JP4012310B2 - 炭素質固体−水スラリーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低品位の石炭、高品位の石炭あるいはピッチ、コークス等の石油残渣の水スラリーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭を粉砕した石炭粉に水と分散剤等の添加剤を加えてスラリー化した石炭−水スラリー(Coal Water Mixture:以下「CWM」という)は、流体であるためハンドリングが容易であり、しかも重油などに比べて単位熱量当りの価格が低いため、石油に代わる燃料として注目されている。CWMは、熱分解やガス化が良好に行われ、また高い燃焼効率を得るためにも60〜75重量%(水分25〜40重量%)、好ましくは70重量%程度もしくはそれ以上の高濃度であることが要求される。さらにCWMは、輸送効率の観点から好ましい粘度、例えば1000cP(センチポイズ)程度の見掛粘度に調製される必要がある。
【0003】
従来のCWM製造方法では、粗粉原料炭を調整水及び分散剤とともに粉砕機兼混練機に投入し、原料炭を微粉末に粉砕しながら混練を行うか、または粗粉原料炭を粉砕機において湿式微粉砕し脱水して石炭微粉炭脱水ケーキ(以下「脱水ケーキ」とする)を得た後、それを水及び分散剤とともに混練機に投入して混練を行うことにより、CWMを製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来方法では石炭微粉炭の分散が十分に達成されず、炭種を選ばなければ見掛粘度が1000cP程度で石炭の濃度が例えば70重量%程度の高濃度のCWMを得るのは困難である。この点について本発明者は、従来方法では混練開始当初から分散剤を添加しているため、混練機の内容物の流動性が大きく、攪拌した時の抵抗が小さくなるので凝集粒子(二次粒子)を分散させる力が弱いことが原因であると推測している。
【0005】
特にCWMの原料として亜瀝青炭や褐炭のような低品位炭を用いようとすると、低品位炭は、高吸湿性であって高水分であり、しかもフェノール基やカルボキシル基などの酸素含有親水性基が多く含まれているので石炭表面の親水性が高いなどの理由から高濃度CWMを製造することは容易ではない。
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、好ましい見掛粘度でできるだけ高濃度のCWMなどの炭素質固体−水スラリーを得ることができるCWMの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素質固体微粒子含水ケ−キに分散剤を添加せずに剪断力を与えて混練する第1混練工程と、
この第1混練工程で得られた混練物に分散剤を添加して混練し、高濃度な炭素質固体−水スラリーを得る第2混練工程と、を含むことを特徴とする炭素質固体−水スラリーの製造方法である。
他の発明は、炭素質固体を水分の存在下で微粉砕する粉砕工程と、
この粉砕工程で得られたスラリ−を脱水する脱水工程と、
この脱水工程で得られた炭素質固体微粒子含水ケ−キに分散剤を添加せずに剪断力を与えて混練する第1混練工程と、
この第1混練工程で得られた混練物に分散剤を添加して混練し、高濃度な炭素質固体−水スラリーを得る第2混練工程と、を含むことを特徴とする炭素質固体−水スラリーの製造方法である。
【0008】
更にまた他の発明は、低品位の石炭よりなる炭素質固体を水分の存在下で微粉砕する粉砕工程と、 この粉砕工程で得られたスラリ−を加圧加熱下にて熱水により処理して改質する改質工程と、
この改質工程にて得られたスラリ−を脱水する脱水工程と、
この脱水工程で得られた炭素質固体微粒子含水ケ−キに分散剤を添加せずに剪断力を与えて混練する第1混練工程と、
この第1混練工程で得られた混練物に分散剤を添加して混練し、高濃度な炭素質固体−水スラリーを得る第2混練工程と、を含むことを特徴とする炭素質固体−水スラリーの製造方法である。
【0009】
上記発明において、第1混練工程及び第2混練工程の少なくとも一方にて濃度調整用の水を添加するようにしてもよい。また第1混練工程では、例えば前記炭素質固体微粒子含水ケ−キがペ−スト状になるまで混練する。前記炭素質固体微粒子含水ケ−キは石炭濃度が例えば60〜75重量%である。剪断力を与える具体的な方法としては、容器内に炭素質固体微粒子含水ケ−キを投入し、例えば容器内に設けられた回転翼により炭素質固体微粒子含水ケ−キに剪断力を与える。この場合容器は回転するように構成され、回転翼は、前記容器の回転軸にほぼ平行で偏心した位置の軸の回りに回転するように構成されている。なお本発明は、第1混練工程において炭素質固体微粒子含水ケ−キが流動化しない程度に分散剤が少量含まれている場合も技術的範囲に含まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の炭素質固体−水スラリーの製造方法をCWMの製造方法に適用した実施の形態について説明する。
【0011】
図1は本発明方法の実施に使用されるCWM製造装置の全体構成を示す図である。このCWM製造装置は、改質前処理システム1、改質システム2及びCWM化システム3からなる。先ずこの製造装置の全体フローについて簡単に述べると、炭素質固体例えば低品位炭を改質前処理システム1にて湿式粉砕して粉砕炭スラリーを得、これを改質システム2にて改質し、改質後の粉砕炭スラリー(改質炭スラリー)をCWM化システム3にて脱水処理して改質炭ケーキ(脱水ケーキ)を得、さらにその改質炭ケーキに水を加え混練してペースト状にし、それを分散剤とともにさらに混練して製品CWMを得る。
【0012】
次に各システムについて詳述する。
(改質前処理システム)
このシステム1では、出発原料である低品位炭例えば褐炭や亜瀝青炭などを粗砕機11に供給して粗砕し、その粗砕炭を湿式粉砕機12に送り水を加えて粒径3mm以下、好ましくは1mm以下に湿式粉砕するようになっている。瀝青炭の場合は通常700μm以下に粉砕する。この粉砕は、出発原料の硬さに基づき、後述の落圧あるいは混練時の微粉砕効果を考慮して最終製品スラリーの粒度範囲に入るように調整する。必要により分級後、得られた濃度10〜40重量%の粉砕炭スラリーは改質前スラリータンク13に一旦貯留され、ポンプPにより高圧にされて改質システム2へ送られる。
【0013】
(改質システム)
このシステム2では、ポンプPを介して改質前スラリータンク13より供給された高圧の改質前スラリー(粉砕炭スラリー)を加熱器21により例えば250〜330℃に加熱し、それを改質反応器22にて例えば120〜150気圧の高圧水中で通常10〜30分改質し、その改質されたスラリーを冷却器23により冷却した後に高圧タンク24に送り、改質炭スラリーは落圧手段25を介して降圧された後、改質後スラリータンク26に貯留される。
【0014】
(CWM化システム)
このシステム3では、改質後スラリータンク26から供給された改質炭スラリーを脱水機31により脱水処理し、例えば微細な孔が周面に形成された回転筒31aの中から吸引し、スラリーを回転筒31aに付着させて水分を内部に引き込んで固液分離し、ほぼ製品スラリーの水分量(25〜40重量%)と粒度(700μm以下)を有する含水ケーキとする。得られた改質炭ケーキ(脱水ケーキ)を所定量の調整水とともに混練機40に供給し、混練して高濃度の石炭を含有してなるペーストを得るようになっている。 このペーストは、いわば湿った砂を固めたような粘性のない状態の含水ケーキが水飴状、糊状あるいは小麦粉をよく練ったときの団子状のようになったもので、例えば粘度が5000cP以上の状態のものである。そして、このシステム3では、そのペーストをスラリー化混合槽32に送り、その混合槽32に所定量の分散剤を添加し混練して所望の粘度で所望の濃度(通常60〜75重量%)を有するCWMを生成し、移送ポンプ33を介して製品CWMを生じる。
【0015】
図2及び図3には前記混練機40の一例として高速攪拌機が示されている。この高速攪拌機は、有底円筒状でその中心軸を回転軸(図2及び図3に一点鎖線で示す)として比較的低速で回転する攪拌槽をなす容器41と、その容器41とは逆向きに高速回転する攪拌翼42を備えている。
【0016】
容器41は、例えば後の実施例で用いたものは内径が26cm,底面からの上面の高さが26cmであり、その中心軸が斜めに傾いた状態で支持台50により支持されている。容器41の内部には、その中心軸よりも上側の容器内隅部に改質炭ケーキの一部が攪拌されずに留まるのを防ぐ仕切り部材43が設けられる。仕切り部材43は例えば容器41の蓋体44に取り付けられている。
【0017】
攪拌翼42は、回転の支軸となるシャフト45の先端に特に限定しないが例えば外径14cm、幅1.5cmの羽根46が4本放射状に延びて設けられている。攪拌翼42は、そのシャフト45すなわち攪拌翼42の回転軸が容器41の中心軸と平行でかつ容器41の中心軸よりも下側に位置するように、即ち容器41の中心軸に対して偏心した位置にて支持台50により支持されている。攪拌翼42の羽根46は容器41の底面47の近くに位置しており、それによって容器41内の上部から下降してくる改質炭の微粒子を効率よく攪拌することができるようになっている。支持台50には、容器41及び攪拌翼42を回転させるモータ51,52が取り付けられている。
【0018】
なお容器41は、その中心軸が垂直になるように水平に支持され、攪拌翼42の回転軸が前後左右に偏心していてもよく、その場合には容器底部の隅部に仕切り部材等を設け、その隅部に改質炭ケーキの一部が攪拌されずに留まるのを防ぐようにすればよい。また攪拌翼42としては羽根がシャフト45に沿って2段以上設けられていてもよいし、羽根の数は3本以下または5本以上でもよく、更にはまたシャフト45の先端にこれと直交するようにディスク部材を設け、このディスク部材の外周に沿って例えば前記シャフト45と平行な羽根を設けた構成のものであってもよい。攪拌翼は2個以上設けてもよい。
【0019】
前記スラリー化混合槽32は、有底円筒状の容器と、その容器内で回転する回転翼を備えている。
【0020】
前記分散剤としては各種界面活性剤が使用され得る。アニオン系界面活性剤では、リグニンスルホン酸塩、特にそのカルシウム、マグネシウム及びナトリウムの塩、部分脱スルホンリグニンスルホン酸塩であって官能基としてスルホン酸基、カルボキシル基、フェノール性水酸基またはアルコール性水酸基をもつもの、ナフタレンスルホン酸塩、特にそのナトリウムまたはマグネシウムの塩、ポリスチレンスルホン酸塩、特にそのナトリウムの塩、並びにナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物またはそのナトリウムもしくはマグネシウムの塩が好適である。分散剤はこれらのうちから選択される1種または2種以上よりなる。これらの列挙したアニオン系界面活性剤のうちナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物やポリスチレンスルホン酸塩は、温度の高低による性能の変化が小さく、かつスラリー化に必要な添加量が少ないという利点を有する。
【0021】
またノニオン系界面活性剤では、例えばポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートなどが有用である。一般にノニオン系界面活性剤は、泡立ちやすく温度の高低による性能変化が大きいが、親油性が強いため石炭のスラリー化を著しく促進することができるという利点がある。分散剤の添加量は石炭1kgあたり好ましくは3〜10gである。
【0022】
次に上記構成のシステムを用いた本発明に係る製造方法の実施の形態を図1及び図4を参照しながら説明する。まず低品位炭よりなる出発原料を改質前処理システム1にて改質前スラリーとし、それを改質システム2にて改質炭スラリーとする。そしてその改質炭スラリーをCWM化システム3の脱水機31により脱水して脱水ケーキ(改質炭ケーキ)を得る。その脱水ケーキを例えば図2及び図3に示す構成の高速攪拌機よりなる混練機40に粘度調整用の水(調整水)とともに投入し(図4のステップS1参照)、その混練機40を稼動させて脱水ケーキと調整水とを混合し、混練してペースト状にする(図4のステップS2参照)。ペースト状になった時点で混練は終了となり、混練物がペースト状になっていることは目視により確認することができる。このステップS2は第1混練工程に相当し、例えば撹拌翼42の周速度が10〜40m/sec で10〜30分程度行う。続いて、ペースト状の混練物を所定量の分散剤とともにスラリー化混合槽32に投入し(図4のステップS3参照)、そのスラリー化混合槽32を稼動させて混練物を所定量の分散剤と混合し混練する(図4のステップS4参照)。それによって所望の粘度で所望の濃度のCWMが得られる。このステップS4は第2混練工程に相当する。
【0023】
上述実施の形態によれば、脱水ケーキと水と分散剤とからCWMを製造する際に、脱水ケーキの混練開始当初に分散剤を添加せずにケーキと水のみで練ることにより微粒子の分散が促進され、混練物がぺースト状になった時点で分散剤を加えて更に混練することにより、所望の粘度(例えば見掛粘度が1000cP)で石炭を例えば70重量%程度に高濃度に含むCWMが得られる。本発明者の実験によれば、従来の製造方法により得たCWMにおける石炭濃度に比べて6%程度高濃度であった。特に改質反応を受けた低品位炭の微粒子分散に有効である。なお、本発明者は、分散剤を添加せずに混練することによって微粒子の分散が促進されるのは、攪拌した時の抵抗が大きい、すなわち混練物に強い剪断力が作用するので、微粒子が凝集してできた二次粒子が分解するからであると推測している。
【0024】
また上述実施の形態によれば、一般に高価である分散剤の必要量が著しく減るという効果が得られ、コストダウンが図れる。本発明者が行った実験によれば、低品位炭を用いた場合には分散剤の必要量は3分の1になった。これについて本発明者は、低品位炭が改質システム2において改質されたことにより、石炭粉の表面に油分が滲み出し、その油分の分散効果を第1混練工程によって促進させているため分散剤の量が少なくてもかなり分散するのではないかと考えている。また改質を必要としない瀝青炭においては、本来油分が粉体の表面に多少付着していると考えられるので、同様に従来よりも分散剤が少なくて済むと考えられる。
【0025】
さらに上述実施の形態によれば、CWMの品質が向上するとともに、CWM製造システムの簡素化及びプロセスの簡素化が図れ、それによってコストが低減される。
【0026】
以上において本発明は、混練機40で改質炭ケーキを混練する際に混練物が流動化しない程度に少量の分散剤を加えてもよいし、粘度調整用の水をスラリー化混合槽32での混練時に加えてもよい。またスラリー化混合槽32を用いずに混練機40で両プロセスを行ってもよいし、その場合には混練機40に粘度調整用の水を入れるタイミングは混練機40に分散剤を投入する前でも後でもよい。さらに、出発原料として瀝青炭等の高品位炭あるいは石油残渣を用いる場合には、改質システム2による改質処理は不要であり、湿式粉砕機12により微粉砕して得られたスラリーを脱水機31にて脱水処理して混練機40に投入すればよい。
【0027】
また必要に応じて、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール、コロイダルシリカ、カオリン、ベントナイト、アタパルジャイト等の安定剤、さらには燃焼助剤、脱硫剤等をスラリーに加えることもできる。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
原料炭として低品位炭であるアサムアサム炭(インドネシア産亜瀝青炭)を用い、この原料炭を粒径1mm以下にコランダムミルで微粉砕して固体濃度30wt%の石炭−水スラリーを得た。そしてこのスラリーに対して内容積10リットルのオートクレーブ装置を用いて温度約320℃、改質時間10分で熱水処理(改質処理)を行った後、脱水処理を行い改質炭ケーキ(脱水ケーキ)を得た。この改質炭ケーキを図2及び図3に示す構成の混練機に所定量の調整水とともに入れ、周速度が20m/sec で内容物すなわち改質炭の粉末がペースト状になるまで混練りを行った。得られたペーストをスラリー化混合槽に投入し、さらに分散剤としてナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(ハイコール21)を5g/kg-coal の割合で添加して周速度15m/sec で混練りを行った。最後に安定剤としてアタパルジャイトを2000ppm /CWM の割合で添加した。
【0029】
以上において調整水の量を種々変更して種々の粘度のCWMを得た。CWMの粘度と石炭濃度との関係を図5に示す。
【0030】
また1000cPの粘度を得るにあたって分散剤の添加量を種々変更してCWMの見掛粘度の変化を調べた。分散剤の添加量とCWMの粘度との関係を図6に示す。なお図6においてグラフ中に記載された69.5wt%、63.5wt%及び67.0wt%はそれぞれ実施例1、後述する比較例1及び比較例2の1000cPにおける石炭の到達濃度を示している。
【0031】
(比較例1)
図2及び図3に示す構成の混練機を用いずに、従来通りのボールミルのみを用いて、改質炭ケーキの混練当初から調整水とともに分散剤を添加して混練を行ってCWMを得た。その他の条件等は上記実施例1と同様であった。この比較例1においても調整水の量を種々変更してCWMの粘度と石炭濃度との関係を調べた。また1000cPの粘度を得るにあたって分散剤の添加量を種々変更して分散剤の添加量とCWMの粘度との関係を調べた。それらの結果をそれぞれ図5及び図6に示す。
【0032】
(比較例2)
図2及び図3に示す構成の混練機を用い、その混練開始当初から調整水とともに分散剤を添加して混練を行い、CWMを得た。その他の条件等は上記実施例1と同様であった。この比較例1においても調整水の量を種々変更してCWMの粘度と石炭濃度との関係を調べた。また1000cPの粘度を得るにあたって分散剤の添加量を種々変更して分散剤の添加量とCWMの粘度との関係を調べた。その結果を図5及び図6に示す。
【0033】
(考察)
図5から分かるように実施例1では見掛粘度が1000cpにおいておおよそ69.5wt%の石炭濃度が得られ、1000cp近辺の見掛粘度では69.1〜69.9wt%の石炭濃度が得られる。それに対して比較例1では見掛粘度が1000cpにおいておおよそ63.5wt%の石炭濃度しか得られず、1000cp近辺の見掛粘度では62.9〜63.6wt%の石炭濃度しか得られない。従って、目標粘度とした1000cP近辺においては実施例1の方が比較例1よりもおおよそ石炭濃度が6wt%程度高いCWMが得られることが確認された。これは、混練の初期においては分散剤を添加していないことと、混練の初期において剪断力が大きい混練機を用いたことによって、石炭の微粒子が凝集してなる二次粒子の分散が促進され、その結果高濃度化か達成されたと考えられる。
【0034】
また比較例2では、見掛け粘度が1000cP近辺では、およそ65.5wt%の石炭濃度であり、これは実施例1よりも低いものの、ボールミルを用いた場合よりもおよそ2wt%程度高い。従ってこのことから図2及び図3に示す混練機を用いると、混練したときの粒度分布がボールミルの場合よりも良好であり、実施例1の利点は、分散剤の添加時期の利点に加えて、粒度分布についての利点も合わさっていると考えられる。
【0035】
また図6から分かるように見掛粘度が1000cPの場合について分散剤の必要な添加量を比較すると、実施例1では3g/kg-coal であり、比較例1では7g/kg-coal であり、比較例2では5g/kg-coal であった。従って、実施例1のように混練を2段階に分けて行い、分散剤を後段において添加するようにした方が、分散剤を混練開始当初から添加するよりもその必要量が少なくて済むことが確認された。これは、元来凝集状態にあった石炭の粒子群が混練初期の強い剪断力によって適度に解砕され、その状態で分散剤が添加されることによって分散が急速に進み、必要な分散剤の量が減少したと考えられる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、所望の粘度において従来よりも高濃度の炭素質固体−水スラリー例えばCWMを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に使用されるCWM製造装置の一例のフローを示す説明図である。
【図2】そのCWM製造装置において使用される混練機の一例の全体図である。
【図3】その混練機の容器及び攪拌翼を示す部分斜視図である。
【図4】本発明方法による処理手順の要部を示すフローチャートである。
【図5】実施例及び比較例についてCWMの粘度と石炭濃度との関係を示す特性図である。
【図6】実施例及び比較例について分散剤の添加量とCWMの粘度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 改質前処理システム
2 改質システム
3 CWM化システム
31 脱水機
32 スラリー化混合槽
33 移送ポンプ
40 混練機
41 容器
42 攪拌翼
43 仕切り部材
44 蓋体
45 シャフト
46 羽根
47 容器の底面
50 支持台
51,52 モータ
Claims (8)
- 炭素質固体微粒子含水ケ−キに分散剤を添加せずに剪断力を与えて混練する第1混練工程と、
この第1混練工程で得られた混練物に分散剤を添加して混練し、高濃度な炭素質固体−水スラリーを得る第2混練工程と、を含むことを特徴とする炭素質固体−水スラリーの製造方法。 - 炭素質固体を水分の存在下で微粉砕する粉砕工程と、
この粉砕工程で得られたスラリ−を脱水する脱水工程と、
この脱水工程で得られた炭素質固体微粒子含水ケ−キに分散剤を添加せずに剪断力を与えて混練する第1混練工程と、
この第1混練工程で得られた混練物に分散剤を添加して混練し、高濃度な炭素質固体−水スラリーを得る第2混練工程と、を含むことを特徴とする炭素質固体−水スラリーの製造方法。 - 低品位の石炭よりなる炭素質固体を水分の存在下で微粉砕する粉砕工程と、
この粉砕工程で得られたスラリ−を加圧加熱下にて熱水により処理して改質する改質工程と、
この改質工程にて得られたスラリ−を脱水する脱水工程と、
この脱水工程で得られた炭素質固体微粒子含水ケ−キに分散剤を添加せずに剪断力を与えて混練する第1混練工程と、
この第1混練工程で得られた混練物に分散剤を添加して混練し、高濃度な炭素質固体−水スラリーを得る第2混練工程と、を含むことを特徴とする炭素質固体−水スラリーの製造方法。 - 第1混練工程及び第2混練工程の少なくとも一方にて濃度調整用の水を添加することを特徴とする請求項1、2または3記載の炭素質固体−水スラリーの製造方法。
- 第1混練工程では、炭素質固体微粒子含水ケ−キがペ−スト状になるまで混練することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の炭素質固体−水スラリ−の製造方法。
- 炭素質固体微粒子含水ケ−キは石炭濃度が60〜75重量%であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の炭素質固体−水スラリーの製造方法。
- 第1混練工程では、容器内に炭素質固体微粒子含水ケ−キを投入し、容器内に設けられた回転翼により炭素質固体微粒子含水ケ−キに剪断力を与えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の炭素質固体−水スラリーの製造方法。
- 容器は回転するように構成され、回転翼は、前記容器の回転軸にほぼ平行で偏心した位置の軸の回りに回転するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の炭素質固体−水スラリーの製造方法。
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