JP4002503B2 - 石炭を原料とした吸着剤の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比表面積の小さな石炭を原料に用い、安価かつ簡便に吸着剤を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
比表面積が大きく、吸着性の強い炭材は、活性炭または活性コークスと呼ばれる。一般に、活性炭および活性コークスは、椰子殻や石炭等の炭素材料を400〜900℃で不活性ガス雰囲気中において炭化した後、900〜1100℃で水蒸気または二酸化炭素により賦活する工程により製造される。工業的な製造方法としては、例えば、石炭を直径1mm以下に粉砕し、流動乾留炉において350〜450℃で低温乾留した後、成型し、これを乾留炉において750〜850℃で高温乾留し、さらに賦活炉において920〜930℃で賦活を行う方法が行われる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、上記従来方法では、炭素材料を炭化した後に高温で乾留するため、製造工程が複雑で、かつ、炭化及び賦活工程に要する燃料費が多くなるという欠点がある。
【0004】
また、炭化及び賦活処理後の成型活性コークスの脱硝性能を向上する方法として、炭化及び賦活処理後の成型活性コークスに硫酸処理を行い、該活性コークス表面にフェノール性水酸基及びカルボキシル基を増加させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、該方法において、原料として用いられているものは、石炭から活性度の高い半成コークスを製造して、これを主原料量とし、これに副原料として数種の石炭を配合した混合炭に結合剤を加え成型原料とし、該成型原料のロガ指数を20〜30%の範囲になるように調整し、該成型原料を成型した成型物を低温乾留し、続いて高温乾留したコークスを賦活して得られる活性化した成型コークスであって、その比表面積は100〜400m/gの範囲にあるものである。この活性化した成型コークスに硫酸処理を施すことにより、該成型コークスのフェノール性水酸基やカルボキシル基などの活性基を増加させ、これにより脱硝能力を向上させるというものである。
【0006】
さらに、炭化及び賦活処理後の成型活性コークスを、乾燥雰囲気下で、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは150〜250℃の温度でSOガスと接触させて反応させた後、窒素雰囲気下に300〜600℃の温度で熱処理を行うことによる、脱硝性能の高い脱硫脱硝用成型活性コークスの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかし、該方法において原料として用いられているものは、粉砕した石炭を主原料とし、粘結剤を添加して成型し乾留・賦活するか、または、石炭を乾留して半成コークスとしたものを主原料とし、これを粉砕したものに副原料として石炭類及び粘結剤を加えて成型後再度乾留、賦活して得られる多孔質炭材であって、その比表面積は100〜300m/gの範囲にあるものである。この成型活性コークスにSOガスを接触することにより、該成型活性コークスの表面の含酸素官能基量を増加させ、これによりアンモニア吸着能及びNOの酸化活性を大幅に向上させるというものである。
【0008】
従って、上述のように、従来技術での活性炭および活性コークスの製造方法では、原料である成型活性コークスが高いことや、高温での乾留及び賦活等の工程を要するため、工程が複雑で燃料費もかかるといった、工程面及び経済面において種々の問題点があった。また、成型活性コークスに硫酸処理またはSOガス処理を施す方法は、比表面積の大きな成型活性コークスを原料に用い、これに前記処理を施すことによって、前記成型活性コークスの表面の官能基量を増加することを目的としたものである。
【0009】
【非特許文献1】
活性炭読本(日刊工業新聞社 1976年)頁128、図4.10
【0010】
【特許文献1】
特開昭58−122042号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平4−219308号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決すべく、炭素材料を炭化した後の高温での乾留、および賦活等の工程を必要とせず、簡単な工程で、原料費及び燃料消費を抑制した石炭からの吸着剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、石炭またはコークスに、硫酸またはSO含有ガスを吸着させた後、不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で加熱処理を行うと、下式(1)または(2)で示される炭素の酸化反応が起こり、前記石炭またはコークスに細孔が形成されることを見出した。
【0014】
【化1】
Figure 0004002503
【0015】
そして、上記知見に基づき更なる検討を重ねた結果、石炭またはコークスに、硫酸またはSO含有ガスを吸着させる処理と、吸着後の石炭またはコークスを加熱する処理を交互に繰り返すことにより、前記石炭またはコークスの比表面積が増加するとともに、細孔半径10nm以下の細孔形成が促進されることを見出した。
【0016】
本発明は、上記知見に基づくものであり、その要旨は、以下の通りである。
(1) アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および遷移金属化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類を石炭に添加して、コークス炉で乾留して得られたコークスに、下記(A)および(B)の操作を交互に繰り返し行い、前記金属化合物添加により前記コークスの比表面積増大作用を促進してなることを特徴とする石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
(A)前記コークスを硫酸水溶液に浸漬した後、
(B)記コークスを不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で加熱処理する。
(2) アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および遷移金属化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類を石炭に添加して、コークス炉で乾留して得られたコークスに、下記(A)および(B)の操作を交互に繰り返し行い、前記金属化合物添加により前記コークスの比表面積増大作用を促進してなることを特徴とする石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
(A) 前記コークスをSO含有ガスまたはSOと酸素を含有するガスに接触させた後、
(B)記コークスを不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で加熱処理する。
(3) アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および遷移金属化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類を石炭に添加して、コークス炉で乾留して得られたコークスに、吸着塔と再生塔を有する活性コークス排煙脱硫設備を使用し、下記(A)および(B)の操作を繰り返し行い、前記金属化合物添加により前記コークスの比表面積増大作用を促進してなることを特徴とする石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
(A) 前記設備の吸着塔において、前記コークスに排ガス中のSO2を吸着させた後、
(B) 前記設備の再生塔において、前記コークスを不活性ガスまたは、燃焼排ガス雰囲気中で加熱し、吸着したSOを脱離させる。
(4) 前記アルカリ金属化合物がNa化合物であり、前記アルカリ土類金属化合物がMg化合物又はCa化合物であり、前記遷移金属化合物がFe化合物又はMn化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明に用いる石炭とは、褐炭、瀝青炭、無煙炭等が挙げられる。ここで、賦活処理を行い比表面積を拡大した活性炭、活性コークスは、本発明の石炭を乾留して得られたコークスに含まない。また、本発明に用いる石炭を乾留して得られたコークスは、比表面積が0.01〜10m/gが好ましく、0.01m/g未満では細孔の形成が困難となり、10m/g超では硫酸処理またはSO含有ガス処理の効果が少なくなる。
【0019】
本発明では、さらに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物の少なくとも1種類を石炭に添加した後、コークス炉で炉温1100〜1500℃、乾留時間10〜30時間で乾留して得られたコークスを使用することにより、硫酸処理またはSO含有ガス処理の効率が飛躍的に向上する。乾留条件が、前記温度範囲および時間範囲以外の場合は、処理効率が向上せず好ましくない。また、これらを混合して用いることにより、硫酸処理またはSO含有ガス処理の効率をより向上させることが可能である。
【0020】
ここで、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、遷移金属化合物は、上記処理において細孔形成の核となるだけでなく、触媒作用により炭素の酸化反応を促進して細孔形成を促進する。
【0021】
アルカリ金属とは周期律表1族に属するLi、Na、K、Rb、Cs、Frの総称であり、アルカリ金属の化合物とは、アルカリ金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、塩(例えばハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩など)、複塩などである。
【0022】
アルカリ土類金属の化合物とは、アルカリ土類金属(周期律表2族に属するBe、Mg、Ca、Sr、Ba)の水酸化物、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、塩(例えばハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩など)、複塩などである。代表的なものとしては、生石灰、石灰石があるが、これらは製鉄プロセスにおいて従来より工業的に利用されているため、容易かつ安価に入手することができ、自然界に豊富な資源を用いることができる。
【0023】
遷移金属とは、不完全に満たされたd殻をもつ原子またはそのような陽イオンを生ずる元素であり、周期律表の3族から11族までの元素(Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Tc、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Agなど)であり、遷移金属化合物とは、これら遷移金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、塩(例えばハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩など)、複塩などである。遷移金属と遷移金属化合物の混合物とは、上記の遷移金属と遷移金属化合物をそれぞれ1種類以上含む混合物のことである。遷移金属化合物の混合物とは、上記の遷移金属化合物を2種類以上含む混合物のことである。
【0024】
代表的な遷移金属としては、鉄があるが、製鉄プロセスにおいては、資源として再利用するには劣質な、鉄粉、鉄酸化物や、鉄粉、鉄酸化物を含むスラリーを容易かつ安価に入手することができるというメリットがある。
【0025】
ここで、前記金属化合物の配合割合は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましい。配合割合が0.1質量%未満の場合、金属化合物添加の効果が少なく、20質量%超の場合、コークスの強度が大きく低下する。また、金属化合物の粒度は、10μm以上5mm以下が好ましい。粒度が10μm未満の場合、石炭に配合して乾留するためには、粉体としての工業的なハンドリングが困難であり、粒度が5mm超の場合、コークス中への分散が不十分で、金属化合物添加の効果が少ない。
【0026】
本発明に用いる前記金属化合物が添加された石炭を乾留して得られるコークスの粒径(直径)は、5〜20mmに調整される。5mm未満の場合、ガス吸着装置で使用する場合には圧力損失が大きくなり過ぎ、一方、20mm超の場合、直径が大きすぎるため内部までの十分な硫酸処理が困難となり好ましくない。
【0027】
本発明の硫酸処理について説明する。まず、前記金属化合物が添加された石炭を乾留して得られるコークスを硫酸水溶液中に浸漬する。前記炭材と硫酸水溶液との比は、基本的には、炭材が浸漬できるだけの量があればよく、質量比で1以上が好ましい。前記硫酸水溶液の濃度は、1〜96質量%が好ましい。硫酸水溶液濃度が1質量%未満の場合、処理時間が長くなり経済的ではなく、一方、硫酸水溶液濃度が96質量%超の場合、硫酸濃度が高すぎ、前記コークスの細粒化が進行するため好ましくない。前記コークスと、硫酸水溶液とのなじみが悪い場合には、硫酸水溶液中にアルコールを適量添加する。前記アルコールとしては、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール等が挙げられる。また、添加量としては、0.1〜10質量%程度が好ましい。0.1質量%未満の場合、アルコールと炭材の間の濡れ性は改善せず、一方、10質量%超の場合、炭材表面へのアルコールの吸着が無視できなくなり、硫酸の吸着量が低下するため好ましくない。
【0028】
前記硫酸水溶液中への浸漬時間は、1〜60分が好ましい。浸漬時間が1分未満では、硫酸が十分に炭材に浸透せず、処理が不十分になる。一方、60分超では、処理時間が長くなり、経済的でない。浸漬方法は、硫酸水溶液流通式、バッチ式のどちらも可能であるが、補助手段として攪拌や超音波洗浄を併用することで硫酸の吸着性能が向上する。
【0029】
硫酸水溶液の液温範囲は、20〜190℃が好ましい。20℃未満では、硫酸と炭材表面の反応速度が低下し、反応時間が長くなり、経済的でない。190℃超では、反応速度が上がりすぎ、コークスの細粒化が進行する。
【0030】
ークスの質量に対する水溶液中の硫酸質量比は、0.01〜1になるように調整することが好ましい。質量比が0.01未満では、硫酸と炭材表面の反応速度が低下し、反応時間が長くなり、経済的でない。質量比が1超では、反応速度が上がりすぎ、コークスの細粒化が進行する。
【0031】
前記硫酸処理を行った後、コークスと、硫酸水溶液とを分離し、乾燥させた後、不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で後述の加熱処理を行う。
【0032】
ークスと、硫酸水溶液との分離は、コークスに付着している硫酸水溶液を厳密に取り除く必要が無いため、例えば、前記硫酸処理時に、予めコークスを水きり容器(例えば硫酸水溶液中で非腐食性のカゴ等)に入れ、硫酸水溶液に浸漬し、所定時間後に水きり容器ごと取り出す方法で容易に硫酸水溶液との分離が可能である。また、硫酸付着量制御や硫酸水溶液の回収の観点からは、遠心分離等の強制的方法が望ましい。
【0033】
乾燥の目的は、硫酸水溶液分離後にコークスに付着している硫酸水溶液の水分を除去することであるため、乾燥温度は100〜150℃が好ましい。100℃未満では、水分が十分に除去しきれず、150℃超では、コークスの酸化蓄熱による燃焼の危険がある。また、遠心分離器等で強制的に硫酸水溶液を分離した場合、乾燥の工程は特に必要は無い。
【0034】
本発明においては、上述の硫酸処理と加熱処理とを交互に、1回以上繰り返すことにより、コークスの比表面積の増加と細孔形成を促進し、所定の比表面積および細孔径の活性炭または活性コークスを得ることができる。
【0035】
前記繰り返し回数は、3〜20回程度が好ましい。より好ましくは5〜10回である。20回超では、工業的になりたたず、また、3回未満であれば、細孔形成が十分でない。また、繰り返し回数と比表面積及び平均細孔径との関係のイメージを図1に示す。繰り返し回数の増加とともに比表面積は増大し、平均細孔径は縮小する。これは硫酸処理により微細細孔が増加することを示す。前記硫酸処理と加熱処理とを交互に行ったコークスは、比表面積が50m/g以上、または、平均細孔径が0.5〜5nmであれば、吸着剤として好適に用いることができる。
【0036】
次に、本発明のSO処理について説明する。まず、コークスをSO含有ガス雰囲気またはSOと酸素の混合ガス雰囲気中に暴露し、前記ガス成分を吸着させる。SO含有ガス中のSOガス濃度は、100体積ppm〜100体積%が好ましい。SOガス濃度が100体積ppm未満の場合、吸着量が少なく、処理が不十分となるために好ましくない。また、SOと酸素の混合ガス濃度は、SO濃度は100体積ppm〜10体積%が好ましく、酸素濃度はSOをSOに完全に酸化するために、SO濃度の10倍量(体積比)以上が好ましい。SO濃度が100体積ppm未満の場合、吸着量が少なく、処理が不十分となる。SO濃度が10体積%超の場合、SOをSOに酸化する酸素量が十分でなく、効率が低下する。
【0037】
吸着方法は、コークスまたはこれらの混合物を充填した容器にガスを流通させる方法や、ガスを封入する方法が考えられる。吸着現象が発熱反応であるため、低温で処理する方が吸着量が増加し、効率的な処理が行われるため、吸着温度は100〜200℃が好ましい。100℃未満の場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなり、経済的でない。200℃超では、反応速度が上がりすぎ、コークスの消耗が大きくなる。吸着処理時間は、SV(hr−1)と、SOまたはSOの濃度(体積比、単位:無次元)、及び処理時間の積が、30以上になるように設定することが好ましい。ここで、SVとは空間速度で、ガス体積流量を処理層容積で割った値である。例えば、SV:3000hr−1、SO濃度1体積%(体積比:0.01)の場合、処理時間は、30÷3000÷0.01=1時間以上となる。
【0038】
ークスに、上述の硫酸処理またはSO処理を行った後、不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で加熱処理を行う。前記不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。また、前記弱酸化性ガスとしては、二酸化炭素または燃焼排ガスを用いる。二酸化炭素は、純ガスまたは、不活性ガスとの混合で使用するが、不活性ガスと混合する場合はその濃度は問わない。燃焼排ガスは、気体燃料、液体燃料、固体燃料いずれの燃料を燃焼した場合の排ガスでも構わないが、酸化による異常発熱を抑制するために燃焼排ガス中の酸素濃度を10体積%以下に制御することが好ましい。
【0039】
前記炭材から脱離したSOを炭材周辺から除去するため、ガスは連続的に流通させる。加熱処理温度は、吸着したSOを前記炭材から脱離させるため、300℃以上500℃以下が好ましい。300℃未満では、吸着したSOの脱離が不十分となるため好ましくなく、一方、500℃超では脱離温度的には問題無いものの、経済的でない。加熱時間は、1〜8時間が好ましい。1時間未満では、吸着したSOの脱離が不十分となるため好ましくなく、一方、8時間超では脱離時間的には問題無いものの、経済的でない。
【0040】
本発明においては、上述のSO処理と加熱処理とを交互に、1回以上繰り返すことにより、ークスの比表面積の増加と細孔形成を促進し、所定の比表面積および細孔径の活性炭または活性コークスを得ることができる。
【0041】
前記繰り返し回数は、3〜20回程度が好ましい。より好ましくは5〜10回程度である。20回超では、工業的になりたたず、また、3回未満であれば、細孔形成が十分でない。繰り返し回数と比表面積及び平均細孔径との関係は、図1のような、硫酸処理を行った場合と同様の傾向を示す。前記SO処理と加熱処理とを交互に行ったコークスは、比表面積が50m/g以上、または、平均細孔径が0.5〜5nmであれば、吸着剤として好適に用いることができる。
【0042】
本発明のSO処理および加熱処理は、活性コークス排煙脱硫設備を用いて行うことが可能である。図2に一般的な活性コークス排煙脱硫設備の概略を示す。活性コークス排煙脱硫設備は、吸着塔1と再生塔2からなり、吸着塔1において、活性コークスにより100〜200℃の排ガス中のSOを吸着し、再生塔2において、前記活性コークスを不活性ガスまたは燃焼排ガス雰囲気中で350〜500℃に加熱し、吸着したSOを脱離させ、活性コークスを再生する。吸着塔1と再生塔2の間で活性コークスを循環させることで、連続的にSOの除去を行う。活性コークスの滞留時間は、種々の条件により異なるが、概ね吸着塔で20〜100時間、再生塔で2〜10時間である。
【0043】
本発明においては、前記設備に前記金属化合物が添加された石炭を乾留して得られるコークスを装入し、上記の排煙脱硫操作を実施し、SO吸着と加熱処理を交互に繰り返すことにより、活性コークスに相当する吸着剤を得ることができ、そのまま本設備で吸着剤として使用することができる。
【0044】
前記繰り返し回数は、10回以上が好ましい。より好ましくは15回以上である。10回未満であれば、細孔形成が十分でない。脱硫設備を使用する場合、製造した吸着剤をそのまま本設備で使用するため、特に上限の制限は無い。繰り返し回数と比表面積及び平均細孔径との関係は、図1に示すような、硫酸処理を行った場合と同様の傾向を示す。前記排煙脱硫設備を用いてSO処理と加熱処理とを交互に行ったコークスは、比表面積が50m/g以上、または、平均細孔径が0.5〜5nmであれば、吸着剤として好適に用いることができる。
【0045】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、実施例で用いた諸条件に限定されるものではない。
参考例1)
炭材(瀝青炭、無煙炭、高炉用コークス、石油コークス)を粒度5〜10mmに調整し、目開きが3mmのカゴに充填し、液温50℃の96質量%硫酸水溶液に1時間浸漬した。前記硫酸水溶液の量は、質量比で炭材の10倍使用した。
【0046】
浸漬後、硫酸水溶液と炭材を遠心分離し、400℃、窒素気流中で8時間熱処理を行った。硫酸処理−熱処理の繰り返し回数と炭材の比表面積の関係を表1に示す。ここで比表面積とは、窒素吸着等温線より算出したBET比表面積である。
【0047】
【表1】
Figure 0004002503
【0048】
硫酸処理と熱処理を行うことにより、処理前と比較して比表面積が増大し、処理回数の増加に従って比表面積も増加する。さらに、比表面積の増大とともに、細孔半径についても、半径数10nmの細孔が減少し、半径数nmの細孔が増加傾向にあることを確認した。
【0049】
次に、各炭材の5回処理品を用いてSOの吸着実験を行った。実験条件は、SV:1000hr−1、ガス温度100℃、SO:200体積ppm、酸素:10%、残り窒素である。実験開始から1時間までの平均吸着率は、いずれの試料も80%以上あり、SOを吸着できることを確認した。
参考例2)
炭材(瀝青炭、無煙炭、高炉用コークス、石油コークス)を粒度5〜10mmに調整し、室温でSOガス(濃度1体積%、残り窒素)と1時間接触させた後、400℃、窒素気流中で8時間熱処理を行った。SO処理−熱処理の繰り返し回数と比表面積の関係を表2に示す。ここで比表面積とは、窒素吸着等温線より算出したBET比表面積である。
【0050】
【表2】
Figure 0004002503
【0051】
SO処理と熱処理を行うことにより、処理前と比較して比表面積が増大し、処理回数の増加に従って比表面積も増加する。さらに、比表面積の増大とともに、細孔半径についても、半径数10nmの細孔が減少し、半径数nmの細孔が増加傾向にあることを確認した。
【0052】
次に、各炭材の5回処理品をもちいてSOの吸着実験を行った。実験条件は、SV:1000hr−1、ガス温度100℃、SO:200体積ppm、酸素:10%、残り窒素である。実験開始から1時間までの平均吸着率は、いずれの試料も80%以上あり、SOを吸着できることを確認した。
参考例3)
焼結排ガス用の活性コークス排煙脱硫試験設備に高炉用コークスを充填して、SO吸着と加熱再生の排煙脱硫操作を行った。吸着条件は、排ガス温度120℃、SO:200体積ppm、酸素:15体積%、吸着時間:20時間である。加熱再生条件は、窒素雰囲気、400℃、加熱時間:8時間である。5回、10回、15回、20回循環でコークスを一部抜き出し、比表面積を測定した。循環回数と比表面積の関係を表3に示す。
【0053】
【表3】
Figure 0004002503
【0054】
排煙脱硫設備を用いて、循環処理を実施することにより比表面積を増大させることができた。さらに、比表面積の増大とともに、細孔半径についても、半径数nmの細孔が増加傾向にあることを確認した。
【0055】
また、各炭材のSOの吸着実験を行ったところ、脱硫率も循環回数の増加とともに向上することを確認した。
(実施例
炉幅425mm、炉高400mm、炉長600mmの試験コークス炉を用い、粘結炭65質量%、非微粘結炭35質量%の配合炭に、表4に示す添加物(配合割合5質量%、粒度150μm以下)を添加し、装入密度0.83dry−t/mの装入密度で装入し、炉温1250℃、乾留時間18.5時間の条件で乾留し、試験用コークスを作成した。
【0056】
作成したコークスを粒度5〜10mmに調整し、目開きが3mmのカゴに充填し、液温50℃の96質量%硫酸水溶液に1時間浸漬した。前記硫酸水溶液の量は、質量比で炭材の10倍使用した。
【0057】
浸漬後、硫酸水溶液と炭材を遠心分離し、400℃、窒素気流中で8時間熱処理を行った。硫酸処理−熱処理の繰り返し回数と炭材の比表面積の関係を表4に示す。
【0058】
【表4】
Figure 0004002503
【0059】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の化合物を添加することにより硫酸処理による比表面積増大効果が促進される。
【0060】
次に、各コークスの5回処理品をもちいてSOの吸着実験を行った。実験条件は、SV:1000hr−1、ガス温度100℃、SO:200体積ppm、酸素:10%、残り窒素である。実験開始から1時間までの平均吸着率は、金属化合物無添加の80%に対して、金属化合物添加コークスでは、すべて90%以上となり、金属化合物添加でSO吸着性能が向上することを確認した。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、炭素材料を炭化した後の高温での乾留、および賦活等の工程を必要とせず、簡単な工程で、原料費及び燃料消費を抑制した石炭を原料とした吸着剤の製造方法を提供することが可能であり、さらに、活性コークス排煙脱硫設備を用いて行うことが可能であることから、工業的な有用性は高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】繰り返し回数と比表面積、平均細孔半径の関係のイメージを示す図である。
【図2】活性コークスを用いた排煙脱硫設備の概要を示す図である。
【符号の説明】
1…吸着塔
2…再生塔

Claims (4)

  1. アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および遷移金属化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類を石炭に添加して、コークス炉で乾留して得られたコークスに、
    下記(1)および(2)の操作を交互に繰り返し行い、前記金属化合物添加により前記コークスの比表面積増大作用を促進してなることを特徴とする石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
    (1)前記コークスを硫酸水溶液に浸漬した後、
    (2)前記コークスを不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で加熱処理する。
  2. アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および遷移金属化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類を石炭に添加して、コークス炉で乾留して得られたコークスに、
    下記(1)および(2)の操作を交互に繰り返し行い、前記金属化合物添加により前記コークスの比表面積増大作用を促進してなることを特徴とする石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
    (1)前記コークスをSO含有ガスまたはSOと酸素を含有するガスに接触させた後、
    (2)前記コークスを不活性ガスまたは弱酸化性ガスの雰囲気下で加熱処理する。
  3. アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物および遷移金属化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種類を石炭に添加して、コークス炉で乾留して得られたコークスに、
    吸着塔と再生塔を有する活性コークス排煙脱硫設備を使用し、下記(1)および(2)の操作を繰り返し行い、前記金属化合物添加により前記コークスの比表面積増大作用を促進してなることを特徴とする石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
    (1)前記設備の吸着塔において、前記コークスに排ガス中のSOを吸着させた後、
    (2)前記設備の再生塔において、前記コークスを不活性ガスまたは、燃焼排ガス雰囲気中で加熱し、吸着したSOを脱離させる。
  4. 前記アルカリ金属化合物がNa化合物であり、前記アルカリ土類金属化合物がMg化合物又はCa化合物であり、前記遷移金属化合物がFe化合物又はMn化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の石炭を原料とした吸着剤の製造方法。
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