JP4010879B2 - 可変動弁機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の運転状況に応じてバルブのリフト量及び作用角を連続的に又は段階的に変化させる可変動弁機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、先に、図11に示すような可変動弁機構50を提案した(特願2001−114551)。可変動弁機構50は、第一ローラ52が回転可能に軸着されるとともに揺動可能に支持されたロッカアーム51と、第一ローラ52の近傍に第一ローラ52を押圧する押圧面54を備えるとともに揺動可能に軸着された第一介在アーム53と、第一介在アーム53に揺動可能に軸着されるとともに回転カム摺接部としての第二ローラ56と制御部材摺接部としての第三ローラ57とを備えた第二介在アーム55と、回転カム59が形成されて回転可能に軸支された1本のカムシャフト58と、制御部材61が形成されて回転可能に軸支された1本の支持シャフト60と、制御部材61の配向角を変えることによりバルブ62のリフト量及び作用角を変化させるリフト制御装置とから構成されている。
【0003】
回転カム59は、第二ローラ56を第二介在アーム55の揺動方向の一方側から押圧し、第二介在アーム55及び第一介在アーム53をその順に介してロッカアーム51を押圧することによりバルブ62をリフトさせる。
【0004】
制御部材61は、第三ローラ57を第二介在アーム55の揺動方向の他方側から押圧するもので、リフト制御装置により配向角が制御されることにより第二介在アーム55の揺動の仕方を変えることを介して第一介在アーム53の揺動開始角を変え、もってカム対応部に対する第一介在アーム53の押圧面54の当接位置を第一介在アーム53の長さ方向に変えることにより回転カム59によるバルブ62のリフト量及び作用角を変化させるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の可変動弁機構50を複数備えた内燃機関では、可変動弁機構50の構成部品の寸法公差によりバルブ62のリフト量が各可変動弁機構間でバラツキが生じ、特に微小リフト時においてはリフト量に対するバラツキの量が相対的に増大するので内燃機関の出力が不安定になる場合があった。この時、寸法の異なる構成部品(例えば第一ローラ52など)を予め用意して、各可変動弁機構毎に寸法の異なる構成部品を取付けることも可能であるが、生産現場での構成部品保管スペース等を考慮すると現実的ではなかった。また、バルブ62の基端に螺入量調整可能にキャップ63を取付けたものもあるが、動弁機構部分における調整手段であり可変機構部分における調整手段は従来存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、微小リフト時における可変動弁機構間のバルブのリフト量のバラツキを容易に調整できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の可変動弁機構は、回転カムとロッカアームとの間に介在部材を往復動可能に介在させ、該介在部材の往復動の起点を制御部材により変位させることにより該ロッカアームに押圧されるバルブのリフト量を変化させる可変動弁機構において、同期してリフトする複数のバルブを複数の気筒毎に又は一つの気筒に設け、複数のバルブに対応して複数の前記可変動弁機構を設け、前記複数のバルブ間の微小リフト時におけるリフト量のバラツキを調整するために、前記制御部材に該制御部材と介在部材との間に介在する調整部材をサイズ選択のうえ取替可能に取り付けることにより、介在部材の往復動の起点を調整するようにし、制御部材は、中心から離れた位置の周りに回動可能に軸着された偏心回動部材であり、調整部材は偏心回動部材に外嵌されることで偏心回動する均一厚さの円形リングであることを特徴としている。
【0008】
心回動部材としては、特に限定されないが、介在部材に当接する円形リングの変形を防止するためには、外嵌される円形リングが全周性に密着するように円板状に形成されたものが好ましい。
【0009】
回転カムに介在部材を介して対応し押圧される部位であるロッカアームのカム対応部は、固定された硬質チップでも回転可能なローラでもよい。但し、摺動抵抗や摩耗を考慮すると、カム対応部はロッカアームに回転可能に軸着されたローラが好ましい。
【0010】
介在部材としては、特に限定されないが、ロッカアームのカム対応部を押圧する押圧部を備えるとともに揺動可能に支持された第一介在アームと、回転カムに摺接して押圧される回転カム摺接部と制御部材に当接して変位を規制される制御部材当接部とを備えるとともに第一介在アームに揺動可能に軸支される第二介在アームとを備えるものが好ましい。
【0011】
回転カム摺接部又は制御部材当接部は、固定された硬質チップでも回転可能なローラでもよい。但し、摺動抵抗や摩耗を考慮すると、回転カム摺接部又は制御部材当接部の少なくとも一方(好ましくは両方)は、第二介在アーム若しくはシーソアームに回転可能に軸着されたローラが好ましい。
【0012】
ロッカアーム、第一介在アーム及び第二介在アームは別の面内で揺動してもよいが、スペース効率上、同一面内で揺動することが好ましい。また、回転カム摺接部及び制御部材当接部が共に回転可能なローラである場合、両ローラは同軸上に並設しても平行な別々の軸上に設けてもよい。また、いずれか一方のローラの1つを対称面にして他方のローラを2つ配するようにし、回転カム及び制御カムから受ける力が第二介在アームにねじれ応力を生じさせないようにしてもよい。
【0013】
ここで、ロッカアームは、次のいずれのタイプでもよい。
(1)ロッカアームの一端部に揺動中心部があり、中央部にカム対応部があり、他端端にバルブ押圧部があるタイプ。(いわゆるスイングアーム)
(2)ロッカアームの中央部に揺動中心部があり、一端部にカム対応部があり、他端端にバルブ押圧部があるタイプ。
【0014】
揺動中心部としては、次の二態様を例示できる。
(a)揺動中心部はピボットに支持された凹球面部である態様。
(b)揺動中心部はロッカシャフトに揺動可能に軸支された軸穴部である態様。
【0015】
上記(a)の態様では、揺動中心部にタペットクリアランス調整機構が設けられることが好ましい。例えば、ピボットに設けた雄ネジをピボット支持材に設けた雌ネジに螺入量調節可能に螺入するようにしたタペットクリアランス調整機構を例示できる。
【0016】
リフト制御装置としては、特に限定されないが、ヘリカルスプライン機構と、油圧を用いた駆動部と、マイクロコンピュータ等の制御装置とを備えたものを例示できる。
【0017】
なお、本発明の可変動弁機構は、吸気バルブ又は排気バルブの何れか一方に適用することもできるが、両方に適用することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施した可変動弁機構の実施形態例について、図1〜図8を参照して説明する。この可変動弁機構は、回転カム20とロッカアーム3との間に介在部材を往復動可能に介在させ、該介在部材の往復動の起点を制御部材により変位させることにより該ロッカアーム3に押圧されるバルブ7のリフト量を変化させるようになっている。また、同期してリフトする複数の(図示例では2つの)バルブ7を複数の(図示例では2つの)気筒毎に設け、複数(図示例では合計4つ)のバルブ7に対応して複数の可変動弁機構(図示例では第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2と)が設けられている。以下、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2とは同一の構成であるので、第一可変動弁機構1についてのみ説明する。
【0019】
ロッカアーム3は、スイングアームタイプのものが使用され、ロッカアーム3の一端部は同部に形成された凹球面部4がピボット5にそれぞれ支持されてなる揺動中心部となっている。ロッカアーム3の他端部は二股状に分かれて、それぞれの先端下部には前述したバルブ押圧部6が凹設され、二つのバルブ7の基端部を二つのバルブ押圧部6がそれぞれ押圧するようになっている。
【0020】
ロッカアーム3の中央部に形成されたローラ配置穴8には、後述する介在部材に押圧されるカム対応部としての第一ローラ9が、ロッカアーム3の上面からやや突出するように配され、該第一ローラ9はアーム側壁と直交する軸の周りに回転可能に軸着されている。
【0021】
ピボット5の軸下部に設けられた雄ネジは、ピボット支持材22に設けられた雌ネジに螺入量調節可能に螺入されて、タペットクリアランス調整機構が構成されている。
【0022】
ロッカアーム3の上方には、回転カム20が形成された1本のカムシャフト21が回転可能に軸支されている。回転カム20は、ベース円20aと、突出量が漸増するノーズ漸増部20bと、最大突出量となるノーズ20cと、突出量が漸減するノーズ漸減部20dとからなる。
【0023】
回転カム20とロッカアーム3との間には、介在部材としての第一介在アーム10と第二介在アーム15とが設けられている。第一介在アーム10は、その基端の円筒部11が第一ローラ9の上方近傍に設けられたアームシャフト12に揺動可能に軸着されている。また、円筒部11からは、ロッカアーム3のバルブ押圧部6側へ向かって延びるアーム部13が設けられ、該アーム部13の下面は、第一ローラ9を押圧するための押圧面19となっている。
【0024】
押圧面19は、第一ローラ9の半径よりも大きい曲率半径の凹曲面に形成され、第一介在アーム10がアームシャフト12の周りを揺動すると第一ローラ9に対する押圧面19の当接位置が第一介在アーム10の長さ方向に変わるようになっていて、その際に押圧面19はその略垂線方向に第一ローラ9を押圧するようになっている。
【0025】
アーム部13の上部に形成された一対のフォーク片14の間には、上方へ延びる第二介在アーム15の下端が配され、該第二介在アーム15は各フォーク片14の内側壁と直交する軸の周りに揺動可能に軸支されている。また、第二介在アーム15の上端に形成された一対のフォーク片16の間には、回転カム20に摺接して押圧される回転カム摺接部としての第二ローラ17が配され、該フォーク片16の両外側には後述する制御部材に当接する制御部材当接部としての2つの第三ローラ18が配されている。すなわち、第二ローラ17を対称面にして2つの第三ローラ18が配されている。
【0026】
第二ローラ17と第三ローラ18とは、フォーク片16の内側壁と直交する同軸上に並設されるとともに、その軸の周りにそれぞれ独立して回転可能に軸着されている。従って、回転カム20が、第二ローラ17を第二介在アーム15の揺動方向の一方側(本例ではロッカアーム3でいうとバルブ押圧部6側)から押圧するようになっている。なお、第二ローラ17と第三ローラ18とは外径が同一であるが、異なっていてもよい。
【0027】
第三ローラ18の上方(必ずしも上方でなくてもよい)であってロッカアーム3でいうと揺動中心部側には、1本の支持シャフト31が回動可能に軸着されている。また、支持シャフト31には、第二介在アーム15の第三ローラ18に当接して第一介在アーム10と第二介在アーム15との往復動の起点を変位させる制御部材が設けられている。
【0028】
制御部材は、円板状に形成され、その中心から離れた位置の周りに回動可能に軸着された偏心回動部材30であり、支持シャフト31の第三ローラ18と同一面内となる位置にそれぞれ設けられるとともに、支持シャフト31の中心から同一方向に同一距離だけ離れた位置に中心が位置させられている。すなわち、偏心回動部材30は、支持シャフト31に偏心した状態に形成されていて、支持シャフト31と共回動するようになっている。
【0029】
また、偏心回動部材30は、支持シャフト31からの突出量が最小となる最小突出部30aと、突出量が最大となる最大突出部30bとを備えており、その側周面を第二介在アーム15の揺動方向の他方側(本例ではロッカアーム3でいうと揺動中心部側)から第三ローラ18に当接させるようになっている。また、全ての偏心回動部材30は、同一外径に形成されている。
【0030】
第一可変動弁機構1のバルブ7と第二可変動弁機構2のバルブ7との間の微小リフト時におけるリフト量のバラツキを調整するために、偏心回動部材30に偏心回動部材30と第二介在アーム15との間に介在する調整部材をサイズ選択のうえ取替可能に取り付けることにより、第一介在アーム10と第二介在アーム15との往復動の起点を調整するようになっている。
【0031】
調整部材は、偏心回動部材30に外嵌されることで偏心回動部材30と共に偏心回動する均一厚さの円形リング33であり、各偏心回動部材30には円形リング33がそれぞれ外嵌されている。円形リング33と偏心回動部材30とは、第三ローラ18と略同一の幅に形成されている。なお、円形リング33と偏心回動部材30とは、第二ローラ17と干渉しない範囲で第三ローラ18と異なる幅でもよい。
【0032】
円形リング33は、偏心回動部材30に外嵌する内径で、厚さの異なる(すなわち外径の異なる)複数のものが用意され、微小リフト時における第一可変動弁機構1のバルブ7のリフト量と第二可変動弁機構2のバルブ7のリフト量とがバラツキなく同一量となるようにサイズ選択され、第一可変動弁機構1の偏心回動部材30と第二可変動弁機構2の偏心回動部材30とにそれぞれ外嵌させられる。
【0033】
支持シャフト31には、偏心回動部材30の配向角を1回転以内の範囲で内燃機関の運転状況に応じ連続的に又は段階的(好ましくは三段階以上、さらに好ましくは四段階以上の多段階)に変えることにより第二介在アーム15の揺動の仕方を変えることを介して第一介在アーム10の揺動起点を変え、もって第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置を第一介在アーム10の長さ方向に変えることにより前記回転カム20によるバルブのリフト量及び作用角を変化させるリフト制御装置(図示略)が接続されている。
【0034】
リフト制御装置は、例えば、ヘリカルスプラインを設けたピストンが油圧により所定角の回転を伴いながら軸方向に移動し、該回転が支持シャフト31を回転させることにより偏心回動部材30の配向角を1回転以内の範囲で変える構造となっており、内燃機関の回転センサやアクセル開度センサ等からの検知値に基づいてマイクロコンピュータ等の制御装置により制御されるようになっている。
【0035】
上記の構成により、外嵌された円形リング33を介在して偏心回動部材30が第二介在アーム15の揺動方向の一方側から第三ローラ18に当接し、回転カム20が第二ローラ17を第二介在アーム15の揺動方向の他方側から斜め下方へ押圧することにより、第二介在アーム15が偏心回動部材30に規制を受けつつ揺動しながら上下動し、それに伴って第一介在アーム10がアームシャフト12を中心として揺動するようになっている。すると第一介在アーム10が第一ローラ9に対する押圧面19の当接位置を第一介在アーム10の長さ方向に変えながら第一ローラ9を押圧するのでロッカアーム3が揺動し、もってバルブ7が押圧されてリフトするようになっている。このとき、回転カム20により第二ローラ17を押圧された第二介在アーム15は所定の角度範囲で揺動しながら上下動し、該第二介在アーム15を介して下方へ押圧された第一介在アーム10も所定の角度範囲で揺動する。
【0036】
またこのとき、偏心回動部材30の配向角を変えて、第三ローラ18に当接する位置を最小突出部30aから最大突出部30bまでの間で移動させると、第三ローラ18が偏心回動部材30から受ける規制量が変化し、回転カム20の押圧により揺動する第二介在アーム15の揺動起点及び上下動起点が変位するため、第一介在アーム10の揺動起点も変位することになる。すると、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置が第一介在アーム10の長さ方向に変わり、具体的には、第一介在アーム10の揺動起点が高いときには押圧面19の当接位置はアーム部13の基端側に移動して第一介在アーム10によるロッカアーム3に対する押圧量が少なくなりバルブ7のリフト量及び作用角が小さくなるが、第一介在アーム10の揺動起点が低いときには押圧面19の当接位置はアーム部13の先端側に移動して第一介在アーム10によるロッカアーム3に対する押圧量が大きくなりバルブ7のリフト量及び作用角が大きくなる。
【0037】
また、偏心回動部材30により薄い(すなわち外径の小さい)円形リング33を外嵌すると、第三ローラ18に対する円形リング33による規制量がやや減少して、第二介在アーム15の揺動起点が直立に近づくとともに上下動起点もやや上昇し、第一介在アーム10の揺動起点及び揺動範囲もやや高い位置に変位する。従って、このとき、押圧面19に対する第一ローラ9の当接位置はアーム部13のより基端側に移動して、バルブ7のリフト量と作用角が小さくなる。
【0038】
また、逆に偏心回動部材30により厚い(すなわち外径の大きい)円形リング33を外嵌すると、第三ローラ18に対する円形リング33による規制量がやや増大して、第二介在アーム15の揺動起点が傾きを増すとともに上下動起点もやや下降し、第一介在アーム10の揺動起点及び揺動範囲がやや低い位置に変位する。従って、このとき、押圧面19に対する第一ローラ9の当接位置はアーム部13のより先端側に移動して、バルブ7のリフト量と作用角が大きくなる。
【0039】
従って、各可変動弁機構の偏心回動部材30に、微小リフト時におけるバルブ7間のリフト量が同一となるようにサイズ選択した円形リング33をそれぞれ外嵌させることで、各可変動弁機構のバルブ7間にリフト量のバラツキが生じなくなるので微小リフト時であっても安定した内燃機関の回転数が得られるようになる。
【0040】
以上のように構成された可変動弁機構は、次のように作用する。
図2(a)、図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)及び図7(a)は第一可変動弁機構1の作用を、図2(b)、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)及び図7(b)は第二可変動弁機構2の作用をそれぞれ示しており、微小リフト時に第一可変動弁機構1のバルブ7と第二可変動弁機構2のバルブ7とが同一リフト量となるように第一可変動弁機構1の偏心回動部材30には厚みがT1の円形リング33が、第二可変動弁機構2の偏心回動部材30には厚みがT2の円形リング33がそれぞれ外嵌されている。
【0041】
まず、図2(a)→図3(a)と図2(b)→図3(b)とは、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2との最大リフト量・最大作用角が必要な運転状況下における偏心回動部材30の配向角度とそれによる作用を示している。
図2(a)、図2(b)に示すように、最大リフト量・最大作用角が必要な運転状況下では、偏心回動部材30は最大突出部30b付近が円形リング33を介在して第三ローラ18に当接するように配向制御される。その状態で、回転カム20のベース円20aの後半部が第二ローラ17に摺接するとき(いわゆるベース時)、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2の第二介在アーム15の揺動起点はロッカアーム3でいうとバルブ押圧部6側に傾き、上下動起点は最も下降した所に変位し、これに伴って、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10の揺動起点は下方へやや傾いた所に変位する。この時、微小リフト時に各動弁機構のバルブ7が同一のリフト量となるように各動弁機構の円形リング33のサイズ選択がされているので、第二介在アーム15の揺動起点及び上下動起点と第一介在アーム10の揺動起点とにはやや違いが生じているものの大きな差異は生じない。また、各動弁機構の第一介在アーム10の揺動起点は下方へやや傾いた所といっても依然として高いため、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置はアーム部13基端側であり、まだ第一可変動弁機構1も第二可変動弁機構2もバルブ7のリフトは発生しない。
【0042】
図3(a)、図3(b)に示すように、偏心回動部材30が図2(a)、図3(b)と同じ配向角度に保たれた状態で、回転カム20のノーズ漸増部20bを経てノーズ20cが第二ローラ17に摺接するとき(いわゆるノーズ時)、各動弁機構の第二介在アーム15は、いずれもロッカアーム3でいうと揺動中心部側に若干揺動しながら下方へ大きく押圧されるため、第一可変動弁機構1の第一介在アーム10と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10とは下方へそれぞれ最大に揺動する。すると、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置はアーム部13先端側に変わり、第一介在アーム10はロッカアーム3を下方へ最大に揺動させるので、第一可変動弁機構1のバルブ7及び第二可変動弁機構2のバルブ7のリフト量Lは発生・増加して最大値Lmax1とLmax2にそれぞれ達し、作用角も最大となる。また、Lmax1とLmax2との差は、Lmax1及びLmax2に比べて小さいため、内燃機関の回転は不安定になることがない。
【0043】
次に、図4(a)→図5(a)と図4(b)→図5(b)とは、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2との微小リフト量・微小作用角が必要な運転状況下における偏心回動部材30の配向角度とそれによる作用を示している。
図4(a)、図4(b)に示すように、微小リフト量・微小作用角が必要な運転状況下では、偏心回動部材30は最小突出部30a寄りの位置が円形リング33を介在して第三ローラ18に当接するように配向制御される。その状態で、回転カム20のベース円20aの後半部が第二ローラ17に摺接するとき(いわゆるベース時)、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2の第二介在アーム15の揺動起点は図2の状態よりも直立に近づき、上下動起点は最も上昇した所のやや下方に変位され、これに伴って、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10の揺動起点は図2の状態よりも高い所に変位する。この時、微小リフト時に各動弁機構のバルブ7が略同一のリフト量となるように各動弁機構の円形リング33の厚さが選定されているので、第二介在アーム15の揺動起点及び上下動起点と第一介在アーム10の揺動起点とには僅かに違いが生じる場合があるものの大きな差異は生じない。また、各動弁機構の第一介在アーム10の揺動起点は図2の状態よりも高いところに変位するので、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置はアーム部13基端側(円筒部11ともいえる)であり、まだ第一可変動弁機構1も第二可変動弁機構2もバルブ7のリフトは発生しない。
【0044】
次に、図5(a)、図5(b)に示すように、偏心回動部材30が図4(a)、図4(b)と同じ配向角度に保たれた状態で、ノーズ20cが第二ローラ17に摺接するとき(いわゆるノーズ時)、各動弁機構の第二介在アーム15は、いずれもロッカアーム3でいうと揺動中心部側に揺動しながら下方へ押圧されるため、第一可変動弁機構1の第一介在アーム10と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10とは下方へ揺動する。すると、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置はアーム部13の基端側から先端側に向けてやや変わり、第一介在アーム10はロッカアーム3を下方へやや揺動させる。またこの時、微小リフト時に各動弁機構のバルブ7が略同一のリフト量となるように各動弁機構の円形リング33の厚さが選定されているので、第一可変動弁機構1のバルブ7と第二可変動弁機構2のバルブ7とは微小増加して同一のリフト量L1となる。また、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2との作用角はともに微小となる(図8参照)。
また、第一可変動弁機構1のバルブ7のリフト量と第二可変動弁機構2のバルブ7のリフト量とが微小なので内燃機関の回転が低回転になるが、円形リング33が各可変動弁機構のバルブ7のリフト量を略同一にするので内燃機関の回転数が安定する。
【0045】
なお、図2と図3との中間的なリフト量・作用角が必要な運転状況下では、図2と図3との中間的な偏心回動部材30の配向角度をリフト制御装置により連続的に又は段階的に作ることで、図5に示すように中間的なリフト量・作用角が連続的に又は段階的に得られる。
【0046】
次に、図6(a)→図7(a)と図6(b)→図7(b)とは、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2とのリフト休止が必要な運転状況下における偏心回動部材30の配向角度とそれによる作用を示している。
図6(a)、図6(b)に示すように、リフト休止が必要な運転状況下では、偏心回動部材30は最小突出部30a付近が円形リング33を介在して第三ローラ18に当接するように配向制御される。その状態で、、回転カム20のベース円20aの後半部が第二ローラ17に摺接するとき(いわゆるベース時)、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2の第二介在アーム15の揺動起点は図4の状態よりもさらに直立に近づき、上下動起点は最も上昇したところに変位し、これに伴って、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10の揺動起点は図4の状態よりもさらに高いところに変位する。この時、微小リフト時に各動弁機構のバルブ7が略同一のリフト量となるように各動弁機構の円形リング33の厚さが選定されているので、第二介在アーム15の揺動起点及び上下動起点と第一介在アーム10の揺動起点とには僅かに違いが生じるものの大きな差異は生じない。また、各動弁機構の第一介在アーム10の揺動起点は図4の状態よりも高いところに変位し、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置はアーム部13基端側(円筒部11ともいえる)であり、まだ第一可変動弁機構1も第二可変動弁機構2もバルブ7のリフトは発生しない。
【0047】
次に、図7(a)、図7(b)に示すように、偏心回動部材30が図6(a)、図6(b)と同じ配向角度に保たれた状態で、ノーズ20cが第二ローラ17に摺接するとき(いわゆるノーズ時)、各動弁機構の第二介在アーム15は、いずれもロッカアーム3でいうと揺動中心部側に揺動しながら下方へ押圧されるため、第一可変動弁機構1の第一介在アーム10と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10とは下方へ揺動する。しかし、第一ローラ9に対する第一介在アーム10の押圧面19の当接位置はアーム部13の基端側からほとんど変わらず、第一可変動弁機構1の第一介在アーム10と第二可変動弁機構2の第一介在アーム10とは、いずれもロッカアーム3を下方へ揺動させないので、各可変動弁機構のバルブ7はいずれもリフトしない。
【0048】
従って、本実施形態の可変動弁機構によれば、第一可変動弁機構1と第二可変動弁機構2とに各動弁機構のバルブ7間の微小リフト時におけるリフト量のバラツキを調整するための円形リング33を各動弁機構の偏心回動部材30に外嵌させたことにより、微小リフト運転が最適なアイドリング時や燃料の必要ない時にも、各動弁機構のバルブ7間のリフト量が略同一に調整されるので内燃機関の回転が安定する。
【0049】
次に、本発明を実施した第二実施形態について、図9を参照して第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態の可変動弁機構は、制御部材当接部の構成と偏心回動部材の数においてのみ第一実施形態と相違するものである。
【0050】
すなわち、本実施形態の可変動弁機構は、第三ローラ18に代えて第二介在アーム15自体が制御部材当接部として機能するものである。第二介在アーム15の上部であって偏心回動部材30に面する側には、第二ローラ17の回転を妨げることなく第二ローラ17の略半周を包み込み、偏心回動部材30に円形リング33を介在させて当接する当接部34が設けられている。
【0051】
また、第二介在アーム15に当接部34を設けたことにより、偏心回動部材30を一つに減らしても、偏心回動部材30を円形リング33を介在させて当接部34に当接させることで第二介在アーム15にねじれ応力を生じさせずに第二介在アーム15を偏心回動部材30により押圧させることができる。
【0052】
また、可変動弁機構をコンパクトにするためにアームシャフト12により近づいた位置に支持シャフト31が移設されている。これに伴って第一介在部アーム10の上部には第一介在アーム10と偏心回動部材30及び円形リング33とが干渉しないように逃がし溝35が設けられている。
【0053】
従って、本実施形態の可変動弁機構は、制御部材当接部の構成と偏心回動部材30の数が異なるものの、基本的には第一実施形態と同様である。そして、本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果が得られるとともに、第三ローラ18を省き、偏心回動部材30を半減させることができるので、部品点数が減って可変動弁機構の構造がシンプルになるとともにコストダウンと軽量化を図ることができる。また、支持シャフト31の移設により可変動弁機構をコンパクトにすることができる。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更して具体化することもできる。
(1)リフト制御装置の構成や制御の仕方を適宜変更すること。
(2)中央部に揺動中心部があるロッカアームとすること。
(3)第三ローラ18及び偏心回動部材30を各可変動弁機構で1つずつに減らすこと。
【0055】
【発明の効果】
本発明の可変動弁機構は、上記の通り構成されているので、従来の駆動系を大きく変えることなく、一本のカムシャフトを回転させて、バルブのリフト量及び作用角を連続的又は段階的に変化させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態に係る可変動弁機構を示す斜視図である。
【図2】図1の最大リフト量・作用角が必要なときの同機構の作用を示す側面図である。
【図3】図2に続いて作用を示す側面図である。
【図4】図1の微小リフト量・作用角が必要なときの同機構の作用を示す側面図である。
【図5】図4に続いて作用を示す側面図である。
【図6】図1のリフト休止が必要なときの同機構の作用を示す側面図である。
【図7】図4に続いて作用を示す側面図である。
【図8】第一実施形態に係る可変動弁機構により得られるバルブのリフト量及び作用角を示すグラフである。
【図9】本発明の第二実施形態に係る可変動弁機構を示す斜視図である。
【図10】従来例の可変動弁機構を示す斜視図である。
【符号の説明】
3 ロッカアーム
7 バルブ
10 第一介在アーム
15 第二介在アーム
20 回転カム
30 制御部材としての偏心回動部材
33 調整部材としての円形リング

Claims (1)

  1. 回転カムとロッカアームとの間に介在部材を往復動可能に介在させ、該介在部材の往復動の起点を制御部材により変位させることにより該ロッカアームに押圧されるバルブのリフト量を変化させる可変動弁機構において、
    同期してリフトする複数のバルブを複数の気筒毎に又は一つの気筒に設け、
    前記複数のバルブに対応して複数の前記可変動弁機構を設け、
    前記複数のバルブ間の微小リフト時におけるリフト量のバラツキを調整するために、前記制御部材に該制御部材と前記介在部材との間に介在する調整部材をサイズ選択のうえ取替可能に取り付けることにより、前記介在部材の往復動の起点を調整するようにし
    前記制御部材は、中心から離れた位置の周りに回動可能に軸着された偏心回動部材であり、前記調整部材は前記偏心回動部材に外嵌されることで偏心回動する均一厚さの円形リングであることを特徴とする可変動弁機構。
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