JP2002322559A - 高純度イリジウムスパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

高純度イリジウムスパッタリングターゲット及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高真空・高電圧を使用せずに、製錬装置及び
その付帯装置の大型化や、操業の煩雑化を招くことが無
く、内部欠陥のない高純度イリジウムスパッタリングタ
ーゲット、及びその製造を可能とする方法を提供する。 【解決手段】 イリジウム原料を、炉内圧を10Tor
r〜2気圧(1.33×103Pa〜2×105Pa)に
調整し、プラズマ作動ガスに水素を添加した熱プラズマ
で熔解することにより、ナトリウム、カリウムなどのア
ルカリ金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以
下で、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金
属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以下で、白
金族元素の含有量が合計で1000質量ppm以下で、
白金族元素を除いた遷移金属元素のいずれの含有量も
0.1質量ppm以下で、ウラニウム、トリウムなどの
放射性同位体元素のいずれの含有量も1質量ppb以下
である。前記白金族元素の含有量を除いて算出されるイ
リジウムの純度が99.995質量%以上であることが
好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不揮発性メモリー
の電極などの形成に利用される高純度イリジウムスパッ
タリングターゲット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】PZT(複合ペロブスカイト化合物、Pb
(Zr,Ti)O3)を用いた不揮発性メモリー(FeRAM)
の電極などの材料としてイリジウムが用いられ、該不揮
発性メモリーの電極は、イリジウムスパッタリングター
ゲットを用いたスパッタリング法で形成される。
【0003】近年、半導体メモリーの高集積化、高密度
化に伴い、各種の材料の見直しが行われ、イリジウムス
パッタリングターゲットにもさらなる高純度化が求めら
れている。例えば、MOSデバイスの特性を劣化させる
ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属元素や、鉄な
どの遷移金属元素、及び、アルファー線を放出すること
で誤作動の原因となるウラニウム、トリウムなどの放射
性同位体元素などの不純物は、極低濃度化することが強
く求められている。
【0004】ところで従来は、イリジウム原料の熔解は
電子ビーム熔解法により行われている。この電子ビーム
熔解法は、10-4〜10-6Torr(1.33×10-2
〜1.33×10-4Pa)の高真空中で、イリジウム原
料に電子ビームを当て、その衝撃によりイリジウム原料
を加熱熔解するとともに、イリジウムに比して蒸気圧が
高い不純物元素を蒸発除去する技術である。これによ
り、イリジウムの純度を99.995質量%以上にする
ことができる。
【0005】しかし、電子ビーム熔解法には、排気量の
大きな高真空排気装置が必要であり、しかも、高真空を
長時間、保持することが必要なことから、付帯装置が大
掛かりとなる欠点がある。加えて、「工業加熱」第17
巻(1980年)47頁で記載されているように、高電
圧回路を使用することによる放電の危険性や、X線障害
に関する対策の必要性、及び、出力を安定させるための
エミッション・スタビライザーの必要性が指摘されてい
る。
【0006】また、電子ビームの径が細いために熔湯面
積が比較的狭く、不純物元素を極低濃度にまで低減させ
るには、高真空中での長時間熔解が不可欠であり、イリ
ジウム自体の蒸発損失が増加するために、歩留まりが悪
いという欠点もある。
【0007】さらに、電子ビームの径が細いことによる
熔湯面積の狭さは、熔解あるいは熔解反応により発生し
たガスが熔湯面から抜けきれず、残存ガスがインゴット
内部に気泡を形成するという製造上の問題をも引き起こ
す。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、精錬装置
及びその付帯装置の大型化や、操業の煩雑化を招くこと
が無く、内部欠陥が無く、またパーティクルの発生が少
ない高純度イリジウムスパッタリングターゲット、及び
その製造を可能とする方法の提供することにある。
【0009】また、本発明の目的は、高真空・高電圧を
使用することなく、かつ大きな熔湯面積で製造可能な高
純度イリジウムスパッタリングターゲットおよびその製
造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意検討した結果、プラズマ作動ガスに水
素を添加した低電圧・高電流である熱プラズマで、イリ
ジウム原料を熔解する熱プラズマ熔解法を適用すれば、
高真空を必要とせず、かつ単一熔解工程によって、従来
から問題とされていた金属不純物が充分低減され、内部
欠陥のない高純度イリジウムスパッタリングターゲット
が得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】すなわち、本発明の高純度イリジウムスパ
ッタリングターゲットは、ナトリウム、カリウムなどの
アルカリ金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm
以下で、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類
金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以下で、
白金族元素の含有量が合計で1000質量ppm以下
で、白金族元素を除いた遷移金属元素のいずれの含有量
も0.1質量ppm以下で、ウラニウム、トリウムなど
の放射性同位体元素のいずれの含有量も1質量ppb以
下である。前記白金族元素の含有量を除いて算出される
イリジウムの純度が、99.995質量%以上であるこ
とが好ましい。
【0012】また、本発明の高純度イリジウムスパッタ
リングターゲットの製造方法は、イリジウム原料を、プ
ラズマ作動ガスに水素を添加した熱プラズマで熔解する
ことを特徴とする。なお、熔解中の炉内圧を10Tor
r〜2気圧(1.33×10 3Pa〜2×105Pa)に
調整するのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の高純度イリジウム
スパッタリングターゲットの製造方法を詳細に説明す
る。本発明で用いるイリジウム原料は、通常市販されて
いる純度3N程度のものでよく、特に高純度化したもの
を用いる必要はない。
【0014】イリジウム原料をプレスやホットプレスな
どで固め、水冷銅ハースに充填した後、プラズマ作動ガ
スに水素を添加した熱プラズマで熔解する熱プラズマ熔
解法により行う。全てを一度に熔かしてもよいし、少量
ずつ熔かしてボタン状に凝固させ、最後にそれらをまと
めて熔かしてもよい。必要に応じて何回か裏返して熔か
す。熱プラズマ熔解法には、例えばアーク熔解、プラズ
マアーク熔解、高周波プラズマ熔解などが挙げられる。
【0015】熔解中の炉内圧は、10Torr〜2気圧
(1.33×103Pa〜2×105Pa)とする。炉内
圧が10Torr未満では、プラズマのエネルギー密度
が減少するため、プラズマ作動ガスに水素を添加した熱
プラズマでの熔解の作用効果を充分に得ることができ
ず、2気圧を超えると、不純物の除去速度が低下する。
【0016】以上により得られたイリジウムスパッタリ
ングターゲットは、不純物が極低濃度域まで低減され
て、高純度となっており、実質的に内部欠陥が検出され
ない。
【0017】なお、実質的に内部欠陥が検出されないと
いう意味は、得られたイリジウムスパッタリングターゲ
ットを切断して切断面を目視観察した際に、ガスを巻き
込んだ跡や気泡などが検出されないということである。
【0018】また、本発明の方法では、10Torr〜
2気圧の炉内圧で行う熱プラズマ熔解法によることか
ら、従来の高真空で行う電子ビーム熔解法に比して蒸発
損失が極めて少なく、イリジウムスパッタリングターゲ
ットを高い歩留まりの下に製造することができる。
【0019】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以
下の実施例に限定されるものではない。
【0020】(実施例1〜7)表1に示した不純物品位
の純度99.9質量%のイリジウム原料をプレスによっ
て固め、水冷銅ハースに置き、炉内をArガス置換した
後、プラズマ作動ガス成分と炉内圧をそれぞれ調節しな
がら、プラズマアーク熔解を計60分間、行った。熔解
中の各炉内圧、及び各プラズマ作動ガスの成分を表2に
示す。プラズマアーク熔解には、大同特殊鋼株式会社
製、プラズマ高融点金属溶解炉を使用し、熔解時の電圧
は60〜90V、電流は600Aであった。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】熔解後のインゴットを、直径150mm、
厚さ5mmに加工して、イリジウムスパッタリングター
ゲットを得た。
【0024】得られたイリジウムスパッタリングターゲ
ットの不純物含有量を表3に示した。
【0025】白金族元素を除いて算出されるイリジウム
の純度は、いずれも99.995質量%以上で、有害不
純物は極低濃度まで除去された。
【0026】また、得られたイリジウムスパッタリング
ターゲットを切断し、切断面を目視観察したところ、い
ずれにも内部欠陥は検出されなかった。
【0027】
【表3】
【0028】実施例1〜7のイリジウムスパッタリング
ターゲットを用いてそれぞれスパッタリングを行って、
異常放電の発生状況を調べた。スパッタガスとして純A
rを用い、ガス圧力は1.0Paとした。異常放電の発
生回数は、マイクロアークモニター(ランドマークテク
ノロジー製)にてスパッタリング中のアーク発生回数を
測定した。
【0029】結果を表4に示す。表中で大は1回のアー
クエネルギー50mJ以上、中は50mJ未満、10m
J以上、小は10mJ未満である。また、発生回数は1
分当たりの発生数である。スパッタリング中に異常放電
が発生することなく、パーティクルが少なく、電極特性
も良好な薄膜を形成することができた。
【0030】
【表4】
【0031】(比較例1〜3)熔解中の炉内圧及びプラ
ズマ作動ガスの成分を、それぞれ表5に示した値とした
以外は、実施例1と同様にして、直径150mm、厚さ
5mmのイリジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0032】
【表5】
【0033】得られたイリジウムスパッタリングターゲ
ットの不純物量を表6に示した。また、得られたイリジ
ウムスパッタリングターゲットを切断し、切断面を目視
観察したところ、いずれにも内部欠陥は検出されなかっ
た。
【0034】熔解時の炉内圧が低い比較例1では、プラ
ズマのエネルギー密度が減少するため、Na、Fe、R
h、Pd、Pt、U、Thなどの不純物があまり除去さ
れていなかった。炉内圧の高い比較例2では、除去速度
が遅いために、やはり不純物はあまり除去されていなか
った。また、プラズマ作動ガスにアルゴンのみを使用し
た比較例3では、比較的蒸気圧の高い金属不純物は除去
されたが、それ以外はあまり除去できなかった。
【0035】
【表6】
【0036】さらに、比較例1〜3のイリジウムスパッ
タリングターゲットを用いてそれぞれスパッタリングを
行って、実施例と同様に異常放電の発生状況を調べた。
【0037】結果を表7に示す。スパッタリング中に異
常放電が発生し、得られた薄膜はパーティクルが多く、
膜厚も不均一であった。
【0038】
【表7】
【0039】(従来例)実施例で用いた純度99.9質
量%のイリジウム原料をプレスによって固め、水冷銅ハ
ースに置き、炉内を10-5Torrまで真空引きした
後、電子ビーム熔解を計60分間、行った。熔解後のイ
ンゴットを、直径150mm、厚さ5mmに加工し、イ
リジウムスパッタリングターゲットを得た。
【0040】得られたイリジウムスパッタリングターゲ
ットの不純物含有量を表6に示した。白金族元素を除い
て算出したイリジウムの純度は99.995質量%以上
で、有害不純物は極低濃度域まで除去された。また、得
られたイリジウムスパッタリングターゲットを切断し、
切断面を目視観察したところ、内部欠陥が有った。
【0041】さらに、従来例のイリジウムスパッタリン
グターゲットを用いてスパッタリングを行って、実施例
と同様に異常放電の発生状況を調べた。
【0042】結果を表7に示す。スパッタリング中に異
常放電が発生し、得られた薄膜はパーティクルが多く、
膜厚も不均一であった。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、単一熔解工程で、有害
不純物が極低濃度域まで除去され、内部欠陥も検出され
ないイリジウムスパッタリングターゲットが得られる。
【0044】また、本発明の方法では、10Torr〜
2気圧の炉内圧を用いる熱プラズマ熔解法によることか
ら、蒸発損失が極めて少なく、高純度イリジウムスパッ
タリングターゲットを高い歩留まりの下に製造すること
ができ、極めて安価にすることができる。
【0045】また、本発明の高純度イリジウムスパッタ
リングターゲットは内部欠陥を含まないため、スパッタ
リングを行った際にはパーティクルが少なく、電極特性
も良好な薄膜を形成することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三村 耕司 宮城県仙台市太白区富沢3丁目23−16 (72)発明者 永田 純一 千葉県市川市中国分3−18−5 住友金属 鉱山株式会社中央研究所内 (72)発明者 大迫 敏行 千葉県市川市中国分3−18−5 住友金属 鉱山株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4K029 DC03 DC08

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にイリジウムからなり、アルカリ
    金属元素のいずれの含有量も0.1質量ppm以下で、
    アルカリ土類金属元素のいずれの含有量も0.1質量p
    pm以下で、白金族元素の含有量が合計で1000質量
    ppm以下で、白金族元素以外の遷移金属元素のいずれ
    の含有量も0.1質量ppm以下で、放射性同位体元素
    のいずれの含有量も1質量ppb以下であることを特徴
    とする高純度イリジウムスパッタリングターゲット。
  2. 【請求項2】 前記白金族元素の含有量を除いて算出さ
    れるイリジウムの純度が、99.995質量%以上であ
    ることを特徴とする請求項1に記載の高純度イリジウム
    スパッタリングターゲット。
  3. 【請求項3】 イリジウム原料を、プラズマ作動ガスに
    水素を添加した熱プラズマで熔解することを特徴とする
    高純度イリジウムスパッタリングターゲットの製造方
    法。
  4. 【請求項4】 熔解中の炉内圧を10Torr〜2気圧
    (1.33×103Pa〜2×105Pa)に調整するこ
    とを特徴とする請求項3に記載の高純度イリジウムスパ
    ッタリングターゲットの製造方法。
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