JP3341612B2 - 熱間圧延鋼板の制御冷却方法および装置 - Google Patents

熱間圧延鋼板の制御冷却方法および装置

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JP3341612B2
JP3341612B2 JP01712397A JP1712397A JP3341612B2 JP 3341612 B2 JP3341612 B2 JP 3341612B2 JP 01712397 A JP01712397 A JP 01712397A JP 1712397 A JP1712397 A JP 1712397A JP 3341612 B2 JP3341612 B2 JP 3341612B2
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峻一 杉山
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高橋  功
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】この発明は、熱間圧延鋼板特に厚鋼板の冷
却方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、厚鋼板の製造プロセスとして、熱
間圧延直後の熱延鋼板を、オンラインで制御冷却するオ
ンライン制御冷却方法が行われている。この方法によれ
ば、鋼板に対し高強度および高靱性が付与されるほか、
合金元素の低減および省熱処理などのコスト削減効果も
得られる。
【0003】しかしながら、一般に圧延後の熱延鋼板に
おいては、その温度分布、鋼板の形状および表面性状等
が必ずしも均一ではないために、冷却中に、鋼板に冷却
むらが発生しやすく、その結果、冷却後の鋼板に、変
形、残留応力、材質の不均一等が生じ、品質不良や操業
上のトラブルを招いている。
【0004】従来から、鋼板を均一に冷却して、冷却む
らの発生を抑制する手段が数多く提案されており、例え
ば、次のような技術が開示されている。 (1) 特開昭62−289316号公報:鋼板の冷却を、
前段冷却と後段冷却の2段に分け、前段冷却で鋼板の表
面温度を100℃以上低下させ、次いで、後段冷却で鋼
板を所定温度まで冷却することにより、鋼板の板幅方向
の温度差を減少させる方法(以下、先行技術1とい
う)。
【0005】(2) 特開平7−284836号公報:鋼板
の冷却を、前段冷却と後段冷却の2段に分け、前段冷却
と後段冷却との間で一旦冷却を停止し、鋼板表面温度が
復熱して750〜650℃になるように前段冷却を調整
し、後段冷却では所望の冷却水量で冷却することによっ
て、鋼板温度の均一性を向上させる方法(以下、先行技
術2という)。
【0006】図7は、先行技術2の概略説明図である。
冷却設備は、前段冷却ゾーンa、複熱ゾーンb、後段冷
却ゾーンcから構成されており、テーブルローラ2上を
移送される鋼板1は、前段冷却ゾーンaにおいて冷却ノ
ズル4により冷却された後、復熱ゾーンbにおいて75
0〜650℃の温度に復熱され、次いで、後段冷却ゾー
ンcにおいて冷却ノズル3により後段冷却される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先行技
術1の方法においては、前段冷却で鋼板内に温度むらが
発生すると、引き続き行われる後段冷却において温度む
らが積算される結果、鋼板の冷却むらが更に拡大する問
題が生ずる。
【0008】また、先行技術2の方法により、鋼板を前
段冷却し次いで復熱させて鋼板の表面温度を750〜6
50℃となし、更に後段冷却を施すと、復熱させないで
連続冷却させた場合に比べて温度むらは減少する。しか
しながら、後段冷却を連続的に行うと、鋼板の表面温度
が750〜650℃であっても、再び局所的に膜沸騰が
生じ、鋼板に温度むらが発生しこれが拡大する問題が生
ずる。また、前段冷却と後段冷却との間に、復熱ゾーン
を設ける必要があるために、冷却設備全体が長大にな
り、設備のレイアウトに制約が生ずる。
【0009】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、熱間圧延された高温鋼板をオンラインで制御
冷却するに際し、冷却中の鋼板に生ずる温度むらを減少
させると共に、設備をコンパクト化することができる、
熱間圧延鋼板の制御冷却方法および装置を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】一般に、高温の鋼板を水
冷すると、冷却中の鋼板の表面温度に応じて、3つの冷
却形態即ち沸騰現象が生ずる。図1は冷却条件を一定に
した場合の、鋼板表面温度と熱流束との関係を示した図
である。図1から明らかなように、高温の鋼板を冷却す
ると、まず、鋼板表面と冷却水との間に蒸気膜が存在す
る膜沸騰状態になる。この膜沸騰状態は、鋼板の表面温
度が非常に高いために、冷却水が鋼板の表面に到達する
前に蒸発して鋼板に直接接触することがない沸騰現象で
あり、鋼板と冷却水との間に常に蒸気膜が存在するため
に、熱流束が小さく、冷却能が低い。
【0011】鋼板の表面温度が低下してくると、やがて
膜沸騰から遷移沸騰へと移行する。遷移沸騰領域では、
鋼板表面を覆っていた安定した蒸気膜が、もはや安定し
て存在できなくなり、局所的に崩壊して、冷却水と鋼板
表面とが直接接触するようになる。このとき、熱流束は
急激に増大し、膜沸騰状態は、遷移沸騰に移行する。
【0012】更に鋼板の表面温度が低下すると、鋼板表
面に蒸気膜が存在しなくなり、鋼板のほぼ全表面が冷却
水と接触し、局所的に蒸気泡が発泡した状態すなわち核
沸騰になる。このとき、熱流束は極大点を迎え、その
後、徐々に減少する。
【0013】上述したように、沸騰現象には、膜沸騰、
遷移沸騰および核沸騰の3つの沸騰状態が存在するが、
その熱伝達特性から、温度の降下とともに熱流束が減少
する膜沸騰および核沸騰と、温度の降下とともに熱流束
が増大する遷移沸騰とにわけられる。
【0014】一般に、熱間圧延後の鋼板を水冷する際、
圧延後の鋼板の表面温度や表面性状は均一ではないの
で、仮に均一な冷却を行っても、冷却過程において鋼板
に局所的な温度むらが生ずることは避けられない。
【0015】この温度むらが生ずることは、前述した沸
騰形態を用いて次のように説明される。即ち、高温鋼板
を冷却すると、膜沸騰、遷移沸騰、核沸騰を通過して低
温に到達するが、鋼板表面温度が遷移沸騰領域の場合、
冷却開始時に温度が高い部分は温度の低い部分に比べ
て、熱流束が小さいために、冷却が遅れるのに対し、温
度が低い部分は逆に熱流束が大きいために、冷却が促進
される。その結果、両者の温度差が拡大することにな
る。
【0016】鋼板を連続的に冷却する限り、遷移沸騰中
にこの局所的な温度むらが積算されて拡大し、冷却後の
鋼板に、平坦度不良のほか、残留応力や材質むらが生ず
ることになる。
【0017】本発明者等は、上述した現象について種々
研究を重ねた結果、冷却前および冷却中に局所的な温度
むらが発生しても、冷却過程において、一旦冷却を弱め
復熱させると、復熱の過程で温度むらが減少することを
見出した。
【0018】このような温度むらの減少は、上述した遷
移沸騰領域において特に顕著に生ずる。即ち、鋼板を連
続冷却すると、温度むらは拡大するが、連続冷却中に一
旦冷却を弱め、鋼板を板厚、板幅の両方向にわたって復
熱させると、低温部と高温部との差が減少し、再び強冷
却する際に鋼板に生ずる温度むらを減少させることがで
きる。この操作を複数回繰り返すことによって、連続冷
却により拡大した温度むらは減少して、冷却後の鋼板の
平坦度を向上させることができる。この効果は、連続冷
却中に冷却水の供給を一時停止し空冷にすると、弱冷却
時の冷却むらがなくなるために、一層顕著になる。
【0019】図2は、板厚15mmの鋼板を、強冷却と
弱冷却の繰り返し回数を変えて冷却したときの、冷却後
の鋼板の歪み量を示した図である。なお、冷却後の鋼板
の歪み量は、鋼板の板厚方向の変形量の、板長に対する
割合で示した。この値が低いほど歪み量は小さく平坦度
が良好であることを意味する。図2から、強冷却と弱冷
却とを2回以上繰り返し行えば、特に歪み量が小さくな
ることがわかる。
【0020】本発明は、このような強冷却と弱冷却とを
2回以上繰り返し行うことにより、鋼板の温度むらが低
減し、冷却後の鋼板の平坦度が向上することの知見に基
づくものである。
【0021】請求項1に記載の発明は、熱間圧延され、
テーブルローラ上を移送される鋼板に対して、前記鋼板
の移送方向に沿って設けられた複数のゾーンを有する冷
却ゾーンを通過する過程で、強冷却と弱冷却とを少なく
とも2回以上繰り返して施す冷却方法であって、前記鋼
板の板厚および必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中
における強冷却ゾーン数を選択することに特徴を有する
ものである。請求項2に記載の発明は、熱間圧延され、
テーブルローラ上を移送される鋼板に対して、前記鋼板
の移送方向に沿って設けられた複数のゾーンを有する冷
却ゾーンを通過する過程で、1以上で2.0m3/mi
n・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却と、0.0
以上で0.9m3/min・m2以下の範囲の水量密度で
行う冷却とを2回以上繰り返し施す冷却方法であっ
て、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に応じて全冷却
ゾーン数中における強冷却ゾーン数を選択することに特
徴を有するものである。請求項3に記載の発明は、熱間
圧延され、テーブルローラ上を移送される鋼板の冷却装
置であって、前記テーブルローラに沿って設けられた冷
却ゾーンと、前記冷却ゾーンを前記鋼板の移送方向に沿
って複数のゾーンに区画する複数の水切りローラと、前
記複数のゾーンの各ゾーンにおいて鋼板に対して供給さ
れる冷却水の水量密度を調整することにより、鋼板に対
して、強冷却と弱冷却とを少なくとも2回以上繰り返し
施す冷却パターンであって、前記鋼板の板厚および必要
冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾー
ン数を選択する流量調整装置とを備えたことに特徴を有
するものである。請求項4に記載の発明は、前記流量調
整装置は、前記複数のゾーンの各ゾーンにおける冷却水
の水量密度を、強冷却ゾーンは1以上で2.0m3/m
in・m2以下の範囲に、弱冷却ゾーンは0.0以上で
0.9m3/min・m2以下の範囲に調整することに特
徴を有するものである。請求項5に記載の発明は、熱間
圧延され、テーブルローラ上を移送される高温鋼板に対
して、前記鋼板の移送方向に沿って設けられた複数のゾ
ーンを有する冷却ゾーンを通過する過程で、強冷却と弱
冷却とを少なくとも2回以上繰り返して施す冷却方法で
あって、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に応じて全
冷却ゾー ン数中における強冷却ゾーン数を選択すること
により高温鋼板の歪み量を小さくすることに特徴を有す
るものである。請求項6記載の発明は、熱間圧延され、
テーブルローラ上を移送される高温鋼板の圧延歪を除去
した後、前記高温鋼板を冷却する場合、前記鋼板の移送
方向に沿って設けられた複数のゾーンを有する冷却ゾー
ンを通過する過程で、強冷却と弱冷却とを少なくとも2
回以上繰り返して施す冷却方法であって、前記鋼板の板
厚および必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中におけ
る強冷却ゾーン数を選択することにより高温鋼板の歪み
量を小さくすることに特徴を有するものである。請求項
7記載の発明は、熱間圧延され、テーブルローラ上を移
送される高温鋼板に対して、前記鋼板の移送方向に沿っ
て設けられた複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過す
る過程で、1以上で2.0m3/min・m2以下の範囲
の水量密度で行う冷却と、0.0以上で0.9m3
min・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却とを2
回以上繰り返し施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚
および必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中における
強冷却ゾーン数を選択することにより高温鋼板の歪み量
を小さくすることに特徴を有するものである。請求項8
記載の発明は、熱間圧延され、テーブルローラ上を移送
される高温鋼板の圧延歪を除去した後、前記高温鋼板を
冷却する場合、前記鋼板の移送方向に沿って設けられた
複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過程で、1
以上で2.0m3/min・m2以下の範囲の水量密度で
行う冷却と、0.0以上で0.9m3/min・m2
下の水量密度で行う冷却とを2回以上繰り返し施す冷
却方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に
応じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン数を選択
することにより高温鋼板の歪み量を小さくすることに特
徴を有するものである。請求項9記載の発明は、熱間圧
延され、テーブルローラ上を移送される高温鋼板に対し
て、前記鋼板の移送方向に沿って設けられた複数のゾー
ンを有する冷却ゾーンを通過する過程で、1以上で2.
0m3/min・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却
と、0.0より大きく0.9m3/min・m2以下の範
囲の水量密度で行う冷却とを2回以上繰り返し施す冷
却方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に
応じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン数を選択
ることにより高温鋼板の歪み量を小さくすることに特
徴を有するものである。請求項10記載の発明は、熱間
圧延され、テーブルローラ上を移送される高温鋼板の圧
延歪を除去した後、前記高温鋼板を冷却する場合、前記
鋼板の移送方向に沿って設けられた複数のゾーンを有す
る冷却ゾーンを通過する過程で、1以上で2.0m3
min・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却と、
0.0より大きく0.9m3/min・m2以下の水量密
度で行う冷却とを2回以上繰り返し施す冷却方法であ
って、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に応じて全冷
却ゾーン数中における強冷却ゾーン数を選択することに
より高温鋼板の歪み量を小さくすることに特徴を有する
ものである。
【0022】
【発明の実施の形態】この発明において、各冷却ゾーン
は、水切り装置によって分割されていることが必要であ
る。このように、各冷却ゾーンを、水切り装置によって
分割するのは、強冷却ゾーンの冷却水が弱冷却ゾーンに
流入しないようにするためである。これによって、弱冷
却ゾーンにおいて安定して鋼板を復熱させることがで
き、強冷却と弱冷却との繰り返しによる温度むらの低減
効果を充分に発揮させることができる。
【0023】水切り装置としては、水切りロール、水切
りブラシ、圧縮空気、高圧水等、十分な水切り性を有し
ていれば、どのようなものを使用してもよい。なお、水
切り性を維持しつつ冷却中の鋼板の変形を拘束するため
には、水切り装置として、上面に水切りロールをそして
下面にテーブルローラを使用することが好適である。
【0024】各冷却ゾーンは、必要に応じて、強冷却ゾ
ーンと弱冷却ゾーン(復熱ゾーン)とに使いわけること
ができるので、新たに復熱ゾーンを設ける必要はなく、
設備をコンパクト化することができる。
【0025】冷却ゾーン毎に冷却水の流量を制御するの
は、板厚と冷却速度に応じて、任意の強冷却パターンお
よび弱冷却パターンを設定できるようにするためであ
る。弱冷却の手段として、冷却水を供給しない空冷法ま
たは弱水冷法があるが、空冷法の方が、弱水冷法に比べ
て効果が大きく、且つ、弱冷却時に冷却むらが発生する
可能性が少ないので効果的である。冷却水を供給しない
冷却ゾーンは、強冷却と弱冷却の繰り返し回数と同じ2
ゾーン以上あることが好ましい。
【0026】図3は、板厚の異なる鋼板に対し、冷却条
件を一定にしたときの、強弱の冷却パターン即ち全冷却
ゾーン数に対する強冷却ゾーン数の割合と冷却速度との
関係を示したグラフである。図3から、強冷却と弱冷却
との割合を変えることにより、種々の板厚の鋼板を広範
囲の冷却速度で冷却し得ることがわかる。なお、板厚と
冷却速度に応じて、強弱の冷却パターンを適正に選択す
るためには、冷却ゾーン毎に冷却水の流量制御を行うこ
とが必要である。
【0027】図4は、この発明の方法を実施するための
装置の一例を示す概略側面図である。この例において
は、複数個のテーブルローラ2上を連続的に移動する鋼
板1の上面および下面に向けて、スプレー式の冷却ノズ
ル3が設けられており、冷却ゾーンは各テーブルローラ
単位で区画されている。テーブルローラ2の各々の上方
には、鋼板1を間に挟んで水切りローラ5が設けられて
いる。
【0028】各冷却ゾーンを構成する冷却ノズル3の各
々には、流量調整装置として流量調整弁6が設けられて
いる。流量調整装置としては、流量を細かに調整できる
流量調整弁が望ましいが、予め、各ゾーンの水量密度が
設定されている場合には、オンオフ機能だけを有するオ
ンオフ弁でもよい。
【0029】図5は、この発明の方法を実施するための
装置の他の例を示す概略側面図である。この例において
は、第1冷却ゾーンがエアノズル7からなるスリットジ
ェット方式であり、第2冷却ゾーン以降は冷却ノズル4
からなるスプレー冷却方式である。冷却ゾーンは各テー
ブルローラ単位で区画されており、テーブルローラ2の
各々の上方に、鋼板1を間に挟んで水切りローラ5が設
けられている。
【0030】各冷却ゾーンの各々には、上下1台ずつの
冷却ノズル4が設けられ、冷却ノズル4の各々にはオン
オフ弁8が取り付けられている。第1冷却ゾーンを構成
するエアノズル7には流量調整弁6が設けられており、
第2冷却ゾーン以降の冷却ノズル4には、複数の冷却ゾ
ーン毎に1つの流量調整弁6が設けられている。
【0031】強冷却と弱冷却のパターンは、図3に示し
たような関係を、予め各ゾーンの流量密度、板厚、必要
冷却速度に応じて求め決定される。熱間圧延機で圧延さ
れた高温の鋼板1は、テーブルローラ2によって上述し
た制御冷却装置に搬送される。なお、制御冷却装置に入
る前に、予め、鋼板の圧延歪みをホットレベラー等によ
って除去してもよい。制御冷却装置に運ばれた鋼板1
は、水切りローラ5によりテーブルローラ単位で区画さ
れた強冷却ゾーンおよび弱冷却ゾーンを繰り返し通過
し、その間に所定温度まで冷却される。冷却停止温度
は、水量密度と鋼板の搬送速度とによってコントロール
される。
【0032】図6の(a)(b)(c)(d)(e) に、本発明方法の
冷却パターンの一例を示す。図6において、9は強冷却
ゾーンを示し10は弱冷却ゾーンを示す。11はパスラ
インである。図6(a) は、強冷却ゾーン9と弱冷却ゾー
ン10とが1つずつ交互に配置された例であり、図6
(b) は、1つの強冷却ゾーン9と3つの弱冷却ゾーン1
0とが交互に配置された例であり、図6(c) は、冷却ゾ
ーンの前部と後部は強冷却ゾーン9と弱冷却ゾーン10
とが1つずつ交互に配置され、そして、中間部には3つ
の弱冷却ゾーン10が配置された例である。また、図6
(d) は、3つの強冷却ゾーン9と3つの弱冷却ゾーン1
0とが交互に配置された例であり、図6(e) は、5つの
強冷却ゾーン9と1つの弱冷却ゾーン10とが交互に配
置された例である。
【0033】
【実施例】
〔実施例1〕板厚10mm、板幅4000mm、長さ800
0mmの熱間圧延後の高温鋼板を、図4に示す第1実施態
様の装置を使用し、この発明の方法により、冷却開始温
度800℃、冷却停止温度500℃で、表1に示す、各
種の強弱繰り返し回数、冷却水非供給ゾーン数、強冷却
ゾーン数/全ゾーン数および冷却速度によって冷却し
た。そして、そのときに鋼板に生じた歪み量を調べ、そ
の結果を表1に併せて示した。
【0034】なお、水量密度を、強冷却時は1〜2.0
m3/min.m2 、弱冷却時は0.0〜0.9m3/min.m2 の範
囲で調整した。冷却後の鋼板の歪み量は、鋼板の板幅方
向の変形量の、板長に対する割合で示した。この値が低
いほど、歪み量は小さく、平坦度が良好であることを示
している。
【0035】
【表1】
【0036】比較のために、上記高温鋼板を、従来の2
段冷却および連続冷却によって冷却したときの鋼板に生
じた歪み量を調べ、その結果を同じく表1に併せて示し
た。なお、連続冷却では、水量密度を、0.2〜1.5
m3/min.m2 の範囲で、第1冷却ゾーンから連続的に変化
させた。
【0037】表1から明らかなように、本発明例の場合
には、比較例の2段冷却および連続冷却に比べて、冷却
後の鋼板の歪み量は小さく、冷却均一性が向上してい
た。また、冷却水非供給ゾーンを2か所以上とした場合
には、歪み量は一段と低くなった。
【0038】〔実施例2〕板厚40mm、板幅2000m
m、長さ4000mmの熱間圧延後の高温鋼板を、図5に
示す第2実施態様の装置を使用し、この発明の方法によ
り、冷却開始温度800℃、冷却停止温度500℃で、
表2に示す、各種の強弱繰り返し回数、冷却水非供給ゾ
ーン数、強冷却ゾーン数/全ゾーン数および冷却速度に
よって冷却した。そして、そのときに鋼板に生じた歪み
量を調べ、その結果を表2に併せて示した。なお、水量
密度を、強冷却時は1.0〜5.0m3/min.m2 の範囲で
調整し、弱冷却時はオンオフ弁を閉じ、冷却水を供給せ
ずに空冷とした。
【0039】
【表2】
【0040】比較のために、上記高温鋼板を、従来の2
段冷却および連続冷却によって冷却したときの鋼板に生
じた歪み量を調べ、その結果を表2に併せて示した。な
お、連続冷却では、水量密度を、0.5〜2.5m3/mi
n.m2 の範囲で、第1冷却ゾーンから流量調整弁毎に調
整した。
【0041】表2から明らかなように、本発明例の場合
には、比較例の2段冷却および連続冷却に比べて、冷却
後の鋼板の歪み量は小さく、冷却均一性が向上してい
た。
【0042】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
熱間圧延された高温鋼板をオンラインで制御冷却するに
際し、冷却前の鋼板に仮に温度むらがあったとしても、
強冷却と弱冷却とを2回以上繰り返すことによって、冷
却むらの拡大が抑制され、均一な冷却が可能になり、ま
た、強冷却と弱冷却の繰り返しパターンを制御すること
によって、冷却むらの拡大を抑え所望の冷却速度で冷却
することができ、しかも、特別な復熱ゾーンを必要とし
ないので、冷却設備全体をコンパクト化することができ
る等、多くの工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板表面温度と熱流束との関係を示した図であ
る。
【図2】強冷却・弱冷却の繰り返し回数と冷却後の鋼板
の歪量との関係を示した図である。
【図3】全冷却ゾーン数に対する強冷却ゾーン数の割合
と冷却速度との関係を示した図である。
【図4】この発明の方法を実施するための装置の一例を
示す概略側面図である。
【図5】この発明の方法を実施するための装置の他の例
を示す概略側面図である。
【図6】本発明方法の冷却パターンの一例を示す図であ
る。
【図7】先行技術2の概略説明図である。
【符号の説明】
1 鋼板 2 テーブルローラ 3 冷却ノズル 4 冷却ノズル 5 水切りローラ 6 流量調整弁 7 エアノズル 8 オンオフ弁 9 強冷却ゾーン 10 弱冷却ゾーン 11 パスライン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 多賀根 章 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 高橋 功 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 冨田 省吾 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 上岡 悟史 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭52−101613(JP,A) 特開 平4−371519(JP,A) 特開 昭60−184635(JP,A) 特開 昭60−87914(JP,A) 特開 平6−184623(JP,A) 特開 平9−192722(JP,A) 特開 平3−5013(JP,A) 特開 昭53−91009(JP,A) 特開 平6−179010(JP,A) 特開 平8−168804(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 45/02 320 C21D 1/00 123

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる鋼板に対して、前記鋼板の移送方向に沿って設けら
    れた複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過程
    で、強冷却と弱冷却とを少なくとも2回以上繰り返して
    施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷却
    速度に応じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン数
    を選択することを特徴とする熱間圧延鋼板の制御冷却方
    法。
  2. 【請求項2】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる鋼板に対して、前記鋼板の移送方向に沿って設けら
    れた複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過程
    で、1以上で2.0m3/min・m2以下の範囲の水量
    密度で行う冷却と、0.0以上で0.9m3/min
    ・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却とを2回以上
    繰り返し施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚および
    必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中における強冷却
    ゾーン数を選択することを特徴とする熱間圧延鋼板の制
    御冷却方法。
  3. 【請求項3】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる鋼板の冷却装置であって、前記テーブルローラに沿
    って設けられた冷却ゾーンと、前記冷却ゾーンを前記鋼
    板の移送方向に沿って複数のゾーンに区画する複数の水
    切りローラと、前記複数のゾーンの各ゾーンにおいて鋼
    板に対して供給される冷却水の水量密度を調整すること
    により、鋼板に対して、強冷却と弱冷却とを少なくとも
    2回以上繰り返し施す冷却パターンであって、前記鋼板
    の板厚および必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中に
    おける強冷却ゾーン数を選択する流量調整装置とを備え
    たことを特徴とする熱間圧延鋼板の制御冷却装置。
  4. 【請求項4】前記流量調整装置は、前記複数のゾーンの
    各ゾーンにおける冷却水の水量密度を、強冷却ゾーンは
    1以上で2.0m3/min・m2以下の範囲に、弱冷却
    ゾーンは0.0以上で0.9m3/min・m2以下の範
    囲に調整することを特徴とする請求項3記載の熱間圧延
    鋼板の制御冷却装置。
  5. 【請求項5】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる高温鋼板に対して、前記鋼板の移送方向に沿って設
    けられた複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過
    程で、強冷却と弱冷却とを少なくとも2回以上繰り返し
    て施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷
    却速度に応じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン
    数を選択することにより高温鋼板の歪み量を小さくする
    ことを特徴とする熱間圧延鋼板の制御冷却方法。
  6. 【請求項6】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる高温鋼板の圧延歪を除去した後、前記高温鋼板を冷
    却する場合、前記鋼板の移送方向に沿って設けられた複
    数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過程で、強冷
    却と弱冷却とを少なくとも2回以上繰り返して施す冷却
    方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に応
    じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン数を選択す
    ることにより高温鋼板の歪み量を小さくすることを特徴
    とする熱間圧延鋼板の制御冷却方法。
  7. 【請求項7】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる高温鋼板に対して、前記鋼板の移送方向に沿って設
    けられた複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過
    程で、1以上で2.0m3/min・m2以下の範囲の水
    量密度で行う冷却と、0.0以上で0.9m3/mi
    n・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却とを2回以
    繰り返し施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚およ
    び必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中における強冷
    却ゾーン数を選択することにより高温鋼板の歪み量を小
    さくすることを特徴とする熱間圧延鋼板の制御冷却方
    法。
  8. 【請求項8】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる高温鋼板の圧延歪を除去した後、前記高温鋼板を冷
    却する場合、前記鋼板の移送方向に沿って設けられた複
    数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過程で、1以
    上で2.0m3/min・m2以下の範囲の水量密度で行
    冷却と、0.0以上で0.9m3/min・m2以下
    の水量密度で行う冷却とを2回以上繰り返し施す冷却
    方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷却速度に応
    じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン数 を選択す
    ることにより高温鋼板の歪み量を小さくすることを特徴
    とする熱間圧延鋼板の制御冷却方法。
  9. 【請求項9】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送さ
    れる高温鋼板に対して、前記鋼板の移送方向に沿って設
    けられた複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過
    程で、1以上で2.0m3/min・m2以下の範囲の水
    量密度で行う冷却と、0.0より大きく0.9m3
    min・m2以下の範囲の水量密度で行う冷却とを2
    以上繰り返し施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚
    および必要冷却速度に応じて全冷却ゾーン数中における
    強冷却ゾーン数を選択することにより高温鋼板の歪み量
    を小さくすることを特徴とする熱間圧延鋼板の制御冷却
    方法。
  10. 【請求項10】熱間圧延され、テーブルローラ上を移送
    される高温鋼板の圧延歪を除去した後、前記高温鋼板を
    冷却する場合、前記鋼板の移送方向に沿って設けられた
    複数のゾーンを有する冷却ゾーンを通過する過程で、1
    以上で2.0m3/min・m2以下の範囲の水量密度で
    行う冷却と、0.0より大きく0.9m3/min・
    2以下の水量密度で行う冷却とを2回以上繰り返し
    施す冷却方法であって、前記鋼板の板厚および必要冷却
    速度に応じて全冷却ゾーン数中における強冷却ゾーン数
    を選択することにより高温鋼板の歪み量を小さくするこ
    とを特徴とする熱間圧延鋼板の制御冷却方法。
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