JP4010102B2 - 残留応力の少ないレールの製造方法および設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱処理レールの製造方法および設備であって、詳しくは熱処理レールの圧延・矯正の後に発生するレール端部残留応力の低減方法およびそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄道車両の高速化や、車両重量化に伴う高荷重化に伴い、高強度レールの需要が増えつつある。高強度レールの製造の際には、一般にレールの頭部に熱処理が施され、このような処理が施されたレールは熱処理レールと呼ばれる。この熱処理は圧延後のAr3温度以上のレールを、その頭部に対して強制冷却を行って、頭部を焼入れ処理するものである。この頭部強制冷却においては、熱処理後に上下方向に曲がりが生じやすいためにレールの足部にも強制冷却を行うことが一般的であり、そのための技術としては、特開昭62−13528号、特開昭63−114923号、特開平5−33057号、特開平10−130730号等がある。
【0003】
しかしながら、レールの頭部と足部に強制冷却を行うと常温になった後のレールの腹部に大きな引張残留応力が発生する。そこで、この腹部引張残留応力を低減するために、ローラー矯正機による繰返し曲げを実施するのが一般的である。
【0004】
ところが、ローラー矯正機による残留応力の低減では、矯正ロールのロール間の距離分だけレールの両端部に圧下されない部分である未矯正部分が生じ、その部分の残留応力は矯正部分のレール中央部に比べ大きくなる。この残留応力の大きい部分については、従来は手作業によるプレス圧下によって残留応力を低減するか、あるいは未矯正部分だけ切り捨てる等の処理を行う必要があり、作業能率を著しく悪化させ或いは製品歩留まりを低下させる問題があった。
【0005】
これまでに、レール腹部の残留応力をコントロールする技術としては、特開平2−282426号公報、特開平8−295938号公報に示す技術がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平2−282426号に記載の発明では、熱処理を行わないレールの腹部に引張の残留応力を発生させる技術であって、もともと熱処理を行わないレールは、頭部、足部に引張の残留応力、腹部に圧縮の残留応力が働いており、それをレールあご下から腹部中立軸まで冷却することによって足部に引張の残留応力を発生させるものである。ところが今検討している頭部足部熱処理をしたレールの両端部では、図6で示すように頭部足部に圧縮の残留応力、腹部に引張の残留応力が働いており、足部ではその応力の符号が逆転しているので、この従来技術は検討している頭部足部熱処理をするレールに対しては効果がない。
【0007】
特開平8−295938号に記載の発明では、レール頭部から噴射される冷媒をガイドによって腹部方向に冷媒を流し、腹部と足部のつなぎ目までを冷却することでレール全体を一様に冷却し、頭部と腹部の温度差の発生による残留応力の発生を軽減させようとする技術である。しかし、この方法はレール全長にわたって冷却を行なう必要があるため、冷却装置全体にわたってガイドを設ける必要がある。また、全長にわたって腹部を冷却すると、熱処理後の矯正段階で矯正機による繰返し曲げを受けるレール中央と、前記矯正機のロール間隔分に相当するレール端部の矯正繰返し曲げを受けない部分とで、矯正後の腹部の残留応力が異なってしまう問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる問題点を解決するためになされた熱処理レールの残留応力低減方法であり、圧延後のレールの頭部を強制冷却、足部を強制冷却する際に、レール両端部の両腹部をも強制冷却し、その後矯正機で上下繰返し曲げによって、残留応力を低減する熱処理レールの製造方法である。
【0009】
すなわち、本発明の残留応力の少ないレールの製造方法およびその設備は以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)圧延後の高温状態にあるレールを熱処理する際に、ローラー矯正機のロール間隔に相当する長さ分以上、当該長さ分の2倍以下の範囲のレール両端部の両腹部を強制冷却し、該レール両端部の両腹部の冷却と同時にまたは相前後して、レール頭部およびレール足部の全長を強制冷却し、前記両腹部の強制冷却および前記レール頭部およびレール足部の強制冷却後のレールにローラー矯正機による矯正を施すことを特徴とする残留応力の少ないレールの製造方法。
【0011】
(2)圧延後のレールを冷却する冷却装置と、該冷却後のレールに矯正を施すローラー矯正機とを備えたレールの製造設備において、前記冷却装置はレール頭部およびレール足部に冷却媒体を噴出させて該レール頭部およびレール足部をレール全長にわたって強制冷却するための冷却装置と、ローラー矯正機のロール間隔に相当する長さ以上、当該長さ分の2倍以下の範囲のレールの両端部の両腹部に相対する位置にそれぞれ設置され、冷却媒体を噴出させて該両腹部を冷却するための腹部冷却装置とを備え、前記レール頭部およびレール足部を強制冷却するための冷却装置と前記腹部冷却装置とが、独立して冷却能力を調整可能であることを特徴とする残留応力の少ないレールの製造設備。
【0012】
(3)腹部冷却装置は、レール端部ほど冷却能力を強くし、端部から離れるほどレール長手方向での冷却能力を弱くするようにレール長手方向での冷却能力分布を有することを特徴とする(2)に記載の残留応力の少ないレールの製造設備。
【0013】
(4)腹部冷却装置はレール腹部に冷却媒体を噴出すための冷却媒体噴出しノズルを備え、該冷却媒体噴出しノズルを多孔板ノズルで構成するとともに、該多孔板ノズルのノズル孔形成密度をレール端部ほど密に、端部から離れるほど疎になるようにレール長手方向で変化させたことを特徴とする(3)に記載の残留応力の少ないレールの製造設備。
【0014】
(5)腹部冷却装置はレール腹部に冷却媒体を噴出すための冷却媒体噴出しノズルを備え、該冷却媒体噴出しノズルをスリットノズルで構成するとともに、該スリットノズルのスリット幅をレール端部ほど広く、端部から離れるほど狭くなるようにレール長手方向で変化させたことを特徴とする(3)に記載の残留応力の少ないレールの製造設備。
【0015】
【発明の実施の形態】
図7はレール各部の名称を示す図である。図1および図2は本発明のレール製造設備において、圧延後のレールを冷却するための冷却装置の一実施形態を示すもので、図1はレール冷却装置の正面図、図2(a)は腹部冷却装置4の側面図、図2(b)は該腹部冷却装置4の多孔板ノズル7bの平面図である。
【0016】
本実施形態の冷却装置は、熱間圧延後の高温状態(一般にAr3温度以上)にあるレールを冷却するためのもので、圧延後、搬送装置により搬送されてきたレールを定位置において冷却するものである。この冷却装置は、レール頭頂部の全長を強制冷却する頭頂部冷却ノズルヘッダー2aおよびこの頭頂部冷却ノズルヘッダー2aに設けられる頭頂部冷却ノズル2bと、レール両頭側部の全長を強制冷却する頭側部冷却ノズルヘッダー3aおよびこの頭側部冷却ノズルヘッダー3aに設けられる頭側部冷却ノズル3bと、レール足部の全長を強制冷却する足部冷却ノズルヘッダー5aおよびこの足部冷却ノズルヘッダー5aに設けられる足部冷却ノズル5bと、レール両端部の所定長さ部分の両腹部を冷却する腹部冷却装置4と、前記各ノズルヘッダーおよび前記腹部冷却装置に冷媒を供給する冷媒搬送管8とを備えている。
【0017】
前記腹部冷却装置4は、レール両端部の両腹部に相対する位置にそれぞれ設置される腹部冷却ノズルヘッダー7aとこの腹部冷却ノズルヘッダー7aに設けられる多孔板ノズル7bとからなる。前記各多孔板ノズル7bは、その略全面に冷却媒体噴出し用のノズル孔が多数形成されている。
【0018】
上記装置を使用して本発明法を実施する場合には、圧延後のAr3温度以上のレールを、レール全長にわたって頭頂部冷却ノズルヘッダー2aおよび頭頂部冷却ノズル2bにより頭頂部を、頭側部冷却ノズルヘッダー3aおよび頭側部冷却ノズル3bにより両頭側部を、足部冷却ノズルヘッダー5aおよび足部冷却ノズル5bにより足部をそれぞれ強制冷却するのに加えて、ローラー矯正機のロール間隔に相当する長さ分以上、当該長さ分の2倍以下の範囲のレール両端部の両腹部を腹部冷却装置4により放冷以上の冷却速度で冷却する。その後ローラー矯正機で上下繰返し曲げによって矯正し残留応力を低減する。
【0019】
腹部冷却装置4により放冷以上の冷却速度で冷却する範囲をローラー矯正機のロール間隔に相当する長さ分以上、当該長さ分の2倍以下の範囲のレール両端部としたのは、ローラー矯正機による残留応力の低減では、矯正ロールのロール間の距離分だけレール両端部に圧下されない部分である未矯正部分が生じ、その部分の残留応力は矯正部分のレール中央部に比べ大きくなるためであり、この部分を腹部冷却装置4で冷却することにより、レールの頭部・足部と、腹部の温度差を小さくして、常温後の残留応力の発生を低減するものである。
【0020】
この残留応力の大きい部分については、従来は手作業によるプレス圧下によって残留応力を低減するか、あるいは未矯正部分だけ切り捨てる等の処理を行っていた。また、未矯正部分の影響は、図8に示すように実際のレールで測定の結果、ロール間隔の2倍程度まで及ぼされていることがわかったので、腹部冷却はロール間隔の2倍程度まで行うこととした。
【0021】
腹部冷却は頭部・足部強制冷却と同時、または頭部・足部強制冷却よりも早く、または頭部・足部強制冷却が終了する迄に冷却開始を行い、頭部・足部冷却平均終了温度と腹部冷却平均終了温度が近づいた状態で腹部冷却を終了させれば良い。また、本実施例での冷却媒体は空気を用いた。
【0022】
図3は本発明のレール製造設備において、圧延後のレールを冷却するための冷却装置の他の実施形態を示すもので、図3(a)は2連の腹部冷却装置4の側面図、図3(b)は2連の該腹部冷却装置4の多孔板ノズル7bの平面図である。
【0023】
本実施形態の冷却装置は、腹部冷却装置4を用いたものでその他は図1および図2に示す第1の実施形態と同様である。
【0024】
前記腹部冷却装置4は、レール両端部の両腹部に相対する位置にそれぞれ設置される2連の腹部冷却ノズルヘッダー7aとこの2連の腹部冷却ノズルヘッダー7aに設けられる同2連の多孔板ノズル7bとからなる。前記各多孔板ノズル7bは、その略全面に冷却媒体噴出し用のノズル孔が多数形成されている。
【0025】
上記装置を使用して本発明法を実施する場合には、上述した図1および図2に示す第1の実施形態の方法と同様である。ただし本実施形態では、腹部冷却装置4が2連の腹部冷却ノズルヘッダー7aとこの2連の腹部冷却ノズルヘッダー7aに設けられる同2連の多孔板ノズル7bとからなり、該多孔板ノズル7bのノズル孔形成密度をレール長手方向で変化させている。これは、レール端部ほど残留応力が強いので、レール端部ほどレール腹部の冷却能力を強くし、必要に応じて端部から離れるほどレール長手方向での冷却能力を弱くする事により、レール全長で残留応力が少なく、安定した熱処理レールの製造を可能としているからである。
【0026】
図4および図5は本発明のレール製造設備において、圧延後のレールを冷却するための冷却装置の他の実施形態を示すもので、図4はレール冷却装置の正面図、図5(a)は2連の腹部冷却装置6の側面図、図5(b)は2連の該腹部冷却装置6のスリットノズル9bの平面図である。
【0027】
本実施形態の冷却装置は、腹部冷却装置6を用いたものでその他は図1および図2に示す第1の実施形態と同様である。
【0028】
前記腹部冷却装置6は、レール両端部の両腹部に相対する位置にそれぞれ設置される2連の腹部冷却ノズルヘッダー9aとこの2連の腹部冷却ノズルヘッダー9aに設けられる同2連のスリットノズル9bとからなる。
【0029】
上記装置を使用して本発明法を実施する場合には、上述した図1および図2に示す第1の実施形態の方法と同様である。ただし本実施形態では、腹部冷却装置6が2連の腹部冷却ノズルヘッダー9aとこの2連の腹部冷却ノズルヘッダー9aに設けられる同2連のスリットノズル9bとからなり、該スリットノズル9bのスリット幅をレール長手方向で変化させている。これは、レール端部ほど残留応力が強いので、レール端部ほどレール腹部の冷却能力を強くし、必要に応じて端部から離れるほどレール長手方向での冷却能力を弱くする事により、レール全長で残留応力が少なく、安定した熱処理レールの製造を可能としているからである。
【0030】
【実施例】
図9にソーカット(saw cut)法の試験方法を示す。このソーカットの試験方法は、長さ600mm以上のレール腹部のほぼ中央部に長さ400mm、切断間隔6mmのスリットを入れるもので、切断前のHと切断後のH’のそれぞれの値から、ソーカット値(△H(=H’−H))を求める。頭部と足部の残留応力が圧縮、腹部の残留応力が引張の場合は一般に△Hはマイナス、頭部と足部の残留応力が引張、腹部の残留応力が圧縮の場合は一般に△Hはプラスとなり、引張と圧縮の残留応力差が大きいほどその△Hの値が大きい。
【0031】
(実施例1)
図1および図2の装置を用いて本発明法を実施した。本設備においてレール矯正機のロール間隔は500mmである。この実施例では図2に示すように長さ500mmにわたって腹部冷却装置4を設置し、孔径φ2.5mmの多孔板ノズル7bを長手方向に均等に配置した。
【0032】
図1に示す冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aおよびこれらの冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aに設けられる冷却ノズル2b、3b、5bと腹部冷却装置4により熱間圧延後の136REレールを約100秒オシレーション(往復移動)させてエアーによる冷却を行った。頭頂部と頭側部の熱伝達率は約510[kcal/ m2hr℃]、足部の熱伝達率は約380[kcal/ m2hr℃]、腹部の熱伝達率は約200[kcal/ m2hr℃]であった。この熱処理レール1を冷却後、常温まで放冷させ矯正機で圧下をかけて通過させた。
【0033】
矯正後の熱処理レール1について、端部から100mmずつ、端部から1000mm以降は500mmずつソーカット値10を調査した結果、図10に示すようにレール端部のソーカット値10は全て0〜−2mmの間となりレール全長の中央部でも−1〜−2mmであった。
(実施例2)
図1および図3の装置を用いて本発明法を実施した。本設備においてレール矯正機のロール間隔は500mmである。この実施例では図3に示すように長さ1000mmにわたって500mmの腹部冷却装置4を2台設置し、孔径φ2.5mmの多孔板ノズル7bを、端部はノズル孔形成密度を密に、端部から500mmの位置でノズル孔形成密度を疎になるよう長手方向で変化を付けたノズル配置を、また端部から500mm〜1000mmの間においては一様に疎なノズル孔形成密度の多孔板ノズル7bの配置を行った。
【0034】
図1に示す冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aおよびこれらの冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aに設けられる冷却ノズル2b、3b、5bと腹部冷却装置4により熱間圧延後の136REレールを約100秒オシレーションさせてエアーによる冷却を行った。頭頂部と頭側部の熱伝達率は約510[kcal/ m2hr℃]、足部の熱伝達率は約380[kcal/ m2hr℃]、腹部のノズル孔形成密度が密な多孔板ノズル7b配置部分は熱伝達率は約200[kcal/ m2hr℃]、ノズル孔形成密度が疎な多孔板ノズル7b配置部分では約90[kcal/ m2hr℃]であった。この熱処理レール1を冷却後、常温まで放冷させ矯正機で圧下をかけて通過させた。
【0035】
矯正後の熱処理レール1について、端部から100mmずつ、端部から1000mm以降は500mmずつソーカット値10を調査した結果、図11に示すようにレール端部のソーカット値10は全て−1〜−2mmの間の値となりレール全長の中央部でも−1〜−2mmであった。
(実施例3)
図4および図5の装置を用いて本発明法を実施した。本設備においてレール矯正機のロール間隔は500mmである。この実施例では図5に示すように長さ1000mmにわたって500mmの腹部冷却装置4を2台設置し、端部はスリット幅0.8mm、端部から500mmの位置ではスリット幅0.3mmのスリットノズル9bをそのスリット幅を一様に変化させて配置し、端部から500mm〜1000mmの間においてはスリット幅0.3mmの長手方向に一定なスリットノズル9bを配置した。
【0036】
図4に示す冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aおよびこれらの冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aに設けられる冷却ノズル2b、3b、5bと腹部冷却装置6により熱間圧延後の136REレールを約100秒オシレーションさせてエアーによる冷却を行った。頭頂部と頭側部の熱伝達率は約510[kcal/ m2hr℃]、足部の熱伝達率は約380[kcal/ m2hr℃]、熱伝達率は端部のスリット直下付近で約240[kcal/ m2hr℃]、端部から500mmの位置でのスリット直下付近では約110[kcal/ m2hr℃]であった。この熱処理レール1を冷却後、常温まで放冷させ矯正機で圧下をかけて通過させた。
【0037】
矯正後の熱処理レール1について、端部から100mmずつ、端部から1000mm以降は500mmずつソーカット値10を調査した結果、図12に示すようにレール端部のソーカット値10は全て−1〜−2mmの間の値となりレール全長の中央部でも−1〜−2mmであった。
(比較例1)
第1の比較例を図13に示す。図13の冷却装置は、レール頭頂部の全長を強制冷却する頭頂部冷却ノズルヘッダー2aおよびこの頭頂部冷却ノズルヘッダー2aに設けられる頭頂部冷却ノズル2bと、レール両頭側部の全長を強制冷却する頭側部冷却ノズルヘッダー3aおよびこの頭側部冷却ノズルヘッダー3aに設けられる頭側部冷却ノズル3bと、レール足部の全長を強制冷却する足部冷却ノズルヘッダー5aおよびこの足部冷却ノズルヘッダー5aに設けられる足部冷却ノズル5bとを備えている。本設備においてレール矯正機のロール間隔は500mmである。
【0038】
図13に示す冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aおよびこれらの冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aに設けられる冷却ノズル2b、3b、5bにより熱間圧延後の136REレールを約100秒オシレーションさせてエアーによる冷却を行った。頭頂部と頭側部の熱伝達率は約510[kcal/ m2hr℃]、足部の熱伝達率は約380[kcal/ m2hr℃]、腹部は放冷状態で冷却を行った。この熱処理レール1を冷却後、常温まで放冷させ矯正機で圧下をかけて通過させた。
【0039】
矯正後の熱処理レール1について、ソーカット値10を調査した結果、レール全長の中央部は−1〜−2mmであったが、図8に示すように最端部では−6mmとなった。従ってこの場合、端部約500mmを切落とすか、手作業のプレスにより端部の残留応力の解放を行うしかない。端部を切落とす場合は歩留まりの低下につながり、手作業でプレスを行う場合も作業効率を著しく悪化させていた。
【0040】
(比較例2)
第2の比較例では、本発明の実施例1の図1に示す腹部冷却装置4をレール全長にわたって設置した。また、腹部冷却装置4は孔径φ2.5mmの多孔板ノズル7bを長手方向に均等に配置した。また、本設備においてレール矯正機のロール間隔は500mmである。
【0041】
図1に示す冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aおよびこれらの冷却ノズルヘッダー2a、3a、5aに設けられる冷却ノズル2b、3b、5bと腹部冷却装置4により熱間圧延後の136REレールを約100秒オシレーションさせてエアーによる冷却を行った。頭頂部と頭側部の熱伝達率は約510[kcal/ m2hr℃]、足部の熱伝達率は約380[kcal/m2hr℃]、腹部の熱伝達率は約200[kcal/ m2hr℃]であった。この熱処理レール1を冷却後、常温まで放冷させ矯正機で圧下をかけて通過させた。
【0042】
矯正後の熱処理レール1について、ソーカット値10を調査した結果、図14に示すようにレール端部では0〜−2mmであったが、レール全長の中央部では1〜2mmと逆の符号の値となった。これは、レール端部のソーカット値10を小さくなる様に矯正条件を調整すると、端部のソーカット値10は小さくても逆にレール全長の中央部が過矯正となってソーカット値10が逆の符号になる。
【0043】
また、レール全長の中央部のソーカット値10を0〜−1mmになるように矯正条件を調整すると、腹部冷却をした端部側は腹部冷却の効果はあるものの矯正の効果が下がり、図15に示すように端部のソーカット値10は−2〜−4mmとなった。つまり、全長にわたって腹部冷却を行うと、矯正条件を変えてもレール全長で均一な残留応力を得ることができない。
【0044】
以上述べた実施例と比較例の端部と中央部のソーカット値の結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明の熱処理レール用腹部冷却装置を用いれば、矯正後の熱処理レールにおいても全長にわたって安定した残留応力を得ることができ、鉄道の安全性を高め、かつ歩留まりの低下や作業効率の悪化を防ぐことができる。
【0045】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレール製造設備において圧延後のレールを冷却するための冷却装置の一実施形態を示す正面図(実施例1および2のレール冷却装置の正面図)
【図2】(a)図1に示す冷却装置における腹部冷却装置4の側面図
(b)図1に示す冷却装置における腹部冷却装置4の多孔板ノズル7bの平面図
【図3】(a)図1に示す冷却装置における腹部冷却装置4の側面図
(b)図1に示す冷却装置における腹部冷却装置4の多孔板ノズル7bの平面図
【図4】本発明のレール製造設備において圧延後のレールを冷却するための冷却装置の他の実施形態を示す正面図(実施例3のレール冷却装置の正面図)
【図5】(a)図4に示す冷却装置における腹部冷却装置6の側面図
(b)図4に示す冷却装置における腹部冷却装置6のスリットノズル9bの平面図
【図6】(a)熱処理後未矯正レールの残留応力分布を示すグラフ
(b)図6(a)の残留応力を測定した位置を示すレールの断面図
【図7】レールの各部の名称を説明する断面図
【図8】通常(比較例1)のレール端部のソーカット値を示すグラフ
【図9】ソーカットによるレール残留応力試験方法を説明する模式図
【図10】図1に示す冷却装置により冷却されたレール端部のソ−カット値を示すグラフ(実施例1)
【図11】図1に示す冷却装置により冷却されたレール端部のソ−カット値を示すグラフ(実施例2)
【図12】図4に示す冷却装置により冷却されたレール端部のソ−カット値を示すグラフ(実施例3)
【図13】比較例1のレール冷却装置の正面図
【図14】比較例2におけるレール端部のソ−カット値を示すグラフ
【図15】比較例2で矯正条件を調整した場合におけるレール端部のソ−カット値を示すグラフ
【符号の説明】
1 レール
2a 頭頂部冷却ノズルヘッダー
2b 頭頂部冷却ノズル
3a 頭側部冷却ノズルヘッダー
3b 頭側部冷却ノズル
4 腹部冷却装置
5a 足部冷却ノズルヘッダー
5b 足部冷却ノズル
6 腹部冷却装置
7a 腹部冷却ノズルヘッダー
7b 多孔板ノズル
8 冷媒搬送管
9a 腹部冷却ノズルヘッダー
9b スリットノズル
10 ソーカット値
Claims (5)
- 圧延後の高温状態にあるレールを熱処理する際に、ローラー矯正機のロール間隔に相当する長さ以上、当該長さ分の2倍以下の範囲のレール両端部の両腹部を強制冷却し、該レール両端部の両腹部の冷却と同時にまたは相前後して、レール頭部およびレール足部の全長を強制冷却し、前記両腹部の強制冷却および前記レール頭部およびレール足部の強制冷却後のレールにローラー矯正機による矯正を施すことを特徴とする残留応力の少ないレールの製造方法。
- 圧延後のレールを冷却する冷却装置と、該冷却後のレールに矯正を施すローラー矯正機とを備えたレールの製造設備において、前記冷却装置はレール頭部およびレール足部に冷却媒体を噴出させて該レール頭部およびレール足部をレール全長にわたって強制冷却するための冷却装置と、ローラー矯正機のロール間隔に相当する長さ以上、当該長さ分の2倍以下の範囲のレールの両端部の両腹部に相対する位置にそれぞれ設置され、冷却媒体を噴出させて該両腹部を冷却するための腹部冷却装置とを備え、前記レール頭部およびレール足部を強制冷却するための冷却装置と前記腹部冷却装置とが、独立して冷却能力を調整可能であることを特徴とする残留応力の少ないレールの製造設備。
- 腹部冷却装置は、レール端部ほど冷却能力を強くし、端部から離れるほどレール長手方向での冷却能力を弱くするようにレール長手方向での冷却能力分布を有することを特徴とする請求項2に記載の残留応力の少ないレールの製造設備。
- 腹部冷却装置はレール腹部に冷却媒体を噴出すための冷却媒体噴出しノズルを備え、該冷却媒体噴出しノズルを多孔板ノズルで構成するとともに、該多孔板ノズルのノズル孔形成密度をレール端部ほど密に、端部から離れるほど疎になるようにレール長手方向で変化させたことを特徴とする請求項3に記載の残留応力の少ないレールの製造設備。
- 腹部冷却装置はレール腹部に冷却媒体を噴出すための冷却媒体噴出しノズルを備え、該冷却媒体噴出しノズルをスリットノズルで構成するとともに、該スリットノズルのスリット幅をレール端部ほど広く、端部から離れるほど狭くなるようにレール長手方向で変化させたことを特徴とする請求項3に記載の残留応力の少ないレールの製造設備。
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