JP4013111B2 - レゾール樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、残留フェノール(残存する未反応モノマー)量の低減されたレゾール樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂は、その優れた耐熱性、接着性、機械的特性、電気的特性、価格優位性等を利用し各種基材の成型材料や摩擦材用結合剤、研削材用結合剤、木材用接着剤、積層材用結合剤、鋳型用結合剤、コーティング剤、エポキシ樹脂硬化剤用等として幅広く使用されている。フェノール類とアルデヒド類とを反応させるフェノール樹脂としては、触媒としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物を用いるアルカリレゾール樹脂、またアンモニアを用いるアンモニアレゾール樹脂、2価金属塩を用いるハイオルソ型樹脂、触媒として酸類を用いたノボラック樹脂が一般的に知られている。近年、大気環境保護の観点、或いは人体環境の保護の観点からフェノール樹脂中の未反応フェノール類、アルデヒド類、或いは1核体成分の揮発による汚染を低減することが求められて来ている。上記のノボラック樹脂では、の未反応モノマーが0.1%以下である製品も製造することが出来る。
【0003】
しかしながら、レゾール樹脂の場合はこれと事情が異なり、熱硬化性を有する為、高温下でフェノールモノマーを除去する事が困難である。また、未反応モノマー類や、1核体成分を溶剤を用いて抽出する事も試みられているがその際に用いた溶剤の処理方法など問題点も多い。更に、反応条件を選択する事によっても低モノマー化が検討されて来た。そのため、一定条件下、例えばフェノール類とアルデヒド類のモル比が2.5以上でかつ触媒を比較的多く用いる条件下で反応させるとフェノールモノマーを減少させる事が可能である。この場合でも未反応アルデヒド類が多量に残ってしまう場合が多く、一部の用途を除き、実用的な範囲の製品を得ることが困難である。さらに未反応モノマーだけでなくフェノール類にアルデヒドが反応した1核体成分も樹脂中に多く存在する為、フェノール樹脂を加工する際に揮発して環境を汚染する。これらを避ける目的でフェノール類として例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2核体を用いて実質的にフェノールモノマーを含まないフェノール樹脂を得ることもできる。しかしこれらフェノール2量体を用いたものは水溶性の樹脂を得ることが困難であり、アルコール類やケトン類に溶解させる必要があり、塗料用等の限られた用途にしか実用化されていない場合が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、レゾール樹脂の製造にあたり、未反応モノマー類を実質的に含まないか或いは非常に低減させる事が出来るレゾール樹脂の製造方法を提供するもので、更に従来のレゾール樹脂と同様に水溶性を保つことも可能であり、各種の製品形態に、より適用範囲の広いレゾール樹脂を得ることが可能で、その製品が環境負荷の低減のみでなく、硬化性や耐熱性を著しく改善できる、優れた物性を得る事が出来るレゾール樹脂の製造方法を見出すことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、レゾール樹脂の製造方法として、未反応モノマー類を実質的に含まないか或いは非常に低減させる方法について鋭意検討の結果、原料として、フリーフェノール含有量と分子量を制御した特定のノボラック樹脂をフェノールの一部或いは全部の原料として用い、アルデヒド類と反応させることによって未反応モノマーが低減され、物性の優れたレゾール樹脂が得られる事を見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、アルデヒド類とフェノール類とを〔アルデヒド類〕/〔フェノール類〕=0.3〜0.6〔モル比〕となる割合で反応させて得られたノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを反応させる水溶性レゾール樹脂の製造方法であって、前記ノボラック樹脂(A)が、蓚酸、塩酸、燐酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、及び、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の化合物を反応触媒として用いられたものであり、かつ、前記ノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを反応させる水溶性レゾール樹脂を得る際に、触媒としてアルカリ金属水酸化物を、〔ノボラック樹脂中のフェノール成分のモル数〕/〔アルカリ金属のモル数〕=0.12〜1.00の比率で用いることを特徴とする水溶性レゾール樹脂の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のレゾール樹脂の製造方法は、触媒の存在下、前記のノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを反応させる方法である。前記のノボラック樹脂(A)としては、フェノール類とアルデヒド類との反応で得られる。その際、樹脂中に残留した未反応のフェノール類の含有量と分子量とを制御されたものを用いる。
【0009】
前記の特定のノボラック樹脂は、例えば、次の工程を経て製造することが出来る。フェノール類、アルデヒド類、触媒としての酸を仕込み、100℃で1〜5時間反応させる。その後、常圧脱水、減圧脱水工程を経て、180〜230℃の温度で、ノボラック樹脂中に残留した未反応フェノールを除去する。その際、前記の残留した未反応フェノールモノマーのノボラック樹脂中の含有量は、低いほど好ましく、0%まで除去しておくことが最も好ましいが、実質的には、1.0重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましい。更に、0.01重量%程度の量まで削減させておくことが特に好ましい。また、ここで、フェノール類とホルムアルデヒド類の反応割合は、〔ホルムアルデヒド〕/〔フェノール類〕=0.3〜0.6〔モル比〕であることが好ましい。モル比が、0.3未満でも製造は可能であるが、モル比が低下するに従い収率が悪くなり経済的には好ましくない。又0.6を超えると本発明に用いる為の適度な分子量に調整することが困難になり好ましくない。
【0010】
原料として使用するフェノール類としては、特に限定されるものではなく、たとえばフェノール、あるいはクレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノールなどのアルキルフェノール類、レゾルシン、カテコールなどの多価フェノール類、ハロゲン化フェノール、フェニルフェノール、アミノフェノールなどが挙げられる。またこれらのフェノール類は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種以上の併用も可能である。ここで製品として水溶性のレゾール樹脂を得るためにはレゾルシン及び通常のフェノールモノマーが良いが安価な製品を得るためには、フェノールモノマーが好ましい。
【0011】
本発明のアルデヒド類としてはフェノール樹脂製造の際に一般的に良く用いられるホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が有効であり、ウロトロピンも用いることが出来る。
【0012】
本発明で触媒として用いる酸類としては、ノボラック樹脂の製造の際一般的に用いられる酸が使用可能であり、例えば、蓚酸、塩酸、燐酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、或いはハイオルソノボラック樹脂の触媒である酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が用いられる。
【0013】
また、本発明で用いるノボラック樹脂としては、ノボラック樹脂の合成過程でフェノールと例えばエポキシ樹脂、トリアジン類等を任意の割合で反応させたいわゆる変性ノボラック樹脂も用いることが出来る。これらで変性されたノボラック樹脂をレゾール樹脂製造の際の原料として用いると、本発明の手法で製造されたレゾール樹脂に耐水性や、耐熱性を付与することも可能である。
【0014】
上記のノボラック樹脂を原料としたレゾール樹脂の製造方法は以下の手法によって提供される。
【0015】
1.実質的にフェノールモノマーやメチロール基が1〜3個フェノール核に結合した1核体成分を含まないレゾール樹脂の製造方法としては、上記ノボラック樹脂のみを原料として、アルデヒド類、アルカリ金属触媒、アルカリ土類金属の酸化物やアミン類、アンモニア、或いは酢酸亜鉛等を用いて反応させることによって得ることが出来る。これらの触媒は1種或いは2種類の併用で反応させても良い。更に触媒を中和する目的で、硫酸、塩酸、燐酸、パラトルエンスルホン酸等を用いても良い。
【0016】
2.未反応モノマーや1核体成分が従来のレゾール樹脂に比較して少ない樹脂を得るためには、上記の低分子ノボラック樹脂とフェノールモノマーを併用し、アルデヒド類及び上記と同様の触媒を用いて反応すれば良い。
【0017】
本発明のレゾール樹脂の製造に於けるノボラック樹脂とアルデヒド類の比率はC−13NMRで測定される樹脂の結合モル比としては、〔アルデヒド〕/〔ノボラック樹脂〕が、未反応のノボラック樹脂成分が残留せずに、硬化性など物性が良好となる点から0.5以上が好ましく、また、未反応ホルムアルデヒドが残留せずに、環境対策上好ましい点から4.0以下が好ましい。更に、〔アルデヒド〕/〔ノボラック樹脂〕=1.0〜2.5(モル比)が特に好ましい。
【0018】
触媒として用いるアルカリ類やアルカリ金属類の量は、反応が円滑に進む点から、原料として用いるノボラック樹脂、或いはノボラック樹脂とフェノールの合計モル数に対し触媒0.01倍モル以上が好ましく、また、反応の制御が容易で、触媒による製品の貯蔵安定性の悪化が無い点、或いは、得られた樹脂が脆くならない点から1.0倍モル以下が好ましい。
【0019】
本発明のフェノール樹脂を製造する方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。まず、原料ノボラック樹脂の製造方法として、フェノールと37%濃度のホルムアルデヒド水溶液の混合物に反応触媒として蓚酸を添加し、反応系内の温度を100℃とし、1〜5時間反応させた後、200℃迄常圧状態で蒸留を行い、更に減圧蒸留を行い、得られたノボラック樹脂中の残留フェノール量が1.0重量以下、好ましくは0.1%以下のノボラック樹脂(A)を得る。
【0020】
次いで、上記反応で得られたノボラック樹脂(A)と37%濃度のホルムアルデヒド水溶液とを〔アルデヒド類〕/〔フェノール類〕=0.3〜0.6〔モル比〕となる割合で混合した混合物に触媒として48%濃度の水酸化ナトリウムを添加し、50〜80℃の温度で1〜5時間反応して、得られたレゾール樹脂中の残留フェノール量が、樹脂に対して1.0重量%以下、好ましくは0.1%以下のレゾール樹脂(B1)を得る。
【0022】
上記の製造方法で得られるレゾール型樹脂の形態としては次の各種のものが製造可能である。
1.レゾール樹脂水溶液:上記の反応で得られたもの。
2.レゾール樹脂溶液:上記の反応で得られたにレゾール樹脂(B1)、(B2)から、水を除いた後、メタノールの如きアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類エーテル等の溶剤で溶解したレゾール樹脂溶液が容易に得られる。
3.水分散型樹脂:ノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを、又は、ノボラック樹脂(A)、アルデヒド類とフェノールとを触媒存在下それぞれ反応させる際に、例えば、ポリビニルアルコールの様なフェノール樹脂の分散に適した分散剤を用いると、水分散型レゾール樹脂を得ることができる。
4.固形樹脂:ノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを、又は、ノボラック樹脂(A)、アルデヒド類とフェノールとを触媒存在下それぞれ反応させる際に、触媒にアンモニアやヘキサメチレンテトラミンを用いて高分子量化し、水分や溶剤を除去し、固形の形態にすることが可能であり、これを、粉砕した製品を得ることも容易である。特に、この場合は従来方法では、残留フェノールが多く、融点を上げることが困難であったが、本方法によれば残留フェノールが非常に少なく、高融点の樹脂が得られ、粉砕後のブロッキングが少ない高分子のレゾール樹脂粉末が得られる。
5.粉末樹脂:上記のように反応した生成物をスプレードライ方式で直接粉末化することも可能であり、この場合も残留フェノールや1核体を実質的に含まない高分子量のレゾール粉末が得られる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。 例中「部」「%」と表示しているものはそれぞれ重量部、重量%を表す。また、数平均分子量とはGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により、分子量既知のポリスチレンに換算した分子量を示す。残留フェノールの測定は、残留フェノール1%以上の場合はGPCで測定し、これ以下の場合はガスクロマトグラフィーでの測定に依った。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
2リットルの4つ口フラスコに攪拌機、温度計をセットしフェノール941gと37.2%ホルマリン40.3gとを仕込み蓚酸2水和物8.82gを添加し、還流温度(100℃)に昇温し、更に37.2%ホルマリン362.9gを1時間かけて滴下した。還流温度で3時間反応した後、蒸留を開始し180℃迄昇温した。その後温度を220℃まで上げ50torr(6.65kPa)で減圧蒸留を1時間行いB&R法の軟化点75℃、ガスクロマトグラフィーで測定したフリーフェノール量0.3%、GPCによる数平均分子量780であるノボラック樹脂(Ia)を得た。該ノボラック樹脂を固形分80%になるようにメタノールで希釈してノボラック樹脂(Ia)のメタノール溶液を以下供試した。次いで、上記で得られたノボラック樹脂(Ia)のメタノール溶液131.3gと37%ホルマリン60.8gを良く混合し、これに48%水酸化ナトリウム10.5gを添加し、70℃迄昇温した。70℃で4時間反応した後、冷却し、レゾール樹脂(IIa)水溶液を得た。この樹脂の135℃に於ける不揮発分は50.8%、150℃に於けるゲル化時間は68秒であった。この樹脂の水との混和性(測定方法;25℃に於いて樹脂10gに対して水32gを添加した際に濁りを生じる添加量を%で表示する。以下同じ)は320%であり、GPCで測定したフリーフェノールは検出限界以下であった。またガスクロマトグラフィーを用いて測定したフリーフェノール量は0.02%であった。またこの樹脂のC13−NMRで測定した結合モル比は1.49であった。
【0025】
実施例2
2リットルの4つ口フラスコに攪拌機、温度計をセットしフェノール941gと37.2%ホルマリン40.3gとを仕込み蓚酸2水和物8.82gを添加し、還流温度100℃に昇温し、更に37%ホルマリン202.7gを1時間かけて滴下した。還流温度で5時間反応した後、蒸留を開始し180℃迄昇温した。その後温度を220℃まで上げ50torr(6.65kPas)で減圧蒸留を1時間行い環球法(B&R法)の軟化点が45℃、ガスクロマトグラフィーで測定した残留フェノール量0.1%、GPCによる数平均分子量610、またC13−NMRで求めた結合モル比が0.75であるノボラック樹脂(Ib)を得た。前記ノボラック樹脂(Ib)をメタノールで固形分80%に希釈して供試した。上記で得られたノボラック樹脂(Ib)のメタノール溶液131.3gと37%ホルマリン36.5gを良く混合し、これに48%水酸化ナトリウム10gを添加し、70℃迄昇温した。70℃で4時間反応した後、常温まで冷却し、レゾール樹脂(IIb)水溶液を得た。この樹脂の粘度は1020mPa・s(25℃)、150℃のゲル化時間は110秒、135℃に於ける不揮発分は68%、水との混和性は250%であった。GPCでの測定した残留フェノールの含有量は検出限界以下であり、GC(ガスクロマトグラフィー)で測定したフリーフェノールは0.01%であった。C−13NMRで測定したこの樹脂の結合モル比は1.20であった。
【0030】
比較例1
1リットル4つ口フラスコにフェノール94.1g、37%ホルマリン121.6gを良く混合し、48%水酸化ナトリウム溶液4.71gを添加し80℃で3時間反応した後、減圧脱水にて25℃の粘度が650mPa・sになるように調整した後、25℃迄冷却しレゾール樹脂(IIg)を得た。この樹脂の不揮発分は73%、150℃でのゲル化時間は85秒、水との混和性は280%で有った。また、この樹脂のGPCにて測定した残留フェノールは8.1%であった。C−13NMRで求めた結合モル比は1.39であった。
【0031】
比較例2
2リットルの4つ口フラスコに攪拌機、温度計をセットしフェノール941g(10モル)と37%ホルマリン40.5g(0.5モル)を仕込み蓚酸2水和物8.82g(0.07モル)を添加し、還流温度(100℃)に昇温し、更に37%ホルマリン527.0g(6.5モル)を1時間かけて滴下した。還流温度で3時間反応した後、蒸留を開始し180℃迄昇温した。その後50torr(6.65kPa)で減圧蒸留を1時間行いB&R法の軟化点88℃、ガスクロマトグラフィーで測定したフリーフェノール量2.1%、GPCによる数平均分子量910、またC13−NMRで求めた結合モル比は0.76であるノボラック樹脂(Ih)を得た。実施例1同様に固形分80%にメタノールで希釈した。上記で得られたノボラック樹脂(Ih)のメタノール溶液131gと37%ホルマリン35.7g(0.44モル)を良く混合し、これに48%水酸化ナトリウム10g(0.12モル)を添加し、70℃迄昇温した。70℃で3時間反応した後25℃まで冷却しレゾール樹脂(IIh)水溶液を得た。このレゾール樹脂(IIh)水溶液の135℃に於ける不揮発分は59.0%、ゲル化時間は110秒、GC(ガスクロマトグラフィー)で測定したフリーフェノールは0.5%であった。また、水との混和性は20%であった。C−13NMRでの結合モル比は1.18であった。
【0032】
比較例3
実施例2で得られたノボラック樹脂(IIb)105gと37%ホルマリン12.1gを良く混合し、これに48%水酸化ナトリウム10gを添加し、70℃迄昇温した。70℃で4時間反応した後25℃まで冷却しレゾール樹脂(IIi)水溶液を得た。このレゾール樹脂の135℃に於ける不揮発分は82%、ゲル化時間は76秒、水との混和性は10%であり、GC(ガスクロマトグラフィー)で測定した残留フェノールは0.02%であった。C−13NMRで測定したこの樹脂の結合モル比は0.91であった。
【0033】
比較例4
1リットル4つ口フラスコにフェノール94.1g、37%ホルマリン97.3gを良く混合し、25%アンモニア水溶液4.71gを添加し80℃で3時間反応した後、水分が1%以下になるまで減圧脱水しそのまま容器に取り出した。得られたレゾール樹脂(IIj)のゲル化時間は115秒、融点は65℃、GPCで測定した残留フェノール量は8.2%であった。C−13NMRで求めた結合モル比は1.05であった。
上記で得られた樹脂の性状値のまとめを表1〜3に示す。
【0034】
【表1】
【0036】
【表3】
【0037】
実施例1〜2、比較例1はから水との混和性が従来と同一で且つ残留フェノールが極めて少ない特徴を示し、実施例実施例4はpH4以上で本発明が有効である事を示す。比較例2と3では用いるノボラックの分子量が高くなるので水混和性が得られない事、実施例5は本発明のノボラック樹脂とフェノールの併用でも残留フェノールは従来品よりすくない事を示す。実施例6と比較例4は本発明の方法で製造した樹脂は高融点で有り、粉末化したときの固化が小さいことを示す。
【0038】
応用例
次に上記の実施例と比較例で得られた樹脂の物性を評価した方法と結果を以下に示す。
【0039】
(1)樹脂の歩留り性測定;樹脂を濃度50%にメタノールで希釈し、濾紙(東洋濾紙No.65)に樹脂固形分60%/濾紙重量40%になるように含浸し、室温で12時間放置した後、80℃で1時間乾燥した後重量を測定する。その後、150℃、200℃、250℃の乾燥炉に各30分放置し重量を測定した。乾燥前後の重量より歩留りを測定した。得られた結果を表4に示す。
【0040】
(2)硬化速度の測定;樹脂を濃度50%にメタノールで希釈し、濾紙(東洋濾紙No.65)に樹脂固形分60%/濾紙重量40%になるように含浸し、室温で1時間放置した後、90℃で予備乾燥を行う。この際最適の硬化条件を得るためには予備乾燥条件が重要であり、樹脂の乾燥性の善し悪しの目安になる。最適の予備乾燥条件で乾燥した後、キュラストメーター(日合商事製キュラストメーターV型)を用いて120℃で硬化速度を測定し比較した。硬化速度は得られたトルクカーブから求めた。即ち、最高トルクの90%硬化時間の時のトルク値−同10%硬化時間の時のトルクをその時間で割った傾きで示す。得られた結果を表5に示す。
【0041】
(3)加熱減量の測定;樹脂を180℃×4時間硬化させた後、75μm〜106μmの大きさに整粒し、空気中の雰囲気、昇温速度10℃/分の条件で加熱減量を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
本発明の製造方法で得られるレゾール樹脂は、残留フェノールのみでなく実質的にレゾール樹脂の1核体成分を全く含まない物を得ることが出来、しかも250℃の高温においても揮発分が非常に少なく、歩留りが従来品より約10%向上する事がわかる。更に低分子物を含まない事に起因し、硬化速度が従来品より格段に速くなり、作業性の向上が図れる。更に特筆すべきは、本発明のレゾール樹脂は従来技術で製造したものに比較し、飛躍的な低加熱減量を示すことが判る。本発明はこれらの性質を生かせる分野即ち、摩擦材、研磨布紙、研削砥石、各種含浸化工、木材加工、耐火材、鋳物、断熱材、塗料、FRP成型用等フェノール樹脂の各種用途に応用可能である。
【0046】
【本発明の効果】
本発明のレゾール型フェノール樹脂は低フリーフェノールで、揮発分が少なく、環境対応型であると同時に、硬化速度が速く作業性に優れる事、硬化物の耐熱性が極めて高いという従来に無かった画期的な特性を有する。
Claims (5)
- アルデヒド類とフェノール類とを〔アルデヒド類〕/〔フェノール類〕=0.3〜0.6〔モル比〕となる割合で反応させて得られたノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを反応させる水溶性レゾール樹脂の製造方法であって、前記ノボラック樹脂(A)が、蓚酸、塩酸、燐酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、及び、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛からなる群から選ばれる1種以上の化合物を反応触媒として用いられたものであり、かつ、前記ノボラック樹脂(A)とアルデヒド類とを反応させる水溶性レゾール樹脂を得る際に、触媒としてアルカリ金属水酸化物を、〔ノボラック樹脂中のフェノール成分のモル数〕/〔アルカリ金属のモル数〕=0.12〜1.00の比率で用いることを特徴とする水溶性レゾール樹脂の製造方法。
- 前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである請求項1記載の水溶性レゾール樹脂の製造方法。
- アルデヒド類とフェノール類とを反応させてノボラック樹脂(A)を製造する際の反応触媒が、蓚酸である請求項1または2記載の水溶性レゾール樹脂の製造方法。
- ノボラック樹脂(A)がアルデヒド類とフェノール類とを反応させ、得られた樹脂を180〜230℃で減圧下で加熱して、樹脂中に含まれる残留フェノール量を、樹脂分の1重量%以下まで減少させたものである請求項1、2又は3記載の水溶性レゾール樹脂の製造方法。
- 水溶性レゾール樹脂の残留フェノール量が1重量%以下である請求項4に記載の水溶性レゾール樹脂の製造方法。
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