JP4019611B2 - 発泡化粧材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として建築物の内装材として使用され、特に壁面用の化粧シートや壁紙等の壁装材として、好適な発泡化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の化粧シートや壁紙は、裏打シートや裏打紙の上に熱可塑性樹脂を主成分とする発泡性樹脂組成物を塗工し、加熱発泡させて発泡層を形成したものが大半を占めている。
【0003】
上記熱可塑性樹脂としては、安価なポリ塩化ビニル系樹脂を使用したものが大半である。
【0004】
しかし、上記ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする壁紙の場合、透湿度が非常に低いということがあった(一般的に100g/m2 ・24h以下)。そのために施工時に糊を壁紙裏面に塗った際に、水分が抜けにくく、オープンタイム(壁紙の裏面に糊を付けてから壁に貼れるまでの最大経過時間)が非常に長くなる(約8時間以上)という問題点や、それに付随する接着力(タック)の発現が遅いという問題点が挙げられた。
【0005】
一方、近年環境問題で注目され、増加の傾向にある非塩ビ系の水性エマルジョン壁紙は透湿度が高く(一般に600g/m2 ・24h以上)、施工時に裏面に塗った糊の水分が表面側にしみ出すという問題があった。と同時に、水分が抜けやすい分、接着力の発現が早くなり、紙間で接着してしまうためオープンタイムを非常に短くする状況である(殆ど30分前後)。そのため施工時に、あわただしい作業となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、従来の塩化ビニル系樹脂を主成分とする壁紙のオーヌンタイムの長いこと、及び非塩ビ系の水性エマルジョン樹脂を主成分とする壁紙のオープンタイムが短いことを解消し、適度なオープンタイム(2〜5時間程度)を保ち、かつ施工上扱い易い発泡化粧材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係わる発明は、透湿性基材上に水性エマルジョン樹脂を主成分とする発泡樹脂層を具備してなる発泡化粧材において、アクリル酸ブチル10重量%、メタクリル酸メチル40重量%およびアクリル酸−2−エチルヘキシル50重量%からなり、ガラス転移点が0℃である前記水性エマルジョン樹脂を発泡樹脂に配合し、該発泡樹脂を前記透湿性基材上に乾燥後の塗布量150g/mに塗布した後、乾燥温度120℃、時間2分間にて乾燥してなり、透湿度が150〜450g/m・24hであることを特徴とする発泡化粧材である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の発泡化粧材は、透湿性基材上に水性エマルジョン樹脂を主成分とする発泡樹脂層を具備してなる発泡化粧材において、前記水性エマルジョン樹脂が、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルとを含む(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であり、透湿度が150〜450g/m2 ・24hであることを特徴とするものである。
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明の発泡化粧材は、例えば図1に示すように、透湿性基材1上に発泡樹脂層2が設けられており、この発泡樹脂層2の表面には、絵柄模様3の印刷が施され、さらに、エンボスによる凹凸模様4が施されている。なお、絵柄模様3及び凹凸模様4は特に限定されるものではない。
【0013】
上記透湿性基材1は、本発明の発泡化粧材の支持体となるものであって、発泡樹脂層2の加熱発泡時の熱により変形を生じない程度の耐熱性を有する透湿性でかつ可撓性のシート状体であれば、その材質は特に限定されない。具体的には、薄葉紙、チタン紙、無機紙又は難燃紙等の紙類や、織布又は不織布等の布類等、或いはそれらの積層体や複合体等から目的の用途に合わせて適宜材料を選択すれば良い。
【0014】
上記発泡樹脂層2は水性エマルジョン樹脂に充填剤、発泡剤、着色剤、分散剤、ブロツキング防止剤、消泡剤、増粘剤等の各種添加剤を適宜配合したものから形成される。
【0015】
水性エマルジョン系樹脂としてはアクリル酸エステル系樹脂であり、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルとを含むことを特徴とするものである。
【0016】
前記水性エマルジョン系樹脂の構造としては、特に限定はしないが、通常の共重合体若しくはコア/シェルの二層構造、ブレンド等を用いることができる。
【0017】
前記アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられるが、これらの単独又は二種以上を混合して用いることができる。
【0018】
また、発泡化粧材の透湿度が150〜450g/m2 ・24hにするために、水性エマルジョン樹脂中の(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルを30〜70重量%含有することを特徴とする。
すなわち、30重量%以下では透湿度が450g/m2 ・24h以上となり、施工時の糊のオープンタイムが30分程度以下となると共に、施工が著しく困難となる。また70重量%以上では150g/m2 ・24h以下となり、オープンタイムが6時間以上となって、目開きや剥離等の施工不良が発生し易くなる。
【0019】
また、それに付随して、水性エマルジョン樹脂のガラス転移点が、−20〜20℃であることを特徴とするものである。
すなわち、−20℃以下ではブロッキングが発生し、表面強度も弱くなる。また、20℃以上では樹脂の柔軟性が失われ、発泡倍率が劣り、耐折性(シートを折り曲げた際に、折った部分が割れてしまうという現象)、及び耐寒性(寒冷地想定温度(5℃)での耐折性)が悪くなる。
【0020】
本発明に用いる無機充填剤として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪砂、クレー、タルク、シリカ類、ケイ酸マグネシウム等を挙げることができる。好ましくは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムである。また、無機質充填剤の添加量としては50〜300重量部が好ましい。50重量部未満の場合は難燃性が十分に現れず、300重量部以上になると発泡シートの表面強度が弱く、また樹脂の流動性が悪くなる。
【0021】
本発明に用いる熱膨張型カプセル発泡剤は、ポリアクリルニトリル、アクリルニトリルとアクリル酸メチルの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリルニトリルの共重合体等からなる殻部分と内部にエタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の低沸点炭化水素とからなり、粒径は2〜30μmの球体である。カプセル発泡剤の添加量は5〜20重量部が好ましい。すなわち、5重量部未満では発泡シートのボリューム感が不足し、20重量部以上では発泡シートの表面強度が弱くなる。
【0022】
さらに、カプセル発泡剤の発泡開始温度は120〜180℃であることが好ましく、180℃以上になると発泡性が劣り、熱エネルギーコストも高くなる。
一方、発泡開始温度が120℃未満の場合、発泡樹脂層の水分を乾燥するための温度下でも発泡が起きやすくなり、良い発泡体が得られない。
【0023】
本発明に用いる透湿性基材としては特に限定されていない。例えば、スルファニル酸グアナジン、リン酸グアナジン等の水溶性難燃剤を含浸させたパルプ紙系難燃紙が可能であり、また、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機質材を混抄した無機質紙も使用可能である。
【0024】
本発明に用いる水性エマルジョン発泡性組成物へのその他の添加剤として、酸化チタン顔料、分散剤、消泡剤、湿潤剤、ブロッキング防止剤、及び増粘剤が使用できる。
【0025】
また、本発明に用いる水性エマルジョン発泡性組成物の混合方法としては、特に制限はなく、ヘンシェルミキサー、ジゾルバー及びホモミキサー等を用いることができる。
【0026】
さらに、本発明に用いる水性エマルジョン発泡性組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、例えばナイフコーター、ノズルコーター、グラビヤコーター 、ロータリースクリーンコーター、リバースロールコーター等の塗工方法が用いられる。
【0027】
また、塗布後の乾燥方法としては特に制限はなく、熱風、赤外線照射等の単独又はこれらを合わせて用いることができる。
【0028】
次に、絵柄模様3の印刷インキとしては、適宜の印刷インキ(非発泡性インキ)又は水性エマルジョン樹脂を主成分とした発泡性インキを用いて、グラビア印刷法、オフセツト印刷法、スクリーン印刷法等にて形成することができる。
【0029】
また、エンボスによる凹凸模様4は、塗工した発泡樹脂層2を十分に乾燥した後に、熱風又は赤外線照射等で発法させて形成してもよいし、場合によってはエンボスロールを用いて、発泡樹脂層2の表面に凹凸模様を施すこともできる。
【0030】
【実施例】
以下、具体的実施例を挙げて詳細に説明する。
【0031】
<実施例1>
坪量120g/m2 の難燃紙基材1上に、下記表1の水性エマルジョン樹脂構成で示される水性エマルジョン樹脂を、下記表2で示される発泡樹脂組成にて配合し、目付量(乾燥後の塗布量)150g/m2 に塗工して、発泡樹脂層2を形成した。それをオーブンにて乾燥温度120℃、時間2分間にて乾燥し、発泡用のベース層を形成した。
このベース上に水性インキを用いグラビア印刷にて絵柄模様3を形成した後、プレス機にエンボス型を設置し、加熱温度210℃、時間30秒にて発泡及びエンボスを同時に行い、エンボス凹凸模様4を形成した。この時、透湿度は300g/m2 ・24hとなり、オープンタイムも3.5時間保持することができた。さらに、ガラス転移点も0℃となり、危惧されたブロッキング、表面強度、柔軟性、発泡倍率、耐折性、耐寒性等も問題なく良好な壁紙性能を示した。
【0032】
【表1】
Figure 0004019611
【0033】
【表2】
Figure 0004019611
【0034】
<比較例1>
坪量120g/m2 難燃紙基材1上に、表1に示される水性エマルジョン樹脂を表2で示される樹脂組成にて配合し目付量(乾燥後の塗布量)150g/m2 に塗工して、発泡樹脂層を形成した。それをオーブンにて乾燥温度120℃、時間2分にて乾燥し、発泡樹脂層2を形成した。
このベース上に水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様3を形成した後、プレス機にエンボス型を設置し、加熱温度210℃、時間30秒にて発泡及びエンボスを同時に行い、エンボス凹凸模様を形成した。この時、透湿度は700g/m2 ・24hとなり、オープンタイムも0.5時間とかなり短くなり、施工しづらい製品となった。なお、ガラス転移点は0℃に合わせたため、危惧された壁紙性能であるブロッキング、表面強度、柔軟性、発泡倍率、耐折性、耐寒性等は問題なかった。
【0035】
<比較例2>
坪量120g/m2 難燃紙基材1上に、表1に示される水性エマルジョン樹脂を表2で示される樹脂組成にて配合し目付量(乾燥後の塗布量)150g/m2 に塗工して、発泡樹脂層2を形成し、それをオーブンにて乾燥温度120℃、時間2分にて乾燥し、発泡樹脂層を形成した。
このベース上に水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様3を形成した後に、プレス機にエンボス型を設置し、加熱温度210℃、時間30秒にて発泡及びエンボスを同時に行い、エンボス凹凸模様4を形成した。この時、透湿度は通常の塩化ビニル程度の100g/m2 ・24hとなり、オープンタイムは8時間とかなり長くなり、接着力の発現に時間がかかり施工しづらい製品となった。
また、アクリル酸−2−エチルヘキシルの重量%が増加したため、ガラス転移点が−38℃と低くなり、危惧されたブロッキング、表面強度等が問題となり壁紙としては使用できないものとなった。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、透湿性基材上に水性エマルジョン系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂であり、アルキル基の炭素数が1〜4(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルを30〜70重量%含む水性エマルジョン系発泡樹脂層を具備してなる発泡化粧材であり、ガラス転移点が−20〜20℃であり、透湿度が150〜450g/m2 ・24hであることを特徴とす発泡化粧材である。これにより、従来、施工上問題となっていたオープンタイムが最適時間の2〜5時間と調整可能となり、なおかつ壁紙物性性能を満たす発泡化粧材を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す、発泡化粧材の断面で表した説明図である。
【符号の説明】
1 ……透湿性基材
2 ……発泡樹脂層
3 ……絵柄模様
4 ……凹凸模様

Claims (1)

  1. 透湿性基材上に水性エマルジョン樹脂を主成分とする発泡樹脂層を具備してなる発泡化粧材において、アクリル酸ブチル10重量%、メタクリル酸メチル40重量%およびアクリル酸−2−エチルヘキシル50重量%からなり、ガラス転移点が0℃である前記水性エマルジョン樹脂を発泡樹脂に配合し、該発泡樹脂を前記透湿性基材上に乾燥後の塗布量150g/m に塗布した後、乾燥温度120℃、時間2分間にて乾燥してなり、透湿度が150〜450g/m・24hであることを特徴とする発泡化粧材。
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