JP4017477B2 - シリカ系コーティング液、およびそれを用いたシリカ系コーティング膜ならびにシリカ系コーティング膜被覆基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温乾燥あるいは、低温短時間の熱処理で硬化可能なシリカ系コーティング液、およびそれを用いたシリカ系コーティング膜ならびにシリカ系コーティング膜被覆基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリカ系のコーティング膜は、シロキサン骨格に由来する耐熱性、化学的安定性を有する材料であり、かつ、絶縁性や高い硬度を有することから、各種基材へ、保護膜としてコーティングされている。そのコーティング方法としては、ゾルゲル法を利用して、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランなどを加水分解して得たゾルを塗布して熱処理する方法が知られている。この場合、400℃30分程度の熱処理を行わないと、鉛筆硬度2H程度の硬度を有し、保護膜として機能できる膜が得られなかった。しかしながら、各種鋼板やステンレスのコイルなどの場合、30分もの熱処理を行うと、製造ラインが長くなる上、鋼板の種類によっては、相変態温度、軟化温度との関係で熱処理温度を400℃のような高温に上げることができないこともある。また、基材がプラスチック樹脂や炭素繊維やガラス繊維で複合強化された樹脂などの場合、樹脂のガラス転移温度より高い温度で焼付け硬化することはできない。このため、低温短時間熱処理もしくは室温乾燥で硬化するシリカ系コーティング膜が望まれていた。
【0003】
これまでに報告された低温短時間の熱処理で硬化するシリカ系コーティング膜として、アクリルラッカー樹脂、ビニル樹脂、ポリエステルメラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂などの有機溶剤系塗料に、特定のシリコーン化合物を配合した塗料組成物(特開平9−40907号公報)、ポリビニルアルコールに微粒子状シリカを配合させたコーティング組成物(米国特許3,773,776)、ポリビニルアルコールまたはエチレンービニルアルコール共重合体に特定のシラン化合物を分散させたコーティング用組成物(特開平9−255910号公報、特開平9−291251号公報)などがある。しかしながら、いずれも有機樹脂が主体であるため、十分な耐腐食性や耐溶剤性が得られないという問題があった。また、微粒子を分散させたものは透明な膜が得られないため、ステンレス鋼板のように鋼板表面の光沢性を活かす場合には用いることができなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−40907号公報
【特許文献2】
米国特許第3773776号
【特許文献3】
特開平9−255910号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐腐食性、耐溶剤性および耐磨耗性に優れ、透明、かつ低温短時間の熱処理で硬化可能なシリカ系コーティング液、及びそれを用いたシリカ系コーティング膜ならびにシリカ系コーティング膜被覆基材を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、上記目的を達成するために以下のような手段を用いる。
(1)シリカ系コーティング液が、(A)エポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物、(B)アミノ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物、(C)アルコキシシラン以外の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物、(D)酸触媒、及び(E)炭素数1以上12以下のアルキル基、そのフルオロ置換体及びフェニル基から選ばれる1種以上を含有するアルコキシシラン、その加水分解物、テトラアルコキシシラン、及びその加水分解物から選ばれる1つ以上の化合物を含有し、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を10質量部以上200質量部以下、前記(C)成分を0.5質量部以上50質量部以下、前記(D)成分を0.5質量部以上10質量部以下含有し、かつ、前記(A)成分のエポキシ基が開環し、前記エポキシ基の開環率が50%より高いことを特徴とするシリカ系コーティング液。
(2)前記アルコキシシラン以外の金属アルコキシドの金属成分がTi、Zr、Al、Ta、Nbから選ばれる少なくとも1つであり、かつ、酸触媒が酢酸であることを特徴とする前記(1)に記載のシリカ系コーティング液。
(3)前記シリカ系コーティング液中の溶質の質量平均分子量が500以上5000以下であることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング液。
(4)シリカ系コーティング膜が、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング液から作製されることを特徴とするシリカ系コーティング膜。
(5)前記シリカ系コーティング膜が、シロキサン結合を主とする無機の三次元網目構造と、エーテル結合およびアミノ結合を含む有機の三次元網目構造とを含み、かつ、無機の三次元網目構造と有機の三次元網目構造がSi原子を介して化学的に結合していることを特徴とする前記(4)記載のシリカ系コーティング膜。
(6)前記無機の三次元網目構造が、シロキサン結合以外の無機成分の構造としてTi、Zr、Al、Ta、Nbから選ばれる少なくとも1つの金属元素と酸素との結合を含むことを特徴とする前記(5)記載のシリカ系コーティング膜。
(7)基材表面の少なくとも一部が、前記(4)〜(6)のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング膜で被覆されてなることを特徴とするシリカ系コーティング膜被覆基材。
(8)基材表面の少なくとも一部に、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング液を塗布後、被膜を形成してなることを特徴とするシリカ系コーティング膜被覆基材。
(9)前記基材がメッキ鋼材、ステンレス鋼材、チタン材、アルミニウム材、またはアルミニウム合金材であることを特徴とする前記(7)または(8)記載のシリカ系コーティング膜被覆基材。
(10)前記基材が繊維強化複合材料であることを特徴とする前記(7)または(8)記載のシリカ系コーティング膜被覆基材。
(11)前記繊維強化複合材料が、炭素繊維強化樹脂複合材であることを特徴とする前記(10)記載のシリカ系コーティング膜被覆基材。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のシリカ系コーティング液について説明する。
【0008】
(A)成分に相当するエポキシ基を含有するアルコキシシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基を含むアルコキシシランは、たとえばアルコキシシラン以外の金属アルコキシドと酸とともに混合することにより、エポキシ基をあらかじめ開環させておくことができる。こうすることにより、エポキシ基同士の重合反応、エポキシ基とアミノ基との間の付加反応を室温乾燥あるいは低温短時間で進行させることが可能となる。エポキシ基の開環が50%より高い場合は、特に低温短時間硬化特性に優れ、室温で1時間から5日間乾燥、50℃30分、70℃10分、100℃5分、200℃1分、あるいは250℃5秒のような低温短時間の熱処理で2H以上の硬度を有する膜が得られる。また、通常基材の表面は酸化物で覆われており、最表面には大気中の水分によりOH基が現れているが、エポキシ基が開環してできたOH基と基材最表面の間に水素結合が形成されやすいので、基材との間に高い密着性が得られる。一方、エポキシ基が全く開環していない場合は、200℃2時間程度の熱処理を行っても十分な硬化が行われず、鉛筆硬度で評価した膜硬度はB以下である。
【0009】
エポキシ基を含有するアルコキシシランのエポキシ基の開環率は、エポキシ基を形成している炭素原子のNMRスペクトルから見積もることができる。簡易的には赤外吸収スペクトルにおいて、910cm-1および1253cm-1にエポキシ基に由来する吸収ピークを示すが、これらの吸収ピークが赤外吸収スペクトルで検出できなければ、50%より高い開環率とみなすことができる。
【0010】
(B)成分に相当するアミノ基を含有するアルコキシシランとしては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリメトキシシラン、(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。アミノ基の活性水素がエポキシ基の酸素原子に結合してOH基となってエポキシ基を開環させると同時に窒素原子を介してアミノ基と開環したエポキシ基の間に結合が形成される。エポキシ基を含有するアルコキシシランおよびアミノ基を含有するアルコキシシランは、シリカ系コーティング液中で、アルコキシ基のすべて、または一部が加水分解されていてもよい。
【0011】
エポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物100質量部に対するアミノ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物の質量部は10以上200以下であることが特に好ましい。10質量部より少ない場合は、アミン付加反応が低くなるので、低温硬化性が劣る傾向が見られる。200質量部より多い場合は、重合度が上がりすぎてシリカ系コーティング液がゲル化したり、貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
【0012】
(c)成分に相当するアルコキシシラン以外の金属アルコキシドの金属成分としてTi、Zr、Al、Ta、Nbから選ばれる少なくとも1つを用い、かつ、(D)成分に相当する酸触媒として酢酸を用いたとき、エポキシ基の開環速度が促進され、低温短時間硬化の効果が特に高くなる。Ti、Zr、Al、Ta、Nbの金属アルコキシドはいずれもアルコキシシランに比べて反応性が高いため、アルコキシ基の一部をβ−ジケトン、β−ケトエステル、アルカノールアミン、アルキルアルカノールアミン、有機酸等で置換したアルコキシド誘導体を使用してもよい。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドは、シリカ系コーティング液中で、アルコキシ基のすべて、または一部が加水分解されていてもよい。本発明におけるアルコキシシラン以外の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物は、エポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下であるとき、低温硬化性、および高硬度化にすぐれ、特に好ましい。本発明における酸触媒は、エポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であるとき、低温硬化性にすぐれ、特に好ましい。(D)成分に相当する酸触媒として酢酸以外には、ギ酸、マレイン酸、安息香酸などの有機酸、塩酸、硝酸などの無機酸が挙げられるが、特に酢酸が開環率を高くできる上、各種基材を腐食する問題がないので好ましい。
【0013】
(E)成分に相当する炭素数1以上12以下のアルキル基、そのフルオロ置換体及びフェニル基から選ばれる1種以上を含有するアルコキシシラン、その加水分解物、テトラアルコキシシラン、およびその加水分解物から選ばれる1つ以上の化合物をシリカ系コーティング液中に含有させることにより、以下のような効果が期待できる。
【0014】
炭素数1以上12以下のアルキル基を有するアルコキシシランをシリカ系コーティング液中に含有させることにより、得られるシリカ系コーティング膜に柔軟性、耐指紋性、撥水性などを付与することができる。炭素数が12より多いアルキル基の場合は、膜硬化を妨げる上、鉛筆硬度がB以下の柔らかい膜しか得られないので好ましくない。炭素数1以上12以下のアルキル基を有するアルコキシシランとして、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、エチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルメチルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらのアルコキシシランは、シリカ系コーティング液中で、アルコキシ基のすべて、または一部が加水分解されていてもよい。
【0015】
炭素数1以上12以下のアルキル基のフルオロ置換体またはフェニル基を有するアルコキシシランをシリカ系コーティング液中に含有させることにより、得られるシリカ系コーティング膜に耐指紋性、撥水性、耐汚染性などを付与することができる。炭素数が12より多いアルキル基のフルオロ置換体の場合は、膜硬化を妨げる上、鉛筆硬度がB以下の柔らかい膜しか得られないので好ましくない。炭素数1以上12以下のアルキル基のフルオロ置換体またはフェニル基を有するアルコキシシランとして、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。また、炭素数1以上12以下のアルキル基と炭素数1以上12以下のアルキル基のフルオロ置換体を同時に含むアルコキシシランであってもよい。この例として、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシランなどが挙げられる。また、炭素数1以上12以下のアルキル基とフェニル基を同時に含むアルコキシシランであってもよい。この例として、フェニルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらのアルコキシシランは、シリカ系コーティング液中で、アルコキシ基のすべて、または一部が加水分解されていてもよい。
【0016】
テトラアルコキシシランをシリカ系コーティング液中に含有させることにより、得られるシリカ系コーティング膜の鉛筆硬度を3H〜9Hに高めることができる。
【0017】
(E)成分に相当するこれらの化合物は総量としてその質量部が、エポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物100質量部に対して、10以上100以下であることが好ましい。10質量部より少ない場合は、添加した効果が現れにくく、100質量部より多い場合は、低温硬化を妨げる傾向がみられる。
【0018】
本発明のシリカ系コーティング液には、添加剤として、レベリング効果剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、ワックス、添加型紫外線安定剤などを混合させて用いることができる。また、必要に応じて、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等を含んでもよい。これら添加剤は一種のみを用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いることもできる。
【0019】
また、本発明のシリカ系コーティング液には、低温硬化特性を損なわない範囲内で無機あるいは金属粒子、着色顔料や染料を添加することができる。
【0020】
本発明のシリカ系コーティング液中の溶質の質量平均分子量は500以上5000以下であることが望ましい。質量平均分子量は簡易的にはゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したスチレン換算の分子量分布から求めることができる。この質量平均分子量が500より小さい場合、有機、無機ともに網目構造の形成が進みにくいため低温短時間の熱処理で硬化させるのが難しい。また質量平均分子量が5000より大きい場合は、シリカ系コーティング液のゲル化が起きやすく貯蔵安定性が損なわれていく傾向が見られる。粘度は塗布液中の溶質、すなわち固形分濃度によって変わるが、概ね0.5〜3.0mPa・sであることが好ましい。
【0021】
本発明におけるシリカ系コーティング液は、溶質を均一に分散、溶解できる有機溶媒中で、アミノ基を含むアルコキシシラン以外のアルコキシシランと、アルコキシシラン以外の金属アルコキシドおよび酸触媒を混合してエポキシ基を開環させた後、加水分解を行い、最後にアミノ基を含むアルコキシシランを添加することにより調製することができる。有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の各種アルコール、アセトン、トルエン、キシレン等を用いることができる。作製したコーティング液は、必要な膜厚などに応じて有機溶媒または水で希釈して用いてもよい。通常1回のコーティングで得られる膜厚が、0.2〜2μm程度になるように希釈する。また、重ね塗りにより厚膜を形成してもよい。
【0022】
加水分解後、溶媒として用いた、あるいは加水分解で生成したアルコール等を常圧あるいは減圧下で留去して塗布してもよい。基材へのコーティングは、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法等で行われる。本発明のシリカ系コーティング膜は、後述の各種基材に対して、特に前処理を行わなくても良好な密着性を示すが、必要に応じて、塗布前に前処理を行うこともできる。代表的な前処理としては、酸洗、アルカリ脱脂、クロメート等の化成処理、研削、研磨、ブラスト処理等があり、必要に応じてこれらを単独もしくは組み合わせて行うことができる。
【0023】
次に、本発明のシリカ系コーティング膜について説明する。本発明のシリカ系コーティング膜は、シリカを主とする無機成分と、有機成分との両方から構成される。無機成分は、≡Si−O−のシロキサン結合が主体で三次元の網目構造を形成するが、M−O−M、M−O−Siのような形でSi以外の金属元素Mを含んで、無機の三次元網目構造を形成してもよい。Mの種類としては、Ti、Zr、Al、Ta、Nbから選ばれる少なくとも1つの金属元素を含むとき、特に高硬度の膜が得られるので好ましい。有機成分は、C、O、N、Hから構成され、有機の三次元網目構造の主骨格は、−CH2−CH(CH2)−O−CH2−のようなエーテル結合や、第2または第3アミンとなるようなアミノ結合などから構成される。無機の網目構造と有機の網目構造とは、Si−C結合を介して連結され、無機と有機の網目が相互に貫入しあった構造になっている。本発明による有機の三次元網目構造は、室温乾燥あるいは低温短時間の熱処理で形成することが可能であり、有機の網目構造が形成される結果として無機の構成元素が互いに近接した位置に来るため、無機の骨格構造の形成が容易になる。従って、通常シロキサン結合を主とする無機骨格を形成するには400℃30分程度の熱処理が必要であるが、本発明の無機骨格は室温乾燥、あるいは低温短時間の熱処理で形成可能である。このように無機と有機の網目構造をつなぐことができるSi−C結合を有するSiの質量の割合は、無機の三次元網目構造を形成する金属および半金属元素の質量の総和に対して50質量%以上であることが望ましい。無機と有機の網目構造をつなぐことができないSiとしてはSi(O−)4、RSi(O−)3、RR’Si(O−)2、RR’R”Si(O−)などが挙げられる。ここでR、R’、R”はアルキル基、アリール基など反応性を持たない有機基を示す。前記割合が50質量%より少ない場合、十分な低温硬化が期待できない。また、無機の三次元網目構造を形成する金属および半金属元素の質量の総和に対する金属元素の質量の割合は20質量%以下であることが望ましい。この比が20質量%より高い場合も、低温硬化の特性が低下する。
【0024】
本発明のシリカ系コーティング膜は、無機と有機の両方の網目構造を有し、かつそれらが互いに結合しあっているので、有機成分を利用して低温短時間で硬化することが可能であると同時に、無機成分に由来する耐腐食性、耐熱性、耐候性、高硬度などの特性を兼ね備えることができる。本発明のシリカ系コーティング膜は、本発明のシリカ系コーティング液をコーティング後、室温から300℃の温度域で数日から数秒の熱処理を行うことが好ましい。一般に、熱処理温度が高い場合は短い熱処理時間で膜の硬化が可能であり、熱処理温度が低い場合は長時間の処理が必要である。例えば室温で1時間から5日間乾燥、50℃30分、70℃10分、100℃5分、200℃1分、あるいは250℃5秒のような低温短時間の熱処理条件が挙げられる。必要に応じて熱処理後、室温で1〜5日エージングすることにより膜硬度を熱処理直後より高めることができる。
【0025】
本発明のシリカ系コーティング膜によって少なくとも一部が被覆された基材は、被覆部分は腐食性ガス、熱、摩擦、酸素、水、水蒸気、各種薬品などから保護されているため外部環境の影響を受けない。ここで言う基材とは、特に限定するものではなく、金属材料、有機材料、セラミックス、複合材料などに好適に使用され、特に、メッキ鋼材、ステンレス鋼材、チタン材、アルミニウム材、アルミニウム合金材、および繊維強化複合材料が好ましい。
【0026】
メッキ鋼材としては亜鉛メッキ鋼板、亜鉛−鉄合金メッキ鋼板、亜鉛−ニッケル合金メッキ鋼板、亜鉛−クロム合金メッキ鋼板、亜鉛−アルミ合金メッキ鋼板、アルミメッキ鋼板、亜鉛−アルミ−マグネシウム合金メッキ鋼板、亜鉛−アルミ−マグネシウム−シリコン合金メッキ鋼板、アルミ−シリコン合金メッキ鋼板、亜鉛メッキステンレス鋼板、アルミメッキステンレス鋼板等が挙げられる。
【0027】
ステンレス鋼材としてはフェライト系ステンレス鋼板、マルテンサイト系ステンレス鋼板、オーステナイト系ステンレス鋼板等が挙げられる。ステンレス鋼板の厚さとしては、数十mm程度の厚いものから、圧延により10μm程度まで薄くした、いわゆるステンレス箔までが挙げられる。ステンレス鋼板およびステンレス箔の表面は、ブライトアニール、バフ研磨などの表面処理を施してあってもよい。
【0028】
アルミニウム合金材としてはJIS1000番系(純Al系)、JIS2000番系(Al−Cu系)、JIS3000番系(Al−Mn系)、JIS4000番系(Al−Si系)、JIS5000番系(Al−Mg系)、JIS6000番系(Al−Mg−Si系)、JIS7000番系(Al−Zn系)等が挙げられる。これら金属材料、鋼板に対して本発明のシリカ系コーティング膜を施した場合、耐腐食性に加えて耐熱性の向上が認められる。
【0029】
また、基材が有機材料や繊維強化複合材料の場合、基材の耐熱温度が低かったり、熱応力でクラックが入ったりすることがあるが、本発明のシリカ系コーティング膜は基材に応じて熱処理温度を下げたり室温乾燥したりすることが可能であるので、種々の有機材料や繊維強化複合材料に被膜を形成することができる。本発明のシリカ系コーティング膜は、無機骨格と有機骨格が相互に貫入しあった緻密な構造であるため、基材から外部環境への脱ガス、発塵などを押さえることが可能である。特に、基材が炭素繊維強化樹脂(CFRP)の場合、カーボンからの発塵が問題になるが、本発明のシリカ系コーティング膜は、CFRPに用いる樹脂のガラス転移温度よりも低温で硬化することができる上、開環したエポキシ基のOH基、加水分解されたアルコキシシランのシラノール基などによりカーボン表面の酸化膜とも密着性がよいため、CFRPの表面にコーティングして発塵を防止する膜として好ましい。
【0030】
【実施例】
本発明のシリカ系コーティング膜被覆基材を以下の実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン100質量部に対して、テトラエトキシチタンを8質量部、酢酸を9質量部加えてエポキシ基に由来する赤外吸収スペクトルの910cm-1および1253cm-1のピークが消失するまで攪拌後、テトラエトキシシランを40質量部と70質量部のエタノールを加え、30質量部の水で加水分解した。さらにアミノプロピルトリエトキシシランを150質量部加えることによりゾルを調製し、最後に700質量部のエタノールでゾルを希釈し、シリカ系コーティング液とした。SUS304の基板にこのシリカ系コーティング液をバーコータで塗布後、200℃の熱風乾燥炉で2分熱処理を行った後、3日間室温で放置してエージングさせた。得られた膜の膜厚は1.5μm、鉛筆硬度は熱処理直後は3H、エージング後は8Hであった。エージング後のT曲げでは、3Tにおいても目視で確認可能な顕著な膜はがれは見られなかった。また、300℃の大気炉中で240h保持した後においても、コーティング膜のひび割れ、剥離,変色は全く認められず、きわめて良好な密着性と耐熱性を示した。
(実施例2)
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100質量部に対して、テトラブトキシジルコニウムを8質量部、酢酸を2質量部加えてエポキシ基に由来する赤外吸収スペクトルの910cm-1および1253cm-1のピークが消失するまで攪拌後、ジメチルジメトキシシランを60質量部と70質量部のエトキシエタノールを加え、15質量部の水で加水分解した。さらにアミノプロピルトリメトキシシランを80質量部加えることによりゾルを調製し、最後に600質量部の水でゾルを希釈し、シリカ系コーティング液とした。チタン基板にこのシリカ系コーティング液をバーコータで塗布後、100℃のオーブンで5分熱処理を行った。得られた膜の膜厚は1μm、鉛筆硬度は2H、T曲げでは、1Tにおいても目視で確認可能な顕著な膜はがれは見られなかった。このシリカ系コーティング膜を被覆した面としていない面について、特性を比較した結果、耐指紋性がこの膜により向上することがわかった。
(実施例3)
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン100質量部に対して、テトラエトキシチタンを8質量部、酢酸を9質量部加えてエポキシ基に由来する赤外吸収スペクトルの910cm-1および1253cm-1のピークが消失するまで攪拌後、メチルトリエトキシシランを27質量部と70質量部のエタノールを加え、27質量部の水で加水分解した。さらにアミノプロピルトリエトキシシランを48質量部加えることによりゾルを調製し、最後に400質量部のエタノールでゾルを希釈し、シリカ系コーティング液とした。この液の質量平均分子量は3000であり、常温で2ヶ月保存後においても、質量平均分子量の変化は誤差範囲内であった。CFRPの基材にこのシリカ系コーティング液をディップコータを用いて成膜後、50℃のオーブンで1時間乾燥した。その後室温で3日間のエージングを行った。シリカ系コーティング膜を形成する前にはCFRPからの発塵が見られたが、膜を形成することにより発塵が抑制された。
(実施例4)
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン100質量部に対して、テトラエトキシチタンを5質量部、酢酸を5質量部加えた後、エポキシ基に由来する赤外吸収スペクトルの910cm-1および1253cm-1のピークが消失するまで攪拌した。続いて、テトラエトキシシランを50質量部と70質量部のエタノールを加え、30質量部の水で加水分解した。さらにアミノプロピルトリエトキシシランを100質量部加えることによりゾルを調製し、最後に600質量部の水でゾルを希釈し、シリカ系コーティング液とした。コーティング膜を形成する基板として0.8mm厚さの溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量:片面90g/m2)を用い、上述のシリカ系コーティング液をバーコータで塗布、乾燥を繰り返し、最終的に230℃で熱処理することにより、膜厚3μmのコーティング膜を得た。得られた膜の鉛筆硬度は2H、T曲げでは、3Tにおいても目視で確認可能な顕著なはくりは見られなかった。また、コーティング膜を形成した鋼板を沸騰水に1h浸漬した後、JIS K5400に規定されている碁盤目試験法に基づく碁盤目加工を行い、さらに5mmのエリクセン加工を行った。その加工部にセロテープ(登録商標、ニチバン(株)製)を貼り付けた後、斜め45度の方向に引っ張る、いわゆるセロテープ剥離試験においても全く剥離が起こらず、きわめて良好な密着性を示すことがわかった。
(実施例5)
実施例1に示した方法で、同じ組成のシリカ系コーティング液を作製した。コーティング膜を形成する基板として、光輝焼鈍を行った0.6mm厚さのステンレス鋼板(SUS430BA)を用い、上述のシリカ系コーティング液をバーコータで塗布、乾燥を繰り返し、最終的に250℃で熱処理することにより、膜厚5μmのコーティング膜を得た。得られた膜の鉛筆硬度は3H、T曲げでは、3T曲げ試験においても顕著な剥離は見られなかった。また、熱処理を行わないコーティング膜に対して、形成ままの状態および沸騰水に1h浸漬した後のセロテープ剥離試験を行ったが、剥離は全く起こらず、きわめて良好な密着性を示した。また、300℃の大気炉中で480h保持した後においても、コーティング膜のひび割れ、剥離、変色は全く認められず、原板と同様の光沢を保持していた。このことから、本発明のコーティング皮膜は、ステンレス鋼の耐熱クリヤー皮膜としても使用可能であることがわかった。また、実施例2と同じ方法でコーティング膜の特性を評価したところ、このシリカ系コーティング膜を形成した鋼板は、耐指紋性が格段に向上していることがわかった。
(比較例1)
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン100質量部に対して、テトラエトキシシランを40質量部およびエタノール400質量部を加え、30質量部の水で加水分解し、ゾルを調製した。このシリカ系コーティング液は赤外吸収スペクトルにおいて910cm-1および1253cm-1のピークを確認することができた。SUS304の基板にこのシリカ系コーティング液をバーコータで塗布後、150℃の熱風乾燥炉で30分熱処理を行ったが、得られた膜は膜硬度がB以下であり、硬化が進んでいなかった。
(比較例2)
メチルトリエトキシシラン100質量部に対して、酢酸5質量部、2−エトキシエタノール50質量部を混合・攪拌して、30質量部の水で加水分解し、ゾルを調製した。Niめっき鋼板にこのシリカ系コーティング液をバーコータで塗布後、150℃の熱風乾燥炉で30分熱処理を行ったが、膜は粘着性があり硬化が進んでいなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、室温乾燥あるいは低温短時間の熱処理で硬化可能なシリカ系コーティング液を得ることができる。該コーティング液を用いて作製したシリカ系コーティング膜は、耐腐食性、耐溶剤性、耐指紋性、耐摩耗性、耐発塵性等が優れており、かつ、室温乾燥あるいは低温短時間の熱処理で硬化することから、メッキ鋼材、ステンレス鋼材、チタン材、アルミニウム材、またはアルミニウム合金材などの金属材料や、炭素繊維強化樹脂複合材などに被覆して好適に使用される。
Claims (11)
- シリカ系コーティング液が、(A)エポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物、(B)アミノ基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解物、(C)アルコキシシラン以外の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物、(D)酸触媒、及び(E)炭素数1以上12以下のアルキル基、そのフルオロ置換体及びフェニル基から選ばれる1種以上を含有するアルコキシシラン、その加水分解物、テトラアルコキシシラン、及びその加水分解物から選ばれる1つ以上の化合物を含有し、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を10質量部以上200質量部以下、前記(C)成分を0.5質量部以上50質量部以下、前記(D)成分を0.5質量部以上10質量部以下含有し、かつ、前記(A)成分のエポキシ基が開環し、前記エポキシ基の開環率が50%より高いことを特徴とするシリカ系コーティング液。
- 前記アルコキシシラン以外の金属アルコキシドの金属成分がTi、Zr、Al、Ta、Nbから選ばれる少なくとも1つであり、かつ、酸触媒が酢酸であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ系コーティング液。
- 前記シリカ系コーティング液中の溶質の質量平均分子量が500以上5000以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング液。
- シリカ系コーティング膜が、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング液から作製されることを特徴とするシリカ系コーティング膜。
- 前記シリカ系コーティング膜が、シロキサン結合を主とする無機の三次元網目構造と、エーテル結合およびアミノ結合を含む有機の三次元網目構造とを含み、かつ、無機の三次元網目構造と有機の三次元網目構造がSi原子を介して化学的に結合していることを特徴とする請求項4記載のシリカ系コーティング膜。
- 前記無機の三次元網目構造が、シロキサン結合以外の無機成分の構造としてTi、Zr、Al、Ta、Nbから選ばれる少なくとも1つの金属元素と酸素との結合を含むことを特徴とする請求項5記載のシリカ系コーティング膜。
- 基材表面の少なくとも一部が、請求項4〜6のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング膜で被覆されてなることを特徴とするシリカ系コーティング膜被覆基材。
- 基材表面の少なくとも一部に、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ系コーティング液を塗布後、被膜を形成してなることを特徴とするシリカ系コーティング膜被覆基材。
- 前記基材がメッキ鋼材、ステンレス鋼材、チタン材、アルミニウム材、またはアルミニウム合金材であることを特徴とする請求項7または8記載のシリカ系コーティング膜被覆基材。
- 前記基材が繊維強化複合材料であることを特徴とする請求項7または8記載のシリカ系コーティング膜被覆基材。
- 前記繊維強化複合材料が、炭素繊維強化樹脂複合材であることを特徴とする請求項10記載のシリカ系コーティング膜被覆基材。
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