JP2009213954A - 薄膜及びその製造方法、並びにガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】光照射後においても撥水性を維持し、更に、耐久性及び有機物分解性をも備えた薄膜を提供する。
【解決手段】酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウム及び結晶化した酸化チタンを含む薄膜であって、光照射に対し、水に対する接触角が40°以上を維持することを特徴とする薄膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、薄膜及びその製造方法、並びにガラスに関する。
近年、酸化チタンを中心とする半導体光触媒を用いたセルフクリーニング(自己浄化)技術に関する研究が行われている。従来のセルフクリーニング技術は、光照射により親水性を呈する(以下、「超親水化」ともいう)半導体光触媒の性質を利用して、付着した油性の汚損成分を降雨や水洗等によって容易に除去できるようにする技術である。また、該セルフクリーニング技術は、光照射により有機物を分解する半導体光触媒の性質(有機物分解性)を利用して、付着した油性の汚損成分を分解し除去できるようにする技術である。
一方、撥水化処理に関する技術として、フッ素系樹脂等を用いたコーティング技術や、フッ素系樹脂と半導体光触媒とを含有する膜に関する技術(例えば、特許文献1及び2参照)が知られている。
特開平10−237430号公報 特開2001−152138号公報
しかしながら、上記従来のセルフクリーニング技術では、光照射により表面が親水性となるため、本質的に表面エネルギーが高く汚損物質が付着しやすい場合がある。また、表面が親水性となるため、像がゆがみ視認性に劣る傾向がある。このため、撥水性を要求される用途(例えば、自動車のフロントウインドウガラス等)への適用が難しい問題がある。
また、上記フッ素系樹脂等を用いたコーティング技術では、コーティング対象物に対し、単に撥水性を付与するに留まり、有機物分解性まで付与することはできない。また、コーティング剤自身が有機物であるため、耐久性に劣る問題もある。
また、上記フッ素系樹脂と半導体光触媒とを含有する膜に関する技術を用いた場合、有機物であるフッ素系樹脂自身(膜自身)が光触媒の作用により酸化分解を被りやすく、耐久性に劣る問題がある。
以上により、光照射後においても撥水性を維持し、更に、耐久性及び有機物分解性をも備えた薄膜の開発が求められる。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、光照射後においても撥水性を維持し、更に、耐久性及び有機物分解性をも備えた薄膜及びその製造方法並びにガラスを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウム及び結晶化した酸化チタンを含む薄膜であって、光照射に対し、水に対する接触角が40°以上を維持することを特徴とする薄膜である。
<2> 水滴転落角が40°以下であることを特徴とする<1>に記載の薄膜である。
<3> 酸化ジルコニウムの前駆体又は酸化ハフニウムの前駆体と、酸化チタンの前駆体と、を体積比1:5〜5:1の範囲で混合して得られた塗布液を用いて形成されたことを特徴とする<1>に記載の薄膜である。
<4> 表面粗さが100nm以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の薄膜である。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の薄膜を製造する方法であって、酸化ジルコニウムの前駆体又は酸化ハフニウムの前駆体と、酸化チタンの前駆体と、を比率1:5〜5:1の範囲で混合して塗布液を調製する工程と、調製された塗布液を支持体上に塗布して塗布膜を形成する工程と、形成された塗布膜を300℃以上900℃以下の温度で熱処理する工程と、を含むことを特徴とする薄膜の製造方法である。
<6> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の薄膜により全部又は一部を被覆されたことを特徴とするガラスである。
本発明によれば、光照射後においても撥水性を維持し、更に、耐久性及び有機物分解性をも備えた薄膜及びその製造方法並びにガラスを提供することができる。
<薄膜及びその製造方法>
本発明の薄膜は、酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウム及び結晶化した酸化チタンを含み、光照射に対し、水に対する接触角が40°以上を維持することを特徴とする。
本発明の薄膜は光照射後においても撥水性を備える。このため、比較的表面エネルギーが低く、汚損物質が付着しにくい。また、窓ガラス、レンズ、鏡等を被覆する用途に用いた場合には、水膜で像がゆがむ現象を抑制でき、視認性も良好となる。
また、本発明の薄膜は、結晶化した酸化チタンを含有するため、光触媒作用による有機物分解性を備える。
さらに、本発明の薄膜は、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタンといった無機系の材料を主成分として構成されているため、薄膜自身が光触媒作用により酸化分解される現象を抑制でき、耐久性を備える。
以上のように、本発明の薄膜は、光照射後においても撥水性を維持し、更に、耐久性及び有機物分解性をも備える。このため、例えば、早く乾燥させることが必要な部位を被覆する用途や、水膜で像が歪まないことが必要とされる用途(即ち、視認性が必要とされる用途)に有用である。例えば、レンズ、窓、鏡などのガラス製品を被覆する用途(例えば、自動車のフロントウインドウ等)に有用である。
本発明において「光照射」とは、ブラックライト(FL10BL−B,National)を用いて波長400nm以下の紫外光(UV光)を、1〜5mW/cmの強さで照射することを指す。
また、本発明において、「水に対する接触角」は、接触角測定装置(Drop Master500,協和界面化学株式会社)を用い、3mgの水滴(蒸留水)を薄膜表面に滴下し、滴下後1〜10秒の間に測定された値を指す。
また本発明において、「光照射に対し、水に対する接触角が40°以上を維持する」とは、水に対する接触角が光照射後に40°以上であることを意味する。更に、水に対する接触角は、光照射前及び光照射後のいずれにおいても40°以上であることが好ましい。
本発明の薄膜は、水滴転落角が40°以下であることが好ましい。
水滴転落角が40°以下であると、傾斜により水滴を除去することが更に容易となる(即ち、滑水性に優れる)。このため、水滴除去性が更に向上し、上述した用途に更に有用となる。
ここで、水滴転落角は、接触角測定装置(Drop Master500,協和界面化学株式会社)および転落角測定装置(SA−11,協和界面化学株式会社)を用いて測定された値を指す。具体的には、薄膜上に30mgの水滴を滴下した後、前記転落角測定装置を用いて該薄膜を傾けながら、前記接触角測定装置に付属しているカメラから水滴を観察し、水滴が転落する瞬間の転落角を測定する。なお、転落する瞬間とは、水滴の前端点および後端点の両方が移動し始める瞬間である。
前記水滴転落角は、より好ましくは20°以下である。
また、前記水滴転落角は、光未照射時だけでなく、光照射後においても上記範囲を維持することが好ましい。
また、本発明の薄膜は、酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウムと、結晶化した酸化チタンと、を含有する。
薄膜中の酸化チタンが結晶化されていない場合、有機物分解性が低下する。
ここで、酸化チタンの結晶化の形態としては、アナターゼ型、ルチル型が挙げられるが、中でも、光触媒活性の観点より、アナターゼ型が好ましい。
なお、本発明において、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムについては結晶化されていても結晶化されていなくてもよい。
本発明の薄膜は本発明の効果を妨げない限り、他の成分を含んでいてもよく、酸化分解による影響を無視できる程度であれば、微量の有機物を含んでいてもよい。
また、本発明の効果をより効果的に得る観点より、本発明の薄膜は、表面粗さ(Ra)が100nm以下であることが好ましい。前記表面粗さ(Ra)は、AFM(原子間力顕微鏡;VN−8000、キーエンス株式会社製)を用い、測定範囲50μm四方について測定された値を指す。
また、本発明の薄膜の膜厚には特に限定はないが、本発明の効果をより効果的に得る観点より、10〜100nmが好ましく、20〜60nmがより好ましい。
また、本発明の効果をより効果的に得る観点より、本発明の薄膜は、酸化ジルコニウムの前駆体又は酸化ハフニウムの前駆体と、酸化チタンの前駆体と、を体積比〔酸化ジルコニウムの前駆体の体積又は酸化ハフニウムの前駆体の体積:酸化チタンの前駆体の体積〕として1:5〜5:1の範囲で混合して得られた塗布液を用いて形成されることが好ましい。
ここで、酸化ジルコニウムの前駆体、酸化ハフニウムの前駆体、及び酸化チタンの前駆体とは、加熱により、それぞれ酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、及び酸化チタンとなる化合物を指す。
前記酸化ジルコニウムの前駆体としては、例えば、ジルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化酸化ジルコニウム・八水和物、四塩化ジルコニウム、四フッ化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、三塩化一臭化ジルコニウム、三フッ化一塩化ジルコニウム、三臭化一ヨウ化ジルコニウム、三ヨウ化一フッ化ジルコニウム、二塩化二臭化ジルコニウム、二フッ化二塩化ジルコニウム、二臭化二ヨウ化ジルコニウム、二ヨウ化二塩化ジルコニウム、等)、ジルコニウム無機酸塩(例えば、オキシ硝酸ジルコニウム・二水和物、硝酸ジルコニウム・四水和物、等)、ジルコニウム有機酸塩(例えば、酢酸ジルコニウム、等)、ジルコニウムアルコキシド(例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラペントキシド、等;好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルコキシド)、ジルコニウム錯体(例えば、ジルコニウムアセチルアセトナート、等)、等が挙げられる。
中でも、ジルコニウムアルコキシドが好ましく、ジルコニウムテトライソプロポキシドなどがより好ましい。
前記酸化ジルコニウムの前駆体の市販品としては、例えば、Zr−05−P((株)高純度化学研究所)が挙げられる。
前記酸化ハフニウムの前駆体としては、例えば、ハフニウムハロゲン化物(例えば、四塩化ハフニウム、四フッ化ハフニウム、四臭化ハフニウム、四ヨウ化ハフニウム、三塩化一臭化ハフニウム、三フッ化一臭化ハフニウム、三臭化一塩化ハフニウム、三ヨウ化一塩化ハフニウム、二塩化二臭化ハフニウム、二フッ化二臭化ハフニウム、二臭化二ヨウ化ハフニウム、二ヨウ化二フッ化ハフニウム、等)、ハフニウム無機酸塩(例えば、硝酸ハフニウム、等)、ハフニウムアルコキシド(例えば、ハフニウムテトラメトキシド、ハフニウムテトライソプロポキシド、等)、ハフニウム錯体(例えば、ハフニウムアセチルアセトナート、等)が挙げられる。
中でも、ハフニウムアルコキシドが好ましく、ハフニウムテトライソプロポキシドなどがより好ましい。
前記酸化ハフニウムの前駆体の市販品としては、例えば、Hf−05((株)高純度化学研究所)が挙げられる。
前記酸化チタンの前駆体としては、例えば、有機チタン化合物として、チタンのアルコキシド(例えば、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等)、チタンのキレート、チタンのアセテート等が挙げられ、無機チタン化合物として、TiCl、Ti(SO等が挙げられる。
中でも、チタンアルコキシドが好ましく、チタンテトライソプロポキシドなどがより好ましい。
前記酸化チタンの前駆体の市販品としては、例えば、NDH−510C(日本曹達(株)製)が挙げられる。
以上で説明した本発明の薄膜を製造する方法としては特に限定はないが、例えば、下記本発明の薄膜の製造方法が好適である。
即ち、本発明の薄膜の製造方法は、前述の酸化ジルコニウムの前駆体又は前述の酸化ハフニウムの前駆体と、前述の酸化チタンの前駆体と、を体積比1:5〜5:1の範囲で混合して塗布液を調製する工程と、調製された塗布液を支持体上に塗布して塗布膜を形成する工程と、形成された塗布膜を300℃以上900℃以下の温度で熱処理する工程と、を含んで構成される。
本発明の薄膜の製造方法は、必要に応じ、予備加熱工程や乾燥工程等の他の工程を含んでいてもよい。
また、前記塗布膜を形成する工程以外にも、下塗り層等の他の層を形成する工程を含んでいてもよい。
前記支持体としては特に限定はなく、ガラス、金属、プラスチック、セラミックス、半導体、結晶、紙、木材等、種々の材料を特に制限なく用いることができるが、本発明の効果をより効果的に得る観点からは、ガラス、セラミックスが好ましく、ガラスが特に好ましい。
前記塗布液の塗布方法としては特に制限はなく、スピン塗布、ディップ塗布、スプレー塗布など公知の塗布方法を用いることができる。
前記熱処理工程は形成された塗布膜を300℃以上900℃以下の温度で熱処理する
工程である。熱処理の温度は、前駆体の焼成および結晶化の観点より、400℃以上600℃以下がより好ましい。
熱処理の時間としては温度によっても異なるが、0.5〜3時間が好ましく、0.5〜1時間がより好ましい。
前記熱処理は、マッフル炉等の公知の炉において行うことができる。
また本発明では、前記熱処理工程の前に、予備加熱処理を行ってもよい。
予備加熱処理の温度は、50〜200℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
予備加熱処理の時間としては温度によっても異なるが、0.5〜3時間が好ましく、0.5〜1時間がより好ましい。
予備加熱は、公知の乾燥機等において行うことができる。
以上、酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウム及び結晶化した酸化チタンを含み、光照射に対して、水に対する接触角が40°以上を維持する本発明の薄膜と、該薄膜の製造方法について説明した。
なお、酸化ジルコニウム及び酸化チタンを含む薄膜としては、上記本発明の薄膜の他にも、酸化ジルコニウム及び結晶化した酸化チタンを含み、水滴転落角40°以下である薄膜も有用である。このような薄膜は、滑水性、耐久性及び有機物分解性を備えるため、本発明と同様の用途に有用である。酸化ジルコニウム、酸化チタン、水滴転落角、製造方法等共通する部分については本発明の薄膜について説明した事項と同様の事項を適用できる。
<ガラス>
本発明のガラスは、上記で説明した本発明の薄膜により全部又は一部を被覆されたものである。
即ち、本発明のガラスは、撥水性、耐久性及び有機物分解性を備えた薄膜により被覆されているため、例えば、撥水性を備え、残存する汚染物が光触媒作用で酸化分解されるセルフクリーニングガラス(例えば、自動車のフロントウインドウ、等)として好適に用いることができる。
ガラスの種類には特に限定はなく、ソーダライムガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス等の公知のガラスを用いることができる。
前記セルフクリーニングガラスの具体的形態としては、本発明の薄膜に更にシリカを含み、該薄膜によりソーダライムガラスの全部又は一部を被覆した形態が挙げられる。また、本発明の薄膜によりソーダライムガラスの全部又は一部を、該薄膜と該ガラスとの間にシリカを介在させて被覆した形態も好適である。
本発明の薄膜及びその製造方法並びにガラスは、以上で説明したとおり、撥水性、耐久性及び有機物分解性を備えるため、車両関連、住宅関連、光学機器関連、産業機器関連、医療関連、電子部品関連、電気製品関連等、様々な産業分野に適用できる。
以下、本発明について実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
<酸化ハフニウム−酸化チタンの混合薄膜(Hf-Ti 1:1混合薄膜)に関する実験>
酸化ハフニウムの前駆体であるHf−05((株)高純度化学研究所)と、酸化チタンの前駆体であるNDH−510C(日本曹達(株)製)と、を体積比で1:1の割合で混合して塗布液を調製し、得られた塗布液を10時間以上放置した。
その後、洗浄したパイレックス(登録商標)ガラス基板上に、上記10時間以上放置した後の塗布液を1ml塗布し、回転数1500rpmで10秒間スピンコートして塗布膜を形成した。塗布膜が形成されたガラス基板を、雰囲気温度120℃に調製した乾燥機中で10分間放置し、更に、マッフル炉(KDF−P90G、株式会社デンケン)を用い、雰囲気温度500℃で1時間加熱して、ガラス基板上に酸化ハフニウム−酸化チタンの混合薄膜A(以下、「Hf-Ti 1:1混合薄膜A」という)を得た。
(表面観察)
得られたHf-Ti 1:1混合薄膜Aの表面を光学顕微鏡で観察し、この表面の形状をAFM(原子間力顕微鏡)を用い下記条件にて測定した。
AFM測定の結果、表面粗さ(Ra)は57.8nmであった。
(XRD測定)
得られたHf-Ti 1:1混合薄膜Aについて、XRD(X線回折)測定を下記条件にて行った。
〜XRD測定条件〜
X線回折装置(RINT2100、株式会社リガク製)を使用した。平行ビーム法で管電圧40kV、管電流30mA、スキャンステップ0.02°、スキャンスピード2°/min、の条件で対陰極として銅、フィルターとしてニッケルを使用してXRD測定を行った。
XRD測定の結果を図1に示す。
図1中、薄い線はHf-Ti 1:1混合薄膜Aの波形を示し、濃い線は対照用のアナターゼ型酸化チタンのピーク(理論値)を示す。
図1に示すように、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aでは、25°付近に、アナターゼ型酸化チタンに由来する強い回折線が観測され、Hf-Ti 1:1混合薄膜A中の酸化チタンが結晶化していることが確認された。強い回折線が認められることから、Hf-Ti 1:1混合薄膜A中では、酸化チタンが一定の大きさに成長している(ドメインを形成している)ことがわかった。
(接触角の経時変化)
上記で得られたHf-Ti 1:1混合薄膜Aの、3mgの水滴(蒸留水)に対する接触角の経時変化を21日間測定した。
接触角の測定は、(Drop Master500,協和界面化学株式会社)を用い、3mgの水滴(蒸留水)を薄膜表面に滴下し、滴下後1〜10秒の間に測定した(以下同じ)。また、測定点は5点とし、平均値及び標準偏差を算出した。
得られた結果を表1及び図2に示す。
表1及び図2に示すように、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aの接触角は経過日数1日以降は40°以上であり、特に、製膜後10日以降は70°以上で安定していた。
(UV(光)照射による接触角の変化)
上記のように接触角が安定したHf-Ti 1:1混合薄膜Aに対し、UVライト(EX250、HOYA−SCHOTT社製)を用いて48時間UV光を照射し、UV照射時間に対する接触角の変化を調べた。ここで、ランプとガラスとの距離を調節することにより、UVライトは5mW/cmに設定した。
次に、NDH−510C(日本曹達(株)製)のみを塗布量1mlにて塗布した以外は上記Hf-Ti 1:1混合薄膜Aと同様にして、酸化チタン膜(比較用)を製膜した。
得られた酸化チタン膜に対し、ブラックライト(FL10BL−B、National社製)を用いて24時間UV光を照射し、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aと同様にしてUV照射時間に対する接触角の変化を測定した。なお、ランプと基板との距離を調節することにより、ブラックライトは1mW/cmの強さに設定した。
Hf-Ti 1:1混合薄膜A及び酸化チタン膜(比較用)についての接触角の変化を表2及び図3に示す。
表2及び図3に示すように、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aでは、UVを48時間照射した場合であっても、接触角は50°以上であり、撥水性が維持されていた。
一方、比較用の酸化チタン膜では、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aに対する強度よりも弱い強度でUVを照射したにもかかわらず、UV照射時間1時間で接触角は10°以下に下がっていた。
(UV(光)照射による転落角の変化)
上記のように接触角が安定したHf-Ti 1:1混合薄膜Aに対し、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aの接触角の測定の場合と同様の条件でUV光を照射し、UV照射時間に対する転落角の変化を調べた。測定点は3点とした。
UV照射時間に対する転落角の変化を表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aでは、UVを24時間照射しても転落角は30°程度であり、滑水性が維持されていた。
(IPAガスの気相分解)
次に、有機物分解性の評価としてIPAガスの気相分解に関する実験を行った。
まず、合成空気で置換した密閉容器内に上記で得られたHf-Ti 1:1混合薄膜Aを静置し、IPAガス(イソプロピルアルコールガス)を濃度2000ppmとなるように注入し、暗所で23時間保存した。その後、Hf-Ti 1:1混合薄膜AにUVを照射した。
UV照射時間毎に密閉容器内の気体を採取し、ガスクロマトグラフィーにより、残存するIPAガスの濃度、アセトン(中間生成物)の濃度、及びCO(最終生成物)の濃度を測定した。
図5に、UV照射時間に対する、IPAガス、アセトン、及びCOのそれぞれの濃度の変化を示す。
図5に示すように、UV照射時間の経過とともにIPAガスが減少した。また、中間生成物であるアセトンはUV照射時間約100時間までは増加したが、その後減少傾向を示した。最終生成物であるCOはUV照射時間の経過とともにほぼ単調に増加した。
以上のように、出発物質であるIPAガスはUV照射時間の経過とともに光触媒作用によりCOに酸化分解され、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aについて光触媒活性(有機膜分解性)が認められた。
次に、前記Hf-Ti 1:1混合薄膜Aと同組成だが光照射により親水化してしまうHf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)の例を示す。
図6は、Hf-Ti 1:1混合薄膜A及びHf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)について、UV照射時間に対する接触角の変化を比較したグラフである。ここで、Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)に対するUV照射条件は、前述したHf-Ti 1:1混合薄膜Aに対するUV照射条件と同じである。
図6に示すように、Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)では、比較用酸化チタン膜と同様にUV照射時間1時間で接触角は10°以下に下がっていた。
図7は、Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)のXRD測定結果である。
図7中、薄い線はHf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)の波形を示し、濃い実線は対照用のアナターゼ型酸化チタンのピーク(理論値)を、濃い破線は対照用の単斜晶系酸化チタンのピーク(理論値)を示す。
図7に示すように、Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)では回折線は認められなかった。
Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)についても、前述のIPAガスの気相分解の実験を行ったところ光触媒活性(有機膜分解性)が認められため、Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)でも酸化チタンは結晶化しているものと思われるが、結晶がドメインを形成するまで成長していないため、回折線が明瞭に認められないものと思われる。
このような組織の差異が、撥水性を長期にわたって維持することに寄与しているものと思われる。
<酸化ジルコニウム−酸化チタンの混合薄膜(Zr-Ti 1:1混合薄膜)の実験>
Hf-Ti 1:1混合薄膜Aの作製において、Hf−05((株)高純度化学研究所)を、同体積のZrO(CHCOO)(酸化ジルコニウムの前駆体;(株)高純度化学研究所)に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、パイレックス(登録商標)ガラス基板上に、酸化ジルコニウム−酸化チタンの混合薄膜(以下、「Zr-Ti 1:1混合薄膜」という)を得た。
得られたZr-Ti 1:1混合薄膜のXRD測定の結果を図8に示す。
図8に示すように、Zr-Ti 1:1混合薄膜においてもHf-Ti 1:1混合薄膜と同様に、25.3°付近に、アナターゼ型酸化チタンに由来する強いピークが観測され、Zr-Ti 1:1混合薄膜中の酸化チタンが結晶化されていることが確認された。
また、Zr-Ti 1:1混合薄膜について、前述のIPAガスの気相分解の実験を行ったところ、Hf-Ti 1:1混合薄膜Aと同様に光触媒活性(有機膜分解性)が認められた。
次に、コーティング液の組成比を変更し、マッフル炉による加熱条件を雰囲気温度500℃、30分として、ガラス基板上にZr-Ti 100:1混合薄膜Aと、組織が適切でないZr-Ti 100:1混合薄膜B(比較用)と、をそれぞれ製膜した。
これらの混合薄膜について光照射による接触角の変化を調べた。光照射条件は、いずれも、ブラックライト(FL10BL−B,National)、1mW/cmとした。
表4に示すように、Zr-Ti 100:1混合薄膜Aでは、光照射に対して水に対する接触角が40°以上が維持されていた。一方、Zr-Ti 100:1混合薄膜B(比較用)では、光照射後に接触角が低下していた。
この違いは、酸化ハフニウム−酸化チタンの場合と同様に、酸化チタンの結晶がドメインを形成するまで成長しているか否かにより生じた違いと考えられる。
以上の実験の結果より、酸化ジルコニウム−酸化チタンの混合系についても、酸化ハフニウム−酸化チタンの混合系の場合と同様に、光照射後においても撥水性を維持し、耐水性及び有機物分解性を備えた薄膜が得られることが示唆された。
本実施例におけるHf-Ti 1:1混合薄膜AのXRD測定結果である。 本実施例におけるHf-Ti 1:1混合薄膜Aの接触角の経時変化を示すグラフである。 本実施例におけるHf-Ti 1:1混合薄膜Aの、UV照射時間に対する接触角の変化を示すグラフである。 本実施例におけるHf-Ti 1:1混合薄膜Aの、UV照射時間に対する転落角の変化を示すグラフである。 本実施例におけるHf-Ti 1:1混合薄膜Aの、UV照射時間に対する、IPAガス、アセトン、及びCOのそれぞれの濃度の変化を示すグラフである。 本実施例におけるHf-Ti 1:1混合薄膜Aと、比較用のHf-Ti 1:1混合薄膜Bとの、接触角の違いを示すグラフである。 Hf-Ti 1:1混合薄膜B(比較用)のXRD測定結果である。 本実施例におけるHf-Zr 1:1混合薄膜のXRD測定結果である。

Claims (6)

  1. 酸化ジルコニウム又は酸化ハフニウム及び結晶化した酸化チタンを含む薄膜であって、光照射に対して、水に対する接触角が40°以上を維持することを特徴とする薄膜。
  2. 水滴転落角が40°以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜。
  3. 酸化ジルコニウムの前駆体又は酸化ハフニウムの前駆体と、酸化チタンの前駆体と、を体積比1:5〜5:1の範囲で含む塗布液を用いて形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜。
  4. 表面粗さ(Ra)が100nm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の薄膜。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の薄膜を製造する方法であって、
    酸化ジルコニウムの前駆体又は酸化ハフニウムの前駆体と、酸化チタンの前駆体と、を体積比1:5〜5:1の範囲で混合して塗布液を調製する工程と、
    調製された塗布液を支持体上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
    形成された塗布膜を300℃以上900℃以下の温度で熱処理する工程と、
    を含むことを特徴とする薄膜の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の薄膜により全部又は一部を被覆されたことを特徴とするガラス。
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