JP2004196619A - 多孔性金属酸化物膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低反射膜、高活性触媒膜または高撥水性膜として有用な多孔性金属酸化物膜およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施し、酸化亜鉛を除去することによって、膜厚の方向に開穿形成された細孔を有してなることを特徴とする多孔性金属酸化物膜及びその製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施し、酸化亜鉛を除去することによって、膜厚の方向に開穿形成された細孔を有してなることを特徴とする多孔性金属酸化物膜及びその製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、多孔性金属酸化物膜及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、低反射膜、高活性触媒膜または高撥水性膜として有用な多孔性金属酸化物膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代の生活環境においては、曇り止めなどの撥水処理が必要とされ、また、望まれる各種の設備、装置、機械器具が多数存在する。これらは、例えば、自動車の窓ガラス、自動車の塗装表面、台所設備、台所用品、台所設備に付設される排気装置、入浴設備、洗面設備、医療用施設、医療用機械器具、鏡、眼鏡など、きわめて多岐に亘っている。
【0003】
このような設備、装置、機械器具などの撥水処理方法として、例えば、自動車の窓ガラスの表面に、低分子フッ素化合物、フッ素樹脂またはシリコンなどを塗布または化学蒸着することにより薄膜を形成して、撥水処理する方法が知られている。しかしながら、従来の低分子フッ素化合物、フッ素樹脂またはシリコンから形成された膜にあっては、撥水性を付与することはできるものの、膜の硬度が小さく、機械的損傷を受けやすいという問題があった。
【0004】
そこで、前記問題を解消することを企図して、ハフニアゾルまたはジルコニアゾルを基材に塗布した後、硬化処理してなる硬質膜が提案されている(特開2002−187738号公報)。ところが、この膜は高い硬度を有するものの、用いるハフニアゾルまたはジルコニアゾルの基材に対する濡れ性が悪く、これに起因して基材に対する膜の密着性に劣るという新たな問題が浮上してきた。
【0005】
一方、液晶ディスプレイ、CRT画面等の表示装置においては、画面上での反射ができるだけ少なくて良好な視認性を発揮する表示画面が要望されている。例えば、表示画面の表面層がガラス、又は透明プラスチックで形成されている場合、その表示画面に室内電灯、操作者の姿等が反射し、又は写らないことが望ましい。
【0006】
ところで、無機材料で形成された多孔質薄膜が既に存在すると思われる。例えばセラミック焼結体からなる薄膜は、多孔質である。しかしながら、セラミック焼結体から成る薄膜における孔は、その孔サイズ及び細孔の形状等が全くランダムである。このような多孔質薄膜に対し、孔サイズがナノオーダーであり、細孔が特定形状を有するような多孔質薄膜は多機能新規材料と期待される。が、今までのところ、バルク状シリカゲルのマクロ孔制御法が紹介されているに留まる(非特許文献1)。
【非特許文献1】
監修作花済夫 「ゾル−ゲル法応用技術の新展開」2000年5月15日第1刷発行、第110頁〜第116頁、株式会社シーエムシー発行
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、前記事情に鑑み、一方向に開穿されてなる孔を有するという独特の構造を有し、それが故に新規な用途開発を期待することのできる新規無機材料を提供することを、目的とする。この発明の他の目的は、防眩性が良好な透明スクリーンとして利用可能な機能性材料として、高活性な酸化触媒として利用可能な機能性材料として、また、高度の撥水性を有することにより撥水性被膜として利用可能な機能性材料として、様々に利用可能な多孔質無機酸化物膜を提供することにある。この発明のさらに他の目的は、前記多孔質無機酸化物膜を製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施し、酸化亜鉛を除去することによって、膜厚の方向に開穿形成された細孔を有してなることを特徴とする多孔性金属酸化物膜であり、
請求項2は、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物における金属が周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属である請求項1に記載の多孔性金属酸化物膜であり、
請求項3は、前記周期表4族に属する金属がチタンであり、前記周期表13族に属する金属がアルミニウムであり、前記周期表14族に属する金属がケイ素である請求項2に記載の多孔性金属酸化物膜であり、
請求項4は、ゾルゲル法により調製されたところの、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施すことによって作製された多孔性金属酸化物膜の製造方法であり、
請求項5は、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物における金属が、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属である請求項4に記載の多孔性金属酸化物膜の製造方法であり、
請求項6は、前記周期表4族に属する金属がチタンであり、前記周期表13族に属する金属がアルミニウムであり、前記周期表14族に属する金属がケイ素である請求項4に記載の多孔性金属酸化物膜の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
(1) 多孔性金属酸化物膜
この発明に係る多孔性金属酸化物膜は、金属酸化物の膜であり、その膜厚の方向に沿う軸線を有する多数の細孔が形成される。その細孔の形状は、円筒形であり、また場合によっては不定形である。その細孔が円筒形であるときには、その細孔の開口直径が大きくとも100μmであるという特徴を有する。またその細孔が不定形であるときには、その開口部における最大長さが大きくとも100μmである。
【0010】
金属酸化物としては、金属の酸化物である限り特に制限がないのであるが、好適には、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属より成る群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物を挙げることができる。前記周期表4族に属する金属の好適例としては、Ti、Zr、及びHf等を挙げることができ、前記周期表13族に属する金属としては、Al、Ga、及びIn等を挙げることができ、前記周期表14族に属する金属としては、Si、Ge、Sn及びPb等を挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、Ti、Al及びSiである。なお、この発明において、周期表は、「無機化学命名法 -IUPAC 1990年勧告-」G.J.Leigh編 山崎一雄訳・著、第43頁、第1版第1刷1993年3月26日発行、株式会社東京化学同人発行の記載による。
【0011】
この多孔性金属酸化物膜の膜厚は、特に制限がなく、またこの多孔性金属酸化物膜の用途に応じて適切な値に決定される。多くの場合、この多孔性金属酸化物膜の厚みは、10nm〜10μmである。この多孔性金属酸化物膜の厚みの調整は、後述する多孔性金属酸化物膜の製造方法において説明されるように、適宜に行うことができる。
【0012】
この多孔性金属酸化物膜は、前述したように多数の細孔を有し、しかもその細孔の軸線方向は膜の厚み方向に揃っている。従来の多孔性無機酸化物の薄膜が全くランダムな方向に開口する細孔を有していることに鑑みると、本願発明に係る多孔性無機酸化物が膜の厚みの方向に揃った軸線を有する多数の細孔を有することは、特筆するべきことである。なお、図1に示されるように、この多孔性金属酸化物膜における細孔1は、貫通孔1aであっても、底を有する有底円筒状の穴1bであっても良い。
【0013】
また、このような細孔の、多孔性無機酸化物膜の単位表面積当たりの開口面積が大きいと、この多孔性無機酸化物膜は非常に大きな表面積を有することになる。
【0014】
この多孔性金属酸化物膜は、その金属酸化物の種類によって透明である。
【0015】
略円筒形又は不定形状をした細孔を多数有することと、透明な薄膜であることという性質により、この多孔性金属酸化物膜は、例えば、ディスプレイの表面を被覆する大面積の薄膜であると、従来のディスプレイに生じていた反射やぎらつきを防止することのできる防眩性透明保護膜として使用されることができる。
【0016】
特に多孔性金属酸化物膜を形成する金属酸化物がTiO2である場合、TiO2で形成された多孔性金属酸化物膜をガラス面の保護膜として使用すると、その保護膜は、表面に付着する有機物を前記二酸化チタンの触媒作用により分解することができ、しかも、多数の円筒状又は不定形状の細孔を有するので、汚れの付かない、撥水性及び防眩性に優れた透明な保護膜となる。
【0017】
特に多孔性金属酸化物膜を形成する金属酸化物がSiO2である場合、この多孔性金属酸化物膜は多数の円筒状又は不定形状の細孔を有するので、撥水性及び防眩性に優れた透明な保護膜となる。
【0018】
特に多孔性金属酸化物膜を形成する金属酸化物がAl2O3である場合、この多孔性金属酸化物膜は多数の円筒状又は不定形状の細孔を有するので、撥水性、防眩性に優れた透明な保護膜となる。
【0019】
この発明に係る多孔性金属酸化物膜は、円筒形又は不定形状をした細孔に、他の物質を充填することもできる。すなわち、膜厚の方向に開穿形成された多数の細孔とこれらの細孔に充填乃至挿入される他の物質とを有してなる多孔性複合膜につき、新たな機能を有する機能性材料として有用な用途が期待される。
【0020】
(多孔性金属酸化物膜の製造方法)
この発明に係る多孔性金属酸化物膜は、ゾルゲル法により調製されたところの、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有するゾル液を基板に塗布し、得られたゲル膜を焼成して硬化膜を形成した後、前記硬化膜を酸処理することにより、製造される。
【0021】
酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有するゲル膜を調製するためのゾル液としては、例えば、酸化亜鉛ゾル液と酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液とを混合することにより得られる複合ゾル液を挙げることが、できる。
【0022】
酸化亜鉛以外の金属酸化物の好適例として、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属より成る群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物を挙げることができる。前記周期表4族に属する金属の好適例としては、Ti、Zr、及びHf等を挙げることができ、前記周期表13族に属する金属としては、Al、Ga、及びIn等を挙げることができ、前記周期表14族に属する金属としては、Si、Ge、Sn及びPb等を挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、Ti、Al及びSiである。
【0023】
前記ゾル形成性化合物としては、酸化亜鉛ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物を例にとって説明すると、具体的には、ハロゲン化亜鉛、亜ハロゲン酸亜鉛、次亜ハロゲン酸亜鉛、ハロゲン酸亜鉛、過ハロゲン酸亜鉛、亜鉛の無機酸塩、有機酸亜鉛、アルコキシド亜鉛、及び亜鉛錯体からなる群から選択された亜鉛化合物を挙げることができる。
【0024】
ハロゲン化亜鉛としては、例えば、二フッ化亜鉛、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、及び二沃化亜鉛を挙げることができる。
【0025】
次亜ハロゲン酸亜鉛としては、次亜塩素酸亜鉛、次亜臭素酸亜鉛、及び次亜沃素酸亜鉛等を挙げることができる。
【0026】
ハロゲン酸亜鉛としては、塩素酸亜鉛、臭素酸亜鉛、及び沃素酸亜鉛等を挙げることができる。
【0027】
過ハロゲン酸亜鉛としては、過塩素酸亜鉛、過臭素酸亜鉛、及び過沃素酸亜鉛等を挙げることができる。
【0028】
亜鉛の無機酸塩としては、例えば硝酸亜鉛及び硫酸亜鉛等を挙げることができる。
【0029】
有機酸亜鉛としては、Zn(OCOR1)4で示されるモノカルボン酸塩、Zn(OOC−COO)で示されるシュウ酸亜鉛、Zn(OCOR2COO)2(R2は、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、及び環状アルキレン基、並びに炭素数6〜20の芳香族基)で示されるジカルボン酸塩、並びにZn(OH)2(OCOR3)2、ZnO(OH)(OCOR3)2、Zn2O(OH)(OCOR3)5、及びZn4O3(OCOR3)10の何れかの一般式で示されるカルボン酸亜鉛(以上の化学式において、R3は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)を挙げることができる。
【0030】
亜鉛のモノカルボン酸塩としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、吉草酸亜鉛、カプロン酸亜鉛、ヘプタン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ノナン酸亜鉛、デカン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、及びステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0031】
亜鉛のアルコキシドとしては、Zn(OR4)4(R4は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)で示される化合物を挙げることができる。
【0032】
亜鉛錯体としては、例えばジケトン錯体、ジケトン錯体ハロゲン化物、及びジケトン錯体無機酸塩等を挙げることができる。
【0033】
ジケトン錯体としては、例えば、アセチルアセトナト亜鉛、アセト酢酸亜鉛、1,3−プロパンジオナト亜鉛、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛、及びトロポナト亜鉛等を挙げることができる。
【0034】
ジケトン錯体ハロゲン化物としては、アセチルアセトナト亜鉛塩化物、アセト酢酸亜鉛塩化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛塩化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛塩化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛塩化物、及びトロポナト亜鉛塩化物等のジケトン錯体塩化物、アセチルアセトナト亜鉛臭化物、アセト酢酸亜鉛臭化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛臭化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛臭化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛臭化物、及びトロポナト亜鉛臭化物等のジケトン錯体臭化物、アセチルアセトナト亜鉛沃化物、アセト酢酸亜鉛沃化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛沃化物、1,3ージフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛沃化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛沃化物、及びトロポナト亜鉛沃化物等のジケトン錯体沃化物、並びに、アセチルアセトナト亜鉛フッ化物、アセト酢酸亜鉛フッ化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛フッ化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛フッ化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛フッ化物、及びトロポナト亜鉛フッ化物等のジケトン錯体フッ化物等を挙げることができる。
【0035】
以上の各種の、ゾル液を形成する原料である亜鉛化合物の中でも、有機酸亜鉛及び亜鉛のアルコキシドが好ましく、特に亜鉛のモノカルボン酸塩及びZn(OR4)4(R4は、前記と同様の意味を示す。)が好ましい。
【0036】
酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物としては、前記酸化亜鉛ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物として例示した前記各種の化合物において亜鉛を亜鉛以外の金属名に置き換えることにより、例示されることができる。なお、このような措置は、記述の合理化を図るものであって、限定的解釈を許すものではない。
【0037】
酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物の中でも、周期表4族に属する金属特にTi、Zr及びHf、周期表13族に属する金属特にAl、Ga、及びIn、及び周期表14族に属する金属特にSi、Ge、Sn及びPbより成る群から選択される少なくとも一種の金属の有機酸塩、アルコキシド及び無機酸塩が好ましく、特に前記金属のモノカルボン酸塩及びMe(OR4)4(R4は、前記と同様の意味を示す。Meは前記金属を示す。)が好ましい。
【0038】
前記酸化亜鉛ゾル液または酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液は、ゾル形成性化合物を溶媒に混合し、水を添加することにより加水分解させて形成することができる。加水分解の際に酸または塩基を触媒として存在させてもよい。また、ゾル液は、ゾル形成性化合物を溶媒に混合し、乳酸等の有機酸又はアミノアルコール等のアミン類を添加して加水分解させて形成することも、できる。
【0039】
加水分解する際の温度は、例えば室温〜100℃とすることができるが、ゾル形成を促進する観点からは、反応温度は、室温よりも高い範囲の温度、例えば40〜100℃の範囲の温度が好ましい。
【0040】
加水分解の反応時間は、例えば0.1〜10時間とすることができ、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは0.5〜4時間とすることができる。
【0041】
前記ゾル形成性化合物と混合する溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びグリコールエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0042】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2―メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、及びシクロヘキサノール等の1価アルコール類、並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、及び1,4−ブタンジオール等の2価アルコール類を挙げることができる。
【0043】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロン、イソホロン、及びシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0044】
そして、グリコールエーテル系溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、及びフェニルセロソルブ等を挙げることができる。
【0045】
又、前記溶媒としては、前記アルコール系溶媒、前記ケトン系溶媒、及び前記グリコールエーテル系溶媒からなる群から選択された2種以上の有機溶媒を含有する混合溶媒も挙げることができる。混合溶媒を用いる場合には、前記混合溶媒の成分である成分溶媒に対する前記ゾル形成性化合物の溶解性、及びゾル形成反応における反応温度と前記成分溶媒の沸点との関係等を考慮して有機溶媒の種類及び配合割合を決定することができる。
【0046】
前記ゾル形成性化合物と前記溶媒とを混合させる際の前記ゾル形成性化合物の濃度については、前記ゾル形成性化合物が析出しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。前記濃度は、具体的には、溶媒100重量部に対しゾル形成性化合物を0.1〜50重量部となるように調整され、好ましくは前記ゾル形成性化合物を1〜30重量部の範囲となるように調整される。
【0047】
前記ゾル形成性化合物を水と反応させる際に、触媒として用いることのできる酸としては、無機酸及び有機酸を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、及び硫酸等を挙げることができる。有機酸としては、例えば低級のモノカルボン酸を挙げることができ、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びイソ酪酸等を挙げることができる。
【0048】
触媒に用いることのできる塩基としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等の苛性アルカリ類、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミン等のアミン類、第四級アンモニウム化合物及びエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン等のアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0049】
なお、水と触媒との割合は、通常、触媒/水(モル/モル)が0.1以上、好ましくは0.2以上、特に0.2〜2になるように決定される。このような割合にすると透明な被膜が良好に形成される。
【0050】
前記水の前記ゾル形成性化合物に対する割合として、ゾル形成性化合物1モルに対して水は少なくとも0.1モルである。
【0051】
この発明の方法においては、ゾル液中の成分として酸化亜鉛が必須であり、ゾル液中に酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する複合ゾル液の形成が必要である。前記したように、このような複合ゾル液を形成するために、酸化亜鉛を含有するゾル液と酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液とを混合してもよく、また、酸化亜鉛を形成することのできるゾル形成性化合物と酸化亜鉛以外の金属酸化物を形成することのできるゾル形成性化合物とを前記溶媒と混合し、水及び酸又は塩基と反応させて加水分解を行うことにより酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する複合ゾル液を一挙に形成しても良い。
【0052】
いずれの方法を採用するにしても、その方法によって調製されるゾル液中の酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物との含有割合は、モル比で、通常、酸化亜鉛/酸化亜鉛以外の金属酸化物=0.1〜10、好ましくは0.5〜5である。
【0053】
ゾル液は、前記ゾル形成性化合物と溶媒と酸又は塩基との混合物を、通常、室温〜100℃、好ましくは40〜100℃に、通常0.1〜50時間、好ましくは0.1〜10時間加熱することにより、形成することができる。
【0054】
この発明の方法においては、上記のようにして形成されたゾル液を基板上に塗布し、乾燥することによりゲル膜が形成される。
【0055】
前記基材には特に制限はなく、用途に応じて適宜に選択することができ、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、及び鉛ガラス等のガラス系材料から形成された基材、普通鋼、構造用定合金鋼、高張力鋼、耐熱鋼、高クロム系耐熱鋼、及び高ニッケル−クロム系耐熱鋼等の合金鋼、並びにステンレス鋼等の鉄鋼材料、工業用純アルミニウム、5000系Al−Mg系アルミニウム合金及び6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、銀入銅、錫入銅、クロム銅、クロム・ジルコニウム銅、及びジルコニウム銅等の各種銅合金、並びに純チタン、抗力チタン合金、及び耐食性チタン合金等のチタン合金等の金属系材料から形成された基材、ムライト磁器、アルミナ磁器、ジルコン磁器、コーディエライト磁器、及びステアタイト磁器等のセラミックス系材料から形成された基材、前記金属系材料から形成された基材の表面を琺瑯、グラスライニング、及びセラミックスコーティング等の何れかによって被覆した被覆金属基材等を挙げることができる。
【0056】
次いで、100〜1000℃、好ましくは200〜900℃にこのゲル膜を焼成する。焼成雰囲気は、通常の空気雰囲気であればよく、金属酸化膜の種類によっては、窒素ガス雰囲気、希ガス雰囲気等を選択することができる。
【0057】
焼成によりゲル膜は硬化膜となる。得られる硬化膜の厚さは、基材の種類、適用対象物に応じて適宜決定することができるが、通常、10〜1000nmの範囲から選ばれる。この硬化膜は、酸化亜鉛凝集体と酸化亜鉛以外の金属酸化物とから形成される。
略円柱状または不定形をした酸化亜鉛凝集体の単位面積あたりの個数は、焼成条件、すなわち焼成温度に到達するまでの時間を変化させることにより、調整することができる。すなわち、焼成温度に到達するまでの時間を長くすると酸化亜鉛凝集体の個数が増加する。
また、酸化亜鉛凝集体の大きさは焼成温度を変化させることにより、調整することができる。すなわち、焼成温度を高くすると、酸化亜鉛凝集体を大きくすることができる。
【0058】
次いで得られた硬化膜を、母相である金属酸化物を溶解せず、又はその金属酸化物を分解しないが酸化亜鉛を溶解し、又は分解する薬剤で処理する。そのような薬剤として、無機酸例えば塩酸、硝酸、及び硫酸、並びに塩基例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等を挙げることができる。
【0059】
多数の酸化亜鉛凝集体を有する硬化膜を前記薬剤で処理すると、酸化亜鉛凝集体が除去されてしまい、結果として略円柱状又は不定形状の細孔を有する多孔性性金属酸化物膜を得ることができる。
【0060】
【実施例】
(実施例1)
Zn(CH3COO)2・2H2O 5.49g(0.025モル)を、99.5%エタノール 60.00gに溶解した。この溶液に65%HNO3 1.58g(0.015g)とH2O 4当量1.80g(0.10モル)とを加えた。H2O添加後の溶液を50〜60℃で6時間加熱撹拌した。その後に、室温にまで冷却し、重量減少分のエタノールを加えて、酸化亜鉛ゾル液を調製した。
【0061】
一方、Si(OC2H5)4 6.50g(0.031モル)を、99.5%エタノール 55mlに溶解した。この溶液に60%HNO3 0.86g(0.082g)とH2O 1.21g(0.0.053モル)との混合溶液を撹拌しながらゆっくりと添加し、3日間室温で放置して、シリカゾル液を調製した。
【0062】
前記酸化亜鉛ゾル液 2.48gと前記シリカゾル液 2.00gとを混合することにより複合ゾル液を得た。
【0063】
この複合ゾル液を、清浄にした無アルカリガラス基板上に、スピンナー法(500rpm/5秒、その後2000rpm/30秒)で塗布した。塗膜を形成した基板を電気炉に装入し、550℃で30分間焼成した。得られた硬化膜の表面を、電界放射形走査電子顕微鏡(JSM-6500F、日本電子製)により観察した。その電子顕微鏡写真を図2に示した。
【0064】
この硬化膜を、1%塩酸水溶液により室温で10分間処理することにより、酸化亜鉛が除去されてシリカが残存する多孔性金属酸化物膜を得た。この多孔性金属酸化物膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
【0065】
(実施例2)
実施例1における酸化亜鉛ゾル液を1.24gとし、基板を石英ガラスとし、焼成条件として700℃で5分間加熱とした以外は実施例1と同様にした。実施例1と同様に円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにシリカが存在する膜が作製された。この膜を、5%HNO3に浸漬しつつ30℃に1分間加熱処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性シリカ膜を得た。この多孔性シリカ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例3)
チタニアゾル液の作製
チタニウムテトライソプロポキシド 7.1gを99.5%エタノール 50mlに溶解し、H2O 0.45gと60%HNO3 0.53gの混合液を攪拌しながらゆっくり加えた。この液を室温にて一夜放置してチタニアゾル液を得た。
実施例1に記載の酸化亜鉛ゾル液を2.8g、チタニアゾル液を2.3g秤り取り、両者を混合した。複合ゾル液を無アルカリ基板にスピンナー法により塗布し、500℃に設定された電気炉にて10分焼成した。実施例1と同様に円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにチタニアが存在する膜が作製された。この膜を、1%HClで20℃で2分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性チタニア膜を得た。この多孔性チタニア膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例4)
アルミナゾル液の作製
[Al(O-iso-C3H7)(CH3COCOOC2H5)] 18.3gをイソプロパノール 233gに溶解した。H2O 18.1gと60%HNO3 13.5gの混合液を攪拌しながら加えて3日間室温で放置してアルミナゾル液を作製した。
実施例1に記載の酸化亜鉛ゾル液を2.8g、アルミナゾル液を5.7g秤り取り、両者を混合した。複合ゾル液を石英基板にスピンナー法により塗布し、800℃に設定された電気炉にて5分焼成した。実施例1と同様に円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにアルミナが存在する膜が作製された。この膜を、1%H2SO4で10℃で3分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性アルミナ膜を得た。この多孔性アルミナ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例5)
酸化亜鉛ゾル液の作製
Zn(CH3COO)2・2H2O 4.4gを99.5%エタノール 50mlに溶解した。この溶液に、乳酸 1.8gを攪拌しながら加えて、室温にてさらに2時間攪拌して、酸化亜鉛ゾル液を作製した。
このゾル液 2.8gに実施例1で作製したシリカゾル液1.9gを混合して実施例1と同様にした。円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにシリカが存在する膜が作製された。この膜を、5%HClで10℃で5分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性シリカ膜を得た。この多孔性シリカ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例6)
実施例5で作製した酸化亜鉛ゾル液 2.0gに実施例4で作製したアルミナゾル液 6.5gを混合して、実施例1と同様にした。円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにアルミナが存在する膜が作製された。この膜を、1%H2SO4で10℃で3分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性アルミナ膜を得た。この多孔性アルミナ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
【0066】
【発明の効果】
この発明によると、例えば、ディスプレイの表面を被覆する大面積の薄膜であると、従来ディスプレイに生じていた反射やぎらつきを防止することのできる防眩性透明保護膜として、及び、汚れの付かない、撥水性及び防眩性に優れた透明な保護膜等として有用な機能を有する多孔性金属酸化物膜及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、多孔性金属酸化物膜を示す模式図である。
【図2】図2は、酸化亜鉛凝集体を有するシリカ硬化膜を示す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1・・・細孔、1a・・・貫通孔、1b・・・穴
【発明の属する技術分野】
この発明は、多孔性金属酸化物膜及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、低反射膜、高活性触媒膜または高撥水性膜として有用な多孔性金属酸化物膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代の生活環境においては、曇り止めなどの撥水処理が必要とされ、また、望まれる各種の設備、装置、機械器具が多数存在する。これらは、例えば、自動車の窓ガラス、自動車の塗装表面、台所設備、台所用品、台所設備に付設される排気装置、入浴設備、洗面設備、医療用施設、医療用機械器具、鏡、眼鏡など、きわめて多岐に亘っている。
【0003】
このような設備、装置、機械器具などの撥水処理方法として、例えば、自動車の窓ガラスの表面に、低分子フッ素化合物、フッ素樹脂またはシリコンなどを塗布または化学蒸着することにより薄膜を形成して、撥水処理する方法が知られている。しかしながら、従来の低分子フッ素化合物、フッ素樹脂またはシリコンから形成された膜にあっては、撥水性を付与することはできるものの、膜の硬度が小さく、機械的損傷を受けやすいという問題があった。
【0004】
そこで、前記問題を解消することを企図して、ハフニアゾルまたはジルコニアゾルを基材に塗布した後、硬化処理してなる硬質膜が提案されている(特開2002−187738号公報)。ところが、この膜は高い硬度を有するものの、用いるハフニアゾルまたはジルコニアゾルの基材に対する濡れ性が悪く、これに起因して基材に対する膜の密着性に劣るという新たな問題が浮上してきた。
【0005】
一方、液晶ディスプレイ、CRT画面等の表示装置においては、画面上での反射ができるだけ少なくて良好な視認性を発揮する表示画面が要望されている。例えば、表示画面の表面層がガラス、又は透明プラスチックで形成されている場合、その表示画面に室内電灯、操作者の姿等が反射し、又は写らないことが望ましい。
【0006】
ところで、無機材料で形成された多孔質薄膜が既に存在すると思われる。例えばセラミック焼結体からなる薄膜は、多孔質である。しかしながら、セラミック焼結体から成る薄膜における孔は、その孔サイズ及び細孔の形状等が全くランダムである。このような多孔質薄膜に対し、孔サイズがナノオーダーであり、細孔が特定形状を有するような多孔質薄膜は多機能新規材料と期待される。が、今までのところ、バルク状シリカゲルのマクロ孔制御法が紹介されているに留まる(非特許文献1)。
【非特許文献1】
監修作花済夫 「ゾル−ゲル法応用技術の新展開」2000年5月15日第1刷発行、第110頁〜第116頁、株式会社シーエムシー発行
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、前記事情に鑑み、一方向に開穿されてなる孔を有するという独特の構造を有し、それが故に新規な用途開発を期待することのできる新規無機材料を提供することを、目的とする。この発明の他の目的は、防眩性が良好な透明スクリーンとして利用可能な機能性材料として、高活性な酸化触媒として利用可能な機能性材料として、また、高度の撥水性を有することにより撥水性被膜として利用可能な機能性材料として、様々に利用可能な多孔質無機酸化物膜を提供することにある。この発明のさらに他の目的は、前記多孔質無機酸化物膜を製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施し、酸化亜鉛を除去することによって、膜厚の方向に開穿形成された細孔を有してなることを特徴とする多孔性金属酸化物膜であり、
請求項2は、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物における金属が周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属である請求項1に記載の多孔性金属酸化物膜であり、
請求項3は、前記周期表4族に属する金属がチタンであり、前記周期表13族に属する金属がアルミニウムであり、前記周期表14族に属する金属がケイ素である請求項2に記載の多孔性金属酸化物膜であり、
請求項4は、ゾルゲル法により調製されたところの、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施すことによって作製された多孔性金属酸化物膜の製造方法であり、
請求項5は、前記酸化亜鉛以外の金属酸化物における金属が、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属である請求項4に記載の多孔性金属酸化物膜の製造方法であり、
請求項6は、前記周期表4族に属する金属がチタンであり、前記周期表13族に属する金属がアルミニウムであり、前記周期表14族に属する金属がケイ素である請求項4に記載の多孔性金属酸化物膜の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
(1) 多孔性金属酸化物膜
この発明に係る多孔性金属酸化物膜は、金属酸化物の膜であり、その膜厚の方向に沿う軸線を有する多数の細孔が形成される。その細孔の形状は、円筒形であり、また場合によっては不定形である。その細孔が円筒形であるときには、その細孔の開口直径が大きくとも100μmであるという特徴を有する。またその細孔が不定形であるときには、その開口部における最大長さが大きくとも100μmである。
【0010】
金属酸化物としては、金属の酸化物である限り特に制限がないのであるが、好適には、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属より成る群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物を挙げることができる。前記周期表4族に属する金属の好適例としては、Ti、Zr、及びHf等を挙げることができ、前記周期表13族に属する金属としては、Al、Ga、及びIn等を挙げることができ、前記周期表14族に属する金属としては、Si、Ge、Sn及びPb等を挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、Ti、Al及びSiである。なお、この発明において、周期表は、「無機化学命名法 -IUPAC 1990年勧告-」G.J.Leigh編 山崎一雄訳・著、第43頁、第1版第1刷1993年3月26日発行、株式会社東京化学同人発行の記載による。
【0011】
この多孔性金属酸化物膜の膜厚は、特に制限がなく、またこの多孔性金属酸化物膜の用途に応じて適切な値に決定される。多くの場合、この多孔性金属酸化物膜の厚みは、10nm〜10μmである。この多孔性金属酸化物膜の厚みの調整は、後述する多孔性金属酸化物膜の製造方法において説明されるように、適宜に行うことができる。
【0012】
この多孔性金属酸化物膜は、前述したように多数の細孔を有し、しかもその細孔の軸線方向は膜の厚み方向に揃っている。従来の多孔性無機酸化物の薄膜が全くランダムな方向に開口する細孔を有していることに鑑みると、本願発明に係る多孔性無機酸化物が膜の厚みの方向に揃った軸線を有する多数の細孔を有することは、特筆するべきことである。なお、図1に示されるように、この多孔性金属酸化物膜における細孔1は、貫通孔1aであっても、底を有する有底円筒状の穴1bであっても良い。
【0013】
また、このような細孔の、多孔性無機酸化物膜の単位表面積当たりの開口面積が大きいと、この多孔性無機酸化物膜は非常に大きな表面積を有することになる。
【0014】
この多孔性金属酸化物膜は、その金属酸化物の種類によって透明である。
【0015】
略円筒形又は不定形状をした細孔を多数有することと、透明な薄膜であることという性質により、この多孔性金属酸化物膜は、例えば、ディスプレイの表面を被覆する大面積の薄膜であると、従来のディスプレイに生じていた反射やぎらつきを防止することのできる防眩性透明保護膜として使用されることができる。
【0016】
特に多孔性金属酸化物膜を形成する金属酸化物がTiO2である場合、TiO2で形成された多孔性金属酸化物膜をガラス面の保護膜として使用すると、その保護膜は、表面に付着する有機物を前記二酸化チタンの触媒作用により分解することができ、しかも、多数の円筒状又は不定形状の細孔を有するので、汚れの付かない、撥水性及び防眩性に優れた透明な保護膜となる。
【0017】
特に多孔性金属酸化物膜を形成する金属酸化物がSiO2である場合、この多孔性金属酸化物膜は多数の円筒状又は不定形状の細孔を有するので、撥水性及び防眩性に優れた透明な保護膜となる。
【0018】
特に多孔性金属酸化物膜を形成する金属酸化物がAl2O3である場合、この多孔性金属酸化物膜は多数の円筒状又は不定形状の細孔を有するので、撥水性、防眩性に優れた透明な保護膜となる。
【0019】
この発明に係る多孔性金属酸化物膜は、円筒形又は不定形状をした細孔に、他の物質を充填することもできる。すなわち、膜厚の方向に開穿形成された多数の細孔とこれらの細孔に充填乃至挿入される他の物質とを有してなる多孔性複合膜につき、新たな機能を有する機能性材料として有用な用途が期待される。
【0020】
(多孔性金属酸化物膜の製造方法)
この発明に係る多孔性金属酸化物膜は、ゾルゲル法により調製されたところの、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有するゾル液を基板に塗布し、得られたゲル膜を焼成して硬化膜を形成した後、前記硬化膜を酸処理することにより、製造される。
【0021】
酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有するゲル膜を調製するためのゾル液としては、例えば、酸化亜鉛ゾル液と酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液とを混合することにより得られる複合ゾル液を挙げることが、できる。
【0022】
酸化亜鉛以外の金属酸化物の好適例として、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属より成る群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物を挙げることができる。前記周期表4族に属する金属の好適例としては、Ti、Zr、及びHf等を挙げることができ、前記周期表13族に属する金属としては、Al、Ga、及びIn等を挙げることができ、前記周期表14族に属する金属としては、Si、Ge、Sn及びPb等を挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは、Ti、Al及びSiである。
【0023】
前記ゾル形成性化合物としては、酸化亜鉛ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物を例にとって説明すると、具体的には、ハロゲン化亜鉛、亜ハロゲン酸亜鉛、次亜ハロゲン酸亜鉛、ハロゲン酸亜鉛、過ハロゲン酸亜鉛、亜鉛の無機酸塩、有機酸亜鉛、アルコキシド亜鉛、及び亜鉛錯体からなる群から選択された亜鉛化合物を挙げることができる。
【0024】
ハロゲン化亜鉛としては、例えば、二フッ化亜鉛、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、及び二沃化亜鉛を挙げることができる。
【0025】
次亜ハロゲン酸亜鉛としては、次亜塩素酸亜鉛、次亜臭素酸亜鉛、及び次亜沃素酸亜鉛等を挙げることができる。
【0026】
ハロゲン酸亜鉛としては、塩素酸亜鉛、臭素酸亜鉛、及び沃素酸亜鉛等を挙げることができる。
【0027】
過ハロゲン酸亜鉛としては、過塩素酸亜鉛、過臭素酸亜鉛、及び過沃素酸亜鉛等を挙げることができる。
【0028】
亜鉛の無機酸塩としては、例えば硝酸亜鉛及び硫酸亜鉛等を挙げることができる。
【0029】
有機酸亜鉛としては、Zn(OCOR1)4で示されるモノカルボン酸塩、Zn(OOC−COO)で示されるシュウ酸亜鉛、Zn(OCOR2COO)2(R2は、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、及び環状アルキレン基、並びに炭素数6〜20の芳香族基)で示されるジカルボン酸塩、並びにZn(OH)2(OCOR3)2、ZnO(OH)(OCOR3)2、Zn2O(OH)(OCOR3)5、及びZn4O3(OCOR3)10の何れかの一般式で示されるカルボン酸亜鉛(以上の化学式において、R3は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)を挙げることができる。
【0030】
亜鉛のモノカルボン酸塩としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、吉草酸亜鉛、カプロン酸亜鉛、ヘプタン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ノナン酸亜鉛、デカン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、及びステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0031】
亜鉛のアルコキシドとしては、Zn(OR4)4(R4は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)で示される化合物を挙げることができる。
【0032】
亜鉛錯体としては、例えばジケトン錯体、ジケトン錯体ハロゲン化物、及びジケトン錯体無機酸塩等を挙げることができる。
【0033】
ジケトン錯体としては、例えば、アセチルアセトナト亜鉛、アセト酢酸亜鉛、1,3−プロパンジオナト亜鉛、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛、及びトロポナト亜鉛等を挙げることができる。
【0034】
ジケトン錯体ハロゲン化物としては、アセチルアセトナト亜鉛塩化物、アセト酢酸亜鉛塩化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛塩化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛塩化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛塩化物、及びトロポナト亜鉛塩化物等のジケトン錯体塩化物、アセチルアセトナト亜鉛臭化物、アセト酢酸亜鉛臭化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛臭化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛臭化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛臭化物、及びトロポナト亜鉛臭化物等のジケトン錯体臭化物、アセチルアセトナト亜鉛沃化物、アセト酢酸亜鉛沃化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛沃化物、1,3ージフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛沃化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛沃化物、及びトロポナト亜鉛沃化物等のジケトン錯体沃化物、並びに、アセチルアセトナト亜鉛フッ化物、アセト酢酸亜鉛フッ化物、1,3−プロパンジオナト亜鉛フッ化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト亜鉛フッ化物、1−フェニルプロパンジオナト亜鉛フッ化物、及びトロポナト亜鉛フッ化物等のジケトン錯体フッ化物等を挙げることができる。
【0035】
以上の各種の、ゾル液を形成する原料である亜鉛化合物の中でも、有機酸亜鉛及び亜鉛のアルコキシドが好ましく、特に亜鉛のモノカルボン酸塩及びZn(OR4)4(R4は、前記と同様の意味を示す。)が好ましい。
【0036】
酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物としては、前記酸化亜鉛ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物として例示した前記各種の化合物において亜鉛を亜鉛以外の金属名に置き換えることにより、例示されることができる。なお、このような措置は、記述の合理化を図るものであって、限定的解釈を許すものではない。
【0037】
酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液を形成することのできるゾル形成性化合物の中でも、周期表4族に属する金属特にTi、Zr及びHf、周期表13族に属する金属特にAl、Ga、及びIn、及び周期表14族に属する金属特にSi、Ge、Sn及びPbより成る群から選択される少なくとも一種の金属の有機酸塩、アルコキシド及び無機酸塩が好ましく、特に前記金属のモノカルボン酸塩及びMe(OR4)4(R4は、前記と同様の意味を示す。Meは前記金属を示す。)が好ましい。
【0038】
前記酸化亜鉛ゾル液または酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液は、ゾル形成性化合物を溶媒に混合し、水を添加することにより加水分解させて形成することができる。加水分解の際に酸または塩基を触媒として存在させてもよい。また、ゾル液は、ゾル形成性化合物を溶媒に混合し、乳酸等の有機酸又はアミノアルコール等のアミン類を添加して加水分解させて形成することも、できる。
【0039】
加水分解する際の温度は、例えば室温〜100℃とすることができるが、ゾル形成を促進する観点からは、反応温度は、室温よりも高い範囲の温度、例えば40〜100℃の範囲の温度が好ましい。
【0040】
加水分解の反応時間は、例えば0.1〜10時間とすることができ、好ましくは0.5〜5時間、特に好ましくは0.5〜4時間とすることができる。
【0041】
前記ゾル形成性化合物と混合する溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びグリコールエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0042】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2―メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、及びシクロヘキサノール等の1価アルコール類、並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、及び1,4−ブタンジオール等の2価アルコール類を挙げることができる。
【0043】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、ホロン、イソホロン、及びシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0044】
そして、グリコールエーテル系溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、及びフェニルセロソルブ等を挙げることができる。
【0045】
又、前記溶媒としては、前記アルコール系溶媒、前記ケトン系溶媒、及び前記グリコールエーテル系溶媒からなる群から選択された2種以上の有機溶媒を含有する混合溶媒も挙げることができる。混合溶媒を用いる場合には、前記混合溶媒の成分である成分溶媒に対する前記ゾル形成性化合物の溶解性、及びゾル形成反応における反応温度と前記成分溶媒の沸点との関係等を考慮して有機溶媒の種類及び配合割合を決定することができる。
【0046】
前記ゾル形成性化合物と前記溶媒とを混合させる際の前記ゾル形成性化合物の濃度については、前記ゾル形成性化合物が析出しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。前記濃度は、具体的には、溶媒100重量部に対しゾル形成性化合物を0.1〜50重量部となるように調整され、好ましくは前記ゾル形成性化合物を1〜30重量部の範囲となるように調整される。
【0047】
前記ゾル形成性化合物を水と反応させる際に、触媒として用いることのできる酸としては、無機酸及び有機酸を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、及び硫酸等を挙げることができる。有機酸としては、例えば低級のモノカルボン酸を挙げることができ、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びイソ酪酸等を挙げることができる。
【0048】
触媒に用いることのできる塩基としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等の苛性アルカリ類、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミン等のアミン類、第四級アンモニウム化合物及びエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン等のアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0049】
なお、水と触媒との割合は、通常、触媒/水(モル/モル)が0.1以上、好ましくは0.2以上、特に0.2〜2になるように決定される。このような割合にすると透明な被膜が良好に形成される。
【0050】
前記水の前記ゾル形成性化合物に対する割合として、ゾル形成性化合物1モルに対して水は少なくとも0.1モルである。
【0051】
この発明の方法においては、ゾル液中の成分として酸化亜鉛が必須であり、ゾル液中に酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する複合ゾル液の形成が必要である。前記したように、このような複合ゾル液を形成するために、酸化亜鉛を含有するゾル液と酸化亜鉛以外の金属酸化物ゾル液とを混合してもよく、また、酸化亜鉛を形成することのできるゾル形成性化合物と酸化亜鉛以外の金属酸化物を形成することのできるゾル形成性化合物とを前記溶媒と混合し、水及び酸又は塩基と反応させて加水分解を行うことにより酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する複合ゾル液を一挙に形成しても良い。
【0052】
いずれの方法を採用するにしても、その方法によって調製されるゾル液中の酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物との含有割合は、モル比で、通常、酸化亜鉛/酸化亜鉛以外の金属酸化物=0.1〜10、好ましくは0.5〜5である。
【0053】
ゾル液は、前記ゾル形成性化合物と溶媒と酸又は塩基との混合物を、通常、室温〜100℃、好ましくは40〜100℃に、通常0.1〜50時間、好ましくは0.1〜10時間加熱することにより、形成することができる。
【0054】
この発明の方法においては、上記のようにして形成されたゾル液を基板上に塗布し、乾燥することによりゲル膜が形成される。
【0055】
前記基材には特に制限はなく、用途に応じて適宜に選択することができ、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、及び鉛ガラス等のガラス系材料から形成された基材、普通鋼、構造用定合金鋼、高張力鋼、耐熱鋼、高クロム系耐熱鋼、及び高ニッケル−クロム系耐熱鋼等の合金鋼、並びにステンレス鋼等の鉄鋼材料、工業用純アルミニウム、5000系Al−Mg系アルミニウム合金及び6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、銀入銅、錫入銅、クロム銅、クロム・ジルコニウム銅、及びジルコニウム銅等の各種銅合金、並びに純チタン、抗力チタン合金、及び耐食性チタン合金等のチタン合金等の金属系材料から形成された基材、ムライト磁器、アルミナ磁器、ジルコン磁器、コーディエライト磁器、及びステアタイト磁器等のセラミックス系材料から形成された基材、前記金属系材料から形成された基材の表面を琺瑯、グラスライニング、及びセラミックスコーティング等の何れかによって被覆した被覆金属基材等を挙げることができる。
【0056】
次いで、100〜1000℃、好ましくは200〜900℃にこのゲル膜を焼成する。焼成雰囲気は、通常の空気雰囲気であればよく、金属酸化膜の種類によっては、窒素ガス雰囲気、希ガス雰囲気等を選択することができる。
【0057】
焼成によりゲル膜は硬化膜となる。得られる硬化膜の厚さは、基材の種類、適用対象物に応じて適宜決定することができるが、通常、10〜1000nmの範囲から選ばれる。この硬化膜は、酸化亜鉛凝集体と酸化亜鉛以外の金属酸化物とから形成される。
略円柱状または不定形をした酸化亜鉛凝集体の単位面積あたりの個数は、焼成条件、すなわち焼成温度に到達するまでの時間を変化させることにより、調整することができる。すなわち、焼成温度に到達するまでの時間を長くすると酸化亜鉛凝集体の個数が増加する。
また、酸化亜鉛凝集体の大きさは焼成温度を変化させることにより、調整することができる。すなわち、焼成温度を高くすると、酸化亜鉛凝集体を大きくすることができる。
【0058】
次いで得られた硬化膜を、母相である金属酸化物を溶解せず、又はその金属酸化物を分解しないが酸化亜鉛を溶解し、又は分解する薬剤で処理する。そのような薬剤として、無機酸例えば塩酸、硝酸、及び硫酸、並びに塩基例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等を挙げることができる。
【0059】
多数の酸化亜鉛凝集体を有する硬化膜を前記薬剤で処理すると、酸化亜鉛凝集体が除去されてしまい、結果として略円柱状又は不定形状の細孔を有する多孔性性金属酸化物膜を得ることができる。
【0060】
【実施例】
(実施例1)
Zn(CH3COO)2・2H2O 5.49g(0.025モル)を、99.5%エタノール 60.00gに溶解した。この溶液に65%HNO3 1.58g(0.015g)とH2O 4当量1.80g(0.10モル)とを加えた。H2O添加後の溶液を50〜60℃で6時間加熱撹拌した。その後に、室温にまで冷却し、重量減少分のエタノールを加えて、酸化亜鉛ゾル液を調製した。
【0061】
一方、Si(OC2H5)4 6.50g(0.031モル)を、99.5%エタノール 55mlに溶解した。この溶液に60%HNO3 0.86g(0.082g)とH2O 1.21g(0.0.053モル)との混合溶液を撹拌しながらゆっくりと添加し、3日間室温で放置して、シリカゾル液を調製した。
【0062】
前記酸化亜鉛ゾル液 2.48gと前記シリカゾル液 2.00gとを混合することにより複合ゾル液を得た。
【0063】
この複合ゾル液を、清浄にした無アルカリガラス基板上に、スピンナー法(500rpm/5秒、その後2000rpm/30秒)で塗布した。塗膜を形成した基板を電気炉に装入し、550℃で30分間焼成した。得られた硬化膜の表面を、電界放射形走査電子顕微鏡(JSM-6500F、日本電子製)により観察した。その電子顕微鏡写真を図2に示した。
【0064】
この硬化膜を、1%塩酸水溶液により室温で10分間処理することにより、酸化亜鉛が除去されてシリカが残存する多孔性金属酸化物膜を得た。この多孔性金属酸化物膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
【0065】
(実施例2)
実施例1における酸化亜鉛ゾル液を1.24gとし、基板を石英ガラスとし、焼成条件として700℃で5分間加熱とした以外は実施例1と同様にした。実施例1と同様に円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにシリカが存在する膜が作製された。この膜を、5%HNO3に浸漬しつつ30℃に1分間加熱処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性シリカ膜を得た。この多孔性シリカ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例3)
チタニアゾル液の作製
チタニウムテトライソプロポキシド 7.1gを99.5%エタノール 50mlに溶解し、H2O 0.45gと60%HNO3 0.53gの混合液を攪拌しながらゆっくり加えた。この液を室温にて一夜放置してチタニアゾル液を得た。
実施例1に記載の酸化亜鉛ゾル液を2.8g、チタニアゾル液を2.3g秤り取り、両者を混合した。複合ゾル液を無アルカリ基板にスピンナー法により塗布し、500℃に設定された電気炉にて10分焼成した。実施例1と同様に円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにチタニアが存在する膜が作製された。この膜を、1%HClで20℃で2分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性チタニア膜を得た。この多孔性チタニア膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例4)
アルミナゾル液の作製
[Al(O-iso-C3H7)(CH3COCOOC2H5)] 18.3gをイソプロパノール 233gに溶解した。H2O 18.1gと60%HNO3 13.5gの混合液を攪拌しながら加えて3日間室温で放置してアルミナゾル液を作製した。
実施例1に記載の酸化亜鉛ゾル液を2.8g、アルミナゾル液を5.7g秤り取り、両者を混合した。複合ゾル液を石英基板にスピンナー法により塗布し、800℃に設定された電気炉にて5分焼成した。実施例1と同様に円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにアルミナが存在する膜が作製された。この膜を、1%H2SO4で10℃で3分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性アルミナ膜を得た。この多孔性アルミナ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例5)
酸化亜鉛ゾル液の作製
Zn(CH3COO)2・2H2O 4.4gを99.5%エタノール 50mlに溶解した。この溶液に、乳酸 1.8gを攪拌しながら加えて、室温にてさらに2時間攪拌して、酸化亜鉛ゾル液を作製した。
このゾル液 2.8gに実施例1で作製したシリカゾル液1.9gを混合して実施例1と同様にした。円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにシリカが存在する膜が作製された。この膜を、5%HClで10℃で5分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性シリカ膜を得た。この多孔性シリカ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
(実施例6)
実施例5で作製した酸化亜鉛ゾル液 2.0gに実施例4で作製したアルミナゾル液 6.5gを混合して、実施例1と同様にした。円形の酸化亜鉛が形成され、そのまわりにアルミナが存在する膜が作製された。この膜を、1%H2SO4で10℃で3分間処理することにより、酸化亜鉛が除去された多孔性アルミナ膜を得た。この多孔性アルミナ膜を前記電子顕微鏡で観察したところ、酸化亜鉛が除去されて多数の孔が形成されていることが、確認できた。
【0066】
【発明の効果】
この発明によると、例えば、ディスプレイの表面を被覆する大面積の薄膜であると、従来ディスプレイに生じていた反射やぎらつきを防止することのできる防眩性透明保護膜として、及び、汚れの付かない、撥水性及び防眩性に優れた透明な保護膜等として有用な機能を有する多孔性金属酸化物膜及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、多孔性金属酸化物膜を示す模式図である。
【図2】図2は、酸化亜鉛凝集体を有するシリカ硬化膜を示す電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1・・・細孔、1a・・・貫通孔、1b・・・穴
Claims (6)
- 酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施し、酸化亜鉛を除去することによって、膜厚の方向に開穿形成された細孔を有してなることを特徴とする多孔性金属酸化物膜。
- 前記酸化亜鉛以外の金属酸化物における金属が周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属である請求項1に記載の多孔性金属酸化物膜。
- 前記周期表4族に属する金属がチタンであり、前記周期表13族に属する金属がアルミニウムであり、前記周期表14族に属する金属がケイ素である請求項2に記載の多孔性金属酸化物膜。
- ゾルゲル法により調製されたところの、酸化亜鉛と酸化亜鉛以外の金属酸化物とを含有する膜に酸処理を施すことによって作製された多孔性金属酸化物膜の製造方法。
- 前記酸化亜鉛以外の金属酸化物における金属が、周期表4族に属する金属、周期表13族に属する金属、及び周期表14族に属する金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属である請求項4に記載の多孔性金属酸化物膜の製造方法。
- 前記周期表4族に属する金属がチタンであり、前記周期表13族に属する金属がアルミニウムであり、前記周期表14族に属する金属がケイ素である請求項4に記載の多孔性金属酸化物膜の製造方法。
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