JP4025411B2 - シクロオレフィンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウム触媒存在下に単環芳香族炭化水素を水素添加してシクロオレフィンを製造する方法に関するものである。
シクロオレフィン類、特にシクロヘキセン類は、有機化学工業製品の中間原料としてその価値が高く、特にポリアミド原料、リジン原料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
シクロオレフィン類の製造方法は様々な方法が知られており、その中でも単環芳香族炭化水素をルテニウム触媒を用いて部分的に水素添加する方法が最も一般的であり、選択率や収率を改良アップする方法として、触媒成分や担体の種類、あるいは反応系への添加物としての金属塩などについて検討した結果が多く報告されている。
【0003】
その中でもシクロオレフィンの収率が比較的高い水及び亜鉛が共存する反応系においては、例えば、(1)単環芳香族炭化水素を水及び少なくとも1種の亜鉛化合物の共存下、中性もしくは酸性条件下に水素により部分還元するに際し、触媒として30〜200Åの平均結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする粒子を担体に担持した触媒を用いて行う方法(特公平8−25919号公報)、(2)ルテニウム触媒の存在下に、単環芳香族炭化水素を部分的に水素添加してシクロオレフィンを製造するに当たり、反応系中に、飽和溶解度以下の量の、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛の中の少なくとも1種をすべて溶解状態で存在させて行う方法(特公平5−12331号公報)、(3)単環芳香族炭化水素を水の存在下、水素により部分還元するに際し、200Å以下の平均結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする水素化触媒粒子を用い、少なくとも1種の固体性塩基性亜鉛の共存下、中性または酸性の条件下に反応を行う方法(特公平8−19012号公報)などがすでに提案されている。
【0004】
さらに、ルテニウム触媒を用いて水及び硫酸亜鉛存在下に単環芳香族炭化水素を水素により部分還元してシクロオレフィンを得る方法において、反応系への硫酸やアルカリ性化合物の添加が反応成績にどの様に影響するかについても検討が既に行われており、明らかにされている知見としては、硫酸を添加しても大した触媒性能の変化はなく、アルカリ性化合物を添加すると反応速度の低下及びシクロオレフィン選択率の向上が見られるということである(Applied Catalysis A:General,89(1992)77−102頁)。
【0005】
この他にも、単環芳香族炭化水素を水および少なくとも1種の水溶性亜鉛化合物の共存下、酸性条件下に液相において水素により部分還元するに際し、水素化触媒が、あらかじめ亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛をルテニウムに対し0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであり、かつ、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下である非担持型触媒を使用することを特徴とするシクロオレフィンの製造方法において、「硫酸の添加は反応速度を高めるのに極めて効率的である」というものがある(特公平2−16736号公報)。
【0006】
ルテニウム触媒を用いて単環芳香族炭化水素を部分的に水素により部分水素添加してシクロオレフィンを製造する方法を工業的に実施しようとする場合に、触媒活性を簡易な方法で制御できれば、反応器内の触媒量を変化させずに生産量を変更出来るようになり、あるいは触媒の経時的活性低下を補えるようになる。さらに、触媒活性を変化させる方法は可逆的であることが当然要求される。もし可逆的に触媒活性を変えられなければ、触媒活性を変化させた後に再びもとの触媒活性に戻せなくなり、生産量の低下を招く。従って、可能な限り可逆的な方法がよく、繰り返し触媒活性の変更、つまり触媒活性のアップとダウンを繰り返し行っても、元の状態に戻せないような不可逆的変化を与えない方法が望まれる。
【0007】
この触媒活性を変化させる方法としては、反応温度や反応圧力を変えて行う方法があるが、これらの条件を変更すると、工業的製造設備においては反応器の除熱設備や水素圧縮工程も同時に調整することが必要となり、非常な手間がかかり、これらの方法は、好ましい方法とは言えない。
この他にも容易に思いつく方法として、反応系内の触媒を系外に部分的に抜き出したり入れたりしてシクロオレフィンの製造量を変化させる方法があるが、反応系が高温高圧であるためにその操作は容易ではない。例えば、シクロオレフィンの製造量を20%変化させたい場合には反応系内の触媒量の20%相当の出し入れが必要であるが、年産1万トン以上のシクロオレフィンを製造するような工業的規模の連続製造設備の場合は、少なくとも反応系内触媒スラリー量は数千リットルとなっており、この内の20%の触媒スラリーを出し入れするためには安全上の相当な配慮が必要で、かつ設備的にも大きなものとなる。ましてや、それを頻繁に行うことは容易なことではなく、現実的でない。従って、この方法も、第一の方法とはならない。
【0008】
一方、既に検討されている硫酸添加の知見には、大きな変化がないというものがあり、これに従うと触媒活性を変えるための方法として適用出来ないということになる。また、硫酸添加が反応速度を高めるのに効果があるという前記公報の記載についても、実施例がないばかりか、硫酸添加の触媒に与える影響が可逆的なのか不可逆的なのかについては一切の記載がない。さらに、既に明らかにされているアルカリ性化合物の添加に関する知見についても、反応速度が低下するもののシクロオレフィンの選択率が大きく変化するといったもので、この変化ついても可逆的なのか不可逆的なのか不明である。
【0009】
以上のように、従来の技術には、触媒活性を可逆的に変化させてシクロオレフィンを製造する方法を工業レベルで簡便に実施可能な技術として具体的に提案したものはない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡便な方法で、シクロオレフィンの選択率をほとんど変化させることなく、ルテニウム触媒の活性を可逆的に変えることにより、前記したような従来の問題を解決し、単環芳香族炭化水素を水素添加してシクロオレフィンを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩存下、単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、触媒活性を可逆的に変化させる方法を見いだし、かつ選択性や収率に殆ど影響を及ぼさない方法をも見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1)ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩存在下、単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩を含む触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持し、常温常圧における触媒の存する水相のpHが2.5以上7.0未満を満たす範囲で、前記触媒スラリーに硫酸とアルカリ性化合物とを添加し、シクロオレフィンの選択率を変化させることなく触媒活性を可逆的に変化させることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
【0013】
2)硫酸とアルカリ性化合物が、高温高圧水素下で24時間以上保持した、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩からなる触媒スラリーに添加して用いられることを特徴とする上記1記載の方法。
3)硫酸とアルカリ性化合物が、該反応を現に行っている触媒スラリーに添加して用いられることを特徴とする上記1または2記載の方法。
【0014】
4)硫酸とアルカリ性化合物が、触媒スラリーが乱流を形成して循環している場所に添加して用いられることを特徴とする上記1、2または3記載の方法。
5)硫酸とアルカリ性化合物が、触媒スラリーが油水分離器から反応器へ循環する配管へ添加して用いられることを特徴とする上記3または4記載の方法。
6)硫酸とアルカリ性化合物が、反応系内に存在する全触媒スラリー量と同等量の触媒スラリーが循環するのに要する時間以上をかけて添加して用いられることを特徴とする上記4または5記載の方法。
【0015】
7)アルカリ性化合物が、金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の塩基性金属塩であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の方法。
8)アルカリ性化合物が、金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の水酸化物、酸化物、及び/又は、かかる金属化合物と金属硫酸塩の複塩であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の方法。
【0016】
9)金属硫酸塩が、硫酸亜鉛であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の方法。
10)金属硫酸塩が、水の1×10-5〜1.0重量倍である上記1〜9のいずれかに記載の方法。
11)水が、単環芳香族炭化水素の0.5〜20重量倍存在することを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の方法。
【0017】
12)ルテニウム触媒が、ルテニウム化合物を予め還元して得られる金属ルテニウムであることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の方法。
13)ルテニウム触媒が、ルテニウム化合物を予め還元することによって得られる金属ルテニウムであり、かつ、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする上記12記載の方法。
【0018】
14)ルテニウム触媒が、予め亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛を含有したルテニウムであって、かつルテニウムに対して亜鉛を0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであり、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする上記12または13記載の方法。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で原料として用いられる単環芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び、通常炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されたベンゼンが挙げられる。
本発明で用いるルテニウム触媒は、数々のルテニウム化合物を予め還元して得られる金属ルテニウムを含む触媒である。ルテニウム化合物は、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物、あるいは、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、あるいは各種のルテニウムを含む錯体、例えば、ルテニウムカルボニル錯体、ルテニウムアセチルアセトナート錯体、ルテノセン錯体、ルテニウムアンミン錯体、及び、かかる錯体から誘導される化合物を用いることができる。さらにこれらルテニウム化合物を2種以上混合して用いることも出来る。
【0020】
これらのルテニウム化合物の還元法としては、水素や一酸化炭素などによる接触還元法、あるいは、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどによる化学還元法が用いられる。このうち、好ましくは水素による接触還元であり、この場合には通常50〜450℃、好ましくは100〜400℃の条件で還元活性化する。還元温度が50℃未満では還元に時間がかかりすぎ、また、450℃を超えるとルテニウムの凝集が進み、活性や選択率に悪影響を及ぼすことがある。尚、この還元においては気相で行っても液相で行ってもよいが、好ましくは液相還元である。液相で行えば、液相還元の際に用いる水などに溶解性を示す不純物は除去できるからである。不純物が反応系に侵入すると、多くの場合にシクロオレフィンの選択率を低下させたり、触媒活性を低下させるなどの悪影響を示す可能性がある。
【0021】
ルテニウム触媒は、製造するシクロオレフィンの選択率を高めるために、予め上記還元操作を行い、還元したものを用いることが好ましい。
また、ルテニウム化合物の還元前もしくは還元後において、他の金属や金属化合物、例えば、亜鉛、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、金、白金など、及び、これらの金属の化合物を加えることによって得られるルテニウムを主体とするものを用いてもよい。かかる金属や金属化合物を使用する場合には、ルテニウム原子に対する原子比として通常0.001〜20の範囲で選択される。この中でも好ましくは亜鉛や亜鉛化合物であり、亜鉛や亜鉛化合物はルテニウム化合物の還元前に加えられることが、高いシクロオレフィン選択率を得るのには好ましく、その加える量としては、ルテニウムに対して亜鉛が0.1〜50重量%含有する量がとりわけ好ましい。これら亜鉛化合物としては、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛などが例示される。
【0022】
ルテニウム触媒は、担体に担持させて使用しても良い。担体としては特に制限されるものではないが、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、シリコン、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、タングステンなど、あるいは、かかる金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物、硫酸塩、難水溶性金属塩、あるいは、このような担体となりうるものを2種以上化学的あるいは物理的に組み合わせた化合物や混合物などが例示される。ルテニウムの担持方法としては、吸着法、イオン交換法、浸せき法、共沈法、乾固法、スプレー法などが例示される。ルテニウムの担持量については、通常担体に対して0.001〜20重量%である。担持量が少なすぎると担体が多量に必要であり、また多すぎると担体表面上で凝集し、活性点であるルテニウムの金属表面が減少し、非効率である。
【0023】
しかし、ルテニウム触媒は、より高いシクロオレフィン選択率を得るために、ルテニウムを担体に担持せずにルテニウムあるいはルテニウムを含む還元金属粒子のまま用いる方がより好ましい。この場合には、そのルテニウム金属の平均結晶子径は200Å以下が好ましい。200Åを超える平均結晶子径では、単環芳香族炭化水素を部分水素化する触媒の活性点が存在する表面の面積が減少して触媒活性が低くなり、多量のルテニウムが必要となるので効果的とは言えない。ルテニウム金属の平均結晶子径の下限は、現実的には10Åである。
【0024】
本発明の反応系においては水の存在が必要であり、その量は反応形式によって異なるが、通常、用いる原料単環芳香族炭化水素の0.001〜100重量倍である。水の量が少なすぎるとシクロオレフィンの選択率の低下を招き、また水の量が多すぎると反応器が大きくなる等弊害があるため、好ましくは用いる原料単環芳香族炭化水素に対して0.5〜20重量倍共存させるのが良い。
【0025】
但し、いずれの場合においても、反応条件において原料及び生成物を主成分とする有機物液相と、水を含む液相とが1相とならない量の水が存在している必要がある。言い換えると、原料及び生成物が主成分の有機物液相つまりオイル相と水が主成分の水相が相分離した状態、つまりオイル相と水相の液2相状態となる量の水が存在していなければならない。尚、ここに言う主成分とは、該液相を構成する成分のうちモル数にして最大割合を示す成分のことである。
【0026】
また、反応系に共存させる水が形成する水相中の水素イオン濃度つまりpHは、2.5以上7.0未満の酸性でなければならない。
さらに、本発明においては、金属硫酸塩が存在している必要があり、反応系において全量が固体で存在する必要はなく、好ましくは反応系に存在する水相に少なくとも一部あるいは全部が溶解状態で存在する必要がある。存在する金属硫酸塩は、亜鉛、鉄、ニッケル、カドミウム、ガリウム、インジウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、銅などが挙げられ、これらを2種以上併用してもよいし、かかる金属硫酸塩を含む複塩であってもよい。特に、金属硫酸塩として硫酸亜鉛を用いることが、高いシクロオレフィン選択率を達成できるので、とりわけ好ましい。また、用いる金属硫酸塩の量は、反応系に存在する水の1.0×10-5〜1.0重量倍であり、特に金属硫酸塩として硫酸亜鉛を用いる場合には、1.0×10-4〜0.5重量倍がより好ましい。
【0027】
本発明において、反応系へは、従来知られた方法の如くに下記の金属塩を存在させてもよい。金属塩の種類としては、周期表のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1族金属、マグネシウム、カルシウムなどの2族金属(族番号はIUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による)、あるいは亜鉛、マンガン、コバルト、銅、カドミウム、鉛、砒素、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、バナジウム、クロム、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム、バリウム、アルミニウムなどの金属硝酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物、酢酸塩、燐酸塩など、又はこれらを2種以上化学的及び/又は物理的に混合して用いることなどが例示され、この中でも水酸化亜鉛、酸化亜鉛などの亜鉛塩の添加は好ましく、特に水酸化亜鉛を含む複塩、例えば、一般式(ZnSO4 )m ・(Zn(OH)2 )n で示される複塩(但し、m:n=1:0.01〜100)の存在は好ましい。
【0028】
金属塩の使用量は、水相のpHを常温常圧測定下2.5以上7.0未満に保ちうる限り、特に制限はないが、通常は、用いるルテニウムに対して1×10-5〜1×105重量倍であり、これらは反応系内のどこに存在してもかまわず、存在形態については、必ずしも全量が水相に溶解している必要はない。
さらに、水の他に水酸基を1つ以上持つ1種類以上の有機物が反応系内に存在していても良く、その量についても特に制限はないが、水及び単環芳香族炭化水素とそれらから得られるシクロオレフィンとシクロアルカンの両方を反応条件下溶解させ得るものについては、反応系内に存在する水相とオイル相が液相として1相とならない範囲が好ましい。つまり、該有機物の添加量は該反応液が該水相及び該オイル相の液相2相状態の存在を保ちうる範囲が好ましい。
【0029】
本発明の重要な特徴は、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩存下、単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、常温常圧における触媒の存する水相のpHが2.5以上7.0未満を満たす範囲で、硫酸とアルカリ性化合物とを用いることで触媒活性を可逆的に変化させた触媒を用いてシクロオレフィンを製造する点にある。すなわち、2つの技術、硫酸の添加とアルカリ性化合物の添加を組み合わせて用いることで触媒活性を可逆的に変化させた触媒を用い、シクロオレフィンを製造する点にある。
【0030】
触媒活性を可逆的に変化させることとは、触媒活性を上げたり下げたり繰り返し行えることをいう。すなわち、触媒活性をアップさせたい時は硫酸を添加し、触媒活性をダウンさせたい時はアルカリ性化合物を添加する。これにより触媒活性を上げたり下げたりでき、何度も繰り返し行うことができる。
さらには、そのアルカリ性化合物として、反応系に存在する金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の塩基性金属塩、とりわけ酸化物、水酸化物、及び又は、かかる金属化合物、好ましくは酸化物、水酸化物、と金属硫酸塩とで構成される複塩を用いると、反応系内で添加した硫酸と添加したアルカリ性化合物が中和して、主に金属硫酸塩となるために、反応系内の金属硫酸塩量が上昇するだけであり、この金属硫酸塩量の上昇は、添加する硫酸と塩基性金属塩の量が元々反応系に存在させていた金属硫酸塩の量に比べて極めて少量のため、実質的に無視できるし、他の化合物の蓄積もないため、特に好ましい。
【0031】
尚、反応系に存在する金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の塩基性金属塩、とりわけ酸化物、水酸化物、及びかかる金属化合物と金属硫酸塩とで構成される複塩とは、例えば、金属硫酸塩として硫酸亜鉛を用いる場合には、塩基性亜鉛、とりわけ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、及び一般式(ZnSO4 )m ・(Zn(OH)2 )n で示される複塩(但し、m:n=1:0.01〜100)が例示され、金属硫酸塩として硫酸カドミウムを用いる場合には、塩基性カドミウム、とりわけ酸化カドミウム、水酸化カドミウム、及び、一般式(CdSO4 )m ・(Cd(OH)2 )n で示される複塩(但し、m:n=1:0.01〜100)が例示される。
【0032】
本発明の方法で、触媒活性を繰り返し上げたり下げたりできる理由は、添加したアルカリ性化合物が硫酸により中和されて、事実上触媒に対する被毒性を大きく減じあるいは消滅するためと考えられる。従って、理想的には、例えば、アルカリ性化合物として水酸化亜鉛を用いた場合で説明すると、比活性が1の触媒系に水酸化亜鉛を0.1モルを加えて比活性が0.7となったとすると、これに硫酸0.05モルを加えると0.7<比活性<1となり、さらに硫酸0.05モル加えると比活性は1に戻ると考えられる。実際に、実験結果では比活性の替わりに反応時間対ベンゼン転化率の関係で比較したものを見ると、この現象がよく観察されている。
【0033】
しかし、決してこの現象はルテニウム触媒の存する水相中のpHが変化するため、あるいはpHが中和されるためだけで起こっているのではない。ルテニウム触媒は、高温高圧水素下に保持されると経時的にその性質を変化させ、硫酸やアルカリ性化合物の添加によるシクロオレフィン選択率への影響が発現しにくくなることからも明らかである。つまり、24時間以上高温高圧水素下に曝した、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩から成る触媒スラリーを用いると、硫酸やアルカリ性化合物を添加して用いた影響がシクロオレフィン選択率にはほとんど現れないことからも理解出来る。恐らく、ルテニウム触媒が水や金属硫酸塩とともに高温高圧水素下で保持されることで、ルテニウム触媒近傍に存在する金属硫酸塩あるいはその派生物がルテニウム触媒に作用する仕方や形態を変化させ、硫酸やアルカリ性化合物の添加に対する感受性を変化させているためと考えられる。
【0034】
ただ、これまで公知となっている知見、つまりルテニウム触媒、水、硫酸亜鉛共存下、酸性条件で単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させる方法で硫酸を添加しても反応に大きな影響がないという知見と、本発明者らが今回明らかにした知見とは、驚くべき事に全く異なっている。この公知となっている知見に従うと、硫酸の添加は意味がないということになる。従って、本発明者らが明らかにした硫酸添加で触媒活性が上がる現象は、この公知の知見からは全く予想も出来ないことである。このような違いが生じたのは、恐らく、硫酸の添加量が大きく違っている点にあると考えられる。
【0035】
本発明においては、添加する硫酸の量は非常に少なく、常温常圧条件下での水相中のpHが少なくとも2.5以上で7.0未満の酸性の範囲である。これに対し、公知となっている知見ではpH=2.4になるまで硫酸を添加している。
もう一つの公知となっている知見、つまり、特公平2−16736号公報において記載されている「硫酸の添加は反応速度を高めるのに極めて効率的である」という知見は、硫酸の添加が反応成績に与える影響として反応速度を高めるとしか記載しておらず、実施例もない。ましてや、硫酸の添加が触媒に対して可逆的に働いているのか不可逆的に働いているのかということについて一切の記載がない。従って、この知見からも、今回本発明者らが見出した可逆的に触媒活性を変化させる方法を容易に想到することは不可能である。
【0036】
さらに、ただ単に硫酸を添加しただけでは、シクロオレフィンの選択率が低下して必ずしも効率的とはならない。好ましくは、硫酸を添加して用いる場合には、高温高圧水素下で24時間以上保持した、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩からなる触媒スラリーに用いた方がより効率的である。なぜならば、高温高圧水素下で24時間以上保持した、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩からなる触媒スラリーに硫酸を添加しても触媒活性は向上するうえに、シクロオレフィンの選択率はほとんど影響を受けないからである。さらに、100時間以上高温高圧水素下に保持した触媒スラリーに用いると、硫酸とアルカリ性化合物の繰り返し回数をより一層多くしても、可逆性がより損なわれにくく、より好ましい。
【0037】
尚、ここに言う高温高圧水素下とは、100〜200℃、1〜100atmで水素下に曝すことを言い、気相部の水素分圧は、1〜100atmである。より好ましくは、110〜160℃、20〜90atmであり、この場合の気相部水素分圧は20〜90atmである。温度や圧力が低すぎると、高温高圧保持の効果が発現するのに時間がかかり過ぎて現実的な方法となりえず、一方、温度や圧力が高すぎると、触媒活性等に悪影響が出始めるので、前記の温度及び圧力範囲が好ましい。さらに、保持時間が短すぎると高温高圧保持の効果が不十分となるので、保持時間は24時間以上、好ましくは100時間以上である。
【0038】
この高温高圧水素下で触媒スラリーを保持する操作は、シクロオレフィンの製造において、該水素添加反応を行いつつ行っても上記範囲内であれば一向に差し支えない。即ち、24時間以上、好ましくは100時間以上シクロオレフィンを製造する反応を行った触媒スラリーに、硫酸とアルカリ性化合物を添加して用いても全く構わない。
【0039】
上記の高温高圧水素下における触媒スラリーの保持は、前記の時間以上であれば特に制限はないが、反応を行わないで高温高圧水素下での保持を行う場合には、現実的には1000時間程度が上限となる。その理由は、1000時間程度高温高圧水素下で保持すれば十分その効果を発揮でき、それ以上の長い時間保持を行っても、時間をロスするだけで無駄であり、反応を開始してシクロオレフィンの製造を開始する方がよいからである。また、反応を行いつつ高温高圧水素下での保持を行う場合には、他の外乱により触媒が使用できなくなるまで保持を行ってもよい。通常、10000時間〜50000時間使用するとルテニウム触媒は使用できなくなり、新しい触媒に交換する必要が生じる。
【0040】
本発明において、硫酸とアルカリ性化合物とを添加して用いることをかなりの回数繰り返して、反応系内のアルカリ性化合物及びその派生物の濃度が無視出来ないほど上昇した場合には、触媒スラリーの一部を静置沈降してアルカリ性化合物及びその派生物を含む上澄みを水と交換することで、その上昇を抑える事ができる。しかし、アルカリ性化合物を、元々反応系に存在する金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の塩基性金属塩、とりわけ酸化物、水酸化物、及びかかる化合物と金属硫酸塩とで構成される複塩を用いれば、硫酸と中和して、反応系に大量に存在する金属硫酸塩となり、さらに、この金属硫酸塩は、生成物を反応器から取り出す際に微量ながらシクロオレフィンなどの生成物に混じってあるいは溶解して流出するので、工業的にはこの蓄積の問題は通常発生しない。
【0041】
本発明において、硫酸とアルカリ性化合物の添加の方法は、硫酸とアルカリ性化合物を同時に添加して用いてもよいし、別々に添加して用いても良い。同時に行う場合は、添加して用いる硫酸とアルカリ性化合物の各々のモル比に注意が必要で、触媒活性を高めたい場合にはこれらが反応系内で混合中和しても過剰な硫酸が残るようなモル比で添加して用いなければならない。逆に触媒活性を落としたい場合には、これらが反応系内で混合中和しても過剰なアルカリ性化合物が残るようなモル比で添加するのが好ましい。
【0042】
触媒活性を制御するという目的から考えて、好ましくはこれらを添加して用いる時期をずらして別々に添加して用いた方が効率的である。つまり、はじめに硫酸を添加して用いてシクロオレフィンを製造する反応を行った後で、アルカリ性化合物を添加して用いてシクロオレフィンを製造する反応を行ってもよい。さらに硫酸の添加とアルカリ性化合物の添加は必ずしも交互に行う必要はなく、触媒活性の変更が必要になった時に必要な硫酸またはアルカリ性化合物を添加して用いればよい。さらに、この間にシクロオレフィンを製造する反応を中断することなく継続したままでこれらの添加を行っても一向に差し支えない。
【0043】
本発明において、アルカリ性化合物とは、1規定の濃度の硫酸水溶液と常温常圧アルゴン雰囲気下で混合することで反応して水及び/又は水素の分子を少なくとも発生する化合物、又は、該シクロオレフィンを製造する反応条件下において変化して硫酸に対して塩基となる化合物である。
前者の化合物としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Y、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Cr及びこれら金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、及びかかる金属、水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩の少なくとも1種以上含む複塩等が例示される。特に、工業的に豊富な原料から大量に生産され入手しやすいアルカリ金属の水酸化物や酸化物あるいは亜鉛の水酸化物や酸化物は、その効果が速やかかつ明快な点で好ましい。
【0044】
また後者の化合物としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Y、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Cr等の硝酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩、バナジウム酸塩、ゲルマニウム酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、リン酸塩、マンガン酸塩、セレン酸塩、亜セレン酸塩、砒酸塩、窒化物、アジ化物等、及びかかる金属を中心金属に持つ有機錯体、特にその配位子にアミノ基、ジアゾ基、シアノ基等を持つ含窒素有機錯体等、及び硝酸、及びアンモニア等、及びメチルアミン等や各種アミノ酸等の含窒素有機物等が例示される。
【0045】
しかし、前述したように、添加して用いる量が微量とは言え、反応系に元々存在する金属硫酸塩を構成する金属以外の金属または窒素または炭素を含むアルカリ性化合物を用いると、それらまたはそれら由来の化合物が反応系内に蓄積するので、この中でもより好ましくは、反応系に存在する金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の塩基性金属塩をアルカリ性化合物として用いるのがよい。
【0046】
本発明において、アルカリ性化合物は含水物でもよく、また、反応系内に供給する水や単環芳香族炭化水素と混合して反応系に添加して用いることも出来る。また、金属硫酸塩水溶液と混合して反応系へ添加して用いることも全く問題ない。
本発明において、添加して用いる硫酸は、濃度95wt%以上の市販されている濃硫酸をそのまま用いていもよいし水で希釈して用いてもよい。また、市販されている濃度95wt%未満の希硫酸をそのまま用いてもよいし、さらに水で希釈して用いてもよい。さらにこれらと同等の品質(純度や不純物含有量など)を有する硫酸を用いてもよい。通常、このような市販品に含まれる極微量の不純物、例えば、Fe、Cl、Cu、Pb、As、Seなどを含んでいるものでも差し支えない。しかし、好ましくは和光純薬工業製・特級試薬以上あるいはこれと同等以上の品質を有するものがよい。
【0047】
また、本発明において、硫酸とアルカリ性化合物は、反応系に存する液相、気相のどちらに添加して用いてもよいが、より好ましくは液相に添加するのがよい。その中でも添加して用いた硫酸とアルカリ性化合物の効果をできるだけ均一に触媒に作用させるために、ルテニウム触媒、水、金属硫酸塩で構成される触媒スラリーが流動し、絶えず反応系内に存する触媒スラリー全体と良く混合される場所に、これらを添加して用いることが好ましい。例えば、反応容器内の攪拌羽根の攪拌力が及ぶ範囲内や触媒スラリーを絶えず循環している場所が好ましい。
【0048】
現に反応を行っている触媒スラリーに硫酸やアルカリ性化合物を添加して用いる場合に、その添加は、間欠式でも連続式でもかまわない。間欠式で硫酸やアルカリ性化合物を添加する場合には、添加した効果が添加前後における生成物の分析値から判断できるが、触媒活性の急激な変化のために反応系が乱れる。一方、連続式で添加する場合には、添加の効果を把握しにくくなるが、反応系は安定する。したがって、反応成績の管理方法によって適宜選択されることになる。
【0049】
但し、間欠式で硫酸やアルカリ性化合物の添加を行う場合には、添加の効果が反応系に存する触媒に均等に生じるように時間をかけて行うのが好ましく、この時間は、反応系内のルテニウム触媒の量や硫酸やアルカリ性化合物の添加量によっても大きく異なるが、一回の添加は1秒〜24時間程度の時間をかけて行うことが好ましい。
【0050】
さらに、現に反応を行っている触媒スラリーへ硫酸やアルカリ性化合物を添加する場合で、触媒スラリーが反応温度付近すなわち50℃以上の高温となっている場合は、特別の注意が必要である。なぜなら、50℃以上の高温となっている触媒スラリーに硫酸やアルカリ性化合物を添加して用いれば、その作用が速やかに行われるために、添加した部分の極周辺の限られた触媒スラリーに偏って作用することになりかねず、添加して用いた効果は大きく減じられることになるからである。
【0051】
その注意とは、第一に、硫酸やアルカリ性化合物の添加が、触媒スラリーが乱流を形成して流動している場所に行われることが好ましいということである。温度が高い分だけ添加した硫酸やアルカリ性化合物は速やかに触媒スラリーに作用するので、触媒スラリー全体に均質に広がりにくくなる。したがって、好ましくは、触媒スラリーが十分に流動している場所で、より好ましくは乱流状態となって流動している場所がよい。尚、ここに言う乱流とは化学工学で定義されるレイノルズ数が4000以上となる状態である。
【0052】
第二に、硫酸やアルカリ性化合物の添加の効果をさらにより均質に触媒スラリー全体へ作用させるために、上記の第一の注意に記載したことに加え、循環している場所へ硫酸やアルカリ性化合物を添加することがとりわけ好ましい。例えば、触媒スラリーと単環芳香族炭化水素及びその反応生成物から成るオイル分とを分離する油水分離器によって触媒スラリーとオイル分を分離し、その分離した触媒スラリーが反応器へ戻すために現に循環している配管内へ、硫酸やアルカリ性化合物を添加することなどが挙げられる。
【0053】
第三に、硫酸やアルカリ性化合物の添加効果をより一層均質に触媒スラリー全体へ作用させるために、上記の第二の注意において、触媒スラリーが現に循環している配管内へ硫酸を添加する際に、時間をかけて行うことが肝要である。時間が短ければ、硫酸を添加した際に、配管内を現に流れる触媒だけに硫酸が作用しかねず、均質な作用を実現しにくいからである。硫酸添加にかけるより好ましい時間をより詳しく説明すると、反応系内に存在する全触媒スラリー量と同等量の触媒スラリーがその配管内を通過して循環するのに要する時間以上が好ましい。例えば、反応系内の全触媒スラリー量が1000mlで、触媒スラリー循環量が毎分200mlである場合を考えると、5分間以上かけて硫酸を添加することが好ましいということになる。
【0054】
硫酸やアルカリ性化合物を添加して用いる際に、反応を行っていない触媒スラリーと、現に反応を行っている触媒スラリーとを比較すると、現に反応を行っている触媒スラリーに添加して用いるほうが好ましい。その理由は、添加して用いた効果が、現に反応を行っている触媒スラリーの方が速やかに判明し、その都度、添加しても用いる量を調整できるからである。現に反応を行っていない触媒スラリーの場合だと、反応を行って見ないとその添加して用いた効果が正確に把握しにくいため、添加して用いた量が誤っていた場合に再び反応を停止しなければならない等の余分な操作が発生するからである。尚、ここに言う現に反応を行っている触媒スラリーとは、シクロオレフィンが生成する条件下に置かれている状態の触媒スラリーを言う。
【0055】
本発明者らが開発した触媒活性を変化させる方法を用いること、即ち、反応を開始する前にあらかじめ硫酸とアルカリ性化合物をそれぞれ適当量反応系に添加しておくことで、触媒活性の調節ができるが、本発明の方法を用いる最大の効果は、前述した通り、反応を開始した後の反応中、つまり現に反応を行っている触媒スラリーへ硫酸やアルカリ性化合物を添加して用いることで触媒活性を可逆的に変えることができる点にある。特に、連続式反応形式を用いて反応させる場合には、本発明の方法を用いることで、製造設備を停止することもなく随時触媒活性を可逆的に変えることができるので、生産量の変動に対しても反応系の触媒量を変化させずとも、または反応温度や反応圧力を変化させずとも、触媒活性を変化させて、可逆的に対応することが可能となる。
【0056】
さらに、本発明の方法は、触媒活性を変化させる際に、触媒スラリーを反応系外に取り出して水洗等の処理を行うことも特に必要とせず、そのための廃棄物も発生しない。これは、先に述べた従来技術の問題を解決する極めて有効な方法であり、本発明の技術なくしてはシクロオレフィンを工業的に効率よく生産することは不可能であり、画期的技術といえる。
【0057】
本発明において、反応圧力は、一般に10〜200atmであり、好ましくは20〜70atmである。
なお、本発明において、常温常圧とは、20℃、1atmである。
本発明の製造方法は、回分式反応方式及び連続式反応方式の両方に適用できるが、先述の如く、連続式反応方式を採用する場合において極めて有効な製造方法となる。
【0058】
さらに、ルテニウム触媒の平均結晶子径の測定は、用いるルテニウム触媒をX線回折法によって得られる回折線幅の拡がりからScherrerの式より算出して行った。具体的には、CuKα線をX線源として用いて、回折角(2θ)で44゜付近に極大をもつ回折線の拡がりから算出したものである。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り実施例に限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例に示されるシクロヘキセンの選択率は、実験の濃度分析値を基に、次に示す式により算出した値を表したものである。
【0060】
シクロヘキセン選択率(%)=(反応により生成したシクロヘキセンのモル数)×100/P
但し、
P(モル数)=(反応により生成したシクロヘキセンのモル数)+(反応により生成したシクロヘキサンのモル数)
また、ベンゼン転化率は、実験の濃度分析値を基に、次に示す式により算出した転化率を表したものである。
【0061】
ベンゼン転化率(%)=(反応により消費されたベンゼンのモル数)×100/(反応器へ供給したベンゼンのモル数)
【0062】
[参考例1]
(触媒調整)触媒調整は、既に知られている下記の方法で行った。塩化ルテニウム(RuCl3 ・3H2O)を50g、塩化亜鉛130g及び1規定の塩酸5.0リットルを混合攪拌し、これに30重量%の水酸化ナトリウム水溶液1.0リットルを瞬時に加えた後、この混合溶液を70〜90℃で2時間攪拌した。この後、放冷して静置後、上澄みを除去し、沈降する黒色沈殿物を濾紙を用いて濾過した。
【0063】
濾紙上に残った黒色沈殿物を1リットルのビーカーに移した後、アルカリ水溶液で洗浄する目的で、このビーカーに1規定の水酸化ナトリウム水溶液を500ml加えて常温下1時間攪拌した。攪拌終了後、静置沈降し、上澄みを除去し、再び濾紙で濾過を行った。このアルカリ洗浄を3回繰り返した。この操作で得た黒色沈殿物は、大部分が水酸化亜鉛を含有する水酸化ルテニウムであった。
【0064】
この黒色沈殿物を5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に分散させ、内面にテフロンコーティングした内容積1リットルのオートクレーブに仕込み、水素により内部の空気を置換した後、50atm、150℃の水素下で攪拌しながら36時間還元した。冷却し落圧後、黒色沈殿物を濾紙で濾過し、濾紙上に残った黒色沈殿物を1リットルのビーカーに移した後、アルカリ水溶液で洗浄する目的で、このビーカーに30重量%の水酸化ナトリウム水溶液を500ml加えて常温下1時間攪拌した。攪拌終了後、静置沈降し、上澄みを除去し、再び濾紙で濾過を行った。
【0065】
このアルカリ洗浄を5回繰り返し、さらに30重量%水酸化ナトリウムの替わりに水を用いる以外は、上記のアルカリ洗浄と同様の操作で水洗を10回行った。これを真空乾燥し、黒色のルテニウム触媒を18gを得た。このルテニウム触媒は、亜鉛を5.3重量%含有するルテニウム触媒(平均結晶子径約59Å)であった。
【0066】
(実験1)
上記の操作で得たルテニウム触媒18gの内の1.5g、分散剤としてジルコニアを7.5g(平均結晶子径約200Å)、常温の水280ml、ZnSO4 ・7H2 O(和光純薬工業製・特級)49gを、反応容器として用いる内容積1リットルの内面をテフロンコーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ130℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0067】
この後に水10mlを高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、水の添加を完了した後、直ちに130℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、130℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0068】
(実験2)水10mlの代わりに、硫酸10mgを水で薄めて10mlとしたものを高圧ポンプで反応容器内の触媒スラリーへ10分間かけて添加する以外は、参考例1の実験1と同様の方法で実験を行った。
(実験3)上記の実験2で使用した反応液を回収し、有機物を完全に除去した後に触媒スラリーを全量回収した。この触媒スラリーを、反応容器として用いる内容積1リットルの内面をテフロン(登録商標)コーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ130℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0069】
この後に、実験2で添加した硫酸と等モル量の酸化亜鉛を水10mlとともに高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、この添加を完了した後、直ちに130℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、130℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中、経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0070】
参考例1で行った実験1、実験2及び実験3においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、かつ、反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。
参考例1の実験1、実験2及び実験3を比較すると、硫酸の添加によって触媒活性が向上し、酸化亜鉛の添加で触媒活性が低下して硫酸添加前の触媒活性に戻っており、触媒活性を可逆的に変化させたことが判る。尚、実験2においては、実験1及び実験3と比較して、シクロヘキセン選択率は、ベンゼン転化率が同一のところで評価して、数%以上低かった。
【0071】
[実施例1]
(実験1)参考例1の(触媒調整)の操作で得たルテニウム触媒18gの内の1.5g、分散剤としてジルコニアを7.5g(平均結晶子径約200Å)、常温の水280ml、ZnSO4・7H2O(和光純薬工業製・特級)49gを、反応容器として用いる内容積1リットルの内面をテフロン(登録商標)コーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ130℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0072】
この状態で、つまり高速攪拌下130℃、50atmの高温高圧水素下で昇圧完了後から24時間保持し、この後に水10mlを高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、水の添加を完了した後、直ちに130℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、130℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中、経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0073】
(実験2)水10mlの代わりに、硫酸10mgを水で薄めて10mlとしたものを高圧ポンプで反応容器内の触媒スラリーへ10分間かけて添加する以外は、実施例1の実験1と同様の方法で実験を行った。
(実験3)上記の実験2で使用した反応液を回収し、有機物を完全に除去した後に触媒スラリーを全量回収した。この触媒スラリーを、反応容器として用いる内容積1リットルの内面をテフロン(登録商標)コーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ130℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0074】
この後に、実施例1の実験2で添加した硫酸と等モル量の酸化亜鉛を水10mlとともに高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、この添加を完了した後、直ちに130℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、130℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中、経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0075】
参考例1で行った実験1、実験2及び実験3においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、高温高圧水素下の保持において反応容器内の触媒スラリーは十分攪拌されており、かつ、反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。
実施例1の実験1、実験2及び実験3を比較すると、硫酸の添加によって触媒活性が向上し、酸化亜鉛の添加で触媒活性が低下して硫酸添加前の触媒活性に戻っており、触媒活性を可逆的に変化させたことが判る。かつ、シクロヘキセン選択性もこれら操作でほとんど変化していない。
【0076】
[実施例2]
(触媒調整)塩化亜鉛を用いなかった点を除いて、参考例1の(触媒調整)と同様の操作で、予めルテニウム化合物を還元することによって得たルテニウム触媒(結晶子径56Å)15gを得た。
【0077】
(実験1)
上記の操作で得たルテニウム触媒15gの内の0.5g、常温の水280ml、ZnSO4 ・7H2 O(和光純薬工業製・特級)49gを、内容積1リットルの内面をテフロンコーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ150℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0078】
この状態で、つまり高速攪拌下150℃、50atmの高温高圧水素下で昇圧完了後から24時間保持し、この後に水10mlを高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、水の添加を完了した後、直ちに150℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、150℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中、経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0079】
(実験2)水10mlの代わりに、硫酸5mgを水で薄めて10mlとしたものを高圧ポンプで反応容器内の触媒スラリーへ10分間かけて添加する以外は、実施例2の実験1と同様の方法で実験を行った。
(実験3)上記の実施例2の実験2で使用した反応液を回収し、有機物を完全に除去した後に触媒スラリーを全量回収した。この触媒スラリーを、反応容器として用いる内容積1リットルの内面をテフロン(登録商標)コーティングしたオートクレーブに仕込み、内部のガスを水素で十分置換して反応容器を密閉、誘導攪拌法により高速攪拌を行いつつ150℃まで昇温した後、高圧水素を導入して50atmまで昇圧した。
【0080】
この後に、実施例2の実験2で添加した硫酸と等モル量の酸化亜鉛を水10mlとともに高圧ポンプで反応容器内へ10分間かけて添加し、この添加を完了した後、直ちに150℃の液体ベンゼン140mlを一気にオートクレーブ内に圧入し、水素を圧入しつつ反応圧力50atm、150℃で高速攪拌下に反応させた。また反応中、経時的に反応液を抜き出してオイル中の組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0081】
実施例2で行った実験1、実験2及び実験3においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、高温高圧水素下の保持において反応容器内の触媒スラリーは十分攪拌されており、かつ、反応の前後における触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。尚、実施例2の実験2における硫酸及び実験3における酸化亜鉛は、和光純薬工業製・特級試薬を用いた。
【0082】
実施例2の実験1、実験2及び実験3を比較すると、硫酸の添加によって触媒活性が向上し、酸化亜鉛の添加で触媒活性が低下して硫酸添加前の触媒活性に戻っており、触媒活性を可逆的に変化させたことが判る。かつ、シクロヘキセン選択性もこれら操作でほとんど変化していない。
【0083】
[実施例3]
連続的にベンゼンを反応容器へ供給し、内容積3リットルの反応容器内に存する触媒スラリーとベンゼン、シクロヘキセン、シクロヘキサンから成るオイルとを混合状態で連続的に抜き出し、その混合物を触媒スラリーとオイルに分離する油水分離器に導き、分離した触媒スラリーは反応容器に循環して戻し、オイルだけを取り出す実験装置を用いて、実験をおこなった。
【0084】
初めに、参考例1で調整して得たルテニウム触媒18gの内の5.0g、分散剤としてジルコニアを30g(平均結晶子径約200Å)、常温の水2000ml、ZnSO4 ・7H2O(和光純薬工業製・特級)400gを、反応容器に仕込み、内部のガスを水素で十分置換した後で、昇圧昇温し、高速攪拌下、常温のベンゼンを連続的に反応容器へ当初毎時1500ml供給し、反応温度150℃で水素圧50atm下で連続反応を行った。水素は反応に必要な量以上の一定量が反応容器に供給され、余剰分は反応器気相部よりパージした。反応容器から連続的に抜き出される触媒スラリー及びオイルは、油水分離器で分離され、触媒スラリーは再び反応容器へ連続的に規定量循環ポンプを用いて循環し戻した。
【0085】
この実験中において、反応器の液相体積は一定に保ち、反応系、つまり反応容器、油水分離器、循環ポンプ及びこれら機器を接続する配管に存在する触媒スラリー量も変化させない様に、反応系へ給水する水の量を制御して反応をおこなった。尚、触媒スラリーが油水分離から反応容器へ循環する量は、つまり規定量は、反応容器へ供給するベンゼン量の10倍体積量とし、またその温度は150℃とした。さらに、オイルに溶解して系外へ出てしまう水は毎時10ml以上で、その量に相当する水は、ベンゼンとともに反応容器へ補給した。
【0086】
反応開始250時間後、硫酸5.0mgと水5mlとを混合した希硫酸を1時間かけて触媒スラリー循環ポンプ吐出部と反応容器の間の触媒スラリー循環配管へ供給し添加した。この際、ベンゼンとともに補給される水量に関して、希硫酸に含まれる水量分を減じた。さらに2時間後に、硫酸5.0mgに対し等モルとなる量の酸化亜鉛を水5mlと混合し、1時間かけて触媒スラリー循環ポンプ吐出部と反応容器の間の触媒スラリー循環配管へ供給し添加した。この後も2時間毎に硫酸または酸化亜鉛を同様の方法で初回の添加分も含め合計8回繰り返した。
【0087】
尚、初回の硫酸添加以降は、系外へ取り出すベンゼン転化率が一定となるように反応容器へ供給するベンゼン量を変化させた。
この実験中に系外へ出てくるオイルの組成分析をガスクロマトグラフィーを用いて、必要に応じて適宜行った。この分析の他に、時間を決めて、すなわち初回の硫酸添加の1時間前を第1回目とし、その後2時間毎に合計9回行って評価データとした。
【0088】
上記の初回から9回目の分析結果、その分析を行う直前の添加物の種類(硫酸または酸化亜鉛)、単位時間当たりのベンゼン供給量及びシクロヘキセン製造量を、表1に示す。
尚、本実施例においては、オイル相と水相の液2相が存在する条件下で反応が行われ、触媒スラリー循環ポンプ吐出から反応容器を接続する配管内では、触媒スラリーは乱流状態となって流れており、かつ、触媒スラリーの常温常圧におけるpHは2.5以上7.0未満の範囲であった。尚、本実施例における硫酸及び酸化亜鉛は、和光純薬工業製・特級を用いた。
【0089】
実施例3の結果を見ると、高温高圧水素下に250時間さらした触媒スラリーに硫酸及び酸化亜鉛を添加することで、触媒活性を可逆的に変化させ、シクロオレフィンを製造できることがわかる。また、シクロヘキセン選択率はこの間ほとんど影響受けていない
【0090】
【表1】
【0091】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、シクロオレフィンの選択率をほとんど変化させることなくルテニウム触媒の活性を可逆的に変化させて単環芳香族炭化水素からシクロオレフィンを効率的に製造出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1の実験1、実験2及び実験3の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【図2】実施例1の実験1、実験2及び実験3の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【図3】実施例1の実験1、実験2及び実験3のベンゼン転化率とシクロヘキセン選択率の関係を示す図である。
【図4】実施例2の実験1、実験2及び実験3の反応時間とベンゼン転化率の関係を示す図である。
【図5】実施例2の実験1、実験2及び実験3のベンゼン転化率とシクロヘキセン選択率の関係を示す図である。
Claims (13)
- ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩存在下、単環芳香族炭化水素を水素により部分水素添加して反応させ、シクロオレフィンを製造するに当たり、ルテニウム触媒、水及び金属硫酸塩を含む触媒スラリーを高温高圧水素下で24時間以上保持し、常温常圧における触媒の存する水相のpHが2.5以上7.0未満を満たす範囲で、前記触媒スラリーに硫酸とアルカリ性化合物とを添加し、シクロオレフィンの選択率を変化させることなく、触媒活性を可逆的に変化させることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
- 硫酸とアルカリ性化合物が、該反応を現に行っている触媒スラリーに添加して用いられることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 硫酸とアルカリ性化合物が、触媒スラリーが乱流を形成して循環している場所に添加して用いられることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- 硫酸とアルカリ性化合物が、触媒スラリーが油水分離器から反応器へ循環する配管へ添加して用いられることを特徴とする請求項2または3記載の方法。
- 硫酸とアルカリ性化合物が、反応系内に存在する全触媒スラリー量と同等量の触媒スラリーが循環するのに要する時間以上をかけて添加して用いられることを特徴とする請求項3または4記載の方法。
- アルカリ性化合物が、金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の塩基性金属塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- アルカリ性化合物が、金属硫酸塩を構成する金属と同種の金属の水酸化物、酸化物、及び/又は、かかる金属化合物と金属硫酸塩の複塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 金属硫酸塩が、硫酸亜鉛であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 金属硫酸塩が、水の1×10- 5〜1.0重量倍である請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 水が、単環芳香族炭化水素の0.5〜20重量倍存在することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- ルテニウム触媒が、ルテニウム化合物を予め還元して得られる金属ルテニウムであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- ルテニウム触媒が、ルテニウム化合物を予め還元することによって得られる金属ルテニウムであり、かつ、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする請求項11記載の方法。
- ルテニウム触媒が、予め亜鉛化合物を含有したルテニウム化合物を還元することによって得られる亜鉛を含有したルテニウムであって、かつルテニウムに対して亜鉛を0.1〜50重量%含有する金属ルテニウムであり、該金属ルテニウムの平均結晶子径が200Å以下の非担持型触媒であることを特徴とする請求項11または12記載の方法。
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