JP7463164B2 - コーティング液 - Google Patents

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Description

本発明は、コーティング液に関する。
Si-O-Si結合を有し、且つ有機基を有するオルガノポリシロキサン化合物は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、柔軟性を有するため、シリコーンゴム、シリコーンオイル、塗料等に利用されている。同じくSi-O-Si結を有するが、シリコン原子に直接結合する有機基を有さないシリカは硬度が高く、粒子状又は多孔質であることが多く比表面積が大きいため、コーティングへの添加剤や吸着性を利用した用途に使われることが多い。
触媒、特に光触媒であるチタニアを塗料化するためのバインダとしては、通常の塗布性、密着性、耐クラック性等に加えて、光が透過する透明性、光触媒作用に対する耐劣化性等が必要になる。そのため、通常のバインダを使用することができず、結合エネルギーが大きく分解され難いフッ素樹脂、シリカゾル、ポリシロキサン等を使用することが多い(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、フッ素樹脂は親水性であるチタニアとの親和性が悪く、透明性を有するコーティング液を作成することが困難である。また、シリカ系バインダは多孔質で光触媒性を発揮できる一方、添加量を減らすと塗膜の透明性、耐クラック性、密着性等が悪化し、添加量を増やすと光触媒性が低下する傾向にある(例えば、非特許文献2参照)。
また、オルガノポリシロキサン化合物のうち、2つの有機基を有するシリコーン系材料は柔軟性、塗布性、透明性等に優れるが、その分チタニアの表面もコーティングされてしまい光触媒活性が大幅に低下する。
同じく、1つの有機基を有するシロキサン化合物をバインダとする記述はある(例えば、特許文献1参照)が、実質はテトラエトキシシランの重合体であるため、上記したシリカ系バインダに他ならず、且つ水はシランアルコキシドの加水分解に使う量のみを添加し、ベースの溶媒は有機溶媒である。1つの有機基を有するアルコキシシランを原料としたコーティング材料についても、水はシリコン原子の加水分解分を添加し(例えばシリコン原子に対して1.5~3倍モル量)、ベース溶媒はアルコールであり、且つ熱処理温度は100℃以上と高い(例えば、非特許文献3参照)。このような有機溶媒系のバインダは安定であり、粉体のチタニアを加える場合は問題ないが、水を添加しすぎるとアルコキシドの加水分解と重合が発生し、経時安定性、透明性等を損なうことが多い。
国際公開第96/029375号
吉本哲夫「光触媒膜の新展開 光触媒の固定化法」表面技術 50.3(1999):242-246. 諏訪間昌己、柏田清治「プラスチック基材に対する光触媒の応用展開の可能性」塗料の研究 135(2000):50-55. 谷口孝、下山直樹「3官能性オルガノポリシロキサン系ハードコート材料」日本接着学会誌 45.8(2009):304-307.
チタニアは親水性であるため、きわめて透明性の高い光触媒は水分散液であることが多いが、低温で硬化し、光触媒と親和性が高く、透明性を維持し、光触媒効果を損なわず、耐クラック性や密着性に優れ、水分散液と混合しても経時安定性にも優れたバインダが望まれているが、見当たらない。
そこで、本発明は、低温で硬化し、光触媒と親和性が高く、透明性を維持し、光触媒効果を損なわず、耐クラック性や密着性に優れ、水分散液と混合しても経時安定性にも優れたバインダを得ることを目的とする。
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、本発明者らは、メチルトリアルコキシシランを主原料に用い、特定の溶媒の混合物により、低温硬化性、光触媒との親和性、耐クラック性及び密着性に優れ、透明性及び光触媒活性を損なわず、水分散液と混合しても白濁化を抑制できるため経時安定性にも優れるコーティング液が得られることを見出した。そして、さらに研究を重ね、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.オルガノポリシロキサン化合物及び溶媒を含有するコーティング液であって、
前記オルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~10原子%、3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%、4個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~35原子%含有し、且つ、前記3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%含有し、
前記溶媒の総量を100質量%として、水を5~65質量%含有する、コーティング液。
項2.前記溶媒が、さらに、有機溶媒を含有する、項1に記載のコーティング液。
項3.前記有機溶媒が一価アルコール、グリコール若しくはそのエーテル誘導体、三価アルコール若しくはそのエーテル誘導体、並びにケトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項2に記載のコーティング液。
項4.前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、1,3-ジメトキシ-2-プロパノール、トリメトキシメタン及びアセチルアセトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項2又は3に記載のコーティング液。
項5.前記有機溶媒の総量を100質量%として、エタノールを80~100質量%含有する、項2~4のいずれか1項に記載のコーティング液。
項6.前記コーティング液の総量を100質量%として、前記オルガノポリシロキサン化合物の含有量が、SiO換算で0.01~10質量%である、項1~5のいずれか1項に記載のコーティング液。
項7.光触媒用バインダである、項1~6のいずれか1項に記載のコーティング液。
項8.さらに、チタン酸化物を含有する、項1~6のいずれか1項に記載のコーティング液。
項9.前記チタン酸化物の平均粒子径が20nm以下であり、比表面積が95m/g以上である、項8に記載のコーティング液。
項10.前記オルガノポリシロキサン化合物と前記チタン酸化物との配合割合が、TiO/SiO換算質量比として0.5~20である、項8又は9に記載のコーティング液。
項11.前記コーティング液の総量を100質量%として、前記チタン酸化物の含有量が、TiO換算で0.01~5質量%である、項8~10のいずれか1項に記載のコーティング液。
項12.前記チタン酸化物は、表面にアセトキシ基が結合しており、且つ、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である、項8~11のいずれか1項に記載のコーティング液。
項13.項1~12のいずれか1項に記載のコーティング液を用いた塗膜。
項14.項8~12のいずれか1項に記載のコーティング液を用いた光触媒。
本発明によれば、低温で硬化し、光触媒と親和性が高く、透明性を維持し、光触媒効果を損なわず、耐クラック性や密着性に優れ、水分散液と混合しても経時安定性にも優れたバインダを得ることができる。
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
本明細書において、「酸化チタン」、「チタニア」又は「チタン酸化物」とは、二酸化チタン(TiO)のみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti);一酸化チタン(TiO);Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含む。また、末端OH基に代表されるように一部酸化チタンの合成に起因するTi-O-Ti以外の基を含んでいてもよい。さらに、末端OH基に有機酸等が結合したものも含まれる。なお、詳しくは後述するが、本発明において、コーティング液に含まれることができるチタン酸化物は、表面にアセトキシ基を有することが好ましい。
本明細書において、「低温硬化性」とは、10~100℃の低温で硬化させることができることを意味する。
本明細書において、「光触媒活性」とは、親水性、有機物分解性能、抗菌・抗ウイルス性能等、光触媒が有する特性を総称した特性を意味する。
本発明のコーティング液は、オルガノポリシロキサン化合物及び溶媒を含有するコーティング液であって、前記オルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~10原子%、3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%、4個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~35原子%含有し、且つ、前記3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%含有し、前記溶媒の総量を100質量%として、水を5~65質量%含有する。
1.オルガノポリシロキサン化合物
本発明において、オルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~10原子%、3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%、4個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~35原子%含有し、且つ、前記3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%含有する。
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が0~10原子%、好ましくは0~7原子%、より好ましくは0~5原子%である。2個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が増えると柔軟性を向上させやすい。一方、2個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が10原子%をこえると、光触媒活性を損なってしまう。このため、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、2個の酸素原子と結合するシリコン原子を含まなくてもよい。
上記した「2個の酸素原子と結合するシリコン原子」は、例えば、原材料としてジアルコキシシランを用いて形成される構成単位(1):
Figure 0007463164000001
[式中、R及びRは同一又は異なって、アルキル基又はアルケニル基を示す。]
を有することを意味する。
つまり、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、オルガノポリシロキサン化合物の総量を100モル%として、構成単位(1)の含有量は0~10モル%が好ましく、0~7モル%がより好ましく、0~5モル%がさらに好ましい。
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が60~100原子%、好ましくは70~100原子%、より好ましくは80~100原子%である。3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が増えると低温硬化性、透明性、耐クラック性、密着性、光触媒との親和性等を向上させることができ、光触媒活性を維持しやすく、水系分散液と混合した際の経時安定性にも優れる。3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が60原子%未満では、透明性に劣りヘイズが発生し、耐クラック性及び密着性に劣り剥がれが生じる。このため、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物が有するシリコン原子は、3個の酸素原子と結合するシリコン原子のみで構成されていてもよい。
上記した「3個の酸素原子と結合するシリコン原子」は、例えば、原材料としてトリアルコキシシランを用いて形成される構成単位(2):
Figure 0007463164000002
[式中、Rはアルキル基又はアルケニル基を示す。]
を有することを意味する。
つまり、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、オルガノポリシロキサン化合物の総量を100モル%として、構成単位(2)の含有量は60~100モル%が好ましく、70~100モル%がより好ましく、80~100モル%がさらに好ましい。
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、4個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が0~35原子%、好ましくは0~30原子%、より好ましくは0~20原子%である。4個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が増えると光触媒活性を維持しやすい。一方、4個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が35原子%をこえると、耐クラック性及び密着性を損なってしまう。このため、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物が有するシリコン原子は、4個の酸素原子と結合するシリコン原子を含まなくてもよい。
上記した「4個の酸素原子と結合するシリコン原子」は、例えば、原材料としてテトラアルコキシシランを用いて形成される構成単位(3):
Figure 0007463164000003
を有することを意味する。
つまり、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物は、オルガノポリシロキサン化合物の総量を100モル%として、構成単位(3)の含有量は0~35モル%が好ましく、0~30モル%がより好ましく、0~20モル%がさらに好ましい。
なお、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%、好ましくは70~100原子%、より好ましくは80~100原子%含有する。1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量を増やすことにより、低温硬化性、透明性、耐クラック性、密着性等を向上させることができる。なお、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量が60原子%未満では、低温硬化性、透明性、耐クラック性、密着性等に劣り、液にはヘイズが見られるとともに硬化させにくくなる。
上記した「メチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子」は、例えば、原材料としてメチルトリアルコキシシランを用いて形成される構成単位(2A):
Figure 0007463164000004
を有することを意味する。
つまり、本発明において使用されるオルガノポリシロキサン化合物においては、構成単位(2)の総量を100モル%として、構成単位(2A)の含有量は60~100モル%が好ましく、70~100モル%がより好ましく、80~100モル%がさらに好ましい。
なお、構成単位(1)及び(2)において、R、R及びRで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等の炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
ここで、上記した構成単位(2A)で代表されるように、R、R及びRで示されるアルキル基をメチル基とすると、低温硬化性、透明性、耐クラック性、密着性等を向上させやすい。一方、R、R及びRで示されるアルキル基をメチル基以外、つまり、炭素数2~6のアルキル基とすると、柔軟性、撥水性等を向上させやすく、多孔質化もしやすい。
また、R、R及びRで示されるアルキル基は、エポキシ含有有機基(3-グリシジルオキシ基、3,4-エポキシシクロヘキシル基等)、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、コハク酸無水物基等で置換されていてもよい。
また、R、R及びRをアルキル基以外の基としてアルケニル基等を採用することもできる。
これら置換アルキル基、アルケニル基等の一例としては、アルケニル基、エポキシ含有アルキル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアネートアルキル基、アルキルコハク酸無水物基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
エポキシ含有アルキル基としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシアルキル基としては、例えば、γ-メタクリロイルオキシプロピル基、γ-アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。
アミノアルキル基としては、例えば、アミノプロピル基等が挙げられる。
メルカプトアルキル基としては、例えば、メルカプトプロピル基等が挙げられる。
イソシアネートアルキル基としては、例えば、イソシアネートプロピル基等が挙げられる。
アルキルコハク酸無水物基としては、例えば、プロピルコハク酸無水物基等が挙げられる。
これら置換アルキル基、アルケニル基等を採用する場合は、基材との親和性をもとに選択することが好ましい。
上記したオルガノポリシロキサン化合物の濃度は、後述のチタン酸化物を添加する場合の配合の自由度、透明性、塗布性、親水性等の観点から、本発明のコーティング液の総量を100質量%として、SiO換算で0.01~10質量%が好ましく、0.05~8質量%がより好ましく、0.1~6質量%がさらに好ましい。なお、本発明のコーティング液にチタン酸化物を含ませる場合は、より少量とすることが好ましく、本発明のコーティング液の総量を100質量%として、TiO換算で0.01~5質量%が好ましく、0.02~4質量%がより好ましく、0.05~3質量%がさらに好ましい。なお、複数のオルガノポリシロキサン化合物を使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。なお、SiO換算濃度は、オルガノポリシロキサン化合物を焼成して当モル量のSiOになったと仮定した場合の濃度であり、オルガノポリシロキサン化合物が有する有機基の分子量や末端アルコキシ基の加水分解及び縮合状態には左右されない。
2.溶媒
本発明のコーティング液においては、溶媒の総量を100質量%として、水を5~65質量%含有している。
水としては特に制限はなく、蒸留水、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水、純水、電解水等の各種の水を用いることができる。
水の含有量は、溶媒の総量を100質量%として、5~65質量%、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~55質量%である。溶媒の総量を100質量%として、水の含有量が5質量%未満では、低温硬化性に劣り、硬化させにくくなる。一方、水の含有量が65質量%をこえると、経時でオルガノポリシロキサン化合物の加水分解反応及び重合反応がさらに進行し、沈殿、白濁等が生じるとともに、塗布性及び親水性にも劣る。
なお、後述のチタン酸化物を含まない形態においては、オルガノポリシロキサン化合物の安定性の観点では水は少ないほうが好ましい。このため、水の含有量は、溶媒の総量を100質量%として、5~65質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましい。
一方、後述のチタン酸化物を含む形態においては、水の量は極力多いほうが親水性等に優れ、有機溶媒の量は多い方が濡れ性に起因する塗布性や透明性が高い傾向にある。ただし、水と有機溶媒とを特定量組合せたほうが、それぞれ単独の場合よりも、塗布性、透明性、親水性等を向上させやすい。このため、水の含有量は、溶媒の総量を100質量%として、15~65質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましいが、必要特性に応じて適宜設定することができる。
本発明のコーティング液において、溶媒は、さらに、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、特に制限されるわけではないが、一価アルコール、グリコール若しくはそのエーテル誘導体、三価アルコール若しくはそのエーテル誘導体、ケトン等が挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等が挙げられ、グリコール若しくはそのエーテル誘導体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、1,3-ジメトキシ-2-プロパノール等のグリコールエーテルが挙げられ、三価アルコール若しくはそのエーテル誘導他としては、グリセリン等の三価アルコール;トリメトキシメタン等の三価アルコールのエーテル誘導体等が挙げられ、ケトンとしては、例えば、アセチルアセトン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
なかでも、後述のチタン酸化物を含まない形態においては、低温硬化時等揮発性のしやすさの観点では沸点が低い有機溶媒が好ましく、揮発の安定性の観点では沸点が高い有機溶媒が好ましい。
また、後述のチタン酸化物を含む形態においては、親水性の高い有機溶媒が好ましい。
さらに、本発明のコーティング液を塗布する際の安全性の観点では、エタノールが最も好ましい。このため、本発明においては、有機溶媒の総量を100質量%として、エタノールを80~100質量%含むことが好ましく、90~100質量%含むことがより好ましい。
3.コーティング液の製造方法(チタン酸化物を含まない形態)
本発明のコーティング液は、例えば、アルコキシシラン、水及び必要に応じて有機溶媒を混合して合成することができる。
アルコキシシランとして、ジアルコキシシランを使用すると、オルガノポリシロキサン化合物中では2個の酸素原子と結合するシリコン原子を構成する、つまり、構成単位(1)を構成する。アルコキシシランとして、トリアルコキシシランを使用すると、オルガノポリシロキサン化合物中では3個の酸素原子と結合するシリコン原子を構成する、つまり、構成単位(2)を構成する。アルコキシシランとして、テトラアルコキシシランを使用すると、オルガノポリシロキサン化合物中では4個の酸素原子と結合するシリコン原子を構成する、つまり、構成単位(3)を構成する。
このため、原料として投入するアルコキシシランとしては、結果的に生成されるオルガノポリシロキサン化合物において、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~10原子%、3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%、4個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~35原子%含有し、且つ、前記3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%含有するように添加する種類及び量を調整することが好ましい。
具体的には、原料として投入するアルコキシシランにおいては、アルコキシシラン総量を100モル%として、ジアルコキシシランの含有量は0~10モル%(好ましくは0~7モル%、より好ましくは0~5モル%)であり、トリアルコキシシランの含有量は60~100モル%(好ましくは70~100モル%、より好ましくは80~100モル%)であり、テトラアルコキシシランの含有量は0~35モル%(好ましくは0~30モル%、より好ましくは0~20モル%)であることが好ましい。また、トリアルコキシシランの総量を100モル%として、メチルトリアルコキシシランの含有量は60~100モル%(好ましくは70~100モル%、より好ましくは80~100モル%)が好ましい。
なお、ジアルコキシシランとしては、例えば、一般式(1-1):
Figure 0007463164000005
[式中、R及びRは前記に同じである。R及びRは同一又は異なって、アルキル基を示す。]
で表されるジアルコキシシランが挙げられる。
また、トリアルコキシシランとしては、例えば、一般式(2-1):
Figure 0007463164000006
[式中、Rは前記に同じである。R、R及びRは同一又は異なって、アルキル基を示す。]
で表されるトリアルコキシシランが挙げられ、そのなかでも、メチルトリアルコキシシランとしては、一般式(2A-1):
Figure 0007463164000007
[式中、R、R及びRは前記に同じである。]
で表されるメチルトリアルコキシシランが挙げられる。
また、テトラアルコキシシランとしては、例えば、一般式(3-1):
Figure 0007463164000008
[式中、R、R10、R11及びR12は同一又は異なって、アルキル基を示す。]
で表されるテトラアルコキシシランが挙げられる。
上記一般式(1-1)、(2-1)及び(3-1)において、アルキル基としては、上記したものを採用できる。
このため、ジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエチルシラン、ジメチルジ(n-プロポキシ)シラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ(n-プロポキシ)シラン、ジ(n-プロピル)ジメトキシシラン、ジ(n-プロピル)ジエトキシシラン、ジ(n-プロピル)ジ(n-プロポキシ)シラン等が挙げられ、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
トリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ(n-プロポキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ(n-プロポキシ)シラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ(n-プロポキシ)シラン等が挙げられ、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
メチルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ(n-プロポキシ)シラン等が挙げられ、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n-プロポキシ)シラン等が挙げられ、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
上記したアルコキシシランの濃度は、合成の効率、後述のチタン酸化物を添加する場合の配合の自由度、透明性、塗布性等の観点から、本発明のコーティング液の総量を100質量%として、SiO換算で0.01~10質量%が好ましく、0.05~8質量%がより好ましく、0.1~6質量%がさらに好ましい。なお、複数のアルコキシシランを使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。なお、SiO換算濃度は、アルコキシシランを焼成して当モル量のSiOになったと仮定した場合の濃度であり、アルコキシシランが有する有機基の分子量や末端アルコキシ基の加水分解及び縮合状態には左右されない。
水及び有機溶媒としても、上記したものを採用することができ、水と有機溶媒との配合比についても同様であり、アルコキシシランの濃度が上記範囲となるように調整することができる。
アルコキシシラン、水及び必要に応じて有機溶媒を混合する際には、アルコキシシランの加水分解及び縮合を促進する物質として酸を添加することもできる。
酸としては、例えば、酢酸、塩酸等の無機酸が挙げられる。
なお、後述のチタン酸化物を添加しない場合は、濡れ性、低温硬化性を勘案して酸を使用することが好ましいが、後述のチタン酸化物を添加する場合は、本工程では酸を添加しない又は少量としておいて、チタン酸化物を添加する際に、あわせて酸を添加することもできる。
酸の添加量は、特に制限されるわけではないが、透明性、後述のチタン酸化物と混合した際の経時安定性等を重視する場合は、アルコキシシラン1モルに対して0~0.3モルが好ましく、0.01~0.2モルがより好ましく、0.02~0.1モルがさらに好ましい。
また、酸の添加量は、特に制限されるわけではないが、濡れ性、低温硬化性等を重視する場合は、アルコキシシラン1モルに対して0.1~5モルが好ましく、0.2~4モルがより好ましく、0.3~3モルがさらに好ましい。
アルコキシシラン、水並びに必要に応じて有機溶媒及び酸を混合する際には、混合方法は特に制限されず、常法にしたがうことができる。通常は、アルコキシシラン、水並びに必要に応じて有機溶媒及び酸を十分に反応させやすい観点から、撹拌することが好ましい。また、混合順序も特に制限されず、アルコキシシラン、水並びに必要に応じて有機溶媒及び酸を同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
また、アルコキシシラン、水並びに必要に応じて有機溶媒及び酸の混合は、冷却下、常温下及び加熱下のいずれでも行うことができる。加熱することで、透明性、後述のチタン酸化物を添加した際の経時安定性を向上させやすい。
加熱する場合は、加熱温度は、特に制限されず、透明性、後述のチタン酸化物を添加した際の経時安定性等の観点から、30~100℃が好ましく、40~90℃がより好ましく、50~80℃がさらに好ましい。
なお、原料として有機溶媒を含ませる場合は、加熱温度は、当該有機溶媒の沸点以下とすることが好ましい。
混合時間は、特に制限されず、加水分解反応及び縮合反応が十分に完了する時間とすることができ、1~72時間が好ましく、2~60時間がより好ましく、3~48時間がさらに好ましい。実際には、透明なコーティング液が得られるまで混合することができる。
4.チタン酸化物(酸化チタン)
上記した本発明のコーティング液は、チタン酸化物を含まずにコーティング液として使用し塗膜を形成することもできるが、光触媒のバインダとしても有用である。この場合、本発明のコーティング液には、光触媒としてチタン酸化物(酸化チタン)を含ませることが好ましい。上記した本発明のコーティング液は、低温で硬化し、光触媒と親和性が高く、透明性を維持し、光触媒効果を損なわず、耐クラック性や密着性に優れ、水分散液と混合しても経時安定性にも優れるものであるため、低温硬化性、透明性、耐クラック性、密着性等に優れつつ、光触媒であるチタン酸化物の光触媒活性を損なわず、チタン酸化物を添加することによる経時安定性にも優れる。
チタン酸化物の平均粒子径は、透明性、塗布性、親水性及び光触媒活性の観点から、0.1~20nmが好ましく、0.5~10nmがより好ましい。また、通常平均粒子径が小さい場合、加熱時の収縮が大きいため、クラックや基板からの剥離が起こりやすいが、本発明においては、チタン酸化物は平均粒子径が小さいにも関わらず塗布性に優れる。チタン酸化物の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。なお、単純に親水性による防汚効果を意図している場合や、高い透明性が不要である場合は、上記範囲外の平均粒子径を有するチタン酸化物も使用することができる。
チタン酸化物の比表面積は、透明性、塗布性、親水性及び光触媒活性の観点から、95~500m/gが好ましく、200~400m/gがより好ましい。チタン酸化物の比表面積はBET法により測定する。なお、単純に親水性による防汚効果を意図している場合や、高い透明性が不要である場合は、上記範囲外の比表面積を有するチタン酸化物も使用することができる。
本発明において、チタン酸化物は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、且つ、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上であることが好ましい。
通常、水、無機酸、遊離した有機酸等は200℃以下でほとんど揮発する。一方、本発明で使用するチタン酸化物は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合していることから、200~600℃の範囲で徐々に脱離する。具体的には、約260℃をピークとして200~600℃の範囲で徐々に脱離する。このように、本発明で使用するチタン酸化物は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合していることから、乾燥又は焼成時にチタン酸化物同士の凝集を抑制できるためクラック、剥がれ等が起こりにくく塗布性及び透明性に特に優れる結果光触媒活性にも優れる。なお、通常は、アセトキシ基を有していると光触媒活性は低下するのが技術常識であるが、本発明では上記のとおりクラック、剥がれ等の抑制効果が特に優れているためアセトキシ基を有しているにもかかわらず光触媒活性も向上させることができる。
また、上記チタン酸化物は、表面に存在するチタン原子にアセトキシ基が大量に結合していることが好ましい。表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が存在している場合は、上記のとおり200~600℃の範囲で徐々に離脱することから、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)によって昇温させた場合に200℃以上での質量減少が大きい。つまり、本発明において、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)によって昇温させた場合に200℃以上での質量減少は、表面に存在するチタン原子にアセトキシ基が結合している数の指標を意味している。このため、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少は5質量%以上が好ましく、7~20質量%がより好ましい。この際、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)の詳細な条件は、雰囲気:空気、昇温速度:3℃/分である。なお、単純に親水性による防汚効果を意図している場合や、高い透明性が不要である場合は、質量減少が上記範囲外である有するチタン酸化物も使用することができる。
また、上記チタン酸化物は、N、Cl及びS元素の濃度をいずれも0~5000ppm、特に0~1000ppmとすることができる。チタン酸化物のN、Cl及びS元素の濃度をこの範囲とすることにより、基材の腐食等を抑えやすい。なお、この条件は、TiCl、TiOSO等の酸性チタニア前駆体由来の不純物が存在しないか、又はごく少量であることを意味している。上記チタン酸化物のN、Cl及びS元素の濃度はWDX(蛍光X線)により測定する。
上記チタン酸化物は、上記のとおり表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しているものであるが、このアセトキシ基は、-OCOCHで表される基でチタン原子と結合していることが好ましい。
さらに、上記チタン酸化物の結晶形は、アナターゼ型が好ましい。アナターゼ型を採用することにより、光触媒活性を向上させやすい。また、同様の理由から、アナターゼ型以外の結晶形は存在せず、アナターゼ型100%であることが好ましい。
このようなチタン酸化物は、平均粒子径及び比表面積を調整することができ、また、分散性に優れるため透明性及び塗布性に優れるものである。また、上記チタン酸化物は、光触媒活性にも優れている。
上記したチタン酸化物は、
(A)チタンを含む物質、酢酸及び水を混合して分散液を得る工程、及び
(B)前記工程(A)で得られた分散液を80℃より高い温度で1時間以上加熱する工程
を備え、且つ、
前記工程(A)において、前記チタンを含む物質と前記酢酸との混合比率は、前記チタンを含む物質中のチタン1モルに対して前記酢酸中のアセトキシ基が1.5モル以上である方法により得られる。
工程(A)では、特定量のチタンを含む物質、特定量の酢酸及び水を混合して分散液を得る。
使用するチタンを含む物質としては、加熱によりチタン酸化物(酸化チタン)となる物質であれば特に制限はない。つまり、チタンを含む物質としては、酸化チタン及び/又は酸化チタン前駆体が好ましく、具体的には、酸化チタン;水酸化チタン;チタンアルコキシド;三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化チタン(特に塩基で中和したもの);金属チタン等が挙げられる。これらのチタンを含む物質は単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。これらのなかでも、得られるチタニアの分散性、塗布性、親水性、光触媒活性等の観点から、チタンアルコキシド、水酸化チタン又はハロゲン化チタン(特に塩基で中和したもの)が好ましく、特に純度、分散性、塗布性、親水性、光触媒活性の観点からチタンアルコキシドがより好ましい。
チタンアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシド、チタンテトラn-プロポキシド、チタンテトラエトキシド等が挙げられ、コスト、副生成物の水溶性、塗布性、親水性、光触媒性等の観点から、チタンテトライソプロポキシドが好ましい。
なお、チタンアルコキシドと酢酸との組合せによっては、得られるチタン酸化物を触媒として水に溶けにくいエステル化合物が遊離することがあるが、チタニア自身には問題はない(例えば、チタンテトラn-ブトキシドと酢酸の組合せにおいて、混合し加熱した段階で酢酸ブチルが生じ遊離する)が、均一な分散液を得る観点からは、水溶性に優れる有機酸アルコキシドが得られる有機酸とチタンアルコキシドとの組合せを採用することが好ましい。
ハロゲン化チタン(四塩化チタン、三塩化チタン等)については、不純物(ハロゲン)、量産時の反応器の腐食、結晶性制御、塗布性、親水性、光触媒性等の観点から、塩基で中和し、沈殿物の洗浄を行ってから用いることが好ましい。その場合、得られるチタン酸化物の分散性の観点から、乾燥を行わずに用いることが好ましい。
なお、酸化チタン、金属チタン等の固体を用いる場合は、平均粒子径は100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。下限値は特に設定されないが、通常1nm程度である。なお、粒径が大きい場合は遊星ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて乾式又は湿式で粉砕して用いることもできる。酸化チタン、金属チタン等の固体の平均粒子径は、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察により測定する。
分散液中のチタンを含む物質の濃度は、生産性、反応液の粘度、塗布性、親水性、光触媒活性等の観点から、0.01~5mol/Lが好ましく、0.05~3mol/Lがより好ましい。
酢酸の使用量は、分散性、塗布性、親水性、光触媒性、コスト等の観点から、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、カルボキシ基を1.5モル以上、好ましくは2モル以上含むように調整することが好ましい。酢酸を多く用いるほど経時安定性、塗布性等が向上する。なお、上限値は特に制限されないが、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して通常4モルである。
分散液中の酢酸の濃度は、分散性、塗布性、親水性、光触媒性、コスト等の観点から、0.02~10mol/Lが好ましく、0.1~7mol/Lがより好ましい。
反応溶媒としては、水等の水性溶媒を主成分(具体的には、例えば50質量%以上)として用いることが好ましいが、反応時にアルコール又はエステルを含んでいてもよい。
例えばチタンテトライソプロポキシドを原料として用いた場合、酢酸との反応によりイソプロパノールが生じる。また、加熱により酢酸イソプロピルが生じることもある。つまり、工程(A)により得られる分散液中には、アルコール又はエステルを投入してもよいし、系中で発生していてもよい。このアルコール又はエステルについては、100℃以下の開放系における加熱により除去してもよいし、減圧により除去してもよいし,反応液中に残留していてもよい。
なお、分散液中にアルコールが含まれる場合には、得られるチタン酸化物の平均粒子径が小さくなる傾向にあり、平均粒子径を制御するために、意図的にアルコールを添加してもよい。
本発明においては、通常チタン酸化物の水熱合成反応に用いることが多い硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸(特に無機強酸)は、得られるチタン酸化物の結晶形をアナターゼ型としやすく貯蔵安定性にも優れやすく、装置の腐食、不純物、排水等の観点から用いないことが好ましい。ただし、原料の分散性、均一性等を高め取扱いを容易にする場合には、効果を損なわない範囲で、例えば、0.01mol/L以下の範囲で補助的に使用することもできる。この場合、分散液中のN、Cl及びS元素の濃度がいずれも0.01mol/L以下となる。
このような工程(A)で得られる分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、2以上6未満が好ましく、2.1~5がより好ましい。
工程(A)において、分散液の作製方法は特に制限はなく、チタンを含む物質、有機酸及び水(溶媒)を同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。特に、凝集して大きな塊を形成しにくく攪拌を継続できる観点から、酢酸及び水(溶媒)を混合した後に、攪拌しながらチタンを含む物質を投入することが好ましい。
工程(B)においては、工程(A)で得られた分散液を80℃より高い温度で1時間以上加熱する。
工程(B)は、常圧下に行ってもよいし、密閉容器内で加圧下に行ってもよい。チタン酸化物の平均粒子径を小さくしやすい観点から、常圧下に行うことが好ましく、具体的には0.09~0.11MPaが好ましい。なお、加圧下に行う場合は、光触媒活性が高く、且つ透明性の高い膜が形成しやすい観点からは、0.2MPa以下(0.11~0.2MPa)において短時間(例えば5~30分程度)の反応を行うことが好ましい。
加熱の際には、チタンを含む物質と酢酸と水とを十分に反応させやすい観点から、撹拌することが好ましい。攪拌の方法は特に制限はなく、常法に従うことができる。また、攪拌時間は、チタンを含む物質と酢酸と水とを十分に反応させる観点から、1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。攪拌時間の上限値は特に制限されないが、通常240時間である。
加熱温度は、塗布性、耐クラック性等の観点から、80℃より高い温度が好ましく、82℃以上がより好ましい。なお、加熱温度の上限値は特に制限はないが、常圧で反応する場合は通常120℃である。
このような工程(B)で得られる分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、2以上6未満が好ましく、2.1~5がより好ましい。
この後、常法により、チタン酸化物を沈殿及び遠心分離すること等により、チタン酸化物を回収することができるが、後述のコーティング液の製造方法を考慮すれば、沈殿、遠心分離等の単離工程は行わずに、得られた分散液をそのまま使用することが好ましい。
上記したチタン酸化物の濃度は、塗布性、透明性、膜強度、光触媒活性等の観点から、本発明のコーティング液の総量を100質量%として、TiO換算で0.01~5質量%が好ましく、0.02~4質量%がより好ましく、0.05~3質量%がさらに好ましい。なお、複数のチタン酸化物を使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。なお、TiO換算濃度は、チタン酸化物を焼成して当モル量のTiOになったと仮定した場合の濃度であり、チタン酸化物が有する有機基(アセトキシ基)の分子量には左右されない。
また、本発明のコーティング液において、オルガノポリシロキサン化合物とチタン酸化物との配合割合は、TiO/SiO換算質量比として0.5~20が好ましく、0.6~10がより好ましく、0.7~5がさらに好ましい。なお、TiO/SiO換算質量比は、オルガノポリシロキサン化合物及びチタン酸化物を焼成して当モル量のSiO及びTiOになったと仮定した場合の配合割合であり、オルガノポリシロキサン化合物が有する有機基の分子量や末端アルコキシ基の加水分解及び縮合状態や、チタン酸化物が有する有機基(アセトキシ基)の分子量には左右されない。なお、TiO/SiO換算質量比は、大きいほど光触媒活性を高くしやすく、小さいほど塗布性、透明性、膜強度等を高くしやすいが、本発明においては、TiO/SiO換算質量比を小さくしても十分な光触媒活性を有するし、TiO/SiO換算質量比を大きくしても十分な塗布性、透明性、膜強度、耐クラック性、密着性等を有する。
5.コーティング液の製造方法(チタン酸化物を含む形態)
本発明のコーティング液がチタン酸化物を含む場合は、その製造方法は特に制限されず、上記のようにして得たチタン酸化物を含まない本発明のコーティング液にチタン酸化物を添加することもできるが、透明性、光触媒活性、耐クラック性、密着性等の観点から、上記のようにしてチタン酸化物を含まない本発明のコーティング液と、チタン酸化物の分散液をそれぞれ製造した後、これら2種の液を混合することで製造することができる。混合方法は特に制限されず、常法にしたがうことができる。
混合の際の本発明のコーティング液とチタン酸化物の分散液との混合割合は、特に制限されるわけではないが、上記のとおり、オルガノポリシロキサン化合物とチタン酸化物との配合割合がTiO/SiO換算質量比として0.5~20(好ましくは0.6~10、より好ましくは0.7~5)となるように調整することが好ましい。
なお、チタン酸化物を含まない本発明のコーティング液は水が少なく有機溶媒が多いほうが安定であり、チタン酸化物の分散液は水が多く有機溶媒が少ないほうが安定であるため、それぞれ安定な溶媒比で調製し、本工程において、好ましいTiO/SiO換算質量比となるように混合しつつ、好ましい溶媒比となるように適宜溶媒を添加することもできる。
6.コーティング液の用途
上記のような本発明のコーティング液は、チタン酸化物を含まない態様及びチタン酸化物を含む態様のいずれも、分散性に優れ、低温で硬化し、透明性を維持し、耐クラック性や密着性に優れるものであるため、緻密なコーティングが可能であり、各種基材(ガラス基材、金属基材(ステンレス基材、アルミニウム基材等)、樹脂基材(ポリエチレンテレフタラート基材、ポリカーボネート基材、ポリメタクリル酸メチル基材、ポリエチレン基材、ポリ塩化ビニル基材等)、セラミック基材(アルミナ基材等)等)の上に適用することで、塗膜として有用である。
また、上記のような本発明のコーティング液は、チタン酸化物を含む態様においては、分散性に優れ、低温で硬化し、透明性を維持し、光触媒効果を損なわず、耐クラック性や密着性に優れ、水分散液と混合しても経時安定性にも優れるものであるため、緻密なコーティングが可能であり、各種基材(ガラス基材、金属基材(ステンレス基材、アルミニウム基材等)、樹脂基材(ポリエチレンテレフタラート基材、ポリカーボネート基材、ポリメタクリル酸メチル基材、ポリエチレン基材、ポリ塩化ビニル基材等)、セラミック基材(アルミナ基材等)等)の上に適用することで、光触媒として有用である。
各種基材の上に適用する場合、本発明のコーティング液は、用途に応じて粘度を調整し、例えば、スピンコート、ディップコート、スプレー等に用いる場合は低粘度、刷毛塗り、スキージ法等に用いる場合はそれより粘度を高く調整し、スクリーン印刷に用いる場合は、さらに粘度を高く調製し、流動性を抑制することが好ましい。また、コーティングした後に、必要に応じて、50~150℃程度で加熱してもよい。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
実施例1
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール80g、水80g及び酢酸2.7g(0.045mol)を混合し、60℃に加熱して8時間攪拌した。その結果、183gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は43.7質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.9質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
実施例2
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール80g、水80g及び酢酸0.9g(0.015mol)を混合し、60℃に加熱して8時間攪拌した。その結果、181gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は44.1質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.9質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
実施例3
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール80g及び水80gを混合し、60℃に加熱して8時間攪拌した。その結果、180gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は44.3質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は6.0質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
実施例4
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール80g、水80g及び酢酸0.9g(0.015mol)を混合し、室温(25℃)で8時間攪拌した。その結果、181gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は44.1質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.9質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
実施例5
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール80g及び水80gを混合し、室温(25℃)で8時間攪拌した。その結果、180gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は44.3質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は6.0質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
実施例6
メチルトリメトキシシラン27.3g(0.2mol)、テトラエトキシシラン20.89g(0.1mol)、エタノール50g、水50g及び酢酸6g(0.1mol)を混合し、50℃に加熱して4時間攪拌した。その結果、150gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は66.7原子%、4個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は33.3原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は32.4質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.7質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置し、100℃で乾燥したところ、透明な硬化膜が得られた。
また、得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置しても(加熱せずとも)透明な硬化膜が得られた。
実施例7
メチルトリエトキシシラン17.8g(0.1mol)、エタノール50g、水50g及び酢酸18g(0.3mol)を混合し、50℃に加熱して4時間攪拌した。その結果、135gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は36.8質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.8質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
比較例1
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール155g、水5g及び酢酸0.9g(0.015mol)を混合し、60℃に加熱して8時間攪拌した。その結果、181gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は2.76質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.9質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明ではあったが硬化不足でべたつきが見られた。
比較例2
メチルトリメトキシシラン20.4g(0.15mol)、エタノール155g及び水5gを混合し、60℃に加熱して8時間攪拌した。その結果、180gの透明で均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は2.77質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は6.0質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明ではあったが硬化不足でべたつきが見られた。
比較例3
メチルトリメトキシシラン13.6g(0.1mol)、水54g及び酢酸0.6g(0.01mol)を混合し、室温(25℃)で8時間攪拌した。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は79.2質量%であった。その結果、68gの透明で均一な液が得られたが、12時間後には白濁し、底に液滴が見られ不均一な状態となっていたことから、この後のコーティングはできなかった。
比較例4
メチルトリメトキシシラン13.6g(0.1mol)、エタノール20g、水76g及び酢酸0.6g(0.01mol)を混合し、室温(25℃)で8時間攪拌した。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は69.0質量%であった。その結果、100gの透明で均一な液が得られたが、36時間後には白濁し、底に液滴が見られ不均一な状態となっていたことから、この後のコーティングはできなかった。
比較例5
n-プロピルトリメトキシシラン16.4g(0.1mol)、エタノール72g、水72g及び酢酸0.9g(0.015mol)を混合し、60℃に加熱して8時間攪拌した。その結果、180gのややヘイズが見られるが均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は0原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は44.6質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は6.1質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明ではあったが硬化していなかった。さらにそのスライドグラスを100℃で12時間加熱したが、硬化不足でべたつきが見られた。
比較例6
オルガノポリシロキサン化合物として、ジメチルシロキサン構造とエポキシ構造を有するシリコーンオリゴマー(信越化学工業(株)製のKR-516:エポキシ等量260g/mol、アルコキシ基量17質量%)を使用した。このシリコーンオリゴマーは、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は50原子%であり、3個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は50原子%であった。
上記のシリコーンオリゴマー6.0g、水107g及び酢酸6gを混合し、攪拌を行ったところ、底部に分液が見られた。さらにエタノール81gを添加したところ、200gの透明で均一な液が得られた。つまり、全溶媒を100質量%として、水の含有量は53.5質量%であった。
得られた液の加熱残分(800℃)は2.5質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は2.5質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、透明な硬化膜が得られた。
比較例7
テトラエトキシシラン20.8g(0.1mol)、水170g及び25質量%アンモニア水1.2gを混合し、室温(25℃)で12時間攪拌した。その結果、ややヘイズが見られるが均一な液が得られた。つまり、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、4個の酸素原子と結合するシリコン原子の含有量は100原子%であった。また、全溶媒を100質量%として、水の含有量は80.6質量%であった。
得られた液の加熱残分(200℃)は5.3質量%であった。加熱残分(800℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のSiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
得られた液をスライドグラスに滴下し、室温(25℃)で24時間静置したところ、割れと剥がれが見られ、基材に全く密着しなかった。
実験例1
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に酢酸120g(2mol)を加え60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度は0.625mol/L、酢酸の濃度は2.5mol/L、pHは2.2であった。半透明の沈殿が発生したが、60分間撹拌した後に加熱を行ったところ70℃で沈殿がすべて溶解した。なお、この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl及びS元素の濃度はいずれも0mol/Lである。
その後、常圧(0.10MPa)で、98℃で3時間撹拌したところ、有機分散剤を使うことなく半透明の均一なチタニアゾルが得られた。このチタニアゾルに超音波分散を加えたところ、粘度が低減され、透明性が増した。得られたチタニアゾルの加熱残分(200℃)は5.7質量%であった。加熱残分(700℃)は5.0質量%であった。このため、得られた液のTiO換算濃度は5.0質量%であることが理解できる。
なお、得られたチタニアゾルの分散液を乾燥し、チタン酸化物(チタニアナノ粒子)を得たところ、BET比表面積は265m/gであり、TEM観察による平均粒子径は約3nmであり、X線回折で結晶性を解析したところ、アナターゼ型100%であった(他の結晶形は存在しなかった)。
また、得られたチタニアゾルを、水分計を用いて200℃で保持し質量減少がなくなるまで乾燥したチタン酸化物(チタニアナノ粒子)のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定したところ、200℃以上での質量減少は12.5質量%であった。この200℃以上での質量減少は、主に酢酸が脱離することによる質量減少に相当する。遊離した酢酸は200℃以下でほとんど揮発することから、200℃以上における質量減少が12.5質量%であることが、チタン酸化物(チタニアナノ粒子)に大量のアセチトキシ基が-OCOCHの形でチタン原子と結合していることを示唆している。
次いで、得られたチタニアゾルを水で希釈し、TiO換算濃度2.0質量%のチタン酸化物を含む分散液を調製した。
上記とは別に、実施例1~7、単独での塗膜が優れていた比較例6又は多孔質性が期待できる比較例7で得られたオルガノポリシロキサン化合物を含む液をエタノールで希釈し、SiO換算濃度2.0質量%のオルガノポリシロキサン化合物を含む液を調製した。
このようにして調製したTiO換算濃度2.0質量%のチタン酸化物を含む分散液とSiO換算濃度2.0質量%のオルガノポリシロキサン化合物を含む液とを等量で混合し、TiO換算濃度1.0質量%、SiO換算濃度1.0質量%の分散液を得た。
得られた分散液を20mLガラス容器内側に塗布し、100℃で乾燥したところ、いずれの実施例のバインダを用いた場合も内側が透明な塗膜でコーティングされた。
一方、比較例8として、チタニアゾル(TiO換算濃度2.0質量%)単体をコーティングした場合は、一部剥がれが見られた。
このようにして形成した塗膜の透明性及び密着性を表1に示す。なお、透明性については、「◎:完全に透明又はほぼ透明、○:透明ではあるがわずかにヘイズ又は白濁が見られる」として評価した。密着性については、「◎:密着性が高く、剥がれが全く見られない、○:密着性は高いもののわずかに剥がれが見られる、△:密着性は不十分であり、一部剥がれている、×:密着性は不十分であり、剥がれている」として評価した。
このガラス容器を4×10-4質量%のメチレンブルー溶液で満たし、紫外光を照射すると塗膜が透明であるためガラスの裏側から照射したにもかかわらずメチレンブルーが分解し透明な液となった。
メチレンブルーが透明になるまでの時間を表1に示す。
Figure 0007463164000009
表1に示されるように、実施例1~7では、チタニアゾル単体と比較してコーティング性が向上しながらも、分解性が発現した。また一部をシリカ原料であるテトラエトキシシランと共重合した場合も、塗膜が硬くなりやや剥がれやすくなったものの、分解時間は短くなり、密着性も向上していた。
それに対して、ジアルキルシロキサン構造が多いオルガノポリシロキサン化合物の場合は、コーティング性及び透明性に優れるが、光触媒特性が極端に低下した。
また、逆にテトラアルコキシシランを用いた場合は多孔質となるため光触媒活性は非常に優れているが、塗膜が硬くコーティング性が悪かった。
実験例2
実験例1において得られたチタニアゾル(TiO換算濃度5.0質量%)2gと、実施例3で得られたオルガノポリシロキサン化合物を含む液(SiO換算濃度5.0質量%)1gとを混合した後に、表2に示す水及び有機溶媒で希釈し、TiO換算濃度1質量%、SiO換算濃度0.5質量%の分散液を得た。その後、得られた分散液をポリメタクリル酸メチル板に刷毛で塗布し、塗布性を観察した後、100℃で乾燥を行い透明性を確認した。その塗膜面の上に純水を滴下し、親水性を評価した。このようにして評価した塗布性、透明性及び親水性を表3に示す。
一方、比較例9として、チタニアゾル(TiO換算濃度1.0質量%)単体をコーティングした場合は、弾きが発生した。
なお、塗布性については、「◎:弾きが発生せず問題なし、○:一部弾き発生、×:全体的に弾き発生」として評価し、透明性については、「◎:完全に透明又はほぼ透明、○:透明ではあるがわずかにヘイズ又は白濁が見られる、×:全体的にヘイズ又は白濁が見られる」として評価し、親水性については、「◎:超親水性(水が前面に広がる)、○:親水性(水が広がる)、×:疎水性(水が広がらない)」として評価した。
Figure 0007463164000010
Figure 0007463164000011
実施例8は実験例1と比較してSiを含むバインダ成分が少ない分、塗布性や透明性がやや低下するが、塗布性、透明性及び親水性に優れていると言える。また、実施例9~19のように、適切な有機溶媒を加えることにより塗布性、透明性、親水性をさらに改善することができた。
一方で、比較例9のようにチタニアゾル単体を樹脂基板に刷毛で塗布した場合、均一で薄膜を形成できるスピンコートや、基材との親和性があり余分な液が重力で除去できるガラス容器へのディップコートとは異なり、基材からの弾きにより膜厚ムラが生じ、その結果膜厚の厚い部分にクラックや剥がれが生じ、白濁して見えることが分かった。

Claims (13)

  1. オルガノポリシロキサン化合物及び溶媒を含有するコーティング液であって、
    前記コーティング液は、光触媒を塗料化するためのバインダであり、
    前記オルガノポリシロキサン化合物は、包含されるシリコン原子の総量を100原子%として、2個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~10原子%、3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%、4個の酸素原子と結合するシリコン原子を0~35原子%含有し、且つ、前記3個の酸素原子と結合するシリコン原子の総量を100原子%として、1個のメチル基及び3個の酸素原子と結合するシリコン原子を60~100原子%含有し、
    前記溶媒の総量を100質量%として、水を5~65質量%含有する、コーティング液。
  2. 前記溶媒が、さらに、有機溶媒を含有する、請求項1に記載のコーティング液。
  3. 前記有機溶媒が一価アルコール、グリコール若しくはそのエーテル誘導体、三価アルコール若しくはそのエーテル誘導体、並びにケトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のコーティング液。
  4. 前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、1,3-ジメトキシ-2-プロパノール、トリメトキシメタン及びアセチルアセトンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載のコーティング液。
  5. 前記有機溶媒の総量を100質量%として、エタノールを80~100質量%含有する、請求項2~4のいずれか1項に記載のコーティング液。
  6. 前記コーティング液の総量を100質量%として、前記オルガノポリシロキサン化合物の含有量が、SiO2換算で0.01~10質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング液。
  7. さらに、チタン酸化物を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング液。
  8. 前記チタン酸化物の平均粒子径が20nm以下であり、比表面積が95m/g以上である、請求項に記載のコーティング液。
  9. 前記オルガノポリシロキサン化合物と前記チタン酸化物との配合割合が、TiO/SiO換算質量比として0.5~20である、請求項又はに記載のコーティング液。
  10. 前記コーティング液の総量を100質量%として、前記チタン酸化物の含有量が、TiO換算で0.01~5質量%である、請求項のいずれか1項に記載のコーティング液。
  11. 前記チタン酸化物は、表面にアセトキシ基が結合しており、且つ、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である、請求項10のいずれか1項に記載のコーティング液。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング液を用いた塗膜。
  13. 請求項11のいずれか1項に記載のコーティング液を用いた光触媒。
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