JP3911090B2 - 畳床構成材及びそれを使用した畳 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚さの薄い畳床を構成するために用いられる畳床構成材、及び該畳床構成材を使用してなる、厚さの薄い畳に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅設計分野において、和洋折衷住宅として洋間と和室の間に段差のない住宅がバリアフリー住宅として注目されている。従来の畳を用いた場合、和室と洋室との段差を無くすためには、和室の大引きを下げたり、洋室床下地のかさ上げをしたり等の施工が必要となる。そこで従来からの厚さが55mm前後の畳に代えて厚さ7〜25mm程度の薄畳を用いれば施工が容易なうえ、洋室と和室の変更も容易に行なえる。
【0003】
薄畳の畳床構成材として、例えば特開平7−217163号公報、及び特開平8−284381号公報等に記載されているように、畳表に加わる圧力を分散すべくベニヤ板を発泡体に積層してなるものが公知である。上記畳床構成材にクッション材等を積層した後表面を畳表で覆って、薄畳が構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の薄畳用の畳床構成材は、発泡板等の軽量芯材とベニヤ板等から形成されているが、ベニヤ板等は吸水や吸湿が大きく、それ自体に反りが発生し易く、寸法安定性が悪い。また、畳表は強く緊張して畳床に取りつけられるため、寸法安定性が悪いと畳にも反りが生じ易い。またベニヤ板が吸水するとカビの発生を助長するため好ましくない。
【0005】
また、ベニヤ板を使用せずに、単に発泡板等の軽量芯材のみで構成したのでは、局部圧縮力や曲げ強度が不足し、畳床構成材としては不十分である。
【0006】
本発明は上記ベニヤ板を使用することによる問題点の改善を図った、畳床構成材及び薄畳を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)全厚7〜25mmの畳に用いられる畳床構成材において、該畳床構成材は、密度0.02〜0.5g/cm3 の板状体と、最大引裂荷重が300gf以上及び厚さが50〜500μmの押出成形法で製造された合成樹脂シートとを接着一体化してなる、厚さ4〜20mmのものであることを特徴とする畳床構成材、(2)上記板状体が合成樹脂発泡体又は合成樹脂のハニカム構造材からなり、上記合成樹脂シートを構成する合成樹脂と上記板状体を構成する合成樹脂とが同系統の樹脂である上記(1)記載の畳床構成材、(3)上記(1)又は(2)記載の畳床構成材の上面にクッション層を配置し、必要に応じて下面に裏打ち材を配して畳床を構成し、この畳床に畳表を縫着一体化してなることを特徴とする畳、を要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明を詳細に説明する。図1に示すように本発明畳床構成材1は、全厚が7〜25mmの畳を製造する際に該畳を構成する一つの材料として用いられるものであり、密度0.02〜0.5g/cm3 の板状体2と、最大引裂荷重が300gf以上及び厚さが50〜500μmの合成樹脂シート3とを接着一体化してなり、該畳床構成材の全厚さを4〜20mmに形成してなるものである。
【0009】
畳床構成材1は、圧縮強さが1.0kgf/cm2 以上が好ましく、1.3kgf/cm2 以上がより好ましい。上記圧縮強さは、JIS K 7220−1983の圧縮強さの測定方法に従い、試験速度10mm/minにて試験したものを言う。尚、本発明では、当該JISの(2)式のF(降伏ひずみ、規定ひずみ又は比例限における荷重)としては、10%ひずみ時における荷重を採用する。尚、10%ひずみに至るまでに荷重の最大値を示すものの場合にはその間の最大荷重を採用する。畳床構成材1の圧縮強さを1.0kgf/cm2 以上(好ましくは1.3kgf/cm2 以上)とするには、板状体の圧縮強さを1.0kgf/cm2 以上(好ましくは1.3kgf/cm2 以上)とするのが望ましい。
【0010】
板状体2は密度が0.02g/cm3 以上であり0.5g/cm3 以下の、合成樹脂板状発泡体、木質系ボード、無機系ボード、ハニカムコア(ハニカム構造材)、或いはそれらを少なくとも1つ含む複合積層体等が用いられる。
【0011】
合成樹脂板状発泡体は、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の合成樹脂から成る板状発泡体が例示される。発泡成形方法としては、押出発泡成形方法、発泡ビーズの型内成形方法等が例示される。好ましい態様は、押出発泡成形方法により製造されたポリスチレン系樹脂板状発泡体である。最も好ましい態様は、サーキュラーダイスから環状に押出発泡され、軟化状態にある間に挟圧されて内面が融着されてなる密度0.05〜0.2g/cm3 のポリスチレン系樹脂板状発泡体である。最も好ましい態様の発泡板は、曲げ強さ及び曲げ弾性率に特に優れるので、発泡倍率をより高めることができ、これにより軽量性、及び断熱性の高い畳を得ることができる。
【0012】
木質系ボードとしては、パーティクルボード、合板、ハードボード、ミディアムデンシティファイバーボード、インシュレーションボード等が挙げられる。無機系ボードとしては、グラスウール、セラミックファイバー、ロックウール、軽量セメント板、木毛セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の無機材質軽量ボード等が挙げられる。
【0013】
図2に示すようにハニカムコア21は、例えば板面に対して表裏を貫通する方向Tに断面六角形の筒状部23が多数、外周方向へ隣合わせに形成され、板面と平行な断面が多数の六角形が組み合わされてハニカム状に構成された板状部材である。図2に示すハニカムコア21は筒状部23が板面の表裏を貫通しているものであるが、そのような形状に限定されず、筒状部の表裏22が閉塞されたものでもよい。また、ハニカムコアは、図2に示す通常の6角形が集合した断面のものに限られず、特に図示しないが共通の一軸に平行な多数の平板、又は曲面板を組み合わせて成る全ての構造体が含まれる。即ち、ハニカムコアの板面と平行な断面形状は、薄肉の六角形、四角形、三角形、円等が格子状に連続した形状を有するもの等、いずれの形状でもよい。
【0014】
また板状体2として用いられるハニカムコア21は、筒状部23を構成している面が、該板状体2の片面あるいは表裏両面に積層される合成樹脂シート3と垂直になっていればよいのであって、必ずしも隣合う一つ一つの筒状部が互いにくっつき合っている必要はなく、接合部がばらばらに存在していても、ブロック状に存在していても構わない。更にハニカムコアは、各筒状部23の大きさ、形状が全て均一ではなく、ばらばらであってもよいし、単に折れ曲がった帯状体が帯面の任意の点で接着し合った形状であってもよい。
【0015】
ハニカムコア21は、強度の高い畳床構成材1を得るためには、図2に示す一つ一つの筒状部の大きさ(セルサイズ)dが3〜30mmの範囲が好ましく、形状が等しくまた緻密にくっつきあっていることが好ましい。さらに、セルサイズdは3mm程度の微細なものであってもよいし、30mm程度の大きなものであってもよいが、畳床構成材1の強度を高め、合成樹脂シート3との接着性を良好にするためには、各筒状部の底面積を小さくし、各筒状部を形成している材料の厚さを0.1〜1mmの範囲で、できるだけ厚くすることが好ましい。
【0016】
ハニカムコアの材質は、アルミニウム、繊維強化プラスチック(FRP)、紙、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂等いずれでもよく、十分な強度が発現できれば特に限定されないが、紙製のハニカムコア(ペーパーハニカム)は安価かつ軽量で十分な圧縮強度が得られるため好ましい。
【0017】
合成樹脂シート3は、最大引裂荷重が300gf以上のものであればよく、特に材質等は限定されない(但し、繊維で強化されたものは除く)。合成樹脂シート3の最大引裂荷重が300gf未満では、縫着時の糸抜けが生じ易くなる。また、合成樹脂シート3の最大引裂荷重は、5000gf以下が好ましい。合成樹脂シート3の最大引裂荷重が大きくなりすぎると、縫着時の針の通りが悪くなり縫着のスピードが大きく低下してしまう。
【0018】
上記最大引裂荷重は、JIS K 7128−1991のC法で試験速度Bを採用して、合成樹脂シートの縦方向と横方向のそれぞれに対して測定した値である。本発明において合成樹脂シートは、縦方向及び横方向の両方の最大引裂荷重が300gf以上を有するものである。
【0019】
合成樹脂シート3は、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の合成樹脂からなるシートが例示される。合成樹脂シート3の厚さは、50〜500μmのものが用いられ、好ましくは100〜300μmである。合成樹脂シート3の厚さが50μm未満では、畳床構成材としての曲げ強さや、局部圧縮強さ等の強度面での性能が不十分であり、一方厚さが500μmを超えると、畳表や、縁の縫着時の針突き刺し抵抗が大きくなり、加工性が低下してしまう。合成樹脂シート3は押出成形法等で製造されたものが用いられる。
【0020】
畳床構成材1は、上記板状体2の片面、好ましくは両面に合成樹脂シート3を積層し、接着一体化することで製造される。合成樹脂シート3と板状体2との積層は、両者を強固に接合させて、いわゆるスキン・コア構造のサンドイッチパネル状に製造するのが好ましく、このような構造に製造した場合、耐荷重性に優れる。合成樹脂シート3と板状体2との接合方法は、ホットメルト接着剤やエポキシ樹脂等の反応硬化型接着剤等の接着剤を用い、それぞれの接着剤に適合する塗工方法にて接合することができる。また、熱可塑性の合成樹脂発泡体を板状体として用い熱可塑性の合成樹脂シート等と組み合わせた場合は、熱ラミネート機械を用いて両者を熱融着する方法、又は、熱可塑性の合成樹脂発泡体と熱可塑性の合成樹脂シートを一つのダイスから共押し出し方法によって、ダイス内で両者を融着したのち、冷却硬化して一体化する方法等が例示される。また、接合方法は、板状体2と合成樹脂シート3の種類等に応じて適宜決定できるので、上記接着方法に限定されない。
【0021】
合成樹脂シートと板状体との組み合わせは、目的とする畳の強度と、経済性等によって選定されるが、望ましい組み合わせは、板状体として合成樹脂発泡体又は合成樹脂のハニカム構造材を用い、合成樹脂シートを構成する合成樹脂と板状体を構成する合成樹脂とが同系統の樹脂を用いることである。上記構成であれば、板状体と合成樹脂シートとは、熱接着接合法等で容易に接着一体化することが可能であり、得られた畳床構成材はリサイクル適性を備る。更に好ましくは、合成樹脂シートと、合成樹脂発泡体又は合成樹脂のハニカム構造材として、曲げ弾性率の高いポリスチレン系樹脂を用いるのが望ましい。
【0022】
本発明の畳床構成材1は、畳床の主たる機械的強度を発現するためのものであって、畳床とする場合に、当該畳床構成材1のみで用いられることもあるが、該畳床構成材1に、更に防虫シート、クッションシート、吸放湿シート、保護シート、裏面シート等の軟質シートを積層して構成する場合がある。例えば畳床6は、図3〜図5に示すように上記畳床構成材1の表面側にクッション層4を積層し、裏面側に厚紙10、裏打ち材5を積層して構成することができる。
【0023】
図4に示すように本発明の畳9は、上記のように形成された畳床6に、畳表7、畳縁8を縫い付けて得られる。畳9は全厚が7〜25mmに形成される。この場合、畳表7は、緩みがないようにテンションをかけ、緊張状態で畳床6に縫着一体化されている。尚、上記厚紙10は、図5に示すように、畳表7の長手方向端部が巻き込まれて裏面に固定される際、巻込まれた畳表と畳床裏面との間の段差を小さくするために設けたものである。
【0024】
畳床構成材1の厚さは、用いられる畳床6の厚さに応じ適宜決められる。畳床6の厚さは、畳9が使用される住環境の取り合い寸法と、求められる強度性能等によって、全厚が7〜25mmに形成される。上記の通り畳床6にクッション層4、畳表7等の他の材料を積層或いは縫着して畳9とする為、通常、畳床6の厚さは畳9の厚さよりも薄く形成される。従って、畳床構成材1は、他の材料の厚さ等を勘案して、全体の厚さは4〜20mmの間の所定厚さに形成される。畳床構成材1は厚さが4mm未満では十分な強度が得られず、又20mmを超えると、畳とした場合に25mm以下の厚さに形成することが困難となる。
【0025】
本発明の畳は、上記したように厚さが7〜25mmの薄畳であるから、バリアフリー住宅の畳として最適に用いられる。また、軽量で厚さが薄いことから住宅のフローリング等に敷いたり、携帯用の簡易畳としても最適に用いることができる。
【0026】
【実施例】
実施例1〜3
サーキュラーダイスから押し出してチューブ状発泡体の内側を融着してなる密度0.1g/cm3 、厚さ7mmのポリスチレン系樹脂板状発泡体(一畳用サイズ)の表裏両面に、表1に示す厚さのハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)シート(一畳用サイズ)をホットメルト型接着剤を用いて接着一体化し畳床構成材を得た。尚、実施例、比較例共に一畳大の大きさに形成した。
【0027】
実施例4
厚さ1mmのHIPSシートを真空成形してHIPSシートに外径8mm、高さ5mm(シート厚み含む)の円筒状突起を10cm2 あたり100個の割合でシート全体に千鳥状に形成した樹脂ハニカム(密度0.21g/cm3 )を製造し、このハニカムの表裏両面に厚さ150μmのHIPSシートを熱溶着して接着一体化し畳床構成材を得た。
【0028】
実施例5〜6
密度0.3g/cm3 、厚さ7mmインシュレーションボードの表裏両面に、エポキシ系接着剤を用いて、表1に示す厚さのHIPSシートを接着一体化し畳床構成材を得た。
【0029】
実施例7
密度0.033g/cm3 、厚さ7mmの紙製ハニカムパネル〔新日本コア(株)製「ロールコアS−140」〕の表裏両面に、厚さ100μmのHIPSシートをホットメルト型接着剤を用いて接着一体化して畳床構成材を得た。
【0030】
実施例8
密度0.5g/cm3 、厚さ7mmの軽量珪酸カルシウム板の表裏両面に、エポキシ系接着剤を用いて、表1に示す厚さのHIPSシートを接着一体化し畳床構成材を得た。
【0031】
実施例1〜8の畳床構成材について、厚さ、重さ、曲げ弾性率、縫着適性について測定・試験した。結果を表1に示す。縫着適性は、自動表張機を使用して畳床構成材にイグサ製の畳表を縫着一体化して見た。実施例1〜8の畳床構成材を用いたものは、いずれも針の通りが良く糸抜け等の不具合もなく縫着が容易であり、問題となる反りの発生は見られなかった。尚、曲げ弾性率は、JIS A
5711−1989の4.8項の曲げ強さの測定に基づき、JIS K 7211−1984の7.2項の「曲げ弾性率」の計算方法によって算出した。
【0032】
比較例1
密度0.3g/cm3 、厚さ5mmのインシュレーションボードの表面側のみに、厚さ2.7mmのベニヤ板を載せただけのものを畳床とし、実施例と同様に畳床縫着機械を用いて糸で畳表を縫着して従来の畳を得た。得られた畳床について実施例と同様に、測定・試験をした。結果を表1に示す。
【0033】
比較例2
実施例1と同じ板状発泡体の表裏両面に、表1に示す厚さのHIPSシートをホットメルト型接着剤を用いて接着一体化し畳床構成材を得た。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明畳床構成材は、全厚7〜25mmの畳に用いられる畳床構成材において、該畳床構成材は、密度0.02〜0.5g/cm3 の板状体と、最大引裂荷重が300gf以上及び厚さが50〜500mmの押出成形法で製造された合成樹脂シートとを接着一体化してなる、厚さ4〜20mmのものである構成を採用したことにより、ベニヤ板を使用せず、十分な局部圧縮力や曲げ強度が得られ、畳床構成材としては十分な物性を備える。また、ベニヤ板を使用しない為、吸水や吸湿が小さく、それ自体に反りが発生し難く、寸法安定性が良好である。また、ベニヤ板を用いた場合と比較してカビが発生しにくい。
【0036】
本発明畳は上記畳床構成材を用いた為、ベニヤ板のような反りか発生せず、畳表面に凹部が形成されることがなく、きしみ音の発生や、つまづくおそれ等のない、優れた特性の薄畳が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明畳床構成材の1例を示す要部断面図である。
【図2】ハニカムコアの説明図である。
【図3】本発明畳の1例を示し、一部切欠いた状態の斜視図である。
【図4】本発明畳の1例を示し、幅方向の縦断面図である。
【図5】本発明畳の1例を示し、長手方向の縦断面図である。
【符号の説明】
1 畳床構成材
2 板状体
3 合成樹脂シート
4 クッション層
5 裏打ち材
6 畳床
7 畳表
8 畳縁
9 畳
10 厚紙
Claims (3)
- 全厚7〜25mmの畳に用いられる畳床構成材において、該畳床構成材は、密度0.02〜0.5g/cm3 の板状体と、最大引裂荷重が300gf以上及び厚さが50〜500μmの押出成形法で製造された合成樹脂シートとを接着一体化してなる、厚さ4〜20mmのものであることを特徴とする畳床構成材。
- 上記板状体が合成樹脂発泡体又は合成樹脂のハニカム構造材からなり、上記合成樹脂シートを構成する合成樹脂と上記板状体を構成する合成樹脂とが同系統の樹脂である請求項1記載の畳床構成材。
- 請求項1又は2記載の畳床構成材の上面にクッション層を配置し、必要に応じて下面に裏打ち材を配して畳床を構成し、この畳床に畳表を縫着一体化してなることを特徴とする畳。
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