JP6137093B2 - レールの冷却方法および冷却設備 - Google Patents
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Description
まず、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール、あるいはオーステナイト域温度以上に加熱されたレールを、正立した状態で熱処理装置に搬入する。正立した状態とは、レールの頭部が上方、足裏部が下方になった状態をいう。このとき、レールは、例えば100m程度の圧延長のままの状態、あるいはレール1本あたりの長さが例えば25m程度の長さに切断(以下では、「鋸断」とも称する。)された状態で熱処理装置へ搬送される。なお、レールが鋸断されてから熱処理装置に搬送される場合、熱処理装置は、鋸断されたレールに応じた長さの複数のゾーンに分割されていることもある。
このようなレールの残留応力に対して、一般的には、通過型のレベラ−矯正によって曲がりを矯正することで残留応力の低減が図られている。
また、特許文献1には、レールに引張と曲げを同時に加えることで残留応力を低減する方法が開示されている。
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、冷却後の矯正に依らず、内部の残留応力を低減するレールの冷却方法および冷却設備を提供することを目的としている。
また、本発明の一態様に係るレールの冷却設備は、頭部、腹部および足部を有し、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール、あるいは頭部、腹部および足部を有し、オーステナイト域温度以上に加熱されたレールの少なくとも頭部を冷却する強制冷却装置と、横転した姿勢となっている前記レールの腹側面に限って冷却媒体を噴射して該レールの腹部を冷却する腹部冷却装置とを有し、前記腹部冷却装置は、前記強制冷却装置よりも前記レールの搬送方向上流の搬送テーブルに設けられることを特徴とする。
熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール1、あるいは加熱装置によってオーステナイト域温度以上に加熱されたレール1は、図1に示す強制冷却装置2にて冷却される。
また、強制冷却装置2は、不図示の搬送管と、不図示の冷却媒体供給装置と、不図示のオシレーション機構とを有する。
冷却媒体搬送管は、冷却媒体供給装置から供給される冷却媒体を頭頂面冷却ヘッダ20、頭側面冷却ヘッダ21a,21bおよび足裏面冷却ヘッダ22に搬送する管であり、頭頂面冷却ヘッダ20、頭側面冷却ヘッダ21a,21bおよび足裏面冷却ヘッダ22にそれぞれ接続される。
このような強制冷却装置2にてレール1が冷却される際、まず、レール1は強制冷却装置2へと搬送される。このとき、レール1は、図1に示す正立した状態で強制冷却装置2へと搬送される。
さらに、頭頂面冷却ヘッダ20、頭側面冷却ヘッダ21a,21bおよび足裏面冷却ヘッダ22から冷却媒体が噴射されることで、強制冷却が開始される。強制冷却の開始時点におけるレール1の頭部11の表面温度は、オーステナイト域温度以上である。このとき、レール1は、頭頂面冷却ヘッダ20、頭側面冷却ヘッダ21a,21bおよび足裏面冷却ヘッダ22から噴射される冷却媒体により長手方向の全長にわたり強制冷却される。また、レール1を強制冷却する際、オシレーション機構が支持拘束部14をレール長手方向にオシレーション(往復運動)させることにより、レールと冷却ヘッダの長手方向の相対位置を変化させることで、冷却を均一にすることもある。
さらに、レール1を強制冷却する際、冷却媒体の噴射量・噴射圧などを制御・調整することで、主に頭部において所定の変態組織が得られる。このような方法で製造されたレール1は、硬度および靱性に優れる。ここで、一般には、冷却速度が高いほど高硬度となるが、冷却速度を高くし過ぎると靱性が低下するといった問題が起こることがある。
[設備構成]
次に、本発明の第1実施形態に係るレール1の冷却設備について説明する。第1実施形態に係る冷却設備は、図1に示す強制冷却装置2と、図3に示す腹部冷却装置3とを有する。
強制冷却装置2は、上述した一般的な冷却装置であり、熱間圧延機の搬送方向下流側に設けられ、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール1を強制冷却する装置である。強制冷却装置2は、図1に示すように、頭頂面冷却ヘッダ20、頭側面冷却ヘッダ21a,21bおよび足裏面冷却ヘッダ22から冷却媒体を噴射させることで、レール1の頭部11と足部13とを強制冷却する。
また、腹部冷却装置3は、不図示の搬送管と、不図示の冷却媒体供給装置とを有する。冷却媒体搬送管は、タンクおよびポンプ等からなる冷却媒体供給装置から供給される冷却媒体を腹側面冷却ヘッダ30a,30bに搬送する管であり、腹側面冷却ヘッダ30a,30bに接続される。
次に、第1実施形態に係るレール1の冷却方法について説明する。
まず、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール1は、腹部冷却装置3を介して強制冷却装置2へと搬送される。
レール1が強制冷却装置2へと搬送される際、レール1は腹部冷却装置3を通過する。このとき、腹部冷却装置3では、通過するレール1に腹側面冷却ヘッダ30a,30bから冷却媒体が噴射されることで、腹部12が全長にわたって冷却される。腹部12の冷却速度および冷却量は、レール1の合金成分および目標組織によって適宜選択される。腹部12の目標組織としては、頭部11や足部13と同様の靱性となるような組織が好ましい。なお、腹部12の冷却速度および冷却量が大きすぎると腹部12表面の靱性が低下する。一方、冷却速度が小さすぎる場合、残留応力低減効果が得られる冷却量を達成するため、冷却に要する時間が長くなり、それだけ設備長が長くする必要が生じるので好ましくない。
腹部冷却装置3にて冷却されたレール1は、さらに強制冷却装置2まで搬送され、頭部11および足部13が強制冷却される。頭部11および足部13の強制冷却の方法は、上述の強制冷却装置2を用いた一般的な冷却方法と同様である。
[設備構成]
次に、本発明の第2実施形態に係るレール1の冷却設備について説明する。第2実施形態に係る冷却設備は、図4に示すように、頭頂面冷却ヘッダ20と、頭側面冷却ヘッダ21a,21bと、足裏面冷却ヘッダ22と、腹側面冷却ヘッダ31a,31bと、支持拘束部23a,23bとを有する冷却装置である。第2実施形態に係る冷却設備は、熱間圧延機の搬送方向下流側に設けられる。
腹側面冷却ヘッダ31a,31bは、第1実施形態の腹部冷却装置3に設けられた腹側面冷却ヘッダ30a,30bと同様な構成であるが、腹側面12a,12bにそれぞれ対向して設けられるため、互いにx軸方向に並んで設けられることが異なる。また、腹側面冷却ヘッダ31a,31bには、腹側面12a,12bに対向して配される多孔板ノズル311a,311bがそれぞれ設けられる。
次に、第2実施形態に係るレール1の冷却方法について説明する。
まず、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール1は、冷却設備へと搬送される。
次いで、冷却設備に搬送されたレール1は、足部13の幅方向(x軸方向)の両端側が支持拘束部23a,23bに挟持されることで、冷却設備に拘束される。
その後、第1実施形態と同様に、頭頂面冷却ヘッダ20、頭側面冷却ヘッダ21a,21bおよび足裏面冷却ヘッダ22から冷却媒体がレール1へ噴射されることで、頭部11および足部13が強制冷却される。このとき、腹側面冷却ヘッダ31a,31bからの冷却媒体の噴射は停止されるため、頭部11および足部13のみ冷却が行われる。
上記の実施形態は本発明を実施するための例に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、仕様等に応じて種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明内において、他の様々な実施の形態が可能であることは上記記載から自明である。
例えば、第1実施形態において、腹部冷却装置3の出側、すなわち強制冷却装置2の入側に腹部12の表面温度を測定する温度計を設け、温度計の測定結果から、冷却速度を調整してもよい。冷却速度の調整は、例えば、腹部冷却装置3における冷却媒体の噴出量や噴出圧力、あるいは、レール1と腹側面冷却ヘッダ30a,30bとの間隔や搬送スピードを調整することで行われる。また、冷却速度の調整は、レール1の形状により、腹側面冷却ヘッダ30a,30bの位置を調整するようにすることでも行われる。
さらに、上記実施形態では、頭部11および足部13を強制冷却する構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レール1を強制冷却する際に、頭部11のみを強制冷却する構成としてもよい。
(1)本発明の実施形態にかかるレール1の冷却方法は、頭部、腹部および足部を有し、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール1、あるいは頭部、腹部および足部を有し、オーステナイト域温度以上に加熱されたレール1を強制冷却する際に、レール1の腹部12を冷却した後、レール1の少なくとも頭部11を冷却する。
上記構成によれば、少なくとも頭部11を強制冷却する際、腹部12の温度が低く変形抵抗を高くすることができる。このため、腹部12の温度が高い場合に比べ、強制冷却時に生じる特に長手方向の残留応力を低減させることができる。このため、冷却後のレール1の鋸断を安定して行うことができる。また、特許文献1のように、残留応力を低減するための特別な矯正装置を設ける必要がないため、投資コストやランニングコストを抑制することができる。さらに、例えば、第1実施形態のような構成の冷却設備にて上記構成の冷却方法を用いる場合、既存の強制冷却装置2に腹部冷却装置3を追加で付加するだけでよいため、投資コストを抑制することができる。さらに、例えば、第2実施形態のような構成の冷却設備にて上記構成の冷却方法を用いる場合、冷却設備としては少なくとも頭部11と腹部12とを同時に冷却するような既存の冷却設備にも適用することができるため、投資コストを抑制することができる。
上記構成によれば、(1)と同様に残留応力を低減させることができる。また、既存の強制冷却装置2に腹部冷却装置3を追加で付加するだけでよいため、投資コストを抑制することができる。
実施例1では、第1実施形態と同様な冷却設備および冷却方法でレール1を冷却した。つまり、熱間圧延後のオーステナイト域温度以上のレール1を、図1および図3に示す冷却設備により冷却した。
実施例1で用いたレール1の形状は、AREMA(American Railway Engineering and Maintenance-of-Way Association)規格のR136−8である。また、レール1の成分は、C(炭素):0.83wt%、Si(シリコン):0.52wt%、Mn(マンガン):1.11wt%、P(リン):0.015%、S(硫黄):0.008%、Al(アルミニウム):0.0005%、Ti(チタン):0.001%を含有し、残部がFe(鉄)および不可避的不純物からなる。レール1の全長は100mであり、熱間圧延終了時点での表面平均温度は880℃〜910℃であった。熱間圧延機出側から強制冷却装置2への搬送スピードは80m/分である。
その後、レール1を強制冷却装置2に転回搬入し、冷却媒体として空気を噴射することでレール1を強制冷却した。強制冷却中は、頭頂面11aおよび頭側面11b,11cが3℃/秒の冷却速度となるように噴射圧力制御した。このとき、足裏面冷却ヘッダ22の冷却媒体の噴射条件(噴射量、噴射圧、噴射距離等)は頭側面冷却ヘッダ21a,21bと同じとした。また、強制冷却中は、長手方向に距離1m、ピッチ30秒でレール1をオシレーション(往復運動)させた。
また、実施例1に対する比較として、腹部冷却装置3での冷却をしない条件でレール1を冷却した(比較例1)。比較例1では、腹部12の冷却以外の条件は、実施例1と同じとした。
実施例2では、実施例1で用いた腹側面冷却ヘッダ30a,30bの代わりに、図5に示すスプレーノズル321a,321bを有する腹側面冷却ヘッダ32a,32bを用いた。また、冷却媒体には、ミストを用いた。実施例2では、腹側面冷却ヘッダ32a,32bをレール1の長手方向に上下100個ずつ設けた。また、スプレー圧力を変更することで、実施例1と同様に強制冷却装置2の入側における腹部12の表面温度を調整した。それ以外の冷却条件は、実施例1と同じとし、実施例1と同様に冷却したレール1の残留応力を測定した。
冷却および測定の結果、実施例1における表1と同等の残留応力になっていることを確認した。
実施例3では、第2実施形態と同様な冷却設備および冷却方法でレール1を冷却した。つまり、熱間圧延後のオーステナイト域温度以上のレール1を、図4に示す冷却設備を用いて、第2実施形態に係る冷却方法を用いて冷却した。冷却に供したレール1の条件は、実施例1と同様である。
また、実施例3に対する比較として、頭部11および足部13の矯正冷却をする前に、腹部12の冷却をしない条件でレール1を冷却した(比較例3)。比較例3では、腹部12の事前の冷却有無以外の条件は、実施例3と同じとした。
以上のように、実施例1〜実施例3の結果から、本発明に係るレール1の冷却方法および冷却設備によれば、冷却後の矯正に依らず、レール内部の残留応力を低減できた。
11 :頭部
11a :頭頂面
11b,11c :頭側面
12 :腹部
12a,12b :腹側面
13 :足部
13a :足裏面
2 :強制冷却装置
20 :頭頂面冷却ヘッダ
21a,21b :頭側面冷却ヘッダ
22 :足裏面冷却ヘッダ
201,211a,211b,221 :多孔板ノズル
23a,23b :拘束支持部
3 :腹部冷却装置
30a,30b,31a,31b,32a,32b :腹側面冷却ヘッダ
301a,301b,311a,311b :多孔板ノズル
321a,321b :スプレーノズル
4 :搬送ロール
5a,5b :ガイドロール
Claims (4)
- 頭部、腹部および足部を有し、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール、あるいは頭部、腹部および足部を有し、オーステナイト域温度以上に加熱されたレールを強制冷却する際に、
前記レールの少なくとも頭部を冷却する強制冷却装置よりも該レールの搬送方向上流側にて、横転した姿勢となっている前記レールを搬送中に、該レールの腹側面に限って冷却媒体を噴射して該レールの腹部を冷却し、その後に、前記強制冷却装置にて前記レールの少なくとも頭部を冷却することを特徴とするレールの冷却方法。 - 前記搬送中に、前記横転した姿勢となっている前記レールの、前記搬送方向に直交する水平方向の、前記レールの両端側に設けられたガイドロールで前記レールを押さえることにより、前記水平方向の前記レールの位置を調整する請求項1に記載のレールの冷却方法。
- 頭部、腹部および足部を有し、熱間圧延されたオーステナイト域温度以上のレール、あるいは頭部、腹部および足部を有し、オーステナイト域温度以上に加熱されたレールの少なくとも頭部を冷却する強制冷却装置と、横転した姿勢となっている前記レールの腹側面に限って冷却媒体を噴射して該レールの腹部を冷却する腹部冷却装置とを有し、
前記腹部冷却装置は、前記強制冷却装置よりも前記レールの搬送方向上流の搬送テーブルに設けられることを特徴とするレールの冷却設備。 - 前記腹部冷却装置は、前記搬送方向に直交する水平方向の前記レールの両端側に、前記レールの位置を調整するガイドロールを有する請求項3に記載のレールの冷却設備。
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