JP4016296B2 - 生体成分測定方法およびそのための試薬組成物 - Google Patents

生体成分測定方法およびそのための試薬組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は生体成分測定方法及びそのための試薬組成物に関し、さらに詳細にはクレアチン、クレアチニン、尿素などの生体成分に酵素を作用させ、生成するアンモニアを測定することによって、これらの生体成分を測定する方法において、生体試料中の内因性または外因性アンモニアによる誤差の少ない正確な測定を可能とする方法及びそのための試薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
血清、尿などの生体試料中のクレアチン、クレアチニン、尿素などの成分の存在およびその量の測定は、臨床検査の分野において、有益な情報をもたらす。これらの測定方法としては、それぞれの成分に対して、高い基質特異性を有する酵素を使用した測定方法が急速に普及している。その中でも生体成分に酵素を作用させ、生成するアンモニアを測定することによって、これらの生体成分を定量する方法が用いられている。測定しようとする生体成分と使用酵素の組み合わせとしては、例えばクレアチニンとクレアチニンデイミナーゼ、尿素とウレアーゼなどが挙げられる。
【0003】
また測定対象である生体成分から直接、アンモニアを生成することのできない場合は、予め生体成分にある酵素を作用させて、アンモニアを生成する酵素の基質となる物質を生成させた後、該物質にアンモニアを生成する酵素を作用させ、生成するアンモニアを測定する方法が用いられる。このような代表例としては、クレアチンにクレアチンアミジノヒドロラーゼを作用させて、尿素を生成させ、次いでウレアーゼを作用させて、生成するアンモニアを測定する方法などが挙げられる。
【0004】
アンモニアを生成する酵素の作用により、生成したアンモニアは、一般的に、牛肝由来あるいは微生物由来のグルタミン酸脱水素酵素とその基質であるα−ケトグルタル酸およびNAD(P)Hを用いて測定するか、あるいはインドフェノールなどを作用させ、比色定量する。しかしながら、グルタミン酸脱水素酵素とその基質であるα−ケトグルタル酸を用いる方法では、生体試料中の内因性または外因性アンモニアまたはアンモニウムイオン濃度が高い場合、試薬中のNAD(P)Hを消費してしまい、目的成分を測定することが不能となる。またインドフェノールを用いる測定方法では、アンモニア以外の成分に反応する等の特異性に問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような生体成分の測定方法において、生体試料中に含まれる内因性または外因性アンモニアによって測定に誤差を生じ、正しい測定結果が得られないことがしばしば経験されている。このような問題を解決する手段として、グルタミン酸脱水素酵素とイソクエン酸脱水素酵素を試薬中に共存させることにより、効率的にアンモニアを消去し、生体成分の測定への干渉を回避する方法が用いられている。しかしながら、この方法では反応に直接、関与しないイソクエン酸脱水素酵素および該脱水素酵素の基質であるイソクエン酸を試薬中に添加しなければならない。また、主反応進行中にはイソクエン酸脱水素酵素の反応をきわめて速やかに停止しなければならなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解消するために、内因性または外因性アンモニアの測定値への干渉を回避する方法を鋭意検討した結果、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMである好熱菌由来のアミノ酸脱水素酵素と該脱水素酵素の基質を含有させ、かつダブルカイネテイック法を用いることによって、上記問題を解決するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は試料中の生体成分または該生体成分に由来する物質に、生体成分またはそれに由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素を作用させ、生成したアンモニアを測定することにより生体成分を測定する方法において、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを使用し、ダブルカイネテイック法により、内因性または外因性アンモニアの干渉を回避することを特徴とする生体成分測定方法である。
【0008】
ダブルカイネティック法とは、試料と第1試薬混合時に生じる吸光度変化量とさらに第2試薬を添加した後に生じた吸光度変化量とから、目的とする成分の量と比例関係を有する吸光度変化量を求め、予め標準液を用いた検量線から、目的とする成分の量を測定する方法である。
【0009】
本発明の一実施態様は、試料にアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱性菌由来のアミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含む第1試薬を作用させ、得られる吸光度の減少速度を測定し、次いで試料中の生体成分に作用し、アンモニアを生成する酵素を含む第2試薬を作用させて吸光度の減少速度を測定し、後者から前者を差し引くことにより、試料中の生体成分を測定することを特徴とする生体成分測定方法である。
【0010】
また別の実施態様は、試料にアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱性菌由来のアミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、NAD(P)Hおよび試料中の生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素を含む第1試薬を作用させ、得られる吸光度の減少速度を測定し、次いで試料中の生体成分に作用して、該成分に由来する前記物質を生成する酵素をを含む第2試薬を作用させて吸光度の減少速度を測定し、後者から前者を差し引くことにより、試料中の生体成分または該生体成分に由来する物質を測定することを特徴とする生体成分測定方法である。
【0011】
また、本発明は生体成分または生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含むことを特徴とする生体成分測定用試薬組成物である。
【0012】
本発明において測定する生体成分としては、クレアチン、クレアチニンまたは尿素などが挙げられる。本発明において測定しようとする成分はこれらの成分に限らず、アンモニアを生成する酵素を用いて生成するアンモニアを測定することにより、測定可能な成分を包含する。このような成分としては、例えばL−アスパラギン、L−グルタミン、L−アルギニン、シトシン、アデニン、アデノシン、シチジン、AMP、グアノシンなどが挙げられる。
【0013】
本発明において測定しようとする生体成分に由来する物質としては、クレアチンに由来する尿素などが挙げられる。本発明において、測定しようとする成分は、これらの成分に限らず、アンモニアを生成する酵素の基質となる物質を生成するものであって、該物質にアンモニアを生成する酵素を作用させてアンモニアを生成させ、その量を測定することにより測定可能な成分を包含する。
【0014】
生体成分に直接、作用してアンモニアを生成する酵素としては、クレアチニンデイミナーゼ、ウレアーゼ、L−アスパラギンアミドヒドロラーゼ、L−グルタミンアミドヒドロラーゼ、シトシンアミノヒドロラーゼ、アデニンアミノヒドロラーゼ、アデニシンアミノヒドロラーゼ、シチジンアミノヒドロラーゼ、AMPアミノヒドロラーゼ、グアニンアミノヒドロラーゼなどが挙げられる。
【0015】
上記アンモニアを生成する酵素の基質となる物質としては、クレアチニン、尿素、L−アスパラギン、L−グルタミン、L−アルギニン、シトシン、アデニン、アデノシン、シチジン、AMP、グアノシンなどが挙げられ、これらの物質を生成する酵素としては、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、アシルCoAシンセターゼなどが挙げられる。
【0016】
本発明に使用されるアミノ酸脱水素酵素としては、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであれば、その由来について特に限定されるものではなく、通常、天然の起源から採取されるもの、または遺伝子組換えあるいは変異処理によって取得されるものであってもよい。特に好適には好熱菌由来のアミノ酸脱水素酵素が用いられる。
好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素としては、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus) 由来のアラニン脱水素酵素、およびバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus) 、バチルス・スフェリカス(Bacillus sphaericus) 、バチルス・セレウス(Bacillus cereus) 由来のロイシン脱水素酵素などが挙げられる。
【0017】
本発明における好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素の基質とは、アンモニアを除く物質であって、アラニン脱水素酵素を使用する場合は、ピルビン酸であり、ロイシン脱水素酵素を使用する場合は、2−オキソイソ吉草酸(α−ケトイソペンタン酸)、2−オキソイソカプロン酸(α−ケトイソヘキサン酸)、2−オキソ吉草酸(α−ケトペンタン酸)、2−オキソ酪酸(α−ケトブタン酸)、2−オキソカプロン酸(α−ケトヘキサン酸)などである。
【0018】
本発明における内因性アンモニアとは、生体成分中に存在するアンモニアおよび生体試料の保存中に発生するアンモニアを意味する。本発明における外因性アンモニアとは、生体試料測定中に混入するアンモニアを意味する。
【0019】
本発明の一実施態様は、第1試薬にアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含み、第2試薬に生体成分または生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNAD(P)Hを含む生体成分測定用試薬組成物である。
【0020】
さらに本発明の別な実施態様は、第1試薬に生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素およびアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含み、第2試薬に直接、生体成分に作用する酵素、好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含む生体成分測定用試薬組成物である。
【0021】
具体的な実施態様は、第1試薬が好熱性菌由来アラニン脱水素酵素またはロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、NADHおよび緩衝液を含み、第2試薬がクレアチニンデイミナーゼ、好熱性菌由来アラニン脱水素酵素またはロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHおよび緩衝液を含むクレアチニン測定用試薬組成物である。
【0022】
別な実施態様は、第1試薬が好熱性菌由来アラニン脱水素酵素またはロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、NADHおよび緩衝液を含み、第2試薬がウレアーゼ、好熱性菌由来アラニン脱水素酵素またはロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHおよび緩衝液を含む尿素測定用試薬組成物である。
【0023】
さらに別な実施態様としては、第1試薬が好熱性菌由来アラニン脱水素酵素またはロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、ウレアーゼ、NADHおよび緩衝液を含み、第2試薬がクレアチンアミジノヒドロラーゼ、好熱性菌由来アラニン脱水素酵素またはロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHおよび緩衝液を含むクレアチン測定用試薬組成物である。
【0024】
本発明の生体成分測定用試薬組成物は、第1試薬に、少なくとも、アンモニアに対するKm値が5mM以上であるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含み、第2試薬にアンモニアを生成する酵素、アンモニアに対するKm値が5mM以上であるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含むものである。
該組成物の形状としては、液状試薬であっても、凍結乾燥製剤であってもよく、溶解液を組み合わせてもよい。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グット緩衝液等、酵素反応を阻害しないものであれば、その種類に限定されない。pHは、5〜10で用いられる。安定剤としては、糖類、アミノ酸類、金属塩類、キレート剤等が用いられる。他の添加剤としては、界面活性剤、防腐剤など、反応を阻害しないものであれば、その使用は限定されない。
【0025】
第1試薬組成物中のアミノ酸脱水素酵素の添加量は、特に限定されるものではないが、好適には0.1〜50U/mlで用いられる。該脱水素酵素の基質の濃度は測定に支障をきたさない限り、限定されるものではない。NAD(P)Hの添加量は0.1〜0.4mMで好適に用いられる。第2試薬組成物中のアミノ酸脱水素酵素の添加量は、第1試薬および第1試薬と第2試薬の量の比に依存し、反応液の最終酵素添加量が、第1試薬の添加量に(第1試薬+第2試薬)量/第1試薬量の係数を乗じた量が好適に用いられる。
第2試薬組成物中のアンモニアを生成する酵素の添加量は、特に限定されるものではないが、好適には2〜300U/mlである。
【0026】
本発明の測定方法は、試料と第1試薬混合時に生じるNAD(P)Hの吸光度変化量とさらに第2試薬を添加した後に生じたNAD(P)Hの吸光度変化量とから、目的とする成分の量と比例関係を有するNAD(P)Hの吸光度変化量を求め、予め標準液を用いた検量線から、目的とする成分の量を測定する方法である。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるアミノ酸脱水素酵素、好ましくは好熱菌由来アミノ酸脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを使用し、ダブルカイネテイック法により、内因性または外因性アンモニアの干渉を回避することが可能となる。したがって、生体試料中に含まれる内因性または外因性アンモニアが及ぼす生体成分の測定への干渉を、反応に直接、関与しない成分、例えばイソクエン酸脱水素酵素および該酵素の基質であるイソクエン酸を試薬中に添加する必要がない。また、アンモニアに対するKm値が5mM未満であるアミノ酸脱水素酵素、例えばグルタミン酸脱水素酵素では、アンモニアに対する親和性が高いために反応が速やかに進行し、カイネティックアッセイが難しくなる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって詳細に説明するが、これらによって本発明は限定されるものではない。なお、実施例中の略号は以下のものを示す。
TES :N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスル
ホン酸
TAPS:N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンス
ルホン酸
【0029】
実施例1 血清中のクレアチニンの測定
下記試薬Aまたは試薬Bを調製した。
試薬A(比較例):
(第1試薬)
グルタミン酸脱水素酵素 6.0U/ml
α−ケトグルタル酸 3.0mM
NADPH 0.3mM
リン酸緩衝液 0.1M
(第2試薬)
クレアチニンデイミナーゼ 10 U/ml
グルタミン酸脱水素酵素 14 U/ml
リン酸緩衝液 0.1M
試薬B(本発明):
(第1試薬)
ロイシン脱水素酵素 6.0U/ml
α−ケトイソヘキサン酸 3.0mM
NADH 0.3mM
リン酸緩衝液 0.1M
(第2試薬)
クレアチニンデイミナーゼ 10 U/ml
ロイシン脱水素酵素 14 U/ml
リン酸緩衝液 0.1M
【0030】
サンプルとしては、下記サンプル1〜6を使用した。
サンプル1 人プール血清:蒸留水=9:1
サンプル2 人プール血清: 360mg/dl 塩化アンモニウム水溶液=9:1
サンプル3 人プール血清: 720mg/dl 塩化アンモニウム水溶液=9:1
サンプル4 人プール血清:1080mg/dl 塩化アンモニウム水溶液=9:1
サンプル5 人プール血清:1440mg/dl 塩化アンモニウム水溶液=9:1
サンプル6 人プール血清:1800mg/dl 塩化アンモニウム水溶液=9:1
【0031】
各サンプル3μlに試薬Aまたは試薬Bの第1試薬を300μl添加し、37℃で加温し、第1試薬添加2分後と4分後に精製水を対照に、340nmの吸光度を測定した。さらに試薬Aまたは試薬Bの第2試薬を100μl添加し、37℃で加温し、第2試薬添加2分後と5分後に精製水を対照に、340nmの吸光度を測定した。
得られた吸光度をもとに、あらかじめ標準液を用いて作成した検量線からクレアチニン濃度を求めた。吸光度よりクレアチニン濃度を求める計算式は、以下の通りである。
【0032】
△ABS=(B2 −B5 )/3−(A2 −A4 )/2
B2 :第2試薬添加2分後の吸光度 A2 :第一試薬添加2分後の吸光度
B5 :第二試薬添加5分後の吸光度 A4 :第一試薬添加5分後の吸光度
クレアチニン濃度=(S−BL)/(STD−BL)×5.0
BL:精製水の△ABS 5.0:標準液のクレアチニン濃度
STD:標準液の△ABS
S:試料の△ABS
その結果を表1に示す。表中の数字の単位はmg/dlである。
【0033】
【表1】
Figure 0004016296
【0034】
表1から明らかなように、アンモニア濃度が高いサンプルにおいても、試薬Bはその影響を回避することができる。
【0035】
実施例2 血清中の尿素窒素の測定
下記試薬Cおよび試薬Dを調製した。
試薬C(比較例):
(第1試薬)
グルタミン酸脱水素酵素 6.0U/ml
α−ケトグルタル酸 3.0mM
NADPH 0.3mM
リン酸緩衝液 0.1M
(第2試薬)
ウレアーゼ 30 U/ml
グルタミン酸脱水素酵素 14 U/ml
リン酸緩衝液 0.1M
試薬D(本発明):
(第1試薬)
ロイシン脱水素酵素 6.0U/ml
α−ケトイソヘキサン酸 3.0mM
NADH 0.3mM
リン酸緩衝液 0.1M
(第2試薬)
ウレアーゼ 30 U/ml
ロイシン脱水素酵素 14 U/ml
リン酸緩衝液 0.1M
サンプルとしては実施例1と同じサンプルを使用した。
【0036】
各サンプル3μlに試薬Cまたは試薬Dの第1試薬を300μl添加し、37℃で加温し、第1試薬添加2分後と4分後に精製水を対照に、340nmの吸光度を測定した。さらに試薬Cまたは試薬Dの第2試薬を100μl添加し、37℃で加温し、第2試薬添加2分後と5分後に精製水を対照に340nmの吸光度を測定した。得られた吸光度をもとに、あらかじめ標準液を用いて作成した検量線から尿素窒素濃度を求めた。
吸光度より尿素窒素濃度を求める計算式は以下の通りである。
△ABS=(B2 −B5 )/3−(A2 −A4 )/2
B2 :第二試薬添加2分後の吸光度 A2 :第一試薬添加2分後の吸光度
B5 :第二試薬添加5分後の吸光度 A4 :第一試薬添加5分後の吸光度
尿素窒素濃度=(S−BL)/(STD−BL)×50
BL:精製水の△ABS 50:標準液の尿素窒素濃度
STD:標準液の△ABS
S:試料の△ABS
その結果を表2に示す。表中の数字の単位はmg/dl である。
【0037】
【表2】
Figure 0004016296
【0038】
表2から明らかなように、アンモニア濃度が高いサンプルにおいても、試薬Dはその影響を回避することができる。
【0039】
実施例3 血清中のクレアチンの測定
下記試薬Eおよび試薬Fを調製した。
試薬E(比較例):
(第1試薬)
グルタミン酸脱水素酵素 6U/ml
α−ケトグルタル酸 3mM
ウレアーゼ 20U/ml
NADPH 0.3mM
TES緩衝液 50mM
(第2試薬)
クレアチンアミジノヒドロラーゼ 300U/ml
グルタミン酸脱水素酵素 14U/ml
TES緩衝液 50mM
試薬F(本発明):
(第1試薬)
ロイシン脱水素酵素 6U/ml
α−ケトイソヘキサン酸 3mM
ウレアーゼ 20U/ml
NADH 0.3mM
TES緩衝液 50mM
(第2試薬)
クレアチンアミジノヒドロラーゼ 300U/ml
ロイシン脱水素酵素 14U/ml
TES緩衝液 50mM
サンプルとしては実施例1と同じサンプルを使用した。
【0040】
サンプル5μlに試薬Eまたは試薬Fの第1試薬を300μl添加し、37℃で加温し、第1試薬添加2分後と4分後に精製水を対照に、340nmの吸光度を測定した。さらに試薬EまたはFの第2試薬を100μl添加し、37℃で加温し、第2試薬添加2分後と5分後に精製水を対照に340nmの吸光度を測定した。得られた吸光度をもとに、あらかじめ標準液を用いて作成した検量線からクレアチン濃度を求めた。
吸光度よりクレアチン濃度を求める計算式は以下の通りである。
△ABS=(B2 −B5 )/3−(A2 −A4 )/2
B2 :第二試薬添加2分後の吸光度 A2 :第一試薬添加2分後の吸光度
B5 :第二試薬添加5分後の吸光度 A4 :第一試薬添加5分後の吸光度
尿素窒素濃度=(S−BL)/(STD−BL)×5.0
BL:精製水の△ABS 5.0:標準液のクレアチン濃度
STD:標準液の△ABS
S:試料の△ABS
その結果を表3に示す。表中の数値の単位はmg/dlである。
【0041】
【表3】
Figure 0004016296
【0042】
表3から明らかなように、アンモニア濃度が高いサンプルにおいても、試薬Fはその影響を回避することができる。

Claims (17)

  1. 試料中の生体成分または該生体成分に由来する物質に、生体成分またはそれに由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素を作用させ、生成したアンモニアを測定することにより生体成分を測定する方法において、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを使用し、ダブルカイネテイック法により、内因性または外因性アンモニアの干渉を回避することを特徴とする生体成分測定方法。
  2. 試料にアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含む第1試薬を作用させ、得られる吸光度の減少速度を測定し、次いで試料中の生体成分に作用し、アンモニアを生成する酵素を含む第2試薬を作用させて吸光度の減少速度を測定し、後者から前者を差し引くことにより、試料中の生体成分を測定することを特徴とする生体成分測定方法。
  3. 試料にアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、NAD(P)Hおよび試料中の生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素を含む第1試薬を作用させ、得られる吸光度の減少速度を測定し、次いで試料中の生体成分に作用して、該成分に由来する前記物質を生成する酵素を含む第2試薬を作用させて吸光度の減少速度を測定し、後者から前者を差し引くことにより、試料中の生体成分または該生体成分に由来する物質を測定することを特徴とする生体成分測定方法。
  4. 生体成分がクレアチニンであり、該生体成分に作用し、アンモニアを生成する酵素がクレアチニンデイミナーゼである請求項1または2に記載の生体成分測定方法。
  5. 生体成分が尿素であり、該生体成分に作用し、アンモニアを生成する酵素がウレアーゼである請求項1または2に記載の生体成分測定方法。
  6. 生体成分がクレアチンであり、該生体成分に作用して、該成分に由来する物質を生成する酵素がクレアチンアミジノヒドロラーゼであり、該成分に由来する物質が尿素であり、該成分に作用し、アンモニアを生成する酵素がウレアーゼである請求項1または3に記載の生体成分測定方法。
  7. アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素が好熱菌由来の酵素である請求項1〜6のいずれかに記載の生体成分測定方法。
  8. 好熱菌由来バチルス由来のロイシン脱水素酵素が、バチルス・ステアロサーモフィルス由来のロイシン脱水素酵素である請求項7に記載の生体成分測定方法。
  9. 好熱菌由来ロイシン脱水素酵素の基質が、2−オキソイソ吉草酸(α−ケトイソペンタン酸)、2−オキソイソカプロン酸(α−ケトイソヘキサン酸)、2−オキソ吉草酸(α−ケトペンタン酸)、2−オキソ酪酸(α−ケトブタン酸)、2−オキソカプロン酸(α−ケトヘキサン酸)ある請求項8記載の生体成分測定方法。
  10. 生体成分または生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNAD(P)Hを含むことを特徴とする生体成分測定用試薬組成物。
  11. 第1試薬にアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNADHを含み、第2試薬に生体成分または生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素およびアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHを含むことを特徴とする生体成分測定用試薬組成物。
  12. 第1試薬に生体成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素およびアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質およびNADHを含み、第2試薬に直接、生体成分に作用して、該成分に由来する前記物質を生成する酵素およびアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHを含むことを特徴とする生体成分測定用試薬組成物。
  13. 生体成分または該成分に由来する物質に作用し、アンモニアを生成する酵素が、ウレアーゼまたはクレアチニンデイミナーゼである請求項11または12記載の生体成分測定用試薬組成物。
  14. 第1試薬アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、NADHおよび緩衝液を含み、第2試薬がクレアチニンデイミナーゼ、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHおよび緩衝液を含むクレアチニン測定用試薬組成物。
  15. 第1試薬アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、NADHおよび緩衝液を含み、第2試薬がウレアーゼ、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHおよび緩衝液を含む尿素測定用試薬組成物。
  16. 第1試薬がアンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素、該脱水素酵素の基質、ウレアーゼ、NADHおよび緩衝液を含み、第2試薬がクレアチンアミジノヒドロラーゼ、アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素および必要により該脱水素酵素の基質またはNADHおよび緩衝液を含むクレアチン測定用試薬組成物。
  17. アンモニアに対するKm値が少なくとも5mMであるバチルス由来のロイシン脱水素酵素が好熱菌由来の酵素である請求項10〜16のいずれかに記載の生体成分測定用試薬組成物。
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