JP4023578B2 - ハフニウム含有複合酸化物被膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハフニウム含有複合酸化物被膜及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、優れたイオン伝導性、優れた撥水性および水滴転落性を有する、ハフニウム含有複合酸化物被膜、及びそのゾルゲル法による製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の窓ガラス、塗装表面、鏡等においては、近年、曇り止めの目的で各種の撥水処理法が行われている。たとえば、窓ガラス等の表面に、低分子フッ素化合物、フッ素樹脂、シリコン等を塗布あるいは化学蒸着することにより、撥水性被膜を生成する方法が知られている。これらの方法によると、水滴の接触角が80〜150度となるような撥水性を実現することができる。
【0003】
しかし、従来の方法では、撥水性を付与することはできても、付着した水滴が重力等により速やかに流れ落ちる性質(転落性)が弱いので、付着した水滴がそのままの状態で留まることになり、種々の不都合を生じる。たとえば、撥水性のある自動車のフロントグラスに多数の水滴が付着した状態のままになっていると、街灯の光によってフロントグラスが乱反射し、運転者の視界が妨げられる。このような効果をシャンデリヤ効果と呼んでいる。
【0004】
このようなシャンデリヤ効果を防止するために、窓ガラス等に撥水性をもたらすとともに、転落性を向上させる素材が要望される。
【0005】
また、イオンセンサー、ガスセンサー等の化学センサーの電極材料、燃料電池の電極材料等には各種金属材料が使用されている。しかし、ゾルゲル法によって製造することができる酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物は、イオン伝導性を有するものが少なく、わずかに、ジルコニアとイットリアとの複合酸化物が、イオンセンサーに使用されているだけである。このジルコニアとイットリアとの複合酸化物であっても、高感度なセンサーを製造するには、イオン伝導度がまだ不十分であった。
【0006】
そこで、ジルコニアとイットリアとの複合酸化物よりも遙かに優れたイオン伝導性を示し、従来のたとえばガスセンサーよりも高感度なガスセンサーを製造することのできる素材が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は前記要望に応えることを課題とする。すなわち、この発明は、窓ガラス等に撥水性をもたらすとともに、転落性を向上させる素材、および優れたイオン伝導性を示して、高感度なガスセンサー等を製造することのできる素材の製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
この発明は、イオン伝導性を有して各種の高感度センサー等に利用することのできるハフニウム含有複合酸化物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
この発明は、撥水性及び水滴の転落性に優れてたとえば自動車のフロントグラス等に利用することのできるハフニウム含有複合酸化物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、この発明は、
ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表中の第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、さらに加水分解することにより得られるゾル液を基材表面に塗布し、焼成することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜の製造方法であり、
この発明の他の態様は、ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表の第2族元素、及び第3族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、さらに加水分解することにより得られるゾル液を基材表面に塗布し、焼成することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜の製造方法であり、
この発明の他の態様は、ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表の第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、加水分解してゾルを形成した後にゲル化および焼成することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜の製造方法であり、
他の発明は、酸化ハフニウムと、20モル%以下の、周期表の第2族元素、及び第3族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物とを含有することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜であり、
【0011】
さらに他の発明は、酸化ハフニウムと、チタン、周期表の第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物とを含有することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜である。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明のハフニウム含有複合酸化物の製造方法は、ゾル形成ハフニウム化合物と周期表の第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、加水分解してゾルを形成した後にゲル化および焼成するものである。
【0013】
前記ゾル形成ハフニウム化合物としては、水と反応してハフニウム酸化物のゾルを形成するハフニウム化合物を挙げることができる。
【0014】
前記ゾル形成ハフニウム化合物としては、具体的には、ハフニウムハロゲン化物、ハフニウム亜ハロゲン酸塩、ハフニウム次亜ハロゲン酸塩、ハフニウムハロゲン酸塩、ハフニウム過ハロゲン酸塩、ハフニウム無機酸塩、ハフニウム有機酸塩、ハフニウムアルコキシド、及びハフニウム錯体からなる群から選択されたハフニウム化合物を挙げることができる。
【0015】
ハフニウムハロゲン化物としては、例えば、四フッ化ハフニウム、四塩化ハフニウム、四臭化ハフニウム、及び四沃化ハフニウムを挙げることができる。
【0016】
ハフニウム次亜ハロゲン酸塩としては、次亜塩素酸ハフニウム、次亜臭素酸ハフニウム、及び次亜沃素酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0017】
ハフニウムハロゲン酸塩としては、塩素酸ハフニウム、臭素酸ハフニウム、及び沃素酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0018】
ハフニウム過ハロゲン酸塩としては、過塩素酸ハフニウム、過臭素酸ハフニウム、及び過沃素酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0019】
ハフニウム無機酸塩としては、例えば硝酸ハフニウム及び硫酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0020】
ハフニウム有機酸塩としては、Hf(OCOR1)4で示されるモノカルボン酸塩、Hf(OCOR2COO)2(R2は、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、及び環状アルキレン基、並びに炭素数6〜20の芳香族基)で示されるジカルボン酸塩、並びにHf(OH)2(OCOR3)2、HfO(OH)(OCOR3)2、Hf2O(OH)(OCOR3)5、及びHf4O3(OCOR3)10の何れかの一般式で示されるカルボン酸ハフニル(以上の化学式において、R3は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)を挙げることができる。
【0021】
モノカルボン酸塩としては、酢酸ハフニウム、プロピオン酸ハフニウム、酪酸ハフニウム、吉草酸ハフニウム、カプロン酸ハフニウム、ヘプタン酸ハフニウム、オクタン酸ハフニウム、ノナン酸ハフニウム、デカン酸ハフニウム、ミリスチン酸ハフニウム、パルミチン酸ハフニウム、及びステアリン酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0022】
ジカルボン酸塩としては、蓚酸ハフニウム、及び琥珀酸ハフニウム等を挙げることができる。
【0023】
カルボン酸ハフニルとしては、酢酸ハフニル、プロピオン酸ハフニル、酪酸ハフニル、吉草酸ハフニル、カプロン酸ハフニル、ヘプタン酸ハフニル、オクタン酸ハフニル、ノナン酸ハフニル、デカン酸ハフニル、ミリスチン酸ハフニル、パルミチン酸ハフニル、及びステアリン酸ハフニル等を挙げることができる。
【0024】
ハフニウムのアルコキシドとしては、Hf(OR4)4(R4は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)で示される化合物を挙げることができる。
【0025】
ハフニウム錯体としては、例えばジケトン錯体、ジケトン錯体ハロゲン化物、及びジケトン錯体無機酸塩等を挙げることができる。
【0026】
ジケトン錯体としては、例えば、アセチルアセトンハフニウム、アセト酢酸ハフニウム、1,3−プロパンジオンハフニウム、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンハフニウム、1−フェニルプロパンジオンハフニウム、及びトロポロンハフニウム等を挙げることができる。
【0027】
ジケトン錯体ハロゲン化物としては、アセチルアセトンハフニウム塩化物、アセト酢酸ハフニウム塩化物、1,3−プロパンジオンハフニウム塩化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンハフニウム塩化物、1−フェニルプロパンジオンハフニウム塩化物、及びトロポロンハフニウム塩化物等のジケトン錯体塩化物、アセチルアセトンハフニウム臭化物、アセト酢酸ハフニウム臭化物、1,3−プロパンジオンハフニウム臭化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンハフニウム臭化物、1−フェニルプロパンジオンハフニウム臭化物、及びトロポロンハフニウム臭化物等のジケトン錯体臭化物、アセチルアセトンハフニウム沃化物、アセト酢酸ハフニウム沃化物、1,3−プロパンジオンハフニウム沃化物、1,3ージフェニル−1,3−プロパンジオンハフニウム沃化物、1−フェニルプロパンジオンハフニウム沃化物、及びトロポロンハフニウム沃化物等のジケトン錯体沃化物、並びに、アセチルアセトンハフニウムフッ化物、アセト酢酸ハフニウムフッ化物、1,3−プロパンジオンハフニウムフッ化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンハフニウムフッ化物、1−フェニルプロパンジオンハフニウムフッ化物、及びトロポロンハフニウムフッ化物等のジケトン錯体フッ化物等を挙げることができる。
【0028】
周期表第2族に属する元素の化合物としては、Mg,Ca等の化合物を挙げることができ、好ましくは、Mg,Ca等のハロゲン化物(特に塩化物)、炭酸塩およびアルラコート(特に炭素数4以下のアルラコート)を挙げることができる。
【0029】
周期表第3族に属する元素の化合物としては、Sc,Y等の化合物を挙げることができ、好ましくは、Sc,Y等のハロゲン化物(特に塩化物)、炭酸塩およびアルラコート(特に炭素数4以下のアルラコート)を挙げることができる。
【0030】
周期表第4族に属する元素の化合物としては、Ti等の化合物を挙げることができ、好ましくは、Ti等のハロゲン化物(特に塩化物)およびアルラコート(特に炭素数4以下のアルラコート)を挙げることができる。
【0031】
周期表第13族に属する元素の化合物としては、Al等の化合物を挙げることができる。
【0032】
周期表第14族に属する元素の化合物としては、シリコン等を挙げることができる。
【0033】
前記ゾル形成ハフニウム化合物および前記第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物の加水分解方法としては、たとえば、前記ゾル形成ハフニウム化合物を適宜の有機溶媒に溶解させた後、前記2族元素、3族元素、4族元素、13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物を添加して溶解させ、または、前記ゾル形成ハフニウム化合物と、前記第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とをあらかじめ混合してから適宜の有機溶媒に溶解させ、その後、この溶液を水に接触させる方法を挙げることができる。また、この場合、水をあらかじめ溶媒に配合させておいてもよい。また、この加水分解の際に、酸又は塩基を触媒として存在させてもよい。
【0034】
反応温度は、例えば室温〜100℃とすることができるが、ゾル形成反応を促進する観点からは、反応温度は、室温よりも高い範囲の温度、例えば40〜100℃の範囲の温度が好ましい。
【0035】
反応時間は、例えば0.1〜10時間とすることができ、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは0.5〜4時間とすることができる。
【0036】
前記ゾル形成ハフニウム化合物と、前記第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを溶解させるのに用いられる溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、石油系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びグリコールエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0037】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、及びシクロヘキサン等を挙げることができる。
【0038】
芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等を挙げることができる。
【0039】
石油系溶媒としては、石油エーテル、ガソリン、ナフサ、ケロシン、及びガス油等を挙げることができる。
【0040】
ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、トリクレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、パークロルエチレン、トリクロロプロパン、塩化パラフィン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、及びクロロトルエン等を挙げることができる。
【0041】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2―メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、及びシクロヘキサノール等の1価アルコール類、並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、及び1,4−ブタンジオール等の2価アルコール類を挙げることができる。
【0042】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロン、イソホロン、及びシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0043】
そして、グリコールエーテル系溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、及びフェニルセロソルブ等を挙げることができる。
【0044】
又、前記溶媒としては、前記脂肪族炭化水素系溶媒、前記芳香族炭化水素系溶媒、前記石油系溶媒、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒、前記アルコール系溶媒、前記ケトン系溶媒、及び前記グリコールエーテル系溶媒からなる群から選択された2種以上の有機溶媒を含有する混合溶媒も挙げることができる。混合溶媒を用いる場合には、前記混合溶媒の成分である成分溶媒に対する前記ゾル形成ハフニウム化合物および、前記第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物の溶解性、およびゾル形成反応における反応温度と前記成分溶媒の沸点との関係等を考慮して有機溶媒の種類及び配合割合を決定することができる。
【0045】
前記ゾル形成ハフニウム化合物を前記溶媒に溶解させる濃度については、前記ゾル形成ハフニウム化合物が析出しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。前記濃度は、具体的には、溶媒100重量部に対しゾル形成ハフニウム化合物を0.1〜50重量部となるように調整され、好ましくは前記ハフニウム化合物を1〜30重量部の範囲となるように調整される。
【0046】
前記第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物を前記溶媒に溶解させる濃度については、溶媒100重量部に対し前記2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物を0.1〜50重量部となるように調整され、好ましくは1〜30重量部の範囲となるように調整される。
【0047】
また、前記ゾル形成ハフニウム化合物に対する前記2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物の混合比については、ハフニウムと、第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族元素、及び第14族元素とのモル比として、1:99〜99:1であり、さらに、前記ゾル形成ハフニウム化合物に対する前記第2族元素及び第3族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物の混合比については、ハフニウムと、第2族元素及び第3族元素とのモル比として、80:20〜99:1であることが好ましい。
【0048】
さらに、前記ゾル形成ハフニウム化合物および前記第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素の化合物を水と反応させる際に、触媒として用いることのできる酸としては、無機酸及び有機酸を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、及び硫酸等を挙げることができる。有機酸としては、例えば低級のモノカルボン酸を挙げることができ、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びイソ酪酸等を挙げることができる。
【0049】
触媒に用いることのできる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等の苛性アルカリ類、一級アミン、二級アミン、及び三級アミン等のアミン類、及びエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン等のアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0050】
なお、水と触媒との割合は、通常、触媒/水(モル/モル)が0.1以上、好ましくは0.2以上、特に0.2〜2になるように決定される。このような割合にすると透明な被膜が良好に形成される。
【0051】
前述のようにして形成されたゾルをゲル化および焼成することにより、ハフニウム含有複合酸化物を得ることができる。
【0052】
この発明に係るハフニウム含有複合酸化物の中でも、酸化ハフニウムと、20モル%以下の、好ましくは2〜15モル%の、周期表の第2族元素、及び第3族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物、好ましくは周期表の第3族元素特にイットリウムの酸化物とを含有することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物は、イオン導電性を有する。この様な特定の元素の酸化物と酸化ハフニウムとの複合酸化物は、固溶体が形成されているので、イオン導電性を発現するものと考えられる。
【0053】
イオン導電性を有するハフニウム含有複合酸化物は、酸化ハフニウムと、20モル%以下の、周期表の第2族元素、及び第3族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物とを用いて、前述した方法たとえばゾルゲル法により、容易に製造することができる。
【0054】
また、酸化ハフニウムと、周期表の第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物、好ましくは周期表の第4族元素、特にチタンの酸化物とを含有することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物は、撥水性が良好であり、しかも水滴の転落性も良好である。
【0055】
ハフニウム含有複合酸化物は、その目的に応じて、ハフニウム含有複合酸化物を被膜として生成する方法と、粉末として生成する方法とがある。
【0056】
ハフニウム含有複合酸化物を被膜として生成する方法としては、たとえば、前記ゾルを基材の表面に塗布し、この基材を焼成する方法を挙げることができる。
【0057】
この発明の撥水処理法が適用できる基材には特に制限はなく、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、及び鉛ガラス等のガラス系材料から形成された基材、普通鋼、構造用定合金鋼、高張力鋼、耐熱鋼、高クロム系耐熱鋼、及び高ニッケル−クロム系耐熱鋼等の合金鋼、並びにステンレス鋼等の鉄鋼材料、工業用純アルミニウム、5000系Al−Mg系アルミニウム合金及び6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、銀入銅、錫入銅、クロム銅、クロム・ジルコニウム銅、及びジルコニウム銅等の各種銅合金、並びに純チタン、抗力チタン合金、及び耐食性チタン合金等のチタン合金等の金属系材料から形成された基材、ムライト磁器、アルミナ磁器、ジルコン磁器、コーディエライト磁器、及びステアタイト磁器等のセラミックス系材料から形成された基材、前記金属系材料から形成された基材の表面を琺瑯、グラスライニング、及びセラミックスコーティング等の何れかによって被覆した被覆金属基材を挙げることができる。
【0058】
ガラス系材料から形成された基材としては、自動車、鉄道車両、航空機、及び建築物等の窓ガラス、並びに自動車用及び航空機用のヘッドアップディスプレー等を挙げることができる。
【0059】
金属系材料から形成された基材としては、例えば送電線、建築物等の外装板、サッシュ、及び鉄道車両の外板等を挙げることができる。
【0060】
セラミックス系材料から形成された基材としては、例えば碍子、碍管、及びセラミックスタイル、屋根瓦等を挙げることができる。
【0061】
被覆金属基材としては、例えば、各種タンク、反応槽、醸造槽、並びにコップ、洗面器、及び花瓶等の日用品等を挙げることができる。
【0062】
前記基材としては、他に、金属等の表面に塗料が塗布された塗装表面等も挙げることができる。前記塗装表面としては、具体的には自動車、鉄道車両、及び航空機の車体表面等を挙げることができる。
【0063】
前記基材としては、さらに、コンクリート壁、テラコッタタイル壁、モルタル壁、及び漆喰壁等の建築物の外壁を挙げることができる。
【0064】
前記基材の表面にゾルを塗布する方法としては、例えば、ゾルに前記基材を浸漬し、これをゆっくりと引き上げるディップ法、固定された基材表面上に適宜の方法によってゾル液を流延する流延法、ゾル液の貯留された槽の一端からゾル液中に基材を浸漬し、前記槽の他端から基材を取り出す連続法、回転する基材上にゾルを滴下し、基材に作用する遠心力によって前記ゾルを基材上に流延するスピンナー法、及び基材の表面にゾルを吹き付けるスプレー法等を挙げることができる。
【0065】
碍子、碍管等、及びセラミックスタイル等の比較的小型の基材に対しては、例えばディップ法が好ましく用いられる。建築物等の外壁及び外装板、板ガラス、鉄道車両用外板、並びに送電線等のような連続した基材に対しては、連続法が好ましく用いられる。自動車用及び航空機用のヘッドアップディスプレー等のように、板状であり、且つ小型の基材に対しては、例えばスピンナー法を採用することができる。鉄道車両の車体、航空機、自動車車体等の大型の基材に対しては、スプレー法を用いることができる。尚、自動車の車体に対してはディップ法も用いることができる。
【0066】
前記の各種方法によって基板上に塗布されたゾルを、必要に応じて乾燥した後、前記被膜状のゾルを加熱(以下「焼成」と称することもある。)して、前記基材の表面に撥水性被膜を形成する。
【0067】
前記ゾルを加熱する温度は、基材の耐熱温度に応じて適宜選択することができ、例えば100℃以上における適宜の温度が採用される。ガラス系材料から形成された基材、及び金属系材料から形成された基材の場合には、前記焼成温度は、通常200℃〜1000℃の範囲内であり、好ましくは300℃〜1000℃の範囲内である。基材が塗装表面である場合には、焼成温度は塗膜の耐熱温度以下であるのが好ましく、例えば100〜300℃の範囲内にある適宜の温度である。
【0068】
加熱時間は、通常1分間〜10時間の範囲内であり、好ましくは10分〜5時間の範囲内である。
【0069】
前記基材を加熱する際には、直接に前記温度に加熱してもよく、又、例えば100℃程度の温度で基材を0.5時間程予熱し、次いで前記温度に加熱してもよい。
【0070】
撥水性被膜の厚さは、前記基材の用途等に応じて適宜決定することができる。具体的には、通常、50〜1,000nm、好ましくは100〜200nmの範囲である。
【0071】
また、この撥水性被膜は、転落性にも優れている。したがって、基材がガラス、鏡等である場合に、そのような基材表面を前記撥水性被膜で被覆すると、基材表面に付着した水滴は、速やかに基材表面から転落するので、いわゆるシャンデリア効果を防止することができる。
【0072】
なお、この撥水性被膜の中でも、ハフニウムは他の特定の元素と組み合わせると、紫外線を照射することによりさらに撥水性を高めることができる。照射する紫外線としては、300〜380nmの波長を有する紫外線が効果的であり、照射時間は1秒〜5時間であるのが好ましい。換言すると、この撥水性のさらに良好なハフニウム含有複合酸化物の製造方法は、ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表中の第4族元素、特にチタンの化合物とを混合し、加水分解してゾルを形成した後にゲル化および焼成し、次いで紫外線、特に300〜380nmの波長を有する紫外線を照射し、特に1秒〜5時間照射することを特長とする。
【0073】
ハフニウム含有複合酸化物を粉末として生成する方法としては、たとえば、前記ゾルから液体成分を除去して得られるゲル粉末を焼成することにより、製造する方法を挙げることができる。
【0074】
このゾルから液体成分の除去は通常の方法、例えば加熱乾燥、減圧常温乾燥、凍結乾燥、自然乾燥等の各種方法を採用することができる。
【0075】
液体成分を除去した後に得られる固形分を粉砕するのが好ましい。粉砕して得られるゲル粉末の粒度としてはできるだけ細かいほうが好ましく、例えば平均粒度が1〜500μmであるのが良い。
【0076】
ゲル粉末の焼成条件は、前記のハフニウム含有複合酸化物を被膜として生成する方法について説明したゾルの加熱条件と同様である。
【0077】
上記の粉末は、撥水性および転落性を有する。これを塗料に混合することにより、その塗膜面に撥水性、転落性を付与することのできる塗料用撥水性・転落性粉末としての用途がある。また、この撥水性・転落性粉末と従来から公知の塗料と混合することにより撥水性・転落性塗料が得られる。塗料に混合する撥水性・転落性粉末の平均粒度としては1〜500μmであるのが良い。撥水性・転落性塗料における撥水性・転落性粉末の含有量は、通常、0.1〜20重量%の範囲である。撥水性・転落性塗料における塗料としては従来から公知の各種の塗料を採用することができる。
【0078】
また、このハフニウム含有複合酸化物はイオン伝導性が良いので、上記粉末に結着剤を添加して直方体に成形した後、焼成することによりイオン伝導体を作成することができる。このイオン伝導体は、イオンセンサー、ガスセンサー等の化学センサーの電極材料、燃料電池の電極材料等に使用することができる。イオン伝導体を作成するときの焼成温度は500〜2000℃であり、焼成時間は30分〜48時間であるのが好ましい。
【0079】
【実施例】
以下の実施例1〜3は撥水性及び転落性に関し、例4〜8はイオン伝導性に関する。
(例1)
(1)試料調製
2.0gのHfCl4(0.0063モル)を99.5%エタノール15ml中に溶解した。ここまでをグローブバックを用いて窒素ガス中で行った。この溶液に、0.51gのH2O(反応系全体で0.032モル)と3.32gの60%HNO3(0.032モル)との混合液を攪拌しながら添加し、ホットプレート上で50℃で3時間加熱してゾル液を得た。
【0080】
また、47.11gのTi(O−iso−C3H9)4(0.025モル)を99.5%エタノール50ml中に溶解し、ホットプレート上で75℃で1.5時間加熱し、40℃まで冷却した後、0.46gのH2O(0.039モル)と0.53gの60%HNO3(0.005モル)の混合液を添加し、75℃で1.5時間加熱してゾル液を調製した。
Hf02とTi02とのモル比が0:10,1:9,5:5,10:0となるように、ハフニアゾルとチタニアゾルとを攪拌しながら混合して塗布液を調製した。
【0081】
前記塗布液を、スピンナー法(500rpmで5秒間,その後2000rpmで30秒間)で石英ガラス基板上に塗布した。
ゾル液を塗布した石英ガラス基板を550℃の電気炉に投入し、30分間焼成してHf02−Ti02被膜を得た。
以下、Hf02とTi02とのモル比が0:10,1:9,5:5,10:0であるHf02−Ti02被膜を、それぞれT−H(0:10)、T−H(1:9)、T−H(5:5)、T−H(10:0)と呼ぶ。なお、T−H(0:10)に係る例及びT−H(10:0)に係る例は比較例である。
【0082】
(2)試験方法と結果
上記のようにして得られたHf02−Ti02被膜を試料として、撥水性試験、転落性試験を行った。
撥水性試験は、試料表面に水を滴下し、その接触角を接触角計CA−D型(協和界面化学(株)製)により測定することにより行った。また、試料は、空気中で暗箱内に放置し、経時的に接触角の測定を行った。結果を表1に示す。
紫外線照射前の転落性試験は、前記暗箱内に6日間放置した試料の表面に50μlの水を滴下し、試料を傾けて水滴が動いた転落角を測定した。結果を表2に示す。紫外線照射後の転落性試験は、前記暗箱内に6日間放置した試料に紫外線(1.8〜2.0mW、ブラックライト)を照射し、その後の試料の表面に50μlの水を滴下し、試料を傾けて水滴が動いた転落角を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
Hf02−Ti02被膜の接触角(度)
【0084】
【表2】
Hf02−Ti02被膜の転落角(度)
【0085】
表1に示されるように、HfO2を含まないH−T(0:10)は、他の試料に比べ、試験開始当日または放置後においても接触角は小さかった。また、H−T(1:9)では、2日後以降に80°以上の接触角を示した。実験値から3σを算出したところ、3σは±5以内であり、接触角10°の範囲内では有意差はないといえる。したがって、H−T(1:9)は、HfO2をより多く含む他の試料と同等の接触角を有することがわかった。
表2から、H−T(1:9)では、他の試料に比べ、転落角が小さいのがわかる。
以上のことから、H−T(1:9)は、撥水性が良好であり、さらに、転落性が優れていることがわかった。
【0086】
(例2)
(1)試料調製
ハフニアゾル液の調製
実施例1と同様にして、ハフニアゾル液を作製した。
アルミナゾル液の作製
Al(O-iso-C3H7)2(CH3COCOOC2H5)13.7g(0.037モル)をイソプロパノール(IPA)90gに溶解した。H2O 4.5g(6.8モル)と60%HNO3 7.0g(0.07モル)との混合溶液を室温で加え、アルミナゾル液を作製した。HfO2とAl2O3とのモル比が0:10、3:7、5:5および10:0となるようにハフニアゾルとアルミナゾルを攪拌しながら混合して塗布液を調製した。
【0087】
前記塗布液を、スピンナー法(500rpmで5秒間、次いで1000rpmで30秒間)でソーダライムガラス基板上に塗布した。ゾル液を塗布したガラス基板を500℃で1時間焼成してHfO2−Al2O3被膜を得た。
以下、HfO2とAl2O3とのモル比が0:10、3:7、5:5、10:0であるHfO2−Al2O3被膜をそれぞれH−A(0:10)、H−A(3:7)、H−A(5:5)、H−A(10:0)と呼ぶ。なお、H−A(0:10)、及びH−A(10:0)に関する例は、比較例である。
【0088】
(2)試験方法と結果
例1と同様にして撥水性試験、転落性試験を行った。ただし、試料は室温で通常の部屋(明室)で保存して、試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0089】
【表3】
HfO2―Al2O3被膜の接触角(度)
【0090】
表3より、HfO2を含まないH−A(0:10)被膜は、他の試料に比べ、試験開始当日または放置後においても接触角は小さかった。また、H−A(3:7)では3日後に80°以上の接触角を示した。H−A(3:7)、H−A(5:5)は接触角が大きく、撥水性に優れていることが分かった。
【0091】
【表4】
HfO2―Al2O3被膜の転落角(度)
【0092】
表4より、H−A(3:7)、H−A(5:5)は、単一膜(HfO2、Al2O3)よりも転落性が優れていることが分かった。
【0093】
(例3)
(1)試料調製
Al(O-iso-C3H7)2(CH3COCOOC2H5)に変えて、Al(O-sec-C4H9)39.1g(0.037モル)を用い、H2Oを66.6g(3.7モル)用いた他は、上記例2と同様にして試料を調製した。ただし、HfO2とAl2O3のモル比は、0:10、2:8、6:4,10:0とした。
【0094】
以下、HfO2―Al2O3とのモル比が0:10、2:8、6:4,10:0であるHfO2―Al2O3被膜をそれぞれH―A(0:10)、H―A(2:8)、H―A(6:4)、H―A(10:0)と呼ぶ。なお、H―A(0:10)、及びH―A(10:0)に関する例は、比較例である。
【0095】
(2)試験方法と結果
上の例2と同様にして撥水性試験、転落性試験を行った。結果を表5及び表6に示す。
【0096】
【表5】
HfO2―Al2O3被膜の接触角(度)
【0097】
表5より、HfO2を含まないH―A(0:10)被膜は、他の試料に比べ、試験開始当日または放置後においても接触角は小さかった。また、H―A(2:8)では3日後に80°以上の接触角を示した。H―A(2:8)、H―A(6:4)は接触角が大きく、撥水性に優れていることが分かった。
【0098】
【表6】
HfO2―Al2O3被膜の転落角(度)
【0099】
表6より、H―A(2:8)、H―A(6:4)は、単一膜(HfO2、Al2O3)よりも転落性が優れていることが分かった。
【0100】
(例4)
(1)試料の調製
2.0gのHfCl4(0.0063モル)を99.5%エタノール15ml中に溶解した。ここまでをグローブバックを用いて窒素ガス中で行った。この溶液に0.45gのY2(CO)3・3H2O(0.0011mol)を加えた。さらに、この溶液に3.4gのH2O(反応系全体で0.264モル)と3.32gの60%HNO3(0.032モル)との混合液を攪拌しながら添加し、ホットプレート上で50℃で3時間加熱してゾル液を得た。1日放置後、沈殿したゲルを濾過し、エタノールで洗浄し、乾燥してゲルを得た。
【0101】
このゾル液からロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、ゲルを生成した。このゲルを900℃で3時間焼成してHf02−8mol%Y2O3粉末を得た。このHf02−8mol%Y2O3粉末に結着剤を添加して直方体に成形し、1600℃で10時間焼成してイオン伝導体を作製した。
【0102】
(2)試験方法と結果
このイオン伝導体について、電極にAgペーストを使用した直流四端子法によりイオン伝導率を測定した。
結果を表7に示す。
【0103】
【表7】
HfO2−8mol%Y2O3のイオン伝導率
【0104】
表7に示したHfO2−Y2O3のイオン伝導率の値は、ゾルゲル法によるZrO2−8mol%Y2O3薄膜のイオン伝導率より大きい値であった。
【0105】
(例5)
Y2(CO3)3の使用量を0.033g(0.0008モル)用いた他は例4と同様にして、HfO2−6mol%Y2O3粉末を調製した。
例4と同様にして、イオン伝導率を求めた。結果を表8に示す。
【0106】
【表8】
HfO2−6mol%Y2O3のイオン伝導率
【0107】
この結果は、HfO2−8mol%Y2O3粉末のそれよりは小さいが、対応するZrO2−6mol%Y2O3粉末よりは大きい値を示す。
【0108】
(例6)
Y2(CO3)3の使用量を0.092g(0.0022モル)用いた他は例4と同様にして、HfO2−15mol%Y2O3粉末を調製した。
例4と同様にして、イオン伝導率を求めた。結果を表9に示す。
【0109】
【表9】
HfO2−15mol%Y2O3のイオン伝導率
【0110】
この結果は、HfO2−8mol%Y2O3粉末のそれよりは小さいが、対応するZrO2−15mol%Y2O3粉末よりは大きい値を示す。
【0111】
(例7)
Y2(CO3)3に変えて、Sc(NO3)3・9H2Oを0.43g(0.0011モル)用いた他は例4と同様に行い、HfO2―8mol%Sc2O3粉末を得た。
【0112】
例4と同様にして、イオン伝導率を求めた。結果を表10に示す。
【0113】
【表10】
HfO2−8mol%Sc2O3のイオン伝導率
【0114】
この結果は、HfO2−8mol%Y2O3粉末のそれよりは大きい値を示す。
【0115】
(例8)
Y2(CO3)3に変えて、Ca(O-iso-C3H7)2を0.087g(0.00055モル)用いた他は例4と同様に行い、HfO2−8mol%CaO粉末を得た。
例4と同様にして、イオン伝導率を求めた。結果11を表に示す。
【0116】
【表11】
HfO2−8mol%CaOのイオン伝導率
【0117】
この結果は、HfO2−8mol%Y2O3粉末のそれと同様の値を示す。
【0118】
【発明の効果】
この発明によれば、ハフニウム含有複合酸化物をゾルゲル法によって製造することができるので、ハフニウム含有複合酸化物の製造を、大がかりな装置を用いることなく、簡便に、さらに低コストで行うことができる。
【0119】
この発明によって得られるハフニウム含有複合酸化物は、撥水性が良好で、さらに転落性が優れている。したがって、このハフニウム含有複合酸化物の被膜を基板上に生成することにより、撥水性・転落性被膜を得ることができる。たとえば、ガラス、鏡等の表面に前記被膜を生成すれば、ガラス等の表面に付着した水滴が、重力、風力等により速やかに移動するので、いわゆるシャンデリア効果を防止することができる。すなわち、このハフニウム含有複合酸化物は、自動車のフロントガラス、鉄道車両の前面ガラス、航空機の風防ガラス等に好適に使用することができ、また、雪、氷等の付着防止も可能であるから、寒冷地における送電線、碍子、碍管等にも好適に使用することができる。
【0120】
この発明によって得られるハフニウム含有複合酸化物を粉末として調製し、これを塗料に混合することにより撥水性・転落性塗料を得ることができる。すなわち、この塗料を用いれば、前記の撥水性・転落性被膜と同様の撥水性、転落性に優れた塗装面を得ることができる。
【0121】
なお、前記の撥水性・転落性被膜および撥水性・転落性塗装面は紫外線を照射することにより転落性がより一層強化される。
【0122】
また、この発明によって得られるハフニウム含有複合酸化物は、イオン伝導性が良好であるので、このハフニウム含有複合酸化物を粉末として調製し、これからイオン伝導体を製造すれば、イオンセンサー、ガスセンサー等の化学センサーの電極材料、燃料電池の電極材料等に好適に使用することができる。
Claims (5)
- ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表中の第2族元素、第3族元素、第4族元素、第13族、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、さらに加水分解することにより得られるゾル液を基材表面に塗布し、焼成することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜の製造方法。
- ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表の第2族元素、及び第3族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、さらに加水分解することにより得られるゾル液を基材表面に塗布し、焼成することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜の製造方法。
- ゾル形成ハフニウム化合物と、周期表の第4族元素、第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の化合物とを混合し、加水分解してゾルを形成した後にゲル化および焼成することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜の製造方法。
- 酸化ハフニウムと、20モル%以下の、周期表の第2族元素、及び第3族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物とを含有することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜。
- 酸化ハフニウムと、チタン、周期表の第13族元素、及び第14族元素よりなる群から選択される少なくとも一種の元素の酸化物とを含有することを特徴とするハフニウム含有複合酸化物被膜。
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