JP5849984B2 - レールの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オーステナイト域温度以上の高温のレールの頭部および足部の強制冷却を行うレールの製造方法に関する。
一般に、鉄道用等のレールの製造過程では、鋼素材を加熱し、オーステナイト域温度以上で所定の形状に熱間圧延した後、あるいは、オーステナイト域温度以上に再加熱した後で、レール頭部に要求される硬度等の所望の品質を確保するための強制冷却が行われる。例えば、温度履歴をコントロールしながらレール頭部の温度が350[℃]〜600[℃]程度となるまでレールに冷却媒体(空気,水,ミスト等)を噴射することによって、内部を含むレール頭部の全体を微細なパーライト組織としている。このレールの強制冷却は、クランプによってレールの上下方向への変位を拘束した状態で行われる。レールの自重によって上方向へは変位し難い長手方向中央部等では、テーブル等で支持することで下方向への変位のみを規制する場合もある。
ところで、強制冷却を終えたレールは冷却床に搬送され、放冷されるが、その際クランプが外されて横倒しに転回されるため、強制冷却時に生じた内部応力が開放される。さらに冷却床での放冷時は熱収縮による応力も加わり、これらに起因してレールに上下方向の曲がりが発生する場合があった。レールの上下曲がりが大きい場合は、矯正工程やプレス工程等の追加プロセスを実施しなければならず、製造コストが上昇してしまう。このようなレールの上下曲がりを抑制するための技術として、従来から、頭部の冷却開始よりも先に足部の冷却を開始するようにしたものが知られている(特許文献1を参照)。
特開平10−130730号公報
しかしながら、上記した特許文献1の技術では、頭部の強制冷却に先立ち足部の強制冷却を行うため、強制冷却に要する時間(強制冷却時間)が増大し、生産性が阻害される問題があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、冷却時間を増大させることなくレールの上下曲がりを確実に抑制することができるレールの製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかるレールの製造方法は、オーステナイト域温度以上で熱間圧延され、あるいは、オーステナイト域温度以上に加熱された高温のレールの頭部および足部の強制冷却を行うレールの製造方法であって、前記頭部の強制冷却開始時における前記頭部表面の温度を用いて前記頭部の変態終了時における前記足部裏面の目標温度を算出し、前記頭部の強制冷却開始以降に前記足部の強制冷却を開始し、前記頭部の変態終了時における前記足部裏面の温度が前記算出した目標温度となるように前記足部の強制冷却を行うことを特徴とする。
本発明によれば、冷却時間を増大させることなくレールの上下曲がりを確実に抑制することができる。
図1は、レールを強制冷却する熱処理装置の要部構成例を示す模式図である。 図2は、レールの強制冷却部位を説明する図である。 図3は、熱処理装置の主要な制御系の構成例を示すブロック図である。 図4は、レールの上下曲がり量を説明する図である。 図5は、頭部に対する冷却と足部に対する冷却との関係を説明する説明図である。 図6は、レール長手方向に沿った頭部表面の温度分布の一例を示す図である。 図7は、足部冷却制御処理の原理を説明する説明図である。 図8は、足部冷却制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明のレールの製造方法を実施するための形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
図1は、本実施の形態のレール1の熱処理装置3の要部構成例を示す模式図であり、図2は、熱処理装置3によるレール1の強制冷却部位を説明する図である。また、図3は、熱処理装置3の主要な制御系の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、熱処理装置3は、製品断面形状のレール1を所望の硬度等の要求される品質に応じた所定の冷却条件で強制冷却(以下、単に「冷却」ともいう。)するためのものであり、製造ライン内に搬送装置等で形成されるレール1の搬送経路に沿って加熱炉や圧延機等とともに設置される。熱処理装置3には、圧延機においてオーステナイト域温度以上で熱間圧延され、あるいは、加熱炉でオーステナイト域温度以上に加熱された高温のレール1が処理位置まで搬入され、熱処理装置3は、前述のように処理位置まで搬入されたレール1の頭部11および足部13を強制冷却する。このように強制冷却を行うことによれば、頭部11を微細なパーライト組織とし、耐摩耗性および靭性に優れた高硬度のレール1を製造できる。
なお、レールは、例えば100[m]程度の仕上圧延長のままで冷却される場合もあれば、1本辺りの長さを例えば50[m]程度や25[m]程度等の適当な長さに切断(鋸断)した上で冷却される場合もある。また、熱処理装置としては、仕上圧延長あるいは鋸断後の長さに応じて冷却ゾーンが分割されたものもある。本実施の形態の熱処理装置3は、冷却ゾーンが分割されて構成され、連接する冷却ゾーン1〜4の4つの冷却ゾーン3a〜3dにおいて、例えば図6に示して後述するように、鋸断後のレール1(4つのレール1a〜1d)を同時に強制冷却する。
この熱処理装置3は、レール1の頭部11を冷却するための頭頂冷却ヘッダ31および頭側冷却ヘッダ33と、レール1の足部13を冷却するための足裏冷却ヘッダ35とを備える。なお、必要に応じてレール1の腹部15を冷却するための冷却ヘッダをさらに備えた構成としてもよい。
頭頂冷却ヘッダ31、頭側冷却ヘッダ33、および足裏冷却ヘッダ35(以下、これらを包括して適宜「冷却ヘッダ31,33,35」と呼ぶ。)は、それぞれ配管を介して冷却媒体源と接続され、不図示の複数のノズルから冷却媒体(空気,スプレー水,ミスト等)を噴射する。具体的には、頭頂冷却ヘッダ31のノズルは、処理位置のレール1の頭部11上方にレール1の長手方向に沿って配置され、図2に示す頭部11の頭頂面111に向けて冷却媒体を噴射する(図1の矢印A11)。また、頭側冷却ヘッダ33のノズルは、処理位置のレール1の頭部11両側方にレール1長手方向に沿って配置され、図2に示す頭部11の頭側面113,115に向けて冷却媒体を噴射する(図1の矢印A13)。また、足裏冷却ヘッダ35のノズルは、処理位置のレール1の足部13下方にレール1長手方向に沿って配置され、図2に示す足部13の裏面(以下、「足裏部」と呼ぶ。)131に向けて冷却媒体を噴射する(図1の矢印A15)。
これら冷却ヘッダ31,33,35の各々は、冷却媒体の吐出量や吐出圧、温度、水分量の調整が可能に構成されている。これら冷却媒体の吐出量や吐出圧、温度、水分量の調整は、頭部11の表面(頭頂面111や頭側面113,115)および足裏部131の冷却速度を制御するためのものであり、例えば、冷却ヘッダ31,33,35は、冷却媒体として空気やスプレー水を用いる構成の場合には、冷却媒体の吐出量、吐出圧、および温度のうちの少なくともいずれか1つの調整が可能に構成されていればよい。また、冷却ヘッダ31,33,35は、冷却媒体としてミストを用いる構成のものであれば、吐出量、吐出圧、温度、および水分量のうちの少なくともいずれか1つの調整が可能に構成されていればよい。
また、熱処理装置3は、処理位置のレール1の足部13の両側方において互いに対向する位置に、1対のクランプ37を備える。このクランプ37は、処理位置のレール1の足部13を両側で狭持し、冷却中にレール1が上下方向に移動しないようにその変位を拘束するものであり、処理位置のレール1長手方向に沿って適所に複数組設置される。例えば、クランプ37は、処理位置のレール1長手方向に沿って概ね5[m]間隔で設置される。
また、熱処理装置3は、レール1の頭部11上方に設けられ、頭部11表面の温度(本実施の形態では頭頂面111の温度)を測定する頭部温度計391と、レール1の足部13下方に設けられ、足部13表面の温度(足裏部131の温度)を測定する足部温度計393とを備える。これら頭部温度計391および足部温度計393は、図3に示すように、制御部5と接続されており、随時測定値を制御部5に出力する。
ここで、頭部11表面および足裏部131の温度は、レール1長手方向の全域で取得するのが望ましい。本実施の形態では、頭部温度計391および足部温度計393は、各冷却ゾーン3a〜3d内にそれぞれ複数含まれるようにレール1長手方向に沿って複数箇所に設置され、冷却ゾーン3a〜3d毎にレール1(レール1a〜1d)の全域の頭部11表面および足裏部131の温度を取得できるようになっている。ただし、頭部温度計391および足部温度計393は、各冷却ゾーン3a〜3d内に少なくとも1つ設置されていればよい。なお、頭部11上方を走査可能な1台の頭部温度計391を設置し、この頭部温度計391を走査させながらレール1(レール1a〜1d)の長手方向に沿った頭部11表面の温度分布を取得する構成としてもよい。同様に、足部1下方を走査可能な1台の足部温度計393を設置し、この足部温度計393を走査させながらレール1(レール1a〜1d)の長手方向に沿った足裏部131の温度分布を取得する構成としてもよい。
制御部5は、主な機能部として、温度取得部51と、足裏部目標温度算出部53と、足部冷却速度決定部55と、足部冷却制御部57とを備え、頭部11の強制冷却の開始以降に足部13の冷却を開始し、頭部11の変態終了時における足裏部131の温度が後述する所定の目標値(足裏部目標温度)となるように足部13の冷却を制御する処理(足部冷却制御処理)を行う。
この制御部5は、足部冷却制御処理を実現するのに必要なプログラムやデータ等が記憶される記憶部7と接続されている。記憶部7は、更新記憶可能なフラッシュメモリやRAMといった各種ICメモリ、ハードディスク、各種記憶媒体等の記憶装置によって実現される。この他、制御部5には、図示しないが、上記温度監視や冷却速度制御等に必要な情報を入力するための入力装置や、冷却中のレール1の頭部11表面や足裏部131の温度等をモニタ表示するための表示装置等が必要に応じて適宜接続される。
上記したように、熱間圧延後のレール1は、熱処理装置3にて強制冷却された後、最終的には冷却床にて常温まで自然放冷されるが、この過程でレール1の上下方向への曲がり(上下曲がり)が発生し得る。図4は、レール1の上下曲がり量dを説明する図である。図4に示すように、レール1の上下曲がり量dは、足裏部131の両端を結ぶ図4中に破線で示す直線からの足裏部131の最大上昇量または最大下降量であり、上昇量を上曲がり量、下降量を下曲がり量と呼ぶ。
本発明の発明者等は、この上下曲がりの原因と考えられる塑性ひずみによる残留応力について検討した結果、強制冷却中のレール1の断面各部の温度履歴と塑性ひずみとの間に関連性があることを知見し、塑性ひずみは、高温で変形抵抗の小さい頭部11のパーライト変態終了前にのみ生じることを見出した。加えて、強制冷却の終了後、レール1が常温となるまでの間に生じる上下曲がり量dは、この間に生じる熱収縮による熱ひずみと、頭部11および足部13に生じた塑性ひずみとのバランスによって決定付けられることを見出した。
そして、本発明の発明者等は、さらに検討を重ねた結果、頭部11の冷却を開始してから頭部11の変態が終了するまでの間(以下、「頭部変態期間」と呼ぶ。)の足部13の冷却が重要であり、少なくとも冷却開始時における頭部11表面の温度を用いて頭部11の変態終了時における足裏部131の目標温度(足裏部目標温度)を算出し、頭部11の変態終了時の足裏部131の温度が足裏部目標温度となるように足部13を冷却することで、レール1が常温となったときの上下曲がり量dが所定値以下に抑制されることを見出した。
ここで、頭部11に対する冷却と足部13に対する冷却との関係について図5を参照して説明する。特許文献1の技術では、足部13のみを所定時間t1冷却(足裏部予備冷却)した後で頭部11に対する冷却を開始するため、その分強制冷却時間の増大を招いていた。そこで、本実施の形態の足部冷却制御処理では、強制冷却時間を増大させる事態を防止するため、頭部冷却開始時T11から頭部冷却終了時T13までの間の頭頂冷却ヘッダ31および頭側冷却ヘッダ33による頭部11の冷却中に足裏冷却ヘッダ35によって足部13を冷却することを前提に、特に、途中の頭部変態終了時T15(図7を参照)までの足部13の冷却を制御する。
ところで、レール1は長尺であり、その温度はレール1長手方向で一定とは限らない。そのため、足部13の冷却速度をレール1長手方向に一律に適用するのは適切ではない。図6は、レール1長手方向に沿った頭部11表面の温度分布の一例を示す図であり、併せて熱処理装置3にレール1を搬入する様子を模式的に示している。図6に示すように、頭部11表面の温度はレール1長手方向に沿って一定ではなく、特に両端で温度が低下する傾向を示す。なお、図示しないが、足裏部131も同様に、レール1長手方向に沿って温度分布を有する。温度分布は、熱処理装置3に搬入されるレール毎にも当然異なる。
このようにレール1長手方向に温度分布を有する熱間圧延後の仕上圧延長のレール1は、例えば、レール1a〜1dに鋸断された上で熱処理装置3に搬入され、連接する冷却ゾーン(冷却ゾーン1〜4)3a〜3dで冷却されるが、各冷却ゾーン3a〜3dが冷却の対象とするレール1a〜1dは温度分布が各々異なる。したがって、各冷却ゾーン3a〜3dに同じ冷却速度を適用したのでは、全てのレール1a〜1dの上下曲がりを抑制するのは困難である。特に、レール1の端部部分であるレール1a,1dでは温度の上下限値幅が大きいため、上下曲がりが発生し易いといえる。なお、上下曲がりを抑制するため、レール1の両端部分を切り落とすことでレール1長手方向の温度分布を平坦化する手法も考えられるが、歩留まりが大きく低下するため好ましくない。
そこで、本実施の形態の足部冷却制御処理では、頭部変態期間における足部13の冷却速度を冷却ゾーン毎に決定する。また、その際、冷却開始時(熱処理装置3への搬入時)における鋸断された各レール1a〜1dの頭部11表面の温度および足裏部131の温度を用いるが、これらの温度は、該当する冷却ゾーン3a〜3d内に設置された頭部温度計391および足部温度計393の測定値から取得する。
次に、足部冷却制御処理の原理について図7を参照して説明する。なお、以下では、1つの冷却ゾーン(冷却ゾーン1)3aに着目して足部冷却制御処理の原理を説明する。図7は、足部冷却制御処理を説明する目的で、頭部変態期間であるT11〜T15におけるレール1aの頭部11表面の温度変化L21および足裏部131の温度変化L23を模式的に示したものである。
足部冷却制御処理では、強制冷却開始時における頭部11表面の温度である冷却ゾーン3aへのレール1aの搬入時の頭部11表面の温度の平均値(装置搬入時頭部平均温度)Theadaを用い、レール1aの頭部変態終了時T15におけるレール1aの足裏部目標温度を算出する。そのために先ず、装置搬入時頭部平均温度Theadaと、頭部11の冷却パターンとから頭部11の冷却速度(頭部冷却速度)を求め、頭部11の変態に要する時間(頭部変態期間T11〜T15の時間)を求める。
ここで、頭部11の変態温度(頭部変態温度)Theadbはレール1a(レール1)の成分系によって定まり、頭部11の冷却パターンは、頭部11を微細なパーライト組織とし、高硬度とするために予め設定されている。したがって、レール1aの上下曲がりを抑制する目的で頭部11の冷却パターンを変更するのは適切ではない。足部13の冷却速度を決定するのはそのためである。
また、装置搬入時頭部平均温度Theadaは、レール1aが冷却ゾーン3aに搬入された時点で冷却ゾーン3a内に設置された複数の頭部温度計391が測定した測定値の平均値である。なお、冷却ゾーン3a内に設置される頭部温度計391の数が1つの場合には、その測定値を用いればよい。
続いて、上記した装置搬入時頭部平均温度Theadaや頭部冷却速度、頭部変態温度Theadb、頭部11の変態に要する時間といった頭部変態期間T11〜T15における頭部11の冷却条件から頭部変態終了時T15における足裏部目標温度Tfootbを算出する。足裏部目標温度Tfootbは、上記頭部11の冷却条件をもとに、頭部11および足部13それぞれの断面2次モーメントや熱収縮量を計算することで算出することができる。ただし、これに限らず、例えば、予め頭部11の冷却条件と足裏部目標温度Tfootbとの対応関係をテーブル化して用意しておき、これを参照して算出することとしてもよい。あるいは、過去の操業時に収集した頭部11と足部13との温度差とそのときの上下曲がり量dの実績値との関係から近似式を定め、この近似式を用いて求めることとしてもよい。足裏部目標温度Tfootbの精度は、±5[℃]以下であることが上下曲がりの低減のため望ましい。
また、足裏部目標温度Tfootbの算出に際しては、レール1a(レール1)の成分系や形状を加味するのが望ましい。上下曲がりを抑制するのに最適な足裏部目標温度Tfootbは、頭部変態期間T11〜T15における頭部11の冷却条件だけでなく、レール1a(レール1)の成分系や形状によっても変動するためである。レール1a(レール1)の形状は、頭部11の断面積、足裏部131の断面積、およびレール1a(レール1)の高さを指標とすることが望ましい。
そして、足部冷却制御処理では、足裏部目標温度Tfootbをもとに、頭部変態期間T11〜T15におけるレール1aの足裏部131の冷却速度の目標値(足裏部目標冷却速度)CRfootを決定する。例えば、次式(1)に従って足裏部目標冷却速度CRfootを算出する。次式(1)において、CRheadは、頭部冷却速度を表す。装置搬入時頭部平均温度Theadaは、レール1aが冷却ゾーン3aに搬入された時点で冷却ゾーン3a内に設置された複数の足部温度計393が測定した測定値の平均値である。なお、冷却ゾーン3a内に設置される足部温度計393の数が1つの場合には、その測定値を用いればよい。
Figure 0005849984
なお、本例では頭部11の冷却を足部13の冷却と同時に開始することとしたが、足部13の冷却は、頭部冷却開始時T11以降に開始し、頭部変態終了時T15に目標温度となるように行えばよく、頭部冷却開始時T11から遅れて開始することとしてもよい。
図8は、足部冷却制御処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。熱処理装置3は、制御部5が図8の処理手順に従って足部冷却制御処理を実行することで、レールの製造方法を実施する。
熱処理装置3は、オーステナイト域温度以上の高温状態のレール1(各冷却ゾーン3a〜3dに搬入されたレール1a〜1d)に対して冷却ヘッダ31,33,35から冷却媒体を噴射することでレール1の強制冷却を行うが、足部13の冷却に関して制御部5が足部冷却制御処理を実行する。この足部冷却制御処理では、図8に示すように、先ず、全ての冷却ゾーン3a〜3dを順番に対象冷却ゾーンとしてループAの処理を実行する(ステップS1〜ステップS9)。
すなわち、ループAでは、先ず温度取得部51が、対象冷却ゾーン内に設置された頭部温度計391および足部温度計393の測定値をもとに装置搬入時頭部平均温度Theadaおよび装置搬入時足部平均温度Tfootaを取得する(ステップS3)。続いて、足裏部目標温度算出部53が、上記した要領で、頭部変態終了時T15における足裏部目標温度Tfootbを算出する(ステップS5)。その後、足部冷却速度決定部55が、上記した要領で、頭部変態終了時T15における足裏部131の温度が足裏部目標温度Tfootbとなるように頭部変態期間T11〜T15の足部13の足裏部目標冷却速度CRfootを決定し(ステップS7)、対象冷却ゾーンについてのループAの処理を終了する。
そして、全ての冷却ゾーン3a〜3dについてループAの処理を実行したならば、足部冷却制御部57が、各冷却ゾーン3a〜3dのレール1a〜1dの足部13の冷却を制御する(ステップS11)。すなわち、足部冷却制御部57は、頭部11の冷却開始と同時に足部13の冷却を開始し、足裏部目標冷却速度CRfootに従って足裏冷却ヘッダ35からの冷却媒体の噴射を冷却ゾーン3a〜3d毎に制御する。具体的には、足部冷却制御部57は、頭部変態期間T11〜T15中の各冷却ゾーン3a〜3dにおける足裏部131の冷却速度が、上記したステップS7で該当する冷却ゾーン3a〜3dについて決定した足裏部目標冷却速度CRfootとなるように足裏冷却ヘッダ35からの冷却媒体の噴射を冷却ゾーン3a〜3d毎に制御する。冷却速度の制御は、足裏冷却ヘッダ35からの冷却媒体の噴射制御として冷却媒体の吐出量や吐出圧、温度、水分量を段階的または断続的に変更することで行う。このとき、足部冷却制御部57は、頭部変態終了時T15における足裏部131の温度が実際に該当する冷却ゾーン3a〜3dの足裏部目標冷却速度CRfootとなるように、頭部変態期間T11〜T15の足裏部131の冷却速度を足部温度計393の測定値を監視しながら調整するとより望ましい。
なお、頭部変態期間T11〜T15中の頭頂冷却ヘッダ31および頭側冷却ヘッダ33からの冷却媒体の噴射制御については、制御部5が、頭部11の冷却条件に従って頭部温度計391から随時入力される測定値等を適宜用いて制御する。
頭部変態終了時T15以降は、頭部11表面の温度および足裏部131の温度が予め定められる各々の冷却終了温度になるまで冷却を行い、強制冷却を終了する。頭部11の変態が終了した後の冷却速度は、頭部11のパーライト組織の硬度やレール1の上下曲がり量dには影響を与えないため、頭部11および足部13ともに、各々の冷却終了温度となるまで可能な限り速く冷却することが生産効率上望ましい。強制冷却を終えたレール1は、クランプ37が外されて熱処理装置3から搬出され、必要に応じて横倒しに転回された上で冷却床に搬送され、常温まで自然放冷されて製品となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、装置搬入時頭部平均温度Theadaを用い、レール1の成分系および形状を加味して頭部11の変態終了時における足裏部131の目標温度(足裏部目標温度Tfootb)を算出することができる。そして、頭部11の冷却開始と同時に足部13の冷却を開始し、頭部11の変態終了時における足裏部131の温度が足裏部目標温度となるように足部13を冷却することができる。これにより、冷却時間を増大させることなくレール1の上下曲がりを確実に抑制することができる。具体的には、上曲がり量および下曲がり量ともに25[m]あたり50[mm]以下を確保することができる。
また、熱処理装置3へのレール1の搬入時に各冷却ゾーン3a〜3d内で測定した頭部11表面の温度の平均値を装置搬入時頭部平均温度Theadaとして用い、足裏部目標温度Tfootbを算出することとした。これによれば、不可避的に発生する熱処理装置3への搬入時におけるレール1長手方向の温度のばらつきによらずに、また、熱処理装置3が仕上圧延長のレールをそのまま冷却するのか鋸断したレールを対象とするのかによらずに、レール1が常温となったときの上下曲がりを所定値以下とすることができる。
この結果、形状矯正のための追加プロセスの実施が不要となるため、生産性を向上でき、加えてコストのより一層の低減が図れる。さらに、形状が特に悪い端部を切り落とすのみで、上下曲がりを原因とする端部の切り落としが不要となるため、歩留りの向上が図れる。
(実施例)
頭部変態温度が600[℃]の成分系Aの鋼と、頭部変態温度が620[℃]の成分系Bの鋼とを用い、圧延終了時の温度が900[℃]以上で、仕上圧延長が概ね100[m]となるように異なる2種類の形状ア,イに熱間圧延したレールを実験材として用意した。そして、足部の冷却条件をかえてレール(実験材)の強制冷却を行い、室温まで自然放冷した後で実験材の上下曲がりを評価した(実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例12)。表1に、実施例1〜実施例12および比較例1〜比較例12の実験材の成分系(AまたはB)と、形状(アまたはイ)と、強制冷却時に使用した冷却媒体と、頭部変態温度と、実験材の形状の指標となる頭部断面積、足部断面積、およびレール高さとを示す。頭部変態温度は、冷却媒体が空気の場合の頭部冷却速度を2[℃/秒]とし、ミストの場合の頭部冷却速度を2.5[℃/秒]として、成分計のCCT図より特定した。
Figure 0005849984
(1)実施例1〜実施例12
表2に、実施例1〜実施例12の実験材の足裏部目標温度と、装置搬入時頭部平均温度と、装置搬入時足部平均温度と、足裏部目標冷却速度とを示す。また、表3に、各実験材の冷却時レール長さ、再加熱の有無、最大上曲がり量、最大下曲がり量等を示す。
Figure 0005849984
Figure 0005849984
実施例1〜実施例12では、鋸断が必要なものは圧延終了後の実験材を直ちに該当する冷却時レール長さに鋸断し、再加熱が必要なものは一度400[℃]まで放冷した後でIHヒーターによって800[℃]まで加熱し、その後強制冷却を行った。
ここで、冷却時レール長さが100[m]である実施例5等では、熱間圧延後の概ね100[m]の実験材4本を用いた。すなわち、形状が特に悪い端部を切り落とした上で熱処理装置3内の各冷却ゾーン3a〜3dに搬入し、各冷却ゾーン3a〜3dに設けられたクランプ37によって拘束した。冷却時レール長さが50[m]である実施例3等では、熱間圧延後の概ね100[m]の実験材2本をそれぞれ50[m]に鋸断した上で熱処理装置3内の各冷却ゾーン3a〜3dに搬入し、各冷却ゾーン3a〜3dに設けられたクランプ37によって拘束した。冷却時レール長さが25[m]である実施例1等では、熱間圧延後の概ね100[m]の実験材1本をそれぞれ25[m]に鋸断した上で熱処理装置3内の各冷却ゾーン3a〜3dに搬入し、各冷却ゾーン3a〜3dに設けられたクランプ37によって拘束した。
また、図8の足部冷却制御処理を行って足裏部目標冷却速度を決定した。このとき、各冷却ゾーン3a〜3dにはそれぞれレール長手方向に沿って5箇所に頭部温度計391および足部温度計393を設置し、レール搬入時(冷却開始時)の頭部温度計391による測定値の平均値を装置搬入時頭部平均温度、レール搬入時(冷却開始時)の足部温度計393による測定値の平均値を装置搬入時足部平均温度として取得した。足裏部目標温度は、頭部断面積、足裏部断面積、およびレール高さをもとに、曲げモーメントが0となる値として算出した。足裏部目標冷却速度は、上記式(1)に従って決定した。
強制冷却は、頭部および足部の強制冷却時間(図5のt2)を165[秒]として行った。冷却媒体は、空気またはミストとした。ミストによる強制冷却は、オリフィスチップが内蔵されたノズルを用い、1[m]あたり2[l/分]の水と500[kPa]のエアを混合したミストを冷却ヘッダ31,33,35から噴射した。
強制冷却の終了後は、各冷却ゾーン3a〜3dの実験材をクランプ37から外して冷却床に搬送し、自然放冷した。冷却時レール長さが100[m]および50[m]の実験材については、全断面が100[℃]以下となった後で25[m]に鋸断した。その後、常温となった25[m]のレールの上下曲がり量dを測定した。
この結果、表3に示すように、実施例1〜実施例12では、いずれの場合も、上曲がり量および下曲がり量のばらつきが低減され、各々の値も目標値である50[mm]以下を達成した。
(2)比較例1〜比較例12
表4に、比較例1〜比較例12における実験材の冷却時レール長さ、再加熱の有無、t1、足裏部冷却速度、最大上曲がり量、最大下曲がり量等を示す。
Figure 0005849984
比較例1〜比較例12では、鋸断が必要なものは圧延終了後の実験材を直ちに該当する冷却時レール長さに鋸断し、再加熱が必要なものは一度400[℃]まで放冷した後でIHヒーターによって800[℃]まで加熱し、その後強制冷却を行った。
ここで、冷却時レール長さが100[m]である比較例5等では、熱間圧延後の概ね100[m]の実験材4本を用いた。すなわち、形状が特に悪い端部を切り落とした上で熱処理装置3内の各冷却ゾーン3a〜3dに搬入し、各冷却ゾーン3a〜3dに設けられたクランプ37によって拘束した。冷却時レール長さが50[m]である比較例3等では、熱間圧延後の概ね100[m]の実験材2本をそれぞれ50[m]に鋸断した上で熱処理装置3内の各冷却ゾーン3a〜3dに搬入し、各冷却ゾーン3a〜3dに設けられたクランプ37によって拘束した。冷却時レール長さが25[m]である比較例1等では、熱間圧延後の概ね100[m]の実験材1本をそれぞれ25[m]に鋸断した上で熱処理装置3内の各冷却ゾーン3a〜3dに搬入し、各冷却ゾーン3a〜3dに設けられたクランプ37によって拘束した。
強制冷却は、特許文献1の手法を用いて行った。すなわち、図5に示すt1を20[秒]とし、各冷却ゾーン3a〜3dのレールの頭部表面の温度が700[℃]〜725[℃]の状態から足部13のみの冷却を開始して足裏部予備冷却を行った。その後、頭部11に対する冷却を開始し、図5に示すt2を165[秒]として頭部11および足部13を冷却した。冷却媒体は、空気またはミストとした。ミストによる強制冷却は、オリフィスチップが内蔵されたノズルを用い、1[m]あたり2[l/分]の水と500[kPa]のエアを混合したミストを冷却ヘッダ31,33,35から噴射した。
強制冷却の終了後は、各冷却ゾーン3a〜3dの実験材をクランプ37から外して冷却床に搬送し、自然放冷した。冷却時レール長さが100[m]および50[m]の実験材については、全断面が100[℃]以下となった後で25[m]に鋸断した。その後、常温となった25[m]のレールの上下曲がり量dを測定した。
この結果、表4に示すように、比較例1〜比較例12では、いずれの場合も、上曲がり量および下曲がり量が目標値である50[mm]以下を達成できなかった。
3 熱処理装置
31 頭頂冷却ヘッダ
33 頭側冷却ヘッダ
35 足裏冷却ヘッダ
37 クランプ
391 頭部温度計
393 足部温度計
5 制御部
51 温度取得部
53 足裏部目標温度算出部
55 足部冷却速度決定部
57 足部冷却制御部
7 記憶部
1 レール
11 頭部
13 足部
131 足裏部

Claims (2)

  1. オーステナイト域温度以上で熱間圧延され、あるいは、オーステナイト域温度以上に加熱された高温のレールの頭部および足部の強制冷却を行うレールの製造方法であって、
    前記頭部の強制冷却開始時における前記頭部表面の温度を用いて前記頭部のパーライト変態終了時における前記足部裏面の目標温度を算出し、
    前記頭部の強制冷却開始以降に前記足部の強制冷却を開始し、前記頭部のパーライト変態終了時における前記足部裏面の温度が前記算出した目標温度となるように前記足部の強制冷却を行うことを特徴とするレールの製造方法。
  2. 前記レールの成分および/または前記レールの形状を加味して前記目標温度を算出することを特徴とする請求項1に記載のレールの製造方法。
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