JP4874471B2 - 高純度イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不揮発性メモリーの電極などの形成に利用される高純度イリジウムスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PZT(複合ペロブスカイト化合物、Pb(Zr,Ti)O3)を用いた不揮発性メモリー(FeRAM)の電極などの材料としてイリジウムが用いられ、該不揮発性メモリーの電極は、イリジウムスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法で形成される。
【0003】
近年、半導体メモリーの高集積化、高密度化に伴い、各種の材料の見直しが行われ、イリジウムスパッタリングターゲットにもさらなる高純度化が求められている。例えば、MOSデバイスの特性を劣化させるナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属元素や、鉄などの遷移金属元素、及び、アルファー線を放出することで誤作動の原因となるウラニウム、トリウムなどの放射性同位体元素などの不純物は、極低濃度化することが強く求められている。
【0004】
ところで従来は、イリジウム原料の熔解は電子ビーム熔解法により行われている。この電子ビーム熔解法は、10-4〜10-6Torr(1.33×10-2〜1.33×10-4Pa)の高真空中で、イリジウム原料に電子ビームを当て、その衝撃によりイリジウム原料を加熱熔解するとともに、イリジウムに比して蒸気圧が高い不純物元素を蒸発除去する技術である。これにより、イリジウムの純度を99.995質量%以上にすることができる。
【0005】
しかし、電子ビーム熔解法には、排気量の大きな高真空排気装置が必要であり、しかも、高真空を長時間、保持することが必要なことから、付帯装置が大掛かりとなる欠点がある。加えて、「工業加熱」第17巻(1980年)47頁で記載されているように、高電圧回路を使用することによる放電の危険性や、X線障害に関する対策の必要性、及び、出力を安定させるためのエミッション・スタビライザーの必要性が指摘されている。
【0006】
また、電子ビームの径が細いために熔湯面積が比較的狭く、不純物元素を極低濃度にまで低減させるには、高真空中での長時間熔解が不可欠であり、イリジウム自体の蒸発損失が増加するために、歩留まりが悪いという欠点もある。
【0007】
さらに、電子ビームの径が細いことによる熔湯面積の狭さは、熔解あるいは熔解反応により発生したガスが熔湯面から抜けきれず、残存ガスがインゴット内部に気泡を形成するという製造上の問題をも引き起こす。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、精錬装置及びその付帯装置の大型化や、操業の煩雑化を招くことが無く、内部欠陥が無く、またパーティクルの発生が少ない高純度イリジウムスパッタリングターゲット、及びその製造を可能とする方法の提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、高真空・高電圧を使用することなく、かつ大きな熔湯面積で製造可能な高純度イリジウムスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、プラズマ作動ガスに水素を添加した低電圧・高電流である熱プラズマで、イリジウム原料を熔解する熱プラズマ熔解法を適用すれば、高真空を必要とせず、かつ単一熔解工程によって、従来から問題とされていた金属不純物が充分低減され、内部欠陥のない高純度イリジウムスパッタリングターゲットが得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の高純度イリジウムスパッタリングターゲットは、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以下で、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以下で、白金族元素の含有量が合計で1000質量ppm以下で、白金族元素を除いた遷移金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以下で、ウラニウム、トリウムなどの放射性同位体元素のいずれの含有量も1質量ppb以下である。前記白金族元素の含有量を除いて算出されるイリジウムの純度が、99.995質量%以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の高純度イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法は、イリジウム原料を、プラズマ作動ガスに水素を添加した熱プラズマで熔解することを特徴とする。なお、熔解中の炉内圧を10Torr〜2気圧(1.33×103Pa〜2×105Pa)に調整するのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高純度イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法を詳細に説明する。本発明で用いるイリジウム原料は、通常市販されている純度3N程度のものでよく、特に高純度化したものを用いる必要はない。
【0014】
イリジウム原料をプレスやホットプレスなどで固め、水冷銅ハースに充填した後、プラズマ作動ガスに水素を添加した熱プラズマで熔解する熱プラズマ熔解法により行う。全てを一度に熔かしてもよいし、少量ずつ熔かしてボタン状に凝固させ、最後にそれらをまとめて熔かしてもよい。必要に応じて何回か裏返して熔かす。熱プラズマ熔解法には、例えばアーク熔解、プラズマアーク熔解、高周波プラズマ熔解などが挙げられる。
【0015】
熔解中の炉内圧は、10Torr〜2気圧(1.33×103Pa〜2×105Pa)とする。炉内圧が10Torr未満では、プラズマのエネルギー密度が減少するため、プラズマ作動ガスに水素を添加した熱プラズマでの熔解の作用効果を充分に得ることができず、2気圧を超えると、不純物の除去速度が低下する。
【0016】
以上により得られたイリジウムスパッタリングターゲットは、不純物が極低濃度域まで低減されて、高純度となっており、実質的に内部欠陥が検出されない。
【0017】
なお、実質的に内部欠陥が検出されないという意味は、得られたイリジウムスパッタリングターゲットを切断して切断面を目視観察した際に、ガスを巻き込んだ跡や気泡などが検出されないということである。
【0018】
また、本発明の方法では、10Torr〜2気圧の炉内圧で行う熱プラズマ熔解法によることから、従来の高真空で行う電子ビーム熔解法に比して蒸発損失が極めて少なく、イリジウムスパッタリングターゲットを高い歩留まりの下に製造することができる。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1〜7)
表1に示した不純物品位の純度99.9質量%のイリジウム原料をプレスによって固め、水冷銅ハースに置き、炉内をArガス置換した後、プラズマ作動ガス成分と炉内圧をそれぞれ調節しながら、プラズマアーク熔解を計60分間、行った。熔解中の各炉内圧、及び各プラズマ作動ガスの成分を表2に示す。プラズマアーク熔解には、大同特殊鋼株式会社製、プラズマ高融点金属溶解炉を使用し、熔解時の電圧は60〜90V、電流は600Aであった。
【0021】
【表1】
Figure 0004874471
【0022】
【表2】
Figure 0004874471
【0023】
熔解後のインゴットを、直径150mm、厚さ5mmに加工して、イリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0024】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を表3に示した。
【0025】
白金族元素を除いて算出されるイリジウムの純度は、いずれも99.995質量%以上で、有害不純物は極低濃度まで除去された。
【0026】
また、得られたイリジウムスパッタリングターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、いずれにも内部欠陥は検出されなかった。
【0027】
【表3】
Figure 0004874471
【0028】
実施例1〜7のイリジウムスパッタリングターゲットを用いてそれぞれスパッタリングを行って、異常放電の発生状況を調べた。スパッタガスとして純Arを用い、ガス圧力は1.0Paとした。異常放電の発生回数は、マイクロアークモニター(ランドマークテクノロジー製)にてスパッタリング中のアーク発生回数を測定した。
【0029】
結果を表4に示す。表中で大は1回のアークエネルギー50mJ以上、中は50mJ未満、10mJ以上、小は10mJ未満である。また、発生回数は1分当たりの発生数である。スパッタリング中に異常放電が発生することなく、パーティクルが少なく、電極特性も良好な薄膜を形成することができた。
【0030】
【表4】
Figure 0004874471
【0031】
(比較例1〜3)
熔解中の炉内圧及びプラズマ作動ガスの成分を、それぞれ表5に示した値とした以外は、実施例1と同様にして、直径150mm、厚さ5mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0032】
【表5】
Figure 0004874471
【0033】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物量を表6に示した。また、得られたイリジウムスパッタリングターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、いずれにも内部欠陥は検出されなかった。
【0034】
熔解時の炉内圧が低い比較例1では、プラズマのエネルギー密度が減少するため、Na、Fe、Rh、Pd、Pt、U、Thなどの不純物があまり除去されていなかった。炉内圧の高い比較例2では、除去速度が遅いために、やはり不純物はあまり除去されていなかった。また、プラズマ作動ガスにアルゴンのみを使用した比較例3では、比較的蒸気圧の高い金属不純物は除去されたが、それ以外はあまり除去できなかった。
【0035】
【表6】
Figure 0004874471
【0036】
さらに、比較例1〜3のイリジウムスパッタリングターゲットを用いてそれぞれスパッタリングを行って、実施例と同様に異常放電の発生状況を調べた。
【0037】
結果を表7に示す。スパッタリング中に異常放電が発生し、得られた薄膜はパーティクルが多く、膜厚も不均一であった。
【0038】
【表7】
Figure 0004874471
【0039】
(従来例)
実施例で用いた純度99.9質量%のイリジウム原料をプレスによって固め、水冷銅ハースに置き、炉内を10-5Torrまで真空引きした後、電子ビーム熔解を計60分間、行った。熔解後のインゴットを、直径150mm、厚さ5mmに加工し、イリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0040】
得られたイリジウムスパッタリングターゲットの不純物含有量を表6に示した。白金族元素を除いて算出したイリジウムの純度は99.995質量%以上で、有害不純物は極低濃度域まで除去された。また、得られたイリジウムスパッタリングターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、内部欠陥が有った。
【0041】
さらに、従来例のイリジウムスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行って、実施例と同様に異常放電の発生状況を調べた。
【0042】
結果を表7に示す。スパッタリング中に異常放電が発生し、得られた薄膜はパーティクルが多く、膜厚も不均一であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、単一熔解工程で、有害不純物が極低濃度域まで除去され、内部欠陥も検出されないイリジウムスパッタリングターゲットが得られる。
【0044】
また、本発明の方法では、10Torr〜2気圧の炉内圧を用いる熱プラズマ熔解法によることから、蒸発損失が極めて少なく、高純度イリジウムスパッタリングターゲットを高い歩留まりの下に製造することができ、極めて安価にすることができる。
【0045】
また、本発明の高純度イリジウムスパッタリングターゲットは内部欠陥を含まないため、スパッタリングを行った際にはパーティクルが少なく、電極特性も良好な薄膜を形成することができる。

Claims (1)

  1. イリジウム原料を、プレスまたはホットプレスにより塊状とした後、熔解中の炉内圧を10Torr〜2気圧(1.33×103Pa〜2×105Pa)に調整して、プラズマ作動ガスに1〜100体積%の水素を添加した熱プラズマで熔解することを特徴とする高純度イリジウムスパッタリングターゲットの製造方法。
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