JP4014822B2 - タイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、回転しているタイヤが発生する力のばらつきを測定するユニフォーミティ試験が知られている。ユニフォーミティ試験は、タイヤの外周面に回転ドラムを押し当てた状態でタイヤを回転させ、タイヤの径方向とスラスト方向の負荷変動を測定するよう構成されている。
【0003】
このユニフォーミティ試験や動釣合試験を行う試験装置としては、たとえば特開平11−183298号記載のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置がある。上記公報記載の試験装置は、スピンドルハウジング内で玉軸受を介して回転可能に支持されているスピンドルにタイヤを取り付けて所定の回転数で回転させる。
【0004】
ここで、円盤状の部材である上部リムと下部リムとでタイヤの回転軸方向にタイヤを挟み込むことにより、タイヤはスピンドルに取り付けられる。
【0005】
ユニフォーミティ試験時においてはタイヤの外周面に回転ドラムを数百kgf以上の力で押し付けた状態でスピンドルごとタイヤを回転させ、そのときの負荷の変動を回転ドラム内に設置されたロードセルによって測定している。
【0006】
なお、通常ユニフォーミティ試験は自動車規格「JASO(日本自動車規格会議) C607」に基づいて実施される。規格「JASO C607」においては、タイヤの回転数は60rpmとされている。
【0007】
しかしながら、タイヤの回転数60rpmは自動車の速度に換算すると時速7km程度であるので、上記規格によるユニフォーミティ試験は運転時のタイヤの挙動を必ずしも反映しているとはいえない。そこで、より速い回転数でタイヤを回転させて前述の負荷変動を測定する、いわゆる高速ユニフォーミティ試験が望まれている。
【0008】
特にタイヤの高速回転時には、上記規格によるユニフォーミティ試験では検出されにくいタイヤの円周方向の力の変動、すなわちトラクティブ・フォース・バリエーション(TFV)による不具合が生じやすい。従って高速ユニフォーミティ試験においてはTFVを正確に測定可能であることが望まれている。
【0009】
また、タイヤの試験工程の簡素化の為、ユニフォーミティ試験装置は、ユニフォーミティ試験と、タイヤの偏心状態を測定する動釣合試験との双方を実施可能であることが望ましい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報記載の試験装置は、回転ドラム側に取り付けられたひずみゲージによって負荷の変動を計測しているために、特にTFVの負荷の変動幅が大きくなりがちな高速ユニフォーミティ試験時には、回転ドラム自身のひずみによる誤差が無視できないレベルまで高くなるため、上記公報記載の試験装置によって高速ユニフォーミティを正確に測定することはできなかった。
【0011】
また、上記公報記載の試験装置を用いて高速ユニフォーミティ試験を行おうとすると、ユニフォーミティ試験時にタイヤを挟み込んで固定する上部リム及び下部リムの重量アンバランスによってTFVに測定誤差が生じるという問題があった。
【0012】
また、上記公報記載の試験装置は、ユニフォーミティ試験時と動釣合試験時とでは異なる荷重センサを使用するため、装置構成が大掛かりかつ複雑なものとなっていた。
【0013】
【発明の目的】
上述した事情に鑑み、本発明は高速で回転するタイヤのユニフォーミティ及び動釣り合いを正確に測定可能なユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置は、スピンドルを回転自在に支持するスピンドルハウジングと、圧電素子固定部材と、スピンドルハウジング側面と圧電素子固定部材との間に挟持される複数の3成分圧電素子と、スピンドルと平行な回転軸を有し、外周面がタイヤと離接可能に構成された回転ドラムと、複数の3成分圧電素子によって計測されたタイヤの受ける負荷変動からタイヤのユニフォーミティを計算する手段と、複数の3成分圧電素子によって計測されたタイヤの回転によって発生する加振力からタイヤの偏心状態を計算する手段とを有している。本装置においては、圧電素子固定部材が剛体支持されることによって、スピンドルハウジングは剛体支持されている。また、スピンドル及び回転ドラムのいずれによってもタイヤを回転駆動可能となっている。さらに、複数の3成分圧電素子は任意の方向に作用する力を直交3成分力として計測可能な素子である。
【0015】
圧電素子はほとんどひずまずに荷重を測定可能であるため、剛体支持されたスピンドルにこの圧電素子を取り付けてユニフォーミティ試験時にタイヤの受ける負荷変動を測定することが可能となる。従って、回転ドラムやひずみゲージのひずみの影響による測定誤差を除去して、高速ユニフォーミティ試験時であっても正確にタイヤの受ける負荷変動を測定することが可能となる。
【0016】
また、本発明の試験装置によればスピンドルハウジングに荷重センサを取り付けているので、スピンドルに取り付けられたタイヤを高速で空転させ、そのときのタイヤの周方向の負荷変動から、上部リム及び下部リム等のタイヤをスピンドルに固定する部材の重量アンバランスをあらかじめ計測することが可能となる。従って、この重量アンバランスをもとにTFVを較正することにより、高速ユニフォーミティ試験時においても正確なユニフォーミティの測定が実現できる。
【0017】
また、スピンドル自身が高速で回転駆動されると、スピンドルからタイヤにタイヤの周方向の力が加えられる。このような力はユニフォーミティ測定における外乱成分であり正確なユニフォーミティの測定を阻害するものである。従ってこのような構成の試験装置において、回転ドラムを駆動させてユニフォーミティ試験を行うことにより、上記外乱成分の発生が防止され、特に高速ユニフォーミティ試験時により正確なユニフォーミティの測定が可能となる。
【0018】
また、本発明の試験装置は、スピンドル及び回転ドラムのいずれによってもタイヤを回転駆動可能な構成を有するため、一台の装置でユニフォーミティ試験と動釣合試験の両方を実施可能となっている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態のユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置1(以下、複合試験装置1とする)の基本構成を示す側面図である。なお、以下の説明では、図1に示すように「上」と「下」を定義するが、複合試験装置1の構成は上下逆であっても良く、あるいは横置きであっても良い。
【0020】
複合試験装置1の装置フレームは、ベース50と、ベース50から鉛直上方に延びる支柱52と、支柱52に支えられた天板54とから成っている。ベース50には、タイヤTを保持して回転させるスピンドル120が取り付けられている。
【0021】
複合試験装置1は、タイヤTを下部リム10と上部リム20とで上下に挟みこんで保持するよう構成されている。まず、このタイヤTを支持するための構成について説明する。
【0022】
図2は、スピンドル120を示す側断面図である。スピンドル120は、中空部120aとブラケット部120bからなる。また、スピンドル120のブラケット部120bの上端は水平方向に突出してフランジ部120eを成す。スピンドル120はスピンドルハウジング110によって(複列円筒ころ軸受112a及び112b、及び組合せアンギュラ玉軸受113を介して)回転可能に支持されている。ここで、複列円筒ころ軸受112a及び112bはラジアル方向よりスピンドル軸を支持し、また組合せアンギュラ玉軸受113はラジアル方向とスラスト方向の双方よりスピンドル軸を支持する。
【0023】
スピンドル120のフランジ部120eには中空シャフト170が同軸に(中心軸が一直線上に並ぶように)固定されている。さらに、中空シャフト170の上端部は下部リム10に嵌入されている。上端部に上部リム20が固定されたロックシャフト300を、中空シャフト170を貫通してブラケット部120bに挿入することにより、下部リム10と上部リム20との間でタイヤTを挟み込んで保持することができる。
【0024】
ここで、ブラケット部120bのロックシャフト300が挿入される空洞部の中途はくびれている。ブラケット部120bにロックシャフト300が挿入されると、このくびれた部分である嵌合部はロックシャフト300の側面と密着する。すなわち、ユニフォーミティ試験時においては、回転ドラムからロックシャフト300に加えられる曲げ荷重をブラケット部120bの嵌合部は中空シャフト170と共に支持する。
【0025】
また、この嵌合部は複列円筒ころ軸受112aと組合せアンギュラ玉軸受113との間に形成されているのでロックシャフト300からブラケット部120bの嵌合部に印加されるラジアル方向の荷重は、複列円筒ころ軸受112aと組合せアンギュラ玉軸受113の双方によって強固に支持される。
【0026】
ロックシャフト300の中部の外周にはロック溝302が多段状に形成されている。また、中空シャフト170の側面には貫通孔が穿孔されている。この貫通孔にはロック部材160が挿置されており、ロック部材160はロック用シリンダ165によって前記貫通孔内を、ロックシャフト300の外周面に近接/離間する方向に駆動される。
【0027】
なお、中空シャフト170の上下方向の長さは、中空シャフト170の側面に穿孔された貫通孔の上下方向の幅よりもわずかに大きい程度に抑えられている。従って、ブラケット部120bの嵌合部の位置における曲げモーメントは最低限に抑えられるのでロックシャフト300および中空シャフト170のラジアル方向の変形が抑えられ、より正確なユニフォーミティの測定が可能となる。
【0028】
図3にスピンドル120およびロックシャフト300の、ロック部材160周辺の拡大断面図を示す。ロック部材160とロック用シリンダ165は、ロックシャフト300の中心軸に対して放射状に90°おきに4組設けられている(図3では2組のみ示す)。ロック部材160のロックシャフト300の外周面に対向する先端部にはロック爪162が形成されている。ロック爪162は縦に6段配列されており、このロック爪162がロックシャフト300のロック溝302に係合する。
【0029】
ロック部材160はロック用シリンダ165のプランジャー166の先端部に取り付けられている。このロック用シリンダ165にエアを供給することによって、プランジャー166およびロック爪162はロックシャフト300に向かって押圧される。なお、ロック用シリンダ165へのエアの供給については後述する。また、プランジャー166は、ロック用シリンダ165の本体に設けられたばね168によってロックシャフト300から離れる方向に付勢されている。即ち、ロック部材160はロックシャフト300から離れる方向に付勢されている。かくして、ロック用シリンダ165がオン(ロック用シリンダ165にエアが供給された状態)の時にはロック部材160がロックシャフト300に係合し、ロック用シリンダ165がオフ(ロック用シリンダ165にエアが供給されていない状態)の時にはロック部材160がロックシャフト300を解放する。
【0030】
以上のように構成されているため、ロックシャフト300をスピンドル120のブラケット部120bに挿入してロック用シリンダ165をオンすることによって、下部リム10と上部リム20の間でタイヤTを挟んで確実に保持することができる。また、ロック用シリンダ165をオフしてロックを解除すると共にロックシャフト300をスピンドル120から引き抜くことにより、下部リム10と上部リム20の間からタイヤTを外すことができる。なお、ロックシャフト300を駆動するための構成は後述する。
【0031】
なお、ロック用シリンダ165のそれぞれに近接した位置には図示しない近接センサが備えられている。この近接センサはスピンドルハウジング110上に固定されており、ロック用シリンダ165と近接センサとの距離が1mm以内であるかどうかを検知可能である。ロック用シリンダ165がオフであるときロック用シリンダ165と近接センサとの距離が1mm以内となり、それ以外のときはロック用シリンダ165と近接センサとの距離が1mmを越えるような位置に近接センサは設置されている。従って近接センサをモニタリングすることにより、ロック部材160がロックシャフト300に係合する位置(ロック位置)にあるか、ロックシャフト300から離れた位置(ロック解除位置)にあるかを確認することができる。
【0032】
複列円筒ころ軸受112aをスピンドル120に嵌入する方法を図4を用いて説明する。スピンドル120のブラケット部120bには方形断面のカラー121aが嵌入されている。ここでカラー121aの上面はブラケット部120bの上端に形成されたフランジ部の下面に当接する。
【0033】
ここで、ブラケット部120bの、複列円筒ころ軸受112aと係合する部分の外周は上方に向かって太くなるテーパ面120dを形成している。また、複列円筒ころ軸受112aの内周は、テーパ面120dと同一勾配の、上方に向かって太くなるテーパ状に形成されている。また、テーパ面120dの上端部の径は複列円筒ころ軸受112aの内周の径よりもわずかに大きい。
【0034】
さらに、複列円筒ころ軸受112aと組合せアンギュラ玉軸受113との間には方形断面のカラー121bが嵌入されている。ここでカラー121bの上面は複列円筒ころ軸受112aの下端に当接する。同様に、カラー121bの下面は組合せアンギュラ玉軸受113の上端に当接する。さらに、ブラケット部120bには方形断面のカラー121cが嵌入されている。ここで、カラー121cの上面は組合せアンギュラ玉軸受113の下端に当接する。
【0035】
さらに、ブラケット部120bにはおねじ部120cが螺設されている。なお、おねじ部120cはカラー121a、複列円筒ころ軸受112a、カラー121b、組合せアンギュラ玉軸受113およびカラー121cをブラケット部120bに嵌入したときのカラー121cの下面より下方に螺接されている。
【0036】
ここで、カラー121a、複列円筒ころ軸受112a、カラー121b、組合せアンギュラ玉軸受113およびカラー121cをブラケット部120bに順次嵌入する。なお、このとき複列円筒ころ軸受112aはブラケット部120bに嵌入される。
【0037】
次いで、おねじ部120cと螺接可能なめねじ部が内周に形成された付勢ナット114aをおねじ部120cに螺着し、さらに所定のトルクで締め付けることにより、複列円筒ころ軸受112aは上方に押し込まれる。次いで、付勢ナット114aのゆるみを防止するため、おねじ部120cにゆるみ止めナット114bを螺着し、ゆるみ止めナット114bの上面を付勢ナット114aの下面に対して付勢させる。
【0038】
前述のようにテーパ面120dの上端部の径は複列円筒ころ軸受112aの内周の径よりもわずかに大きいので、この結果、テーパ面120dと複列円筒ころ軸受112aの内周は密着する。よって、スピンドル120と複列円筒ころ軸受112aの内輪が完全に一体化されるのでスピンドル120と複列円筒ころ軸受112aとの間のガタツキが防止される。さらに、組合せアンギュラ玉軸受113の内輪と鋼球、および鋼球と外輪とのクリアランスが最小限に抑えられるため、組合せアンギュラ玉軸受113の内輪と鋼球、および鋼球と外輪との間のガタツキが防止される。
【0039】
なお、複列円筒ころ軸受112bをスピンドル120に嵌入する方法は複列円筒ころ軸受112aをスピンドル120に嵌入する方法と同様である。ここで、複列円筒ころ軸受112bにかかるラジアル方向の荷重は複列円筒ころ軸受112aにかかるラジアル方向の荷重と比べて小さいので、付勢ナットが直接複列円筒ころ軸受112bを付勢するようにすればよく、ゆるみ止めナットは使用しない。すなわち、複列円筒ころ軸受112bをスピンドル120の中空部120aに嵌入した後、中空部120aの外周に螺接されたおねじ部に付勢ナット114cを螺着する。
【0040】
スピンドルハウジング110は、角柱形状の部材であり、その中央部スラスト方向に複列円筒ころ軸受112a及び112b、及び組合せアンギュラ玉軸受113を装着可能な貫通孔が穿孔されている。また、図1に示されるように、複合試験装置1の装置フレームから略水平方向に延出する支持軸によって、スピンドルハウジング110は後述する圧電素子固定プレート102を介してベース50に剛体支持されている。
【0041】
ユニフォーミティ試験では、スピンドル120の側方に設けられた回転ドラム30を用いる。回転ドラム30は、タイヤTに対して近接/離間する方向に延びるレール31の上をスライド可能な可動ハウジング32に搭載され、図示しないモータにより駆動されるラックピニオン機構35(ピニオン36・ラック38)によってタイヤTに対して近接/離間方向に移動する。また、回転ドラム30は図示しないモータによって任意の回転数で回転可能である。
【0042】
ユニフォーミティ試験を実施する際には、ラックピニオン機構35によってこの回転ドラム30をタイヤTに当接させ、さらに回転ドラム30をタイヤTに数百kgf以上の力で押し付ける。次いで、この状態で回転ドラム30を回転させ(従って回転ドラム30に当接しているタイヤTも回転ドラム30に伴って回転する)、そのときの負荷の変動から回転しているタイヤが発生する力のばらつきを測定する試験である。
【0043】
一方、動釣合試験は回転ドラム30をタイヤTから離間させた状態でスピンドル120ごとタイヤTを回転させ、そのときにタイヤTの不釣合いから生じる加振力からタイヤの偏心状態を測定する試験である。
【0044】
本発明の実施の形態においては、ユニフォーミティ試験における上記負荷の変動および動釣合試験における上記加振力はスピンドルハウジング110の一側面の4箇所に設置された3軸圧電素子185によって計測される。
【0045】
圧電素子185は、例えばKISTLER社製水晶式圧電式力センサ9067のような円筒形状のセンサであり、任意の方向に印加された荷重を直交3成分力として検出し、電気信号に変換する。なお、圧電素子185の測定範囲はその円筒軸方向(すなわち、ユニフォーミティ試験時に回転ドラムがタイヤを押圧する方向)成分がおよそ0〜20000kgf、他の2成分がおよそ−2000〜2000kgfである。また、スピンドル120が受ける荷重を正確に計測するため、圧電素子185はスピンドルハウジング110と一体化されている。
【0046】
すなわち、圧電素子185をスピンドルハウジング110と一体化させるために、圧電素子固定プレート102とスピンドルハウジング110の一側面との間に圧電素子185は挟持されている。圧電素子固定プレート102の圧電素子185が当接している箇所には、圧電素子固定プレート102の板厚方向に圧電素子185の穴部と略同径の貫通孔102aが穿孔されている。同様に、スピンドルハウジング110の圧電素子185が当接している箇所には、圧電素子185が取り付けられるスピンドルハウジング110の一側面の板厚方向に圧電素子185の穴部と略同径の貫通孔110aが穿孔されている。なお、スピンドルハウジング110の貫通孔110aの内周にはめねじが螺刻されている。
【0047】
また、スピンドルハウジング110の貫通孔110aのめねじと螺接可能なするおねじが全側面にわたって螺刻された円柱形上のバー186が、圧電素子固定プレート102の貫通孔102aおよび圧電素子185に挿通されている。さらにバー186はスピンドルハウジング110の貫通孔110aに螺嵌されている。なお、バー186の先端部は複列円筒ころ軸受112aまたは112bと当接している。
【0048】
ここで、バー186の圧電素子固定プレート102より突出している部分(図2中左側)はナット187が螺着されている。ナット187は所定のトルクで締め上げられており、その結果ナット187は約5000kgfの軸力で圧電素子固定プレート102を押圧する。従って、圧電素子185は、圧電素子固定プレート102とスピンドルハウジング110の一側面との間に約5000kgfの力で挟持され、圧電素子固定プレート102及びスピンドルハウジング110と一体化する。
【0049】
スピンドル120の下端には、動釣合試験時にスピンドル120を回転駆動するためのプーリ140が取り付けられている。また、ベース50には図示しないラックピニオン機構によってスピンドルに向かって水平に進退可能なスピンドル駆動モータ130が設置されている。スピンドル駆動モータ130の回転軸には駆動プーリ144がスピンドル120のプーリ140と同じ高さに取り付けられている。また、駆動プーリ144およびスピンドル120のプーリ140と同一平面上に一対の従動プーリ143が回転可能に設置されている。なお、従動プーリ143は上記の図示しないラックピニオン機構によってスピンドル駆動モータ130と共に進退する。ここで無端ベルト142が駆動プーリ144および従動プーリ143に掛け渡されており、スピンドル駆動モータ130により無端ベルト142を所定速度で進行させることができる。
【0050】
スピンドル駆動モータ130により(無端ベルト142を介して)スピンドル120のプーリ140を回転駆動する方法を図6に示す。スピンドル駆動モータ130によって駆動プーリ144は所定方向(図6中では反時計回り)に所定回転数で回転している。
【0051】
スピンドル駆動モータ130によってスピンドル120のプーリ140を回転駆動しないときは、スピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144、従動プーリ143および無端ベルト142は、無端ベルト142がスピンドル120のプーリ140に当接しないように退避している(図6中破線部分)。この状態からスピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144、従動プーリ143および無端ベルト142を上記の図示しないラックピニオン機構によりスピンドル120に向かって移動させ、無端ベルト142がスピンドル120のプーリ140を付勢するようにする。無端ベルト142はスピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144および従動プーリ143によって所定方向(図中矢印方向)に進行しているので、無端ベルト142と当接するスピンドル120のプーリ140は駆動プーリ144の回転方向と反対方向(図6中では時計回り)に回転する。従って、下部リム10と上部リム20の間でタイヤTを保持したままスピンドル120が回転する。
【0052】
スピンドル120は、その中空部120aの下端に設けられたロータリージョイント145から空気をタイヤTに送り込む(インフレートする)よう構成されている。そのため、スピンドル120の中空部120aには、この中空部120aを上下に貫通するエアパイプ115が設けられている。エアパイプ115の上端部はフランジ116によりエアパイプ115に固定され、下端部はロータリージョイント145に連結されている。
【0053】
ロータリージョイント145には、エアパイプ115に空気を送り込むためのエアホース132が連結されている。エアホース132からロータリージョイント145を経由して送り込まれた空気は、エアパイプ115を上方に抜け、ブラケット部120b内に形成されたエア通路138にさらに抜け、切換弁131に到達する。切換弁131はエア通路138に抜けた空気をブラケット部120bか中空シャフト170のエア通路172に向かうエア通路135のどちらに送るかを切り替えるものである。なお、ホイール未装着のタイヤTを試験する場合は、エア通路138に抜けた空気はエア通路135に向かうよう設定されている。従って、エアホース132からロータリージョイント145を経由して送り込まれた空気は、中空シャフト170のエア通路172を通ってタイヤTの内部に送り込まれる。
【0054】
かくして、ロータリージョイント145からエア通路172までの部分が、タイヤTにエアをインフレートするためのエア供給系を構成する。また、エア通路135からは、前述のロック用シリンダ165にエアを供給するためのエア通路136が分岐している。エア通路136の中途には開閉弁133が設置されている。すなわち、ロック用シリンダ165をオンにする場合は開閉弁133を開いてロック用シリンダ165にエアを供給する。
【0055】
なお、上部リム20をロックシャフト300に取り付けるための取付部材310の先端には、後述のチャック爪210に外側から係合される係合フランジ部320が設けられている。
【0056】
ロックシャフト300を上下に駆動してスピンドル120に挿入する(あるいは引き抜く)インサーターユニット200は、図1に示す天板54のさらに上方に配置された昇降ハウジング60に取り付けられている。昇降ハウジング60は、4組の鉛直方向に延びるリニアガイド61によって上下動可能に支持されている。また、昇降ハウジング60はサーボモータ66によって駆動されるボールねじ65と、昇降ハウジング60外面に設けられたボールねじ65に螺合するねじ孔が穿孔されたアーム部67によって上下に駆動される。
【0057】
図5は、インサーターユニット200の構造を示す側面図である。インサーターユニット200は、略円筒形状のユニット本体240を有している。ユニット本体240は、略円筒形状のユニット本体240とスピンドル120とが同軸に(中心軸が一直線上に並ぶように)なるように昇降ハウジング60に取り付けられている。
【0058】
ユニット本体240の下部にはロックシャフト300の係合フランジ部320に外側から係合する3本(図5中では2本のみ記載)のチャック爪210が設けられている。チャック爪210は図示しないバネ部材によってユニット本体240のラジアル方向外側に向けて付勢されている。
【0059】
また、チャック爪210はエア圧によりユニット本体240のラジアル方向に駆動される。すなわち、ユニット本体240内に備えられた図示しないエア供給口にエアを供給すると、このエアはチャック爪210をユニット本体240のラジアル方向内側に向けて付勢する。従ってユニット本体240にエアを供給することにより、チャック爪210がユニット本体240のラジアル方向内側に移動し、ロックシャフト300の係合フランジ部320をチャックする。一方この状態からユニット本体240よりエアを抜くと、バネ部材の付勢力によってチャック爪210はユニット本体240のラジアル方向外側に移動し、チャックが解除される。
【0060】
以上のように構成された複合試験装置1によるタイヤTの保持は以下のようにして行われる。まずインサーターユニット200のユニット本体240にエアを供給してチャック爪210でロックシャフト300をチャックし、ボールねじ65を駆動して昇降ハウジング60を上昇させてロックシャフト300をスピンドル120から引き抜く。次いで、下部リム10にタイヤTをセットした後、ボールねじ65を再び駆動して昇降ハウジング60をタイヤTのリム幅に応じた適切な位置に下降させる。次いで、ロック用シリンダ165をオンして、ロック部材160をロックシャフト300に係合させる。さらに、インサーターユニット200のユニット本体240からエアを抜いてチャック爪210によるチャックを解除し、上部リムがスピンドル120に伴って回転できるようにする。
【0061】
なお、ロックシャフト300の多段のロック溝302のどの段に(ロック部材160の)ロック爪162を係合させるかによって、上部リム10と下部リム20との間隔をタイヤ幅に合わせて調節することができる。この調節については、説明を省略する。
【0062】
次に、複合試験装置1を用いたユニフォーミティ試験と動釣合試験について説明する。本発明の実施の形態においては、1つのタイヤについて、JASO C607規格によるユニフォーミティ試験、高速ユニフォーミティ試験、動釣合試験を連続して実施する。
【0063】
まず最初にインサーターユニット200を用いて下部リム10と上部リム20の間にタイヤTを保持し、次いでタイヤTの内部に空気をインフレートする。このときスピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144、従動プーリ143および無端ベルト142はスピンドル120側にあり、無端ベルト142はスピンドル120のプーリ140を付勢している。スピンドル駆動モータ130は停止しているので無端ベルト142とスピンドル120のプーリ140との摩擦力によりスピンドルが回転するのを防止している。
【0064】
次いで、JASO C607規格によるユニフォーミティ試験を実施する。ここで、ユニフォーミティ試験の実施に先立って、スピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144、従動プーリ143および無端ベルト142は、無端ベルト142がスピンドル120のプーリ140に当接しないように退避する。次いで、複合試験装置1の制御部(図示せず)は、ラックピニオン機構35により回転ドラム30を所定の荷重でタイヤTに押し付ける。なお、回転ドラム30がタイヤTを押圧する荷重はタイヤの種類によって異なり、例えば乗用車用タイヤであれば約1トンである。
【0065】
次いで、回転ドラム30を回転駆動し、タイヤTを60rpmで回転させる。そして、圧電素子185によりタイヤTが受ける負荷変動を検出する。検出された負荷変動に基づいてユニフォーミティを計算する方法は公知であるため、説明は省略する。
【0066】
次いで、回転ドラム30の回転数を上げて高速ユニフォーミティ試験を行う。高速ユニフォーミティ試験時のタイヤTの回転数はタイヤの外径によって異なるが、例えば外径600mmの乗用車用タイヤを試験する場合は、タイヤTの周速が140km/hとなるように、回転ドラム30によってタイヤTは1238.5rpmで回転駆動される。そして、圧電素子185によりタイヤTが受ける負荷変動を検出する。検出された負荷変動に基づいてユニフォーミティを計算する方法は公知であるため、説明は省略する。なお、このとき、無端ベルト142の進行速度がスピンドル120と共に回転するプーリ140の周速と同一となるように、スピンドル駆動モータ130は駆動プーリ144を駆動している。
【0067】
さらに引き続いて、動釣合試験が実施される。すなわち、スピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144、従動プーリ143および無端ベルト142を前記ラックピニオン機構によりスピンドル120に向かって移動させるとともにラックピニオン機構35により回転ドラム30をタイヤTから離間させる。このスピンドル駆動モータ130、駆動プーリ144、従動プーリ143および無端ベルト142の移動、及び回転ドラム30の離間はきわめて短時間のうちに行われるので、タイヤTの駆動源は(タイヤTは減速されることなく)スムースにスピンドル駆動モータ130に切り替わる。
【0068】
次いで、スピンドル120の回転中に圧電素子185にかかる負荷の変動を検出する。検出された負荷変動に基づいて動釣合を計算する方法は公知であるため、説明は省略する。また、このとき検出された負荷変動から上部リム及び下部リムのアンバランスを算出し、このアンバランスからユニフォーミティのTFVを較正する。
【0069】
複合試験装置1は、JASO C607規格によるユニフォーミティの計算結果および高速ユニフォーミティの計算結果に基づいてタイヤTのどの部分をどれだけ削るかを算出し、図示しない切削装置によってタイヤTの切削を行う。同様に、複合試験装置1は、動釣合の計算結果に基づいてタイヤTのどの部分にバランスウエイトを載せるべきかを算出し、図示しないマーキング装置によって、当該箇所にマーキングを施す。
【0070】
なお、本発明の実施の形態においては、高速ユニフォーミティ試験時にタイヤTを周速140km/h相当の回転数で回転させているが、より高い回転数でタイヤTを回転させる構成としても構わない。例えば、外径600mmのタイヤTを周速340km/h相当の周速で回転させるように3000rpm程度の回転数でタイヤTを回転させて高速ユニフォーミティ試験を行ってもよい。
【0071】
また、この実施形態の複合測定装置1は上記のようなホイール装着前のタイヤのみにとどまらず、ホイール装着後のタイヤに対してもユニフォーミティと動釣合の両方を測定することができる。ホイール装着後のタイヤに対して試験を行う場合は、上部リム20が固定されたロックシャフト300の代わりにホイールを上から押圧するトップアダプタを、また下部リム10が固定された中空シャフト170の代わりに、タイヤのホイールを下方より支持すると共に前記トップアダプタを下方に引き込む引き込みユニットを用いている。すなわち、ホイールつきのタイヤはそのホイール部分を前記トップアダプタと前記引き込みユニットとに挟持される。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置によれば、高速回転するタイヤのユニフォーミティをより正確に測定可能となるとともに、より簡素な構成でユニフォーミティ試験と動釣合試験とを実施可能な装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態のユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置の基本構成を示す側面図である。
【図2】 本発明の実施の形態のスピンドルを示す側断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態のスピンドルおよびロックシャフトの、ロック部材周辺の拡大断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態のスピンドルおよびロックシャフトの、ロック部材周辺における一部切断した斜視図である。
【図5】 本発明の実施の形態のインサーターユニットの内部構造を示す側面図である。
【図6】 本発明の実施の形態において、スピンドル駆動モータによりスピンドルを回転駆動する方法を模式的に示したものである。
【符号の説明】
1 複合試験装置
10 下部リム
20 上部リム
30 回転ドラム
50 ベース
60 昇降ハウジング
65 ボールねじ
66 サーボモータ
67 アーム部
102 圧電素子固定プレート
110 スピンドルハウジング
112a 複列円筒ころ軸受
112b 複列円筒ころ軸受
113 組合せアンギュラ玉軸受
114 カラー
120 スピンドル
120b ブラケット部
120c おねじ部
120d テーパ面
130 スピンドル駆動モータ
140 プーリ
142 無端ベルト
143 従動プーリ
144 駆動プーリ
160 ロック部材
162 ロック爪
185 圧電素子
187 ナット
200 インサーターユニット
240 ユニット本体
210 チャック爪
300 ロックシャフト
302 ロック溝
320 係合フランジ部
Claims (6)
- 回転可能なスピンドルに取り付けられたタイヤのユニフォーミティ試験及び動釣合試験を行うよう構成された装置であって、
前記スピンドルを回転自在に支持するスピンドルハウジングと、
圧電素子固定部材と、
前記スピンドルハウジング側面と前記圧電素子固定部材との間に挟持される、任意の方向に作用する力を直交3成分力として計測可能な複数の3成分圧電素子と、
前記スピンドルと平行な回転軸を有し、外周面が前記タイヤと離接可能に構成された回転ドラムと、
前記複数の3成分圧電素子によって計測されたタイヤの受ける負荷変動からタイヤのユニフォーミティを計算する手段と、
前記複数の3成分圧電素子によって計測されたタイヤの回転によって発生する加振力からタイヤの偏心状態を計算する手段と、
を有し、
前記圧電素子固定部材が剛体支持されることによって、前記スピンドルハウジングは剛体支持されており、
前記スピンドル及び前記回転ドラムのいずれによってもタイヤを回転駆動可能である、
ことを特徴とする、タイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置。 - 前記複数の3成分圧電素子は、前記スピンドルハウジング側面と前記圧電素子固定部材との間に挟持されることによって圧縮荷重を受け、前記圧縮荷重の方向は前記3成分圧電素子が測定する直交3成分のうちの1成分と同一方向である、ことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置。
- 前記スピンドルハウジングが、そのスラスト方向に前記スピンドルが挿通支持される穴部が形成された多角形柱状に形成され、前記複数の3成分圧電素子は前記スピンドルハウジングの側面の一つである第1の側面に配置され、前記圧電素子固定部材が平板状に形成され、前記圧電素子固定部材と前記第1の側面が平行であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置。
- 前記スピンドルハウジング側面と前記圧電素子固定部材との間に前記複数の3成分圧電素子がねじで夫々挟持されており、
複数の前記ねじの各々が前記複数の3成分圧電素子の各々に形成された筒内に挿通されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置。 - ユニフォーミティ試験時にタイヤに接触させた前記回転ドラムを回転駆動することによってタイヤを回転させ、動釣合試験時に前記回転ドラムをタイヤから離間させて前記スピンドルを回転駆動することによってタイヤを回転させる、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置。
- 前記ユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置は、
前記回転ドラムを回転駆動する回転ドラム駆動手段と、
前記スピンドルを回転駆動するスピンドル駆動手段と、
ユニフォーミティ試験時に前記回転ドラムが回転駆動されるように前記回転ドラム駆動手段を制御すると共に、前記スピンドルが回転駆動されるよう前記スピンドル駆動手段を制御してタイヤの動釣合試験を実施可能とする駆動制御手段と、
をさらに有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタイヤのユニフォーミティ及び動釣合複合試験装置。
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