JP4023282B2 - イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法及びその方法で得られたターゲット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法及びそれにより得られたターゲットに関し、さらに詳しくは、不揮発性メモリーの電極などの形成に利用され、熔解工程での不純物混入が抑制された、イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法及びそれにより得られたターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】
PZT(複合ペロブスカイト化合物、Pb(Zr,Ti)O3)を用いた不揮発性メモリー(FeRAM)のキャパシタ電極膜などの材料としてイリジウムが用いられるようになり、イリジウム薄膜はイリジウム粉末をホットプレスして得られたホットプレスイリジウムターゲットをスパッタリングすることにより得られるが、一方、イリジウムを溶解したのち熱間圧延して得られた溶解イリジウムターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成することもできる。
【0003】
ホットプレスイリジウムターゲットを用いて形成されたイリジウム膜と溶解イリジウムターゲットを用いて形成されたイリジウム膜を比較すると、後者の膜質の方が優れている。したがって、近年の高集積度半導体メモリーのキャパシタ電極用イリジウム膜は、溶解イリジウムターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより形成している(特開平9−41131号公報 段落0003〜0004参照)。
【0004】
ところで、デバイスの高集積化・高密度化が進むにつれ、各種材料の純度が見直され、イリジウムターゲットにもさらなる高純度化が求められている。また、製品歩留まり向上のため、求められるターゲットも大型化する傾向にある。
こうした課題を解決するものとして、(1) Ir原料を電子ビーム溶解し、得られたIrインゴットを金属容器に入れて熱間圧延して純度:99.999質量%以上の高純度Irスパッタリングターゲットの製造方法が開示されている(特開平9−41131号公報 段落0011参照)。
【0005】
また、酸浸出処理、脱ガス処理、電子ビーム溶解とを組み合わせることによって高純度Irスパッタリングターゲットを得る方法が開示されている。(特開平11−302837号公報 段落0005参照)
【0006】
これらの電子ビーム熔解法は、1.33×10-2〜1.33×10-4Pa(10-4〜10-6Torr)の高真空中で、イリジウム原料に電子ビームを当て、その衝撃によりイリジウム原料を加熱熔解するとともに、イリジウムに比して蒸気圧が高い不純物を蒸発除去する技術である。
【0007】
しかし、電子ビーム熔解法には、排気量の大きな高真空排気装置が必要であり、しかも、高真空を長時間保持することが必要なことから、付帯装置が大掛かりとなる欠点がある。加えて、高電圧回路を使用することによる放電の危険性や、X線傷害に関する対策の必要性、及び、出力を安定させるためのエミッション・スタビライザーの必要性が指摘されている(「工業加熱」第17巻(1980年)47頁参照)。
【0008】
また、電子ビームの径が細いために熔湯面積が比較的狭く、不純物元素を極低濃度にまで低減させるには、高真空中での長時間熔解が不可欠であり、イリジウム自体の蒸発損失が増加するために、歩留りが悪いという欠点もある。
【0009】
さらに、電子ビームの径が細いことによる熔湯面積の狭さは、熔解或いは熔解反応により発生したガスが熔湯面から抜けきれず、残存ガスがインゴット内部に気泡を形成し、熱間圧延時に割れの原因になるという製造上の問題をも引き起こす。かかる問題点を解決するための方法として、例えば、電子ビーム熔解後、得られたイリジウムインゴットを金属容器に入れて熱間圧延する方法が記載されている(特開平9−41131号公報 段落0011参照)が、工程が多くなるという問題があった。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−41131号公報
【特許文献2】
特開平11−302837号公報
【非特許文献1】
工業加熱 第17巻(1980年)47頁
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解消しうるイリジウムスパッタリングターゲット(以下、本明細書に於いて単に「ターゲット」と示す。)及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、イリジウム原料に対し、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解、あるいはアーク熔解すれば、高真空を必要とせず、かつ単一熔解工程であっても不純物が充分低減され、熔解装置の電極材からの汚染も抑制されること、さらに、得られたインゴットを熱処理すると、脱水素されること、その結果、加工の際に板材に割れが生じなくなり、大型で高純度なターゲットが得られることを見出した。そして、かかる方法で得られたターゲットは、実質的にイリジウムからなり、水素が特定量以下であって優れたスパッタリング性能が発揮されることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明の第1の発明によれば、アルゴンに1〜50体積%、好ましくは5〜30体積%の水素を混合したガス雰囲気下で、熔解中の炉内の圧力を1.33×103 〜2×105 Paに調整しながら、イリジウム原料をプラズマアーク熔解又はアーク熔解させ、インゴットを作製する第1の工程と、このインゴットを所定のサイズの板材に加工する第2の工程とを含むことを特徴とするイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、脱水素のために、第1の工程の直後に、イリジウムインゴットを真空中又は不活性ガス中で熱処理する工程を行うことを特徴とするイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0015】
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、熱処理における処理温度が、800℃以上で、イリジウムの融点よりも低い温度であることを特徴とするイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法が提供される。
【0016】
本発明の製造方法により、99.99質量%以上のイリジウムからなり、水素の含有量が5質量ppm以下で、かつタングステンの含有量が5質量ppm以下、好ましくは2質量ppm以下であるイリジウムスパッタリングターゲットが安価に提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法、それにより得られたターゲットについて詳細に説明する。
1.イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法
本発明のイリジウムスパッタリングターゲットは、インゴットを作製する第1の工程、得られたインゴットを板材に加工する第2の工程を順次行うことで製造される。この第1の工程の直後には、必要に応じてインゴットを熱処理する工程を追加することができる。
【0018】
(1)インゴットの作製
先ず、イリジウム原料を、少なくとも水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解又はアーク熔解して、イリジウムインゴットとする。
【0019】
これに用いられるイリジウム原料は、通常市販されている純度3N程度のものでよく、特に高純度化したものを用いる必要はない。原料中に混入していたアルカリ(土類)金属元素、遷移金属元素は、それらの大半がイリジウムの熔解とともに除去されるからである。
【0020】
プラズマアーク熔解には、プラズマ作動ガスとしてアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを使用できるが、ヘリウムは高価であることから実用的ではなく、特にアルゴンが好ましい。プラズマ作動ガスに対しては水素を1〜50体積%、好ましくは5〜30体積%添加する。水素が1体積%未満では、熔解装置の電極材からの不純物の混入を抑制できず、50体積%を越えるとアークが不安定となり、熔解装置を破損するなどの問題があり好ましくない。
【0021】
アーク熔解は、水素を1〜50体積%含有する不活性ガス雰囲気下において熔解することは、上記プラズマアーク熔解と同様であり、電流密度が大きい点で相違する。イリジウムのような高融点金属の場合には、熔解効率が高められ、生産性を向上できることからプラズマアーク熔解の方が効率的であり好ましい。
【0022】
プラズマアーク熔解又はアーク熔解中は、炉内圧を1.33×103〜2×105Pa(10Torr〜2atm)に調整することが好ましい。特に好ましい炉内圧力は、2×104〜1×105Paである。
【0023】
なお、イリジウム原料が粉末状の場合は、プレスやCIP、或いはHP(ホットプレス)などで塊状にしておけば、プラズマ作動ガスにより粉末が飛散することを抑制でき、生産効率が向上するので好ましい。
所要時間は、イリジウム原料の純度、量(インゴットのサイズ)、投入電力(アーク出力)、プラズマ作動ガス中の水素濃度などによっても異なるが、30〜90分の間で適宜選定できる。
【0024】
このように、水素を含有するガス雰囲気下でプラズマアーク熔解又はアーク熔解するため、インゴット中の不純物は充分低減され、熔解装置の電極材からの不純物の混入を大幅に低減しうる。この理由は、まだ完全には解明されていないが、ガス雰囲気に水素が存在しない場合には良好な結果が得られないことから、水素が重要な役割を果たしているものと考えられる。
【0025】
また、1.33×103〜2×105Paの炉内圧でイリジウムを熔解させることから、従来のような高真空(1.33×10-2〜1.33×10-4Pa)で行う電子ビーム熔解法に比して、蒸発損失が極めて少なく、イリジウムスパッタリングターゲットを高い歩留りの下に製造することができる。
【0026】
この結果、インゴットには必要以上に水素が取り込まれる可能性があるので、引き続き、真空中又は不活性ガス中で、800℃以上かつイリジウムの融点(2410℃)よりも低い温度でインゴットを熱処理することが好ましい。この熱処理により、インゴット中の水素含有量は低減する。
【0027】
熱処理方法としては、炉内をガス置換することのできる一般的な電気炉により加熱する方法などが採用できる。熱処理における処理温度としては、例えば1000〜1400℃とするのが好適である。1000℃であれば10〜60分間必要であるが、1400℃であれば、5〜50分間かけて熱処理すればよい。このように高温で熱処理することで、インゴットを脱水素できる。また、これによりインゴットを加工する際に、その割れを生じ難くすることができる。
【0028】
(2)板材の作製
次に、第1の工程で得られたイリジウムインゴットを、熱間加工によって所定の厚みの板材とした後、放電加工によって所定のターゲット形状とする。熱間加工や放電加工は、公知の手段であって、特別な条件が要求されるわけではない。
【0029】
以上により得られたターゲットは、熔解工程で装置の電極材からの不純物混入が抑制され、高純度となっており、実質的に内部欠陥が検出されないほどの高品質なものとなる。
なお、実質的に内部欠陥が検出されないという意味は、加工の際、或いは得られたイリジウムスパッタリングターゲットを切断して切断面を目視観察した際に、ガスを巻き込んだ跡や気泡、割れなどが検出されないということである。
【0030】
2.ターゲット
本発明のターゲットは、実質的にイリジウムからなり、それに含有される水素、タングステンがそれぞれ特定量以下であることを特徴とするイリジウムスパッタリングターゲットである。
【0031】
実質的にイリジウムからなる、とはイリジウムの純度が少なくとも99.99%であることを意味する。そして水素は5質量ppm以下、かつタングステンも5質量ppm以下でなければならない。水素が3質量ppm以下、かつタングステンが2質量ppm以下であるターゲットが特に好ましい。水素が5質量ppmを越えると割れが生じやすいという問題があり、またタングステンが5質量ppmを越えると異常放電が増加するという問題があり好ましくない。
【0032】
このようなターゲットは、水素、タングステンだけでなく、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、或いはカルシウムなどのアルカリ(土類)金属元素、マンガン、コバルト、ニッケル、或いは銅などの遷移金属元素を含みうる。
【0033】
しかし、本発明のターゲットは、それらの含有量がいずれも少なく、実質的に割れなど内部欠陥が検出されず、優れたスパッタ性能を有する。上記アルカリ(土類)金属元素、遷移金属元素の含有量は1質量ppm以下、特に0.1質量ppm以下であることが望ましい。これら金属元素のいずれかが1質量ppmを超えても、良好なスパッタ膜を得ることが困難となる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示すが、本発明の内容はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)インゴットの作製
表1に示した不純物品位(純度99.9質量%)のイリジウム原料を、日本研究開発工業株式会社製の静水圧粉末成型装置で固め、プラズマアーク熔解炉内の水冷銅坩堝に充填した。炉内をArガスで置換して炉内圧を1×105Pa(1atm)とした後、プラズマ作動ガスをAr(1体積%H2)に調節しながら、計60分間かけてプラズマアーク熔解を行い、イリジウムインゴットを作製した。プラズマアーク熔解には、大同特殊鋼株式会社製のプラズマ高融点金属溶解炉を使用した。熔解時の電流値は550Aであった。
【0035】
熔解後のインゴットを大亜真空株式会社製の真空焼結炉に入れ、炉内を1×10-2Paまで真空引きした後、1000℃で60分間熱処理した。
【0036】
【表1】
【0037】
(2)板材の作製
得られたインゴットを1200〜1300℃で熱間鍛造、熱間圧延して厚さ2mmの板材とし、放電加工機で、直径300mmに加工し、イリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0038】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を、水素は不活性ガス融解−熱伝導度測定法で、それ以外の元素はグロー放電質量分析法により測定し、結果を表2に示した。熔解装置の電極材はタングステンであるが、その混入が抑制され、高純度なターゲットが得られた。また、得られたターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、割れなど内部欠陥は検出されなかった。
【0039】
【表2】
【0040】
次に、このイリジウムスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングし、異常放電の発生状況を調べた。スパッタガスとしては純度6NのArを用い、ガス圧力は1.0Paとした。異常放電の発生回数は、株式会社ランドマークテクノロジー製のマイクロアークモニターにて、スパッタリング中のアーク発生回数を測定した。結果を表3に示す。スパッタリング中に異常放電が発生することなく、パーティクルが少なくて電極特性も良好な薄膜を形成することができた。
【0041】
なお、表3における異常放電の項目であるが、1回のアークエネルギーが50mJ以上を「大」、50mJ未満10mJ以上を「中」、また10mJ未満を「小」で表した。発生回数は、1分間当たりに異常放電が発生した回数である。
【0042】
【表3】
【0043】
[実施例2]
(1)インゴットの作製
プラズマ作動ガスをAr(5体積%H2)とした以外は実施例1と同様にして、インゴットを作製し、続いて、得られたインゴットを実施例1と同様に、1000℃で60分間熱処理した。
【0044】
(2)板材の作製
実施例1と同様にインゴットを加工して、直径300mm、厚さ2mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0045】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を測定し、結果を表2に示した。熔解装置の電極材であるタングステンの混入は抑制され、高純度なターゲットが得られた。また、得られたターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、割れなど内部欠陥は検出されなかった。
【0046】
このターゲットを用いて、実施例1と同様にスパッタリングし、異常放電の発生状況を調べた。表3に示すとおり、スパッタリング中に異常放電が発生することなく、パーティクルが少なくて電極特性も良好な薄膜を形成することができた。
【0047】
[実施例3]
(1)インゴットの作製
プラズマ作動ガスをAr(30体積%H2)とした以外は実施例1と同様にして、インゴットを作製し、続いて、得られたインゴットを実施例1と同様に、1000℃で60分間熱処理した。
【0048】
(2)板材の作製
実施例1と同様にインゴットを加工して、直径300mm、厚さ2mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0049】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を測定し、結果を表2に示した。熔解装置の電極材であるタングステンの混入は抑制され、高純度なターゲットが得られた。また、得られたターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、割れなど内部欠陥は検出されなかった。
【0050】
このターゲットを用いて、実施例1と同様にスパッタリングし、異常放電の発生状況を調べた。表3に示すとおり、スパッタリング中に異常放電が発生することなく、パーティクルが少なくて電極特性も良好な薄膜を形成することができた。
【0051】
[実施例4]
(1)インゴットの作製
プラズマ作動ガスをAr(30体積%H2)とした以外は実施例1と同様にして、インゴットを作製し、続いて、得られたインゴットを実施例1に示した真空焼結炉に入れ、炉内を1×10-2Paまで真空引きした後、1400℃で50分間熱処理した。
【0052】
(2)板材の作製
実施例1と同様にインゴットを加工して、直径300mm、厚さ2mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0053】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を測定し、結果を表2に示した。熔解装置の電極材であるタングステンの混入は抑制され、高純度なターゲットが得られた。また、得られたターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、割れなど内部欠陥は検出されなかった。
【0054】
このターゲットを用いて、実施例1と同様にスパッタリングし、異常放電の発生状況を調べた。表3に示すとおり、スパッタリング中に異常放電が発生することなく、パーティクルが少なくて電極特性も良好な薄膜を形成することができた。
【0055】
[比較例1]
(1)インゴットの作製
プラズマ作動ガスをAr(30体積%H2)とした以外は実施例1と同様にして、インゴットを作製した。
【0056】
(2)板材の作製
実施例1と同様にインゴットを加工して、直径300mm、厚さ2mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0057】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を測定し、結果を表2に示した。熔解装置の電極材であるタングステンの混入は抑制された。しかし、ターゲットには水素が過剰に含有されているため、得られたターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、内部に割れが検出された。
【0058】
このイリジウムスパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様にスパッタリングし、異常放電の発生状況を調べた。結果を表3に示す。スパッタリング中に異常放電が発生し、得られた薄膜はパーティクルが多く、膜厚も不均一であった。
【0059】
[比較例2]
(1)インゴット熔解
プラズマ作動ガスをAr(H2を添加せず)とした以外は実施例1と同様にして、インゴットを作製した。
【0060】
(2)板材の作製
実施例1と同様にインゴットを加工して、直径300mm、厚さ2mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0061】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を測定し、結果を表2に示した。水素の含有量は少ないものの、熔解装置の電極材からタングステンが混入していた。また、得られたターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、割れなど内部欠陥は検出されなかった。
【0062】
このターゲットを用いて、実施例1と同様にスパッタリングし、異常放電の発生状況を調べた。結果を表3に示す。スパッタリング中に異常放電が発生し、得られた薄膜はパーティクルが多く、膜厚も不均一であった。
【0063】
以上の結果から、実施例1〜4のように、インゴットを熔解する際、プラズマ作動ガスに水素を1〜50体積%(好ましくは5〜30体積%)添加すれば、ターゲットへの熔解装置の電極材(タングステン)の混入を抑制でき、熔解したインゴットを熱処理することで脱水素でき、異常放電を起こし難いターゲットが得られることが分かる。
【0064】
これに対して、比較例1のように、プラズマ作動ガスに水素を多量に(例えば、30体積%)添加してイリジウム原料をプラズマアーク熔解したにも関わらず脱水素しない場合には、ターゲットの水素含有量が大きくなりすぎ、一方、比較例2のように、水素を全く添加しないガス雰囲気下でインゴットを熔解すると、ターゲットへの熔解装置の電極材(タングステン)の混入を抑制できず、異常放電を起こすので好ましくないことが分かる。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、単一熔解工程でも、熔解装置の電極材などから不純物の混入が抑制できて高純度な、内部欠陥のないイリジウムスパッタリングターゲットを提供できる。
【0066】
また、1.33×103〜2×105Paの炉内圧で行う熔解法であるため、蒸発損失が極めて少なく、高い歩留りの下に製造することができ、高純度イリジウムスパッタリングターゲットを安価に提供することができることから、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (3)
- アルゴンに1〜50体積%の水素を混合したガス雰囲気下で、熔解中の炉内の圧力を1.33×103〜2×105Paに調整しながら、イリジウム原料をプラズマアーク熔解又はアーク熔解させ、イリジウムインゴットを作製し、その直後に、得られたイリジウムインゴットを真空中又は不活性ガス中で熱処理し、熱処理後のイリジウムインゴットを所定のサイズの板材に加工することにより、99.99質量%以上のイリジウムからなり、水素の含有量が5質量ppm以下で、かつタングステンの含有量が5質量ppm以下であるターゲットを得ることを特徴とするイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法。
- 熱処理における処理温度が、800℃以上で、イリジウムの融点よりも低い温度であることを特徴とする請求項2に記載のイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法。
- 前記アルゴンに対する水素の添加量を5〜30体積%とすることにより、得られるターゲットにおけるタングステンの含有量を2質量ppmとすることを特徴とするイリジウムスパッタリングターゲットの製造方法。
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