗布、乾燥されたインク受容層の塗布面を観察し、次の基準で評価した。
【0048】
<塗布面評価>
○:塗布故障が全く認められない。
△:ハジキが僅かに認められる。
×:ハジキと薄い筋状の塗布故障が部分的に認められる。
【0049】
また、上記記載の6種のインク受容層を塗布したインクジェット記録シートについて下記の評価を行った。尚、インクジェット記録にはセイコーエプソン(株)製PM−770Cカラープリンターを用いて常温常湿条件下で印字を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
<光沢性>
未プリントのインクジェット記録シート表面の光沢を目視で判定。
◎:光沢が非常に高く良好。
○:◎に比べ光沢がやや劣る。
△:○に比べ光沢がやや劣る。
×:光沢が低い。
【0051】
<表面亀裂>
未プリントのインクジェット記録シート表面の亀裂の発生状況を目視で判定。
○:亀裂は全く認められない。
△:亀裂がわずかに認められる。
×:全面に亀裂が認められる。
【0052】
<インク吸収性>
赤ベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全く転写しない。
△:やや転写する。
×:転写が著しい。
【0053】
【表1】
Figure 0004030244
【0054】
上記結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録シートは、インク受容層塗布面が良好で、光沢性、表面亀裂等の表面欠陥性、インク吸収性の何れの性能も満足することができる。
【0056】
実施例3
実施例1の支持体をポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(厚み100μm)に代える以外は実施例1と同様に試験した。その結果、上記実施例1と同様な結果が得られた。
【0057】
実施例4
実施例1の記録シート3及び5において、シリカ分散液の温度が70℃になるように3時間加熱処理してから塗布液を調製する以外は実施例1に従った試料を順次記録シート3A及び5Aとする。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
Figure 0004030244
【0059】
【発明の効果】
本発明により塗布面に筋状の塗布故障が無く、光沢性、表面亀裂、インク吸収性に優れたインクジェット記録シートを提供できる。

Claims (2)

  1. カチオンポリマーを用いてシリカ微粒子を分散した分散液で調製した塗布液を耐水性支持体上に塗布してインクジェット記録材料を製造する方法において、該シリカ微粒子の分散を終了してから該分散液を8時間以上経時した後に、該シリカ微粒子のバインダーとしてのポリビニルアルコールを該分散液に添加して塗布液を調製することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
  2. カチオンポリマーを用いてシリカ微粒子を分散した分散液で調製した塗布液を耐水性支持体上に塗布してインクジェット記録材料を製造する方法において、該シリカ微粒子の分散を終了してから該分散液を5時間以上経時し、且つ50℃以上の加熱処理を施した後に、該シリカ微粒子のバインダーとしてのポリビニルアルコールを該分散液に添加して塗布液を調製することを特徴とするインクジェット記録材料の製造方法。
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