JP4011212B2 - 立坑の築造工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土留め壁構築による立坑の築造工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
立坑の築造工法としては、鋼矢板工法、SMW工法、地中連続壁工法、ケーソン工法などが挙げられる。
ところで、立坑において、大深度で地盤中の地下水が高い砂質土、粘性土の互層地盤の場合は、掘削底面にヒービング、ボイリング、被圧水による盤膨れの現象が起きる。このため、根入れを必要としないケーソン工法以外は、土留め壁の根入れ長さが長くなる場合が多い。
その根入れ長を低減する方法としては、地下水位低下工法や底盤の地盤改良工法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、地下水位低下工法は、周辺地盤の沈下を伴うため、都市部における採用が困難であり、また、底盤の地盤改良工法は、大深度における工費が極めて高いなどの問題があった。
なお、ケーソン工法は、合理的に根入れ長を短くできるが、鋼矢板工法、SMW工法、地中連続壁工法などよりも一般に工費が高い他、周辺地盤を乱す、工期が長い、圧気作業となる場合は、作業員の健康を害する恐れがあるなどの問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、大深度の立坑において、土留め壁の根入れ長さを短くし、特に、透水係数の高い地盤においても根入れ長さを合理的に短くしながら、地盤中の地下水位の低下を小さく抑えるとともに、工期短縮と工費軽減が図れるようにした立坑の築造工法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決すべく請求項1記載の発明は、土中に土留め壁を構築してから立坑を築造する工法であって、土留め壁構築工程と、土留め壁により囲まれた立坑内部に水を導入して立坑内部を水中掘削する水中掘削工程と、立坑内部の掘削底面に固化剤を投入して掘削底面上に限定的に泥水固化層を形成する限定的泥水固化工程と、泥水固化層上に水中コンクリートを打設する仮設コンクリート打設工程と、立坑内部の水を排水する排水工程と、仮設コンクリート打設により形成される仮設の底版コンクリート上及び立坑内面に本設のコンクリートを打設する本設コンクリート打設工程と、からなり、限定的泥水固化工程において、鋼製枠付きのシートを泥水固化すべき上端位置まで沈設し、このシート下に固化剤を注入して泥水固化層を形成した後、シートを撤去すること、を特徴としている。
【0006】
ここで、土留め壁は、鋼矢板工法、SMW工法、地中連続壁工法などの一般工法により構築する。
泥水固化工法としては、原位置混合方式または固化液置換方式を用いると良い。
仮設の底版コンクリートは、無筋コンクリート構造でも良いし、鉄筋篭を事前に沈設して行う鉄筋コンクリート構造としても良い。
立坑内部の排水は、立坑内部に設置した水中ポンプにより行う。
本設コンクリートは、立坑内面に逆巻きまたは順巻きの何れかによりコンクリートを打設してから、底版コンクリートを打設するのが望ましい。
【0007】
以上のように、請求項1記載の発明によれば、立坑の築造に際して、土留め壁により囲まれた立坑内部に水を導入して立坑内部を水中掘削した後、立坑内部の掘削底面上に限定的に泥水固化層を形成し、その泥水固化層上に水中コンクリートを打設して仮設の底版コンクリートを構築するので、地盤改良工ほどの工期と工費を必要としない。
そして、地盤改良工に比べ、土留め壁と仮設底版コンクリートとの密実な連結状態が得られて、地盤中の地下水位の低下を抑えられる。
さらに、このような仮設底版コンクリート構築後、立坑内部の排水を伴って、仮設の底版コンクリート上及び立坑内面に本設のコンクリートを打設することで、土留め壁構築による立坑の築造が完了する。
しかも、底版下の泥水固化層が不透水層となるので、透水係数の高い地盤においても立坑の根入れ長さを合理的に短くできる。
【0009】
また、請求項1記載の発明によれば、請求項1記載の限定的泥水固化工程において、泥水固化すべき上端位置まで沈設する鋼製枠付きシートを用いるので、泥水固化面と掘削水との境界面を明確にして、泥水固化層の品質向上が図れる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る立坑の築造工法の実施の形態例を図1から図8に基づいて説明する。
先ず、図1は本発明を適用した一例としての土留め壁構築による立坑の築造工法を示すもので、従来工法と対比して示した概略縦断面図、図2は最初の土留め壁構築工程を示した概略縦断面図、図3は続く水中掘削工程を示した概略縦断面図、図4は続く限定的泥水固化工程を示した概略縦断面図である。
なお、図5は限定的泥水固化工程の詳細を拡大して示した要部縦断面図である。
そして、図6は続く仮設コンクリート打設工程を示した概略縦断面図、図7は続く排水工程と本設コンクリート打設工程(壁面施工)を示した概略縦断面図、図8は続く本設コンクリート打設(底版施工)を示した概略縦断面図である。
【0011】
本発明に係る立坑の築造工法は、この実施の形態例では、▲1▼土留め壁構築工程、▲2▼水中掘削工程、▲3▼限定的泥水固化工程、▲4▼仮設コンクリート打設工程、▲5▼排水工程、▲6▼本設コンクリート打設工程の施工手順で行うものである。
なお、図1において、1は土中、2は任意の地層、3は不透水層であり、また、従来工法により不透水層3まで必要であった根入れ長を点線で示している。
【0012】
先ず、▲1▼土留め壁構築工程では、図2に示すように、土中1において、土留め壁11を、設計上許容される最小根入れ長さを確保する深さまで、例えば、鋼矢板工法、SMW工法、地中連続壁工法などの一般工法で構築する。この土留め壁11が立坑12の周壁となる。
【0013】
続いて、▲2▼水中掘削工程では、図3に示すように、土留め壁11により囲まれた土中に水13を導入して、その水中にて立坑12内部の掘削を行う。このような水中掘削は、土留め壁11の安全性を確保できる根入れ長さを残す位置まで行う。
ここで、水13の導入は図示しない適宜の給水設備を用いて行う。また、水中掘削についても、図示しない適宜の掘削機械を用いて行う。
なお、図中、14は掘削底面である。
【0014】
そして、▲3▼限定的泥水固化工程では、図4に示すように、掘削底面14上に泥水固化層15を形成する。
即ち、その詳細を拡大して示した図5のように、鋼製枠16付きのシート17を、その鋼製枠16に繋げたワイヤ18,18で吊り降ろして泥水固化すべき上端位置まで水中に沈設する。
このシート17は、鋼製枠16が土留め壁11の内方寸法よりも若干小さいもので、全周囲にフレキシブルなゴムパッキン19を有しており、シート17には上方に延びる注入ホース20,20が接続して備えられている。
【0015】
このような鋼製枠16付きのシート17を用いて、原位置混合方式または固化液置換方式により、シート17の下方に限定的な泥水固化層15を形成する。
即ち、図示しない固化剤を注入ホース20,20からシート17下の泥水中に注入する原位置混合方式を用いるか、地上で図示しない固化剤を混合した泥水で注入ホース20,20を介しシート17下の泥水と置換する固化液置換方式を用いる。
以上により、シート17と掘削底面14との間に泥水固化層15を形成する。その後、次の▲4▼仮設コンクリート打設工程に先立って、シート17を鋼製枠16に繋げたワイヤ18,18で吊り上げて撤去する。
【0016】
そして、▲4▼仮設コンクリート打設工程では、図6に示すように、立坑12内部の水13中に水中コンクリートを打設して、泥水固化層15上に仮設の底版コンクリート21を形成する。
この仮設底版コンクリート21は、切梁機能を兼ねた押えコンクリートであり、無筋コンクリート構造であっても、図示しない鉄筋篭を事前に沈設した鉄筋コンクリート構造であっても良い。
【0017】
その後、▲5▼排水工程では、先ず、図7に示すように、立坑12内部に設けた水中ポンプ22,22を稼働して立坑12内の水13を排水管23,23から排水することにより、立坑12内の水13を必要深さ、図示例では、半分程度まで減じる。
このように、立坑12内を半分程度までドライアップしてから、壁面を清掃する。
【0018】
そして、▲6▼本設コンクリート打設工程では、先ず、図7に示すように、土留め壁11の上半部内面に沿って逆巻きにより本設の内壁コンクリート24を打設する。
その後、水中ポンプ22,22により立坑12内の残り水13全部をドライアップしてから、図8に示すように、仮設底版コンクリート21上に本設の底版コンクリート25を打設する。
このように、立坑12内を全てドライアップして壁面を清掃してから、図1に示したように、下半部内面に沿って順巻きにより本設の内壁コンクリート26を打設する。
以上によって、立坑12が完成する。
【0019】
以上の通り、本発明に係る立坑の築造工法は、以下に挙げる特徴を有するものである。
(1)土留め壁11は、鋼矢板工法、SMW工法、地中連続壁工法などの一般工法の適用が可能である。
(2)立坑12の内部掘削は、根入れ長さを短くするため、水中掘削としている。
(3)地盤改良工の代わりとして、内部構造物の底版下に限定的に泥水固化層15を構築して不透水層を形成している。
(4)シート17を用いた限定的な泥水固化工法を用いている。
(5)泥水固化層15上に水中コンクリートを打設して切梁兼用の仮設底版コンクリート21を構築している。
(6)必要深さに応じた立坑12内部のドライアップを行い、逆巻きまたは順巻きの本設内壁コンクリート24,26を打設している。
【0020】
そして、本発明に係る立坑の築造工法により得られる主な効果は、以下の通りである。
(1)土留め壁11の根入れ長さが短くできるため、工期短縮・工費軽減できる。
(2)地下水位低下工法を用いないため、地盤沈下などの影響が懸念される都市部においても採用できる。
(3)底版下の泥水固化層15が不透水層となるので、透水性の高い砂地盤においても、立坑の根入れ長を合理的に短くできる。
(4)シート17を用いることで、泥水固化層15上面と掘削水13との境界面を明確にすることができ、泥水固化層15の品質向上が図れる。
(5)泥水固化層15上に水中コンクリートを打設して切梁兼用の仮設底版コンクリート21を構築するため、地盤改良工ほどの工期と工費を必要とせず、内部構造物の側壁と底版を気中で施工ならしめるため、当該部分の品質向上が図れる。
(6)内部構造物の築造にダイバー作業を伴わない。
【0021】
なお、以上の実施の形態例においては、立坑の半分程度までをドライアップして内部構造物の構築を分割して行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、土留め壁の安定性に問題がなければ、立坑の全部をドライアップして内部構造物を分割しないで構築しても良い。
また、排水の手法も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の発明に係る立坑の築造工法によれば、大深度の立坑において、土留め壁の根入れ長さを短くしながら、立坑内部の水中掘削、その掘削底面上への限定的泥水固化層の形成及び水中コンクリート打設により、工期短縮と工費軽減を達成することができ、また、限定的泥水固化層は地盤改良工に比べ、土留め壁と密実な連結状態が得られ、かつ、仮設底版コンクリートが切梁として機能する。
その上、底版下の泥水固化層が不透水層となるため、透水係数の高い地盤においても立坑の根入れ長さを合理的に短くすることができる。
【0023】
また、請求項1記載の発明に係る立坑の築造工法によれば、限定的泥水固化工程において、泥水固化すべき上端位置まで沈設する鋼製枠付きシートを用いることにより、請求項1記載の発明により得られる効果に加えて、泥水固化面と掘削水との境界面を明確にすることができ、従って、泥水固化層の品質向上を図ることができるといった利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一例としての土留め壁構築による立坑の築造工法を示すもので、従来工法と対比して示した概略縦断面図である。
【図2】本発明の工法における最初の土留め壁構築工程を示した概略縦断面図である。
【図3】図2の土留め壁構築工程に続く水中掘削工程を示した概略縦断面図である。
【図4】図3の水中掘削工程に続く限定的泥水固化工程を示した概略縦断面図である。
【図5】図4の限定的泥水固化工程の詳細を拡大して示した要部縦断面図である。
【図6】図4及び図5の限定的泥水固化工程に続く仮設コンクリート打設工程を示した概略縦断面図である。
【図7】図6の仮設コンクリート打設工程に続く排水工程と本設コンクリート打設工程(壁面施工)を示した概略縦断面図である。
【図8】図7に続く本設コンクリート打設(底版施工)を示した概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 土中
2 任意の地層
3 不透水層
11 土留め壁
12 立坑
13 水
14 掘削底面
15 泥水固化層
16 鋼製枠
17 シート
18 ワイヤ
19 ゴムパッキン
20 注入ホース
21 仮設底版コンクリート
22 水中ポンプ
23 排水管
24,26 内壁コンクリート
25 本設底版コンクリート
Claims (1)
- 土中に土留め壁を構築してから立坑を築造する工法であって、土留め壁構築工程と、土留め壁により囲まれた立坑内部に水を導入して立坑内部を水中掘削する水中掘削工程と、立坑内部の掘削底面に固化剤を投入して掘削底面上に限定的に泥水固化層を形成する限定的泥水固化工程と、泥水固化層上に水中コンクリートを打設する仮設コンクリート打設工程と、立坑内部の水を排水する排水工程と、仮設コンクリート打設により形成される仮設の底版コンクリート上及び立坑内面に本設のコンクリートを打設する本設コンクリート打設工程と、からなり、限定的泥水固化工程において、鋼製枠付きのシートを泥水固化すべき上端位置まで沈設し、このシート下に固化剤を注入して泥水固化層を形成した後、シートを撤去すること、を特徴とする立坑の築造工法。
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