JP4015829B2 - 高強度・高脱硝性能を有する活性炭の製造方法 - Google Patents

高強度・高脱硝性能を有する活性炭の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製鉄所の焼結排ガスの処理装置などに用いられる強度、脱硝性能、脱硫性能に優れた活性炭の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から製鉄所では、原料となる鉄鉱石やコークス等を粉砕混合し、適度のサイズの粒子としたうえ焼結機で焼結して高炉に投入しているが、この焼結機からはNOXとSOXを含む焼結排ガスが発生する。この焼結排ガスは90〜120℃程度の温度で、150ppm程度のNOXと120ppm程度のSOXを含むものである。そこで従来からこの焼結排ガスを浄化処理するために、活性炭が充填された吸着塔を備えた排ガス処理装置が用いられている。
【0003】
図4は従来から用いられている焼結排ガスの処理装置であり、焼結排ガスは内部に直径10mm、長さ15mm程度のサイズの活性炭が充填された吸着塔1に送られる。焼結排ガス中のSOXはH2SO4の形となって活性炭の表面に吸着される。また焼結排ガス中のNOXは、活性炭の触媒作用によりN2ガスにまで還元分解される。このようにしてNOXとSOXが除去された焼結排ガスは、大気中に放出される。
【0004】
一方、吸着塔1内に充填されている活性炭は徐々に下方に移動されて塔下端部から外部に抜き出され、移動中に破砕された微粉を分級器2で除去する。このように分級器2において微粉を除去するのは、1mm以下に破壊された活性炭は吸着塔1内における焼結排ガスの通気抵抗を増加させ、吸着塔1を運転不能とするおそれがあるためである。分級器2で微粉を除去された活性炭は、脱離塔3に送られて400℃程度に加熱され、吸着していたH2SO4を脱離再生させる。再生された活性炭はその後ふたたび吸着塔1に送られ、最終的に分級器2で除去されるまでこのサイクルを繰り返す。
【0005】
ところがこのような従来技術においては、活性炭による脱硫率は容易に99%程度に達するにもかかわらず、前記した90〜120℃程度の温度範囲における脱硝率は、40%程度の低いレベルにとどまるという問題があった。そこでこの問題を解決するために、本発明者等は焼結排ガスにアンモニアを添加して脱硝反応を生じさせる技術を開発中である。すなわち吸着塔1でアンモニアを添加すると、90〜120℃程度の高温条件下で活性炭が触媒として作用し、NO+NH3+O2→N2+H2Oの反応が生じて脱硝を進行させることが可能となる。
【0006】
しかし、この反応により確かに脱硝率は向上するものの、アンモニアを添加することにより気相中SOX、あるいは再生活性炭中のH2SO4と反応し硫安結晶が形成され、体積膨張を起こすため活性炭の強度が低下して粉化しやすくなり、分級器2において除去される割合(粉化率)が増加するという別の問題が発生した。分級器2において除去された分の活性炭は新たに外部から補充しなければならないが、活性炭の価格は非常に高価であるうえ吸着塔1内に充填されている総トン数も多いため、活性炭の粉化率の増加はランニングコストを著しく増加させる原因となる。このように、現状では脱硝率を高めるためにアンモニア添加量を増加させると強度が低下して粉化率が高まるという矛盾に陥っており、高強度と高脱硝性能を同時に満足させることはできなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決して、焼結排ガスの脱硝率を従来の40%程度から90%以上にまで飛躍的に高めることができ、しかも前記した吸着塔と脱離塔との間を循環させてもほとんど粉化することのない高強度・高脱硝性能を有する活性炭の製造方法及びこの方法により製造された活性炭を提供するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の高強度・高脱硝性能を有する活性炭の製造方法は、石炭粉を原料としたペレットを予備焼成して細孔を持つ活性炭とし、製鉄所の焼結排ガス中のNO とSO を吸着する吸着塔と、微粉化した活性炭を分離除去する分級器と、吸着物の脱離塔との間を循環させながら、吸着塔において、焼結排ガス中のSO 2 濃度の1 . 1倍〜1 . 5倍のアンモニア濃度となるように焼結排ガスにアンモニアを添加した賦活ガスに接触させて表面に官能基を形成し、この循環を24サイクル以上繰り返すことにより官能基を成長させ、官能基の量を表わす揮発成分量が8 . 5%以上の活性炭を得ることを特徴とするものである。
【0009】
上記のように、本発明は製鉄所の焼結排ガスにアンモニアを添加したガスを賦活ガスとして、活性炭の脱硝性能を向上させる点に著しい特徴があり、活性炭メーカーにおいて賦活処理済みの活性炭をそのまま吸着塔に充填していた従来技術とこの点において全く相違するものである。
【0010】
本発明においては、石炭粉を原料としてペレット状に成形し、予備焼成した活性炭を、図1に示される吸着塔1の中に充填し、焼結機から排出される90〜120℃の焼結排ガスと接触させて賦活処理するのであるが、この焼結排ガス中にあらかじめ適度のアンモニアを添加しておく。焼結排ガスに添加するアンモニア濃度は、焼結排ガス中のSO2濃度の1.1倍〜1.5倍とすることが好ましい。
【0011】
この結果、炭素とアンモニアとが反応して脱硝能力を持つカルボキシル基(-COOH),フェノール基性水酸基(-OH)等にNH3ガスが吸着した酸性官能基が活性炭の表面に次第に形成されて行き、活性炭の脱硝率がしだいに増加して行く。投入された活性炭は従来と同様に吸着塔1の下端部から徐々に引き出され、分級器2で3mm以下の微粉を取り除いたうえ脱離塔3で硫酸を脱離し、再び吸着塔1に戻るサイクルを繰り返す。図2はサイクル数と脱硝率との関係を示すグラフであり、投入時の活性炭の脱硝率は25〜30%程度であるが、サイクル数が増加すると脱硝率は次第に増加して行き、48サイクルでは95%という従来にない高い脱硝率を示す。これはサイクルを経る間に次第に官能基が成長するためである。
【0012】
なお、官能基の量は活性炭中の揮発成分量として測定することができる。図3のグラフに示すように、揮発成分量が3%程度の初期状態では脱硝率は25〜30%程度であるが、揮発成分量が8.5%以上のレベルに達すると脱硝率は80%を超える。このため本発明では揮発成分量を8.5%以上と規定した。なお焼結排ガスに添加するアンモニア濃度が焼結排ガス中のSO2濃度の1.1倍未満であると官能基が十分に成長せず、従って脱硝率の向上も揮発成分量の増加も不十分となるので好ましくない。
【0013】
一方、前記したようにアンモニアの添加によって活性炭の強度が低下して粉化率が増加するおそれがあるが、その原因を究明した結果、アンモニアの添加量に関係することが判明した。すなわちアンモニアの添加により活性炭が破壊されるのは、添加されたアンモニアが焼結排ガス中のSOXと反応して(NH32SO4が生成され、これが活性炭の表面で結晶化する際に細孔を押し広げて活性炭を破壊するのである。
【0014】
従って、アンモニアの添加量を焼結排ガス中のSO2濃度を考慮して調整すれば、粉化率の増加を抑制することができる。具体的には、アンモニアの添加量を焼結排ガス中のSO2濃度の1.1倍〜1.5倍とすることが好ましく、1.5倍を超えると次第に粉化率の増加傾向が生ずる。なお、本発明では活性炭の原料を石炭としているが、椰子殻を原料とする一般的な活性炭は強度が低いため、数十サイクルを経過させるまでに破砕される可能性があり、サイクル数の増加とともに脱硝率を高めて行く本発明には不適当である。
【0015】
以上に説明したように、本発明の活性炭の製造方法によれば、焼結排ガスにアンモニアを添加したガスを賦活ガスとすることにより、活性炭の脱硝率を従来レベルよりもはるかに高めることができ、しかも、アンモニアの添加量を焼結排ガス中のSO2濃度を考慮して適切な範囲に設定することにより、高い強度を確保して粉化率を抑制することができる。
【0016】
本発明は、石炭から新たに製造された活性炭の脱硝率を高めるために利用することができるほか、他において使用されて活性の低下した活性炭を再処理するためにも使用することができる。この場合にも吸着塔1と脱離塔3との間を循環させることによって、脱硝率を90%程度まで高めることができる。
【0017】
また、本発明は製鉄所の焼結排ガスの処理装置などに用いられる強度、脱硝性能、脱硫性能に優れた活性炭の製造を目的としているため、脱硝率の高められた活性炭をそのままサイクルさせ続けることにより、外部からの新たな活性炭の補充をほとんど行うことなく焼結排ガスの処理を継続することができる。この場合には分級器2から排出されるまで循環サイクルが繰り返される。しかし上記したように活性炭を再処理する目的の場合には、サイクルの途中で外部に抜き出せばよい。再処理された活性炭は製鉄所の焼結排ガスの処理以外にも、さまざまな用途に利用できることはいうまでもない。
【0018】
【実施例】
石炭を粒度が0.1mm以下になるまで粉砕した石炭粉を直径が10mm、長さが15mmの円柱状ペレットに成形し、予備焼成して細孔を持つ活性炭とした。この活性炭を図1に示す接触塔内に充填し、製鉄所の焼結排ガスと接触させた。焼結排ガスの温度は100℃であり、150ppmのNOXと120ppmのSOXを含むものであった。この焼結排ガスにはSOX濃度の1.3倍に相当する150ppmのアンモニアを添加した。当初の活性炭は脱硫率は99%であるが、脱硝率は35%に過ぎなかった。
【0019】
接触塔の下部から引き出した活性炭を分級器を介して脱離塔に送り、400℃に加熱して吸着した硫酸を脱離させたのち再び接触塔に戻すサイクルを50サイクル繰り返したところ、脱硫率は99%と変わらないが、脱硝率は95%にまで大幅に上昇した。しかも従来一般に分級器で分離される粉化率は1.6〜4%であったが、本発明により製造された活性炭の粉化率は0.8%にとどまり、新しい活性炭の補充量を大幅に減少させることができた。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、焼結排ガスにアンモニアを添加したガスを賦活ガスとするという従来にない方法を採用したことにより、焼結排ガスの脱硝率を従来の40%程度から90%以上にまで飛躍的に高めることができ、しかも粉化率が従来品に比べてはるかに低い強度に優れた活性炭を製造することができる。本発明は新しい活性炭の賦活処理のみならず、使用済み活性炭のリサイクルにも適用することができる。また本発明は製鉄所の焼結排ガスの処理装置のための活性炭の製造を狙ったものであるが、製造された活性炭はその他一般的な用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】サイクル数と脱硝率との関係を示すグラフである。
【図3】活性炭中の揮発成分と脱硝率との関係を示すグラフである。
【図4】従来から用いられている焼結排ガスの処理装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 接触塔
2 分級器
3 脱離塔

Claims (1)

  1. 石炭粉を原料としたペレットを予備焼成して細孔を持つ活性炭とし、製鉄所の焼結排ガス中のNO とSO を吸着する吸着塔と、微粉化した活性炭を分離除去する分級器と、吸着物の脱離塔との間を循環させながら、吸着塔において、焼結排ガス中のSO 2 濃度の1 . 1倍〜1 . 5倍のアンモニア濃度となるように焼結排ガスにアンモニアを添加した賦活ガスに接触させて表面に官能基を形成し、この循環を24サイクル以上繰り返すことにより官能基を成長させ、官能基の量を表わす揮発成分量が8 . 5%以上の活性炭を得ることを特徴とする高強度・高脱硝性能を有する活性炭の製造方法。
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