JP3791454B2 - 厚鋼板の製造方法および製造設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚鋼板の製造方法および製造設備に関するものであり、特に、内部の残留応力の分布が調整されて無害化された厚鋼板を製造する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
厚鋼板を製造する際には、熱間圧延機で所定寸法に圧延後、引き続いて、水冷による冷却処理を施して材質を確保することが一般的に行われている。
【0003】
しかし、熱間圧延時の温度の不均一による水冷開始温度の不均一や、水冷のむらによって冷却が不均一になることがある。すなわち、厚鋼板の幅端部は幅中央部の定常部に比較して、単位体積あたりの表面積が大きいため、高温の間は放射冷却によってより早く温度降下する。さらに、水冷時にも幅端部に水がかかることなどにより、厚鋼板の幅端部が幅中央部の定常部に比較してより冷却され、温度が低くなりやすい。
【0004】
このような冷却の不均一があると、冷却後の厚鋼板の内部に残留応力が発生し、曲がりや波打ち等の形状不良になることがある。特に、冷却後に室温になってから切断して多数の条として使用に供するような場合、厚鋼板の幅端部近傍に不均一に分布した残留応力が切断によって開放され、厚鋼板の幅端部近傍の条が曲がってしまうという問題が起きる。
【0005】
このような厚鋼板内部に発生する残留応力をなくす方法としては、塑性変形を利用して、冷却の不均一によって生じる熱応力歪を均一化する方法がある。これには、厚鋼板にレベラーにより曲げ歪を与える方法や、プレス加工により塑性変形を与える方法がある。また、厚鋼板を炉の中で加熱して熱処理により熱応力歪を除去する方法もある。
【0006】
そして、生産性の面からは、水冷直後で厚鋼板の温度が高く厚鋼板の変形抵抗が低い間にレベラー加工を施すホットレベラーの使用が望ましいが、ホットレベラーは形状を矯正する能力は高いものの不均一な残留応力を除去する能力は低いため、残留応力が問題となる厚鋼板には、ホットレベラーをかけた厚鋼板を炉で熱処理する方法が用いられている。
【0007】
図9は、その方法を示す図である。加熱炉2で加熱されたスラブ1が粗圧延機3と仕上圧延機4によって所定寸法の厚鋼板1aに熱間圧延される。引き続き、熱間圧延された厚鋼板1aは加速冷却装置などの水冷装置5によって水冷される。水冷された厚鋼板1aは、ホットレベラー6により形状を矯正され、かつ残留応力の一部を除去される。その後、厚鋼板1aは、オフラインに設置された熱処理炉7に静置されて加熱され、残留応力が除去される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のホットレベラーをかけた厚鋼板を炉で熱処理して残留応力を除去する方法は、長時間の熱処理を必要とするため生産性が低いという問題がある。
【0009】
一方、条切り歪等の形状不良の発生は、残留応力の不均一な分布によるものであり、その発生を防止するためには、必ずしも残留応力を除去する必要があるわけではなく、一様な残留応力分布にすればよい。
【0010】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、熱間圧延後に水冷を施されて製造される厚鋼板について、一様な残留応力分布になるように調整することで、生産性を阻害すること無く、条切り歪等の形状不良の発生を防止することのできる厚鋼板の製造方法及び製造設備を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0012】
[1]熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より40℃以上高くなるように加熱することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【0013】
[2]前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする前記[1]記載の厚鋼板の製造方法。
【0014】
[3]熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、加熱時の厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【0015】
[4]前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする前記[3]記載の厚鋼板の製造方法。
【0016】
[5]前記加熱工程において、加熱時の厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の厚鋼板の製造方法。
【0017】
[6]熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、厚鋼板の温度が480℃以下で加熱を開始することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【0018】
[7]前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする前記[6]記載の厚鋼板の製造方法。
【0019】
[8]前記加熱工程において、厚鋼板の温度が480℃以下で加熱を開始することを特徴とする前記[1]乃至[5]記載の厚鋼板の製造方法。
【0020】
[9]熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、加熱は途中で冷却を行わない一回加熱であることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
【0021】
[10]前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする前記[9]記載の厚鋼板の製造方法。
【0022】
[11]前記加熱工程において、加熱は途中で冷却を行わない一回加熱であることを特徴とする前記[1]乃至[8]記載の厚鋼板の製造方法。
[12]所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱手段とを有し、前記加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置であって、前記ソレノイド型誘導加熱装置は、周波数が50〜5000Hzで、コイル長が500mm以上であり、厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とする厚鋼板の製造設備。
[13]所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱手段とを有し、前記加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置であって、オンライン上にホットレベラーに近接して前記ソレノイド型誘導加熱装置を配置したことを特徴とする厚鋼板の製造設備。
[14]オンライン上にホットレベラーに近接して前記ソレノイド型誘導加熱装置を配置したことを特徴とする前記[12]記載の厚鋼板の製造設備。
[15]所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱手段とを有し、前記加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置であり、前記ソレノイド型誘導加熱装置に加えて、厚鋼板の幅端部を補助的に加熱又は/及び冷却を行うための補助加熱装置又は/及び補助冷却装置を備えたことを特徴とする厚鋼板の製造設備。
[16]前記ソレノイド型誘導加熱装置に加えて、厚鋼板の幅端部を補助的に加熱又は/及び冷却を行うための補助加熱装置又は/及び補助冷却装置を備えたことを特徴とする前記[12]乃至[14]記載の厚鋼板の製造設備。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1に示す。
【0024】
図1において、加熱炉2で加熱されたスラブ1が粗圧延機3と仕上圧延機4によって所定寸法の厚鋼板1aに熱間圧延される。熱間圧延された厚鋼板1aは、引き続き、加速冷却装置などの水冷装置5によって水冷される。水冷された厚鋼板1aは、ホットレベラー6により形状を矯正され、かつ残留応力の一部を除去される。その後、厚鋼板1aの表面を急速に加熱する急速加熱装置8を通過させ、必要により厚鋼板1aの幅端部を補助的に加熱・冷却する補助加熱・冷却装置9も通過させることによって、厚鋼板1aの幅端部近傍の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるように加熱する。これによって、厚鋼板1aの残留応力の分布が一様な状態に調整された厚鋼板を製造することができる。
【0025】
上記によって厚鋼板1aの残留応力の分布が一様な状態に調整されるのは、次のようなメカニズムによりものである。
【0026】
すなわち、まず、ホットレベラー6により繰り返し曲げの塑性変形が加えられて、波打ちや曲がりが除去された平坦な形状の厚鋼板1aになるように矯正される。ただし、ホットレベラー6では、残留応力の一部は除去されるものの、残留応力の分布は不均一なままである。
【0027】
次に、ホットレベラー6により形状が矯正された厚鋼板1aの表面を加熱し、表面温度を上昇させることにより、厚鋼板1aの降伏応力が下がるとともに熱膨張によって厚鋼板1aの表面に強い圧縮応力が発生し、厚鋼板1aの表面が降伏して残留応力が一旦取り除かれる。この時点で、厚鋼板1aの表面の残留応力はほぼゼロになるが、板厚中央の幅方向に不均一な分布の残留応力が残っている。
【0028】
そして、厚鋼板1aの幅端部近傍が幅中央部より高くなるように加熱されたことにより、板厚中央の幅方向に不均一な分布の残留応力をキャンセルする熱応力が新たに付与され、厚鋼板1aの幅方向の残留応力が一様化される。
【0029】
この時、残留応力は軽減され幅方向に一様になるものの、ゼロになるわけではないから、炉中で均一な温度に加熱する熱処理とは異なっており、残留応力を調整する処理というべきものである。
【0030】
このように、この実施形態においては、急速加熱装置8によって厚鋼板1aの幅端部近傍の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるように厚鋼板1aの表面を急速加熱するだけでよいので、従来技術のような熱処理炉を用いて厚鋼板1a全体の温度を均一に上げるのに比較して、著しく短時間の加熱ですみ、生産性を阻害することがない。また、加熱するために投入する熱エネルギーも少なくてすみ、著しく経済的である。
【0031】
なお、一般的に、急速加熱装置で厚鋼板を急速加熱すれば、厚鋼板の幅端部近傍の表面が幅中央部の表面より加熱され易いが、特に、急速加熱装置8として高周波誘導加熱であるソレノイド型誘導加熱装置を用いた場合、厚鋼板1aの幅端部近傍の表面が幅中央部の表面より強く加熱される特性が著しくなるので、厚鋼板1aの幅端部近傍の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるように加熱することが容易となる。
【0032】
【実施例】
本発明に係る厚鋼板の製造方法を、厚さ32mm、幅1m、長さ8mの厚鋼板を対象に実施した例について述べる。
【0033】
この厚鋼板は、熱間圧延後、水冷によって加速冷却され、ホットレベラーにかけられた後、室温まで放冷された厚鋼板を長さ8mに切断したものである。これを非処理材と呼ぶことにする。
【0034】
これに対し、上記の非処理材を周波数1500Hz、出力7000Kwで長さ約1mのソレノイド型誘導加熱装置2台で計4秒間の急速加熱をして残留応力の調整を行ったものが本発明例である。この場合、コイル内の加熱される面は約2mであり、単位面積あたりの発熱量はコイルの効率を70%として約250W/cm2である。
【0035】
また、従来技術のように、上記の非処理材をバッチ炉によって650℃で1時間30分の熱処理を行ったものを従来例とした。
【0036】
なお、本発明例と従来例の加熱方法の比較を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
上記の非処理材と本発明例と従来例について、幅方向の残留応力分布を調べた結果を図2に示す。非処理材では、図2(a)に示すように、幅方向に不均一な残留応力分布を有しているのに対して、本発明例は、図2(b)に示すように、幅方向になだらかな残留応力分布になっている。なお、従来例では、図2(c)に示すように残留応力は完全に除去されている。
【0039】
そして、これらの厚鋼板を200mmに条切りした結果を表2に示す。非処理材では、8mで80mmの曲がりという大きな条切り歪量が発生している対して、本発明例では従来例と同様にほとんど条切り歪が生じていない。
【0040】
【表2】
【0041】
このように、本発明例では、加熱に要する時間が従来例の約1000分の1程度であっても、従来例と同様に条切り歪の発生を防止することができている。
【0042】
次に、ホットレベラー後のソレノイド型誘導加熱装置による急速加熱の好適な条件について検討した結果を述べる。
【0043】
熱間圧延後、水冷によって加速冷却され、ホットレベラーをかけられた後、室温まで放冷された厚さ40mm、幅700mm、長さ5mの厚鋼板を試験材とした。そして、試験材を所定の温度まで均一加熱を行い、その温度を初期温度として、1000Hzで、300W/cm2のソレノイド型誘導加熱装置を用いて試験材を急速加熱した。急速加熱は幅中央部の表面温度が650℃に達するように加熱時間を調整した。その後、試験材を室温まで空冷して条切りし、生じた曲がり量すなわち条切り歪量を測定した。
【0044】
ここで、急速加熱における試験材の温度変化について、その一例を図3(a)に示す。急速加熱によって表面温度は急速に上昇した後、急速加熱が終了し放冷に移ると急激に低下する。一方、内部温度は徐々に上昇していく。そして、急速加熱終了後数秒経過すると、表面温度と内部温度がほぼ同一温度となり、表面温度が安定する。そこで、急速加熱が終了し放冷に移る時点での表面温度を「加熱直後の表面温度」と呼び、急速加熱終了後数秒経過して表面温度が安定した時の表面温度を「加熱後の表面温度」と呼ぶことにする。
【0045】
また、加熱後の表面温度の幅方向分布について、その一例を図3(b)に示す。急速加熱によって、幅端部が幅中央部に比べて高い温度分布になるが、板厚によって高温になる部分の幅が異なるため、幅最端部から板厚分だけ幅方向の内側に入った部分までの領域での最高温度と最低温度の差をもって評価することにし、これを端部温度差と呼ぶことにした。
【0046】
上記の結果を表3に示す。なお、表3における加熱直後の表面温度及び加熱後の表面温度は、共に幅中央部の値である。
【0047】
そして、表3における端部温度差と条切り歪量との関係をプロットしたものを図4(a)に、端部温度差と加熱後の表面温度との関係をプロットしたものを図4(b)に示している。
【0048】
【表3】
【0049】
この結果、試験材の表面を急速加熱しながら端部温度差を与えることによって、条切り歪量が減少していることが分かるが、特に、試験材1〜4のように端部温度差が40℃以上になると条切り歪量が非常に小さくなっている。したがって、条切り歪量の発生を防止するには、端部温度差が40℃以上になるように急速加熱することが望ましいことを示している。
【0050】
なお、表3において、試験材5、6のように初期温度が比較的高温から急速加熱を行った場合、試験材5に比べて端部温度差が小さい試験材6の方が条切り歪量が少なくなっているが、これは、試験材6全体が高温になったために、焼鈍による効果が加わったものと考えられる。
【0051】
そして、端部温度差が40℃以上になるように急速加熱した場合でも、急速加熱のエネルギー密度によって条切り歪量が異なってくる。
【0052】
図5(a)は、端部温度差が40℃以上になるように急速加熱する際の熱エネルギー密度、すなわち、ソレノイド型誘導加熱装置の発熱量と条切り歪量の関係を示したものである。これによると、条切り歪量を低減するには、100W/cm2以上の発熱量で加熱することが好ましいことを示している。なお、発熱量を50W/cm2以下に抑えた場合は、加熱時間が長くなるために試験材全体の温度が高くなる効果によって条切り歪量が多少減少するが、急速加熱処理で費やすトータルの熱エネルギー量すなわち電力量は、図5(b)に示すように、発熱量が340W/cm2の場合に比べて2倍以上になり、極めて不経済である。
【0053】
このことは、急速加熱の熱エネルギー密度の違いによって、加熱直後の試験材の表面と板厚内部の温度差が変化することが影響している。ソレノイド型誘導加熱装置の発熱量と、加熱直後の試験材の表面と板厚内部の温度差との関係を求めたものを図6に示すが、好ましい発熱量である100W/cm2以上の発熱量においては、加熱直後の試験材の表面と板厚内部の温度差は200℃以上にも達している。この温度差が、試験材の表面を板厚内部に比べて大きく熱膨張させ、試験材の表面を降伏させて、条切り歪量の低減に寄与することになる。
【0054】
ただし、この場合に厚鋼板の表面温度を上げ過ぎると厚鋼板の材質に悪影響を及ぼすので、厚鋼板の熱処理温度の上限である680℃から200℃低い480℃以下で急速加熱を開始する必要がある。
【0055】
この意味では、ホットレベラー後の厚鋼板の温度が480℃を越えている場合には、ホットレベラーから離れた位置に急速加熱装置があれば、厚鋼板を搬送し放置することで480℃以下になってから加熱することができる。急速加熱装置とホットレベラーが近接している場合は、ライン上で空冷によって冷却するかあるいは冷却床に仮置きして冷却することで480℃以下にすればよい。
【0056】
ホットレベラー後の厚鋼板の温度が480℃以下であれば、急速加熱装置はどこに設置してもかまわないが、最小のエネルギーで表面温度を上げるためにはホットレベラーに近接して設置することが望ましい。通常の厚鋼板の圧延ラインは120mpm程度で搬送できるから40mm厚の厚鋼板の温度が10℃以上低下しないようにするには、ホットレベラーから50m以内にあればよいが、急速加熱時に速度が低下して後部の温度が下がることや8mm程度の厚さの冷えやすい厚鋼板の場合には10m以内で急速加熱を開始できることが望ましい。
【0057】
また、100W/cm2以上の発熱量で急速加熱する場合でも、図7(b)に示すように、加熱と放冷を繰り返すような複数回の加熱を行うと、加熱と加熱の間に板厚方向の温度差ΔTが減少し、平均温度の上昇量ΔTaveも大きくなって必要な熱エネルギーが増加する。また、幅端部が幅中央部に比べて高温になる加熱を繰り返すことになり、幅端部が高温になり過ぎて、異常組織になる危険性がある。したがって、図7(a)に示すように、途中に放冷を含まない一回の加熱で行う方が望ましい。
【0058】
以上のことを設備的に実現するには、急速加熱装置としては、高周波誘導加熱であるソレノイド型誘導加熱装置が好適であり、広い板厚に対応するため、その周波数は50〜5000Hzの範囲にあることが望ましい。また、厚鋼板の圧延ピッチは2分程度であるから板厚40mmの厚鋼板を2分以内に適切に急速加熱するためには、コイル長が500mm以上である必要がある。
【0059】
ちなみに、通常の圧延ラインでは、ホットレベラーが備えられているので、本発明を実現するには、急速加熱装置を設置すればよい。しかし、必ずしもホットレベラーの下流側に設置できるとは限らないので、ホットレベラーと水冷装置の間に退避可能とした急速加熱装置を設けて、ホットレベラーをかけた後に厚鋼板を逆送して加熱してもよい。 その際には、図8のように、現処理材Aと次処理材Bとが衝突しないような位置に急速加熱装置8を設置するか、次処理材Bを一旦ラインの横に出すなどのバッファ装置を設置してもよい。
【0060】
なお、板厚が10mmを下回るような厚鋼板については、急速加熱装置だけでは、幅端部と幅中央部が所望の温度差を生じるように急速加熱することが難しい場合があり、その際には急速加熱装置に加えて補助的に幅端部を加熱する補助加熱装置を付置して、所望の条件を実現すればよい。
【0061】
また、板厚が厚い場合は、急速加熱によって幅端部の温度が上がり過ぎて問題となる場合があるので、その際には急速加熱装置に加えて補助的に幅端部を冷却できる補助冷却装置を付置して、幅端部の温度を下げてもよい。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、熱間加工後に水冷を施された厚鋼板を、ホットレベラーによって矯正した後、厚鋼板の幅端部の表面温度が幅中央部より高くなるように厚鋼板の表面を急速加熱することで、厚鋼板の幅方向の残留応力分布を一様な分布に調整するので、条切り歪等の形状不良の生じない厚鋼板を、生産性を阻害すること無く効率的に製造することのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の説明する図である。
【図2】幅方向の残留応力分布を示す図である。
【図3】急速加熱における温度履歴及び温度分布を説明する図である。
【図4】端部温度差と歪量の関係及び端部温度差と加熱後表面温度の関係を示す図である。
【図5】発熱量と歪量の関係及び発熱量と必要電力量の関係を示す図である。
【図6】発熱量と板厚方向の温度差の関係を示す図である。
【図7】加熱を一回で行った場合と複数回に分けた場合の温度履歴の比較図である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図9】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
1 スラブ
1a 厚鋼板
2 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上圧延機
5 水冷装置
6 ホットレベラー
7 熱処理炉
8 急速加熱装置
9 補助加熱・冷却装置
Claims (16)
- 熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より40℃以上高くなるように加熱することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする請求項1記載の厚鋼板の製造方法。
- 熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、加熱時の厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする請求項3記載の厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程において、加熱時の厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の厚鋼板の製造方法。
- 熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、厚鋼板の温度が480℃以下で加熱を開始することを特徴とする厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする請求項6記載の厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程において、厚鋼板の温度が480℃以下で加熱を開始することを特徴とする請求項1乃至5記載の厚鋼板の製造方法。
- 熱間圧延機で所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延工程と、熱間圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理工程と、冷却処理された厚鋼板をホットレベラーによって矯正する矯正工程と、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱工程とを有し、前記加熱工程において、加熱は途中で冷却を行わない一回加熱であることを特徴とする厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程が高周波誘導加熱によって行われることを特徴とする請求項9記載の厚鋼板の製造方法。
- 前記加熱工程において、加熱は途中で冷却を行わない一回加熱であることを特徴とする請求項1乃至8記載の厚鋼板の製造方法。
- 所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱手段とを有し、前記加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置であって、前記ソレノイド型誘導加熱装置は、周波数が50〜5000Hzで、コイル長が500mm以上であり、厚鋼板への投入熱量が100W/cm2以上であることを特徴とする厚鋼板の製造設備。
- 所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱手段とを有し、前記加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置であって、オンライン上にホットレベラーに近接して前記ソレノイド型誘導加熱装置を配置したことを特徴とする厚鋼板の製造設備。
- オンライン上にホットレベラーに近接して前記ソレノイド型誘導加熱装置を配置したことを特徴とする請求項12記載の厚鋼板の製造設備。
- 所定寸法の厚鋼板に圧延する熱間圧延機と、熱間圧延機で圧延された厚鋼板に水冷による冷却処理を施す冷却処理装置と、冷却処理された厚鋼板を矯正するホットレベラーと、矯正工程を経た厚鋼板の表面を加熱し、加熱後の幅端部の表面温度が幅中央部の表面温度より高くなるようにする加熱手段とを有し、前記加熱手段がソレノイド型誘導加熱装置であり、前記ソレノイド型誘導加熱装置に加えて、厚鋼板の幅端部を補助的に加熱又は/及び冷却を行うための補助加熱装置又は/及び補助冷却装置を備えたことを特徴とする厚鋼板の製造設備。
- 前記ソレノイド型誘導加熱装置に加えて、厚鋼板の幅端部を補助的に加熱又は/及び冷却を行うための補助加熱装置又は/及び補助冷却装置を備えたことを特徴とする請求項12乃至14記載の厚鋼板の製造設備。
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