JP4012605B2 - 発熱床板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水性及び防湿性に優れかつ汎用の接着剤による床下地パネルとの接着性が良好な発熱床板に関し、特にその裏面材に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の発熱床板として、例えば実開昭62―59991号公報に記載されているように、外殻部材内に発熱体及び断熱材を納めた構造のものが知られている。すなわち、この発熱床板は、木質材料からなる裏面材の対向する両側端部上間に亘り木質桟材を固着するともに、これら桟材の上面間に亘って木質表面材を固着して外殻部材を構成し、その木質桟材間の空間部に断熱材及び発熱体を積層充填して、その発熱体の上面を木質表面材に接触させた構造を有している。
【0003】
しかし、この従来の発熱床板においては、その外郭部材の一部を構成する裏面材に、合板やパーティクルボード等の木質材料が用いられているので、次のような不具合があった。
【0004】
(イ) 床下からの湿気等で裏面材が水分を吸って寸法変化し、その影響で床 表面にも反り等の変形が生じる。また、発熱床板内部にも水分が浸透するので、 発熱体を含む電気部品等の劣化を招き易い。
【0005】
(ロ) 床下地パネルの上面に微小な凹凸や曲がりがあると、裏面材が床下地 パネルに密接し難くなり、両者間の接着不良が起きる。このため、そのような 箇所では床鳴りが起き易い。
【0006】
これらの問題を解決するために、裏面材として金属や樹脂からなる可撓性のある薄板を用いる方法がある。しかし、それらの材料は例えば酢酸ビニル等の汎用接着剤との接着性が悪いので、実用的ではない。そして、接着不良を起こさないためには特殊な接着剤を要し、しかも接着作業に手間がかかるという問題がある。
【0007】
そこで、本願出願人は、汎用の接着剤で従来の木質材料と同様の接着性を得られるようにするために、紙や布等に樹脂を含浸一体化させた樹脂含浸シートを裏面材に用いた発熱床板を提案している(特開平6―264604号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記提案のものでも全く問題がないわけではなく、さらに改良の余地があった。すなわち、提案例の発熱床板における樹脂含浸シートは紙や布等を使用しているため、従来の裏面材に比べれば僅かであるものの、吸水や吸湿による寸法変化や発熱床板内部への水分の浸透が起こるのは避けられない。そのため、強い湿気のある場所に施工され、或いは長年の使用環境によっては、上記(イ)の問題が招来されることがある。そして、僅かな変形でも目立つ箇所では外観上問題視される。
【0009】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、上記裏面材の構造をさらに改良することにより、汎用の接着剤との接着性を損うことなく、発熱床板の水分による寸法変化や発熱床板内部への水分の浸透をさらに安定して確実に防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、発熱床板の裏面材として、水分や暖房程度の熱等による寸法変化の小さい繊維からなる芯材の両面にそれぞれ樹脂層を介して、植物質繊維材料からなる薄シート層を加熱接着した構造のラミネートシートを用いるようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、水平方向に対向して互いに平行に配置された複数の桟材と、該桟材の上面間に亘って接合された表面材と、桟材の下面間に亘って接合された裏面材とを備えてなる外郭部材内に、発熱体及び断熱材を積層して充填してなる発熱床板を前提とする。
【0012】
そして、上記裏面材は、吸湿吸水や暖房の熱等による寸法変化の小さい繊維からなる芯材と、この芯材の表裏面にそれぞれ芯材の全体に亘るように積層された樹脂層と、この樹脂層を介して上記芯材に加熱接着された植物質繊維材料からなる薄シート層とで構成された5層構造のシート状のものとする。
【0013】
上記の構成により、発熱床板の裏面材が、吸湿吸水等による寸法変化の小さい繊維からなる芯材と、この芯材の表裏面にそれぞれ芯材の全体に亘るように積層された樹脂層と、この樹脂層を介して芯材に加熱接着された植物質繊維材料からなる薄シート層とで構成された5層構造のシート状のものであるので、その表裏面の薄シート層が吸湿や吸水により寸法変化を起こそうとしても、それは芯材の繊維や樹脂層により抑制され、裏面材の水分に対する寸法安定性が向上する。しかも、芯材と薄シート層との間に樹脂層が隙間なく介在しているので、水分が裏面材を経て発熱床板内部へ浸透するのも阻止される。その結果、発熱床板が強い湿気の場所へ施工され、或いは長年の使用環境があっても、発熱床板の変形やその内部の電気部品の劣化等を安定してかつ確実に防止することができる。
【0014】
また、裏面材表裏面の薄シート層が植物質繊維材料からなるので、酢酸ビニル等の汎用接着剤との馴染みがよく、桟材や床下地パネルとの接着に汎用の接着剤を作業性よく使用できる。しかもその接着性がよいので、床下地パネルとの接着不良やそれに伴う床鳴りを起こり難くすることができる。
【0015】
請求項2の発明では、上記裏面材の芯材は、一方向に延びる繊維からなる上側繊維層と、該上側繊維層と直交する方向に延びる繊維からなる下側繊維層とが積層一体化されているものとする。これにより、どちらの方向への寸法変化も抑えることができる。
【0016】
請求項3の発明では、上記裏面材の芯材はガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維又はポリエチレンテレフタレート繊維のいずれかからなるものとする。このような繊維は、湿気や暖房程度の熱による伸び縮み等の寸法変化が殆どなく、しかも樹脂層と複合されて強靭化するので、特に好ましい。
【0017】
また、請求項4の発明では、裏面材の樹脂層はポリプロピレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかからなるものとする。これらの樹脂も、防水性が高い上に、湿気や熱に対しても安定しているので、好ましい。
【0018】
さらに、請求項5の発明では、裏面材の薄シート層はクラフト紙、不織布又は織布のいずれかからなるものとする。これら木材繊維等の植物質繊維からなる紙状物や布状物からなる薄シート層は、樹脂層との複合接着化は勿論のこと、特に床下地パネルへの接着を良好かつ確実に行えるものである。
【0019】
よって、これら請求項3〜5の発明では、裏面材の芯材、樹脂層又は薄シート層が容易に得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図2及び図3は本発明の実施形態に係る発熱床板Aを示し、この発熱床板Aは外郭部材1を有する。この外郭部材1は、発熱床板Aの幅方向に水平に対向して長手方向に互いに平行に延びる1対の角棒形状の桟材2,2と、該両桟材2,2の上面間に亘って配置接合された一定幅を有する長尺の長方形板状の表面材3と、両桟材2,2の下面間に亘って配置接合された同様の形状の裏面材4とからなる。そして、この外郭部材1内には両桟材2,2間の空間に発熱体9及び断熱材10がそれぞれ上下に積層されて充填されている。
【0021】
上記発熱床板Aを組み立てる場合、表面材3を裏返してその幅方向両側端部上面にそれぞれ桟材2,2を接着剤等によって固着し、これら両桟材2,2間における表面材3上面の空間部に発熱体9及び断熱材10をそれぞれ順次積層状態に配設し、さらにその上に裏面材4を重ね合わせて、該裏面材4の両側端部下面を両桟材2,2の上面に接着剤等によって一体に固着する。
【0022】
上記各桟材2は合板、パーティクルボード、MDF、ソリッド材等の木質材、或いは金属板から形成されている。
【0023】
また、断熱材10はインシュレーションボード、グラスウール、ロックウール、発泡ウレタン、発泡フェノール等の板状物の単体、又はそれらの2種以上の複合体からなり、必要に応じて合板やネット状物によって補強されたものが使用される。尚、この断熱材10は裏面材4上に接着しておいてもよいが、伸縮による内部応力を発生させないように単に載置状態にしておくことが好ましい。
【0024】
また、発熱体9としては、面状発熱体、線状ヒータ、カーボン系ヒータを用いることができ、この発熱体9上に、表面材3と接するように適宜の金属板等の均熱板や漏電防止用樹脂板を一体的に重ね合わせてもよい。また、発熱体9にはサーモスタットやセンサー、配線コード等が備えられていて、これらが電気部品を構成している。尚、断熱材10と発熱体9とは接着されていなくてもよい。
【0025】
さらに、表面材3は、木材単板や木質単板に不飽和ポリエステル、アクリル、スチレン、フェノール等の合成樹脂液を注入固化してなる合成樹脂注入木材単板、或いは合板、WPC化粧合板、金属板から形成され、木材単板や合成樹脂注入木材単板の場合には、その裏面に適宜厚さを有する合板やMDF、パーティクルボード等の単体又は複合体からなる木質基材を貼り合わせて厚さ2〜15mmの表面板に形成している。尚、この表面材3の下面に上記した均熱板を介して発熱体9を一体的に接着しておいてもよい。
【0026】
本発明の特徴は上記裏面材4の構造にある。すなわち、裏面材4は、図1に拡大詳示するように、疎水性等を有していて寸法変化の小さい繊維からなる芯材5と、この芯材5の表裏面にそれぞれ芯材5の全体に亘る樹脂層6,6を介して加熱接着された植物質繊維材料からなる薄シート層7,7とで構成された5層構造のラミネートシートとされている。
【0027】
上記芯材5は、引張りや圧縮等の物理的な力、及び暖房程度の熱に対する寸法安定性が大きく、また疎水性等により水分に対しても寸法安定性の大きい繊維からなる。この繊維としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。また、この芯材5は、一方向(例えば発熱床板Aの長手方向)に延びる繊維からなる上側繊維層5aと、該上側繊維層5aと直交する方向(同幅方向)に延びる繊維からなる下側繊維層5bとが積層一体化されてなる。芯材5の繊維の繊維径は5〜30μmのものが好ましく、目付量は100〜250g/m2 がよい。
【0028】
また、上記樹脂層6を構成する樹脂は、例えばポリプロピレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、裏面材4の全体に隙間なく介在されている。その塗布量は50〜150g/m2 が好ましい。
【0029】
さらに、上記薄シート層7は、例えばクラフト紙、不織布、織布が用いられ、その目付量は25〜150g/m2 が好ましい。
【0030】
裏面材4の厚さは0.2〜2mmの範囲内に設定されている。この裏面材4の厚さが2mm以上になると、発熱床板A全体が曲がり難くなって床下地材に生じている段差や不陸に対応し難くなるので好ましくない。この裏面材4の厚さは、芯材5の繊維の目付量、各樹脂層6の塗布量及び各薄シート層7の目付量の調整によって設定される。
【0031】
このように構成された発熱床板Aは合板、パーティクルボード、MDF等の床下地パネルB上に、発熱床板Aの裏面材4を酢酸ビニル系やエポキシ系等の通常の接着剤により接着することで施工される。このとき、裏面材4は厚さ0.2〜2mmの薄いラミネートシートからなるので、発熱床板A全体の厚さが薄くなって床下地パネルBに段差や微小な凹凸面等が生じていても良好に密接する。
【0032】
また、上記発熱床板Aの裏面材4は、寸法変化の小さい繊維からなる芯材5と、この芯材5の表裏面にそれぞれ芯材5の全体に亘る樹脂層6,6を介して加熱接着された植物質繊維材料からなる薄シート層7,7とで構成された5層のラミネートシートであるので、その表面の薄シート層7が吸湿や吸水により寸法変化を起こそうとした場合でも、それは芯材5の繊維や樹脂層6により抑制され、裏面材4の水分に対する寸法安定性が向上する。このため、発熱床板Aが強い湿気の場所へ施工され、或いは長年の使用環境があっても発熱床板Aの変形を安定して確実に防止することができる。
【0033】
因みに、本発明者等が具体的に、従来の樹脂含浸シートで構成された裏面材(従来例)と、本実施形態のラミネートシート(芯材の繊維はガラス繊維、樹脂層はポリプロピレン樹脂、薄シート層はクラフト紙)で構成された裏面材(本発明例)との各寸法変化率を同じ条件で測定したところ、従来例の寸法変化率が約0.6%であったのに対し、本発明例の寸法変化率は約0.1%となり、本発明例の裏面材の水分等に対する寸法安定性が大幅に向上しているのが判明した。
【0034】
しかも、上記裏面材4における芯材5と薄シート層7との間に樹脂層6が隙間なく介在しているので、この樹脂層6が湿気に対するバリヤー層となり、水分が裏面材4を経て発熱床板A内部へ浸透しようとするのが阻止される。このため、発熱床板A内の電気部品の劣化等を安定して防止して、その耐久性を向上させることができる。
【0035】
また、裏面材4表面の薄シート層7は植物質繊維材料からなるので、このシート層7と桟材2,2との接着や発熱床板Aと床下地パネルBとの接着にそれぞれ酢酸ビニル等の汎用の接着剤を使用できる。しかもその接着性がよいので、発熱床板Aと床下地パネルBとの接着不良やそれに伴う床鳴りを起こり難くすることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は2の発明によると、発熱床板の外郭部材の一部をなす裏面材を、寸法変化の小さい繊維からなる芯材と、その両面のそれぞれに芯材の全体に亘るように積層された樹脂層と、この樹脂層を介して芯材に加熱接着された植物質繊維の薄シート層とで構成された5層構造のラミネートシートとしたことにより、植物質繊維シート層の吸湿や吸水による寸法変化を芯材の繊維や樹脂層により抑制して、裏面材の水分による寸法変化に起因する発熱床板表面の変形を生じ難くするとともに、水分の裏面材を経た発熱床板内部への浸透を阻止でき、よって発熱床板の変形やその内部の電気部品の劣化等を安定して確実に防止することができる。また、裏面材表面の植物質繊維材料からなる薄シート層を発熱床板の桟材や床下地パネルと接着するために汎用接着剤を使用し、かつその接着性を高めることができ、床下地パネルとの接着不良やそれに伴う床鳴りを有効に防止することができる。
【0037】
請求項3の発明によると、上記裏面材の芯材はガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維又はポリエチレンテレフタレート繊維のいずれかとしたことにより、より強靭で湿気や熱に強い裏面材を形成することができる。
【0038】
また、請求項4の発明によると、裏面材の樹脂層はポリプロピレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかとしたことにより、防湿効果が高く、湿気や熱に対してより安定した裏面材を形成することができる。
【0039】
さらに、請求項5の発明によると、裏面材の薄シート層はクラフト紙、不織布又は織布のいずれかとしたことにより、床下地パネルとの接着をさらに良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る発熱床板の裏面材の拡大断面図である。
【図2】 発熱床板の断面図である。
【図3】 発熱床板の分解斜視図である。
【符号の説明】
A 発熱床板
1 外郭部材
2 桟材
3 表面材
4 裏面材
5 芯材
5a 上側繊維層
5b 下側繊維層
6 樹脂層
7 薄シート層
9 発熱体
10 断熱材

Claims (5)

  1. 水平方向に対向して互いに平行に配置された複数の桟材と、該桟材の上面間に亘って接合された表面材と、桟材の下面間に亘って接合された裏面材とを備えてなる外郭部材内に、発熱体及び断熱材を積層して充填してなる発熱床板において、
    上記裏面材は、寸法変化の小さい繊維からなる芯材と、該芯材の表裏面にそれぞれ芯材の全体に亘るように積層された樹脂層と、該樹脂層を介して上記芯材に加熱接着された植物質繊維材料からなる薄シート層とで構成された5層構造のシート状のものとされていることを特徴とする発熱床板。
  2. 請求項1の発熱床板において、
    裏面材の芯材は、一方向に延びる繊維からなる上側繊維層と、該上側繊維層と直交する方向に延びる繊維からなる下側繊維層とが積層一体化されていることを特徴とする発熱床板。
  3. 請求項1又は2の発熱床板において、
    裏面材の芯材はガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維又はポリエチレンテレフタレート繊維のいずれかからなることを特徴とする発熱床板。
  4. 請求項1〜3のいずれかの発熱床板において、
    裏面材の樹脂層はポリプロピレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂のいずれかからなることを特徴とする発熱床板。
  5. 請求項1〜4のいずれかの発熱床板において、
    裏面材の薄シート層はクラフト紙、不織布又は織布のいずれかからなることを特徴とする発熱床板。
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